JP4676935B2 - 電子写真感光体、及びその製造方法、それを用いた画像形成装置、プロセスカートリッジ、画像形成方法 - Google Patents

電子写真感光体、及びその製造方法、それを用いた画像形成装置、プロセスカートリッジ、画像形成方法 Download PDF

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Description

本発明は、電子写真感光体、その製造方法、電子写真感光体における表面層の形成方法、表面層塗工液、画像形成装置、プロセスカートリッジ及び画像形成方法に関するものである。
一般に、「電子写真方法」とは、光導電性の感光体をまず暗所で例えばコロナ放電によって帯電させ、次いで像露光し、露光部のみの電荷を選択的に散逸せしめて静電潜像を得、この潜像部を染料、顔料などの着色剤と高分子物質などの結合剤とから構成される検電微粒子(トナー)で現像し可視化して画像を形成するようにした画像形成法の一つである。
このような電子写真方法において感光体に要求される基本的な特性としては
(1)暗所で適当な電位に帯電できること、
(2)暗所において電荷の散逸が少ないこと、
(3)光照射によって速やかに電荷を散逸できること、
などが挙げられる。
従来、電子写真方法において使用される感光体としては、導電性支持体上にセレンないしセレン合金を主体とする感光層を設けたもの、酸化亜鉛、硫化カドミウムなどの無機系光導電材料をバインダー中に分散させたもの、ポリ−N−ビニルカルバゾールとトリニトロフルオレノンあるいはアゾ顔料などの有機光導電材料とを用いたもの、及び非晶質シリコン系材料を用いたもの等が一般に知られているが、近年では、コストの低さ、感光体設計の自由度の高さ、低公害性等から有機系電子写真感光体が広く利用されるようになってきている。
有機系電子写真感光体には、ポリビニルカルバゾール(PVK)に代表される光導電性樹脂型、PVK−TNF(2,4,7−トリニトロフルオレノン)に代表される電荷移動錯体型、フタロシアニン−バインダーに代表される顔料分散型、電荷発生物質と電荷輸送物質とを組み合わせて用いる機能分離型の感光体などが知られており、特に機能分離型の感光体が注目されている。
この機能分離型の感光体における静電潜像形成のメカニズムは、感光体を帯電した後光照射すると、光は透明な電荷輸送層を通過し、電荷発生層中の電荷発生物質により吸収され、光を吸収した電荷発生物質は電荷担体を発生し、この電荷担体は電荷輸送層に注入され、帯電によって生じている電界にしたがって電荷輸送層中を移動し、感光体表面の電荷を中和することにより静電潜像を形成するものである。機能分離型感光体においては、主に紫外部に吸収を持つ電荷輸送物質と、主に可視部に吸収を持つ電荷発生物質とを組み合わせて用いることが知られており、上記基本特性を充分に満たすものが得られている。
近年、電子写真プロセスの高速化、小型化が進むなか、感光体に対して上記特性以外に長期繰返し使用に際しても高画質を保つことの出来る信頼性及び高耐久性が強く要求されるようになっている。
感光体は、電子写真プロセスにおいて、様々な機械的、化学的負荷を受けている。このような負荷により、感光体は、摩耗し、膜厚減少による異常画像が発生する。この感光体の耐久性を向上させる手段として、感光体にフィラーを添加する技術、感光層表面にフィラーを分散させた表面層を設ける技術が、特許文献1〜5などの各公報に提案されている。
感光体表面にフィラーを樹脂中に分散させた表面層を設けた感光体に関しては、下記に示すような様々な課題を包含する。
(1)感光層と表面層の接着性
感光層と表面層とが不連続な層構造となっている場合、長期的に繰り返し使用により、表面層が剥離する。
(2)長期的な使用における電位安定性
感光層と表面層とが不連続な層構造となっている場合、長期的な繰り返し使用により、露光部電位が上昇する。
(3)小径ビーム書き込みにおける微細ドット再現性
感光層と表面層とが不連続な層構造になっている場合、つまり感光層が表面層塗工液による溶解を受けない場合、初期における画像特性が良好となる。一方、感光層と表面保護層とが連続的な層構造となっている場合、つまり、感光層が表面層塗工液により溶解される場合、その溶解状況により、画像特性が劣化する。
(4)摩耗速度の安定化
感光層と表面層とが連続的な層構造となっており、かつ感光層の表面層形成用塗工液による溶解が大きい場合、感光層と表面層との境界部で、フィラーの存在(分布)が不均一となり、しかもこの付均一性は大きなものとなる。そしてこの感光体を長期的に使用した場合、摩耗速度が不安定となり、画像特性の劣化が引き起こされる。
(5)黒ベタ画像端部における画像太り及びトナー飛散
感光体が表面に非常に均一な電位分布を設けると、黒ベタの潜像を形成し、トナー現像した場合、黒ベタ潜像端部において、電気力線が立ち上がった状態となり、エッジ効果によりそれ以外の部分に比べ、トナーが多く現像されてしまう。そのために、黒ベタ画像を出力した場合、黒ベタ画像端部において、画像太り及びトナー飛散が発生する。この現象を抑制する手段として、感光体上に微細な電位分布の不均一状態を設けることにより、このエッジ効果が低減され、黒ベタ画像端部における画像太りおよびトナー飛散が抑制できる。
一方、表面層の形成方法には、スプレー塗工方法、リングコート方法、浸漬塗工方法等がある。
先ず、スプレー塗工方法を用いた例について説明する。
特許文献6に記載されているスプレー塗工方法は、スプレー塗工液として、感光層を溶解しない溶媒を用いている。この塗工液を用いてスプレー塗工を行った場合、塗工液溶媒が感光層中の樹脂を溶解しないため、感光層と表面層が相溶しない。つまり感光層と表面層とは、不連続な層構造となる。この公報の本文中には、このような不連続な層構造を有する感光体とした場合、表面層塗工液溶媒による感光層の溶解が発生せず、画像特性が向上すると記載されている。この方法に基づき、感光体を作製したところ、感光層と表面層とは、不連続な層構造となった。さらにこれらの感光体の画像評価を行った結果、初期的には、良好な画像特性を示した。しかし、長期的に使用した場合、感光体端部から表面層の剥離が発生した。これは、感光層と表面層とが相溶していないことから、感光層と表面層との接着性が低いためである。また、長期的に繰り返し使用した場合、露光部電位の上昇、画像特性の劣化が見られた。これは、不連続な層構造とすることにより、下層から上層への電荷注入が阻害されたことによるものである。さらに、感光層を溶解しない塗工溶媒を使用することにより、感光層中の電荷輸送物質が結晶化し、異常画像を発生する可能性もある。
特許文献7に記載されているスプレー塗工方法は、スプレー塗工液として、感光層を溶解する溶媒を用いている。この塗工液を用いてスプレー塗工を行った場合、塗工液溶媒が感光層中の樹脂を溶解し、感光層と表面層とが相溶する。その結果、感光層と表面層が連続した層構造となる。この方法で作製された感光体は、感光層と表面層とが連続した構造となっているため、長期的に使用した場合の感光層と表面層との接着性は良好である。しかし、感光層と表面層との相溶状態が規定されておらず、必ずしも他の感光体特性も同時に良好であるとは限らない。
次にリングコート方法を用いた例を示す。
特許文献8などに記載されている表面層の作製方法は、リングコート方法を用いるものである。これらの方法は、リングコート塗工液として、感光層を溶解する溶媒を用いている。この塗工液を用いて塗工を行った場合、塗工液溶媒が感光層中の樹脂を溶解し、感光層と表面層とが相溶する。つまり、感光層と表面層とが連続した層構造となる。これらの方法に基づき、感光体を作製したところ、表面層と感光層とは、連続した層構造となった。これらの感光体の画像評価を行った結果、長期的使用を行った場合、表面層の剥離は、発生せず、さらに露光部電位の上昇は低く抑えられた。しかし画像特性は良好ではなかった。これは、表面層塗工液溶媒として感光層樹脂を溶解する塗工液を用い、かつ塗工条件として表面層と接する感光層樹脂を溶解しやすい条件としたことから、感光層の溶解が限度を超えて進行したためである。
これらの問題を解消する手段として、特許文献9等に記載されている表面層の作製方法が挙げられる。
一方、フィラーを含有する感光体において、高耐久化、高画質化、高安定化のためには、フィラーの分散状態が非常に重要である。
膜中にフィラーが不均一な状態又はフィラー凝集体が存在した場合、膜の透明性が低下し、フィラーによって書き込み光が散乱され、電荷発生が不均一になり、画像特性が低下する。さらに、このような状態では、感光層中で発生した電荷が感光体の表面に輸送される際にも、凝集フィラーにより電荷輸送が妨げられ或いは電荷輸送方向が曲がり、感光体の表面で電位ムラが発生し、画像特性が低下する。また、感光体の表面にフィラー凝集体が存在する場合、クリーニング不良、クリーニングブレードの欠損等の問題も発生する。
これらの問題は、フィラーの凝集を低減した分散性の高い塗工液を調製することにより解消される。さらに、塗工液は、フィラーの分散安定性を高くすることが重要である。フィラーの分散安定性が低い塗工液は、長期間の保存に問題があるだけではなく、製膜途中においても、フィラーが沈降し、安定した感光体の作製が不可能となる。
膜中のフィラーの分散及び凝集状態、塗工液の分散安定性を改善する手法として、塗工液中に分散剤を添加する技術が、特許文献10,11に開示されている。
これらの分散剤は、極性を有するフィラーの表面を修飾し、塗工液中における溶媒や樹脂に対する分散性が向上し、分散性及び分散安定性が向上する。そして、これらの分散剤を含有する塗工液を用いて作製された感光体は、膜中でフィラーが均一に分散され、耐摩耗性及び画像特性が向上する。
また、特許文献12には、フィラーの表面に電荷輸送部分が連結基でグラフト結合され、優れた耐摩耗性を有する画像形成部材が得られることが開示されている。しかしながら、電荷輸送部分及びフィラー部分に連結基又は固着基を導入し反応させるため、材料の多様性への対応に難点がある。
さらに、特許文献13には、電子写真感光体の最表面層を、少なくともα−アルミナ粒子とバインダー樹脂に加えてさらにマレイン酸誘導体ユニットを有する高分子材料を含有ものとすることが記載され、また、特許文献14には、表面保護層ではないが、電荷輸送層についてこれを、電荷輸送成分とバインダー成分からなるフィラーを含まない電荷輸送層と、電荷輸送成分とバインダー成分とα−アルミナを含むフィラー補強電荷輸送層との積層で順次構成されたものとすることが記載されている。
このように、感光体の表面にフィラーを含有させることにより、感光体の高耐久化が図られているが、アモルファスシリコン感光体に比べて、機械的耐久性が低い。今後更なる高速化、小型化が進むことから、有機系電子写真感光体の高耐久化が望まれている。
特開平1−205171号公報 特開平7−333881号公報 特開平8−15887号公報 特開平8−123053号公報 特開平8−146641号公報 特開平6−308757号公報 特開平6−89036号公報 特開平8−292585号公報 特許第3734735号公報 特開2003−149849号公報 特開2002−268257号公報 特開2006−63341号公報 特開2003−91083号公報 特許第3766008号公報
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑み、長期的使用における機械的耐久性に優れるとともに、電気安定性、画像安定性に優れた電子写真感光体、その製造方法、電子写真感光体における表面層の形成方法、保存安定性の高い表面層塗工液、画像形成装置、プロセスカートリッジ及び画像形成方法を提供することをその課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、以下に示す電子写真感光体、その製造方法、電子写真感光体における表面層の形成方法、画像形成装置、プロセスカートリッジ及び画像形成方法が提供される。
(1)「導電性支持体上に少なくとも感光層とポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂に極性基を有するモノマーをグラフト重合することにより得られるグラフト共重合体を含む樹脂中にフィラーが分散されている表面層とを順次製膜し、かつ該感光層と該表面層とが連続した層構造を有する電子写真感光体であって、前記極性基を有するモノマーは、アクリル酸または4−ビニルピリジンであり、前記表面層の平均最大膜厚をDμmとしたとき、該表面層の最大膜厚の標準偏差σが、Dの1/5以下であることを特徴とする電子写真感光体」、
(2)「前記表面層の最大膜厚の標準偏差σが、Dの1/7以下であることを特徴とする前記第(1)項に記載の電子写真感光体」、
(3)「該表面層に含有されるフィラーが無機フィラーであることを特徴とする前記第(1)項または第(2)項に記載の電子写真感光体」、
(4)「該表面層に含有されるフィラーが金属酸化物であることを特徴とする前記第(3)項に記載の電子写真感光体」、
(5)「該金属酸化物が少なくとも酸化珪素、酸化チタン及び酸化アルミニウムの中から選ばれる少なくとも1つの物質を含むものであることを特徴とする前記第(4)項に記載の電子写真感光体」、
(6)「該表面層が電荷輸送物質を含有することを特徴とする前記第(1)項乃至第(5)項の何れかに記載の電子写真感光体」、
(7)「導電性支持体上に少なくとも感光層と表面層とを順次製膜してなり、該表面層がポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂に極性基を有するモノマーをグラフト重合することにより得られるグラフト共重合体を含む樹脂中にフィラーが分散されており、かつ該感光層と該表面層とが連続した層構造を有し、該表面層の平均最大膜厚をDμmとしたとき、該表面層の最大膜厚の標準偏差σが、Dの1/5以下である電子写真感光体の表面層形成方法であって、前記極性基を有するモノマーは、アクリル酸または4−ビニルピリジンであり、前記感光層表面に少なくとも樹脂とフィラーと溶媒とからなる塗工液をスプレー塗工する工程を有し、該塗工液の溶媒が該感光層表面部に存在する樹脂に対して溶解性を有し、かつ該塗工条件が下記式(1)を満足することを特徴とする電子写真感光体の表面層形成方法:
Figure 0004676935
(前記式(1)中、Aは該塗工液を基体表面に塗布後60分間放置したときに得られる表面層塗膜重量を示し、Bは完全乾燥後の表面層塗膜重量を示す)」、
(8)「前記第(7)項に記載の電子写真感光体の表面層形成方法に用いる表面層塗工液であって、50℃以上80℃以下の沸点を持つ有機溶剤と130℃以上160℃以下の沸点を持つ有機溶剤を混合した混合溶媒を用いることを特徴とする表面層塗工液」、
(9)「該塗工液の固形分濃度が3.0〜6.0wt%であることを特徴とする前記第(8)項に記載の表面層塗工液」、
(10)「導電性支持体上に少なくとも感光層と表面層とを順次製膜してなり、該表面層がポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂に極性基を有するモノマーをグラフト重合することにより得られるグラフト共重合体を含む樹脂中にフィラーが分散されており、かつ該感光層と該表面層とが連続した層構造を有し、該表面層の平均最大膜厚をDμmとしたとき、該表面層の最大膜厚の標準偏差σが、Dの1/5以下である電子写真感光体の製造方法であって、該塗工液として前記第(8)項または第(9)項に記載の塗工液を用いるとともに、該表面層塗工後、加熱乾燥し、該加熱乾燥温度が、130℃以上160℃以下であり、かつ該加熱乾燥時間が、10分以上60分以下であることを特徴とする電子写真感光体の製造方法」、
(11)「少なくとも帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段及び電子写真感光体を具備してなる画像形成装置において、該感光体として、前記第(1)項乃至第(6)項の何れかに記載の電子写真感光体を用いたことを特徴とする画像形成装置」、
(12)「電子写真感光体を具備するプロセスカートリッジにおいて、該感光体として、前記第(1)項乃至第(6)項の何れかに記載の電子写真感光体を用いたことを特徴とするプロセスカートリッジ」、
(13)「電子写真感光体を用いる画像形成方法において、該感光体として、前記第(1)項乃至第(6)項の何れかに記載の電子写真感光体を用いることを特徴とする画像形成方法」。
以下の詳細かつ具体的な説明から明らかなように、本発明は、長期的使用における機械的耐久性に優れるとともに、電気安定性、画像安定性に優れた電子写真感光体、その製造方法、電子写真感光体における表面層の形成方法、保存安定性の高い表面層塗工液、画像形成装置、プロセスカートリッジ及び画像形成方法を得ることが出来るという極めて優れた効果を奏するものである。
本発明の電子写真感光体(以下、単に感光体とも言う)は、導電性支持体上に少なくとも感光層とポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂に極性基を有するモノマーをグラフト重合することにより得られるグラフト共重合体を含む樹脂中にフィラーが分散されている表面層とを順次製膜し、かつ該感光層と該表面層とが連続した層構造を有する電子写真感光体であって、該表面層の平均最大膜厚をDμmとしたとき、該表面層の最大膜厚の標準偏差σが、Dの1/5以下であることを特徴とする電子写真感光体である。
このような感光体を用いることにより、機械的耐久性、電気特性、画像特性の全てが良好な画像形成装置を提供することができる。
表面層は、ポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂に極性基を有するモノマーをグラフト重合することにより得られるグラフト共重合体を含む樹脂中にフィラーを含有する。本発明において、ポリカーボネート樹脂及びポリアリレート樹脂とは、それぞれポリカーボネート骨格及びポリアリレート骨格を有する樹脂を意味し、これらの構造を有する共重合体も含まれる。
まず、フィラーを含有する表面層の摩耗メカニズムを説明する(図1参照)。電子写真プロセスにおいて、表面層(1)は、クリーニング部で機械的負荷を受ける。クリーニング部では、トナー(1c)やクリーニングブレード、クリーニングブラシが表面層(1)に接触し、機械的強度が低い部分から徐々に摩耗する。表面層(1)がフィラー(1a)を含有する場合は、選択的に結着樹脂(1b)から摩耗する。図1のAでは、表面層(1)の表面にフィラー(1a)が存在せず、結着樹脂(1b)が摩耗する。図1のBでは、結着樹脂(1b)に比べて高硬度のフィラー(1a)は、摩耗せず、フィラー(1a)の周辺の結着樹脂(1b)が摩耗する。しかし、フィラー(1a)が立体障害となり、結着樹脂(1b)の摩耗速度は、減少する。図1のCでは、フィラー(1a)が突出し、フィラー(1a)の周辺の結着樹脂(1b)が徐々に摩耗され、フィラー(1a)と結着樹脂(1b)の接触面積が減少して、フィラー(1a)と結着樹脂(1b)の付着力が低下し、フィラー(1a)が離脱する。このようなA、B及びCの過程を繰り返すことにより、表面層(1)の膜厚が減少する。
ここで、表面層の摩耗量は、結着樹脂の機械的強度、フィラーの機械的強度、フィラー量、フィラー径等により、変化する。また、図1のCにおいて、フィラーと結着樹脂の付着力が表面層の摩耗に大きく寄与し、フィラーと結着樹脂の親和性を向上させることにより、耐摩耗性が向上する。また、フィラーと結着樹脂の親和性が高くなれば、塗工液中でのフィラーの分散性も向上し、塗工液のフィラー分散安定性や実際にその塗工液を用いて作製した表面層中のフィラーの分散性が向上する。
本発明においては、フィラーに対する親和性が高い極性基を有するモノマーを結着樹脂にグラフト重合することにより、フィラーと結着樹脂の親和性を向上させることができる。
従来、表面層には、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリオレフィン等のビニル重合体又はその共重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート(ポリエステル)樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂等が用いられている。中でも、感光体としての製造上の特性、機械的強度、特に耐摩耗性が優れていることから、ポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂が好ましいが、本発明においては、ポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂に極性基を有するモノマーをグラフト重合することにより、フィラーと樹脂の親和性を高くして、フィラーの分散性を向上させることができる。その結果、表面層の機械的強度を向上させることができる。
次に、本発明で用いられるポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂に極性基を有するモノマーをグラフト重合することにより得られるグラフト共重合体について説明する。
本発明において、グラフト重合は、ポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂からの水素引き抜き反応を伴うものであり、通常、酸素ラジカル、電子線照射、芳香族ケトンへの光照射等を用いることができる。これらの中で、簡便であり、感光体に用いるのに適しているのは、酸素ラジカルを用いる方法である。酸素ラジカルは、過酸化物の分解により発生し、過酸化物としては、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイド類を用いることができる。
また、グラフト重合に用いられる極性基を有するモノマーとしては、極性基を有するビニルモノマーが好ましい。具体的には、アクリル酸及びそのエステル類、メタクリル酸及びそのエステル類、イタコン酸及びそのエステル類、無水イタコン酸、アクリロニトリル、アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルピラジン、ビニルイミダゾール、ビニル安息香酸及びそのエステル類、ビニルベンジルクロライド等が挙げられる。これらのモノマーは、単独で重合させてもよいし、二種以上混合して用いて共重合させてもよい。さらに、共重合させる場合には、スチレン、ビニルトルエン等の極性基を有さないモノマーを用いてもよい。
水素引き抜き反応としては、フェニル核上、フェニル核の置換基、アルキル基等の水素を引き抜く反応が挙げられる。中でも、反応のしやすさから、アルキル基の水素を引き抜く反応が好ましい。
これらの点から、ポリカーボネート樹脂またはポリアリレート樹脂およびこれらの構造を有する共重合体の原料構成単位に、下記一般式(2)のアルキル基を有するビフェノール化合物またはビスフェノール化合物が含まれることが好ましい。
Figure 0004676935
〔式中、Xは下記式で表される2価基を示す。〕
Figure 0004676935
〔式中、R101、R102、R103、R104はハロゲン原子、炭素数1〜6の無置換もしくは置換のアルキル基又は無置換もしくは置換のアリール基(R101、R102、R103、R104が各々複数個存在するときは、同一であっても異なっていてもよい)、o、pは0〜4の整数、q、rは0〜3の整数、Yは単結合、炭素数2〜4の直鎖状のアルキレン基、−O−、−S−又は下記式
Figure 0004676935
(式中、R105はハロゲン原子、炭素数1〜6の無置換もしくは置換アルキル基、炭素数1〜6の無置換もしくは置換のアルコキシ基又は無置換もしくは置換アリール基を示し、R106、R107は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の無置換もしくは置換アルキル基、炭素数1〜6の無置換もしくは置換のアルコキシ基又は無置換もしくは置換アリール基を示し、またR106、R107が結合して炭素数5〜12の炭素環を形成してもよく、R108、R109、R110、R111は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の無置換もしくは置換アルキル基、炭素数1〜6の無置換もしくは置換のアルコキシ基又は無置換もしくは置換アリール基を示す。)で表される2価基を示す。〕
一般式についてさらに詳細に説明する。R101、R102、R103及びR104において、ハロゲン基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基が挙げられる。
炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられ、炭素数1〜6のアルキル基の置換基としては、フルオロ基、シアノ基、フェニル基又はハロゲン基若しくは炭素数1〜6の直鎖、分岐鎖、環状のアルキル基で置換されたフェニル基が挙げられる。炭素数1〜6の無置換若しくは置換のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、イソブチル基、トリフルオロメチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、アリール基の置換基としては、上記と同様のハロゲン基、炭素数1〜6の無置換若しくは置換のアルキル基が挙げられる。
Yにおいて、炭素数2〜4の直鎖状のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられる。
R105〜R111において、ハロゲン基、炭素数1〜6の無置換若しくは置換のアルキル基、無置換若しくは置換のアリール基は、R101、R102、R103及びR104と同様である。
炭素数1〜6の無置換若しくは置換のアルコキシ基としては、上記の炭素数1〜6の無置換若しくは置換のアルキル基を有するアルコキシ基が挙げられる。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−シアノエトキシ基、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
また、R106及びR107が結合して形成される炭素数5〜12の炭素環としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、シクロオクタデカン等が挙げられる。
一般式(2)で表されるアルキル基を有するビフェノール化合物又はビスフェノール化合物の具体例としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ジメチルプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ぺンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)へキサン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)へプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノルボルナン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3,3’,3’−テトラメチル−6,6’−ジヒドロキシスピロ(ビス)インダン、3,3’,4,4’−テトラヒドロ−4,4,4’,4’−テトラメチル−2,2’−スピロビ(2H−1−ベンゾピラン)−7,7’−ジオール等が挙げられる。
次に、本発明で用いられるグラフト共重合体の合成例、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)の測定方法について説明する。
(合成例1)ビニルピリジングラフトビスフェノールZ型ポリカーボネートの合成
ビスフェノールZ型ポリカーボネートTS2050(帝人社製)3.0g、4−ビニルピリジン0.3g、乾燥BPO(ベンゾイルパーオキサイド)0.1gを脱水トルエン40mlに溶解させ、アルゴンガス雰囲気下、100℃で5時間加熱撹拌を行った。室温で放置した後、ジクロロメタンで希釈し、メタノールにより再沈殿させた。次に、ジクロロメタンに溶解させ、水を加え、有機層を水洗した後、再度メタノールにより再沈殿させて単離乾燥し、極薄黄白色のビニルピリジングラフトビスフェノールZ型ポリカーボネート2.97gを得た。
GPCによる重量平均分子量は、146300であった。また、1H−NMR分析によりグラフト量を測定したところ、688ユニットのビスフェノールZカーボネートに対して、1ユニットのビニルピリジンがグラフトしていた。グラフト量は、ビニルピリジン環のプロトン4個分の積分値とベンゼン環のプロトン8個分の積分値から計算した。なお、原料のビスフェノールZ型ポリカーボネートのGPCによる重量平均分子量は、147000であった。
(合成例2)アクリル酸グラフトビスフェノールZ型ポリカーボネートの合成
ビスフェノールZ型ポリカーボネートTS2050(帝人社製)3.0g、アクリル酸0.3g、乾燥BPO(ベンゾイルパーオキサイド)0.1gを脱水トルエン40mlに溶解させ、アルゴンガス雰囲気下、100℃で5時間加熱撹拌を行った。室温で放置した後、ジクロロメタンで希釈し、メタノールにより再沈殿させた。次に、ジクロロメタンに溶解させ、水を加え、有機層を水洗した後、再度メタノールにより再沈殿させて単離乾燥し、白色のアクリル酸グラフトビスフェノールZ型ポリカーボネート2.95gを得た。GPCによる重量平均分子量は、146700であった。
(合成例3)ビニルピリジングラフトビスフェノールZ型ポリアリレートの合成
1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン2.68g(10mmol)を反応容器に入れ、4−t−ブチルフェノール15.0mg(0.1mmol)と水酸化ナトリウム1.52g(38mmol)を水50mlに溶解させた後、相間移動触媒であるBTEAC(ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド)13.6mg(0.06mmol)を添加し、溶解させた(水相)。別に、テラフタル酸クロライドとイソフタル酸クロライドの1:1の混合物2.03g(10.02mmol)をジクロロメタン40mlに溶解させた(有機相)。反応容器を20℃に保ち、水相を650rpmで撹拌させながら有機相を添加した。この状態で5時間反応を行った後、撹拌を停止し、水相と有機相を分離させた。有機相を酢酸水溶液にて中和し、さらに有機相を3回水洗した。次に、メタノールにより再沈殿させて単離乾燥し、白色のビスフェノールZ型ポリアリレート3.81gを得た。重合収率は、95.4%であった。また、GPCによる重量平均分子量は、153500であった。
ビスフェノールZ型ポリアリレート3.0g、4−ビニルピリジン0.3g、乾燥BPO(ベンゾイルパーオキサイド)0.1gを脱水トルエン40mlに溶解させ、アルゴンガス雰囲気下、100℃で5時間加熱撹拌を行った。室温で放置した後、ジクロロメタンで希釈し、メタノールにより再沈殿させた。次に、ジクロロメタンに溶解させ、水を加えて、有機層を水洗した後、再度メタノールにより再沈殿させて単離乾燥し、極薄黄白色のビニルピリジングラフトビスフェノールZ型ポリアリレート2.96gを得た。
GPCによる重量平均分子量は、153200であった。また、1H−NMR分析によりグラフト量を測定したところ、635ユニットのビスフェノールZアリレートに対して、1ユニットのビニルピリジンがグラフトしていた。グラフト量は、ビニルピリジン環のプロトン4個分の積分値とベンゼン環のプロトン12個分の積分値から計算した。
(合成例4)アクリル酸グラフトビスフェノールZ型ポリアリレートの合成
ビスフェノールZ型ポリアリレート3.0g、アクリル酸0.3g、乾燥BPO(ベンゾイルパーオキサイド)0.1gを脱水トルエン40mlに溶解させ、アルゴンガス雰囲気下、100℃で5時間加熱撹拌を行った。室温で放置した後、ジクロロメタンで希釈し、メタノールにより再沈殿させた。次に、ジクロロメタンに溶解させ、水を加え、有機層を水洗した後、再度メタノールにより再沈殿させて単離乾燥し、白色のアクリル酸グラフトビスフェノールZ型ポリアリレート2.93gを得た。GPCによる重量平均分子量は、153100であった。
(合成例5)ビニルピリジングラフトビスフェノールE型ポリカーボネートの合成
4,4’−エチリジンビスフェノール4.28g(20mmol)を反応容器に入れ、4−t−ブチルフェノール30.0mg(0.2mmol)と水酸化ナトリウム6.00g(150mmol)とハイドロサルファイト9.0mg(0.5mmol)を水120mlに室温で溶解させた。次に、トリホスゲン3.56g(12mmol)をジクロロメタン10mlに溶解させたトリホスゲン溶液を15℃で添加し、そのまま15分間撹拌した。さらに、触媒として、トリエチルアミン20.2mg(0.2mmol)を添加し、室温で90分間反応させた後、ジクロロメタンで希釈し、有機相を分離した。この有機相を一度水洗した後、2重量%塩酸水溶液で洗浄し、3回水洗し、メタノールにより再沈殿させてビスフェノールE型ポリカーボネート4.16gを得た。重合収率は、97.5%であった。また、GPCによる重量平均分子量は、151500であった。
ビスフェノールE型ポリカーボネート3.0g、4−ビニルピリジン0.3g、乾燥BPO(ベンゾイルパーオキサイド)0.1gを脱水トルエン40mlに溶解させ、アルゴンガス雰囲気下、100℃で5時間加熱撹拌を行った。室温で放置した後、ジクロロメタンで希釈し、メタノールにより再沈殿させた。次に、ジクロロメタンに溶解させ、水を加え、有機層を水洗した後、再度メタノールにより再沈殿させて単離乾燥し、極薄黄白色のビニルピリジングラフトビスフェノールE型ポリカーボネート2.95gを得た。
GPCによる重量平均分子量は、150500であった。また、1H−NMR分析によりグラフト量を測定したところ、630ユニットのビスフェノールE型カーボネートに対して、1ユニットのビニルピリジンがグラフトしていた。グラフト量は、ビニルピリジン環のプロトン4個分の積分値とベンゼン環のプロトン8個分の積分値から計算した。
(合成例6)アクリル酸グラフトテトラブロモビスフェノールA型/ビスフェノールZ型共重合ポリカーボネートの合成
5.43g(10mmol)のテトラブロモビスフェノールAと1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン2.68g(10mmol)を反応容器に入れ、4−t−ブチルフェノール30.0mg(0.2mmol)と水酸化ナトリウム6.00g(150mmol)とハイドロサルファイト9.0mg(0.5mmol)を水120mlに室温で溶解させた。次に、トリホスゲン3.56g(12mmol)をジクロロメタン10mlに溶解させたトリホスゲン溶液を15℃で添加し、そのまま15分間撹拌した。さらに、触媒として、トリエチルアミン20.2mg(0.2mmol)を添加し、室温で90分間反応させた後、ジクロロメタンで希釈し、有機相を分離した。この有機相を一度水洗した後、2重量%塩酸水溶液で洗浄し、3回水洗し、メタノールにより再沈殿させてテトラブロモビスフェノールA型/ビスフェノールZ型共重合ポリカーボネート7.86gを得た。重合収率は、97.0%であった。また、GPCによる重量平均分子量は、161000であった。
テトラブロモビスフェノールA型/ビスフェノールZ型共重合ポリカーボネート3.0g、アクリル酸0.3g、乾燥BPO(ベンゾイルパーオキサイド)0.1gを脱水トルエン40mlに溶解させ、アルゴンガス雰囲気下、100℃で5時間加熱撹拌を行った。室温で放置した後、ジクロロメタンで希釈し、メタノールにより再沈殿させた。次に、ジクロロメタンに溶解させ、水を加え、有機層を水洗した後、再度メタノールにより再沈殿させて単離乾燥し、白色のアクリル酸グラフトテトラブロモビスフェノールA型/ビスフェノールZ型共重合ポリカーボネート2.94gを得た。GPCによる重量平均分子量は、159500であった。
(GPCの測定方法)
GPCは、HLC−8120型(東ソー社製)、プレカラムは、TSKgrandcolumSuperH−H(東ソー社製)、カラムは、TSKgelSuperH5000、同H4000、同H3000、同H1000(以上、東ソー社製)を連結したものを用いることができる。測定温度は、40℃、キャリアは、テトラヒドロフラン、流速は、0.6ml/分とし、平均分子量は、ポリスチレンの標準試料を用いて算出することができる。
次に、本発明で用いられるフィラーについて説明する。
フィラーは、耐摩耗性を向上する目的で表面層に添加されるが、有機フィラー及び無機フィラーのいずれであってもよい。有機フィラーとしては、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、カーボン粉末等が挙げられ、無機フィラーとしては、銅、スズ、アルミニウム、インジウム等の金属、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、アンチモンをドープした酸化スズ、スズをドープした酸化インジウム等の金属酸化物、チタン酸カリウム等の無機材料が挙げられる。中でも、フィラーの硬度の点から、無機フィラーが好ましく、金属酸化物がさらに好ましく、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタンが特に好ましい。これらフィラーは、単独又は2種類以上混合して用いられる。
フィラーの平均一次粒径は、表面層の光透過率や耐摩耗性の点から、0.01〜0.5μmであることが好ましい。フィラーの平均一次粒径が0.01μm未満の場合は、耐摩耗性の低下、分散性の低下等を引き起こすことがあり、0.5μmを超える場合は、分散液中においてフィラーの沈降が促進されたり、トナーのフィルミングが発生したりすることがある。
表面層中のフィラー濃度が高い程、耐摩耗性が高くなるが、80重量%を超える場合には、残留電位の上昇、表面層の書き込み光透過率の低下等の副作用を生じることがある。従って、フィラー濃度は、全固形分に対して、通常、80重量%以下であり、50重量%以下が好ましい。なお、フィラー濃度の下限値は、通常、5重量%である。
また、フィラーの分散性の面から、フィラーは、少なくとも一種の表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。フィラーの分散性が低下すると、残留電位の上昇だけでなく、塗膜の透明性の低下や塗膜欠陥の発生、さらには、耐摩耗性の低下をも引き起こすため、高耐久化又は高画質化を妨げる大きな問題に発展する可能性がある。表面処理剤としては、従来用いられている表面処理剤を使用することができるが、フィラーの絶縁性を維持できる表面処理剤が好ましい。例えば、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤、高級脂肪酸等、これらとシランカップリング剤の混合処理;Al、TiO、ZrO、シリコーン、ステアリン酸アルミニウム等、これらの混合処理がフィラーの分散性及び画像ボケの点から好ましい。シランカップリング剤による表面処理は、画像ボケの影響が強くなることがあるが、上記の表面処理剤とシランカップリング剤の混合処理を施すことにより、その影響を抑制することができる。表面処理量は、フィラーの平均一次粒径によって異なるが、3〜30重量%が好ましく、5〜20重量%がさらに好ましい。表面処理量が3重量%よりも少ないと、フィラーの分散性を向上させる効果が得られないことがあり、30重量%よりも多いと、残留電位が上昇することがある。
次に感光体における感光層と表面層の層構造について説明する。感光層と表面層とが連続した層構造とは、図2(a)、図2(b)で見られるような層構造のことを表す。つまり、感光層と表面層との境界領域で、フィラーの存在有無以外は、明確な境界が見られず、樹脂部においては、連続した層構造となっている。このような樹脂部が連続した層構造となるためには、感光層と表面層に含まれる各樹脂が、同じ溶媒に溶解する必要がある。この両方の樹脂を溶解する溶媒を用いた表面層塗工液で塗工した場合、塗工液が、感光層表面に付着した際に感光層樹脂を溶解する。すなわち感光層樹脂と表面層の樹脂とが相溶し、連続した層構造が形成される。
一方、感光層と表面層とが不連続な層構造とは、図2(c)で見られるような層構造のことを表す。つまり、感光層と表面層との間に、明確な境界を有する層構造のことである。このような感光層と表面層とが不連続な層構造となるためには、感光層を溶解しない溶媒を使用した表面層塗工液で塗工する必要がある。この場合には、感光層樹脂が溶解されないために、明確な境界を有する層構造となる。
次に、本発明の感光体における最大膜厚Dn、平均最大膜厚D、最大膜厚の標準偏差σについて説明する。
最大膜厚Dn及び平均最大膜厚Dは、感光体の断面観察より求められる。感光体の断面は、ミクロトームなどを用いて、感光層及び表面層の膜厚方向に対して平行に切断する。
この切断された断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)により、2000倍に拡大し、切断面の画像撮影を行う。この画像を用いて、膜厚方向に対して垂直方向に幅100μmの任意の範囲を選択し、20等分する。そして20等分された個々の範囲から最大膜厚を求める。この場合の最大膜厚Dnとは、感光体表面からもっとも離れたところにあるフィラーまでの距離である。そして平均最大膜厚Dとは、この20等分され個々の範囲から求められた最大膜厚Dnの平均である。
ここで挙げた100μmの範囲を20等分して平均最大膜厚D及び最大膜厚の標準偏差σを求める理由について次に説明する。
現状の電子写真プロセスにおいて用いられているトナーの平均粒径は5〜10μmである。これらの平均粒径のトナーを用いて、画像評価を行った結果、大きさ100μm程度の面積間の濃度変動が、画像ムラとして検出される。
また、光のON/OFFによりドットを形成する画像装置において、正副平均ドット径(ガウス分布しているときの半値幅)が100μmのドットを形成したときのドット間濃度変動が、画像ムラとして検出され、さらに正副平均ドット径が100μmよりも小さいドットを形成した場合、顕著な画像ムラとなった。
このドット間濃度変動は、本発明における最大膜厚Dnの標準偏差σの大小と相関がある。平均粒径5〜10μmのトナーを用いたとき、100μmの範囲を20等分した領域(5μm)における最大膜厚Dnの標準偏差σの大小が、ドット間濃度変動と非常に相関性が高いことが判明した。その良好な範囲を規定することにより、画像ムラを抑制した感光体とすることができる。
図2(a)、図2(b)より、平均最大膜厚Dの求め方を示す。図2(a)より、膜厚方向に対して垂直方向に幅100μm範囲を選択し、20等分する。そして図2(b)で示すように個々の範囲において、感光体表面からもっとも離れたところにあるフィラーまでの距離(最大膜厚)を計測する。そして計測された20の各範囲の最大膜厚Dnから、その平均値(平均最大膜厚)Dと最大膜厚の標準偏差σを求める。
感光体サンプルとしては、感光体の画像領域部から選択される。その選択された視野から平均最大膜厚D及び最大膜厚の標準偏差σを求める。そして、最大膜厚の標準偏差σが本発明で規定した範囲内にあればよい。即ち、最大膜厚の標準偏差σは、平均最大膜厚Dの1/5以下、好ましくは1/7以下である。
また前記最大膜厚Dnは、2/3×D以上4/3×D以下であることが好ましい。
本発明における感光層樹脂とは表面層と接する層を構成する樹脂のことを言う。
次に感光層と表面層間の層構造が種々の感光体特性に及ぼす影響について、説明する。 まず、機械的耐久性(剥離特性)の点について説明する。
表面層形成用塗工液溶媒として感光層樹脂を溶解しない溶媒を用いたときには、感光層と表面層との境界領域は不連続層となり、両者の積層構造は、図2(c)に示したような不連続な層構造となる。このような塗工液で作製された感光体を長期的に繰り返し使用した場合、感光層と表面層とが相溶していないため、感光層と表面層との接着力は弱く、端部から表面層の剥離が発生する。
一方、表面層形成用塗工液溶媒として感光層樹脂を溶解する溶媒を用いたときには、感光層と表面層は、図2(a)、図2(b)に示したような連続した層構造となる。この場合には、感光層と表面層とが相溶しているため、感光層と表面層との接着性は強くなり、長期的繰り返し使用した場合、表面層の剥離が防止できる。
次に、感光体の電気特性及び画像特性に関して説明する。
感光層と表面層とが不連続な層構造を有する感光体は、感光層樹脂が表面層塗工時に溶解されていないために、その初期的な画像特性は良好である。しかし、表面層塗工液溶媒としてこのような感光層樹脂を溶解しない溶媒を用いたときには、電荷輸送層中の電荷輸送物質が結晶化する場合があり、その場合、得られる感光体は、初期においても異常画像を発生させる。また、この感光体を長期的に繰り返し使用した場合、感光層から表面層への電荷注入が阻害され、露光部電位が徐々に上昇し、画像特性の劣化(濃度低下や地汚れ発生など)が認められた。
これに対して、感光層と表面層とが連続した層構造の感光体の場合には、感光層が表面層塗工時に溶解されているため、この感光体を長期的に繰り返し使用した場合、感光層から表面層への電荷移動は、阻害されず、露光部電位の上昇は低く押さえられることが判明した。しかし、その溶解の程度が限度を超えると、画像特性の劣化が認められる。
また、感光体が表面に非常に均一な電位分布を設けると、黒ベタの潜像を形成し、トナー現像した場合、黒ベタ潜像端部において、電気力線が立ち上がった状態となり、エッジ効果によりそれ以外の部分に比べ、トナーが多く現像されてしまう。そのために、黒ベタ画像を出力した場合、黒ベタ画像端部において、画像太り及びトナー飛散が発生する。この現象を抑制する手段として、感光体上に微細な電位分布の不均一状態を設けることにより、このエッジ効果が低減され、黒ベタ画像端部における画像太りおよびトナー飛散が抑制できることが判明した。感光体上に微細な電位分布の不均一状態を形成するためには、感光層と表面層とを連続した層構造とすればよい。つまり、感光層樹脂を表面層形成用塗工液により溶解させ、感光層と表面層との境界部を制限された範囲で不均一とすることにより、感光体上の電位分布を微少領域で微細な不均一状態にでき、黒ベタ画像端部における画像太り及びトナー飛散の抑制が可能となることが判明した。
このように、感光層と表面層とが連続した層構造を有する感光体と、感光層と表面層が不連続な層構造を有する感光体とは、それぞれ特性の異なるものとなる。そして、本発明により、感光層と表面層とを連続層構造に形成すると共に、その表面層の最大膜厚の標準偏差σを平均最大膜厚Dの1/5以下とすることにより、それぞれの良好な特性だけを示す感光体とすることができることが判明した。つまり、感光層と表面層を連続した層構造とし、かつ感光層上に表面層を塗工する際の相溶の度合いを極力少なく抑えた感光体とすることにより、機械的耐久性、電気特性、画像特性の全ての点において良好な感光体を得ることができる。
この相溶の度合いは、本発明で示した最大膜厚から求められた標準偏差σで表すことができる。相溶度合いが大きい場合、最大膜厚の標準偏差σは大きくなり、相溶度合いが小さい場合は、最大膜厚の標準偏差σは小さくなる。
図3に示すように、実機内の光書き込みにおいて、表面層を有する感光体は、表層側から入射した光の一部が、フィラー微粒子により、散乱され、光量が低下する。前記最大膜厚の標準偏差σが大きい場合、この散乱は、不均一となる。つまり、最大膜厚が大きい部位の透過光量は小さくなり、かつ最大膜厚が小さい部位の透過光量は大きくなる。このようにして、不均一となった光は、表面層を透過し、感光層に到達する。このように感光層に到達した光が不均一な場合、光量ムラとなり、電荷発生も不均一となる。
つまり、最大膜厚の標準偏差σが大きい場合、感光層に到達する光量は、不均一となりやすい。
図4に示すように、感光層で発生した電荷は表面層内を移動する。表面層内を移動する電荷は、フィラー微粒子により、トラップされ、残留電位となる。最大膜厚が大きい場合、感光層で発生し上層へ移動する電荷がトラップされやすくなり、最大膜厚が小さい場合は電荷がトラップされにくくなる。つまり最大膜厚の標準偏差σが大きい場合、表面に到達する電荷は、不均一となりやすい。
このような光散乱ムラや電荷トラップサイトムラにより、感光体表面に到達する電荷が不均一となり、画像ムラとして顕在化される。
また、図5に示すように、表面層を有する感光体を長期的に繰り返し使用した場合、表面層の最大膜厚が大きい部位は、摩耗速度が遅く、最大膜厚が小さい部位は、摩耗速度は速くなる。そのために最大膜厚の標準偏差σが大きい場合、摩耗速度が不均一となりやすい。このような摩耗速度の不均一になることから、さらに画像ムラが顕在化しやすくなる。
これらの問題に対して鋭意検討した結果、次のようなことが判明した。フィラー微粒子が分散されている表面層と感光層とが連続した層構造であり、かつ該表面層の平均最大膜厚Dμmであって、最大膜厚の標準偏差σがDの1/5以下であるとしたとき、種々の特性が良好になる。さらに最大膜厚の標準偏差σがDの1/7以下であるとき、さらに良好になる。
最大膜厚の標準偏差σは、小さいことが好ましいが、σ=0となった場合は、表面層と感光層は、不連続となっている。
感光層上に表面層を設けたとき、表面層塗工液溶媒は、感光層樹脂を溶解、相溶し、連続した層構造を生成する。そして、その溶解、相溶度合いを小さくし、最大膜厚の標準偏差σがDの1/5以下、さらにはDの1/7以下となるように、塗工液、塗工条件、塗工環境などを制御する。
以下、本発明に用いられる電子写真感光体を図面により説明する。
図6は、本発明の電子写真感光体の構成例を示す断面図であり、導電性支持体上に、電荷発生材料と電荷輸送材料を主成分とする単層感光層が設けられ、更に感光層表面に表面層が設けられてなる。
図7は、本発明の電子写真感光体の別の構成例を示す断面図であり、導電性支持体上に、電荷発生材料を主成分とする電荷発生層と電荷輸送材料を主成分とする電荷輸送層とが積層された構成をとっており、更に電荷輸送層上に表面層が設けられてなる。
図8は、本発明の電子写真感光体の別の構成例を示す断面図であり、導電性支持体上に、下引き層が設けられ、その上に電荷発生材料を主成分とする電荷発生層と電荷輸送材料を主成分とする電荷輸送層とが積層された構成をとっており、更に電荷輸送層上に表面層が設けられてなる。
本発明の感光体は、導電性支持体上に少なくとも、感光層と表面層を有する構成のものであればよく、その他の層等が任意に組み合わされていても構わない。
導電性支持体としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものも、本発明の導電性支持体として用いることができる。この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。
また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂があげられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体として良好に用いることができる。
次に感光層について説明する。感光層は単層でも積層でもよいが、説明の都合上、先ず電荷発生層と電荷輸送層とで構成される場合から述べる。
電荷発生層は、電荷発生物質を主成分とする層である。
電荷発生層には、公知の電荷発生物質を用いることが可能であり、その代表として、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、キノン系縮合多環化合物、スクアリック酸系染料、他のフタロシアニン系顔料、ナフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩系染料等が挙げられ用いられる。これら電荷発生物質は単独でも、2種以上混合してもかまわない。本発明では、特に、アゾ顔料および/またはフタロシアニン顔料が有効に用いられる。特に下記構造式(3)で表されるアゾ顔料、およびチタニルフタロシアニン(特にCuKαの特性X線(波長1.514Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニン)が有効に使用できる。
アゾ顔料、およびチタニルフタロシアニン(特にCuKαの特性X線(波長1.514Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニン)が有効に使用できる。
Figure 0004676935
式中、Cp1、Cp2はカップラー残基を表し、同一でも異なっていても良い。R201、R202はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基のいずれかを表し、同一でも異なっていても良い。またCp1、Cp2は下記式(4)で表される。
Figure 0004676935
式中、R203は、水素原子、メチル基、エチル基などのアルキル基、フェニル基などのアリール基を表す。R204、R205、R206、R207、R208はそれぞれ、水素原子、ニトロ基、シアノ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子、トリフルオロメチル基、メチル基、エチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、ジアルキルアミノ基、水酸基を表し、Zは置換もしくは無置換の芳香族炭素環または置換もしくは無置換の芳香族複素環を構成するのに必要な原子群を表す。
電荷発生層は、必要に応じて結着樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などを用いて分散し、これを導電性支持体上に塗布し、乾燥することにより形成される。
必要に応じて電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。結着樹脂の量は、電荷発生物質100重量部に対し0〜500重量部、好ましくは10〜300重量部が適当である。
ここで用いられる溶剤としては、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等が挙げられるが、特にケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒が良好に使用される。塗布液の塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の方法を用いることができる。
電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.1〜2μmである。
電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成できる。また、必要により可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。電荷輸送物質としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ベンゾキノン誘導体等の電子受容性物質が挙げられる。
正孔輸送物質としては、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等その他公知の材料が挙げられる。これらの電荷輸送物質は単独、または2種以上混合して用いられる。
結着樹脂としては、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアレート、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
電荷輸送物質の量は、結着樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。また、電荷輸送層の膜厚は解像度・応答性の点から、25μm以下とすることが好ましい。下限値に関しては、使用するシステム(特に帯電電位等)に異なるが、5μm以上が好ましい。
ここで用いられる溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが用いられる。
本発明の感光体の場合、その電荷輸送層中に可塑剤やレベリング剤を添加してもよい。可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなど一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂に対して0〜30重量%程度が適当である。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいは、オリゴマーが使用され、その使用量は結着樹脂に対して、0〜1重量%が適当である。
次に、感光層が単層構成の場合について述べる。
上述した電荷発生物質を結着樹脂中に分散した感光体が使用できる。単層感光層は、電荷発生物質および電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。さらに、この感光層には上述した電荷輸送材料を添加した機能分離タイプとしても良く、良好に使用できる。また、必要により、可塑剤やレベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
結着樹脂としては、先に電荷輸送層で挙げた結着樹脂をそのまま用いるほかに、電荷発生層で挙げた結着樹脂を混合して用いてもよい。結着樹脂100重量部に対する電荷発生物質の量は5〜40重量部が好ましく、電荷輸送物質の量は0〜190重量部が好ましくさらに好ましくは50〜150重量部である。単層感光層は、電荷発生物質、結着樹脂を必要ならば電荷輸送物質とともにテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン等の溶媒を用いて分散機等で分散した塗工液を、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコートなどで塗工して形成できる。単層感光層の膜厚は、5〜25μm程度が適当である。
本発明の感光体においては、導電性支持体と感光層との間に下引き層を設けることができる。下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、下引き層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
この下引き層は前述の感光層の如く適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができる。更に本発明では、下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、下引き層には、Alを陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO、SnO、TiO、ITO、CeO等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は0〜5μmが適当である。
本発明の感光体においては、感光体の機械的耐久性を向上させることを目的として、ポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂に極性基を有するモノマーをグラフト重合することにより得られるグラフト共重合体を含む樹脂中にフィラーが分散されている表面層を感光層の上に設ける。
表面層に使用されるバインダー樹脂としては、ポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂に極性基を有するモノマーをグラフト重合することにより得られるグラフト共重合体を含む樹脂である。これらのグラフト共重合体を含む樹脂は、単独で用いてもよいし、他のポリカーボネート又はポリアリレート、別のグラフト共重合体を含む樹脂と混合して用いてもよい。
また、感光体の表面層にはその他、耐摩耗性を向上する目的で有機系及び無機系のフィラーが添加される。有機系フィラーとしては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、カーボン粉末等が挙げられ、無機系フィラー材料としては、銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、酸化珪素、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物、チタン酸カリウムなどの無機材料が挙げられる。特に、フィラーの硬度の点からは、この中でも無機材料を用いることが有利である。特に金属酸化物が良好であり、さらには、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン等が有効に使用できる。
フィラーの平均一次粒径は、0.01〜0.5μmであることが表面層の光透過率や耐摩耗性の点から好ましい。フィラーの平均一次粒径が0.01μm以下の場合は、耐摩耗性の低下、分散性の低下等を引き起こし、0.5μm以上の場合には、分散液中においてフィラーの沈降性が促進されたり、トナーのフィルミングが発生したりする可能性がある。
表面層中のフィラー濃度は、高いほど耐摩耗性が高いので良好であるが、高すぎる場合には残留電位の上昇、保護層の書き込み光透過率が低下し、副作用を生じる場合がある。従って、概ね全固形分に対して、50重量%以下、好ましくは30重量%以下である。その下限値は、通常、5重量%である。
また、これらのフィラーは少なくとも一種の表面処理剤で表面処理させることが可能であり、そうすることがフィラーの分散性の面から好ましい。フィラーの分散性の低下は残留電位の上昇だけでなく、塗膜の透明性の低下や塗膜欠陥の発生、さらには耐摩耗性の低下をも引き起こすため、高耐久化あるいは高画質化を妨げる大きな問題に発展する可能性がある。表面処理剤としては、従来用いられている表面処理剤を使用することができるが、フィラーの絶縁性を維持できる表面処理剤が好ましい。例えば、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤、高級脂肪酸等、あるいはこれらとシランカップリング剤との混合処理や、Al23、TiO2、ZrO2、シリコーン、ステアリン酸アルミニウム等、あるいはそれらの混合処理がフィラーの分散性及び画像ボケの点からより好ましい。シランカップリング剤による処理は、画像ボケの影響が強くなるが、上記の表面処理剤とシランカップリング剤との混合処理を施すことによりその影響を抑制できる場合がある。表面処理量については、用いるフィラーの平均一次粒径によって異なるが、3〜30wt%が適しており、5〜20wt%がより好ましい。表面処理量がこれよりも少ないとフィラーの分散効果が得られず、また多すぎると残留電位の著しい上昇を引き起こす。これらフィラー材料は単独もしくは2種類以上混合して用いられる。
なお、平均最大膜厚Dは、1.0〜8.0μmの範囲であることが好ましい。長期的に繰り返し使用される感光体は、機械的に耐久性が高く、摩耗しにくいものとする。しかし実機内における、帯電部材などから、オゾン及びNOxガスなどが発生し、感光体の表面に付着する。これらの付着物が存在すると、画像流れが発生する。この画像流れを防止するためには、感光層をある一定速度以上に摩耗する必要がある。そのためには、長期的な繰り返し使用を考慮した場合、表面層は少なくとも1.0μm以上の膜厚であることが好ましい。また表面層膜厚が8.0μmよりも大きい場合は、残留電位上昇や微細ドット再現性の低下が考えられる。
これらフィラー材料は、適当な分散機を用いることにより分散できる。また、分散液中でのフィラーの平均粒径は、1μm以下、好ましくは0.5μm以下にあることが表面層の透過率の点から好ましい。
これらのフィラーは、表面層中に分散されている。
本発明における表面層と感光層とは、前記図2(a)、図2(b)に示したような連続した層構造である。
本発明の感光体は、表面層の平均最大膜厚D(μm)としたとき、最大膜厚の標準偏差σが、Dの1/5以下である場合に有効である。さらには、最大膜厚の標準偏差σが、Dの1/7以下であるとき、さらに良好となる。最大膜厚の標準偏差σは、小さいものが好ましい。しかし最大膜厚の標準偏差σが0となる場合は、感光層樹脂と表面層樹脂は不連続である。
これらの平均最大膜厚D及び最大膜厚の標準偏差σは、前述のように感光体の画像領域部から、選ばれた視野により求められる。
感光層上に表面層を設ける方法としては、浸漬塗工方法、リングコート法、スプレー塗工方法など用いられる。
このうち一般的な表面層の製膜方法としては、微小開口部を有するノズルより塗料を吐出し、霧化することにより生成した微小液滴を感光層上に付着させて塗膜を形成するスプレー塗工方法が用いられる。
次にこのスプレー塗工方法について詳細に説明する。
感光層樹脂を溶解しない溶媒を含有する表面層塗工液を用いて、スプレー塗工を行った場合、感光層と表面層とは相溶しない。感光層と表面層とが相溶しない場合、感光層と表面層とは不連続な層構造となり、上層と下層の間に明確な界面が形成される。このように感光層と表面層とが不連続な層構造となった場合、初期的な画像特性としては良好であるが、長期的使用における機械的耐久性及び電気的安定性が劣化する。そのために表面層用塗工液に用いられている塗工溶媒は、少なくとも感光層樹脂に対して溶解性を有する必要がある。
感光層樹脂を溶解する表面層塗工液を用いて、スプレー塗工を行った場合、感光層と表面層とが相溶する。感光層と表面層とが相溶した場合、感光層と表面層とは連続した層構造となる。このように感光層と表面層とが連続した層構造となった場合、長期的使用における機械的耐久性及び電気的安定性が良好となる。しかし、この塗工の際に感光層を必要以上に溶解した場合は、画像特性の劣化が発生する。
以上のようなことから、本発明の感光体は、感光層樹脂を溶解する表面層塗工液を用いて、スプレー塗工を行い、感光層と表面層を相溶させ、感光層と表面層とを連続した層構造とする。そして、この相溶の程度を本発明で規定した範囲内のものとした場合、長期的使用における機械的耐久性及び電気的安定性が良好となり、さらには、画像特性が非常に良好となる。
このような表面層と感光層の溶解及び相溶状態の制御は、塗工時に感光層上に付着した塗工液中の溶媒がある一定の含有量になるまでにかかる時間が影響を与える。つまり付着したときの塗工液量やその塗工液溶媒の揮発速度が重要となる。
感光層表面に付着した塗工液溶媒が揮発しにくい場合、表面層膜中の溶媒が感光層を溶解しやすくなる。
本発明の感光体は、この塗工液溶媒の膜中での揮発状態を、塗工液条件(溶媒種、固形分濃度等)、スプレー塗工条件(吐出量、吐出圧、ガン送り速度、塗工回数等)、塗工環境(温度、排気エアー量等)などにより制御が可能である。
次に本発明の感光体の良好な作製方法について説明する。
本発明の電子写真感光体における表面層の形成方法を好ましく行うには、該感光層表面に樹脂とフィラーと溶媒とからなる塗工液をスプレー塗工する。この場合、塗工液としては、その溶媒が該感光層表面部に存在する樹脂に対して溶解性を有するものを用いる。スプレー塗工条件は下記式(5)を満足するものを選定する。
Figure 0004676935
(前記式中、Aは該塗工液を基体表面に塗布後60分間放置したときに得られる表面層塗膜重量を示し、Bは完全乾燥後の表面層塗膜重量を示す)
ここで完全乾燥とは、加熱により乾燥し、表面層中の残留溶媒量が1000ppm以下にすることである。
次に、表面層塗工液を固体表面にスプレー塗工し、塗工後60分間放置時の表面層重量A及び完全乾燥後重量Bについて説明する。
まず、素管の塗工前の重量(G1)を測定し、その後、素管表面に塗工液をスプレー塗工して表面層を製膜する。そしてその製膜環境で、60分間放置し、その後の重量(G2)を測定する。そして、加熱完全乾燥後の感光体の重量(G3)を測定する。このときのG1とG2の差をAとし、G1とG3の差をBとする。
A/B値が1.2以下の場合は、表面層塗工時にスプレーの霧化状態が、不安定となる。このような膜条件を用いる場合、霧化中で、塗工液の一部が固形化する場合がある。その固形化したものが、塗工中に、感光層表面に付着する。そしてこの異物が感光体の異常画像の原因となる。
前記A/B値が2.0以上の場合、塗工液による感光層の溶解が過度に進行しやすくなる。
A/B値が2.0以上の塗工液を用いた場合、最大膜厚の標準偏差σが、大きくなる。標準偏差σが最大膜厚の1/5よりも大きくなった場合、前述のように種々の感光体特性が劣化する。
以上のようなことからA/B値を、1.2より大きく2.0未満とすることにより、感光体を得ることができる。最大膜厚の標準偏差σは、本発明で規定した範囲内となり、良好な感光体特性を示す感光体を得ることができる。
次にスプレー塗工で用いる表面層塗工液について説明する。
表面層塗工液の溶媒としては、感光層樹脂を溶解し、かつ表面層樹脂を溶解するものが用いられる。この溶媒は、単独もしくは混合して用いられる。揮発性の高い溶媒を用いた場合は、霧化状態で、塗工液中の一部が固形化し、感光層表層に付着し、膜欠陥となる場合がある。揮発性の低い溶媒を用いた場合は、感光層表面を溶解しやすくなるため、最大膜厚の標準偏差σが大きくなる可能性がある。このようなことから、一般的には、揮発性の高い溶媒と低い溶媒を混合して用いる方法が挙げられる。好ましくは、50℃以上80℃以下の沸点を持つ有機溶剤と130℃以上160℃以下の沸点を持つ有機溶剤を混合した塗工液であることが好ましい。このような混合溶媒を用いることにより、表面層と感光層の相溶状態が、容易に制御が出来る。
80℃未満の沸点を持つ有機溶剤のみを使用した場合は、A/B値が、1.2より小さくなり、前記諸問題が発生しやすくなる。80℃以上の沸点を持つ有機溶剤のみを使用した場合、表面層塗工液が、塗布後、指触乾燥時に、基体表面で垂れやすくなり、異常構造が発生しやすくなる。特に130℃以上の沸点を持つ有機溶剤のみを使用した場合は、前記異常構造の発生に加えて、A/B値が2.0より大きくなり、前記諸問題が発生しやすくなる。
50℃以上80℃以下の沸点を持つ有機溶剤として、テトラヒドロフラン、ジオキソランが用いられ、130℃以上160℃以下の沸点を持つ有機溶剤として、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルフェニルエーテルが用いることが好ましい。50℃以上80℃以下の沸点を持つ有機溶剤と130℃以上160℃以下の沸点を持つ有機溶剤を混合した塗工液を用いて表面層を製膜した場合、指触乾燥後、加熱乾燥を行う必要がある。この加熱乾燥条件により、感光体特性が大きく変化する。加熱乾燥条件としては、乾燥温度130℃以上160℃以下で有ることが好ましく、乾燥時間10分以上60分以下で有ることが好ましい。乾燥温度が低い場合、もしくは、乾燥時間が短い場合、乾燥後の表面層中の残留溶媒量が多くなる。表面層中の残留溶媒量が多い場合、初期において、露光部電位が高くなる。また経時のおいて、電位変動が大きく、画質安定性の点で問題となる。また乾燥温度が高い場合、もしくは、乾燥時間が長い場合、電荷発生層の顔料の結晶化度、結晶系が変化したり、CTL中の低分子成分(酸化防止剤、可塑剤等)が膜中から脱離する可能性がある。このような変化により、初期及び経時の感度特性の劣化や帯電性低下を引き起こす。
また、50℃以上80℃以下の沸点を持つ有機溶剤と130℃以上160℃以下の沸点を持つ有機溶剤を混合した塗工液を用いた場合の指触乾燥条件は、表面層塗工液を塗布後、スプレー塗工機中において、塗工時と同じドラム回転状態で、5分以上放置することが好ましい。
表面層塗工液の固形分濃度によっても、膜質制御が可能となる。固形分濃度が小さい場合、感光層表面に付着した塗工液が乾燥しにくく、感光層表面を溶解しやすくなるため、平均最大膜厚Dの標準偏差σが大きくなる傾向がある。固形分濃度が大きい場合は、霧化状態で、塗工液中の固形分の一部が固形化し、感光層表層に付着し、膜欠陥となる可能性がある。表面層塗工液の固形分濃度は、3.0〜6.0wt%が好ましい。
次にスプレー塗工条件について説明する。
このスプレー塗工条件は、塗工液条件及びスプレーガン種によっても異なる。以下の説明は、一般的な例を示す。
スプレーガンの口径としては、0.5〜0.8mmが好ましい。この範囲より、はずれる口径は、大きくとも、小さくとも、スプレー霧化状態を制御することが難しく、膜質に対しても影響を与える場合がある。
吐出量は、5〜25cc/minが好ましい。吐出量が少ない場合は、塗工速度が遅くなり、生産性が落ちる場合がある。また吐出量が多い場合には、前記の最大膜厚の標準偏差σが大きくなる場合がある。また液量が多く、製膜中に感光体表面で、液がたれ、異常構造になる場合がある。
吐出圧は、1.0〜3.0kg/cmが好ましい。吐出圧が小さい場合、霧化状態で、液滴が均一に微小化されず、感光層表面で、異常構造になる場合がある。吐出圧が大きい場合、微小化された液滴が、感光体で跳ね返り、膜の形成効率が低下したり、異常構造が発生する場合がある。
感光体回転数は、120〜640r.p.mが好ましい。ガン送り速度は、5〜40mm/secが好ましい。これらの条件バランスが崩れた場合、感光体表面で、スパイラル状の異常構造等が発生する場合がある。
ガン−感光体距離は、3〜15cmが好ましい。ガン−感光体距離が近い場合には、安定した霧化状態部分で成膜できないため、異常構造が発生しやすい。ガン−感光体距離が遠い場合には、吐出された液の感光体上への付着効率が低下する場合がある。
ガン送り一回あたりの塗工膜厚は、0.5〜2.0μmの範囲であることが好ましい。ガン送り一回あたりの塗工膜厚とは、表面層を塗工し、加熱乾燥後の表面層膜厚を、塗工回数(ガンを送った回数)で割った値である。ガン送り一回あたりの塗工膜厚0.5μm未満の場合は、他のスプレー条件の制御が難しく、かつ生産性が落ちる。ガン送り一回あたりの塗工膜厚2.0μmを越える場合は、一度に付着する塗工液が多くなり、前記の最大膜厚の標準偏差σが大きくなる場合がある。
本発明の表面層の形成方法は、上記した個々の条件が、お互い複雑に影響を与える。そのために、わずかな条件変更でも、その条件以外のすべての因子が変化する可能性がある。本発明の表面層の形成条件としては、スプレーの霧化状況、感光体の表面形状、膜中のフィラー状態、吐出液の付着効率等を目安として、個々の条件をバランスよく、設定する必要がある。
スプレーを用いた塗工条件としては、前記A/B値が、本発明で規定した範囲を満足するように、設定することが好ましい。
表面層の形成方法は、スプレー塗工方法に限定されるものではなく、本発明の膜状態を達成できる塗工方法であればよい。
表面層は、残留電位低減、応答性改良のため、電荷輸送物質を含有しても良い。電荷輸送物質は、電荷輸送層の説明のところに記載した材料を用いることができる。電荷輸送物質として、低分子電荷輸送物質を用いる場合には、表面層中における濃度傾斜を有しても構わない。耐摩耗性向上のため、表面側を低濃度にすることは有効な手段である。
また、本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、各層に酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、低分子電荷輸送物質およびレベリング剤を添加することが出来る。また塗工液中のさらにフィラー分散性向上のために分散安定剤を添加することができる。これらの化合物の代表的な材料を以下に記す。
各層に添加できる酸化防止剤として、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)フェノール系化合物
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トコフェロール類等。
(b)p−フェニレンジアミン類
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−s−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−s−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミン等。
(c)ハイドロキノン類
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノン等。
(d)有機硫黄化合物類
3,3’−チオジプロピオン酸ジラウリル、3,3’−チオジプロピオン酸ジステアリル、3,3’−チオジプロピオン酸ジテトラデシル等。
(e)有機リン化合物類
トリフェニルホスフィン、トリス(ノニルフェニル)ホスフィン、トリス(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリス(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィン等。
各層に添加できる可塑剤としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(a)リン酸エステル系可塑剤
リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル、リン酸トリクロロエチル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸トリブチル、リン酸トリス(2−エチルヘキシル)、リン酸トリフェニル等。
(b)フタル酸エステル系可塑剤
フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ブチルラウリル、フタル酸メチルオレイル、フタル酸オクチルデシル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチル等。
(c)芳香族カルボン酸エステル系可塑剤
トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリ−n−オクチル、オキシ安息香酸オクチル等。
(d)脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤
アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジ−n−オクチル、アジピン酸n−オクチル−n−デシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジカプリル、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−n−オクチル、セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)、セバシン酸ビス(2−エトキシエチル)、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、テトラヒドロフタル酸ジオクチル、テトラヒドロフタル酸ジ−n−オクチル等。
(e)脂肪酸エステル誘導体
オレイン酸ブチル、グリセリンモノオレエート、アセチルリシノール酸メチル、ペンタエリスリトールエステル、ジペンタエリスリトールヘキサエステル、トリアセチン、トリブチリン等。
(f)オキシ酸エステル系可塑剤
アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、アセチルクエン酸トリブチル等。
(g)エポキシ可塑剤
エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸デシル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ベンジル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジデシル等。
(h)二価アルコールエステル系可塑剤
ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールビス(2−エチルブチラート)等。
(i)含塩素可塑剤
塩素化パラフィン、塩素化ジフェニル、塩素化脂肪酸メチル、メトキシ塩素化脂肪酸メチル等。
(j)ポリエステル系可塑剤
ポリプロピレンアジペート、ポリプロピレンセバケート、ポリエステル、アセチル化ポリエステル等。
(k)スルホン酸誘導体
p−トルエンスルホンアミド、o−トルエンスルホンアミド、N−エチル−p−トルエンスルホンアミド、N−エチル−o−トルエンスルホンアミド、N−シクロヘキシル−p−トルエンスルホンアミド等。
(l)クエン酸誘導体
クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリス(2−エチルヘキシル)、アセチルクエン酸n−オクチルデシル等。
(m)その他
ターフェニル、部分水添ターフェニル、ショウノウ、2−ニトロジフェニル、ジノニルナフタリン、アビエチン酸メチル等。
各層に添加できる滑剤としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(a)炭化水素系化合物
流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、低重合ポリエチレン等。
(b)脂肪酸系化合物
ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等。
(c)脂肪酸アミド系化合物
ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレイルアミド、メチレンビス(ステアリルアミド)、エチレンビス(ステアリルアミド)等。
(d)エステル系化合物
脂肪酸の低級アルコールエステル、脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸のポリグリコールエステル等。
(e)アルコール系化合物
セチルアルコール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセロール等。
(f)金属石けん
ステアリン酸鉛、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等。
(g)天然ワックス
カルナバロウ、カンデリラロウ、蜜ロウ、鯨ロウ、イボタロウ、モンタンロウ等。
(h)その他
シリコーン化合物、フッ素化合物等。
各層に添加できる紫外線吸収剤としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(a)ベンゾフェノン系
2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等。
(b)サルシレート系
サリチル酸フェニル、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸2,4−ジ−t−ブチルフェニル等。
(c)ベンゾトリアゾール系
(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等。
(d)シアノアクリレート系
2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸エチル等。
(e)クエンチャー(金属錯塩系)
ニッケル(2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノレート)n−ブチルアミン、ニッケルジブチルジチオカルバメート、コバルトジシクロヘキシルジチオホスフェート等。
(f)HALS(ヒンダードアミン)
セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等。
次に図面を用いて本発明の電子写真方法ならびに電子写真装置を詳しく説明する。
図9は、本発明の電子写真装置を説明するための概略図であり、下記するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図9において、感光体(2)は、導電性支持体上に、少なくとも感光層と表面層が設けた構造を有する。感光体(2)はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。帯電部材(ローラ)(8)、転写前チャージャ(12)、クリーニング前チャージャ(17)には、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラを始めとする公知の手段が用いられる。帯電部材(8)は、感光体に対し接触もしくは近接配置したものが良好に用いられる。また、帯電用部材により感光体に帯電を施す際、帯電部材の直流成分に対して交流成分を重畳した電界により感光体に帯電を与えることにより、帯電ムラを低減することが可能で効果的である。
転写手段には、一般に上記の帯電器が使用できるが、図に示されるように転写チャージャと分離チャージャを併用したものが効果的である。
また、画像露光部(10)、除電ランプ(7)等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。好ましく発光ダイオード、半導体レーザーが用いられる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
かかる光源等は、図9に示される工程の他に光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程、あるいは前露光などの工程を設けることにより、感光体に光が照射される。
さて、現像ユニット(11)により感光体(1)上に現像されたトナーは、転写紙(14)に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、感光体(2)上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、ファーブラシ(18)およびクリーニングブラシ(19)により、感光体(2)より除去される。クリーニングは、クリーニングブラシだけで行なわれることもあり、クリーニングブラシにはファーブラシ、マグファーブラシを始めとする公知のものが用いられる。
電子写真感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。
これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
かかる現像手段には、公知の方法が適用されるし、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
図10には、本発明による電子写真装置の別の例を示す。感光体(21)は導電性支持体上に、少なくとも感光層と表面層を設けた構造を有する。駆動ローラ(22a),(22b)により駆動され、帯電器(ローラ)(23)による帯電、光源(24)による像露光、現像(図示せず)、帯電器(23)を用いる転写、光源(26)によるクリーニング前露光、ブラシ(27)によるクリーニング、光源(28)による除電が繰返し行なわれる。図9においては、感光体(21)(勿論この場合は支持体が透光性である)に支持体側よりクリーニング前露光の光照射が行なわれる。
図10に関連して示した前記電子写真プロセスは、本発明における実施形態を例示するものであって、もちろん他の実施形態も可能である。例えば、図9において支持体側よりクリーニング前露光を行っているが、これは感光層側から行ってもよいし、また、像露光、除電光の照射を支持体側から行ってもよい。
一方、光照射工程は、像露光、クリーニング前露光、除電露光が図示されているが、他に転写前露光、像露光のプレ露光、およびその他公知の光照射工程を設けて、感光体に光照射を行なうこともできる。
以上に示すような画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段等を含んだ1つの装置(部品)である。プロセスカートリッジの形状等は多く挙げられるが、一般的な例として、図11に示すものが挙げられる。感光体(31)は、導電性支持体上に、少なくとも感光層と表面層を設けた構造のものである。
以下、本発明を実施例及び比較例により説明するが、これにより本発明の態様が限定されるものではない。
実施例1
(下引き層製膜)
アルミニウム製支持体(外径30mmΦ)に、乾燥後の膜厚が3.5μmになるように浸漬法で塗工し、下引き層を形成した。
・下引き層用塗工液
アルキッド樹脂(ベッコゾール1307−60−EL:大日本インキ化学工業)
メラミン樹脂(スーパーベッカミンG−821−60:大日本インキ化学工業)
酸化チタン(CR−EL:石原産業)
メチルエチルケトン
・混合比(重量)
アルキッド樹脂/メラミン樹脂/酸化チタン/メチルエチルケトン=3/2/20/100
(電荷発生層の製膜)
この下引き層上に下記構造のビスアゾ顔料を含む電荷発生層塗工液に浸漬塗工し、加熱乾燥させ、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
・電荷発生層用塗工液
下記構造のビスアゾ顔料
Figure 0004676935

ポリビニルブチラール(XYHL:UCC)
2−ブタノン
シクロヘキサノン
・混合比(重量)
ビスアゾ顔料/ポリビニルブチラール/テトラヒドロフラン=5/1/100/200
(電荷輸送層の製膜)
この電荷発生層上に下記構造の低分子電荷輸送物質を含む電荷輸送層用塗工液を用いて、浸積塗工し、加熱乾燥させ、膜厚22μmの電荷輸送層とした。
・電荷輸送層用塗工液
ビスフェノールZ型ポリカーボネート
下記構造の低分子電荷輸送物質
Figure 0004676935
テトラヒドロフラン
・混合比(重量)
ポリカーボネート/電荷輸送物質/テトラヒドロフラン=1/1/10
(表面層の製膜)
この電荷輸送層上に電荷輸送層に用いた低分子電荷輸送物質を含む表面層用塗工液を用いて、下記条件で、スプレー塗工し、150℃、20分、加熱乾燥させ、表面層とした。
・表面層用塗工液
電荷輸送層に用いた低分子電荷輸送物質
合成例1で作製したビニルピリジングラフトビスフェノールZ型ポリカーボネート
シリカ微粒子(KMPX100:信越化学製)
テトラヒドロフラン
シクロヘキサノン
・混合比(重量)
電荷輸送物質/ポリカーボネート/シリカ微粒子/テトラヒドロフラン/シクロヘキサノン=3/4/3/150/60
・スプレー条件
スプレーガン:A−100(明治機械製)
吐出量 :15cc/min
吐出圧 :3.0kg/cm
感光体回転数 :150r.p.m
ガン送り速度 :17mm/sec
ガン−感光体距離:5cm
塗工回数 :3回
実施例2
表面層のスプレー条件を下記条件にすること以外はすべて、実施例1と同じにして作製した。
・スプレー条件
スプレーガン:A−100(明治機械製)
吐出量 :17cc/min
吐出圧 :2.5kg/cm
感光体回転数 :150r.p.m
ガン送り速度 :14mm/sec
ガン−感光体距離:5cm
塗工回数 :3回
実施例3
表面層のスプレー条件を下記条件にすること以外はすべて、実施例1と同じにして作製した。
・スプレー条件
吐出量 :12cc/min
吐出圧 :3.0kg/cm
感光体回転数 :150r.p.m
ガン送り速度 :17mm/sec
ガン−感光体距離:5cm
塗工回数 :4回
実施例4
表面層のスプレー条件を下記条件にすること以外はすべて、実施例1と同じにして作製した。
・スプレー条件
吐出量 :9cc/min
吐出圧 :3.0kg/cm
感光体回転数 :120r.p.m
ガン送り速度 :16mm/sec
ガン−感光体距離:5cm
塗工回数 :5回
実施例5
表面層の塗工液及びスプレー塗工条件を下記条件とすること以外はすべて、実施例1と同じにして作製した。
・表面層用塗工液
電荷輸送層に用いた低分子電荷輸送物質
合成例4で作製したアクリル酸グラフトビスフェノールZ型ポリアリレート
アルミナ微粒子(AA03:住友化学製)
テトラヒドロフラン
メチルフェニルエーテル
・混合比(重量)
電荷輸送物質/ポリアリレート/アルミナ微粒子/テトラヒドロフラン/メチルフェニルエーテル=3/4/3/170/50
・スプレー条件
スプレーガン:A−100(明治機械製)
吐出量 :16cc/min
吐出圧 :2.0kg/cm
感光体回転数 :250r.p.m
ガン送り速度 :18mm/sec
ガン−感光体距離:5cm
塗工回数 :3回
実施例6
表面層のスプレー条件を下記条件にすること以外はすべて、実施例5と同じにして作製した。
・スプレー条件
スプレーガン:A−100(明治機械製)
吐出量 :14cc/min
吐出圧 :1.8kg/cm
感光体回転数 :250r.p.m
ガン送り速度 :15mm/sec
ガン−感光体距離:5cm
塗工回数 :3回
実施例7
表面層のスプレー条件を下記条件にすること以外はすべて、実施例5と同じにして作製した。
・スプレー条件
吐出量 :12cc/min
吐出圧 :2.0kg/cm
感光体回転数 :250r.p.m
ガン送り速度 :17mm/sec
ガン−感光体距離:5cm
塗工回数 :4回
実施例8
表面層のスプレー条件を下記条件にすること以外はすべて、実施例5と同じにして作製した。
・スプレー条件
吐出量 :9cc/min
吐出圧 :2.0kg/cm
感光体回転数 :250r.p.m
ガン送り速度 :15mm/sec
ガン−感光体距離:5cm
塗工回数 :5回
実施例9
表面層の塗工液及びスプレー塗工条件を下記条件とすること以外はすべて、実施例1と同じにして作製した。
・表面層用塗工液
電荷輸送層に用いた低分子電荷輸送物質
合成例5で作製したビニルピリジングラフトビスフェノールE型ポリカーボネート
チタニア微粒子(CR97:石原産業化学製)
テトラヒドロフラン
シクロヘキサノン
・混合比(重量)
電荷輸送物質/ポリアリレート/チタニア微粒子/テトラヒドロフラン/シクロヘキサノン=3.5/4.5/2/170/50
・スプレー条件
スプレーガン:A−100(明治機械製)
吐出量 :18cc/min
吐出圧 :2.0kg/cm
感光体回転数 :250r.p.m
ガン送り速度 :18mm/sec
ガン−感光体距離:5cm
塗工回数 :2回
実施例10
表面層のスプレー条件を下記条件にすること以外はすべて、実施例9と同じにして作製した。
・スプレー条件
スプレーガン:A−100(明治機械製)
吐出量 :16cc/min
吐出圧 :2.0kg/cm
感光体回転数 :250r.p.m
ガン送り速度 :20mm/sec
ガン−感光体距離:5cm
塗工回数 :3回
比較例1
表面層のスプレー条件を下記条件にすること以外はすべて、実施例1と同じにして作製した。
・スプレー条件
スプレーガン:A−100(明治機械製)
吐出量 :26cc/min
吐出圧 :2.5kg/cm
感光体回転数 :150r.p.m
ガン送り速度 :10mm/sec
ガン−感光体距離:5cm
塗工回数 :1回
比較例2
表面層のスプレー条件を下記条件にすること以外はすべて、実施例5と同じにして作製した。
・スプレー条件
スプレーガン:A−100(明治機械製)
吐出量 :24cc/min
吐出圧 :2.0kg/cm
感光体回転数 :250r.p.m
ガン送り速度 :10mm/sec
ガン−感光体距離:5cm
塗工回数 :1回
比較例3
表面層のスプレー条件を下記条件にすること以外はすべて、実施例9と同じにして作製した。
・スプレー条件
スプレーガン:A−100(明治機械製)
吐出量 :25cc/min
吐出圧 :2.0kg/cm
感光体回転数 :250r.p.m
ガン送り速度 :11mm/sec
ガン−感光体距離:5cm
塗工回数 :1回
比較例4
表面層の塗工液を下記条件とすること以外はすべて、実施例1と同じにして作製した。
・表面層用塗工液
電荷輸送層に用いた低分子電荷輸送物質
ビスフェノールZ型ポリカーボネート
シリカ微粒子(KMPX100:信越化学製)
テトラヒドロフラン
シクロヘキサノン
・混合比(重量)
電荷輸送物質/ポリカーボネート/シリカ微粒子/テトラヒドロフラン/シクロヘキサノン=3/4/3/150/60
比較例5
表面層の塗工液を下記条件とすること以外はすべて、実施例5と同じにして作製した。
・表面層用塗工液
電荷輸送層に用いた低分子電荷輸送物質
合成例3で作製したビスフェノールZ型ポリアリレート
アルミナ微粒子(AA03:住友化学製)
テトラヒドロフラン
メチルフェニルエーテル
・混合比(重量)
電荷輸送物質/ポリアリレート/アルミナ微粒子/テトラヒドロフラン/メチルフェニルエーテル=3/4/3/170/50
比較例6
表面層の塗工液を下記条件とすること以外はすべて、実施例9と同じにして作製した。
・表面層用塗工液
電荷輸送層に用いた低分子電荷輸送物質
合成例5で作製したビスフェノールE型ポリカーボネート
チタニア微粒子(CR97:石原産業化学製)
テトラヒドロフラン
シクロヘキサノン
・混合比(重量)
電荷輸送物質/ポリカーボネート/チタニア微粒子/テトラヒドロフラン/シクロヘキサノン=3.5/4.5/2/170/50
比較例7
表面層の塗工液を下記の条件とし、リングコート法で塗工する以外はすべて実施例1と同様にして感光体を作製した。
・表面層用塗工液
電荷輸送層に用いた低分子電荷輸送物質
合成例4で作製したアクリル酸グラフトビスフェノール
アルミナ微粒子(AA03:住友化学製)
テトラヒドロフラン
・混合比(重量)
電荷輸送物質/ポリアリレート/アルミナ微粒子/テトラヒドロフラン=3/4/3/90
・リングコート条件
塗工速度:2.8mm/sec
比較例8
電荷輸送層及び表面層用塗工液を下記条件とすること以外はすべて実施例1と同じにして作製した。
(電荷輸送層の製膜)
下記構造の低分子電荷輸送物質を含む電荷輸送層用塗工液を用いて、浸積塗工し、加熱乾燥させ、膜厚22μmの電荷輸送層とした。
・電荷輸送層用塗工液
ビスフェノールA型ポリカーボネート
実施例1の低分子電荷輸送物質
ジクロロエタン
・混合比(重量)
ポリカーボネート/電荷輸送物質/ジクロロエタン=1/1/12
(表面層の製膜)
この電荷輸送層上に電荷輸送層に用いた低分子電荷輸送物質を含む表面層用塗工液を用いて、下記条件で、スプレー塗工し、150℃加熱乾燥させ、表面層とした。
・表面層用塗工液
電荷輸送層に用いた低分子電荷輸送物質
合成例1で作製したビニルピリジングラフトビスフェノール
シリカ微粒子(KMPX100:信越化学製)
トルエン
・混合比(重量)
電荷輸送物質/ポリカーボネート/シリカ微粒子/トルエン=3/4/3/220
比較例9
表面層用塗工液を下記条件とすること以外はすべて実施例1と同じにして作製した。
・表面層用塗工液
電荷輸送層に用いた低分子電荷輸送物質
合成例1で作製したビニルピリジングラフトビスフェノールZ型ポリカーボネート
シリカ微粒子(KMPX100:信越化学製)
テトラヒドロフラン
・混合比(重量)
電荷輸送物質/ポリカーボネート/シリカ微粒子/テトラヒドロフラン=3/4/3/210
比較例10
表面層用塗工液を下記条件とすること以外はすべて実施例1と同じにして作製した。
・表面層用塗工液
電荷輸送層に用いた低分子電荷輸送物質
合成例1で作製したビニルピリジングラフトビスフェノールZ型ポリカーボネート
シリカ微粒子(KMPX100:信越化学製)
シクロヘキサノン
・混合比(重量)
電荷輸送物質/ポリカーボネート/シリカ微粒子/シクロヘキサノン=3/4/3/210
比較例11
表面層を設けず、電荷輸送層膜厚を27μmとすること以外は、全て実施例1と同じ
にして感光体を作製した。
実施例及び比較例で用いた表面層塗工液の微粒子分散安定性評価を行うために、沈降試験を行った。沈降管(10ml)に10mlの表面保護層塗工液を入れ、1時間静置した。1時間後の沈降管中の液の懸濁状態を観察した。結果を表1に示す。
Figure 0004676935
○ : 液面上部が懸濁しており、分散安定性が良好
△ : 液面上部がわずかに透明であり、分散安定性が悪い
× : 液全体が透明であり、分散安定性が非常に悪い
次に作製した感光体の断面を切り出し、SEM観察を行い、平均最大膜厚D及び標準偏差σを求めた。また、感光層、下引き層を設けていないアルミ製支持体上に実施例及び比較例と同様に表面層を製作し、A/Bの値を求めた。 結果を表2に示す。
Figure 0004676935
(表中、Aは該塗工液を基体表面に塗布後60分間放置したときに得られる表面層塗膜重量を示し、Bは完全乾燥後の表面層塗膜重量を示す。)
比較例9及び10は初期より表面形状の異常が認められため、通紙試験を中止した。
次に実施例で作製した感光体を、画像露光光源を655nmの半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる書き込み)に改造したイマジオNEO271(リコー社製)を用いて、12万枚(A4)通紙試験を行った。そして、初期及びラン後の画像特性評価、摩耗量を測定した。摩耗量は、感光体上の20点の膜厚を渦電流式膜厚計(FisherscopeMMS)で測定し、初期からの膜厚減少量を求めた。結果を表3、表4に示す。
Figure 0004676935
表3におけるハーフトーン等の項目の評価基準は以下のとおりである。
(1)ハーフトーン画像(ハーフトーン画像をとり、目視及び光学顕微鏡で評価した。)
◎…非常に良好
○…良好(局所的にざらつき感がある)
△…画像全体にざらつき感がある
×…濃度ムラ発生
(2)黒ベタ端部(白画像中に大きさ5cm×3cmの黒ベタ画像をとり、目視及び光学顕微鏡で評価した。)
○…良好
×…端部における黒ベタ太りおよびトナー飛散が見られる。
Figure 0004676935

比較例8サンプルは、7k枚通紙後に膜の剥離が確認されたため、通紙試験を中止した。
比較例11サンプルは、6k枚通紙後の摩耗量が大きかったため、通紙試験を中止した。
本発明の優れた効果は、表1の塗工液の沈降性試験、表4の画像評価試験の結果から明らかである。表1では、あきらかにグラフト重合させた樹脂が入っていない塗工液は、沈降性試験では非常に悪く、塗工液の安定性という点で問題となっている。さらに表3においては、グラフト重合されていない樹脂の塗工液を用いて作製したものに関しては、ハーフトーン画像評価はグラフト重合されている樹脂の塗工液を用いて作製したものに比べて悪くなっている。この点で特定樹脂を用い作製された本発明の樹脂の電子写真感光体は、その有効性が明確に理解される。
フィラーを含有する表面層の摩耗メカニズムを示す。 本発明の感光体の説明拡大断面図と、その断面図を用いた平均最大膜厚Dを算出するために用いるサンプリング例、その断面図を用いた最大膜厚Dnを測定するための測定例、比較のための感光体の説明拡大断面図を示した図である。 感光層と表面層とを連続的に製膜した構造を有する感光体に光を照射した場合の光量ムラの発生メカニズムを説明するための図である。 感光層と表面層とを連続的に製膜した構造を有する感光体における電荷トラップムラの発生メカニズムを説明するための図である。 感光層と表面層とを連続的に製膜した構造を有する感光体における摩耗速度ムラの発生メカニズムを説明するための図である。 本発明の感光体の構成の一例を示す説明断面図である。 本発明の感光体の構成の他の例を示す説明断面図である。 本発明の感光体の構成のさらに他の例を示す説明断面図である。 本発明の感光体を用いた画像形成装置の一つの例についての説明構成図である。 本発明の感光体を用いた画像形成装置の他の例についての説明構成図である。 本発明の感光体を用いるプロセスカートリッジの一つの例についての説明構成図である。
符号の説明
1 表面層
1a フィラー
1b 結着樹脂
1c トナー
2、21、31 感光体
7 除電ランプ
8、35 帯電部材
9 イレーサ
10、36 画像露光部
11 現像ユニット
12 転写前チャージャ
13 レジストローラ
14 転写紙
15 転写ベルト
16 分離爪
17 クリーニング前チャージャ
18 ファーブラシ
19 クリーニングブラシ
22a、22b 駆動ローラ
23 帯電ローラ
24 像露光源
25 転写チャージャ
26 クリーニング前露光
27 クリーニングブラシ
28 除電光源
32 転写ローラ
33 現像ローラ
34 クリーニングブラシ

Claims (13)

  1. 導電性支持体上に少なくとも感光層とポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂に極性基を有するモノマーをグラフト重合することにより得られるグラフト共重合体を含む樹脂中にフィラーが分散されている表面層とを順次製膜し、かつ該感光層と該表面層とが連続した層構造を有する電子写真感光体であって、前記極性基を有するモノマーは、アクリル酸または4−ビニルピリジンであり、前記表面層の平均最大膜厚をDμmとしたとき、該表面層の最大膜厚の標準偏差σが、Dの1/5以下であることを特徴とする電子写真感光体。
  2. 前記表面層の最大膜厚の標準偏差σが、Dの1/7以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 該表面層に含有されるフィラーが無機フィラーであることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体。
  4. 該表面層に含有されるフィラーが金属酸化物であることを特徴とする請求項3に記載の電子写真感光体。
  5. 該金属酸化物が少なくとも酸化珪素、酸化チタン及び酸化アルミニウムの中から選ばれる少なくとも1つの物質を含むものであることを特徴とする請求項4に記載の電子写真感光体。
  6. 該表面層が電荷輸送物質を含有することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の電子写真感光体。
  7. 導電性支持体上に少なくとも感光層と表面層とを順次製膜してなり、該表面層がポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂に極性基を有するモノマーをグラフト重合することにより得られるグラフト共重合体を含む樹脂中にフィラーが分散されており、かつ該感光層と該表面層とが連続した層構造を有し、該表面層の平均最大膜厚をDμmとしたとき、該表面層の最大膜厚の標準偏差σが、Dの1/5以下である電子写真感光体の表面層形成方法であって、前記極性基を有するモノマーは、アクリル酸または4−ビニルピリジンであり、前記感光層表面に少なくとも樹脂とフィラーと溶媒とからなる塗工液をスプレー塗工する工程を有し、該塗工液の溶媒が該感光層表面部に存在する樹脂に対して溶解性を有し、かつ該塗工条件が下記式(1)を満足することを特徴とする電子写真感光体の表面層形成方法。
    Figure 0004676935
    (前記式(1)中、Aは該塗工液を基体表面に塗布後60分間放置したときに得られる表面層塗膜重量を示し、Bは完全乾燥後の表面層塗膜重量を示す)
  8. 請求項7に記載の電子写真感光体の表面層形成方法に用いる表面層塗工液であって、50℃以上80℃以下の沸点を持つ有機溶剤と130℃以上160℃以下の沸点を持つ有機溶剤を混合した混合溶媒を用いることを特徴とする表面層塗工液。
  9. 該塗工液の固形分濃度が3.0〜6.0wt%であることを特徴とする請求項8に記載の表面層塗工液。
  10. 導電性支持体上に少なくとも感光層と表面層とを順次製膜してなり、該表面層がポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂に極性基を有するモノマーをグラフト重合することにより得られるグラフト共重合体を含む樹脂中にフィラーが分散されており、かつ該感光層と該表面層とが連続した層構造を有し、該表面層の平均最大膜厚をDμmとしたとき、該表面層の最大膜厚の標準偏差σが、Dの1/5以下である電子写真感光体の製造方法であって、該塗工液として請求項8または9に記載の塗工液を用いるとともに、該表面層塗工後、加熱乾燥し、該加熱乾燥温度が、130℃以上160℃以下であり、かつ該加熱乾燥時間が、10分以上60分以下であることを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
  11. 少なくとも帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段及び電子写真感光体を具備してなる画像形成装置において、該感光体として、請求項1乃至6の何れかに記載の電子写真感光体を用いたことを特徴とする画像形成装置。
  12. 電子写真感光体を具備するプロセスカートリッジにおいて、該感光体として、請求項1乃至6の何れかに記載の電子写真感光体を用いたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
  13. 電子写真感光体を用いる画像形成方法において、該感光体として、請求項1乃至6の何れかに記載の電子写真感光体を用いることを特徴とする画像形成方法。
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