JP4682420B2 - 木質化粧部材用反応性ホットメルト接着剤及び木質化粧部材の製造方法 - Google Patents
木質化粧部材用反応性ホットメルト接着剤及び木質化粧部材の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、システムキッチン、音響機器、玄関ドア、屋内ドア等の化粧板、家具、棚板、机やテーブルの天板、ドアモール、窓枠、敷居、手摺等を製造するのに用いられる、プラスチック材料と木質材料との接着に効果的な反応性ホットメルト接着剤、及び木質化粧部材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
木質化粧部材は、パーティクルボード(PB)、中密度繊維板(MDF)、合板等の木質材料に、意匠性のあるプラスチック製のフィルムやシートを貼り合わせることで製造されている。この貼り合わせの際、ホットメルト接着剤が広く使用されている。
【0003】
ホットメルト接着剤は、アプリケーターで加熱溶融した接着剤を被着体に塗布・圧着して貼り合わせた後、冷却することで接着剤が固化し、これにより接着力が発現するため、作業性が良好であるという特徴を有する。ホットメルト接着剤としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)系、低密度ポリエチレン(LDPE)系、アタクチックポリプロピレン(APP)系、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)系、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)系、スチレン−エチレン−スチレン共重合体(SES)系、ブチルゴム系、ポリアミド系、ポリエステル系、ウレタン系等が挙げられる。
【0004】
ホットメルト接着剤は、加熱溶融して貼り合わせるということから、耐熱性がその他の接着剤と比較して、優れているとは言えないものである。このため、初期接着力と耐熱性とを兼ね備えた反応性ホットメルト接着剤が検討されている。この場合の反応方法として加熱、酸化、紫外線照射、電子線照射、水分や湿気、二液型(主剤/硬化剤タイプ)等が提案されている。このうち最も簡便で、実用的なのが水分や湿気で硬化反応が進行するタイプのものである。このようなタイプのものとして、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを主成分とする反応性ホットメルト接着剤が知られている。例えば、特開平5−25455号公報は、ハニカムサンドイッチ構造パネルの製造に適している反応性ホットメルト接着剤が開示されている。この反応性ホットメルト接着剤は、少なくとも融点が50℃以上の結晶性ポリエステルポリオールと、ガラス転移温度が0℃以上の非結晶性ポリエステルポリオールを用いたイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーからなるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
木質の基材と、プラスチックのフィルム又はシートの接着、特に表面が曲面や凹凸を有する異形断面の木質基材に、プラスチックのフィルム又はシートを連続して巻き付けながら接着するプロファイルラッピング加工には、有機溶剤系の接着剤が用いられてきた。しかし、低沸点溶剤を用いた接着剤は、溶剤の蒸発による気化熱で、表面は急速に冷却されるが、特に夏期や梅雨期のように多湿期にあっては空気中の水蒸気が接着剤塗布面で結露し、接着力が低下するという問題がある。
【0006】
近年、プロファイルラッピング加工を含めた木質材料とプラスチック材料との接着剤に、ウレタン系の反応性ホットメルト接着剤が用いられてきている。このウレタン系の反応性ホットメルト接着剤は、有機溶剤を用いていないので、上記のような結露の問題は解決できる。しかし、特開平5−25455号公報等のような従来のウレタン系の反応性ホットメルト接着剤は、長時間溶融状態にあると、粘度が増加するため、作業性が低下するといった問題がある。
【0007】
本発明の目的は、プラスチック材料と木質材料とを接着することで得られる木質化粧部材を製造する際に用いられ、初期接着力と最終接着力が十分であり、溶融時の粘度安定性が良好な、反応性ホットメルト接着剤及び木質化粧部材の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は研究検討した結果、特定のポリエステルポリオールを用いたイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーからなる反応性ホットメルト接着剤が、上記課題を解決することを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(3)に示されるものである。
(1)高分子ポリオール及び有機ポリイソシアネートを反応させて得られる、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーからなる反応性ホットメルト接着剤であって、該高分子ポリオールが、少なくとも数平均分子量が2,000〜10,000の結晶性ポリオールと、数平均分子量が300〜800の非結晶性ポリオールを含有し、かつ、結晶性ポリオールと非結晶性ポリオールの質量比が、結晶性ポリオール/非結晶性ポリオール=90/10〜40/60であり、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーのウレタン基濃度が0.5〜2mmol/gであること、を特徴とする木質化粧部材用反応性ホットメルト接着剤。
【0010】
(2)高分子ポリオール、鎖延長剤、及び有機ポリイソシアネートを反応させて得られる、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーからなる反応性ホットメルト接着剤であって、該高分子ポリオールが、少なくとも数平均分子量が2,000〜10,000の結晶性ポリオールと、数平均分子量が300〜800の非結晶性ポリオールを含有し、かつ、結晶性ポリオールと非結晶性ポリオールの質量比が、結晶性ポリオール/非結晶性ポリオール=90/10〜40/60であり、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーのウレタン基濃度が0.5〜2mmol/gであること、を特徴とする木質化粧部材用反応性ホットメルト接着剤。
【0011】
(3)プラスチック材料と木質材料とを、前記(1)又は(2)の木質化粧部材用反応性ホットメルト接着剤で接着することを特徴とする木質化粧部材の製造方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明に使用される原料について説明する。
本発明に使用される高分子ポリオールは、少なくとも結晶性ポリオールと非結晶性ポリオールを含有するものである。結晶性ポリオールの融解熱は60mJ/mg以上が好ましく、80mJ/mg以上が特に好ましい。また、結晶性ポリオールの融解開始温度は10℃以上が好ましく、20℃以上が特に好ましい。
【0013】
なお、本発明におけるポリオールの「結晶性」とは、昇温速度:10℃/分における示差走査熱量測定(DSC)で測定された融解熱が60mJ/mg以上であることをいう。また、「非結晶性」とは、前記条件で測定した融解熱が60mJ/mg未満又は融解熱が測定されないことをいう。
【0014】
結晶性ポリオールの数平均分子量は、2,000〜10,000であり、好ましくは3,000〜8,000である。数平均分子量が下限未満の場合、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの結晶性が低下するため、最終接着強度が不十分となりやすい。また、ウレタン基濃度が大きくなりすぎるため、加熱溶融時において粘度増加が大きくなりやすい。数平均分子量が上限を越える場合は、初期接着強度が不十分となりやすい。
【0015】
結晶性ポリオールとしては、直鎖脂肪族ポリカルボン酸と直鎖脂肪族低分子ポリオールから得られるポリエステルポリオール、直鎖脂肪族低分子ポリオールを開始剤として側鎖を有しない環状エステルモノマー又は環状エーテルモノマーを開環付加させて得られるポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオール、直鎖脂肪族ポリオールと低分子カーボネート化合物から得られるポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0016】
前記直鎖脂肪族ポリカルボン酸としては、コハク酸、酒石酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、クルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナメチレンジカルボン酸、デカメチレンジカルボン酸、ウンデカメチレンジカルボン酸、ドデカメチレンジカルボン酸等が挙げられる。
【0017】
前記直鎖脂肪族低分子ポリオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等が挙げられる。
【0018】
前記側鎖を有しない環状エステルモノマーとしては、ε−カプロラクトン等が挙げられる。
【0019】
前記側鎖を有しない環状エーテルモノマーとしては、エチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0020】
前記低分子カーボネート化合物としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネート類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート類等が挙げられる。
【0021】
本発明において、特に好ましい結晶性ポリオールは、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールから選択される直鎖脂肪族低分子ポリオールと、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸から選択される直鎖脂肪族ポリカルボン酸から得られるポリエステルポリオール、直鎖脂肪族低分子ポリオールを開始剤としてε−カプロラクトンを開環付加させて得られるポリカプロラクトンポリオール、直鎖脂肪族低分子ポリオールを開始剤としてテトラヒドロフランを開環付加させて得られるポリ(オキシテトラメチレン)ポリオールから選択されるものである。
【0022】
非結晶性ポリオールの数平均分子量は300〜800であり、好ましくは400〜600である。数平均分子量が下限未満の場合、ウレタン基濃度が大きくなりすぎるため、加熱溶融時において粘度増加が大きくなりやすい。数平均分子量が上限を越える場合は、製造時において粘度が大きくなり、目的とする接着剤そのものが得られにくい。
【0023】
非結晶性ポリオールとしては、側鎖含有低分子ポリオールと直鎖脂肪族ポリカルボン酸から得られるポリエステルポリオール、低分子ポリオールと芳香族ポリカルボン酸と直鎖脂肪族ポリカルボン酸から得られるポリエステルポリオール、低分子ポリオールを開始剤として側鎖を有する環状エステルモノマー又は環状エーテルモノマーを開環付加させて得られるポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオール、側鎖含有低分子ポリオールと低分子カーボネート化合物から得られるポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0024】
前記側鎖含有低分子ポリオールとしては、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ノルマルブチル−1,3−プロパンジオール、ダイマー酸グリコール、トリメチロールプロパン、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸等が挙げられる。
【0025】
本発明において低分子ポリオールは、直鎖脂肪族低分子ポリオール、側鎖含有低分子ポリオール、その他の低分子ポリオールに分類されるが、このその他の低分子ポリオールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、水素添加ビスフェノールA、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン等が挙げられる。
【0026】
前記芳香族ポリカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0027】
前記側鎖を有する環状エーテルモノマーとしては、プロピオンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等が挙げられる。
【0028】
前記側鎖を有する環状エステルモノマーとしては、γ−バレロラクトン等が挙げられる。
【0029】
本発明においては、結晶性ポリオール、非結晶性ポリオールとも、平均官能基数は2〜4が好ましく、2〜3が特に好ましい。
【0030】
本発明において、特に好ましい非結晶性ポリオールは、側鎖含有低分子ポリオール、直鎖脂肪族低分子ポリオール、イソフタル酸、テレフタル酸を用いたポリエステルポリオールであり、特に側鎖含有低分子ポリオールはネオペンチルグリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ノルマルブチル−1,3−プロパンジオールから選択されるものであり、直鎖脂肪族低分子ポリオールはエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールから選択されるものである。
【0031】
本発明において、結晶性ポリオールと非結晶性ポリオールの質量比は、結晶性ポリオール/非結晶性ポリオール=90/10〜40/60であり、好ましくは結晶性ポリオール/非結晶性ポリオール=80/20〜50/50である。結晶性ポリオールが多すぎる場合は、初期接着強度が低下しやすい。少なすぎる場合は最終接着強度が低下しやすい。
【0032】
本発明に使用される鎖延長剤としては、前述の高分子ポリオールを構成する低分子ポリオールが挙げられる。
【0033】
本発明で使用される有機ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリメチルキシリレンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサヘチレン−1,6−ジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサヘチレン−1,6−ジイソシアネート等の脂肪族、脂環族ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、オルトキシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、パラキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートやこれらのビウレット変成体、カルボジイミド変成体、ウレトンイミン変成体、ウレトジオン変成体、イソシアヌレート変成体、上記ポリイソシアネートの混合物が挙げられる。本発明においては、接着強度、反応性、蒸気圧等を考慮すると4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートが最も好ましい。
【0034】
本発明の反応性ホットメルト接着剤は、上記の高分子ポリオール、必要に応じて鎖延長剤、有機ポリイソシアネートを反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーからなる。反応手順としては、有機ポリイソシアネートを少量ずつ有機ポリイソシアネート以外の原料を反応させてもよいし、有機ポリイソシアネートの全量を一度に反応させてもよい。反応の際、公知のウレタン化触媒を用いることができる。具体的には、ジオクチルチンジラウレート等の有機金属化合物、トリエチレンジアミン等の有機アミンやその塩等が挙げられる。ウレタン化反応の際、イソシアネート基と水酸基の最終仕込みモル比は、イソシアネート基/水酸基=1.1〜5が好ましく、特に1.2〜3が好ましい。
【0035】
このようにして得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーのイソシアネート含量は0.1〜5質量%が好ましく、特に0.5〜4.5質量%が最も好ましい。イソシアネート含量が0.1質量%未満の場合は、ウレタンプレポリマーの分子量が大きすぎるため溶融粘度が大きくなり作業性が悪化する。また、ウレタンプレポリマーの中の架橋点が少ないため、十分な耐熱性、耐久性が得られない。イソシアネート含有量が5質量%を越える場合は、ウレタンプレポリマーの分子量が小さすぎて、機械的強度が発現しない。
【0036】
本発明に用いられるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーのウレタン基濃度は0.5〜2mmol/gが好ましく、特に0.6〜1.8mmol/gが好ましい。ウレタン基濃度が0.5mmol/g未満の場合は、接着強度が低下しやすい。2mmol/gを越えると得られるホットメルト接着剤の加熱溶融時の粘度安定性が低下しやすい。
【0037】
更に、本発明の反応性ホットメルト接着剤は、粘着付与剤を添加することができる。粘着付与剤として、テルペン樹脂系、石油樹脂系、ロジン樹脂系、テルペン−フェノール樹脂系、クマロン−インデン樹脂系、スチレン樹脂系、イソプレン樹脂系、キシレン樹脂系等が挙げられる。テルペン樹脂系の粘着付与剤としては、ヤスハラケミカルのYSレジンシリーズ、ハーキュレス製のピッコライトシリーズ等が挙げられる。石油樹脂系の粘着付与剤としては、東燃化学のエスコレッツ1000シリーズ、三井化学のハイレッツシリーズ、荒川化学工業のアルコンシリーズ等が挙げられる。ロジン樹脂系の粘着付与剤としては、荒川化学工業のエステルガムシリーズ、スーパーエステルシリーズ等が挙げられる。テルペン−フェノール樹脂系の粘着付与剤としては、ヤスハラケミカルのYSポリスターシリーズ、マイティエースシリーズ等が挙げられる。クマロン−インデン樹脂系の粘着付与剤としては、新日鐵化学のクマロンシリーズ等が挙げられる。スチレン樹脂系の粘着付与剤としては、ハーキュレス製のピコラスティックシリーズ等が挙げられる。イソプレン樹脂系の粘着付与剤としては、東燃化学のエスコレッツ5000シリーズ等が挙げられる。キシレン樹脂系の粘着付与剤としては、三菱ガス化学のニカノールシリーズ等が挙げられる。通常これらの添加量は質量比で、ウレタンプレポリマーに対して200質量%以下であり、好ましくは150質量%以下である。また、通常のホットメルト接着剤に使用されている充填剤、ワックス、可塑剤、エラストマー、酸化防止剤、紫外線吸収剤、触媒等を添加することができる。
【0038】
次いで、本発明の木質化粧部材の製造方法について説明する。まず、通常シート又はフィルム状のプラスチック材料が、例えばロール状物から供給され、該プラスチック材料の片面に、上記の反応性ホットメルト接着剤が塗布される。場合によっては、木質材料に塗布してもよい。上記接着剤の塗布は、ギヤポンプ式アプリケーター、プランジャー式アプリケーター等で接着剤を加熱溶融した後、ナイフコーター、ロールコーター、スプレー等を使用して行われる。
【0039】
上記ホットメルト接着剤の加熱溶融温度は、低くなると接着強度が低下することがあり、高くなるとプラスチック材料の熱変形温度及び接着剤の熱安定性の低下を引き起こすおそれがあるため、90〜130℃が好ましい。また、上記ホットメルト接着剤の塗布厚みは、薄くなると接着性が低下することがあり、厚くなるとコストの上昇を招くので、10〜100μmが好ましく、より好ましくは30〜70μmである。
【0040】
次いで、反応性ホットメルト接着剤が塗布されたプラスチック材料を、PBやMDF等の芯材の表面に沿って被覆しロールプレス等で圧着して接着することにより、木質化粧部材が得られる。芯材の特定の面だけに接着するのではなく、プラスチックのフィルム又はシートを連続して芯材に巻き付けながら接着するプロファイルラッピング加工も適用できる。圧着する際の圧力は、1〜100N/cm(線圧)が好ましい。この圧着は、熱による芯材の変形やふくれを抑えるために、プラスチック材料に上記ホットメルト接着剤を塗布後30秒以内に行うことが好ましい。
【0041】
このプラスチック材料は、フィルム又はシート状のものが好ましい。プラスチックの種類としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ナイロン、ポリテトラフロロエチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ABS樹脂等が挙げられる。本発明では、焼却処理時に塩化水素、シアンガス等の発生を伴わず、また、耐アルカリ性を有しかつ安価であるということを考慮すると、特にポリオレフィン系樹脂を用いるのが好ましい。フイルム又はシートの厚さは特に制限されるものではないが、経済性、実用性、印刷適性から一般には、10〜200μm程度のものが好ましい。
【0042】
木質材料の種類としては、合板、PB、オリエンテッドストランドボード(OSB)、ウェイファーボード、ラミネーテッドベニアランバー(LVL)、ラミネーテッドストランドランバー(LSL)、パラレルストランドランバー(PSL)、ハードボード、MDF、インシュレーションボード等が挙げられる。
【0043】
【実施例】
次に、本発明の実施例について詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定して解釈されるものではない。特に断りのない限り、実施例及び比較例中の「%」は「質量%」を意味する。
【0044】
〔反応性ホットメルト接着剤の製造〕
実施例1
攪拌機、温度計、窒素シール管、冷却器のついた、容量:1Lの反応器に、ポリオール−C1を369g、ポリオール−A1を369g仕込み、70℃にて均一に混合した。次いでMDIを262g仕込み、90℃で3時間反応させて、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーからなる反応性ホットメルト接着剤HM−1を得た。HM−1のイソシアネート含量は2.0%であった。また、原料仕込みから算出したウレタン基濃度は1.620mmol/gであった。
【0045】
実施例2〜7、比較例1〜7
実施例1と同様な方法で、表1、2に原料、配合でイソシアネート基末端プレポリマーからなる反応性ホットメルト接着剤HM−2〜13を得た。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
実施例1〜7、比較例1〜7、表1、2において
ポリオール−C1:1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸から得られるポリエステルジオール
数平均分子量=5,000
DSCによる融解熱=80mJ/mg
DSCによる融解開始温度=50℃
ポリオール−C2:エチレングリコールを開始剤としたポリカプロラクトンジオール
数平均分子量=4,000
DSCによる融解熱=108mJ/mg
DSCによる融解開始温度=55℃
ポリオール−C3:1,4−ブタンジオールを開始剤としたポリ(オキシテトラメチレン)ジオール
数平均分子量=3,000
DSCによる融解熱=106mJ/mg
DSCによる融解開始温度=22℃
ポリオール−A1:イソフタル酸(iPA)、テレフタル酸(tPA)、エチレングリコール(EG)、ネオペンチルグリコール(NPG)から得られるポリエステルジオール
iPA/tPA=1/1、EG/NPG=1/1(モル比)
数平均分子量=500
ポリオール−A2:iPA、tPA、EG、NPGから得られるポリエステルジオール
iPA/tPA=1/1、EG/NPG=1/1(モル比)
数平均分子量=800
ポリオール−A3:1,2−プロピレングリコールを開始剤としたポリ(オキシプロピレン)ジオール
数平均分子量=2,000
ポリオール−A4:iPA、tPA、EG、NPGから得られるポリエステルジオール
iPA/tPA=1/1、EG/NPG=1/1(モル比)
数平均分子量=1,000
※融解熱、融解開始温度測定条件:昇温速度=10℃/分
※ポリオール−A1〜A4は、DSCによる融解状態が確認されなかった。
NPG :ネオペンチルグリコール
MDI :4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート
【0049】
〔加熱溶融時の粘度安定性測定〕
得られた反応性ホットメルト接着剤を120℃にて加熱溶融する。粘度を溶融してから8時間後に測定した。
評価
◎:粘度上昇率50%未満
○:粘度上昇率50以上80%未満
△:粘度上昇率80%以上100%未満
×:粘度上昇率100%以上
【0050】
表1、2より、実施例の反応性ホットメルト接着剤の製造は可能であったが、HM−12はウレタン基濃度が大きすぎるため、HM−14は非結晶性ポリオールの数平均分子量が大きすぎるため製造できなかった。
【0051】
上記実施例及び比較例で得られた反応性ホットメルト接着剤について、下記の性能評価を行い、その結果を表3、4に示す。
【0052】
〔化粧シート被覆材料サンプルの作製〕
実施例8
プロフィールラミネーター(デュスポール社製PURラッピング機)を用いて、厚さ80μmの木目が印刷されたポリプロピレンシートを12m/分の速度で供給し、HM−1を120℃に加熱溶融し、ナイフコーターで40μmの厚さとなるように絵柄層上に塗布した後、直ちに中密度繊維板(MDF)からなる芯材の表面から裏面の両縁部にかけて包み込むように被覆しながら、圧着ローラーで圧着した。塗布から圧着が完了するまでの時間は約12秒であった。次いで、また、単にポリプロピレンシートに反応性ホットメルト接着剤を40μmの厚さに塗布しただけのシートサンプルを作成した。
【0053】
尚、上記芯材としては、長さ2m、幅100mm、厚さ20mmのものを使用した。また、プロフィールラミネーターとしては、木目印刷ポリプロピレンシートを連続的に送り出す供給ロール、反応性ホットメルト接着剤をポリプロピレンシートに塗布するナイフコーター、一定長さの芯材を供給する芯材供給機、ポリプロピレンシートを芯材に被覆しながら芯材の曲面や凹凸面に沿って圧着する圧着ローラー及びポリプロピレンシートの長さに合わせて切断するカッターを備えているものを使用した。
【0054】
実施例9〜14、比較例8〜12
接着剤を表3又は4に示すものに変更する以外は、実施例8と同様にして化粧シート被覆材料サンプル及びシートサンプルを得た。
【0055】
上記実施例及び比較例で得られた化粧シート被覆材料を20℃、相対湿度60%で10分、24時間養生した後、以下の性能評価を行い、その結果を表3、4に示した。なお、目視による接着性評価は、養生前に行った。
【0056】
(1)接着性(目視)
接着直後の化粧シート被覆材料サンプル表面の膨れや剥がれの有無を目視観察により評価した。
評価
○:膨れ、剥がれ等の異常がない。
△:一部に膨れ、剥がれ等の異常が見られる。
×:全面にわたって膨れ、剥がれ等の異常が見られる。
(2)接着性(官能性)
20℃、相対湿度60%で10分、24時間養生した後の化粧シート被覆材料サンプルを手でシートと芯材を剥がしたときの接着状態により評価する。
評価
○:シートが破壊する。
△:剥がれるが、抵抗力が大きい。
×:抵抗なく剥がれる。
(3)ピール強度
20℃、相対湿度60%で10分、24時間養生した後の化粧シート被覆材料サンプルを引張試験機にて180°剥離試験を行い、180°ピール強度を評価する。
引張速度 :100mm/分
測定雰囲気:相対湿度50%、25℃
なお、数値の横の「○」はシートが破壊されたことを示す。
(4)耐水性
化粧シート被覆材料サンプルを70℃の温水中に2時間浸漬後、70℃の乾燥機内で20時間乾燥し、膨れや剥がれの有無を目視観察により評価した。
評価
○:膨れ、剥がれ等の異常がない。
△:一部に膨れ、剥がれ等の異常が見られる。
×:全面にわたって膨れ、剥がれ等の異常が見られる。
(5)テープ剥離
20℃、相対湿度60%で10分、24時間養生した後のシートサンプルの接着剤塗布面に粘着テープを貼り、急激に剥がす。このときの接着剤の残存状態を評価。
評価
○:接着剤がほとんどシートから剥がれない。
△:多少剥がれる。
×:ほとんど剥がれる。
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
表3、4より、本発明の反応性ホットメルト接着剤は良好な性能を示した。一方、比較例におけるHM−8〜10は非結晶性ポリオールを用いていないため、粘着性が認められず、また初期接着力、最終接着力共に非常に小さいものであった。また、接着剤層とポリプロピレンシート間で剥離が見られた。一方、HM−11、13は結晶性ポリオールを用いていないため、多少の粘着性は認められたが、接着剤層の強度が不十分なため、接着力としては小さいものであった。
【0060】
【発明の効果】
本発明の反応性ホットメルト接着剤は、非結晶性ポリオールによって接着剤塗布直後の初期接着強度が発現し、結晶性ポリオールによって最終的な接着強度が発現するために、この非結晶性ポリオールと結晶性ポリオールのバランスをとったものである。また、ポリオールの数平均分子量を適宜選択することにより、熱溶融時の安定性向上という、優れた性能を有するものである。このため、本発明の反応性ホットメルト接着剤は、プロファイルラッピング加工が可能であり、これ以外にも様々な用途に用いることができる。
Claims (3)
- 高分子ポリオール及び有機ポリイソシアネートを反応させて得られる、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーからなる反応性ホットメルト接着剤であって、該高分子ポリオールが、少なくとも数平均分子量が2,000〜10,000の結晶性ポリオールと、数平均分子量が300〜800の非結晶性ポリオールを含有し、かつ、結晶性ポリオールと非結晶性ポリオールの質量比が、結晶性ポリオール/非結晶性ポリオール=90/10〜40/60であり、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーのウレタン基濃度が0.5〜2mmol/gであること、を特徴とする木質化粧部材用反応性ホットメルト接着剤。
- 高分子ポリオール、鎖延長剤、及び有機ポリイソシアネートを反応させて得られる、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーからなる反応性ホットメルト接着剤であって、該高分子ポリオールが、少なくとも数平均分子量が2,000〜10,000の結晶性ポリオールと、数平均分子量が300〜800の非結晶性ポリオールを含有し、かつ、結晶性ポリオールと非結晶性ポリオールの質量比が、結晶性ポリオール/非結晶性ポリオール=90/10〜40/60であり、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーのウレタン基濃度が0.5〜2mmol/gであること、を特徴とする木質化粧部材用反応性ホットメルト接着剤。
- プラスチック材料と木質材料とを、請求項1又は2記載の木質化粧部材用反応性ホットメルト接着剤で接着することを特徴とする木質化粧部材の製造方法。
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