JP4673714B2 - 光導波路型バイオケミカルセンサチップおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
このような薄い厚さの光導波路層はコア層およびクラッド層の屈折率と用いる光の波長とで決まる固有モード数、すなわち光導入用のカプラに光をカップリングさせることのできる入射角度の数が、10未満の不連続な値になるため、この不連続値に対応した厳密な入射角度の調整が必要になるという問題がある。
特許文献1には、ゾルーゲル法で形成された酸化シリコンまたはポリイミドからなる光導波路層の表面にリソグラフィによってグレーティングを形成する実施例が記載されているが、グレーティング表面が空気と接するため効率は必ずしも高くない上に、グレーティング部分への傷や汚染を防ぐための工夫が示されていない。
図1は、第1実施形態に係る光導波路型バイオケミカルセンサチップを示す断面図である。
光導波路層3は、基板1より高屈折率の高分子樹脂からなり、3〜300μmの範囲で設定される均一な厚さの膜体である。前記グレーティング2が形成された基板1の主面に密着するように隣接して形成されている。
保護膜4は、光導波路層3を構成する材料よりも低屈折率で、かつセンサチップに投入される全ての試薬と反応しない材料(例えばフッ素樹脂)で構成される。前記グレーティング2が形成されている領域に対応する前記光導波路層3の両端部、つまりグレーティング2に対応する領域を覆うように、光導波路層3の表面に隣接して形成されている。
センシング膜5は、生体分子認識機能および情報変換機能を有する。グレーティング2間を結ぶ線分上の保護膜4に挟まれた領域に位置し、前記光導波路層3表面に密着するように隣接して形成されている。
このような膜として機能させるために、膜本体は多孔質組織となっており、検体と抗原抗体反応により結合する標識された抗体や、標識に反応して反応産物を生成する試薬、標識と試薬の反応を促進する触媒などが、薬品の種類に応じて適宜組み合わされ、多孔質組織内の空孔に個別に納められている。検体溶液の溶媒が膜組織を破壊してこれらのセンシング膜構成物質を移動自在に開放し、検体との反応を促す。
前記グルコースセンシング膜中の発色剤としては、水への溶解度が低く、生体への有害性が極めて低い3,3',5,5'−テトラメチルベンジジン(TMBZ)を用いることが望ましい。
この状態で、図1に示すように光源(例えばレーザダイオード)6および受光素子(例えばフォトダイオード)7をそれぞれバイオケミカルセンサチップの基板1の裏面左側および右側にそれぞれ配置し、前記レーザダイオード6からレーザ光を前記バイオケミカルセンサチップの基板1裏面側に入射すると、そのレーザ光は基板1を通してグレーティング2と光導波路層3の界面で屈折され、さらに光導波路層3と基板1およびセンシング膜5の界面で複数回屈折しながら伝播する。この際、光導波路層3で伝播する光のエバネッセント波はセンシング膜5の界面での屈折時にそのセンシング膜5おける前記検体中の生体分子のバイオケミカル反応に基づく変化(例えば吸光度変化)に応じて吸収される。
前記光導波路層3を伝播した光は、右側のグレーティング2から基板1の裏面から出射され、フォトダイオード7で受光される。受光したレーザ光強度は、センシング膜5が生体分子とバイオケミカル反応をなさない時に受光した光強度(初期光強度)に比べて低下した値になり、その低下率から生体分子の量を検出することが可能になる。
基板と導波路層との界面および導波路層表面での反射角をθ、光導波路層の長さ(グレーティング間の部分の長さ)をL、光導波路層の厚さをtとすれば反射回数nは、n=L/(t×tanθ)であり、検体を作用させない状態での界面および表面での散乱による光の平均減衰率をα(0)、入射光強度をI、グレーティングでの回折効率や光導波路層内以外での散乱などに起因する減衰率をc、光導波路を経由しない外乱光等によるオフセット成分をβ、とすると、センシング膜に対して検体を作用させない状態での出力光強度I(0)は(1)式となる。
また、50μm以上の膜厚においては0〜5mg/dlの範囲で良好な直線性を示し、0.1mg/dlにおけるR>0.09を満たす条件から、300μm程度の膜厚まで用いることとした。
このように光導波路層の厚さに起因する二律背反する光強度の減衰の抑制および検出感度の向上を3〜300μmの厚さに規定することによって達成することが可能になる。
このような比較的厚い光導波路層は高分子樹脂溶液の基板への塗布技術により実現することが可能になる。より好ましい光導波路層の厚さは、表2より、0〜1mg/dlでの良好な直線性と、0.02mg/dlでのR>0.009という高検出能を同時に満たすことから15〜50μmである。
このような膜厚構成とすることで、本実施形態のセンサチップは、0.1mg/dl以下という極低濃度のグルコースを良好な検量線の直線性のもと、定量的に検出できる光導波路型センサを実現する。
サブミクロンサイズのグレーティング構造を高精度に形成する方法としてはリソグラフィ技術とドライエッチング技術を用いるのが一般的であるが、ガラスや金属酸化物のエッチング速度は決して高くなく、100nmの深さまで加工するために数分を要する場合もある。そのため、例えば1μmの深さに加工しようとすると、結果的に高コストとなる問題がある。
本実施形態では、光導波路層として屈折率n1=1.57の高分子樹脂を用い、655nmの波長導波させていることから、(3)式でd<1000nmとすることにより、(4)式となる屈折率n2を有する材料で格子形状をパターニングし、カプラやデカプラを形成することが現実的である。
一般に、3層平板光導波路における伝播特性を示すパラメータとして、式(3)に示されるVパラメータが知られており、V<π/2ではシングルモードとなることが知られている。光導波路層膜厚をmλ(m:整数、λ:導波光の波長)と記述すると、Vは(5)式となる。
V = m・π・(n1 2−n2 2)1/2…(5)
但し、n1:コア層の屈折率、n2:クラッド層の屈折率、である。
この問題を解決するために、本発明では光導波路層の膜厚を用いる光源波長の5倍以上と規定した。その結果、マルチモードで光を導波させることが可能となった。更に、発散光あるいは収束光を光源として用いた結果、入射角のわずかな変化に対する出力光強度の変動を抑えることが可能となった。 前記光導波路層は、表面にヒドロキシ基、アルデヒド基、カルボキシ基のような親水性官能基を有することが好ましい。このような親水性官能基を有する光導波路層は、その表面に前記センシング膜が良好に密着される。
まず、ウエハ状に広がりを有する無アルカリガラスまたは石英からなる透光性の平板である基板11の主面に、この基板より高い屈折率を有する材料膜(例えば酸化チタン膜)をスパッタリングにより成膜する。
すべてのグレーティング12は同じ線長で等ピッチに形成される。このグレーティング12に対して外部から光を入射させればグレーティングはカプラとして機能するし、光導波路層内を伝播した光がグレーティング12に入射すれば、グレーティングはデカプラとして機能する。
図6は、この第2実施形態に係る光導波路型バイオケミカルセンサチップを示す断面図である。
生体分子認識機能および情報変換機能を有するセンシング膜15は、前記保護膜14間に位置する前記光導波路層13部分の上に形成されている。
屈折率1.52の無アルカリガラス基板の主面に屈折率2.2〜2.4の酸化チタンをスパッタリングして厚さ50nmの酸化チタン膜を成膜し、この酸化チタン膜をリソグラフィーとドライエッチング(RIE)により選択的に除去してグレーティングを形成した。つづいて、グレーティングを含むガラス基板の主面に熱硬化性樹脂溶液をスピンコータで塗付し、焼成することにより厚さが25〜35μm、屈折率が1.57の光導波路層を形成した。つづいて、グレーティングに対応する前記光導波路層表面部分にフッ素系樹脂をスクリーン印刷し、乾燥して保護膜を形成した。
・リン酸緩衝液 : 0.000525 mol/L
・ポリエチレングリコール(PEG): 0.15 Wt%
・3,3’、5,5’−テトラメチルベンジジン(TMBZ):0.15 mg/dL
・カルボキシメチルセルロース(CMC): 0.32 wt%
・ペルオキシターゼ(POD): 0.0015 mg/dL
・グルコースオキシダーゼ(GOD): 0.012 mg/dL
4,14…保護膜、5,15…センシング膜、6…レーザダイオード、
7…フォトダイオード、16…高分子樹脂層。
Claims (17)
- 所定の条件で内部に光を入射させるカプラまたは所定の条件で内部から光を出射させるデカプラの少なくとも一方を備えるよう、透光性を有する材料で成形された基板と、
前記基板の前記カプラもしくは前記デカプラが形成された主面に対して隣接して形成され、厚さが3μm以上300μm以下であり、前記基板を構成する材料よりも屈折率が高い高分子樹脂材料からなり、前記カプラを介して入射した光が複数のモードで伝搬可能な光導波路層と、
前記光導波路層上に形成され、導入された検体に応じて、前記光もしくは前記光のエバネッセント波に対して吸収性を有する反応産物を生成するセンシング膜と、
を備えたことを特徴とする光導波路型バイオケミカルセンサチップ。 - 前記カプラもしくは前記デカプラは、前記光導波路層の屈折率より0.3以上高屈折率の材料で形成されたグレーティングで形成されていることを特徴とする請求項1記載の光導波路型バイオケミカルセンサチップ。
- 前記グレーティングを形成する材料が、酸化チタン、酸化タンタル、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、窒化シリコンのうちいずれか1種以上の材料を含むこと、を特徴とする請求項2記載の光導波路型バイオケミカルセンサチップ。
- 前記光導波路層部分の前記光が伝播する領域の長さは、3mm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の光導波路型バイオケミカルセンサチップ。
- 前記光導波路層は、厚さが前記光の波長の5倍以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の光導波路型バイオケミカルセンサチップ。
- 前記光は、発散光または収束光であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の光導波路型バイオケミカルセンサチップ。
- 前記光導波路層と同材質で同厚さの高分子樹脂層が、前記基板の他方の主面にさらに形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の光導波路型バイオケミカルセンサチップ。
- 前記光導波路層表面に対し、前記光導波路層より低屈折率の材料からなる保護膜が形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の光導波路型バイオケミカルセンサチップ。
- 前記センシング膜を囲むように開口する前記光導波路層より低屈折率の材料からなる枠構造膜が前記光導波路層表面に形成されたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の光導波路型バイオケミカルセンサチップ。
- 前記センシング膜が、3,3',5,5'−テトラメチルベンジジン(TMBZ)を具備することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の光導波路型バイオケミカルセンサチップ。
- 前記光導波路層の厚さは、3μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の光導波路型バイオケミカルセンサチップ。
- 透光性を有する基板の主面に、この基板の内部に光を入射あるいは出射するためのカプラもしくはデカプラのうち少なくとも一方を形成する工程と、
前記カプラもしくは前記デカプラを含む基板の主面に前記基板より高屈折率の高分子樹脂材料を塗布し、乾燥させて、厚さが3μm以上300μm以下であり、前記カプラを介して入射した光が複数のモードで伝搬可能な光導波路層を形成する工程と、
前記光導波路層上の所定の領域にセンシング膜を形成する工程と、
を具備することを特徴とする光導波路型バイオケミカルセンサチップの製造方法。 - 透光性を有する基板の主面に、この基板の内部に光を入射あるいは出射するためのカプラもしくはデカプラのうち少なくとも一方を形成する工程と、
前記カプラもしくは前記デカプラを含む基板の主面に前記基板より高屈折率の高分子樹脂材料を塗布し、乾燥させて、厚さが3μm以上300μm以下であり、前記カプラを介して入射した光が複数のモードで伝搬可能な光導波路層を形成する工程と、
前記基板の前記カプラもしくは前記デカプラが形成される面とは異なる主面に、前記基板より高屈折率の高分子樹脂を塗布し、乾燥して厚さが3μm以上300μm以下の高分子樹脂層を形成する工程と、
前記カプラもしくは前記デカプラを含む基板の主面に前記高分子樹脂層と同じ高分子樹脂を塗布し、乾燥して前記高分子樹脂層と同厚さであり、前記カプラを介して入射した光が複数のモードで伝搬可能な光導波路層を形成する工程と、
前記光導波路層表面にセンシング膜を形成する工程と、
を具備することを特徴とする光導波路型バイオケミカルセンサチップの製造方法。 - 光導波路表面のうち、少なくともカプラもしくはデカプラが形成された領域を含むように、前記光導波路を形成する材料よりも低屈折率の材料によって保護膜を形成する工程を有することを特徴とする請求項12あるいは13に記載の光導波路型バイオケミカルセンサチップの製造方法。
- センシング膜が形成される領域を囲んで開口するように、前記光導波路を形成する材料よりも低屈折率の材料によって枠構造の保護膜を形成する工程を有することを特徴とする請求項12あるいは13に記載の光導波路型バイオケミカルセンサチップの製造方法。
- 前記光導波路層を形成した後に前記基板を切断することを特徴とする請求項12〜15のいずれか1つに記載の光導波路型バイオケミカルセンサチップの製造方法。
- 前記光導波路層の厚さを3μm以上50μm以下とすることを特徴とする請求項12〜16のいずれか1つに記載の光導波路型バイオケミカルセンサチップの製造方法。
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