JP4681073B2 - 光学レンズ - Google Patents

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Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、キセノンランプや青紫レーザーを光源とする光の集光等に好適に用いることができる樹脂製の光学レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
透明樹脂を用いた光学レンズは、無機ガラスからなる光学レンズと比べて、軽量であり、破損しにくく、又成形が容易であるとの特徴を有するので、各種の光学機器に広く用いられている。光学レンズの成形に用いられる透明樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂が知られている。
【0003】
しかし、これらの成形体は、耐光性や耐熱性が不十分であり光照射により変色する、老化する等の問題がある。又ポリメチルメタクリレートやポリカーボネートから得られる成形体は引っ掻き抵抗性が低く、その光学レンズは表面硬度が不十分であり、表面保護層が必要であるとの問題がある。
【0004】
光学レンズを形成するための透明樹脂としては、特許文献1、特許文献2、特許文献3等に開示されている透明ポリアミドも考えられる。そして、特許文献4には、高い表面硬度を有する光学レンズとして、a)炭素数が6から24の少なくとも1種の環状脂肪族ジアミン、これとほぼ等モルの割合のb)炭素数が8から16の少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸、及びc)さらに20モル%までのポリアミド形成性モノマー類から構成される無色、透明の共重合ポリアミド類から作られる無被覆レンズが提案されている。
【特許文献1】
特開昭62−121726号公報
【特許文献2】
特開昭63−170418号公報
【特許文献3】
特開2004−256812号公報
【特許文献4】
特開平9−137057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これらの透明ポリアミドを用いた光学レンズは、耐熱性にすぐれ、紫外線抵抗性には優れるものがあるものの、キセノンランプや青紫レーザー(405nm)を光源とし、光の照射量が高い場合、変色、変形、老化等を生じるとの問題がある。ここで、キセノンランプとは、キセノンガスを封入したガラス管の中に電圧をかけて放電させることによって光を得るランプで、消費電力が低く、長寿命であると言われている。また、可視光域の分光分布が太陽光のそれに近く、かつ始動から光束が安定するまでにほとんど時間を要しないとの特徴も有するので、所謂ストロボ等の発光装置の光源等として、広く利用されている。
【0006】
本発明の第一の課題は、このようなキセノンランプや青紫レーザーを光源とする発光装置等に用いても、光の照射による変色、変形、老化等を生じることが少ない樹脂製の光学レンズを提供することにある。
【0007】
光学レンズをホルダー等に組込んだ光学製品は、その出荷の際に、通常、エタノール等の有機溶媒による表面洗浄が行われる。特にフレネルレンズと呼ばれている非球面レンズ等の特殊なレンズの製造では、その最終工程で有機溶媒による洗浄が行われる。しかし、透明ポリアミドを用いた光学レンズは、この洗浄に使用される有機溶媒により、その表面が白化するとの問題もある。
【0008】
本発明の第二の課題は、前記の樹脂製の光学レンズであって、さらに、有機溶媒による表面洗浄が行われても、表面の白化等の劣化が生じにくい光学レンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究の結果、透明ポリアミド及び安定剤を含有する成形材料の透明樹脂成形体よりレンズを形成することにより、キセノンランプ等を光源に用いた場合でも、光の照射による変色、変形、老化等を生じることが少ない光学レンズが得られることを見出した。
【0010】
又、本発明者は、光学レンズの表面に、無機化合物によりなる透明なコーティング膜を形成することにより、有機溶媒による表面洗浄が行われても、表面の白化等の劣化が生じにくい光学レンズが得られることを見出した。本発明は、この研究結果に基づき完成されたものである。
(0011)
請求項1の発明は、透明ポリアミド及び安定剤を含有する成形材料の成形体よりなる光学レンズであって、前記成形体の、厚さを2mmとしたときの全光線透過率が60%以上であり、かつ、80℃に保った前記成形体に、キセノンランプを用いて、光量1000W/mの光線を500時間照射した後の前記全光線透過率が50%以上であり、前記安定剤の配合割合が、前記透明ポリアミド100重量部に対し、0.01〜5重量部であることを特徴とする光学レンズである。
(0012)
透明ポリアミドは、非晶性でかつガラス転位点の高いポリアミドであり、例えばジアミンとジカルボン酸とを縮合して得ることができる。
(0013)
ここで用いられるジアミンとしては、
6〜14個のC原子を有する分枝鎖状又は非分枝鎖状の脂肪族ジアミン、例えば1,6−ヘキサメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン、1,10−デカメチレンジアミン、1,12−デカメチレンジアミン;
6〜22個のC原子を有する環状脂肪族ジアミン、例えば4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルプロパン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)−シクロヘキサン、2,6−ビス(アミノメチル)−ノルボルナン、又は3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン;
8〜22個のC原子を有する芳香脂肪族ジアミン、例えばm−キシリレンジアミン、又はp−キシリレンジアミン又はビス(4−アミノフェニル)プロパン等、を挙げることができる。
(0014)
又、ジカルボン酸としては、
6〜22個のC原子を有する分枝鎖状又は非分枝鎖状の脂肪族ジカルボン酸、例えばアジピン酸、2,2,4−トリメチルアジピン酸、2,4,4−トリメチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、又は1,12−ドデカン二酸;
6〜22個のC原子を有する環状脂肪族ジカルボン酸、例えばシクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、4,4′−ジカルボキシルジシクロヘキシルメタン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジカルボキシルジシクロヘキシルメタン、4,4′−ジカルボキシルジシクロヘキシルプロパン、又は1,4−ビス(カルボキシメチル)シクロヘキサン;
8〜22個のC原子を有する芳香脂肪族ジカルボン酸、例えば4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸;
8〜22個のC原子を有する芳香族ジカルボン酸、例えばイソフタル酸、トリブチルイソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタリンジカルボン酸、1,5−ナフタリンジカルボン酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸、2,7−ナフタリンジカルボン酸、ジフェン酸、又はジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸等、を挙げることができる。
【0015】
透明ポリアミドは、又、ラクタムの開環重合やω−アミノカルボン酸の縮合等によっても得ることができる。このとき用いられる原料モノマーとしては、
6〜12個のC原子を有するラクタムもしくは相応するω−アミノカルボン酸、ε−カプロラクタム、ε−アミノカプロン酸、カプリルラクタム、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノウンデカン酸、ラウリンラクタム、又はω−アミノドデカン酸等、を挙げることができる。
【0016】
透明ポリアミドとしては、特許文献1、特許文献2、特許文献3に開示されているような、芳香環、脂環等の環を有し、非晶性でかつガラス転位点の高いポリアミド、及び、ラクタムの開環重合やω−アミノカルボン酸の縮合により得られる炭素数が10以上のポリアミドを、好ましく例示することができる(請求項2)。
【0017】
芳香環、脂環等の環を有するポリアミドのより具体的な例としては、
テレフタル酸、及び2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンと2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンとの異性体混合物からなるポリアミド、
イソフタル酸及び1,6−ヘキサメチレンジアミンからなるポリアミド、
テレフタル酸/イソフタル酸、及び1,6−ヘキサメチレンジアミンからなるコポリアミド、
イソフタル酸、及び3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、及びラウリンラクタム又はカプロラクタムからなるコポリアミド、
1,12−ドデカンジカルボン酸又は1,10−デカンジカルボン酸、及び3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、場合によってはさらにラウリンラクタム又はカプロラクタムからなる(コ)ポリアミド、
イソフタル酸、及び4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、及びラウリンラクタム又はカプロラクタムからなるコポリアミド、
1,12−ドデカン二酸、及び4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンからなるポリアミド、
テレフタル酸/イソフタル酸混合物、及び3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、及びラウリンラクタムからなるコポリアミド、等を挙げることができる。
【0018】
ラクタムの開環重合やω−アミノカルボン酸の縮合によって得られ炭素数が10以上のポリアミドとしては、ナイロン12等の商品名で市販されているポリアミド12等を挙げることができる。
【0019】
さらに、透明ポリアミドとしては、その合成反応(重合)を、原料モノマーとともに、後述する安定剤、架橋助剤、補強材等の存在下行って製造したものでもよい。
【0020】
又、透明ポリアミドは、本発明の範囲内で多数の異なるポリアミドの配合物であってよい。配合物自体が透明であれば、この配合物成分に結晶性のものが含まれていてもよい。
【0021】
上記の透明ポリアミドとしては市販品を用いることもできる。例えば、イソフタル酸及び3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン並びにラウリンラクタムからなるコポリアミドはグリルアミドTR−55(エムスケミー・ジャパン社)等の商品名で、又、1,10−デカンジカルボン酸及び3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンの縮合重合体からなるポリアミドはグリルアミドTR−90(エムスケミー・ジャパン社)等の商品名で市販されており、これらを用いることができる。その他、本発明に使用される透明ポリアミドの具体的商品例としてはトロガミドCX7323、トロガミドT、トロガミドCX9701(商品名、以上、ダイセル・デグサ社製)、グリルアミドTR−155、グリボリーG21、グリルアミドTR−55LX、グリロンTR−27(以上、エムスケミー・ジャパン社)、クリスタミドMS1100、クリスタミドMS1700(以上、アルケマ社)、シーラー3030E、シーラーPA−V2031(以上、デュポン社)、イソアミドPA−7030(以上、デュポン社)等を挙げることができる。
【0022】
さらに又、透明ポリアミドとしては、ナイロン6等の比較的白化しやすいポリアミドに、造核剤を添加して、透明性を増加したもの等も使用することができる。造核剤とは、結晶性のポリマーに均一で微細な結晶を生成させ、剛性、熱変形温度等の機械物性を向上させるとともに、透明性を改善させるものであり、リポゾーム造核剤やパインクリスタルKM1500(荒川化学社製)との商品名で市販されている造核剤等を挙げることができる。
【0023】
前記透明ポリアミドとしては、主分極率0.6×10−23以下の化学結合のみからなるモノマーにより構成されるものが好ましい(請求項3)。モノマーの主分極率が化学結合に対する方向により異なっている場合は、そのいずれの方向についても0.6×10−23以下の化学結合のみからなるものが好ましい。主分極率0.6×10−23を越える化学結合を含むモノマーが、透明ポリアミドの構成モノマーに含まれると、光弾性定数が高くなり、成形や応力による複屈折が大きくなり、鮮明な像が得られにくい等の問題が生じやすくなる。
【0024】
透明ポリアミドやポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂に安定剤を含有させた成形体よりなる光学レンズに、80℃程度で、キセノンランプや青紫レーザーを長時間照射すると、白色の筋や黒変が発生する場合がある。しかし、上記の例示の中で、1,10−デカンジカルボン酸及び3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンの縮合重合体からなる透明ポリアミドを使用した場合は、これらの発生が小さいので好ましい。請求項4は、この好ましい態様に該当し、前記透明ポリアミドが、1,10−デカンジカルボン酸及び3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンの縮合重合体からなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の光学レンズを提供するものである。
【0025】
なお、ポリアミドは極性を有するため、メッキや蒸着の密着強度が高い。従って、光学レンズに回路を形成したりする用途にも好適に用いられる。
【0026】
本発明の光学レンズの製造に使用される成形材料は、前記の透明ポリアミドに加えて安定剤を含有することを特徴とする。ここで言う安定剤には、光や熱等による劣化を防ぐ作用を有する全ての安定剤を含み、例えば、ヒンダードフェノール等の光等による酸化を防止する作用を有する酸化防止剤等も含まれる。より具体的には、ヒンダードアミン光安定剤、紫外線吸収剤、リン系安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤等を挙げることができ、ヒンダードアミン光安定剤はアデカスタブLA68、LA62(商品名、旭電化社製)等として、紫外線吸収剤はアデカスタブLA36(商品名、旭電化社製)等として、リン系安定剤はイルガフォス168(商品名、チバ・スペシャリティー・ケミカル社製)等として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤はイルガノックス245(商品名、チバ・スペシャリティー・ケミカル社製)等として市販されているものを用いることができる。2種以上の安定剤を併用すると、安定剤としての機能が向上し、より優れた効果が得られる場合がある。
【0027】
成形材料中への安定剤の配合割合の好ましい範囲は、安定剤の種類、併用する紫外線吸収剤や酸化防止剤の種類や量等により変動し、特に限定されない。通常、配合割合が大きい程、キセノンランプ等の照射による変色等が小さいものが得られるが、配合割合が大き過ぎると、ブルーム、曇点(ヘイズ)の悪化、透過率の低下等の問題を生じるので、通常、1種の安定剤を用いる場合は、透明ポリアミド100重量部に対し、0.01〜5重量部程度が好ましい。
【0028】
本発明の光学レンズの製造に使用される成形材料には、本発明の趣旨が損なわれない範囲で、他の成分、例えば、耐候性安定剤、銅害防止剤、難燃剤、滑剤、導電剤、メッキ付与剤等を添加することができる。
【0029】
本発明の光学レンズは、前記の成形材料を成形することにより得られる。具体的には、前記成形材料を、単軸押出機、二軸押出機、加圧ニーダー等により混練し、公知の成形方法により成形して得ることができる。混練装置は特に限定されるものではないが、特に二軸押出機が好ましく、230℃〜300℃程度の混練温度、2〜15分程度の混練時間が、一般に好ましく採用される。成形方法は特に制限されず、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、プレス成形法、押出成形法、ブロー成形法、真空成形法等が挙げられるが、成形の容易さ及び成形の精度の観点から、射出成形法が好ましい。
【0030】
本発明の光学レンズを形成する成形体(透明樹脂成形体)は、その成形体の厚さを2mmとしたときの全光線透過率が60%以上であることを特徴とする。ここで、全光線透過率とは、透明性を表す指標であり、その測定は、JIS K 7361に規定される測定法を用いて行い、可視光線の範囲、具体的には波長400〜800nmの範囲において、入射光量Tと試験片を通った全光量Tとの比の百分率で示される。全光線透過率が60%以上であることにより、本発明の光学レンズは、可視光域での透明性が高いものとなり、発光装置のレンズ等として好適に用いられる。60%以上の全光線透過率は、成形材料を構成する組成として、前記の例示されたポリアミドを使用することにより、容易に得ることができる。
【0031】
本発明の光学レンズを形成する成形体(透明樹脂成形体)は、80℃に保った前記成形体に、キセノンランプを用いて、光量1000W/mのエネルギーの光線を500時間照射した後の全光線透過率、即ち、前記成形体の厚さを2mmとしたときの全光線透過率が50%以上であることを特徴とする。通常、光の照射は、厚さ2mmの成形体の表面から7mm離した位置に光線(キセノンランプ)を置いて行う方法が好ましい。この所定の光照射後も50%以上の全光線透過率を有する成形体は、成形材料に、前記の安定剤を配合することにより容易に得ることができる。
【0032】
本発明の光学レンズを形成する成形体は、270℃での貯蔵弾性率が0.1MPa以上であることが好ましい(請求項5)。270℃での貯蔵弾性率を0.1MPa以上とすることにより、室温から高温まで満足する剛性が得られ、光学レンズを、鉛フリー半田を用いた半田付けや半田リフローにより実装する場合や、使用環境が高温になる場合でも熱変形の問題を生じにくく、所謂リフロー耐熱性が高いので好ましい。
【0033】
ここで、貯蔵弾性率とは、粘弾性体に正弦的振動ひずみを与えたときの応力と、ひずみの関係を表わす複素弾性率を構成する一項(実数項)であり、粘弾性測定器(DMS)により測定した値である。より具体的には、アイティー計測制御社製DVA−200による粘弾性測定器により、室温(25℃)よりの10℃/minの昇温速度にて測定される値である。
【0034】
本発明の光学レンズを形成する成形体は、さらに補強材としてフィラーを含有することが好ましい(請求項6)。フィラーを含有することにより、容易に270℃での貯蔵弾性率を0.1MPa以上とすることができ、又、成形性や耐熱性が向上する。
【0035】
フィラーとしては、成形体の透明性を損なわないためにも、その屈折率が透明ポリアミドに近い所謂透明フィラーを使用する。透明フィラーの一例として、ガラス繊維が挙げられる。添加量は、透明ポリアミド100重量部に対して、0.1〜50重量部が好ましく、より好ましくは1〜50重量部である。又、充填剤の粒子径が光の波長以下であるフィラー、ヒュームドシリカ、ナノ金属フィラーやナノコンポジッドフィラーを使用することもできる。有機フィラーの例としては、バイオナノファイバー(京都大学)を挙げることもできる。
【0036】
本発明の光学レンズを形成する成形体は、加熱や放射線照射により樹脂の架橋を行ったものでもよく、架橋することにより、より優れた耐熱性や貯蔵弾性率が得られる。架橋を促進するために、透明ポリアミドの主鎖中に2重結合を有する重合単位を挿入する、架橋助剤を含有させる等の方法が行われる。
【0037】
架橋助剤としては、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム等のオキシム類;エチレンジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アクリル酸/酸化亜鉛混合物、アリルメタクリレート等のアクリレート又はメタクリレート類;ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、ビニルピリジン等のビニルモノマー類;ヘキサメチレンジアリルナジイミド、ジアリルイタコネート、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(以下、TAICとする。)等のアリル化合物類;N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−(4,4’−メチレンジフェニレン)ジマレイミド等のマレイミド化合物類等が挙げられる。これらの架橋助剤は単独で用いてもよいし、組み合わせて使用することもできる。
【0038】
請求項7の発明は、前記成形材料が、さらにTAICを、透明ポリアミド100重量部に対して25重量部未満含有することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の光学レンズである。
【0039】
上記の例示された架橋助剤の中でもTAICは、三官能のため架橋性に優れ、TAICを含有させることにより光学レンズのリフロー耐熱性を、放射線照射等により容易に向上できるようになるので好ましい。さらにTAICは、透明ポリアミド(特に、後述する1,10−デカンジカルボン酸及び3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンの縮合重合体)との相溶性に優れ透明ポリアミドに対して50重量%程度の高濃度まで溶解させることができる(ただし、後述のように、TAIC濃度が高すぎる場合は、成形が困難になるとの問題がある。)、放射線照射や熱による変色が比較的少ない、人体に対する毒性が低い、等の点でも好ましい。(例えばエポキシ基、グリシジル基含有物は毒性がある。)
【0040】
架橋助剤としてTAICを用いる場合、その含有量は、透明ポリアミド100重量部に対して25重量部未満が好ましく、より好ましくは1〜20重量部である。TAICの含有量が多い程、架橋を促進しリフロー耐熱性等を向上させる効果が大きいが、その含有量が前記の範囲以上となると、固化が遅くなりすぎて成形性が低下し、成形品の良い外観が得にくくなる場合がある。
【0041】
架橋助剤を含有させる方法としては、前記成形材料に架橋助剤を添加し、前記成形材料とともに混練する方法を挙げることができる。従って、混練の方法や好ましい条件は前記成形材料の混練と同じであり、例えば二軸押出機が特に好ましい混練装置として挙げることができる。
【0042】
請求項8の発明は、少なくとも一表面上に、無機化合物によりなり全光線透過率が80%以上のコーティング膜を有することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の光学レンズである。
【0043】
この光学レンズは、その少なくとも一表面が無機化合物のコーティング膜で覆われているので、当該表面の優れた耐溶剤性が達成される。従って、光学製品の出荷の際に、通常行われるエタノール等有機溶媒による表面洗浄がされても当該表面の白化等の劣化が生じにくい。又最終工程で有機溶媒による洗浄が行われるフレネルレンズ等の特殊なレンズの製造でも、この光学レンズを適用することにより表面の白化等の劣化を防止できる。
【0044】
光学レンズを形成する成形体に、前記の架橋を施すことにより、光学レンズの耐薬品性も向上する。しかし、前記の問題、即ち、有機溶媒による洗浄によりレンズ表面が白化するとの問題は、光学レンズを形成する成形体に架橋助剤を加えて架橋を施しても、十分に防ぐことができない。本発明者は、鋭意検討の結果、レンズ表面を無機化合物のコーティング膜で覆うことにより、この問題の発生を防止できることを見出したのである。
【0045】
コーティング膜は、光学レンズの少なくとも一表面上に形成される。一表面上に形成した場合でも、当該表面の耐溶剤性は向上する。コーティング膜は好ましくは両表面上に形成される。
【0046】
コーティング膜の膜厚は、優れた耐溶剤性、高い透明性、高い機械的強度が得られるように選択される。膜厚が薄すぎる場合、耐溶剤性が不十分になる場合がある。一方、膜厚が厚すぎる場合、透明性が低下する傾向がある。膜厚が薄すぎる場合、厚すぎる場合いずれも機械的強度が低下する場合があり、線膨張率の差異等に起因する膜の破損、割れ、膜の剥がれ等が生じやすくなる場合がある。又、十分な耐溶剤性を得るためには所定の値以上の厚さであればよく、それ以上厚さを増しても耐溶剤性は向上しないので、厚すぎる場合は経済的に不利となる。
【0047】
コーティング膜の膜厚の好ましい範囲は、膜を形成する無機化合物の種類等により変動し具体的な範囲は限定されないが、通常5〜500nm程度(コーティング膜が複層からなる場合は各層の合計)である。
【0048】
コーティング膜には高い透明性が求められる。透明性が低いと光学レンズとしての機能を阻害する。具体的には全光線透過率80%以上が求められる。ここで、全光線透過率とは前記の定義と同じ意味である。光学レンズとしての機能の阻害を防ぐためには、厚さ2mmとしたときの全光線透過率は80%より高いことが望まれ、90%以上がより好ましい。
【0049】
コーティング膜を設ける方法としては、物理蒸着法(PVD)を挙げることができる。PVDとしては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等を挙げることができる。例えば、Ar等の不活性ガス中のスパッタリング法によりコーティング膜を形成すれば、緻密な機械的強度に優れたコーティング膜が得られる。無機化合物の種類によっては、化学蒸着法(CVD)等他の方法を用いることもできる。
【0050】
請求項9に記載の発明は、前記無機化合物が、MgF、YF、LaF、CeF、BaF、HfO、SiO、TiO、Al、Y、Ta、La及びZrOからなる群より選ばれることを特徴とする請求項8に記載の光学レンズである。
【0051】
コーティング膜を形成する無機化合物は、薄くても機械的強度的に優れ、かつ優れた耐溶剤性と透明性を有する膜を形成することができる化合物から選ばれる。剥離しにくい膜を得るためには、コーティング膜(多層からなる場合はその最下層)を、光学レンズを形成する透明ポリアミドとなじみの良い材料から形成することが好ましい。
【0052】
前記無機化合物としては、金属酸化物、金属弗化物、その他ZnS等の亜鉛化合物を例示することができるが、優れた耐溶剤性と透明性を達成するためには、中でも、HfO、SiO、TiO、Al、Y、Ta、ZrO、Ta、La等の金属酸化物、及びMgF、YF、LaF、CeF、BaF等の金属弗化物が好ましく、これらからなる群より選ばれる無機化合物を主体として形成されたコーティング膜が好ましい。なお、「主体として」とは、前記例示の化合物のみからなる、又は例示の化合物を少なくとも50重量%以上、好ましくは80重量%以上含む場合を言う。ただし、より好ましくは、前記例示の化合物のみからなる場合(不可避的に他の物質が混入している場合を含む。)である。
【0053】
請求項10の発明は、前記透明なコーティング膜が、2層以上の層からなることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の光学レンズである。
【0054】
コーティング膜は、単層であってもよいが、2層以上の層からなるコーティング膜が好ましい。コーティング膜を複層とし、異なった材料(無機化合物)を組合せることにより、より優れた特性を達成することができる。例えば、広い波長範囲にわたって光の透過性(透明性)を向上させることが可能になる。又、最下層に光学レンズとの密着性のよい材料からなる層を設けることにより、機械的強度(こすれ等による剥離の防止)を向上させることができる。
【0055】
さらに、コーティング膜に反射防止の機能を付与することにより光の透過性を向上することができるが、反射防止に優れる(屈折率の小さい)MgF、LaF、SiOなどからなる上層、機械的強度に優れるTiO、Al、Y、Ta、La、ZrOなど(上層がLaFでない場合は、LaFも使用可)からなる下層の2層構造とすることにより、光の透過性及び機械的強度がともに優れたコーティング膜とすることができる。
【0056】
複層のコーティング膜は、前記の方法、例えばPVDにより下層を形成し、同様な方法を繰り返して、下層上に他の層を形成する方法により作製することができる。
【0057】
請求項11に記載の発明は、前記透明なコーティング膜が、SiOからなり厚さが5〜20nmの下層、前記下層上に形成されTiOからなり厚さが5〜20nmの中層、及び前記中層上に形成されSiOからなり厚さが5〜20nmの上層から構成されることを特徴とする請求項10に記載の光学レンズである。
【0058】
コーティング膜をこの3層構造とし、各層の厚さを5〜20nmの範囲とすることにより、より優れた耐溶剤性、機械的強度が得られる。又、SiO層とTiO層間の界面では入射光の反射も少なく、その結果、優れた光の透過性が得られる。
【発明の効果】
【0059】
本発明の光学レンズは、軽量であり、透明性が高いとともに、キセノンランプや青紫レーザーの照射による変色、変形、老化等を生じにくい。そこで、ストロボ用レンズ、青紫レーザー用レンズ(ブルーレイ用レンズ)として好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
次に、本発明を実施するための最良の形態につき実施例により説明する。なお、本発明は、ここに述べる実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない限り他の形態への変更も可能である。
【0061】
実施例1〜6、及び比較例1〜2
実施例1、3〜6、及び比較例2においては、透明ポリアミドとして
・ 1,10−デカンジカルボン酸及び3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンの縮合重合体(グリルアミドTR−90、エムスケミー・ジャパン社商品名)を用いた。
実施例2においては、透明ポリアミドとして
・ イソフタル酸及び3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン並びにラウリンラクタムからなるコポリアミド(グリルアミドTR−55、エムスケミー・ジャパン社商品名)を用いた。
又比較例1では、透明ポリアミドの代わりにポリメチルアクリレート(デルペット80NR、旭化成社商品名)を用いた。
【0062】
前記透明ポリアミド又はポリメチルアクリレートのそれぞれに、表1に示す配合割合(全て重量部)で以下に示す成分を、二軸混合機(東芝機械TEM58BS)により配合した。その後、SE−18(住友重機社製、電動射出成形機)により射出成形をして、厚さ2mmの光学レンズ試料を成形した。射出成形は、透明ポリアミドを用いた場合は、樹脂温度290℃、金型温度80℃、サイクル40秒の条件で行った。
【0063】
[安定剤]
・ イルガフォス168(トリス(ジブチルフェニル)フォスファイト)(商品名:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製リン系酸化防止剤)
・ イルガノックス245(トリエチレングリコール-ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕)(商品名:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製ヒンダードフェノール系酸化防止剤)
・メチルエチルハイドロキノン(表中では、MEHQと表す。)
【0064】
[架橋助剤] TAIC(トリアリルイソシアヌレート:日本化成社製)
【0065】
実施例1、2及び比較例1については、成形後の光学レンズ試料について、下記の方法で、全光線透過率、耐光テスト値、耐光テスト後の外観を測定した。比較例2では、二軸混合中に架橋しペレットが得られなかったので、全光線透過率の測定や耐光テストは行わなかった。
【0066】
実施例3、実施例4、実施例5、実施例6及び比較例2については、成形後の光学レンズ試料に240kGyの電子線を照射し架橋を行った。照射後の試料について、下記の方法で、全光線透過率、耐光テスト値、耐光テスト後の外観、貯蔵弾性率(270℃)を測定した。これらの結果を、表1、表2に併せて示す。ただし、実施例5では全光線透過率のみ測定し、耐光テスト値、耐光テスト後の外観、貯蔵弾性率の測定は行わなかった。又、実施例6では、全光線透過率及び貯蔵弾性率のみ測定し、耐光テスト値、耐光テスト後の外観の測定は行わなかった。
【0067】
[全光線透過率]
JIS K 7361に準拠して測定した。可視光線の範囲(波長400〜800nmの範囲)において入射光量Tと試験片を通った全光量Tとの比を百分率で示す。
【0068】
[耐光テスト値及び耐光テスト後の外観]
試料を厚さ2mmとして、23℃又は80℃に保ち、試料の表面から7mm離した位置に光線(キセノンランプ)を置き、単位時間あたりの照射エネルギーを光量1000W/mとして、500時間照射した。その後、前記と同様にして全光線透過率を測定した。その測定値を耐光テスト値として表1、表2に示す。又、照射後のレンズ表面を目視し、その結果を表1、表2中の(耐光テスト後の外観)に示す。
【0069】
[貯蔵弾性率]
200℃で10分間加熱した後の試料について、アイティー計測制御社製DVA−200による粘弾性測定器により、10℃/minの昇温速度にて測定した270℃での貯蔵弾性率である。
【0070】
【表1】
Figure 0004681073
【0071】
【表2】
Figure 0004681073
【0072】
表1、表2に示されるように、実施例1〜6の成形体では全光線透過率は約90%であり、無機ガラスに匹敵する優れた透明性が得られている。さらに、実施例1〜3の成形体では耐光テスト値も優れており、キセノンランプを光源とする光の照射による劣化が少ないことが示されている。このようにして得られた試料について、デジタルカメラのストロボ用として、キセノンを光源とした発光試験を行ったところ、ストロボとしての機能を有することが示された。
【0073】
ただし、透明ポリアミドとして、1,10−デカンジカルボン酸及び3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンの縮合重合体(グリルアミドTR−90)を用いた実施例1、3、4のレンズでは、耐光テストの前後で外観の変化は見られなかった(実施例3、4では、電子線の照射時に淡黄色に着色したが、耐光テストの前後では変化なし。)が、イソフタル酸及び3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン並びにラウリンラクタムからなるコポリアミド(グリルアミドTR−55)を用いた実施例2では、23℃での耐光テストにより淡黄色の着色が、80℃での耐光テストにより黒変が生じ、又ポリメチルメタアクリレートをレンズの材料とした比較例1では80℃での耐光テスト後に白色の筋の発生が見られた。即ち、キセノンを光源としたストロボ等に用いられる場合のレンズの着色を防ぐ観点からは、1,10−デカンジカルボン酸及び3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンの縮合重合体である透明ポリアミドが、他の透明ポリアミドやポリメチルメタアクリレート等より優れていることが示されている。
【0074】
又、TAICを透明ポリアミド100重量部に対し25重量部未満の範囲で添加し、放射線照射をした実施例3、4、6では、リフロー耐熱性の高い成形体が得られており、又貯蔵弾性率も高く、特に実施例4では、10Pa以上の貯蔵弾性率が得られている。しかし、TAICを添加せず放射線照射を行わなかった実施例1、2では、十分高いリフロー耐熱性は得られなかった。
【0075】
TAICを透明ポリアミド100重量部に対し30重量部添加した実施例5では、金型での固化が遅くなり、その結果、光学的な歪みが発生してまだらが生じる、エジェクターピンで押された際に変形が生じる等により、TAICの添加量がそれぞれ1重量部、5重量部、20重量部である実施例6、3、4より、成形品の外観が低下している。この結果より、TAICの添加量は、透明ポリアミド100重量部に対し25重量部未満が好ましいと考えられる。又、実施例6、3、4では成形品の良好な外観が得られていることから、TAICの添加量は、透明ポリアミド100重量部に対し1〜20重量部の範囲がより好ましいと考えられる。なお、比較例2での、TAICの添加量は、透明ポリアミド100重量部に対し20重量部であるが、安定剤を添加していないので、二軸混合中に架橋し、ペレットを得ることもできなかった。
【0076】
実施例7〜8、及び比較例3〜4
実施例1と同様な方法により得られた厚さ2mmの光学レンズ試料(試料1とする。)を用意した。又、電子線の照射量を60kGyとしTAICの配合量を透明ポリアミドに対し10重量%とした以外は実施例3と同様な方法により得られた厚さ2mmの光学レンズ試料(試料2とする)を用意した。
【0077】
試料1及び試料2のそれぞれの両表面上に、Arを用いたスパッタリング法により厚さ10nmのSiO層を形成した。その後、このSiO層上にArを用いたスパッタリング法により厚さ10nmのTiO層を形成し、さらにそのTiO層上にArを用いたスパッタリング法により厚さ10nmのSiO層を形成し、3層構造のコーティング膜を設けた光学レンズ試料を得た。それぞれ試料3及び試料4とする。
【0078】
試料1〜4のそれぞれを、100%エタノール中に30℃で1分間浸漬後、コーティング膜表面をキムワイプで擦り、表面を目視で観察したところ、表3に示す結果となった。
【0079】
【表3】
Figure 0004681073
【0080】
表3の結果より、レンズ試料の表面に無機化合物からなるコーティング膜を設けることにより、100%エタノールによる洗浄がされたときでも、表面の劣化(白化)が十分防止されていることが示されている。この効果は、樹脂の架橋が行われていないレンズ試料の場合でも得られている。一方、コーティング膜を設けなかった比較例3、4では、100%エタノールの洗浄により、表面の劣化(白化)が生じており、樹脂の架橋(比較例4)によってもこの表面の劣化(白化)を防止できないことが示されている。
【0081】
なお、実施例7の試料について全光線透過率を測定し、実施例1の試料の測定値と比較した結果から、実施例のコーティング膜の全光線透過率が98%であることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の光学レンズは、ストロボ用レンズ(例えば、ストロボ用フレネルレンズ)、青紫レーザー(ブルーレイ)用レンズ等の用途に、好適に用いられる。

Claims (8)

  1. 透明ポリアミド及び安定剤を含有する成形材料の成形体よりなり、前記透明ポリアミドが放射線照射により架橋されている光学レンズであって、
    前記成形体の、厚さを2mmとしたときの全光線透過率が60%以上であり、かつ、80℃に保った前記成形体に、キセノンランプを用いて、光量1000W/mの光線を500時間照射した後の全光線透過率が50%以上であり、
    前記安定剤の配合割合が、前記透明ポリアミド100重量部に対し、0.01〜0.21重量部であり、
    前記透明ポリアミドが、1,10−デカンジカルボン酸及び3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタンの縮合重合体からなり、
    前記安定剤が、トリス(ジブチルフェニル)フォスファイト、トリエチレングリコール-ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕及びメチルエチルハイドロキノンから選ばれることを特徴とする光学レンズ。
  2. 前記透明樹脂成形体の270℃での貯蔵弾性率が、0.1MPa以上であることを特徴とするに請求項1に記載の光学レンズ。
  3. 前記成形材料が、さらにフィラーを含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学レンズ。
  4. 前記成形材料が、さらにトリアリルイソシアヌレートを、透明ポリアミド100重量部に対して25重量部未満含有することを特徴とする請求項1ないし請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の光学レンズ。
  5. 少なくとも一表面上に、無機化合物によりなり全光線透過率が80%以上のコーティング膜を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の光学レンズ。
  6. 前記無機化合物が、MgF、YF、LaF、CeF、BaF、HfO、SiO、TiO、Al、Y、La、Ta及びZrOからなる群より選ばれることを特徴とする請求項5に記載の光学レンズ。
  7. 前記透明なコーティング膜が、2層以上の層からなることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の光学レンズ。
  8. 前記透明なコーティング膜が、SiOからなり厚さが5〜20nmの下層、前記下層上に形成されTiOからなり厚さが5〜20nmの中層、及び前記中層上に形成されSiOからなり厚さが5〜20nmの上層から構成されることを特徴とする請求項7に記載の光学レンズ。
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