JP4682932B2 - ループ式ヒートパイプ - Google Patents
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Description
開閉弁は、弁開口と、この弁開口を開閉する弁体とを備えるものであり、弁体が弁開口を閉じることで凝縮器で凝縮した液冷媒を蒸発器に戻すのを停止し、弁体が弁開口を開くことで凝縮器で凝縮した液冷媒を蒸発器に戻す。
特許文献1の技術のように、液冷媒貯溜部が開閉弁の上方に配置されている場合、液冷媒貯溜部から流下してくる液冷媒を内部空間に導くべく、流入ポートは弁開口の上方に設けられる。
ここで、開閉弁を搭載したループ式ヒートパイプ(排熱回収装置等)を小型化する目的などにより、開閉弁を液冷媒貯溜部の内部に配置することが考えられる。
しかし、液冷媒貯溜部の内部に開閉弁を搭載する場合における流入ポートの向きは、従来考えられていなかった。このため、例えば特許文献1のように開閉弁の上側に流入ポートを設けた場合{図2(a)参照}、流入ポートの上端位置まで凝縮器側の液冷媒の液面高H1が低下すると、弁開口の下端位置H0{符号、図2(a)参照}より上側に液冷媒貯溜部の液面高H1があるにもかかわらず、液冷媒が開閉弁内に導かれなくなり、蒸発器へ液冷媒が戻らなくなってしまう。
即ち、開閉弁が開いている状態で、弁開口の下端位置H0より上側に液冷媒があるにもかかわらず、蒸発器へ液冷媒が戻らなくなり、ループ式ヒートパイプの作動が停止してしまうという問題が生じる。
請求項1の手段を採用するループ式ヒートパイプの開閉弁(16)は、ハウジング(26)が凝縮器(15)で凝縮された液冷媒が貯溜可能な液冷媒貯溜部(29)の内部に配置されるものであり、流入ポート(26b)の少なくとも一部が弁開口(26c)における天地方向の下端位置(H0)以下においてハウジング(26)の内外を連通する。
これにより、開閉弁(16)の開弁状態において液冷媒貯溜部(29)の液面高(H1)が弁開口(26c)の下端位置(H0)へ低下するまで、液冷媒貯溜部(29)内の液冷媒を蒸発器(14)へ戻すことができる。
即ち、従来技術で示したように、弁開口(26c)の下端位置(H0)より上側に液冷媒貯溜部(29)の液面高(H1)があるにもかかわらず、蒸発器(14)へ液冷媒が戻らなくなる不具合を回避することができる。
このように、請求項1の手段を採用することにより、液冷媒の不足によりループ式ヒートパイプの作動が停止する不具合を回避できる。
請求項2の手段を採用するループ式ヒートパイプのハウジング(26)は、凝縮器(15)における液冷媒貯溜部(29)の内部に配置される。
これにより、開閉弁を搭載するループ式ヒートパイプを小型化することができる。
請求項3の手段を採用するループ式ヒートパイプのハウジング(26)は、凝縮器(15)の下方に設けられた液冷媒貯溜部(29)の内部に配置される。
このように、液冷媒貯溜部(29)が凝縮器(15)の外部に配置されるものであっても、上記請求項1〜3のいずれかの効果を得ることができる。
請求項4の手段を採用するループ式ヒートパイプは、自動車の排熱回収を行う排熱回収装置(7)に適用され、熱源流体は、燃料の燃焼により出力を発生するエンジン(1)の排気ガスであり、被加熱流体は、エンジン(1)の冷却水である。
これにより、液冷媒の不足により排熱回収装置(7)の作動が停止する不具合を回避できる。
ハウジング(26)は、凝縮器(15)で凝縮した液冷媒を内部空間(26a)に導く流入ポート(26b)、および内部空間(26a)に導かれた液冷媒を蒸発器(14)へ戻す弁開口(26c)を備え、凝縮器(15)で凝縮された液冷媒が貯溜可能な液冷媒貯溜部(29)の内部に配置される。一方、弁体(27)は、弁開口(26c)を開閉するものである。
ここで、流入ポート(26b)の少なくとも一部は、弁開口(26c)における天地方向の下端位置(H0)以下においてハウジング(26)の内外を連通する。これにより、開閉弁(16)が開かれた状態で、且つ蒸発器(14)側の液冷媒の液面高(H2)が蒸発により減少して弁開口(26c)の下端位置(H0)より低い状態であれば、液冷媒貯溜部(29)の液面高(H1)が弁開口(26c)の下端位置(H0)に低下するまで、液冷媒貯溜部(29)内の液冷媒を蒸発器(14)へ戻すことができ、液冷媒の不足により排熱回収装置(7)の作動が停止する不具合を回避できる。
なお、この実施例1では、先ず「熱回収装置の基本構成」を説明し、その後で「実施例1の特徴」を説明する。
先ず、図3を参照して実施例にかかる車両の構成を説明する。
車両に搭載される水冷式のエンジン(内燃機関)1は、燃料の燃焼により車両走行用の回転出力を発生するものであり、エンジン1の発熱を抑える冷却水回路と、燃料を燃焼させた後の排気ガスを大気中に放出する排気管2とを備える。
冷却水回路には、ラジエータ回路3、ヒータ回路4および排熱回収回路5が設けられている。
排気管2には、排気ガスの浄化を行う触媒コンバータ6および排熱回収装置7が設けられている。
ラジエータ回路3、ヒータ回路4および排熱回収回路5を説明する。
ラジエータ回路3は、ウォータポンプ8により循環される冷却水を外気と熱交換して冷却するラジエータ9を備える。また、ラジエータ回路3には、ラジエータ9を迂回して冷却水を流すラジエータバイパス10が設けられている。さらに、ラジエータ回路3には、サーモスタット11が設けられている。
このサーモスタット11は、ラジエータ9を通過する冷却水量と、ラジエータバイパス10を通過する冷却水量との割合を調整して、冷却水の温度を所定の温度範囲(例えば80℃〜100℃)に保つものであり、例えば暖機時など冷却水温度が低い状態においてラジエータバイパス10側の冷却水量を増加させて、暖機を促進するようになっている。
次に、図1を参照して排熱回収装置の構造を説明する。
排熱回収装置7は、冷媒の蒸発と凝縮によって熱の運搬を行うループ式ヒートパイプを用いて、触媒コンバーダ6を通過した後の排気ガスの熱で、排熱回収回路5を流れる冷却水を加熱するものであり、ループ式ヒートパイプを成す蒸発器14および水タンク13内に収容される凝縮器15を一体的に設け、内圧に応じてループ式ヒートパイプの作動を制御する差圧弁16(開閉弁の一例)を組付けたものである。
ここで、蒸発器14と、水タンク13内に収容される凝縮器15は、耐腐食性を備える部材(ステンレス等)をろう付け等の接合技術で一体化したものであり、接合後に差圧弁16が排熱回収装置7に組付けられる。
なお、この実施例では、凝縮器15を蒸発器14に接合して一体化させる例を示すが、蒸発器14と凝縮器15を別々に車両に搭載し、断熱配管等で接続する構造であっても良い。
この実施例では、冷媒の一例として水を使用している。水の沸点は、1気圧で100℃であるが、排熱回収装置7内が減圧(例えば、0.01気圧)されて、沸点が5℃〜10℃にされている。なお、冷媒として、水の他に、アルコール、フロロカーボン、フロン等を用いても良い。
熱交換部17は、例えば直線状に伸びるチューブ17aとフィン17bとを交互に積層した構造を採用するものであり、車両にはチューブ17aの長手方向を天地方向に向けて搭載される。なお、冷媒の蒸発能力が下がるものの排気効率を高める目的や、耐久性を高める目的でフィン17bを無くしたものであっても良い。
下タンク18は、熱交換部17の下部(車両搭載時における下側)に設けられて、差圧弁16を介して供給される凝縮水を各チューブ17aに分配するものである。
上タンク19は、熱交換部17の上部(車両搭載時における上側)に設けられて、各チューブ17a内を上昇した蒸発冷媒を収集して凝縮器15に導くものである。
水タンク13は、蒸発器14との間に冷却水を流す容器であり、例えば蒸発器14の側面に接合される水タンクプレートと、凝縮器15を収容する水タンクカップとを接合した構造を採用している。この水タンク13には、冷却水を水タンク13内に導く冷却水導入パイプ21と、水タンク13内を通過した冷却水を排出する冷却水排出パイプ22とが接合されている。
凝縮器15は、熱交換部23、冷媒上流タンク24および冷媒下流タンク25を備える。
冷媒上流タンク24は、熱交換部23の上部(車両搭載時における上側)に設けられて、蒸発器14の上タンク19から供給される蒸発冷媒を各チューブ23aに分配するものである。
冷媒下流タンク25は、熱交換部23の下部(車両搭載時における下側)に設けられて、各チューブ23a内で液化凝縮した凝縮水を収集して差圧弁16に導くものである。
排熱回収装置7は、排熱回収装置7の運転をコントロールする手段として、凝縮器15で凝縮した液冷媒を蒸発器14に戻す通路の開閉を行う差圧弁16を備える。
差圧弁16は、排熱回収装置7の内圧が上昇した際に、蒸発器14の下タンク18と凝縮器15の冷媒下流タンク25の連通を遮断して排熱回収装置7の昇圧破損を防ぎ、排熱回収装置7の内圧が低下すると蒸発器14の下タンク18と凝縮器15の冷媒下流タンク25とを連通させて排熱回収を再開させるものである。
差圧弁16は、ハウジング26、弁体27、ダイアフラム28およびリターンスプリング(図示しない)を備える。
ハウジング26は、冷媒下流タンク25の内部に主要部が挿入される略筒状の固定部材であり、内部において弁体27を軸方向に移動可能に支持する。
ハウジング26の内部空間26aは、内外を連通する流入ポート26bによって、冷媒下流タンク25内と連通しており、冷媒下流タンク25の液冷媒が流入ポート26bを介して流入する。
また、ハウジング26の内部空間26aは、弁体27によって開閉される弁開口26cを介して蒸発器14の下タンク18内と連通しており、弁開口26cが開かれることで内部空間26aに導かれた液冷媒が下タンク18に戻される。
ダイアフラム28は、内圧と大気圧との圧力差によって弁体27を軸方向へ変位させるとともに、ダイアフラム28の反転動作によってヒステリシスを作り出して差圧弁16のハンチングを防ぐものである。
リターンスプリングは、大気側から弁体27を開弁方向へ付勢するバネ部材であり、リターンスプリングの付勢力を調整することで、ダイアフラム28が開弁方向へ反転する開弁圧Poおよびダイアフラム28が閉弁方向へ反転する閉弁圧Pcを調整できる。
開弁圧Poの具体的な一例を示すと、開弁圧Poは、冷却水の温度が暖機が完了する直前の温度(例えば70℃)で、エンジン1がアイドリング時(無負荷運転時)の排熱回収装置7の内圧に設定されている。
エンジン1が始動すると、それに伴いウォータポンプ8が作動し、冷却水がラジエータ回路3、ヒータ回路4および排熱回収回路5を循環する。一方、エンジン1の燃焼に伴い生成された排気ガスは、排気管2を流れ、触媒コンバータ6および排熱回収装置7の蒸発器14を経て大気中に放出される。
ここで、始動直後において、排熱回収装置7の内圧が閉弁圧Pcに達していない場合、差圧弁16が開いているため、凝縮器15で液化凝縮した凝縮水は差圧弁16を介して蒸発器14の下タンク18内に戻され、上記の排熱回収サイクルを繰り返す。
この結果、エンジン1の暖機が促進されることになり、エンジン1のフリクション低減がなされるとともに、エンジン暖機促進のための燃料増量期間(オートチョークの作動期間)の短縮等が図られて燃費性能が向上する。
排熱回収装置7の内圧が閉弁圧Pcに達すると、差圧弁16が閉じ、凝縮器15で液化凝縮した凝縮水は蒸発器14に戻らなくなる。すると、蒸発器14では水が補充されなくなるため、蒸発が減少して排熱回収サイクルが停止する。一方、凝縮器15では蒸発冷媒の凝縮が進むため、排熱回収装置7の内圧が低下する。
排熱回収装置7は、夏場のエンジン高負荷時等にオーバーヒートを回避する目的、および排熱回収装置7の内圧上昇による破損を回避する目的で、差圧弁16を閉じる。
この差圧弁16は、凝縮器15の凝縮能力を損なうことなく排熱回収装置7のコンパクト化を図るために、凝縮器15の冷媒下流タンク25内に挿入されて、冷媒下流タンク25内において開閉動作を行う。このため、凝縮器15の下側には、凝縮した液冷媒を貯溜可能な液冷媒貯溜部29が形成される。
即ち、実施例1の差圧弁16(具体的には、差圧弁16においてバルブの主要部を成す部分)は、液冷媒貯溜部29の内部に配置された構造となっている。
このように液冷媒貯溜部29の内部に差圧弁16を搭載する場合、従来技術においては流入ポート26bの向きは何ら考えられていなかったため、図2(a)に示すように、ハウジング26の上側に流入ポート26bを設けると、流入ポート26bの上端位置まで凝縮器15側の液冷媒の液面高H1が低下すると、液冷媒が内部空間26aへ導かれなくなり、蒸発器14へ液冷媒が戻らなくなってしまう。
このように設けることにより、差圧弁16が開かれた状態で、且つ蒸発器14側の液冷媒の液面高H2が蒸発により減少して弁開口26cの下端位置H0より低い状態であれば、液冷媒貯溜部29の液面高H1が弁開口26cの下端位置H0に低下するまで、液冷媒貯溜部29内の液冷媒を蒸発器14へ戻すことができる。
即ち、図2(a)で示したように、弁開口26cの下端位置H0より上側に液冷媒貯溜部29の液面高H1があるにもかかわらず、蒸発器14へ液冷媒が戻らなくなる不具合を回避することができる。
これにより、液冷媒の不足により排熱回収装置7の作動が停止する不具合を回避でき、排熱回収装置7の信頼性を高めることができる。
上記の実施例1の排熱回収装置7では、流入ポート26bの一部が弁開口26cの下端位置H0より上においてハウジング26の内外を連通する例を示した。
これに対し、この実施例2は、図4に示すように、流入ポート26bにおける液冷媒貯溜部29との導入口26b’(ハウジング26の外面で開口する部分)が、弁開口26cの下端位置H0より下側のみで開口するものである。この実施例2のように設けても、実施例1と同様の効果を得ることができる。
この実施例3は、図5に示すように、流入ポート26bにおける液冷媒貯溜部29との導入口26b’が、液冷媒貯溜部29内におけるハウジング26の外面の最下端のみで開口するものである。この実施例3のように設けても、実施例1と同様の効果を得ることができる。
上記実施例1では、差圧弁16のハウジング26が凝縮器15内における液冷媒貯溜部29の内部(具体的には、冷媒下流タンク25内)に配置される例を示した。
これに対し、実施例4は、差圧弁16のハウジング26を凝縮器15の下方に独立して設けられた液冷媒貯溜部29の内部に配置したものである。
このように、凝縮器15から独立した液冷媒貯溜部29に差圧弁16を設けても、実施例1と同様の効果を得ることができる。もちろん、流入ポート26bの位置は、実施例1〜3のいずれを適用しても良い。
上記の実施例では、凝縮器15のチューブ23aの長手方向を天地方向に向けて配置する例を示したが、凝縮器15のチューブ23aの長手方向は水平方向など他の方向であっても良い。
上記の実施例では、開閉弁の一例として差圧弁16を用いる例を示したが、冷却水の温度により開閉するサーモバルブ、運転状態(検出値、予測値)に基づいて制御装置(ECU)により開閉操作される電動バルブ(例えば、電磁弁)などを用いても良い。
上記の実施例では、車両に搭載されるループ式ヒートパイプに本発明を適用する例を示したが、固定設備として用いられるループ式ヒートパイプに本発明を適用しても良い。
上記の実施例では、被加熱流体の一例として冷却水を例に示したが、暖房装置における暖房用熱媒体など、他の流体であっても良い。
7 排熱回収装置(ループ式ヒートパイプ)
14 蒸発器
15 凝縮器
16 差圧弁(開閉弁)
26 ハウジング
26a 内部空間
26b 流入ポート
26b’ 導入口
26c 弁開口
27 弁体
29 液冷媒貯溜部
H0 弁開口の下端位置
Claims (4)
- 熱源流体と熱交換して冷媒を蒸発させる蒸発器(14)と、
被加熱流体と熱交換して蒸発冷媒を液化凝縮させる凝縮器(15)と、
この凝縮器(15)で凝縮した液冷媒を前記蒸発器(14)に戻す通路を開閉する開閉弁(16)と、
を備えるループ式ヒートパイプにおいて、
前記開閉弁(16)は、前記凝縮器(15)で凝縮した液冷媒を内部空間(26a)に導く流入ポート(26b)、および前記内部空間(26a)に導かれた液冷媒を前記蒸発器(14)へ戻す弁開口(26c)を備えたハウジング(26)と、前記弁開口(26c)を開閉可能な弁体(27)とを備え、
前記ハウジング(26)は、前記凝縮器(15)で凝縮された液冷媒が貯溜可能な液冷媒貯溜部(29)の内部に配置され、
前記流入ポート(26b)の少なくとも一部は、前記弁開口(26c)における天地方向の下端位置(H0)以下において前記ハウジング(26)の内外を連通することを特徴とするループ式ヒートパイプ。 - 請求項1に記載のループ式ヒートパイプにおいて、
前記ハウジング(26)は、前記凝縮器(15)の内部に配置されることを特徴とするループ式ヒートパイプ。 - 請求項1に記載のループ式ヒートパイプにおいて、
前記ハウジング(26)は、前記凝縮器(15)の下方に設けられた前記液冷媒貯溜部(29)の内部に配置されることを特徴とするループ式ヒートパイプ。 - 請求項1〜請求項3のいずれかに記載のループ式ヒートパイプにおいて、
このループ式ヒートパイプは、自動車の排熱回収を行う排熱回収装置(7)に適用され、
熱源流体は、燃料の燃焼により出力を発生するエンジン(1)の排気ガスであり、
被加熱流体は、前記エンジン(1)の冷却水であることを特徴とするループ式ヒートパイプ。
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