JP4676244B2 - X線撮像装置 - Google Patents

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Description

本発明はX線撮像装置に係わり、物体内部を非破壊に観察・検査する装置に関する。
X線撮像装置は、X線の物体に対する高い透過能を利用して被写体内部を非破壊で二次元及び三次元観察する装置であり、被写体内部の密度という基本的な物理量をコントラストとして像を形成している。密度を検出する方法は、X線が被写体を透過する際に吸収によって生じた強度の変化から求める方法と、透過の際に生じた位相シフトから求める方法に大きく二分することができ、前者は吸収コントラスト型X線撮像法、後者は位相コントラスト型X線撮像法と呼ばれている。
前者の検出法を用いた撮像装置(吸収コントラスト型X線撮像装置)は、X線源、被写体保持機構及び検出器から主に構成され、X線源から出射したX線を保持機構により位置決めされた被写体に照射し、透過してきたX線の強度を検出器で検出し画像を形成している。測定の原理及び装置の構成が比較的簡単であるために、投影による二次元観察の場合はレントゲン、CT(Computed Tomography)による三次元観察の場合はX線CTという名称で、医療診断をはじめとして多くの分野で広く利用されている。しかしながら、水素、炭素、酸素等の軽元素はX線に対してほとんど透明で強度の変化が生じないために、生体軟部組織や有機材料など主に軽元素から構成された被写体に対しては感度が低く、重元素を含んだ造影剤の利用や、露光時間の延長などが必要となる。
後者の検出法を用いた撮像装置(位相コントラスト型X線撮像装置)は、上記装置構成に加えて位相シフトを検出する手段が必要となるが、吸収コントラスト型X線撮像装置に比べて極めて感度が高く、無造影剤・低被曝で生体軟部組織を観察することが可能である。これは位相シフトを与える散乱断面積が強度の変化を与える散乱断面積に比べて軽元素において約1000倍大きいためである。位相シフトの検出手段として、Phys. Today 53(2000) 23に記載されているように(1)X線干渉計を用いる特開平4−348262号公報や特開平10−248833号公報に記載された方法、(2)X線の屈折角をアナライザー結晶で検出する国際公開第95/05725号パンフレットや特開平9−187455に記載された方法、(3)フレネル回折を用いる方法、がある。表1は各方法の検出物理量、感度、ダイナミックレンジ、空間分解能、その他特徴について比較した結果を示す。
Figure 0004676244
この表から、アナライザー結晶を用いた方法が各項目に対して最もバランスがとれていることがわかる。また、装置の構成もX線干渉計を用いる方法に比べて比較的簡単であり、且つフレネル回折を用いる方法に比べても特殊な光源を必要としないといった特徴がある。
以下、本発明に関わるアナライザー結晶を用いた方法について説明する。
X線が位相シフトφを生じる被写体を透過するとき、位相シフトφが空間的に不均一な場合、屈折によってX線の伝搬方向はθだけ曲げられることになる。ここで、θはφの空間的な微分(dφ/dx)の関数として、式(1)で与えられる。
Figure 0004676244
したがって、θを検出すれば位相シフトの空間的な微分を求めることができ、更に、θを空間的に積分することによって位相シフトそのものも求めることができる。
国際公開第95/05725号パンフレットに記載されたものは、アナライザー結晶と呼ばれる平板でできた単結晶のブラッグ回折を利用してθ即ち位相シフトの空間的な微分を検出している。ブラッグ回折とは、入射X線の波長をλ、回折格子面の間隔をdとしたとき、アナライザー結晶に対するX線の入射角θが式(2)となる回折条件を数秒の角度範囲で満たしているときにのみ、入射X線がアナライザー結晶によって反射される現象のことである。
Figure 0004676244
したがって、X線の伝搬方向のずれθ=0のときθが式(2)を満たすように設定しておけば、反射されるX線の強度Iはθに依存し、θ=0で最大で、θの増加に従って減少し、θが数秒でX線の強度Iはほぼ0になる。このことを利用して、X線の反射強度Iの空間的な分布(反射像)から、θ、即ち位相シフトの空間的な微分をコントラストとする像を求めている。
X線の反射強度Iはθ±θでほぼ同じ値となるため、Iの測定だけではθの大きさはわかっても向きはわからない。このため、θの積分計算ができず位相シフトそのものは求めることができない。そこで、特開平9−187455号公報に記載されたものは、アナライザー結晶を回転させて各角度毎に取得した反射強度Iからθの大きさと向きを検出し、積分により位相シフトを求めている。そして、試料の回転と組み合わせ、Computed Tomographyによって位相シフトをコントラストとする被写体の断面像を求めている。
特開平4−348262号公報 特開平10−248833号公報 国際公開第95/05725号パンフレット 特開平9−187455号公報 Phys. Today 53(2000) 23
図1に示すように被写体101に照射されたX線100が被写体101の屈折によりアナライザー結晶102に入射するとき、二次元的に曲げられた場合について考える。被写体101がないとき、入射X線100は破線で示すように、アナライザー結晶102の表面に破線で示すx,y,z軸の原点に向けてx−z面上をz軸に対して入射角θで照射され、反射X線103のように反射されているとする。被写体101を設置すると、入射X線100は被写体101の屈折による曲げられ、104のようになる。曲がりのない入射X線100と軌跡104とのなす角θのx軸成分、すなわち、入射X線100と反射X線103のなす面に平行な面(x−z面)内における入射角のずれθは、式(2)における入射角θのずれΔθそのものとなる。したがって、式(2)のブラッグの回折条件がそのまま適用されるので、θに対して反射X線の強度Iは敏感に変化する。
一方、曲がりのない入射X線100と軌跡104とのなす角θのy軸成分、すなわち、入射X線と反射X線のなす面に垂直な面(y−z面)内における入射角のずれdρは、θのずれΔθと式(3)に示す関係にあり、
Figure 0004676244
dρに対してΔθは非常に鈍感になるので、反射X線の強度はほとんど変化しない。
以上をまとめて、θとdρに対して反射が生じる領域を示すと図2のようになる。この図において、領域が狭いほど角度のずれに対して反射強度が敏感に変化する、即ち角度分解能が高いことを示している。したがって、dρに対して角度分解能がほとんどなく、反射強度Iの測定だけでは、y軸方向に対する位相シフトの空間微分は求められないという問題があることがわかる。
一例として、図3(a)に示したドーナッツ及びメッシュ形状の被写体について、数値シミュレーションにより求めた反射強度Iの空間分布像(反射像)を図3(b)に示す。この結果から、dρに対して反射光の強度がほとんど変化しないため、y軸方向に像のコントラストが消失してしまっていることがわかる。
また、特開平9−187455号公報においては、dρに対して角度分解能がないことは、位相シフトを求めるθの積分計算の過程で問題となる。積分計算では出発点の初期位相値が既知である必要があるが、y軸方向に角度分解能がないために初期値を0と解っている被写体外部の背景領域に設定することが不可欠となる。もし背景に設定できないときは正確な像が得られなくなってしまう。図3(c)に特開平9−187455号公報に記載された方法により、計算で求めた位相シフトをコントラストする像(位相コントラスト像)を示す。ドーナッツ状の被写体に対しては背景から積分計算を始めることができるので、ほぼ(a)に示す原型の像が再生できているが、メッシュ状の被写体では背景がなく初期値を設定できないためにy軸方向の位相シフトがわからず、像が再生できていない。以上から、この方法では被写体全体が観察できる大きな観察視野が不可欠という問題があることがわかる。
本発明の目的は、被写体全体を観察することなく、被写体によって生じた位相シフトの空間的な微分、及び位相シフトを検出できる手段を提供することである。
本発明では、アナライザー結晶によるX線の反射として同時反射を用いることによって、上記の課題を解決する。同時反射とは、結晶に入射するX線が複数の結晶格子面の回折条件を同時に満たし、各格子面の反射によりビームが複数に分割される現象のことである。通常のX線回折と同様に、ブラッグケースとラウエケースが存在し、更に入射X線と各反射X線のなす面が全て平行なcoplanar型と、非平行なnonplanar型とに大きく分けられる。本発明ではブラッグケース及びラウエケースのnonplanar型同時反射を用いる。
ここでは以下、図4に示すように(n11)面と(n−1−1)面によるブラッグケースのnonplanar型同時反射を用いて説明する。尚、結晶表面に平行な格子面を(m00)面とし、[011]面はx−z面に平行であるとする。
Figure 0004676244
(m00)面と(n11)面のなす角をθ、(m00)面とx−y面のなす角度をθとしたとき、回折格子ベクトルの単位ベクトルnは式(4)となる。
Figure 0004676244
波数ベクトルkoのX線が図4に示すようにアナライザー結晶102に入射するとき、koの単位ベクトルaは、x−z面からのずれをdρとして、式(5)で与えられる。
したがって、式(4)及び式(5)からkoの(n11)面への入射角θは、式(6)となる。
Figure 0004676244
また、(n−1−1)面への入射角θ’は式(7)となる。
Figure 0004676244
以上からdρ=0のときθ=θ’となり、入射X線の波長λが式(8)となる回折条件を満たしていれば、入射X線は(n11)及び(n−1−1)面で同時に反射され(同時反射)、波数ベクトルkのX線とk’のX線に分割される。
Figure 0004676244
但し、ここでdは(n11)面及び(n−1−1)面の格子面間隔である。
図5に、図2と同様に入射角のずれθ及びdρに対して、上記(n11)面及び(n−1−1)面によって反射が生じる領域を示す。各格子面による個々の回折は通常のブラッグ回折と同じであり、X線が格子面に対して斜めに入射しているために、図2と比較して反射領域が単に傾いているにすぎない。なお、この傾きθは、式(9)で与えられる。
Figure 0004676244
図5において(n11)面による反射の領域をA、(n−1−1)面による反射の領域をBとして、式(10)で与えられる両者が重なる領域C、すなわち、同時反射の起こる領域を考えた場合、Cはθ及びdρがほぼ0となる中心部のごく狭い領域に限定されることがわかる。
Figure 0004676244
この領域Cを反射領域とする反射では、θ及びdρのいずれに対しても反射強度が敏感に変化する。したがって、(n11)面と(n−1−1)面の同時反射の反射強度から「反射領域がCとなる仮想的な反射強度I」を算出し、Iの空間的な分布(反射像)を求めることによって、θ及びdρのいずれに対しても感度がある位相シフトの空間的な微分をコントラストとする像を得ることができる。
「反射領域がCとなる仮想的な反射強度I」の具体的な計算は以下のように行う。被写体の屈折によって生じたX線のずれθが図5上の点Pである場合、点Pは(n11)面の反射領域Aに含まれるため入射X線は(n11)面で反射される。一方、(n−1−1)面の反射領域Bには含まれないため(n−1−1)面では反射されない。さらに、反射領域がCである仮想的な反射では、図5からわかるように点PはCに含まれないので反射されない。したがって、反射領域がCである仮想的な反射の強度として、この条件では(n−1−1)面による反射強度を採用すればよいことがわかる。反対に領域Bに含まれるが領域Aに含まれない点P’においては、上記と逆になるのでIとして(n11)面による反射強度を採用すればよい。以上から、「反射領域がCとなる仮想的な反射強度I」は、式(11)として算出すればよいことがわかる。
Figure 0004676244
ここで、Iは(n11)面による反射強度、Iは(n−1−1)面による反射強度、min(a,b)はaとbを比較して小さい方の値を返す関数である。
図6(a)から(c)に、図3(a)に示した被写体について、数値シミュレーションにより求めた(n11)面及び(n−1−1)面による反射像と、この両像から式(11)により計算した「反射領域がCとなる仮想的な反射強度」の像を示す。この計算結果から、(n11)面及び(n−1−1)面による反射像では、θ及び−θの方向にコントラストが消失していることがわかる。これはその方向のX線の屈折に対して、反射光の強度が変化しないためである。一方、「反射領域がCとなる仮想的な反射強度」による像ではこのような消失がなく、全ての方向に対してはっきりとしたコントラストがついていることがわかる。
以上の方法では、反射されたX線の強度Iがθ±θでほぼ同じ値となることから、θの大きさはわかっても向きはわからない。このため、積分計算ができず位相シフトそのものは求めることができない。そこで、次に、アナライザー結晶102を回転させて角度毎に取得した反射強度からθの大きさと向きを検出する方法を示す。
図4に示すy軸の周りにアナライザー結晶102を回転させた場合、図5における点Pは見かけ上矢印のように図中を動くことになる。したがって、(n11)面及び(n−1−1)面による反射強度は、アナライザー結晶102の回転に対して図7のようなプロファイルとなる。このとき、各々の反射強度が最大となるアナライザー結晶の角度をθ及びθとすると、θは幾何学的な計算からθとθの中心、即ち式(12)で与えられる。
Figure 0004676244
一方、dρは式(13)で与えられる。
Figure 0004676244
ただし、ここでθは式(9)によって与えられる角度である。以上により、被写体によるX線ビームのずれθの大きさは式(14)で与えられるから、ずれの向きφは式(15)から求めることができる。
Figure 0004676244
Figure 0004676244
更に、位相シフトそのものは、図8に示すように(1)像上の任意点(例えば左上)を原点として初期位相値を適当に決め、(2)その点からdρを1ライン分だけ積分してy軸方向の位相シフト量を求め、(3)上記(2)により位相シフト量が既知となったラインから各θを積分することによって求めることできる。
図9には、図3及び図6の数値シミュレーションの対応として、上記のアナライザー結晶102を回転させる方法を用いて測定を想定し、位相シフトをコントラストとする像(位相コントラスト像)を計算で求めた結果を示す。この結果から、はじめに図3(a)で想定した被写体の形状がよく復元できていることがわかる。
X線の高い透過能を利用した非破壊での被写体の断面像は、(1)被写体をX線ビームに対して回転させて、各角度で上記に示した方法により位相コントラスト像を求め、(2)すべての測定が終了した後に、取得した位相シフト像から従来のX線CTアルゴリズムを用いた計算により再生することができる。
以上から、アナライザー結晶102によるX線の反射として同時反射を用いることによって、被写体全体を観察することなく、被写体によって生じた位相シフトの空間的な微分、及び位相シフトをコントラストとする像を検出することができる。さらに、アナライザー結晶102の回転に代えて被写体を回転させることによっても、位相シフトをコントラストとする被写体の断面像も得ることができる。
本発明により、小さな観察視野、且つ簡単な装置構成で、被写体によって生じた位相シフトの正確な空間的な微分、及び位相シフトをコントラストとする像を得ることが可能となる。
以下、図面を用いて本発明の実施例について説明する。以下に示す図において、同じ機能を有する部分には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
(実施例1)
図10は本発明によるX線撮像装置の構成の一例を示す図である。同図に示すように本装置は、X線源1、被写体ホルダー2、被写体ホルダー保持位置決め機構3、アナライザー結晶4、アナライザー結晶角度調整機構5、画像検出器6及び7、処理部8から主に構成される。
X線源1より出射したX線ビーム9は、被写体ホルダー保持位置決め機構3によって位置決めされた被写体ホルダー2内に設置された被写体10に照射される。被写体を透過して屈折されたX線ビーム11はアナライザー結晶4に入射し、ブラッグの回折条件を満たす成分のみが反射されて反射X線ビーム12及び13となる。反射X線ビーム12及び13の強度は各々画像検出器6及び7で検出され、処理部8に各ピクセルごとの強度が画像データとして保存される。そして、保存された画像データから式(11)に基づいて「反射領域がCとなる仮想的な反射強度I」を計算し、Iをコントラストとする像、すなわち位相シフトの空間的な微分をコントラストとする像を表示部14で表示する。
X線源1として通常の管球型やロータリー型のものを用いてもよいし、放射光を用いてもよい。ただし、前者の場合、放射されるX線ビームは発散光であるので、開口幅が可変なスリット15をX線源と被写体との間に設置することによって、散乱X線による被写体10の被曝や、画像検出器6,7の背景ノイズを低減することができる。
アナライザー結晶4としては、単結晶から削りだし、表面をメカノケミカルエッチング等により無歪みで研磨した結晶プレート等を用いればよい。結晶の大きさはスリット15で切り出されたX線ビームサイズ、X線ビームの波長、使用する回折格子面をもとに決定する。アナライザー結晶4上でのX線ビーム11の横幅Wは、X線ビーム11の幅をW、波長をλ、同時反射に使用する回折格子面を(n11)面と(n−1−1)面としたとき、式(16)で与えられる。
Figure 0004676244
したがって、アナライザー結晶4の横幅はW以上にすればよい。ここでdは(n11)面の格子面間隔、θは(n11)面と結晶表面とがなす角である。一方、アナライザー結晶4上でのX線ビーム11の縦幅Hは、X線ビーム11の縦幅Hとほぼ同じであるので、アナライザー結晶4の縦幅はH以上にすればよい。
同時反射に使用できる回折格子面は、ほぼ無数にある。そこで、回折格子面の選択は
(1)対象とする被写体10の大きさ(厚さ)を測定する。
(2)上記被写体の厚さに対する最適なX線のエネルギー(波長)を算出する。
(3)上記エネルギーに対して、θが45度に近く、θが大きく(10度以上)、できる限り低次の格子面を選択する。
の手順で行う。被写体10が厚いほど、透過率を上げるために高エネルギーのX線が必要となるが、式(1)で示したように被写体による屈折角θはλに比例、即ちエネルギーに反比例しているので、高いエネルギーほど屈折角θは小さくなり位相シフトの検出感度が低減してしまう。
そこで、上記(2)の課程では、代表的な被写体について、被写体の厚さに対してS/Nが最大となるエネルギーを計算したグラフを用意しておき、これを用いてエネルギーを決定する。一例として、図11に生体軟部組織用のグラフを示す。(3)の課程では、図12に示した各X線のエネルギーに対する最適な格子面の一覧から、(2)で求めたエネルギーに対応した格子面を選択すればよい。また、X線源1として通常の管球型やロータリー型のものを用いる場合は、特性X線を利用するために(2)で求めたX線のエネルギーに応じてターゲットの元素を変えるとよい。
結晶は機械的なストレスにきわめて敏感であるために、アナライザー結晶4を保持する結晶ホルダー16はL字型として、2面から結晶をしっかりと支えるようにする。X線源1は結晶4に比べて重量があり、その位置を動かして微調整することは難しいため、アナライザー結晶4に対するX線11の入射角はアナライザー結晶を動かすことによって調整する。アナライザー結晶の角度調整機構5には、dρ制御のための通常のスイベルステージ17とθ回転ステージ18を用いることができる。但し、回転ステージ18の回転位置決め精度は、反射の生じる角度幅より十分に狭くしておく必要がある。反射の生じる角度幅は通常数秒であるので、1/100秒精度をもったタンジェンシャルバーを使用した回転ステージ等が適している。
画像検出器6及び7としては、サチコン管や蛍光体+レンズ系+CCDカメラを組み合わせたものなどを用いることができる。
測定の手順を図13のフローチャートに示す。上述したようにして、X線ビームのエネルギーと同時反射の回折格子面を設定した後、選定した回折格子面が使用可能なアナライザー結晶4をあらかじめ用意し保存しておいた複数のアナライザー結晶4から選び、アナライザー結晶ホルダー16に固定する。次に、アナライザー結晶角度調整機構5のθ回転ステージ18を用いて回転させ、X線が反射される角度、即ち回折条件を満たす角度θに調整する。この際、アナライザー結晶4の表面を鏡面研磨しておけば、図10に示すようにオートコリメータ19等を利用して角度を数分の範囲まで追い込んだ後に、X線を用いた調整に移れるので、調整時間を大幅に節約することができる。また、この調整の際に画像検出器6及び7の代わりに、PINダイオードやシンチレーションカウンター等の応答速度の速いX線検出を使用すれば、高速に回転スキャンを行うことができるので、調整時間を短縮することができる。次に反射X線ビーム12及び13の強度をモニターしながらdρ軸の回転とθ軸の回転を交互に行い、反射X線ビーム12及び13が同時に現れる角度に調整する。上記調整後に、被写体10を設置せずに背景となる反射像を画像検出器6及び7で取得する。
次に被写体10を被写体ホルダー2内に設置し、被写体ホルダー位置決め機構3を用いて位置決めを行った後に、測定を行う。一連のX線を用いた測定後に、処理部8において被写体10を設置して取得した画像データを背景の画像データで割り算処理し、式(11)に基づいて「反射領域がCとなる仮想的な反射強度I」を計算し、Iをコントラストとする像、すなわち位相シフトの空間的な微分をコントラストとする像を得、表示部14で表示する。
一般に、同時反射は入射角と出射角が異なる非対称反射であり、反射像には被写体が歪んだ形となって現れる。また、図10に示すようにnonplanar型の同時反射では、反射ビーム12及び13はアナライザー結晶4に対して斜めに出射することになり、画像検出器6及び7を位置決めする機構に複雑な動きが要求される。この問題は、図14(a)に示すように、アナライザー結晶の下流にアナライザー結晶4と対向する面が平行な結晶プレート20を設けることで解決できる。結晶プレート20に入射するX線ビームは、言うまでもなくアナライザー結晶の反射ビーム12及び13であるので、アナライザー結晶4の格子面に相対する格子面、即ち(n11)面で反射されたビームであれば(n−1−1)面で、(n−1−1)面で反射されたビームであれば(n11)面の回折条件を、結晶プレート20において自動的に満たすことになる。したがって、図14(a)のように被写体を透過したX線ビーム11と平行なX線ビーム20及び21として再度反射される。この際、アナライザー結晶4とは逆の非対称反射となるので、被写体10の像の歪みも自動的に修正されることになる。アナライザー結晶4と結晶プレート20は原理的には独立した構造でも良いが、図14(a)に示すように一体の結晶ブロックから形成されている場合、位置決め及び角度調整や、その調整機構の構成もアナライザー結晶単体のときのように簡単にすることができる。
図14(b)には、アナライザー結晶4と結晶プレート20が互いに非平行で角度αだけ傾けられている場合を示す。この場合、X線ビーム21及び22は結晶プレート20によって反射と同時に拡大されることになるので、被写体10を空間分解能よく観察することが可能となる。像の拡大率bは式(17)で与えられる。
Figure 0004676244
ここで、αはアナライザー結晶と結晶プレートの表面のなす角度である。尚、像はθ方向にのみ拡大され歪んでしまうため、歪みのない被写体の像が必要な場合は、処理部において計算で歪みを補正することが必要となる。
観察視野、即ちWを広げるためにはアナライザー結晶4や結晶プレート20のサイズも大きくする必要がある。例えば、Si(220)面とSi(202)面の同時反射でX線のエネルギー15keVにおいて、5cm角の観察視野を得るためには、アナライザー結晶4のサイズは横21cm、縦5cm以上と非常に大きなものになってしまう。そこで、結晶のサイズを小さくするために、ブラッグケースの代わりに図15(a)に示すようなラウエケースの同時反射を用いてもよい。この場合、結晶板201,202のサイズは観察視野とほぼ同じサイズとすることができる。結晶板201,202の厚さtは、X線の吸収を避けるためにできる限り薄くすることが望ましいが、薄すぎると機械的な剛性も失われて結晶の歪みが生じてしまうために、1mm前後が適当である。しかし、この厚さでは15keV以下の低エネルギーにおいて吸収が大き過ぎる。その場合、例えば図15(b)に示すように結晶板201を外枠203で支承する構成として、実際にX線が透過する結晶板13の厚さのみを1mm以下にすればよい。結晶板13についても同様である。
被写体10の位相コントラスト像を得る手順を図16のフローチャートに示す。ここでは、アナライザー結晶4の各角度で反射像の測定を行って処理部8に格納し、全ての測定が終了した後に処理部8で各画素毎に反射強度が最大となるθ及びθを求め、θ及びθから式(12)及び13に従ってθ及びdρを求め、θの積分を計算するという手順の測定により得ることができる。さらに、X線源1が管球等の場合、X線ビーム9は平行性が悪い発散ビームであるために背景の位相シフトに傾きが生じて、被写体の正確な像が得られない場合がある。この場合は、被写体10を設置する前に上記と同様に図16の手順より背景となる位相シフト像を予め測定しておき、被写体10を設置して取得した被写体と背景の位相シフトが加算された像から減算することによって、被写体10の純粋な位相コントラスト像を得ることができる。
被写体10の断面像は、図17のフローチャートに示す手順、即ち、被写体10をX線ビーム9に対して回転させ、各回転角度において図16の手順に従って位相シフト像を得、全ての測定が終了した後に処理部8で一般的なX線CTのアルゴリズムにより断面像を計算するという手順を行うことによって得ることができる。被写体10の回転軸は、X線ビームに垂直な面内であればどのような方向を選んでもよい。また、被写体10を固定し、X線源1、アナライザー結晶4、検出器6及び7を一体で被写体10の周りを回転させてもよい。
(実施例2)
本発明の撮像法の特徴である、軽元素に対して特に感度が高く、軽元素から主に構成された生体軟部組織の観察に適しているという点を生かした診断装置の一例として、マモグラフィー装置(乳ガン診断装置)を構成した実施例2を図18に示す。図18(a)は上面から、図18(b)は側面から見た図を模式的に示す図である。診断装置には、X線照射による被爆をできる限り抑える手段、被写体を一度に取得できる広い観察視野、何回測定を行っても同じ像が得られる高い安定性(再現性)が要求される。そこで、実施例2では実施例1の基本的な構成に加えて、X線源1を被験者から分離するX線防護壁23や被写体のみをX線で照射するためのX線防護カバー24を設け、被験者の被写体のX線照射領域以外へのX線照射を防ぐ。X線防護壁23およびX線防護カバー24には、X線の通路となる部分にのみ小さい開口が設けられる。X線ビームを整形・拡大する拡大用非対称結晶プレート25、アナライザー結晶4の角度を1/100秒以下の精度で位置決めしておくための角度フィードバック機構26を新たに設けた。また、アナライザー結晶4での非対称な同時反射による不必要な像の拡大を避けるため、及び画像検出器6及び7の位置決めを容易にするために、図14(a)に示したアナライザー結晶4と結晶プレート20を一体的に構成した構造を採用し、これを結晶ホルダー16で保持するものとした。ただし、結晶のサイズを小さくするために、図15に示したラウエケースで使用してもよい。結晶ホルダー16は角度フィードバック機構26で制御されるものであるとともに、θ回転用のステージ18で制御されるが、これらの構造の具体例は後述する。61は拡大用非対称結晶プレート25の支持部であり、図示しないが、反射角度の制御装置を備える。
X線防護壁23は、X線源1と拡大用非対称結晶プレート25との間に設置し、X線源1から放射されたX線のうち不要なX線を遮るもので、鉛等を含んだ厚い壁で出来ており、X線強度の100%を遮断することができる。X線防護カバー24は拡大用非対称結晶プレート25、アナライザー結晶4と結晶プレート20等本装置の主要な構成部分全体を覆うもので、各結晶によって生じた散乱X線が被写体や、画像検出器6及び7に照射することを防ぐ。散乱X線の強度はそれほど強くないので、鉛を含んだアクリル板や、薄い鉛を貼り付けた鉄板等を用いる。被写体10をX線ビーム内に設置する部分は図18(a)に示すように凹型部を備えており、被写体10のビームが照射される部分以外は、X線が照射されないようになっている。
被験者27の発熱によって生じる拡大用非対称結晶プレート25とアナライザー結晶4の格子面間隔の歪み等は被験者27と、拡大用非対称結晶プレート25及びアナライザー結晶4との距離を30cm以上離すことによって抑える。また、被験者27の交代時に生じる床振動等の影響は、拡大用非対称結晶プレート25及びアナライザー結晶4と結晶プレート20を同一の除振台28の上に設置することによって抑える。この除振台28も被験者の近くで凹型の形状をしており、被験者が除振台に触れない構造となっている。
図19はアナライザー結晶4と結晶プレート20の保持と制御に関する構成の一例を具体的に説明する図である。アナライザー結晶4と結晶プレート20は図14に示したように一体の結晶ブロックで構成されていてもよいが、その場合大きさ、即ち観察視野が制限されてしまう。観察視野を大きくとるためにはアナライザー結晶4と結晶プレート20を分離された構造として距離を大きくとり、アナライザー結晶4と結晶プレート20の反射面の角度を一体形成と同じ程度に制御すればよい。
図19はこの考え方に基づく構成とした。即ち、アナライザー結晶4は結晶ホルダー16に保持されてテーブル70の上に、結晶プレート20は結晶ホルダー16’に保持されて第2チルトステージ30の上側テーブル40の上に別々に保持され、アナライザー結晶4と結晶プレート20を分離することによって新たに必要となる結晶間の角度の調整は第2θステージ29及び第2チルトステージ30で行う構成とした。
観察視野を10cm×10cm確保するためには、X線のエネルギー35keV時で各結晶の長さは50cm以上となる。このため、第2θステージ29には、サイズが大きくなっても高い機械的な剛性を確保できる固体滑り機構を用いた。即ち図に示すように、上側テーブル31は下側テーブル32上に合成樹脂を特殊加工した個体滑り材を介して搭載されるとともに、左端部でピボット35で結合されており、右端部には圧電素子34による伸縮機構が設けられている。圧電素子34による伸縮機構の一端は上側テーブル31に、他端は下側テーブル32に固定されているから、制御電圧源33の出力電圧を変化し圧電素子34を伸縮させることによってピボット35を中心に上側テーブル31が第2θステージ29の右側に示す矢印のように、回転駆動される。上側テーブル31と下側テーブル32が滑り材を介して接触している面積はボールベアリングを使用した通常のステージ等に比べて大きいために、高い機械的な剛性が得られる。テーブル31が下側テーブル32に対して回転されることにより、上側テーブル31上に保持された第2チルトステージ30が回転することになるから、第2チルトステージ30上に保持された結晶プレート20が結晶ホルダー16’とともに回転することになり、アナライザー結晶4と結晶プレート20の反射面の角度を図4に示すy軸の周りに回転させることができる。
また、第2チルトステージ30は上側テーブル40と下側テーブル39が一端側でロールベアリング38で結合され、他端側の端面に圧電素子37による伸縮機構が設けられている構成とした。圧電素子37による伸縮機構の一端は上側テーブル40に、他端は下側テーブル39に固定されているから、制御電圧源36の出力電圧を変化し圧電素子37を伸縮させることによってロールベアリング38を中心に上側テーブル40が第2チルトステージ30の右側に示す矢印のように、回転駆動される。この回転により、上側テーブル40上に保持された結晶プレート20が結晶ホルダー16’とともに回転することになり、アナライザー結晶4と結晶プレート20の反射面の角度を図4に示すx軸の周りに回転させることができる。
テーブル39とテーブル40は線(ロールベアリング38)で接触していることになるために、第2θステージ29の固体滑り機構に比べて機械的な剛性は低下するが、依然として通常のステージよりは高い剛性が得られる。
また、アナライザー結晶4、結晶プレート20、第2θステージ29、及び第2チルトステージ30を搭載するチルトステージ17は、第2θチルトステージ30と同じ構造とする。上下のテーブルの一端部がロールベアリング43で結合され、他端側の端面に圧電素子42による伸縮機構が設けられている。制御電圧源41の出力電圧を変化し圧電素子42を伸縮させることによってロールベアリング43を回転中心として回転駆動する構造である。チルトステージ17を搭載するθステージ18は第2θステージ29と同じ構造とする。上下のテーブルの一端部がピボット46で結合され、他端側の端面に圧電素子45による伸縮機構が設けられている。制御電圧源44の出力電圧を変化し圧電素子45を伸縮させることによってピボット46を中心に回転駆動するステージである。
測定の高い再現性を実現するためには、各ステージの回転ドリフトを1/100秒以下に抑える必要がある。そこで、図20に示したような角度フィーバック機構を設ける。なお、図20には、第2θステージ29のフィードバック機構のみを示してある。他の軸に関しても同様なフィードバック機構を組み込みことによって、回転ドリフトを抑えることができる。このフィードバック機構は、レーザーを用いた光学的な方法により各結晶の角度を測定し、予め設定した角度とのずれΔAを求め、ΔAに基づいて圧電素子34に印加している電圧を制御電圧源33で調整し、ΔAを0とするものである。角度の検出は、レーザー47から出射したレーザービームをハーフミラー48により2本のビームに分割し、分割したビームをテーブルに取り付けたコーナーキューブ49及び50で各々反射させ、反射したビームをハーフミラー48により結合・干渉させ、その干渉強度を検出器51でモニターし、処理部52でレーザーからの信号を処理・計算することによって得る。なお、レーザー光はコーナーキューブではなく、結晶表面そのもので反射させてもよい。
乳ガン診断において、被写体(乳房)の厚さは人によって大きく異なる。そこで、個々の被写体の厚さを予め測定し、実施例1で説明したように図11のようなグラフを用いてX線の最適なエネルギーを決定し、さらに図12に基づいて使用する同時反射の格子面を決定しておく。この際、結晶表面がSi(422)となる結晶では、Si(220)とSi(202)、Si(440)とSi(404)、Si(660)とSi(606)のいずれでも、アナライザー結晶の交換をすることなく角度の調整だけですぐに使用できるようになるので、便利である。
X線を用いた測定は実施例1で説明したように、位相シフトの空間的な微分をコントラストとする像であれば図13のフローチャートに従って、位相シフトをコントラストとする像であれば図16に示したフローチャートに従って行う。但し、後者の方法は前者の方法に比べて被爆量が大きくなるために、前者の方法はスクリーニング検査、後者の方法は再検査及び精査としてもよい。
被写体によるX線の二次元的な屈折を示す図である。 θxとdρに対して反射の生じる領域を示す図である。 数値シミュレーションによる反射像及び位相コントラスト像を示す図である。 結晶による同時反射を示す図である。 同時反射におけるθxとdρに対して反射の生じる領域を示す図である。 数値シミュレーションによる同時反射における各反射像を示す図である。 θxの回転に伴う反射強度の変化を示す図である。 位相シフトの積算計算において、積算の手順を示す図である。 数値シミュレーションによる本発明における位相コントラスト像を示す図である。 本発明における実施例を示す図である。 被写体の各厚さに対する最適なX線のエネルギーを示す図である。 各X線のエネルギーに対して最適な同時反射を示す図である。 本発明における測定手順を示す図である。 アナライザー結晶と結晶プレートの構成を示す図である。 ラウエケースのアナライザー結晶と結晶プレートの構成を示す図である。 本発明における位相コントラスト像の測定手順を示す図である。 本発明における位相コントラスト断面像の測定手順を示す図である。 診断装置への適用可能な本発明における実施例を示す図である。 アナライザー結晶及び結晶プレートの詳細な構成を示す図である。 フィードバック機構の構成を示す図である。
符号の説明
1…X線源、2…被写体ホルダー、3…被写体ホルダー保持位置決め機構、4…アナライザー結晶、5…アナライザー結晶角度調整機構、6…画像検出器、7…画像検出器、8…処理部、9…X線ビーム、10…被写体、11…X線ビーム、12…反射X線ビーム、13…反射X線ビーム、14…表示部、15…スリット、16…結晶ホルダー、17…スイベルステージ、18…θ回転ステージ、19…オートコリメータ、20…結晶プレート、21…反射X線ビーム、22…反射X線ビーム、23…X線防護壁、24…X線防護カバー、25…拡大用非対称結晶プレート、26…角度フィードバック機構、27…被験者、28…除振台、29…第2θステージ、30…第2チルトステージ、31…テーブル、32…テーブル、33…制御電圧源、34…圧電素子、35…ピボット、36…制御電圧源、37…圧電素子、38…ロールベアリング、39…テーブル、40…テーブル、41…制御電圧源、42…圧電素子、43…ロールベアリング、44…制御電圧源、45…圧電素子、46…ピボット、47…レーザー、48…ハーフミラー、49…コーナーキューブ、50…コーナーキューブ、51…検出器、52…処理部、201…結晶板、202…結晶板、203…外枠。

Claims (8)

  1. X線ビームを被写体に照射する手段と、上記被写体を透過した透過X線ビームをX線の同時反射により互いに非平行な複数の反射X線ビームに分割するアナライザー結晶と、上記複数の反射X線ビームを透過X線ビームとほぼ平行なX線ビームにそれぞれ反射する後置結晶と、上記後置結晶で反射された複数のX線ビームを検出する複数のX線検出器と、上記複数のX線検出器から出力された複数の信号から演算により上記被写体によって生じた上記透過X線ビームの位相シフトの空間的な微分をコントラストとする像を得る処理部から構成されることを特徴とするX線撮像装置。
  2. 前記アナライザー結晶と前記後置結晶が単結晶ブロックから一体で形成された対向する面が互いに平行な2枚の結晶プレートであることを特徴とする請求項1記載のX線撮像装置。
  3. 前記アナライザー結晶と前記後置結晶が単結晶ブロックから一体で形成された対向する面が互いに非平行な2枚の結晶プレートであることを特徴とする請求項1記載のX線撮像装置。
  4. 前記アナライザー結晶と前記後置結晶のX線ビームが入射する面と、同時反射による反射X線ビームが出射する面が異なることを特徴とする請求項2または3記載のX線撮像装置。
  5. X線ビームを被写体に照射する手段と、上記被写体を透過した透過X線ビームをX線の同時反射により互いに非平行な複数の反射X線ビームに分割するアナライザー結晶と、上記複数の反射X線ビームを透過X線ビームとほぼ平行なX線ビームにそれぞれ反射する後置結晶と、上記後置結晶で反射された複数のX線ビームを検出する複数のX線検出器と、上記複数のX線検出器から出力された複数の信号を演算する処理部から構成され、前記アナライザー結晶が透過X線ビームに対して回転する機能を備え、前記処理部は前記アナライザー結晶の各回転角度においてX線検出器で検出した複数の反射X線ビームから被写体によって生じた上記透過X線ビームの位相シフトの空間的な微分、及び位相シフトをコントラストとする像を得ることを特徴とするX線撮像装置。
  6. 前記被写体の像を得る演算に各反射ビームの強度が最大となる結晶の各角度位置の情報を用いることを特徴とする請求項5記載のX線撮像装置。
  7. X線源と、X線源から出射したビームを整形・拡大する手段と、整形・拡大されたビームの光路に被写体を設置する手段と、上記被写体のビーム照射領域以外へのX線照射を防ぐ手段と、上記被写体を透過した透過X線ビームをX線の同時反射により互いに非平行な第1X線ビーム及び第2X線ビームに分割するアナライザー結晶と、上記第1X線ビーム及び第2X線ビームを透過X線ビームとほぼ平行な第3X線ビーム及び第4X線ビームに各々反射する後置結晶と、上記第3X線ビーム及び第4X線ビームを検出するX線検出器と、上記X線検出器から出力された信号から演算により上記被写体によって生じた上記透過X線ビーム位相シフトの空間的な微分をコントラストとする像を得る処理部から構成されることを特徴とするX線撮像装置。
  8. 前記アナライザー結晶及び後置結晶のX線ビームが入射する面と同時反射による反射X線ビームが出射する面が異なることを特徴とする請求項7記載のX線撮像装置。
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