JP4726709B2 - 差圧弁 - Google Patents
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Description
差圧弁が用いられる装置の一例として、例えば特許文献1に開示したものが知られている。特許文献1は、熱媒体を加熱して蒸発させる蒸発器、および熱媒体を冷却して凝縮させる凝縮器を備えるループ式のヒートパイプの運転を、差圧弁の開閉により制御するものである。
このヒートパイプに用いられる差圧弁は、ヒートパイプの内圧が、大気圧(外圧の一例)に対して予め設定された閉弁圧に上昇すると、内外差圧により弁体が変位して凝縮器で凝縮された熱媒体を蒸発器に戻す熱媒体戻し通路を閉塞する。これにより、蒸発器における熱媒体が不足して蒸発が抑えられ、内圧が所定の安全圧力以下に抑えられる。
従来の差圧弁のヒステリシス手段は、金属薄板よりなるダイヤフラムを用いたものであり、このダイヤフラムは、内圧と外圧とを区画する区画壁を兼ねるものであった。
図9の差圧弁は、流体が通過可能な弁開口38を備えたハウジング31と、このハウジング31内において軸方向に変位可能に支持されるとともに、内圧と外圧の内外差圧に応じた変位力が与えられ、内外圧差に応じて弁開口38の開閉を行う弁体32と、弁体32を開弁方向へ付勢するリターンスプリング33と、弁体32が弁開口38を開く開弁圧と弁体32が弁開口38を閉じる閉弁圧との開閉差圧を作り出すヒステリシス手段とを具備する。
また、ダイヤフラムAは、ハウジング31内において内圧と外圧を区画するとともに、内圧と外圧の内外差圧を受けて、内外差圧に応じた変位力を弁体32に与えるものである。
ヒステリシス手段として用いられるダイヤフラムAは、軸方向へ切り替わった状態で保持力を発生する目的で、薄い金属板を用いる必要がある。このため、ヒステリシスを設けたことにより、弁体32の切り替わり回数が抑えられるものであっても、長期に使用されると金属疲労によりダイヤフラムAが破損する懸念がある。
内周におけるダイヤフラムAと弁体32の結合は、弁体32とワッシャBとの間でダイヤフラムAを挟み、弁体32の一部をワッシャBにカシメ付けることで実施していた。
外周におけるダイヤフラムAとハウジング31の固定は、ハウジング31を構成する部品のうちの2つの部材(ボディCとカバーD)の間でダイヤフラムAを挟み、3者(ダイヤフラムA、ボディC、カバーD)を溶接により接合する構造を採用していた。
請求項1の手段を採用する差圧弁は、軸方向へ変位可能な弁体(32)が内外差圧を受ける。これにより、ダイヤフラム(A)を用いなくても、内外差圧に応じた軸力が弁体(32)に作用する。
また、請求項1の手段を採用する差圧弁は、弁体(32)とハウジング(31)のクリアランスが、弁体(32)とハウジング(31)との間に配した環状のゴムリング(44)によってシールされる。これにより、溶接を用いることなく、ゴムリング(44)により内外の漏れを防ぐことができる。
即ち、請求項1の手段を採用する差圧弁は、溶接を用いることなく、ヒステリシスを意図的に作り出すことができ、差圧弁の製造コストを抑えることが可能になる。
請求項2の手段を採用する差圧弁は、熱媒体を加熱して蒸発させる蒸発器(13)、および熱媒体を冷却して凝縮させる凝縮器(15)を備えるループ式のヒートパイプに用いられる。
そして、ヒートパイプの内圧が、外圧に相当する大気圧に対して所定の閉弁圧(Pc)より上昇すると、凝縮器(15)で凝縮された熱媒体を蒸発器(13)に戻す通路を閉塞する。また、ヒートパイプの内圧が、外圧に相当する大気圧に対して閉弁圧(Pc)より低く設定された所定の開弁圧(Po)より下降すると、凝縮器(15)で凝縮された熱媒体を蒸発器(13)に戻す通路を開く。
これにより、ヒートパイプに用いられる差圧弁の製造コストを抑えることができ、結果的にヒートパイプのコストを抑えることができる。
請求項3の手段を採用する差圧弁は、ヒートパイプに用いられるものであり、このヒートパイプは、自動車の排熱回収を行う排熱回収装置(7)に適用される。そして、蒸発器(13)は、燃料の燃焼により出力を発生するエンジンの排気ガスの熱によって熱媒体を加熱蒸発させるものであり、凝縮器(15)は、エンジンの冷却水と熱交換して熱媒体を冷却凝縮するものである。
これにより、排熱回収装置(7)に用いられる差圧弁の製造コストを抑えることができ、結果的に排熱回収装置(7)のコストを抑えることができる。
差圧弁は、熱媒体(流体の一例)が通過可能な弁開口(38)を備えたハウジング(31)と、このハウジング(31)内において軸方向に変位可能に支持されるとともに、内圧(ヒートパイプの内圧)と外圧(例えば、大気圧)の内外差圧に応じた変位力が与えられ、内外圧差に応じて弁開口(38)の開閉を行う弁体(32)と、弁体(32)が弁開口(38)を開く開弁圧(Po)と弁体(32)が弁開口(38)を閉じる閉弁圧(Pc)との開閉差圧を作り出すヒステリシス手段とを具備する。
また、弁体(32)とハウジング(31)のクリアランスは、弁体(32)とハウジング(31)との間に配した環状のゴムリング(44)によってシールされる。
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施例との対応関係を示すものである。
熱回収装置を図3、図4を参照して説明する。
車両に搭載される水冷式のエンジン(内燃機関)1は、燃料の燃焼により車両走行用の回転出力を発生するものであり、エンジン1の発熱を抑える冷却水回路と、燃料を燃焼させた後の排気ガスを大気中に放出する排気管2とを備える。
冷却水回路は、ラジエータ回路3、ヒータ回路4および排熱回収回路5が設けられている。
排気管2には、排気ガスの浄化を行う触媒コンバータ6および排熱回収装置7が設けられている。
ラジエータ回路3、ヒータ回路4および排熱回収回路5を説明する。
ラジエータ回路3は、ウォータポンプ8により循環される冷却水を外気と熱交換して冷却するラジエータ9を備える。また、ラジエータ回路3には、ラジエータ9を迂回して冷却水を流すラジエータバイパス10が設けられている。さらに、ラジエータ回路3には、サーモスタット11が設けられている。
このサーモスタット11は、ラジエータ9を通過する冷却水量と、ラジエータバイパス10を通過する冷却水量との割合を調整して、冷却水の温度を所定の温度範囲(例えば80℃〜100℃)に保つものであり、例えば暖機時など冷却水温度が低い状態においてラジエータバイパス10側の冷却水量を増加させて、暖機を促進するようになっている。
排熱回収装置7は、熱媒体の蒸発と凝縮によって熱の運搬を行うループ式のヒートパイプを用いて、触媒コンバーダ6を通過した後の排気ガスの熱で、排熱回収回路5を流れる冷却水を加熱するものであり、ループ式のヒートパイプを成す蒸発器13および水タンク14内に収容される凝縮器15を一体的に設け、内圧に応じてヒートパイプの作動を制御する差圧弁16を組付けたものである。
ここで、蒸発器13と、水タンク14内に収容される凝縮器15は、耐腐食性を備える部材(ステンレス等)をろう付け等の接合技術で一体化したものであり、接合後に差圧弁16が排熱回収装置7に組付けられる。
また、この実施例では、凝縮器15を蒸発器13に接合して一体化させる例を示すが、蒸発器13と凝縮器15を別々に車両に搭載し、断熱配管等で接続する構造であっても良い。
この実施例では、熱媒体の一例として水を使用している。水の沸点は、1気圧で100℃であるが、排熱回収装置7内が減圧(例えば、0.01気圧)されて、沸点が5℃〜10℃にされている。なお、熱媒体として、水の他に、アルコール、フロロカーボン、フロン等を用いても良い。
熱交換部17は、例えば直線状に伸びるチューブとフィンとを交互に積層したものであり、車両搭載時にはチューブの長手方向が天地方向に向けられる。なお、排気効率を高める目的や、耐久性を高める目的でフィンを無くしても良い。
下タンク18は、熱交換部17の下部(車両搭載時における下側)に設けられて、差圧弁16を介して供給される凝縮水を各チューブに分配するものである。
上タンク19は、熱交換部17の上部(車両搭載時における上側)に設けられて、各チューブ内を上昇した蒸気を収集して凝縮器15に導くものである。
水タンク14は、蒸発器13との間を冷却水が流れる容器であり、例えば蒸発器13の側面に接合される水タンクプレートと、凝縮器15を収容する水タンクカップとを接合した構造を採用している。この水タンク14には、冷却水を水タンク14内に導く冷却水導入パイプ21と、水タンク14内を通過した冷却水を排出する冷却水排出パイプ22とが接合されている。
熱交換部23は、例えば直線状に伸びるチューブを所定の間隙(冷却水が通過する間隙)を隔てて積層したものであり、車両搭載時にはチューブの長手方向が天地方向に向けられる。なお、冷却水の加熱効率を高める目的でチューブ間にフィンや凹凸を設けても良い。
上流タンク24は、熱交換部23の上部(車両搭載時における上側)に設けられて、蒸発器13の上タンク19から供給される蒸気を各チューブに分配するものである。
下流タンク25は、熱交換部23の下部(車両搭載時における下側)に設けられて、各チューブ内で液化凝縮した凝縮水を収集して差圧弁16に導くものである。
具体的に、差圧弁16は、排熱回収装置7の内圧と、大気圧(外圧の一例)との差圧に基づいて、凝縮器15における下流タンク25と、蒸発器13における下タンク18との連通、あるいは遮断を行う開閉弁であり、大気圧が一定と仮定すると、(1)排熱回収装置7の内圧が所定の閉弁圧Pcに達すると、蒸発器13の下タンク18と凝縮器15の下流タンク25の連通を遮断し、(2)排熱回収装置7の内圧が所定の開弁圧Po(閉弁圧Pcより低い値)に低下すると、蒸発器13の下タンク18と凝縮器15の下流タンク25とを連通させる。なお、差圧弁16の詳細は後述する。
エンジン1が始動すると、それに伴いウォータポンプ8が作動し、冷却水がラジエータ回路3、ヒータ回路4および排熱回収回路5を循環する。一方、エンジン1の燃焼に伴い生成された排気ガスは、排気管2を流れ、触媒コンバータ6および排熱回収装置7の蒸発器13を経て大気中に放出される。
ここで、始動直後において、排熱回収装置7の内圧が閉弁圧Pcに達していない場合、差圧弁16が開いているため、凝縮器15で液化凝縮した凝縮水は差圧弁16を介して蒸発器13の下タンク18内に戻され、上記排熱回収サイクルを繰り返す。
この結果、エンジン1の暖機が促進されることになり、エンジン1のフリクション低減がなされるとともに、エンジン暖機促進のための燃料増量期間の短縮等が図られて燃費性能が向上する。
排熱回収装置7の内圧が閉弁圧Pcに達すると、差圧弁16が閉じ、凝縮器15で液化凝縮した凝縮水は蒸発器13に戻らなくなる。すると、蒸発器13では水が補充されなくなるため、蒸発が減少して排熱回収サイクルが停止する。一方、凝縮器15では蒸気の凝縮が進むため、排熱回収装置7の内圧が低下する。
差圧弁16を図1〜図2を参照して説明する。
差圧弁16は、ハウジング31、弁体32、リターンスプリング33およびヒステリシス手段を備える。
ハウジング31は、弁体32を軸方向に移動可能に支持する筒部と、この筒部の周囲に形成されたフランジ34とからなる。
筒部の図1(a)の左側は、排熱回収装置7に挿入される挿入筒35であり、この挿入筒35におけるフランジ34側の外周には、差圧弁16を排熱回収装置7に固定するための雄ネジ36が形成されている。この雄ネジ36の図1(a)の左隣部には、凝縮器15の下流タンク25内と挿入筒35の内部を連通するサイドポート37が形成されており、凝縮器15の下流タンク25内と蒸発器13の下タンク18とは、サイドポート37および挿入筒35の内穴を介して連通可能になっている。
挿入筒35の内穴は、図1(a)の左側に向かって大径となる段差部を備えており、この段差部の内側に凝縮水が通過可能な弁開口38が形成される。即ち、段差部の内径部が、弁体32が着座する弁シートとなっている。
フランジ34は、挿入筒35を排熱回収装置7に螺合した際に、排熱回収装置7の外面に当接するシール蓋であり、フランジ34における熱回収装置7の当接面には、シール用のOリングを配置する環状の溝34aが形成されている。
バルブシャフト42は、ピストン43によって筒部の内部で支持され、ピストン43の移動に伴って弁開口38を開閉する弁傘42aを備える。
ピストン43は、筒部の内側において軸方向に移動可能に支持されるものであり、内圧と大気圧の内外差圧に応じた軸方向の変位力(軸力)が与えられる。
即ち、弁体32は、ハウジング31内において軸方向に変位可能に支持されるとともに、内圧と外圧の内外差圧に応じた変位力が与えられて軸方向へ移動し、弁傘42aが弁開口38の開閉を行うものである。
バネ座40は、上述したように、バネ収容筒39の内部に螺合するものであり、そのねじ込み量を調整することで、リターンスプリング33の付勢力、即ち開弁圧Poおよび閉弁圧Pcを調整可能となっている。また、バネ座40は、軸方向に貫通する大気導入穴40aを備えており、この大気導入穴40aによってバネ収容筒39内が大気圧になる。なお、大気導入穴40aには、バネ座40をハウジング31に締結させる際の工具締結部(例えば、六角穴)が形成されている。この工具締結部は、大気導入穴40aとは別に設けるものであっても良い。
このため、差圧弁16が閉じる閉弁圧Pcと、差圧弁16が開く開弁圧Poとの開閉差圧が小さいと、差圧弁16がハンチングを起こしてしまう。そこで、差圧弁16には、閉弁圧Pcと開弁圧Poの開閉差圧を意図的に大きくするためのヒステリシス手段が設けられている。
閉弁圧Pcの具体的な一例を示すと、閉弁圧Pcは、冷却水の温度が暖機が完了する直前の温度(例えば70℃)で、エンジン1の運転負荷が中負荷の時(ハーフスロットル)の排熱回収装置7の内圧に設定されている。
開弁圧Poの具体的な一例を示すと、開弁圧Poは、冷却水の温度が暖機が完了する直前の温度(例えば70℃)で、エンジン1がアイドリング時(無負荷運転時)の排熱回収装置7の内圧に設定されている。
従来のヒステリシス手段は、金属薄板製のダイヤフラムA(符号、図9参照)を用いたものであり、ダイヤフラムAが反転して切り替わるのを利用して、閉弁圧Pcと開弁圧Poの開閉差圧を大きくするものであった。このため、従来の差圧弁16は、長期に使用されると金属疲労によりダイヤフラムAが破損する懸念があるとともに、溶接技術を用いてシールを行うことで製造コストが高くなる不具合がある。
そこで、上記の不具合を回避するために、この実施例の差圧弁16は次の技術を採用している。
(1)弁体32は、ハウジング31内において内圧と大気圧を区画するものであり、弁体32が内圧と大気圧の内外差圧を受ける。
具体的に、バルブシャフト42およびピストン43の図1(a)の左側の面が排熱回収装置7の内圧を受け、ピストン43の図1(a)の右側の面が大気圧を受ける構造になっており、内圧と大気圧との内外差圧を弁体32が直接受ける構造になっている。
具体的に、ピストン43は、略円柱形状を呈しており、ピストン43を移動可能に収容するハウジング31の内径は、ピストン43の外径より僅かに大径に設けられている。ピストン43の外周には、ゴムリング44を配置する環状溝が設けられており、その環状溝に配置したゴムリング44がピストン43とハウジング31との間で径方向に圧縮されて配置される。
ゴムリング44は、ピストン43とハウジング31との間において径方向に圧縮されて、ピストン43とハウジング31の間をシールするものであり、ハウジング31の内周面と軸方向に摺動する。ここで、ハウジング31においてゴムリング44が摺接する面は、平滑面に設けられている。なお、ゴムリング44は耐熱性、耐摺動性に優れた弾性変形可能なゴム材料よりなる。
具体的に、ピストン43には、リターンスプリング33の端部を収容する被圧迫筒47が一体に設けられている。この被圧迫筒47は、クリップスプリング46によって径方向に加圧力が与えられるものであり、弁体32が弁開口38を開閉動作する際に、バネ収容筒39の内部において軸方向に移動するものである。そして、被圧迫筒47の外周面には、図示右側に向かって「小径部45a→連続的に径寸法が増加するテーパ部45b→小径部45aより径寸法が大きい大径部45c」よりなる径寸法変化部45が設けられている。
さらに具体的に説明すると、弁体32が弁開口38を閉塞する状態では、図1(b)の実線に示すようにクリップスプリング46の凸部46aが小径部45a(または、テーパ部45bの小径側)に当接し、弁体32が弁開口38を開く状態では、図1(b)の破線に示すようにクリップスプリング46の凸部46aが大径部45cに当接するようになっている。
エンジン1の始動前は、蒸発器13は加熱されておらず、排熱回収装置7内は低圧になっており、内外差圧による軸力およびリターンスプリング33の付勢力によって、差圧弁16は開弁状態になっている。この開弁状態では、クリップスプリング46は径寸法変化部45の大径部45cにより押し広げられた状態となり、図2(a)の左図に示すように、クリップスプリング46の凸部46aが強い加圧力で大径部45cを保持する。
エンジン1が運転されて、蒸発器13が加熱されて内圧が上昇するにつれて、弁体32に係る閉弁方向の軸力が大きくなるが、内圧が閉弁圧Pcに達するまではクリップスプリング46の凸部46aが強い加圧力で大径部45cを保持するため、開弁状態が保たれる。
弁体32が閉弁方向へ移動を開始した後、凸部46aがテーパ部45bにかかると、図2(a)の右図に示すように、凸部46aの加圧力がテーパ部45bに作用して弁体32に閉弁力を付与する。これにより、弁体32が素早く閉弁方向へ移動する。
そして、弁体32が弁開口38に当接することで、弁体32の移動が停止するとともに、弁開口38が閉塞される。即ち、差圧弁16が閉弁状態になる。
そして、さらに内圧が下降し、弁体32に係る開弁方向の軸力が、クリップスプリング46によるテーパ部45bの保持力を上回る開弁圧Poに達すると、図2(b)の右図に示すように、テーパ部45bがクリップスプリング46を径方向に押し広げながら、弁体32が開弁方向へ移動を開始する。即ち、差圧弁16が開弁状態になる。
排熱回収装置7に搭載される差圧弁16は、軸方向へ変位可能な弁体32が内圧と大気圧とを直接に受ける。即ち、弁体32自身が内外差圧を受ける。これにより、ダイヤフラムA(符号、図9参照)を用いなくても、内外差圧に応じた軸力が弁体32に与えられる。
また、弁体32とハウジング31のクリアランスが、弁体32とハウジング31との間に配した環状のゴムリング44によってシールされる。これにより、溶接技術を用いることなく、ゴムリング44により内外の漏れを防ぐことができる。
即ち、実施例1の差圧弁16は、溶接を用いることなく、ヒステリシスを意図的に作り出すことができ、差圧弁16の製造コストを抑えることが可能になる。
また、差圧弁16のコストを抑えることができるため、結果的に差圧弁16を搭載した排熱回収装置7のコストを抑えることができる。
さらに、ダイヤフラムAを用いないため、長期使用によりダイヤフラムAが破損して漏れが生じる不具合がない。
この実施例2は、リターンスプリング33の内側の空間に、径寸法変化部45とクリップスプリング46を設けたものである。
具体的に、この実施例2の径寸法変化部45は、ピストン43の端部においてピストン43と一体的に形成された突起部48に設けられており、この突起部48の外周面には実施例1における被圧迫筒47と同様、図示右側に向かって「小径部45a→連続的に径寸法が増加するテーパ部45b→小径部45aより径寸法が大きい大径部45c」からなる径寸法変化部45が設けられている。
また、この実施例2では、径寸法変化部45とともにクリップスプリング46がハウジング31の内部に収容されるため、外力によってクリップスプリング46が変形する不具合が生じない。さらに、外部から付着する不純物(油汚れ等)による径寸法変化部45とクリップスプリング46の固着が防がれるとともに、クリップスプリング46の腐食が防がれる。
この実施例3は、実施例1で示した被圧迫筒47を軸方向の途中で切断した形状を呈する。即ち、実施例3の被圧迫筒47は、実施例1に開示した小径部45aのみで構成され、実施例1において設けられていたテーパ部45bおよび大径部45cは設けられていないものである。
そして、この実施例3の径寸法変化部45は、小径部45aと、被圧迫筒47の端部との切り替わりで構成される。
具体的に、閉弁状態では、図6(b)の実線に示すように、ゴム部材49が被圧迫筒47を外周側から圧迫し、開弁状態では、図6(b)の破線に示すように、ゴム部材49が被圧迫筒47から軸方向に外れて開放されるものである。
これによって、実施例1と同様の効果を得ることができる。
また、この実施例3では、実施例2と同様に、径方向加圧手段に相当するゴム部材49が径寸法変化部45とともにハウジング31の内部に収容されるため、外部から付着する不純物(油汚れ等)による径寸法変化部45とゴム部材49の固着が防がれる。
この実施例4は、径方向加圧手段を弁体32に設け、径寸法変化部45をハウジング31に設けるものである。
具体的に、ハウジング31の内周面に径寸法変化部45に相当する段差部を設け、その段差部の内側のピストン43に、径方向加圧手段として機能するゴム部材49(Oリング)を設けたものである。
閉弁状態では、図7(b)の実線に示すように、ゴム部材49が段差部の大径側に位置して弁体32に対する圧迫を弱め、開弁状態では、図7(b)の破線に示すように、ゴム部材49が段差部の小径側に位置して弁体32に対する圧迫を強める。
また、段差部には小径側から大径側に径寸法が連続的に拡大するテーパ部45bが設けられており、閉弁状態から開弁状態に切り替わる際に、ゴム部材49がテーパ部45bによる縮径によって大きな摺動抵抗を受けるようになっている。
これによって、実施例1と同様の効果を得ることができる。
また、この実施例4では、シール用のゴムリング44の他に、径方向加圧手段として作用するゴム部材49もシール部材として働くため、弁体32とハウジング31の間のシール箇所が2カ所に増えることになり、差圧弁16のシール性を向上させることができる。
この実施例5は、実施例1の差圧弁16の構造に対して、さらにシール構造を追加したものである。具体的に、ピストン43の外周に平板円盤形状のフランジ50を設け、ハウジング31がフランジ50を軸方向へ移動可能な状態で挟み、フランジ50の軸方向の両側に、フランジ50とハウジング31との間で挟まれるOリング51、52を配置した構造を採用するものである。
なお、ハウジング31は、2つのOリング51、52を介してフランジ50を軸方向から挟み付けるために、軸方向に2つに分割されており、ネジ等の図示しない軸方向の締結手段により、分割されたハウジング31が一体化されている。
このように、摺動するゴムリング44に加え、フランジ50を挟み付けるOリング51、52が追加されることで、差圧弁16のシール性が向上する。
上記の実施例では、ループ式のヒートパイプの作動切換を行う差圧弁16に本発明を適用する例を示したが、ヒートパイプ以外に用いられる差圧弁16に本発明を広く適用可能なものである。
上記の実施例では、内圧が上昇すると閉弁し、逆に内圧が低下すると開弁する差圧弁16に本発明を適用したが、内圧が上昇すると開弁し、逆に内圧が低下すると閉弁する差圧弁16に本発明を適用しても良い。
上記の実施例では外圧を大気圧とする例を示したが、外圧として所定の圧力を与えても良い。
7 排熱回収装置(ヒートパイプ)
13 蒸発器
15 凝縮器
16 差圧弁
31 ハウジング
32 弁体
38 弁開口
44 ゴムリング
45 径寸法変化部
46 クリップスプリング(径方向加圧手段)
49 ゴム部材(径方向加圧手段)
Pc 閉弁圧
Po 開弁圧
Claims (3)
- 流体が通過可能な弁開口(38)を備えたハウジング(31)と、
このハウジング(31)内において軸方向に変位可能に支持されるとともに、内圧と外圧の内外差圧に応じた変位力が与えられ、内外圧差に応じて前記弁開口(38)の開閉を行う弁体(32)と、
この弁体(32)が前記弁開口(38)を開く開弁圧(Po)と前記弁体(32)が前記弁開口(38)を閉じる閉弁圧(Pc)との開閉差圧を作り出すヒステリシス手段と、
を具備する差圧弁において、
(a)前記弁体(32)は、前記ハウジング(31)内において内圧と外圧を区画して、内圧と外圧の内外差圧を受けるものであり、
(b)前記弁体(32)と前記ハウジング(31)のクリアランスは、前記弁体(32)と前記ハウジング(31)との間に配した環状のゴムリング(44)によってシールされるものであり、
(c)前記ヒステリシス手段は、前記弁体(32)または前記ハウジング(31)の一方に設けられ、軸方向に向かって径寸法が変化する径寸法変化部(45)と、前記弁体(32)または前記ハウジング(31)の他方に設けられ、前記径寸法変化部(45)に径方向の加圧力を与える径方向加圧手段(46、49)とを備え、
前記弁体(32)の変位に対する前記径方向加圧手段(46、49)の加圧力の変化により、開閉差圧を作り出すことを特徴とする差圧弁。 - 請求項1に記載の差圧弁において、
この差圧弁は、熱媒体を加熱して蒸発させる蒸発器(13)、および熱媒体を冷却して凝縮させる凝縮器(15)を備えるループ式のヒートパイプに用いられ、
このヒートパイプの内圧が、外圧に相当する大気圧に対して所定の閉弁圧(Pc)より上昇すると、前記凝縮器(15)で凝縮された熱媒体を前記蒸発器(13)に戻す通路を閉塞し、
前記ヒートパイプの内圧が、外圧に相当する大気圧に対して前記閉弁圧(Pc)より低く設定された所定の開弁圧(Po)より下降すると、前記凝縮器(15)で凝縮された熱媒体を前記蒸発器(13)に戻す通路を開くことを特徴とする差圧弁。 - 請求項2に記載の差圧弁において、
前記ヒートパイプは、自動車の排熱回収を行う排熱回収装置(7)に適用されるものであり、
前記蒸発器(13)は、燃料の燃焼により出力を発生するエンジンの排気ガスの熱によって熱媒体を加熱蒸発させ、
前記凝縮器(15)は、前記エンジンの冷却水と熱交換して熱媒体を冷却凝縮することを特徴とする差圧弁。
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