JP4676877B2 - 粒子形状の制御された高結晶性アナターゼ型酸化チタン超微粒子、及びその製造方法 - Google Patents

粒子形状の制御された高結晶性アナターゼ型酸化チタン超微粒子、及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は酸化チタン粒子の製造方法に関し、特に本方法で製造された粒子の分散液の粒度分布粒径が10〜150nmの範囲で任意に分散しており、アナターゼ単相から構成される高結晶性を有し、特異の結晶面の成長したアナターゼ単相酸化チタン超微粒子の製造方法に関するものである。
酸化チタンの用途としては高い屈折率と白色隠蔽性を利用した塗料、紫外線遮蔽効果を利用して化粧品や自動車や窓ガラス用可視光透過紫外光カットフィルム、光触媒性を利用した大気中浄化装置、超親水性及び光触媒作用を利用した建築物外装用タイル、光半導体性を利用した色素増感太陽電池の半導体電極など多方面に使用されている。
最も一般的な微粒子酸化チタンの製造方法は、硫酸法及び塩素法である。また市販されている酸化チタン粒子の合成方法としては、水熱合成法、四塩化チタンの燃焼分解法、ゾルゲル法、プラズマCVD法などを挙げらことができる。しかしながら、このような従来の合成法により製造される酸化チタン微粒子は、その形状が不定形であり、結晶性が良くなく、粒度分布も広く、純度も低い。このような酸化チタン微粒子の場合、利用方法が限られ、塗料および顔料、紫外線カットフィルム用途等、光半導体性を利用しない用途にしか利用できない。
しかしながら、近年需要が高まっている複合材料、高機能材料、各種電子機器材料、色素増感型太陽電池用途材料として酸化チタンを用いる場合は、一定の形状を有する、粒子径のそろった、純度の高い酸化チタン微粒子が必要とされている。
一方、粒子形状を制御した酸化チタン微粒子の製造方法としては、例えば、特許文献1〜4等の報告例がある。しかしながら、いずれの報告例も粒子径のそろった酸化チタン微粒子が得られていない、粒子径が大きい、種々の試薬を用いている為コストが高くなる、特に色素増感太陽電池用途としては効率が上がっていないという点において、上記の要求を十分に満足させるものではなかった。
特開平9−175821 特開平10−265223 特開2001−262007 特開2004−315356
本発明は、狭小な粒度分布を有するとともに形状が安定し、結晶性に優れた新規な酸化チタン超微粒子を提供することを目的とする。
上記目的を達成すべく、本発明は、
粒子径の範囲が5〜100nmで、結晶面{101}を主面として有し、アナターゼ単相を含むことを特徴とする、酸化チタン超微粒子に関する。
また、本発明は、上記酸化チタン超微粒子の製造方法であって、
チタンアルコキシド又はチタン金属塩の加水分解生成物を出発原料とし、これにアルカリ水溶液、水、ジオールまたはトリオールを混合して混合溶液を作製し、この混合溶液を水熱処理し結晶化することによって前記酸化チタン超微粒子を得ることを特徴とする、酸化チタン超微粒子の製造方法に関する。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を実施した。その結果、チタンアルコキシド又はチタン金属塩の加水分解生成物を出発原料とし、これにアルカリ水溶液、水、ジオールまたはトリオールを混合して混合溶液を作製し、この混合溶液を水熱処理した後結晶化するという全く新規な製造方法を採用することによって、粒子径の範囲が5〜100nmという狭小な粒度を有し、結晶面{101}を主面として有し、アナターゼ単相を含む高結晶性の酸化チタン超微粒子を得ることができることを見出した。
そして、このような酸化チタン超微粒子は、上記製造工程を経ることにより、例えばその製造過程である水熱処理及び結晶化した後の残留溶液中に分散した状態で得られるが、このような分散液中で、例えばその粒度分布幅が18〜52nmで酸化チタンの90%累積強度粒度分布径D90が46nm以下であるような状態で分散し、又は粒度分布幅が13〜41nmで酸化チタンの90%累積強度粒度分布径D90が32nm以下であるような状態で分散し、又は粒度分布幅が20〜92nmで酸化チタンの90%累積強度粒度分布径D90が58nm以下であるような状態で分散することができる。したがって、上述のようにして得た酸化チタン超微粒子は極めて狭小な粒度分布幅を有することが分かる。
したがって、本発明によれば、狭小な粒度分布を有するとともに形状が安定し、結晶性に優れた新規な酸化チタン超微粒子を提供することができる。
また、上述したように、本発明の酸化チタン超微粒子は、上述した製造方法の結果として一般的には分散液の状態で提供される。前記酸化チタン超微粒子は、このような分散液から直接分離して別途取り出すようにすることもできるが、一般には分散液の状態で所定の用途に供されるようになる。この分散液は特に上述した狭小な粒度及び粒度分布に起因して透明性が高く、この分散液を用いた塗布膜の透明性も高くなる。その結果、光触媒への利用、透明性超親水膜への応用、色素増感太陽電池の高性能化の目的で好適に用いることができる。
さらに、前記酸化チタン超微粒子はアナターゼ単相を含む高結晶性を呈するため、近年需要が高まっている複合材料、高機能材料、各種電子機器材料、特に色素増感型太陽電池用途材料(例えば光半導体電極)などとして好適に用いることができる。
以上説明したように、本発明によれば、従来の塗料および顔料、紫外線カットフィルム用途に加えて、光触媒、超親水性膜、及び特に色素増感型太陽電池などの用途に好適に用いることが可能な、狭小な粒度分布を有するとともに形状が安定し、結晶性に優れた新規な酸化チタン超微粒子を提供することができる。
以下、本発明の詳細、並びにその他の特徴及び利点について、発明を実施するための最良の形態に基づいて説明する。
(本発明の酸化チタン超微粒子の製造方法)
本発明の酸化物チタン超微粒子は、チタンアルコキシド又はチタン金属塩を出発原料とする。
前記チタンアルコキシドとしては、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラノルマルプロポキシチタン、テトラノルマルブトキシチタンを例示することができる。加水分解速度の制御性および入手容易性の観点からテトライソプロポキシチタン、テトラノルマルブトキシチタンが好適に使用でき、テトライソプロポキシチタンが特に好適である。また、前記チタン金属塩としては、四塩化チタン及び硫酸チタンを例示することができる。
これらの加水分解生成物はメタチタン酸やオルトチタン酸と呼ばれる含水酸化チタンのケーキ状物質であるが、そのケーキ内部には加水分解の過程で生成されたアルコール類や塩酸、硫酸が含有されている。これらの物質は結晶成長の際に阻害物質となるため、純水を用いデカンテーション、ヌッチェ法、限外濾過法などの方法を用い洗浄することが好ましい。
次いで、上記出発原料に対してアルカリ水溶液、水、ジオール又はトリオールを混合して混合溶液を作製する。
前記アルカリ水溶液としては、アミン類、高分子アミンおよびその塩、並びにアンモニアを含む有機アルカリ類を例示することができる。前記アミン類としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン等が挙げられる。また前記高分子アミン及びその塩としては、前記アミン類からなる高分子アミンおよびその塩を例示することができる。なお、前記有機アルカリ類は、前記反応溶液に対してpH調整剤として働く。
なお、上記のpH調整剤であるアルカリ類は一種類である必要は無く、数種類の添加が可能である。
また、上述したジオールまたはトリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、へキシレングリコール、オクチレングリコール、グリセリン、ヘキサグリセロール、1,2,6-ヘキサントリオールを用いることができるが、アルカリへの安定性、沸点、酸化チタンへの吸着性の観点から、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ヘキサグリセロールが好適に使用でき、エチレングリコール、グリセリンが特に好適である。
また、混合溶液中における水は主溶媒として機能するものである。但し、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、その他の溶媒を主溶媒として用いることもできる。
前記混合溶液中のpHは9〜13であることが好ましく、さらにはpH11〜13であることが好ましい。前記混合溶液中のpHを変化させると、得られる酸化チタン超微粒子の粒子径が若干変化するようになる。そして、pHが上述した範囲より低い場合においては、核形成への触媒作用が小さくなり核形成が一気に起きず、チタン源が主に核成長に用いられる為、粒子径が本発明で規定した範囲よりも大きくなってしまう場合がある。一方、pHが上述した範囲より高い場合においては、逆に核形成が一気に起こって粒子径が本発明で規定した範囲よりも小さくなってしまう場合がある。また分散性も変化し、粒度分布幅が増大してしまい、上述した種々の用途に供することのできる酸化チタン超微粒子を製造することができない場合がある。
本発明において、前記混合溶液中におけるチタン源の濃度は、チタン原子濃度で0.05mol/kg〜3.0mol/kgの範囲であることが好ましい。この場合もチタン濃度が低くなるとチタン源のモノマーが過飽和度に達せず核形成がゆっくり起こるので、粒子径は大きくなり、チタン濃度が高くなると逆に核形成が一気に起きて粒子径は小さくなる。また分散性も変化する。したがって、上述した種々の用途に供することのできる酸化チタン超微粒子を製造することができない場合がある。さらに好ましくはチタン原子濃度で0.5mol/kg〜2.5mol/kgである。
また、前記混合溶液中におけるチタン源とアルカリ源との混合比は用いるアルカリ水溶液によって異なるが、上記同様の理由からmol比で1:0.01〜1:0.32の範囲であることが好ましい。
さらに、前記混合溶液中におけるチタン源とジオール又はトリオールとの混合比はmol比で1:0.1〜1:2の範囲であることが好ましい。この範囲よりジオール又はトリオールの添加量が少ないと粒子径制御の効果が現れず、この範囲より多くしても効果が高まるわけではない。この理由としては、本発明でのジオールまたはトリオールの作用は、核形成した酸化チタンの特異面、本発明においては{101}面への化学吸着により、ある特異面の成長を阻害することによって特異な形状を得、またその表面修飾によって分散性の高い状態を保持している。その為、添加量が少ないと、形状制御の点及び分散性が上がらず、多すぎても溶媒中に余剰存在するだけなので、特に他の効果がでるわけではないからである。
本発明における反応条件としては、温度150℃〜350℃程度の密閉容器中で行う。昇温時間は1時間から3時間程度である。反応容器内の圧力は温度に依存して変化する。攪拌速度としては200rpm程度でよい。反応槽の温度、昇温時間によってできる粒子の形状、粒子径を変えることができまた分散性も変化する。好ましくは150℃〜210℃である。
本発明における反応時間としては、仕込み液中のチタン源、pH、ジオールまたはトリオールの濃度に依存するが、3時間から12時間程度が好ましい。3時間よりも短いと、反応がすべて終わらず、12時間より長くてもそれ以降の変化は無い。好ましくは4時間〜9時間の範囲である。
本発明における製造フローは、まずチタン源であるチタンアルコキシド又はチタン金属塩を、水中に滴下することによって、加水分解生成物であるメタチタン酸やオルトチタン酸と呼ばれる含水酸化チタン得る。この加水分解生成物を純水を用いてデカンテーション、ヌッチェ法、限外濾過法などの方法を用いて洗浄し含水固形分のみを回収する。この加水分解生成物、アルカリ水溶液、ジオール又はトリオール、溶媒を仕込み濃度分混合し密閉容器へ入れ昇温して反応させ、水熱して結晶化させることにより、目的とする粒子径の範囲が5〜100nmで、結晶面{101}を主面として有し、アナターゼ単相を含むことを特徴とする、酸化チタン超微粒子を得ることができる。
なお、前記酸化チタン超微粒子は、前記水熱処理及び結晶化した後の残留溶液中に分散した状態で得られるが、このような分散液中で、例えばその粒度分布幅が18〜52nmで酸化チタンの90%累積強度粒度分布径D90が46nm以下であるような状態で分散し、又は粒度分布幅が13〜41nmで酸化チタンの90%累積強度粒度分布径D90が32nm以下であるような状態で分散し、又は粒度分布幅が20〜92nmで酸化チタンの90%累積強度粒度分布径D90が58nm以下であるような状態で分散することができる。したがって、上述のようにして得た酸化チタン超微粒子は極めて狭小な粒度分布幅を有することが分かる。
したがって、上述した製造工程を経ることにより、狭小な粒度分布を有するとともに形状が安定し、結晶性に優れた新規な酸化チタン超微粒子を提供することができる。
また、上述したように、本発明の酸化チタン超微粒子は、上述した製造方法の結果として一般的には分散液の状態で提供される。前記酸化チタン超微粒子は、このような分散液から直接分離して別途取り出すようにすることもできるが、一般には分散液の状態で所定の用途に供されるようになる。この分散液は特に上述した狭小な粒度及び粒度分布に起因して透明性が高く、この分散液を用いた塗布膜の透明性も高くなる。その結果、光触媒への利用、透明性超親水膜への応用、特に色素増感太陽電池の高性能化の目的で好適に用いることができる。
(光電変換素子及び太陽電池の製造方法)
次に、本発明の酸化チタン超微粒子の最も典型的な応用例として、光電変換素子に適用した場合の例について説明する。
色素増感された光電変換素子及び光電気化学電池は、導電性支持体上に形成された色素を吸着した半導体微粒子含有層からなる光電極、電荷移動層、対極から構成される。特にNature(第353巻、737〜740頁、1991年)および米国特許4927721号等には、色素によって増感された半導体微粒子を用いた光電変換素子および太陽電池、ならびにこれを作製するための材料および製造技術が開示されている。こうした状況の中、色素増感太陽電池光半導体電極用途には、特に粒子径、結晶性、粒度分布、純度、結晶面といった点が、太陽光変換効率に大きく影響するが、今までの製造方法で作製された酸化チタン超微粒子は、これらを満足させるものではなかった。
しかしながら、本発明の酸化チタン超微粒子は、上述のように、粒子径が小さく、結晶性及び純度に優れるとともに、粒度分布についても十分に狭小化されているので、このような酸化チタン超微粒子を光電変換素子及び太陽電池などの光半導体電極として用いた場合に、前記光半導体電極の透明性を増大させることができるとともに、前記酸化チタン超微粒子の表面積の増大に伴って吸着できる色素の割合を増大させることができる。したがって、得られる光電変換素子及び太陽電池の光電変換率などを十分に増大させることができる。
以下、本発明の酸化チタン超微粒子を光半導体電極として用いた場合の、光電変換素子及び太陽電池の作製方法の一例を示す。
最初に、本発明の酸化チタン超微粒子を含む酸化物光半導体多孔質薄膜電極(光半導体電極)の作製方法について説明する。透明基板を準備し、この上に透明導電層を形成して、透明導電性基板を作製する。透明導電層はスパッタリング法やCVD法、あるいは塗布法など公知の成膜技術を用いて形成することができる。また、市販の透明導電層が形成された透明基板を透明導電性基板として直接的に使用することもできる。
次いで、本発明の酸化チタン超微粒子を含む酸化物光半導体ペーストを準備し、透明導電性基板上にスクリーン印刷し、焼成して酸化物光半導体微粒子以外の成分を除去することによって、透明導電性基板上に酸化物光半導体微粒子膜を形成する。
上記の焼成の温度としては、250〜600℃が用いられ、好ましくは400〜550℃が用いられる。焼成温度が上記の範囲よりも低いと良好な粒子間結合が得られないため、作製した酸化物光半導体微粒子膜が高抵抗な膜になって好ましくない。また、焼成温度が上記の範囲よりも高いと、近傍の粒子との粒成長が顕著になり、比表面積が低下するため光電変換素子の電極として好ましくない。
次いで、所定の溶媒中に増感色素を溶解させて増感色素溶液を作製し、この溶液中に上述のようにして作製した酸化物半導体微粒子膜を基板ごと浸漬させることによって、増感色素を酸化物半導体微粒子上に吸着させ担持させる。前記溶媒としては、メタノール、エタノール、2プロパノール、1ブタノール、t-ブタノール等のアルコール類、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、3メトキシプロピオニトリル等のニトリル類、またはこれらの混合溶媒を用いることができる。
上記半導体層に担持させる色素としては、例えば、金属錯体系色素、有機色素等を用いることができる。金属錯体色素としては、金属フタロシアニン、クロロフィル、ヘミン等やルテニウム、オスミウム、鉄、亜鉛を1以上含有する錯体等の金属錯塩が挙げられる。なかでも、ルテニウム金属錯体を好ましく用いることができ、その中でもルテニウムビピリジン錯体、ルテニウムターピリジン錯体が好ましい。一方、有機色素としては、クマリン誘導体系色素、ポリエン系色素、メロシアニン系色素、アゾ系色素、キノン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、スチリル系色素、キサンテン系色素等などが挙げられる。なかでも、クマリン誘導体系色素を好ましく用いることができる。
以上のような操作を経ることにより、増感色素が吸着した酸化物光半導体微粒子膜、すなわち酸化物光半導体電極を得ることができる。
次いで、上述のようにして得た酸化物光半導体電極に対して対向電極を配置し、これら電極間に電解質を介在させることによって目的とする光電変換素子又は太陽電池を得る。
対向電極は、例えば、Al、SUS等の金属やガラス及びプラスチックなどから構成される基板と、その上に形成されるPt、C、Ni、Cr、ステンレス、フッ素ドープ酸化スズ及びITOなどの導電層から構成される。なお、対向電極は、表面にフッ素ドープ酸化スズなどの導電層を設けた導電性ガラスから構成することもできる。
電解質は、固体状及び液体状のものを使用することができる。具体的には、ヨウ素系電解質、臭素系電解質、セレン系電解質、硫黄系電解質等各種の電解質をもちいることが可能であり、I、LiI、ジメチルプロピルイミダゾリウムヨージド等をアセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカボネート等の有機溶剤に溶かした溶液等が好適に用いられる。
なお、液体状の電解質を用いる場合は、前記酸化物光電極と前記対向電極との間に隔壁を設け、このようにして形成された空間内に前記電解質を注入するようにする。
以上のような工程を経ることにより、本発明の酸化チタン超微粒子を酸化物光半導体電極として用いたことによる、十分に高い光電変換率の光電変換素子及び太陽電池を得ることができる。
以下、本発明を実施例に従って具体的に説明するが、本発明は実施例の内容に限定されるものではない。
なお、酸化チタン粒子の評価についてはXRD(X’Pert PRO MPD(PANalytical社製)で相同定を、TEM(H-800 ELECTRON MICROSCOPE(HITACHI社製)で粒子形状、粒子径を評価した。また、酸化チタン分散液の粒度分布及び分散性の評価については、粒度分布計(HPPS(Malvern Instruments Ltd))で行った。
さらに、本実施例では、本発明により作製された酸化チタン粒子の有意性を見るために、色素増感太陽電池にして評価を行った。色素増感太陽電池の評価には光電変換特性で比較を行った。
<酸化チタン超微粒子の製造>
(実施例1)
容量1Lのガラス容器に15℃に冷却した純水250mLを入れ、撹拌羽で400rpmで撹拌しながら、高純度化学社製チタンテトライソプロポキシド71gを滴下ロートを用いて滴々投入した。撹拌を1時間行い、白色水性懸濁液を得た。この白色水性懸濁液をヌッチェと東洋濾紙社製濾紙No2で吸引濾過を行い、続いて純水1250mLで洗浄を行い、白色ケーキ状物質が得られた。この白色ケーキ状物質に、東京化成社製テトラメチルアンモニウムヒドロキシド26%水溶液7.0g、グリセリン23gを加え、仕込み液の総量が250gになるように純水を追加した。このときのスラリーのpHは11.4であった。これを密閉容器中に投入し、210℃で9時間加熱処理を行い、酸化チタン水分散液を得た。得られた酸化チタン水分散液を粒度分布計(HPPS(Malvern Instruments Ltd))、TEM(H-800 ELECTRON MICROSCOPE(HITACHI社製)で評価した。
(実施例2)
容量1Lのガラス容器に15℃に冷却した純水250mLを入れ、撹拌羽で400rpmで撹拌しながら高純度化学社製チタンテトライソプロポキシド71gを滴下ロートを用いて滴々投入した。撹拌を1時間行い、白色水性懸濁液を得た。この白色水性懸濁液をヌッチェと東洋濾紙社製濾紙No2で吸引濾過を行い、続いて純水1250mLで洗浄を行い、白色ケーキ状物質が得られた。この白色ケーキ状物質に、東京化成社製テトラメチルアンモニウムヒドロキシド26%水溶液7.0g、グリセリン23gを加え、仕込み液の総量が250gになるように純水を追加した。このときのスラリーのpHは12.6であった。これを密閉容器中に投入し、150℃で9時間加熱処理を行い、酸化チタン水分散液を得た。得られた酸化チタン水分散液を粒度分布計(HPPS(Malvern Instruments Ltd))、TEM(H-800 ELECTRON MICROSCOPE(HITACHI社製)で評価した。
(実施例3)
容量1Lのガラス容器に15℃に冷却した純水250mLを入れ、撹拌羽で400rpmで撹拌しながら、高純度化学社製チタンテトライソプロポキシド36gを滴下ロートを用いて滴々投入した。撹拌を1時間行い、白色水性懸濁液を得た。この白色水性懸濁液をヌッチェと東洋濾紙社製濾紙No2で吸引濾過を行い、続いて純水1250mLで洗浄を行い、白色ケーキ状物質が得られた。この白色ケーキ状物質に、東京化成社製テトラメチルアンモニウムヒドロキシド26%水溶液7.0g、グリセリン6.0gを加え、仕込み液の総量が250gになるように純水を追加した。このときのスラリーのpHは12.1であった。これを密閉容器中に投入し、210℃で4.5時間加熱処理を行い、酸化チタン水分散液を得た。得られた酸化チタン水分散液を粒度分布計(HPPS(Malvern Instruments Ltd))、TEM(H-800 ELECTRON MICROSCOPE(HITACHI社製)で評価した。
(実施例4)
容量1Lのガラス容器に15℃に冷却した純水250mLを入れ、撹拌羽で400rpmで撹拌しながら、高純度化学社製チタンテトライソプロポキシド71gを滴下ロートを用いて滴々投入した。撹拌を1時間行い、白色水性懸濁液を得た。この白色水性懸濁液をヌッチェと東洋濾紙社製濾紙No2で吸引濾過を行い、続いて純水1250mLで洗浄を行い、白色ケーキ状物質が得られた。この白色ケーキ状物質に、東京化成社製テトラメチルアンモニウムヒドロキシド26%水溶液14g、グリセリン23gを加え、仕込み液の総量が250gになるように純水を追加した。このときのスラリーのpHは12.3であった。これを密閉容器中に投入し、210℃で9時間加熱処理を行い、酸化チタン水分散液を得た。得られた酸化チタン水分散液を粒度分布計(HPPS(Malvern Instruments Ltd))、TEM(H-800 ELECTRON MICROSCOPE(HITACHI社製)で、この水分散液の200℃乾燥粉をXRD(X’Pert PRO MPD(PANalytical社製)で評価した。
(実施例5)
容量1Lのガラス容器に15℃に冷却した純水250mLを入れ、撹拌羽で400rpmで撹拌しながら高純度化学社製チタンテトライソプロポキシド36gを滴下ロートを用いて滴々投入した。撹拌を1時間行い、白色水性懸濁液を得た。この白色水性懸濁液をヌッチェと東洋濾紙社製濾紙No2で吸引濾過を行い、続いて純水1250mLで洗浄を行い、白色ケーキ状物質が得られた。この白色ケーキ状物質に、東京化成社製テトラメチルアンモニウムヒドロキシド26%水溶液7.0g、グリセリン11.5gを加え、仕込み液の総量が250gになるように純水を追加した。このときのスラリーのpHは12.6であった。これを密閉容器中に投入し、210℃で4.5時間加熱処理を行い、酸化チタン水分散液を得た。得られた酸化チタン水分散液を粒度分布計(HPPS(Malvern Instruments Ltd))、TEM(H-800 ELECTRON MICROSCOPE(HITACHI社製)で評価した。
(比較例1)
容量1Lのガラス容器に15℃に冷却した純水250mLを入れ、撹拌羽で300rpmで撹拌しながら、高純度化学社製チタンテトライソプロポキシド71gを滴下ロートを用いて滴々投入した。撹拌を1時間行い、白色水性懸濁液を得た。この白色水性懸濁液をヌッチェと東洋濾紙社製濾紙No2で吸引濾過を行い、続いて純水1250mLで洗浄を行い、白色ケーキ状物質が得られた。この白色ケーキ状物質と、東京化成社製テトラメチルアンモニウムヒドロキシド26%水溶液11.2gを加え、総量で250gになるように純水を添加した。このときのスラリーのpHは11.8であった。これを密閉容器中に投入し、210℃で4.5時間加熱処理を行い、酸化チタン水分散液を得た。得られた酸化チタン水分散液を粒度分布計(HPPS(Malvern Instruments Ltd))、TEM(H-800 ELECTRON MICROSCOPE(HITACHI社製)で評価した。
(比較例2)
容量1Lのガラス容器に15℃に冷却した純水250mLを入れ、撹拌羽で300rpmで撹拌しながら、高純度化学社製チタンテトライソプロポキシド71gを滴下ロートを用いて滴々投入した。撹拌1時間を、行い白色水性懸濁液を得た。この白色水性懸濁液をヌッチェと東洋濾紙社製濾紙No2で吸引濾過を行い、続いて純水1250mLで洗浄を行い、白色ケーキ状物質が得られた。この白色ケーキ状物質と、東京化成社製テトラメチルアンモニウムヒドロキシド26%水溶液14gを加え、総量で250gになるように純水を添加した。このときのスラリーのpHは13.2であった。これを密閉容器中に投入し、撹拌しながら120℃で4時間、次いで210℃で4.5時間加熱処理を行い、酸化チタン水分散液を得た。得られた酸化チタン水分散液を粒度分布計(HPPS(Malvern Instruments Ltd))、TEM(H-800 ELECTRON MICROSCOPE(HITACHI社製)で評価した。
以下、上述した実施例及び比較例における製造条件、及び得られた粒度分布特性の結果を表1及び2に示す。なお、D90は、90%累積強度粒度分布径である。またZ-average sizeは散乱光強度より算出した粒子径のことであり、PDIは、Polydispersity indexの略で、値が小さいほど単分散性が良いことを意味する。この二つのデータはキュムラント解析で得られる値である。
また、上記実施例及び上記比較例で得た酸化チタン超微粒子の粒子形状のTEM写真を図1〜7に示す。
実施例1と2とを比較すると主に異なるのは密閉容器中における反応温度である。反応温度を変える事によって、ジオール、トリオール系添加物の吸着状態が変化し、また反応温度を下げることによって、熱振動が小さくなり添加物の吸着がハードになり、吸着していない面の長軸方向の成長が顕著に表れ、図1及び図2のTEM像にみられるような粒子形状に変化するとともに、図2に関する実施例2に示すように、反応温度を下げた場合に得られる粒子の大きさも増大したものと考えられる。
また、実施例1と5とを比較すると、ここでの主な違いはTi固形分濃度である。Ti固形分濃度を減らすとTEM像から見てわかるように粒子径が大きくなっている。これは今回の単分散粒子の生成における、核生成、核成長のメカニズムがLaMer Diagramに法って起きているためで、Ti固形分濃度が減ると、臨界モノマー濃度に達する時のTiO2モノマー濃度が低いので核の生成数が少なくなり、よりTiO2モノマーが核成長に使われる為である。
さらに、実施例3と5とを比較すると、ここでの違いはジオール、トリオールの添加量の違いである。この添加剤の添加量が減少すると粒子径が大きくなる。これはジオール、トリオールのOH基が酸化チタン表面のOHと吸着、反応し粒子成長を阻害している為で、当然添加量が少なくなれば成長阻害物質が少なくなるので粒子径は大きくなる。
また、実施例4と5とを比較すると、同程度の粒子径になっており実施例1と4を比較すると実施例4の粒子の方が大きくなっているのは、昇温時間に関係しているものと思われる。つまりLaMer Diagramに法って考えると、今回のチタンアルコキシド等の加水分解物はそれ自体がTiO2モノマーではなく、これが何らかの形で、密閉容器内で溶解したものがTiO2モノマーと考えられる。つまり昇温時間を短くするとモノマーの生成が完了する前に、臨界モノマー濃度に達してしまい、核形成が一気に起きず、核成長に用いられるモノマー量が増える為だと考えられる。これが原因でTi固形分濃度が高いにもかかわらず、実施例4と5が同程度の粒子径で、実施例1と4とで、実施例4の方がpHが高いにもかかわらず、粒子が大きくなっている理由と考えられる。
分散状態に関しては、Ti固形分濃度が小さければ、それだけ、電気二重層効果により、凝集が防止される。またジオール、トリオールの添加量を多くすれば、粒子表面が有機層に修飾されるので、保護コロイドとして凝集が抑制される。また粒子が小さければ被表面積が大きくなるのでエネルギー的に安定になろうと凝集して被表面積を小さくする方向へ移行する為、分散状態は悪くなる。以上の観点から実施例5が最も分散状態がいい結果となっている。
<色素増感太陽電池の作製>
(実施例6及び比較例3)
酸化物光半導体微粒子として、実施例4及び比較例2の酸化チタン微粒子分散液を用い(前者の場合が実施例6、後者の場合が比較例3)、これに1−p−メンテン−8−オール(関東化学社製)とエチルセルロース(日新化成社製)を混合し、攪拌機を用いてよく混合させた。その後溶媒を除去し、酸化チタン含有ペーストを調製した。このペーストの組成比は、TiO超微粒子26wt%、α−テルピネオール66wt%、エチルセルロース8wt%である。上記の酸化チタン含有ペーストを透明導電性基板上にスクリーン印刷し焼成することによって酸化チタン微粒子以外の成分を除去して、酸化チタン多孔質光半導体電極を作成した。
上記のように作製した実施例4及び比較例2の粒子を用いたペーストより作製した酸化チタン多孔質膜電極を0.3mMのN719色素溶液に浸漬し、20℃で7日間静置し、色素を吸着させ光電変換素子を得た。対極には透明導電膜に白金をスパッタで蒸着させたものを用い、電解液(アセトニトリルに支持電解質として1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムのヨウ素塩0.6M、ヨウ化リチウム0.1M、ヨウ素0.05M、タ−シャリ−ブチルピリジン0.5Mを加えたもの)を、酸化チタン電極と上記の対極の間に注入しセルを作製した。
セル構造としては、酸化チタン光半導体電極層の厚さを17μmと27μmのものを作製し、光電変換特性を測定した。
評価:色素増感太陽電池用途光電変換特性試験
AM.5、JIS−クラスAの分光放射特性を持つソ−ラ−シミュレ−タ−(山下電装社製YSS80A)を用いた。本素子に、模擬太陽光を連続的に照射し、電流電圧測定装置(ケースレー2400)にてI−V特性を測定することによって変換効率を求めた。
実施例6及び比較例3に相当する光電変換素子について上記変換効率を求めた結果、表3、図8に示すような結果が得られた。この結果、実施例6に相当する光電変換素子においては、比較例3に相当する従来型の光電変換素子以上の高い変換効率が得られることが判明した。特に電流密度の改善が大きく見られる。これは本発明の酸化チタン粒子の単分散性と、特異面が出た結晶性の高い粒子の為に色素吸着量が増大し、漏れ電流が減少した為だと考えられる。
以上のことより、本発明によって作製された酸化チタン超微粒子及びその分散液は、光半導体としての性能が良く、色素増感太陽電池として性能向上に大きく寄与し、従来の技術よりも優れていることが判明した。
以上、具体例を挙げながら発明の実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。例えば、上記実施例においては、具体的な素子への応用例として色素増感型太陽電池の例について述べてきたが、本発明の酸化チタン超微粒子は、その他の用途、例えば光触媒及び超親水性膜へも適用することができる。
実施例1で得た酸化チタン超微粒子のTEM像である。 実施例2で得た酸化チタン超微粒子のTEM像である。 実施例3で得た酸化チタン超微粒子のTEM像である。 実施例4で得た酸化チタン超微粒子のTEM像である。 実施例5で得た酸化チタン超微粒子のTEM像である。 比較例1で得た酸化チタン超微粒子のTEM像である。 比較例2で得た酸化チタン超微粒子のTEM像である。 実施例4及び比較例2で得た酸化チタン超微粒子を用いて作製した色素増感型太陽電池の光電変換特性グラフ(I−Vカーブ)である。 実施例4で得た酸化チタン超微粒子のXRDスペクトルである。

Claims (7)

  1. 粒子径の範囲が5〜100nmであり、結晶面{101}を主面として有し、アナターゼ単相を含む酸化チタン超微粒子の製造方法であって、
    チタンアルコキシド又はチタン金属塩の加水分解生成物を出発原料とし、これにアルカリ水溶液、水、ジオールまたはトリオールを混合して混合溶液を作製し、この混合溶液を9〜13のpHで水熱処理し結晶化することによって前記酸化チタン超微粒子を得ることを特徴とする、酸化チタン超微粒子の製造方法。
  2. 前記加水分解生成物を構成する前記チタンアルコキシドまたは前記チタン金属塩は、テラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラノルマルプロポキシチタン、テトラノルマルブトキシチタン、四塩化チタン、硫酸チタニル、クエン酸チタン、及び四硝酸チタンから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、請求項1に記載の酸化チタン超微粒子の製造方法。
  3. 前記アルカリ水溶液は、アミン類、高分子アミンおよびその塩、並びにアンモニアの少なくとも一種を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の酸化チタン超微粒子の製造方法。
  4. 前記ジオールまたはトリオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、へキシレングリコール、オクチレングリコール、グリセリン、ヘキサグリセロール、及び1,2,6-ヘキサントリオールから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載の酸化チタン微粒子の製造方法。
  5. 前記混合溶液中のチタン源の濃度がチタン原子濃度で0.05mol/kg〜3.0mol/kgの範囲であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載の酸化チタン超微粒子の製造方法。
  6. 前記混合溶液中における、チタン源とアルカリ源との混合比が、mol比で1:0.01〜1:0.32の範囲であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載の酸化チタン超微粒子の製造方法。
  7. 前記混合溶液中における、チタン源と前記ジオール又は前記トリオールとの混合比が、mol比で1:0.1〜1:2の範囲であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一に記載の酸化チタン超微粒子の製造方法。
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