JP4675400B2 - 光学系の性能評価方法及び光学系の設計方法 - Google Patents
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Description
発明者は、従来の技術には、次のような課題があることを見出した。即ち、従来の評価関数(メリット関数)は、眼鏡レンズの光学性能を該レンズ自体の収差量等によって評価しようとするものである。しかしながら、特に眼鏡レンズは本来視力を矯正するものであるから、収差量そのものではなく、むしろその収差によって視力がどの程度劣化するのかということの方が重要である。そこで、単なる評価関数ではなく、いわば視力に関する評価関数、即ち光学系を通してみた場合の視力と、該光学系の収差等との関係を規定した関数を導入するのが好ましい。以下、このような関数を特に「視力関数」と呼ぶことにする。視力と収差の関係について従来技術1(Sloan,Louise .,「Measurment of visual acuity:
a critical review,A.M.A.Arch.Ophthal」(45(6):704-725,1951)が知られている。こ
の文献中において最小分離閾の視力劣化部分とてI式を与えている。
1.色収差について言及されていない。
2.乱視眼における眼球運動(リステング則)について言及されていない。
3.「sphere error」と「cyl error」を個別に測定しているが、「sphere error」と「cyl error」との相互関係による視力劣化の測定がされていない。
乏しく、推定の仮説にも疑問が残る。
及されていない。更に、視力Vの式を導きだす根拠となる理論や根拠(測定データ等)が一切開示されておらず、理論的に信頼性に乏しく、実用性がない。
し色収差を加えた「sphere error」と「cyl error」をそれぞれ以下に定義している。ま
た分数視力Vとの関連を以下のII式〜V式で提示している。
が素材の関係上、初めからある程度限られている為ではないかと考えられる。つまり、アッベ数の自由度は、他の要素の自由度に比べると小さい。そのため、光学系の設計においてアッべ数は、可変パラメータとしてではなく、制約条件(仕様)として固定されていた。
識による為ではないかと考えられる。これに関しては、次の文献を参照されたい「G.A.
Fry:Progress in Optics,Vol VIII, p112,ed.by E.Wolf,North-Holland Publishing Company, Amsterdam 1970」(以下、文献2という)、「KrausKopf J.: J.Opt.Soc.Amer.,52,1046-1050(1962)」(以下、文献3という)、「KrausKopf J.:J.Opt.Soc.Amer.,54,715-716(1964)」(以下、文献4という)。
中川式の対数視力=50×log10V+100
AGO単位の対数視力=4×log2210V
ここでVは、2点又は2線を見分けることのできる最小視角である最小分離閾(MAR;Minimum Angular Resolution)の逆数である。なお、この最小分離閾の逆数であるVは、小数視力(desimal visual acuity)若しくは分数視力(fractional visual acuity)等と等価である
。以下、logMAR単位の対数視力のことを「logMAR視力」と呼ぶことにする。
色収差との相関関係に換算すると次のようになる。即ち、logMAR視力の劣化とは、その値の増大を表すのであるから、
log10(1/V)∝倍率色収差
と書ける。そこで、この関係を便宜的に、
log10(1/V)=β×倍率色収差
とおくと、
log10V=−(β×倍率色収差)
であるから、
V=10-(β×倍率色収差)
となる。つまり、小数視力Vであれば、倍率色収差の増大に伴って指数関数的に劣化(低下
)することになる。このような指数関数的な関係も上記比例関係と実質的には等価である
。
の合成則に換算すると次のようになる。即ち、logMAR視力の劣化とは、その値の増大を表すのであるから、便宜的に、
log10(1/V)=第1の劣化量+第2の劣化量
とおくと、
log10V=−(第1の劣化量+第2の劣化量)
であるから、合成則は、
V=10-(第1の劣化量+第2の劣化量)
V=10-第1の劣化量×10-第2の劣化量
となる。このような合成則も、上記和の関係と実質的には等価である。
る非点収差と、前記光学系によって発生した非点収差との和をいう。
上色収差を相殺する視覚システムの存在を示唆する。「池田光男:視覚の心理物理学(森
北出版,1975)」(以下、文献5という)、及び「池田光男:色彩光学の基礎(朝倉書店,1980)」(以下、文献6という)参照。
発明者は、鋭意研究の結果、光学系と通してみた場合のlogMAR視力と、該光学系の倍率色収差とに略直線的な関係があることを始めて発見した。以下、詳細に説明する。
る限界値まで測定した。
リズムからなる組を、アッベ数別に4組用意した。そして、それらプリズムを度数の強いものから順次眼鏡レンズ3の前方に配置して視力を測定した。プリズム2の配置には、トライアルフレームを用いた。
定値をそれぞれ表2〜表8に掲げる。表中、Rとは右眼、Lとは左眼、Bとは両眼のことであ
る。
力測定を両眼で行ったのは、眼鏡装用時と同一の条件にする為である。なお通常、両眼とも同じアッベ数のレンズを装用する。
すのと同程度の比率でプリズム値が増す。従って、倍率色収差の値は、e線の場合でも上記と略同じ値であり、今後の論述に影響しない。
によれば、視力測定条件(例えば、視力表の輝度や測定距離の精度等)のバラツキによる影響が大いに減じられる。そして、その正規化した値をlogMAR視力に換算する。
第2図のプロットから次のことが分かる。
関関係があることを発見した。一般に視力が悪いほどlogMAR視力の値は大きくなるのであるから、第2図は、logMAR視力が倍率色収差の増大に比例して劣化してゆくことを示して
いる。なお、第2図においては、直線的な相関関係を分かり易くする為に、No.2とNo.3の
被験者の視力劣化を表すプロットに近似直線を付した。
めて試みたものである。発明者は、このプロットの考察より、色収差によるlogMAR視力の
劣化は倍率色収差に略比例することを見出した。
、該相関関係と裸眼視力とに関係があるのではないかと考えられる。遠視の被験者では、矯正レンズはプラスであり、近視の被験者に比べると、より強い色収差の影響がある。即ち、遠視の被検者(No.2、No.6)は、近視の被検者(No.3)に比較して、より強い色収差の影響がある。その理由として、第1に遠視眼鏡、近視眼鏡の両方を掛けて測定したため、眼鏡の違いによる色収差の影響が考えられる。第2に遠視眼、近視眼の違いによる色収差の影響が考えられる。ただ、被験者の数が少ないという課題は残る。
分]とする(尚、「小視野トリタノピア」については眼科用語であり、前述した文献6参照
されたい)。そうすると、色にじみを感じなくなる倍率色収差は略0.2Δ以下となる。ところが、第2図に示すように、色が見えないにもか拘わらず、倍率色収差約0.2Δ以下の範囲においても直線的にlogMAR視力の劣化が起こっている。発明者は、この実験により、たとえ色が見えなくても、logMAR視力と倍率色収差との比例関係は、該倍率色収差がゼロになるまで続くことをはじめて見出した。
、網膜処理及び脳内処理を含めた視力計算の為の全体的な視覚モデルは、精度等の観点から作成が困難である。その為、本願発明では、実測にされた視覚データに基づいて視力関数を定義していく手法を採用する。
以上、倍率色収差に起因して視力が劣化することが判明した。次に、このことと、倍率色収差以外の収差に起因する視力劣化とを、どのように合成するかについて説明する。合成則は、前述した文献1の実験データを再検討し、一部のデータを再調整したり、新たに
補足することにより新規な結論を見出すことができた。
図に示すように、眼鏡を装用し側方視したときにおけるMTF測定を行っている。眼鏡レン
ズ4としては、それぞれアッベ数の異なる4種類のレンズ(No.1〜No.4とする)を用いている。
能をもっているかを空間周波数で表したものである。MTFは、物体(この場合は、モアレパターン(縞))から最終プロセス(この場合は、眼)に至る像の質を定量的に表現するのに適
した方法である。
定を行う。
影響する収差(パワーエラー、非点収差)による視力劣化とが合成された条件下における唯一の公知なデータである。この実験に使用されたレンズ4の屈折率とアッベ数を表9に掲げる。
、縦軸にカットオフ周波数をとり、横軸にアッベ数の逆数をとったグラフである。
うにするために、第4図のデータを第2図のように視力と倍率色収差との関係が関連づけ易いように同じ形式となるように再プロットし、調整する。再プロットの仕方は、次の通りである。
側方の位置42とにおけるカットオフ周波数データを正確に読みとる。そして、No.1〜No.4のレンズの中心におけるカットオフ周波数データがlogMAR視力でゼロとなるように、中心から20[mm]側方の位置42におけるカットオフ周波数データをlogMAR単位の視力劣化データへ正規化する。この正規化により、当該実験条件下における機械近視、指標輝度、指標距離等の誤差要因を大幅に減じることができた。以上のようにして縦軸の値を求めた。
方の位置42におけるレンズ開口部のプリズムデータが文献1に記載されていない。またプ
リズムデータを計算により求めるには、当該実験に用いた眼鏡レンズ4の形状データが必
要であるが、該形状データは文献1に記載されていない。
ム値を推定する。その為に次の事項を仮定した。
ズムディオプタ)は表11のように計算できる。
あるプリズム値/アッベ数に換算することができた。以上のようにして横軸の値を求めた
。
ところで、文献1では第4図に示すように、縦軸にカットオフ周波数、横軸にアッベ数の逆数をとって色収差が存在しないときのカットオフ周波数を推定し、眼鏡レンズの色収差以外の軸外収差による影響を考察しよう試みられている。しかし、結果として、MTFの変
化からだけでは、眼鏡レンズ周辺における色収差及びそれ以外の収差の影響は分離できないとの結論に至っている。
そこで、この上記の結論に対して、下記の手法にて、色収差とそれ以外の収差との分離を行う方法を見出した。眼鏡レンズにおける色収差以外の軸外収差の視力への影響は、以下に述べる手法により計算できる。
収差以外の収差は瞳孔径に無関係なパワーエラー、非点収差だけであることを想定している。
結果が示されている。その図を引用して第5図に示す。これは、横軸に球面度数をとり、
縦軸に乱視度数をとって、分数視力の単位で視力測定値を表した図である。眼鏡を外しているのだから当然に視力劣化が起こりよく見えない。また眼鏡を装用していない状態での視力測定であるから、眼球の軸上色収差は、前述した文献1で視力に影響ないとされてお
り、色収差の影響がない場合の視力劣化データとなっていることに注意したい。
縦軸の乱視度数の符号をそれぞれ逆にした場合、そのデータは、正視眼の被験者が逆にした球面度数、乱視度数の眼鏡を装用した場合の視力劣化を表すことになる。
位より該リスティング則に従い回転する場合は、眼鏡主経線とリスティング則に従い回転した座標系の軸とは互いに平行になり挟む角はゼロとなる。
乱視度数=残留非点収差 …(2)
次に、第5図をみると、横軸(球面度数)の値が原点に対して対称ではないのが分かる。
更に縦軸(乱視度数)の値も、生体に特有の非線形なデータとなっている。例えば、横軸値の絶対値が同じで符合が異なる視力値をみると単純な関数関係をもたないことが分かる。つまり、視力値は光学性能値に対して非線形である。従って、生体に特有の非線形性を考慮する必要がある。
球面度数)、縦軸値(乱視度数)をそれぞれ0.1〜1ディオプタで刻み、視力値を離散的にプロットする。そして、該平面座標上の視力値を、公知の補間法を用いて補間することにより、球面度数及び乱視度数をパラメータとして含む補間関数Vを求める。補間関数Vは次式で表される。
この(3)式によれば、パラメータとしての球面度数、乱視度数が連続値であっても補間
関数Vの値を算出できる。この補間関数の値とは、分数視力(=小数視力)のことである。
られる。
この(4)式によれば、光学的な計算より求めたパワーエラー及び残留非点収差と、補間
関数の値が関連付けられる。この補間関数の値とは、分数視力(=小数視力)のことである。
いることもできる。しかし、非線形性が強く、また物理的にも意味がないので、最適化計算に最良の状態とはいい難い。そこで、次の(5)式のように、(4)式の単位を、現在一般的に採用されているlogMARに換算するのが好ましい。
以上の処理により、生体の光学性能よりみた非線形な性質が考慮された視力関数が導出される(本件発明者の国際特許出願 PCT/JP02/04244 :P11〜P22,、第1図〜第12図参照)。勿論、生体の視力は年齢、測定環境等で大きく変化する。また、実際には、
上記の基本的な手法では、最適化計算における計算量が大きくなる。そこで、前述の(5)
式の代わりに、次の(6)式のような近似式も使用できる。
…(6)
但し、αは0.25≦α≦0.65の範囲の係数であり、好ましくは0.4751である。Kは0.2≦K
<1の範囲の係数である。
パワーエラー、残留非点収差、及び視力を計算した。これによって、色収差の影響がないときの視力が計算された。得られたデータを表13に掲げる。
データの結果から採用されたものである。
に信頼度が高いデータである。すると第6図では、倍率色収差とそれ以外の収差との視力
劣化を合成したものは、横軸0,縦軸0.127を通る直線(以下、「合成の直線1」という)となる。
色収差とそれ以外の収差の双方が視力に影響した条件下で求めた前記合成の直線は、倍率色収差のみが視力に影響した条件下で求めたNo.3の被験者のデータの近似直線を、倍率色収差以外の収差のみが視力に影響したときの視力である切片視力の分だけ、上方にシフトしたものである。
発明者は、この事実から、[logMAR]単位で視力を表す場合は、色収差による視力の劣化に、色収差のない視力の劣化を単に加えれば良いことをはじめて発見した。
おけるカットオフ周波数のデータを、表12のデータを算出したのと同様な手法で変形させて採用する。即ちlogMAR、倍率色収差、視力データの正規化、色収差のない場合の視力計算を行う。このデータはFig.11で示されるNo.1,4のデータから算出したデータを示す。
かつ倍率色収差が0.2以下の領域でも比例していることが判明した。以上のデータから、
色収差以外の収差のみによる視力劣化と、色収差のみによる視力の劣化の和が、総合的な視力の劣化になることが検証できる。
…(7)
但し、αは0.25≦α≦0.65の範囲の係数であり、好ましくは0.4751である。βは個人ごとに変化する0.2≦β≦1.2の範囲の係数であり、好ましくは0.2≦β≦1.0であり、より好ましくは0.6である。なおα,βの値はそれぞれ測定データ数より変化する。Kは0.2≦K<1の範囲の係数であり、好ましくは0.2≦K<0.6である。
その絶対値を使用する。(7)式での倍率色収差は、残留プリズムの絶対値をアッベ数で割
った値である。
は評価に用いれば、視力をより忠実に表現できる。
記残留非点収差の値が非点収差と等価になるから、該球面レンズの設計又は評価においては、必ずしもリスティング則を考慮する必要はない。そこで、球面レンズに対しては、下記(8)式の視力関数も適用できる。
…(8)
但し、αは0.25≦α≦0.65の範囲の係数であり、好ましくは0.4751である。βは個人ごとに変化する0.2≦β≦1.2の範囲の係数であり、好ましくは0.2≦β≦1.0であり、より好ましくは0.6である。なおα,βの値はそれぞれ測定データ数より変化する。Kは0.2≦K<1の範囲の係数であり、好ましくは0.2≦K<0.6である。
前述のように、光学系における収差補正の過程では、幾つかの収差やレンズ形状等の評価関数により構成されたメリット関数を、公知の最適化計算にて最小計算するのが一般的な設計法である(例えば、特公平2-38930号公報参照)。
M0=lim射出角→0(tan(射出角)/tan(入射角)) …(9)
ここでM0は近軸光学計算により容易に計算できる。M0の簡単な説明をする。射出光線が眼球入射瞳中心を通る場合において、M0は通常、眼鏡倍率と呼ばれている。しかし射出光線が眼球回旋点を通る場合において、文献10の三宅にならい、回転視角倍率と呼ぶ方がより適切である。
M=tan(射出角)/tan(入射角) …(10)
すると、眼鏡の歪曲収差(DIST)は、(9),(10)式を使用することにより、次の(11)式のように定義できる。
(11)式は従来から導出された関係式である。通常、射出光線は、眼球回旋点を通り、DISTは眼鏡の動的歪曲収差と呼ばれている。
る。例えば同一方向のM0とMが同じ量なら(11)式よりDIST=0と計算される。眼球運動より生じる前述の角ズレを計算に入れる為、M0とMともベクトル量であるという自然な拡張定
義を行う。
部)において、放射方向に異なる値を持つベクトル値となる。すると、最適化計算でのレ
ンズ評価点において、残留視角倍率を視角倍率より中心の視角倍率引いたものと定義する。
すると、リスティング則を考慮にいれた本発明の拡張された眼鏡の歪曲収差の定義は以下の(12),(13)式になる。またその関係を図示すると第8図となる。
拡張DIST=Sign×100×(|残留視角倍率|/|視角倍率M0|) …(13)
本発明のレンズ設計においてレンズに光線を通し光線追跡法にて計算を行うのであるが、レンズの各評価点にて(7),(13)式を計算する。
であれば15〜10000点程度設定できる。
レンズの性格、設計者の裁量による。例えば厳密には、以下の(14)式で、近方での視力実測値はないが、パワーエラー、残留非点収差に対しての挙動は、(7)式の遠方の視力と同
様と仮定し計算する。
この範囲をディオプタ単位で表すと、0[D]乃至0.1[D]となる。また近方領域とは、例えば、基準点から30[cm]乃至33[cm]の範囲と定義できる。この範囲をディオプタ単位で表すと、略3[D]乃至3.33[D]となる。また、基準点をどこにするかについて統一的な基準はない
が、通常、眼球の回旋中心、レンズ表面、角膜中心の何れかとする。
式における各項の重み配分を表す所定の係数であり、u,v,wはそれぞれ各評価点での重
み配分を表す係数である。
残留DISTを制御する余裕が少なくなる。さらにこのことを説明すると、設計者にとり、眼
鏡レンズの前面、後面とも自由に変形可能なら、その面の関数であるメリット関数は、自由に制御可能であるが、面に球面等の設計制限があれば、前記のメリット関数の最小化に影響を及ぼすことになる。
本実施例ではコンピュータを用いた公知の一般的な光線追跡法を使用したレンズ設計方法を用いており、詳細な設計方法の説明は従来技術に記載したとおり、であるので省略する。ただ、光学性能計算及びその計算結果の表示プログラムについては、後述する明視角、明視径の計算及び表示に関する処理プログラムを含んで構成されている。
〔実施例1;アッベ数が異なる場合における眼鏡レンズの明視径の比較〕
はじめに、明視径について説明する。まず、(7)式の視力関数を用いて、眼鏡レンズの
明視域を定義する。明視域とは、眼鏡レンズのクリアに見える領域のことである。なお、明視域は、例えば明瞭域や標準視域とも称されている。
詳細には、logMAR視力の値がゼロのときを最も明瞭に見えるとしたとき、好ましくはゼロ〜0.1乃至0.2までの範囲となる領域を明視域として定義する。この範囲を小数視力で表すと、1〜約0.6乃至約0.8となる。この範囲は、常識的に視力値として評価できる好ましい
基準的値である。但し、明視域を定義するlogMAR視力値は特に限定されるものではなく、目的を逸脱しない範囲で設定できる。
(尚、詳細は、特願2002-211641号参照)
具体的には、立体角[ステラジアン]を第9図に示すように、眼鏡レンズ10の光軸11まわ
りに軸対称な球分12として計算する。該球分12は、眼球回旋点13を頂点とし、眼鏡レンズ10側に球面部分を有するものである。
式は、通常の眼鏡業界で用いられるレンズ径(具体的には、例えば80[mm]以下)を有する眼鏡レンズに対しては立体角が小さいので前記の比例関係の影響を実質的に受けないから問題なく適用できる。
いて、次の(18)式を用いて近似計算できる。なお、明視径という言葉は発明者が名付けたものである。
ここで、明視視角は、上記(17)式を用いて求める。
そして、表18の各度数に対応する明視径の値を、色収差のない場合、アッベ数30,60の場合でそれぞれ算出した。算出結果を表19に掲げる。なお表18,19の度数表示は、全てC
マイナス表示である。
本実施例は、眼鏡レンズ素材の開発の際、アッベ数はどの程度必要かという疑問に答えたものである。本実施例において適用したレンズの諸データを表20に掲げる。その他の計算条件は実施例1と同じである。
ンズの設計上、素材の開発上重要な判断基準になるといえる。
過去、多くの文献が眼球回旋角30°にて、収差を低減した眼鏡レンズを設計してきた。または、眼球回旋角30°にて、収差補正の目安にしてきた。視力の観点から、視角60°での性能評価は重要である。そこでレンズ形状データとして表20のレンズ諸データを使用して、視角60°(眼球回旋角30°)でのlogMAR視力を計算してみた。計算結果を表22、第12図に示す。
また非点収差は+6[D]以上では若干大きいものの、眼鏡レンズ設計規範でよく使われる非点収差0.5[D]を満たしている。
もの(あるいは改良されたもの)に色収差を加えて改良してもよい。その場合は、例えば
、下記のようにな視力関数を導きだすことができる。
…(c)
但し、Lは0.5≦L≦0.8の範囲の係数であり、sphere error、cyl errorは、タンジェン
シャルエラーをT、サジタルエラーをSとすると、それぞれ下記(d),(e)式で表される。
cyl error=||T|−|S|| …(e)
Claims (14)
- 光学系を通してみた場合の視力の劣化量を対数視力で表したとき、
当該光学系における収差に起因した総劣化量を、該収差のうち倍率色収差以外の収差のみに起因する第1の劣化量と該収差のうち倍率色収差のみに起因する第2の劣化量との和を含んで構成された視力関数で表し、この視力関数を評価関数に用いて、前記光学系の性能を評価することを特徴とする光学系の性能評価方法。 - 請求項1に記載の光学系の性能評価方法において、前記第2の項は、前記倍率色収差の値を表すパラメータと所定の比例定数との積を含んで構成されることを特徴とする光学系の性能評価方法。
- 請求項2に記載の光学系の性能評価方法において、前記第2の項の定義域は、小視野トリタノピア現象が起きる前記倍率色収差の範囲を含むことを特徴とする光学系の性能評価方法。
- 請求項1乃至3の何れかに記載の光学系の性能評価方法において、前記第1の項は、前記光学系を通して所定方向の遠方領域をみる場合と、その方向における前記遠方領域よりも眼球側の近方領域をみる場合とで、値が異なるパラメータを含んで構成されたものであることを特徴とする光学系の性能評価方法。
- 請求項4に記載の光学系の性能評価方法において、前記第1の項は、パワーエラーを表すパラメータと、非点収差又は残留非点収差を表すパラメータとを含んで構成されたものであることを特徴とする光学系の性能評価方法。
- 請求項2乃至5の何れかに記載の光学系の性能評価方法において、前記視力関数が、下記(a)式で表されることを特徴とする光学系の性能評価方法。
視力関数=α×[(パワーエラー)2+(K×非点収差)2]1/2+β×倍率色収差
…(a)
但し、αは0.25≦α≦0.65の範囲の係数であり、βは0.2≦β≦1.2の範囲の係数であり、Kは0.2≦K<1の範囲の係数である。 - 請求項2乃至5の何れかに記載の光学系の性能評価方法において、前記視力関数が、下記(b)式で表されることを特徴とする光学系の性能評価方法。
視力関数=α×[(パワーエラー)2+(K×残留非点収差)2]1/2+β×倍率色収差 …(b)
但し、αは0.25≦α≦0.65の範囲の係数であり、βは0.2≦β≦1.2の範囲の係数であり、Kは0.2≦K<1の範囲の係数である。 - 請求項2乃至5の何れかに記載の光学系の性能評価方法において、前記視力関数が、下記(c)式で表されることを特徴とする光学系の性能評価方法。
視力関数=log10[1+2.8×(sphere error+L×cyl error)]+β×倍率色収差 …(c)
但し、Lは0.5≦L≦0.8の範囲の係数であり、sphere error、cy
l errorは、タンジェンシャルエラーをT、サジタルエラーをSとすると、それぞ
れ下記(d),(e)式で表される。
sphere error=min(|T|,|S|) …(d)
cyl error=||T|−|S|| …(e) - 請求項1乃至8の何れかに記載の光学系の性能評価方法において、前記光学系を構成す
る光学要素の光線が通過する面に、予め複数の評価点を設定しておく評価点設定工程をさらに有し、次いで、前記光学性能評価工程では、前記設定した評価点の各々における光学性能を評価することを特徴とする光学系の性能評価方法。 - 請求項5に記載の光学系の性能評価方法において、前記光学系を構成する光学要素の光線が通過する面に、予め複数の評価点を設定しておく評価点設定工程をさらに有し、次いで、前記光学性能評価工程では、前記視力関数を用いて構成された下記(f)式で表されるメリット関数、又はこのメリット関数と実質的に等価な関数によって、前記光学系の性能を評価することを特徴とする光学系の性能評価方法。
- 請求項5に記載の光学系の性能評価方法において、前記光学系を構成する光学要素の光線が通過する面に、予め複数の評価点を設定しておく評価点設定工程をさらに有し、次いで、前記光学性能評価工程では、前記視力関数を用いて構成された下記(g)式で表されるメリット関数、又はこのメリット関数と実質的に等価な関数によって、前記光学系の性能を評価することを特徴とする光学系の性能評価方法。
- 予め定めた眼鏡レンズの仕様を満たす範囲内でその光学性能が最適になるレンズ形状を計算により求めて眼鏡レンズの設計をする際に、前記光学性能を、請求項1乃至11の何れかに記載の光学系の性能評価方法を用いて評価することを特徴とする光学系の設計方法。
- 請求項12に記載の光学系の設計方法において、前記光学系を構成する光学要素を定義するパラメータを、予め固定パラメータと可変パラメータとに分けておき、前記可変パラメータの値を所定のステップで変化させながら、各ステップにおいて、そのときの当該可変パラメータの値と前記固定パラメータの値とによって定義される仮想的な光学要素の性能を、前記光学性能評価方法を用いることにより視力に関して評価し、その評価が最適と
なったステップにおける前記可変パラメータの値を特定する最適化計算工程、を有することを特徴とする光学系の設計方法。 - 請求項13に記載の光学系の設計方法において、前記可変パラメータには、前記光学要素の倍率色収差又は該倍率色収差に関する光学値が含まれることを特徴とする光学系の設計方法。
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