JP2009133844A - バイオセンサおよびその製造方法、およびセンサ計測システム - Google Patents

バイオセンサおよびその製造方法、およびセンサ計測システム Download PDF

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Abstract

【課題】表面プラズモン共鳴現象を利用して被測定試料の屈折率、濃度、たんぱく質、抗体・抗原反応などを高感度に検出することができるバイオセンサ、バイオセンサの製造方法、およびセンサ計測システム。
【解決手段】透明丸棒2と、透明丸棒2の片端の端面2aに形成された金属反射鏡40と、透明丸棒2の前記片端の外周側面に形成された金属薄膜3と、外周側面の金属薄膜3上に形成され、光架橋剤を含んだ光固定化剤及び被固定化物質が固定化された有機物質層4とを備えるバイオセンサ、バイオセンサの製造方法、およびセンサ計測システム。
【選択図】図1

Description

本発明は、バイオセンサおよびその製造方法、およびセンサ計測システムに関し、特にポリペプチドやタンパク質、核酸、細胞などの生体物質を、光固定化剤を介して透明丸棒の外周側面の金属薄膜上に固定し、表面プラズモン共鳴現象を利用して被測定試料の屈折率、濃度、たんぱく質、抗体・抗原反応などを検出するバイオセンサおよびその製造方法、およびセンサ計測システムに関する。
表面プラズモン共鳴(SPR:Surface Plasmon Resonance)現象とは、表面に厚さ数10nmの金属薄膜を形成した誘電体内に白色光を入射させた場合において、特定の入射角或は特定の波長で生じるエバネッセント波が金属薄膜表面の電子振動と共鳴する現象である。
このSPR現象を応用して物質の屈折率を測定するセンサが開発されており、その一つとして、光ファイバを用いたものがある。 この光ファイバ型表面プラズモンセンサについては、1990年頃に米国ワシントン大学より提案され、溶液の成分や屈折率、そして膜厚等について高感度且つリアルタイムで計測でき、コンパクト且つ簡便なセンサとして注目されていたが、センサプローブの光ファイバコアの外周側面上に検出目的物質の抗原または抗体と反応させる物質の抗体または抗原等の生体物質の固定化方法が確立されてないため、十数年が経った現在でも、未だ光ファイバ型バイオセンサとして実用化されていない。
一方、平面形状プレートやチップ等の基体上に抗体または抗原等の生体物質を固定化する方法として、物理吸着法や官能基共有結合法がよく知られているが、これらの固定化方法を用いて光ファイバコアの外周側面上に抗体または抗原等の生体物質の固定化に成功した事例はない。
近年、光反応性基を有する水溶性光固定化剤を用いて、平面形状のプレートやチップ等の基体上に抗体または抗原等の生体物質を固定し、非特異吸着の防止効果があるためブロッキング処理は不要となり、しかも目的物質の抗原または抗体との結合感度が高い光固定化法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2および特許文献3参照。)。
特開2006−322708号公報 特開2007−139587号公報 特開平10−282039号公報
本発明の目的は、表面プラズモン共鳴現象を利用して被測定試料の屈折率、濃度、たんぱく質、抗体・抗原反応などを高感度に検出することができる光ファイバ型のバイオセンサおよびその製造方法、およびセンサ計測システムを提供することにある。
上記目的を達成するための本発明の一実施態様によれば、透明丸棒と、前記透明丸棒の片端の端面に形成された金属反射鏡と、前記透明丸棒の前記片端の外周側面に形成された金属薄膜と、前記外周側面の金属薄膜上に、光架橋剤を含んだ光固定化剤で、被固定化物質を固定化してなる有機物質層とを備え、前記透明丸棒の材料は、石英系ガラスもしくは光学系ガラスであって、
前記金属薄膜は、クロム膜を形成した上に金(Au)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、又はカリウム(K)膜を形成した多層構造であるバイオセンサが提供される。
本発明の他の実施態様によれば、透明丸棒を準備する工程と、前記透明丸棒の片端の端面に金属反射鏡を形成する工程と、前記透明丸棒の前記片端の外周側面に金属薄膜を形成する工程と、前記外周側面の金属薄膜上に、光架橋剤を含んだ光固定化剤及び被固定化物質が固定化された有機物質層を形成する工程とを有し、
前記透明丸棒の材料は、石英系ガラスもしくは光学系ガラスであって、
前記金属薄膜は、クロム膜を形成した上に金(Au)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、又はカリウム(K)膜を形成した多層構造であって、
前記有機物質層を形成する工程は、前記外周側面の金属薄膜上に、前記光架橋剤を含んだ光固定化剤及び前記被固定化物質を有する塗布液をディップコーティングする工程と、前記ディップコーティングされた前記光架橋剤を含んだ光固定化剤及び前記被固定化物質に紫外線を照射することにより、前記外周側面の金属薄膜上に固定化する工程とからなるバイオセンサの製造方法が提供される。
本発明の他の態様によれば、表面プラズモン共鳴現象を応用して物質間相互作用を検出するセンサ計測システムであって、表面プラズモン共鳴現象により物質間相互作用を検出する上記本発明のバイオセンサを備えるセンサプローブと、前記センサプローブを保持するセンサプローブ保持具と、前記センサプローブに光を入射させる光源と、前記光源からの入射光を、前記センサプローブに伝搬し、前記センサプローブからの反射光を光検出器まで伝搬する光カプラと、前記反射光を検出する光検出器とを備えるセンサ計測システムが提供される。
本発明の他の態様によれば、前記光架橋剤は、1分子に少なくとも2個以上の光反応性基を有する構造であり、前記光反応性基はアジド基である。前記光固定化剤は、前記被固定化物質の非特異吸着を防止できるポリエチレングリコール(メタ)アクリレートのホモポリマーもしくはコポリマーで形成されていても良い。
本発明の他の態様によれば、前記被固定化物質は、ポリペプチドやタンパク質、核酸、脂質、細胞等の生体物質で形成されていても良い。
本発明のバイオセンサ、バイオセンサの製造方法、およびセンサ計測システムによれば、透明丸棒の外周側面の金属薄膜上に、タンパク質等の生体物質及び光反応性基を有する光架橋剤を含んだ光固定化剤を有する塗布液を、ディップコーティングし、紫外線を照射して固定化することにより有機物質層を形成し、表面プラズモン共鳴現象を利用して被測定試料の屈折率、濃度、たんぱく質、抗体・抗原反応などを高感度に検出することができる。
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置などを下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
[第1の実施の形態]
(光ファイバ型バイオセンサのセンサプローブ構造)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバ型バイオセンサのセンサプローブ1の模式的断面構造図を示す。また、図2は、本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバ型バイオセンサのセンサプローブ1部分の拡大された模式的断面構造図を示す。
本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバ型バイオセンサは、図1および図2に示すように、透明丸棒2と、透明丸棒2の片端の端面(センサ検出端面)2aに形成された金属反射鏡40と、透明丸棒2の前記片端の外周側面に形成された金属薄膜3と、外周側面の金属薄膜3上に形成され、光架橋剤を含んだ光固定化剤及び被固定化物質が固定化された有機物質層4とを備える。
光架橋剤は、1分子に少なくとも2個以上の光反応性基を有し、光反応性基は、アジド基であっても良い。
光固定化剤は、被固定化物質の非特異吸着を防止するポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの水溶液であっても良い。
被固定化物質は、ポリペプチドもしくはタンパク質、核酸、脂質、細胞等の生体物質であっても良い。
また、透明丸棒2の材料は、市販の石英系ガラス、BK7(商標)等の光学系ガラス、もしくはPMMA等の光学系ポリマーを用いることができる。
透明丸棒の外径については特に限定はないが、例えば、約5μm〜5000μm程度の範囲とすることができ、望ましくは、例えば、約100μm〜600μm程度である。
この透明丸棒の外径を大きくする事により、測定可能な波長帯域を広くする事ができる。即ち、透明丸棒として、光ファイバのコア部分を使用した場合、その外径が大きければ、NA(Numerical Aperture、以下「開口数」とも言う)が大きくなる為である。
また本発明に係るバイオセンサは、透明丸棒の屈折率をn1とし、、透明丸棒における金属薄膜以外の部分を被覆する被覆層の屈折率をn2としたとき、n1はn2より大きく、0.10<(n1−n21/2<0.80とすることが望ましい。例えば、n1を1.475とし、n2を1.428として、(n1−n21/2は0.37にすることができる。
このような透明丸棒の屈折率n1と被覆層の屈折率n2との関係を規定する事によって、光源から入射した光を透明丸棒中に閉じ込めて、側面からの透過を阻止することができる。
さらに、この透明丸棒の断面形状は、円形、楕円形、矩形の何れであっても良い。ここで円形とは真円を含む実質的に加工・作成可能な円形である事を意味する。
また、金属薄膜3に用いる金属としては、例えばAg、Au、Cu、Zn、Al、Kが好ましく、特にAg、Auが好適である。
金属薄膜3は、例えば真空蒸着もしくはスパッタリング、めっき等によって、金属を透明丸棒の側面に堆積させて形成される。金属薄膜3の厚さは、SPRが生じればよく、特に限定されないが、例えば、約10nm〜80nm程度の範囲とすることができ、特に望ましくは、約30nm〜60nm程度である。また、金属薄膜3は合金組成で形成されていてもよい。
但し、緻密性の高い金属薄膜を形成するには、スパッタリングによって形成する事が望ましい。金属薄膜の緻密性を高めることにより、バイオセンサの環境耐性が向上し、金属膜が剥離しにくなり、使用耐久性を高める事ができる。
また、金属薄膜3は、透明丸棒表面への密着性を向上させために、例えば透明丸棒表面にまずクロム(Cr)膜を極めて薄く形成し、さらにその上に金(Au)膜等を形成した多層構造をもって形成されていてもよい。
金属薄膜3の構成において、薄いCr膜の層を下地層として用いた多層構造とする場合には、当該Cr膜の層はプラズモン共鳴にあまり適さないので、極力薄い層として形成する事が重要である。具体的には、当該Cr膜の層は、0.1〜10nmの範囲で形成する事が望ましく、特に1〜5nmの範囲である事が望ましい。
金属反射鏡40は、透明丸棒に入射した光を反射させる機能を有し、少なくとも当該機能を確保できる材料が使用される。例えば、Ag、Alを使用し、その表面(外側)にAu層を設けた2層構造にすることもできる。特に、AgやAlは空気中で容易に酸化されることから、Ag等の表面に酸化安定性を有するAu層を設ける事により、当該金属反射膜の酸化を阻止する事ができる。また、この金属反射鏡40は安定した反射率を得るために、100nm〜2500nmの膜厚に形成し、望ましくは500nm以上に形成する。但し、透明丸棒の外径との関係にもよるが、あまり厚すぎると剥がれ落ちるおそれがある為、2500nm以下にすることが望ましい。一例として、内側にAg層を形成し、その上にAu層を形成した二層薄膜構造にすることができ、金属薄膜の厚さを550nmにすることができる。
有機物質層4が形成される透明丸棒における金属薄膜が被覆されている領域の長さは、適宜選択されればよいが、例えば約2〜50mm程度とすることができ、約5〜20mm程度が好ましい。
透明丸棒3において有機物質層が形成される領域は、被固定化物質を固定化する領域であり、この長さが短すぎるとセンサ感度が鈍くなる。逆に長すぎると作業上及び使用上の折れや欠けなどのトラブルを引き起こしやすくなり、更に検出時に使用する試料の量も多く必要になる。
この有機物質層(即ち、金属薄膜が被覆されている領域)が形成される領域(センシング部)の長さ(即ち、センシング長)と共鳴波長での深さの相関関係を図9に示す。この図からも明らかなように、光ファイバ型バイオセンサのセンシング部の長さが長くなるほど、反射光の減衰量が大きくなり、測定結果におけるSPR共鳴波形がシャープになる。即ち、「センシング長さ−共鳴波長での深さ」のグラフにおける共鳴波長での深さが深くなる。一方、このセンシング部の長さが5mm以上、特に10mm以上になると、共鳴強度の変化量(即ち、「センシング長さ−共鳴波長での深さ」のグラフにおける傾き)が鈍くなり、また前述した長すぎる事による問題が派生する。よって、光ファイバ型バイオセンサにおいて、検知性能を確保しながら使用上の問題を回避するには、当該有機物質層4が形成される透明丸棒の長さは、約5〜20mm、特に8〜13mm程度にすることが望ましい。
被固定化物質は、所定の被検出物7と相互作用を行う反応物質からなる反応層4aであれば特に限定されない。反応物質としては、例えば、各種の抗原、抗体、タンパク質や糖類等の生体物質がある。
生体物質として用いる抗原または抗体としては、例えばアレルギーの原因となる抗原や抗体があり、この場合、例えばダニ、スギ花粉、ブタクサ花粉、シラカバ花粉、ヨモギ花粉等の抗原或いはこれらの抗原を認識する抗体等を用いることができる。
また、生体物質として用いる抗原または抗体として、例えば加工食品の残留農薬や残留抗生物質等を検出する抗原や抗体があり、この場合、例えば養殖魚介類やうなぎ等の体内残留抗生物質や、食料品や野菜の残留農薬等の抗原或いはこれらの抗原を認識する抗体などを用いることができる。
また、生体物質として用いる抗原または抗体として、例えば食中毒や伝染病の原因となるウィルスや病原菌等の抗原や抗体があり、この場合、例えば食中毒の原因となるO157や大腸菌、インフルエンザ病原菌等の抗原或いはこれらの抗原を認識する抗体等を用いることができる。
光架橋剤に含まれる光反応性基は、例えば光を照射することによりラジカルを放出する官能基であって、このラジカルによりアミノ基やカルボキシル基等の官能基または有機化合物を構成する炭素原子と結合を形成するものである。このような光反応性基としては、光照射によって水溶性ポリマーと生体物質或いは金属薄膜3との結合形成を誘起する官能基であれば特に限定されない。光反応性基としては、例えばアジド基が挙げられ、より具体的にはフェニルアジド基、アセチル基、ベンゾイル基が挙げられ、特に好ましいものはフェニルアジド基である。
光反応性基を有する水溶性ポリマーを用いて生体物質を金属薄膜3上に固定化する場合には、紫外線照射に伴って開始されるラジカル反応によって生体物質を固定することができるため、対象とする生体物質(被固定化物質に担持する反応物質からなる反応層4a)の種類を特に限定する必要がないという利点を有する。
また、被固定化物質を光固定化剤で固定した有機物質層の形成に際しては、必要に応じてチオール処理が行われた金属薄膜上に、被固定化物質および/または被固定化物質と特異的に反応する物質の基体表面への非特異吸着を防止する効果を有する水溶性ポリマー層を形成し、次いで、この水溶性ポリマー層上に、被固定化物質と1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光架橋剤との混合物をコーティングして光照射することもできる。
また、水溶性ポリマーを使用することにより、有機物質層4における外来物質の「非特異的吸着」を防止することが可能となる。ここでいう「非特異的吸着」とは、被検出物と反応物質との結合とは無関係に、被検出物以外の物質が、吸着的、吸収的、共有結合的又はイオン結合的に有機物質層4に対して吸着、結合する現象である。この非特異的吸着は、センサ特性に悪影響を与えるため、可能な限り抑制することが望ましい。
(光ファイバ型バイオセンサの製造方法)
本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバ型バイオセンサの製造方法は、透明丸棒2を準備する工程と、透明丸棒2の片端の端面2aに金属反射鏡40を形成する工程と、透明丸棒2の前記片端の外周側面に金属薄膜3を形成する工程と、外周側面の金属薄膜3上に、光架橋剤を含んだ光固定化剤及び被固定化物質が固定化された有機物質層4を形成する工程とを有する。
前記有機物質層4を形成する工程は、透明丸棒2の外周側面の金属薄膜3上に、直接もしくはチオール層を介して、生体物質と光固定化剤を有する塗布液を用いてディップコーティングする工程と、ディップコーティングされた塗布液を光照射により固定化し、有機物質層4を形成する工程、とから成る。
かかるディップコーティングでは、金属反射鏡および金属薄膜が設けられた透明丸棒を、生体物質と光固定化剤を有する塗布液に、必要とする規定時間浸漬し、そのあと設定速度にて塗布液中から空気中に引上げ、これを必要に応じて、複数回繰り返して所定の膜厚とすることができる。このディップコーティングは常温・常圧で行う他、必要に応じて加圧、又は減圧環境下で行う事もできる。
特に、本発明に係る光ファイバ型バイオセンサは、基体となる透明丸棒が棒状であり、かつ金属薄膜上に形成される有機物質層は、センサーの精度から200nm以下の厚さに形成されている事が望ましいことから、当該有機物質層の形成にはディップコーティングが最適である。具体的には、被固定化物質を0.3〜0.003重量%、および光固定化剤を当該被固定化物質の5%を配合した塗布液を用いてディップコーティングを行う事により、厚さが200nm以下で、膜厚が均一な有機物質層を形成する事ができる。例えば、被固定化物質としてウシ血清アルブミン(BSA)抗体を使用する場合、当該BSAを0.03重量%、光固定化剤を0.0015重量%の水溶液を塗布液としてディップコーティングを行う事により、厚さが200nm以下で、均一な膜厚の有機物質層を形成することができる。
より具体的には、本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバ型バイオセンサの製造方法は以下の通りである。
(a)まず、外径が約400μm程度の石英ガラスからなる透明丸棒を準備する。透明丸棒は、例えば、市販の光ファイバのクラッド層を有機溶媒等で除去することによって容易に得られる。
(b)次に、透明丸棒の端面にスパッタリングによって厚さ約500nm以上の金属反射鏡40を形成する。金属反射鏡40として、銀(Ag)/金(Au)の2層膜構造を用いる。
(c)その後、透明丸棒の側面上にスパッタリングによって厚さ約50nm程度の金属薄膜3を形成する。この金属薄膜を均一に形成するためには、スパッタリングに際して透明丸棒をチャンバ内で公転させるだけでなく、更に自転させる事が望ましい。金属薄膜3としては、金(Au)膜の1層構造を用いても良いし、石英ガラスとの密着性を図るために、厚さ約3nm程度のクロム(Cr)膜の上に金(Au)膜を厚さ約47nm程度形成した2層構造としても良い。
(d)次に、固定化剤として光反応性基を有する水溶性ポリマーを0.05重量%と、生体物質としてウシ血清アルブミン(BSA)抗体もしくは抗原を0.1重量%とを、純水に溶解して光反応性溶液を生成する。
(e)そして、この溶液を金属薄膜3が形成された透明丸棒にディップコーティングする。
ここで、光反応性基としてアジド基を用いる場合、光として紫外線が好ましいため、有機物質層4に紫外線(波長300nm〜400nm)を照射して、BSA抗体もしくは抗原を、金属薄膜3上に固定化する。
また、光反応性基との反応性をより高めるために、金属薄膜3の表面を周知の方法によりチオール処理しても良い。例えば、1mMメルカプトエタノールを用いて、金属薄膜3の表面をチオール処理した後、前記生成された光反応性溶液に浸漬して、金属薄膜3の表面にディップコーティングし、光照射により固定化しても良い。
これによって、BSA抗体もしくは抗原を含む光ファイバ型バイオセンサが得られる。
(光ファイバ型バイオセンサを適用したセンサ計測システム)
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバ型バイオセンサを適用した簡易センサ計測システムの模式的構成図を示す。また、図4は、本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバ型バイオセンサを適用した簡易センサ計測システムの模式的構成であって、光源として、レーザダイオードLDもしくは発光ダイオードLEDを用い、検出器としてフォトダイオードPDを用いた場合の模式的構成図を示す。
また、図5は、本発明の第1の実施の形態に係るファイバ型バイオセンサを適用した簡易センサ計測システムの模式的構成であって、光源11として、レーザダイオードLDアレイ若しくは発光ダイオードLEDアレイを用い、検出器12としてフォトダイオードPDアレイを用いた場合の模式的構成図を示す。
本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバ型バイオセンサを適用した簡易センサ計測システムは、図3に示すように、表面プラズモン共鳴現象を応用して物質間相互作用を検出するセンサ計測システム10であって、表面プラズモン共鳴現象により物質間相互作用を検出するバイオセンサを備えるセンサプローブ1と、センサプロ−ブ1を保持するセンサプローブ保持具6と、センサプローブ1に光を入射する光源11と、光源11からの入射光を、センサプローブ1に伝搬し、センサプローブ1からの反射光を光検出器12まで伝搬する光カプラ13と、反射光を検出する光検出器12とを備える。
ここで、センサプローブ1は、被測定試料14に浸漬された状態で計測する。
また、本発明の第2の実施の形態に係る光ファイバ型バイオセンサを適用した簡易センサ計測システム10において、光源11は、図4に示すように、レーザダイオードもしくは発光ダイオード11aで構成され、光検出器12は、フォトダイオード12aで構成されていても良い。
また、本発明の第3の実施の形態に係る光ファイバ型バイオセンサを適用した簡易センサ計測システムにおいて、光源11は、図5に示すように、レーザダイオードアレイもしくは発光ダイオードアレイ11bで構成され、光検出器12は、フォトダイオードアレイ12bで構成されていても良い。
一例として、光源11として、白色光源を用い、光検出器12には小型分光器(波長350nm〜1050nm)を用い、光ファイバ13a,13b,13cには、コア径約400μm程度のマルチモード石英系光ファイバを使用して、センサプローブ保持具6を用いて、センサプローブ1を前記マルチモ−ド石英系光ファイバと接続し、光カプラ13にはコア径約400μm程度のマルチモード光ファイバ型光カプラを用いて、構成することができる。
上記光カプラ13は、光源11からの入射光をセンサープローブ1へ伝搬し、センサープローブ1からの反射光を光検出器12に伝搬するものであり、所定波長帯域での伝搬損失の低いものが望ましい。
かかる光カプラ13の具体例を図10に示す。図10(A)は溶融型ファイバカプラ16を示しており、図10(B)はフィルタ型ファイバカプラ17を示しており、図10(C)は導波路型ファイバカプラ18を示している。
これら図10に示す各ファイバカプラ16、17、18では、光源11からの入射光は光ファイバ13aを介して各ファイバカプラ16、17、18に導かれ、各ファイバカプラ16、17、18を透過して、光ファイバ13cを介してセンサプローブ1に入射される。センサプローブ1に入射した光は金属反射鏡4で反射されて、光ファイバ13cに導かれ、各ファイバカプラ16、17、18を透過して、光ファイバ13bに導かれ、光検出器12に伝搬される。特に、図10(A)に示す溶融型ファイバカプラ16では、光ファイバ13dは参照光として用いることができる。また図10(B)に示すフィルタ型ファイバカプラ17は、ロッドレンズなどのレンズ19,20と、フィルタ21との組み合わせにより構成する事ができる。
特に本発明にかかる光ファイバ型バイオセンサでは、上記のようなファイバ型光カプラを使用する事により、光源からの光を簡易かつ確実に透明丸棒内に入射させる事ができる。即ち、プリズムを用いた光カプラで必要になる光の伝播路の位置合わせが不要になる。
本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバ型バイオセンサを適用した簡易センサ計測システムを用いることにより、被測定試料14の溶液の成分や濃度は勿論、センサプローブ1に結合されている有機物質層4の膜厚、またはセンサプローブ1に担持した抗原または抗体等の反応物質からなる反応層4aにより検知目的物質7の抗体または抗原の有無や免疫結合反応速度等が、SPR共鳴波長の変化量としてリアルタイムかつ高感度で観測することができる。
また、被検出反応物質が限定された場合、光ファイバ型バイオセンサ計測システムは、図4に示すような簡易計測構造をすることもできる。
図4に示すように、光源11としては所定波長のレーザダイオードもしくは発光ダイオード11aを用いて、光検出器12としてフォトダイオード等が用いられる。
また、図5に示すように前記光源11のLDもしくはLEDは異なる波長の2個以上の並列構造アレイからなるレーザダイオードアレイもしくは発光ダイオードアレイ11bを用いることができる。この場合、光検出器12は所定光源波長に合わせて、2個以上の並列構造アレイからなるフォトダイオードアレイ12bを用いることになる。この簡易計測構造のいずれにしても、被検出反応物質の有無や濃度によって、光出力強度の変化量が検出されることになる。
(光ファイバ型バイオセンサの観測システムによる結合反応の一例)
図6は、本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバ型バイオセンサを用いて測定した被測定試料14の試料溶液Aの観測結果を示す。また、図7は、本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバ型バイオセンサを用いて測定した試料溶液Bの観測結果を示す。また、図8は、本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバ型バイオセンサを用いて測定した被測定試料14の試料溶液A、Bの測定データを示す。なお、BSA抗原を固定化するSPRセンサ抗体との結合反応時間は15分とした。
図6は、BSA抗原を担持した光ファイバ型バイオセンサのセンサプローブ1を、BSA抗体を含有する被測定試料14の試料溶液Aに浸漬した場合、上記図3に示す観測システムを用いて検出されたBSA抗体・抗原の結合反応前後のSPR波長特性の一例を示したグラフである。
図6に示すようにグラフPBS_1は、結合反応前にセンサプローブ1をリン酸バッファ溶液(PBS)において観測されたSPR波長特性であり、BSA_開始及びBSA_15分は、それぞれセンサプローブ1をBSA抗体を含有する試料溶液Aに浸漬して結合反応開始及び15分経過後のSPR波長特性であり、グラフPBS_2は、結合反応後引上げたセンサプローブ1をPBSバッファ溶液で洗浄して再びPBSバッファ溶液において観測されたSPR波長特性である。また、本明細書においては、SPR波長特性において正規化光強度が最小となる波長を「SPR共鳴波長」と定義することとする。
ここで、用いた被測定試料14の試料溶液AのBSA抗体濃度は20μg/mlである。また、BSA(Δ)をグラフBSA_開始におけるSPR共鳴波長波長とグラフBSA_15分におけるSPR共鳴波長との差、PBS(Δ)をグラフPBS_1におけるSPR共鳴波長とPBS_2におけるSPR共鳴波長との差、と定義すると、図6および図8に示すように、BSA(Δ)=3.42nm、PBS(Δ)=5.71nmである。
図7は、BSA抗原を担持したファイバ型バイオセンサのセンサプローブ1を、BSA抗体を含有する被測定試料14の試料溶液Bに浸漬した場合、図3に示す観測システムを用いて検出されたBSA抗体・抗原の結合反応前後のSPR波長特性の一例を示したグラフである。
ここで、用いた被測定試料14の試料溶液BのBSA抗体濃度は40μg/mlであり、結合反応時間は同じく15分である。この場合、図7および図8に示すように、BSA(Δ)=3.53nm、PBS(Δ)=10.28nmである。
図6乃至図8から明らかなように、本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバ型バイオセンサおよびその計測システムを用いれば、少量の被測定試料14の試料溶液でも感知目的の抗原もしくは抗体を高感度で測定することが可能である。
観測されたSPR共鳴による波長変化量PBS(Δ)は、被測定試料14の試料溶液のBSA抗体濃度にほぼ比例して変化し、抗体濃度を定量的に精度よく検出できることが示された。
本発明のバイオセンサ、バイオセンサの製造方法、およびセンサ計測システムによれば、タンパク質等の生体物質及び光反応性基を有する光架橋剤を含んだ光固定化剤を、透明丸棒の外周側面上に、ディップコーティングにより塗布し、紫外線照射より固定化することにより有機物質層を形成することにより、表面プラズモン共鳴現象を利用して被測定試料の屈折率、濃度、たんぱく質、抗体・抗原反応などを高感度に検出することができる。
[その他の実施の形態]
上記のように、本発明の実施の形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバ型バイオセンサの模式的断面構造図。 本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバ型バイオセンサの拡大された模式的断面構造図。 本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバ型バイオセンサを適用した簡易計測システムの模式的構成図。 本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバ型バイオセンサを適用した簡易計測システムの模式的構成であって、光源として、レーザダイオードLDもしくは発光ダイオードLEDを用い、検出器としてフォトダイオードPDを用いた場合の模式的構成図。 本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバ型バイオセンサを適用した簡易計測システムの模式的構成であって、光源として、レーザダイオードLDアレイ若しくは発光ダイオードLEDアレイを用い、検出器としてフォトダイオードPDアレイを用いた場合の模式的構成図。 本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバ型バイオセンサを用いて測定した試料溶液Aの観測結果を示す図。 本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバ型バイオセンサを用いて測定した試料溶液Bの観測結果を示す図。 本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバ型バイオセンサを用いて測定した試料溶液A、Bの測定データを示す図。 センシング部の長さと共鳴波長での深さの相関関係を示すグラフ。 光カプラの具体例を示しており、(A)は溶融型ファイバカプラ、(B)はフィルタ型ファイバカプラ、(C)は導波路型ファイバカプラをそれぞれ示している。
符号の説明
1…センサプローブ
2…透明丸棒2a…端面(センサ検出端面)
3…金属薄膜
4…有機物質層
4a…反応層
5a…クラッド層
5b…樹脂被覆層
6…センサプローブ保持具
7…検知目的物質
10…センサ計測システム
11…光源
11a…レーザダイオードもしくは発光ダイオード
11b…レーザダイオードアレイもしくは発光ダイオードアレイ
12…検出器
12a…フォトダイオード
12b…フォトダイオードアレイ
13…光カプラ
13a、13b、13c…光ファイバ
14…被測定試料
40…金属反射鏡

Claims (8)

  1. 透明丸棒と、
    前記透明丸棒の片端の端面に形成された金属反射鏡と、
    前記透明丸棒の前記片端の外周側に形成された金属薄膜と、
    前記外周側面の金属薄膜上に形成され、光架橋剤を含んだ光固定化剤で被固定化物質を固定化してなる有機物質層とを備え、
    前記透明丸棒の材料は、石英系ガラスもしくは光学系ガラスであって、
    前記金属薄膜は、クロム膜を形成した上に金(Au)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、又はカリウム(K)膜を形成した多層構造であることを特徴とするバイオセンサ。
  2. 前記有機物質層は、ディップコーティングにより形成されていることを特徴とする請求項1のバイオセンサ。
  3. 前記光架橋剤は、1分子に少なくとも2個以上の光反応性基を有し、前記光反応性基は、アジド基であることを特徴とする請求項1または2記載のバイオセンサ。
  4. 前記光固定化剤は、被固定化物質の非特異吸着を防止するポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの水溶液であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のバイオセンサ。
  5. 前記被固定化物質は、ポリペプチドもしくはタンパク質、核酸、脂質、細胞等の生体物質であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のバイオセンサ。
  6. 透明丸棒を準備する工程と、
    前記透明丸棒の片端の端面に金属反射鏡を形成する工程と、
    前記透明丸棒の前記片端の外周側面に金属薄膜を形成する工程と、
    前記外周側面の金属薄膜上に、光架橋剤を含んだ光固定化剤で被固定化物質を固定化してなる有機物質層を形成する工程と
    を有し、
    前記透明丸棒の材料は、石英系ガラスもしくは光学系ガラスであって、
    前記金属薄膜は、クロム膜を形成した上に金(Au)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、又はカリウム(K)膜を形成した多層構造であって、
    前記有機物質層を形成する工程は、
    前記外周側面の金属薄膜上に、前記光架橋剤を含んだ光固定化剤及び前記被固定化物質を有する塗布液をディップコーティングする工程と、
    前記ディップコーティングされた前記光架橋剤を含んだ光固定化剤及び前記被固定化物質に紫外線を照射することにより、前記外周側面の金属薄膜上に固定化する工程、とからなることを特徴とするバイオセンサの製造方法。
  7. 前記透明丸棒の材料は、石英系ガラスもしくは光学系ガラスであって、前記金属薄膜は、最内層がクロム膜である多層構造であることを特徴とする請求項6のバイオセンサの製造方法。
  8. 表面プラズモン共鳴現象を応用して物質間相互作用を検出するセンサ計測システムであって、
    表面プラズモン共鳴現象により物質間相互作用を検出する請求項1乃至5のいずれか1項記載のバイオセンサを備えるセンサプローブと、
    前記センサプローブを保持するセンサプローブ保持具と、
    前記センサプローブに光を入射する光源と、
    前記光源からの入射光を、前記センサプローブに伝搬し、前記センサプローブからの反射光を光検出器まで伝搬する光カプラと、
    前記反射光を検出する光検出器と
    を備えることを特徴とするセンサ計測システム。
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