JP6015224B2 - 金属酸化物ナノ構造体の製造方法 - Google Patents
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2元共重合体を含む水溶液(A)と、硫酸チタン、塩化チタン、硫酸オキソジルコニウム、硫酸スズ、塩化スズ及び塩化インジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種類の水溶性金属イオン化合物を含む水溶液(B)を混合し、2元共重合体と金属イオン化合物が複合してなる、ポリマー・金属イオン複合ミセル水溶液(C)を得る工程、
前記工程で得られた複合ミセル水溶液(C)を水蒸気形成温度以上にて水熱反応させる工程、
を有することを特徴とする金属酸化物ナノ構造体の製造方法を提供するものである。
本発明において使用するポリアミンセグメントとポリエチレングリコールセグメントから構成される2元共重合体は、適切な溶液条件下で、金属イオンと配位結合、静電結合及び水素結合などの相互作用をすることにより、2元共重合体(ポリマー)と金属イオンとが複合したポリマー・金属イオン複合ミセル水溶液を形成する。この複合ミセル中には、金属イオンがミセル核中に濃縮されることにより、均一系の水相に金属イオンがミセルの空間中に隔離された状態となる。
本発明の製造方法では水熱合成工程を応用するものであり、前記で得られたポリマー・金属イオン複合ミセル水溶液に設定温度下にて水熱合成を実施する。本発明の製造方法にあっては、前述のポリアミンセグメントとポリエチレングリコールセグメントが構成する2元共重合体と、製造しようとする金属酸化物を構成する金属イオンとの相互作用による複合ミセル構造から、金属イオンの閉じ込みと酸化物核生成及びその成長の抑制を利用することで、製造される金属酸化物の粒子径を小さくすることができ、ナノレベルの金属酸化物を簡便に且つ安定して製造することができる。
本発明の製造方法にて得られる金属酸化物ナノ構造体は、3〜20nmの範囲の一次粒子径を有するナノ粒子であり、これらのナノ粒子が密に集合してなる直径50〜300nmの範囲の球形、又は長軸方向が50〜300nmの範囲の回転楕円体である。
単離乾燥した試料を測定試料用ホルダーにのせ、それを株式会社リガク製広角X線回折装置「Rint−Ultma」にセットし、Cu/Kα線、40kV/30mA、スキャンスピード1.0°/分、走査範囲10〜70°の条件で測定を行った。
単離乾燥した試料を測定パッチにより秤量し、それをSIIナノ技術示差走査熱量分析測定装置(TG−TDA6300)にセットし、昇温速度を10℃/分として、20℃から800℃の温度範囲にて測定を行った。
エタノールで分散された試料をサンプル支持膜に載せ、それを日本電子株式会社製透過型電子顕微鏡装置(JEM−2000FS)にて観察した。
サンプルの粉末をプレスして日本理学製蛍光X線測定装置(ZSX100e)にて元素測定を行った。
X−1:ポリエチレングリコール(PEG;重量分子量:約2000)とポリエチレンイミン(PEI;重量分子量:約10000)が3:1のPEG:PEIモル比で構成したものである。製造方法としては、特開2010−7124号公報の合成例1に記載の方法で合成した。
1.6gの2元共重合体(X−1)の粉末を室温(25℃)下40mlの蒸留水に溶かして5wt%濃度の40ml(X−1)溶液を調製した。10mlの上記溶液を容積28mlのテトラフルオロエチレン製水熱反応容器に入れ、攪拌しながら表1に示したように、それぞれ容量の硫酸チタン化合物溶液(和光純薬製、30%濃度)を滴下した。反応系のpHは調整しなかった。混合後のpH値は0.5〜0.9の範囲にあった。室温下で一時間攪拌後、190℃に設定した恒温加熱器中に移送し、反応容器を静置して15時間水熱反応を行った。反応後の懸濁液に対して、蒸留水洗浄・遠心分離の操作を3回繰り返して行った後、試料を50℃で一晩減圧乾燥した。実施例1〜4試料の粉末X線回折パターン(図1)は、2θが25.4°、38.0°、48.1°、54.2°、55.3°、62.9などである位置に強いX線回折ピークが現れ、アナターゼ結晶構造の酸化チタンのX線回折標準データと一致し、得られた酸化チタンナノ構造体がアナターゼ酸化チタンを含むものであることを確認した。また、各ピークのブロード化現象を観察し、それらピークの半値幅値からScherrer式を用いた理論計算結果は、実施例1〜4で得られた試料におけるそれぞれ結晶子の大きさがそれぞれ7.9nm、10.5nm、16.1nm,17.0nmであることを示した。TEMの観察結果(図2)によると、各サンプルには、X線分析結果と同じ大きさを有する一次粒子の存在が確認されたが、原料である硫酸チタンの添加量の増加につれ、一次粒子同士の凝集による一定サイズの集合体になる傾向が見られた。実施例1〜2で得られた試料は良い分散状態を示し、実施例3には大きさが16.1nmの一次粒子が構成する直径100nmの集合体が観察され、実施例4にはこの集合体が約150nmになったことが分かった。
表2に示すような各条件下において、2元共重合体(X−2)とジルコニウム化合物(硫酸ジルコニウム、硝酸酸化ジルコニウム、塩素酸化ジルコニウム)を用いたジルコニアナノ構造体合成用の反応溶液を調整し、室温下でこの反応溶液を一時間攪拌後、200℃×15時間の条件下にて水熱合成を行った。その後、蒸留水洗浄・遠心分離を経て析出物を減圧乾燥した。X線回折結果は、得られた試料がすべて斜方晶または正方晶構造の酸化ジルコニウムであることを示唆した。また、TEM観察結果(図3)及びX線回折データ由来の計算結果によると実施例5〜7における水熱合成した酸化ジルコニウムの粒径がそれぞれ4.8nm、4.3nm、4.5nmであることが判明した。
表3に示したように塩化インジウム、硫酸スズ及び2元共重合体(X−2)を用いたスズドープ酸化インジウムナノ構造体合成用の反応溶液を調整し、室温下でこの反応溶液を一時間攪拌後、180℃×12時間の条件下にて水熱合成を行った。その後、蒸留水洗浄・遠心分離を経て析出物を減圧乾燥した。X線回折結果は、得られた試料がすべて酸化インジウムと酸化スズが共存するナノ構造体の形成を示唆した。TEM観察結果(図4)、実施例8と実施例9における得られた試料が大きさ約20nmの球状粒子、並びに直径約20nm、長さ約100nmのロッド状粒子を呈することを示した。また、蛍光X線元素分析結果、実施例8の試料には7wt%のSnO2の存在が確認され、実施例9の試料にはSnO2が8wt%を含有することが分かった。
0.195gの塩化錫(IV)を10mlの5wt%前記2元共重合体(X−1)溶液に溶かし、さらに2.27mlの85%リン酸を加え、室温下一時間攪拌を経て透明な溶液を調製した。この溶液を28ml容積の水熱反応容器に入れ、230℃×15時間水熱合成を行った。得られた試料のX線回折結果は、析出物がすべて酸化スズの結晶であることを示唆した。TEMの観察結果(図5)によると酸化スズ結晶子の平均サイズが4.8nmであることを確認した。
2mlの30%硫酸チタン原液を10mlの蒸留水中に希釈して28ml容積の水熱容器中にて190℃×15時間水熱反応を行った。白色の沈殿物を洗浄・乾燥後、X線回折分析・TEM観察した。その結果、得られた試料がすべてアナターゼ構造を有する酸化チタンであり、一次粒子の平均粒径が実施例2の10.5nmに比較して倍以上値の27.5nmであることを確認した(図6)。
Claims (4)
- ポリアミンセグメントとポリエチレングリコールセグメントから構成された2元共重合体と金属酸化物とを含有する金属酸化物ナノ構造体を製造する方法であって、
2元共重合体を含む水溶液(A)と、硫酸チタン、塩化チタン、硫酸オキソジルコニウム、硫酸スズ、塩化スズ及び塩化インジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種類の水溶性金属イオン化合物を含む水溶液(B)を混合し、2元共重合体と金属イオン化合物が複合してなる、ポリマー・金属イオン複合ミセル水溶液(C)を得る工程、
前記工程で得られた複合ミセル水溶液(C)を水蒸気形成温度以上にて水熱反応させる工程、
を有することを特徴とする金属酸化物ナノ構造体の製造方法。 - 前記2元共重合体におけるポリアミンセグメントが、分岐構造を有するポリエチレンイミンからなるセグメントである請求項1記載の金属酸化物ナノ構造体の製造方法。
- 前記2元共重合体におけるポリアミンセグメントの重量平均分子量が200〜10万の範囲である請求項1又は2記載の金属酸化物ナノ構造体の製造方法。
- 前記2元共重合体が、ポリエチレンイミンセグメントとポリエチレングリコールセグメントからなるものであって、エチレンイミンモノマーユニット(CH2CH2NH)とエチレングリコールモノマーユニット(CH2CH2O)とのモル比が1/1〜1/10の範囲である請求項1〜3の何れか1項記載の金属酸化物ナノ構造体の製造方法。
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