JP2014222253A - 分析素子チップ - Google Patents

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豪 柳原
謙一 宮田
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謙一 宮田
智子 宮浦
Tomoko Miyaura
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Abstract

【課題】金属薄膜の表面に固定された生理活性物質の活性を維持するために当該金属薄膜が多湿環境下におかれても、金属薄膜に欠陥が生じ難い分析素子チップを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、表面プラズモン共鳴分析装置、又は表面プラズモン共鳴蛍光分析装置に用いられる分析素子チップであって、プリズム11と、プリズム11の所定の面13の面上に形成され、その表面15aに生理活性物質16が固定される金属薄膜15と、検体が金属薄膜15と接しつつ流れる流路21を形成する流路部材20とを備え、金属薄膜15のX線回折におけるメインピークの半値幅が0.353以下であるとともに、前記分析素子チップは、流路21内に保存液が封入された状態又は金属薄膜15の表面上に水を溜めた状態にすることによって、金属薄膜15を多湿環境下においた状態で保存されていることを特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance:SPR)の共鳴角の変化に基づいて検体を分析する表面プラズモン共鳴分析装置に用いられる分析素子チップ、及び表面プラズモン共鳴によって生じたエバネッセント波を用いて検体に含まれる蛍光物質を発光させて、この蛍光を測定して検体に含まれる特定物質を分析する表面プラズモン共鳴蛍光分析装置に用いられる分析素子チップに関する。
従来から、検体等の試料溶液中の極微量の物質を定量分析する方法として、表面プラズモン共鳴を利用した様々な分析方法が開発されている。これらの分析方法では、その殆どがプリズム上に金属薄膜を成膜したいわゆるクレッチマン配置の分析素子チップが用いられ、この分析素子チップにおける表面プラズモン共鳴の共鳴角の変化や表面プラズモン共鳴に基づく金属薄膜近傍の増強電場を利用することにより、試料溶液中の極微量の物質の分析が高感度且つ高精度に行われる(特許文献1参照)。
具体的に、分析素子チップは、図4に示されるように、プリズム114と、このプリズム114の反射面114bの面上に成膜された金属薄膜112と、試料溶液が金属薄膜112の表面と接しつつ流れる流路116を形成する流路部材117とを備える。
この分析素子チップ110のプリズム114に光を入射させて反射面114bでこの光を全反射させると、ある入射角において金属薄膜112の表面近傍の電場が大きく増強される。これは、光がある入射角(共鳴角)で反射面114bに入射することにより、金属薄膜112において表面プラズモン共鳴が生じ、これにより金属薄膜112の表面近傍の電場が大きく増強されるからである。この現象が金属薄膜112の表面における屈折率の変化に対して高感度に応答するため、これを利用することにより金属薄膜112上を流れる試料溶液中に存在する極微量の物質の検出が可能となる。
特許第4370383号公報
上記の表面プラズモン共鳴を利用した分析方法は、極微量の特定の物質を高感度且つ高精度に検出できることから、例えば、早期ガンの診断などの医療分野等への応用が考えられている。このような分野では、免疫反応等を利用して試料溶液中の特定の物質(例えば、腫瘍マーカー等)の検出を行うため、この特定の物質を捕捉することができる生理活性物質112aが分析素子チップの金属薄膜112の表面に固定される。このような分析素子チップ110を保存する場合には、生理活性物質112aの活性を維持するために当該生理活性物質112aを多湿環境下におかなければならない。具体的に、好ましくは流路116内に保存液が封入された状態で分析素子チップ110が保存される。
分析素子チップ110の金属薄膜112は、表面プラズモン共鳴を生じさせる必要からその膜厚が数十nmレベルの薄膜である。一般に金属薄膜は、水分の付着により膜浮きが発生して劣化することが知られている。そのため、流路116内を多湿状態にして金属薄膜112を多湿環境下においた状態、時に流路116内に保存液が封入された状態で分析素子チップ110が保存され、金属薄膜112が数ヶ月間、水分に曝された状態が続くと、水分が金属薄膜112とプリズム114との間に浸入して膜浮きが生じることが懸念される。分析素子チップ110において金属薄膜112にこのような欠陥が生じると、極微量の物質を高感度且つ高精度に検出できない。
そこで、金属薄膜の表面に固定された生理活性物質の活性を維持するために当該金属薄膜が多湿環境下におかれても、金属薄膜に欠陥が生じ難い分析素子チップを提供することを課題とする。
そこで、上記課題を解消すべく、本発明は、表面プラズモン共鳴の共鳴角の変化に基づいて検体を分析する表面プラズモン共鳴分析装置、又は検体に含まれる蛍光物質が表面プラズモン共鳴に基づくエバネッセント波により励起されて発した蛍光を測定する表面プラズモン共鳴蛍光分析装置に用いられる分析素子チップであって、プリズムと、前記プリズムの所定の面の面上に形成され、その表面に生理活性物質が固定される金属薄膜と、前記検体が前記金属薄膜と接しつつ流れる流路を形成する流路部材とを備える。そして、前記金属薄膜のX線回折におけるメインピークの半値幅が0.353以下であるとともに、前記分析素子チップは、前記流路内に保存液が封入された状態又は前記金属薄膜の表面上に水を溜めた状態にすることによって、前記金属薄膜を多湿環境下においた状態で保存されていることを特徴とする。
このようにX線回折におけるメインピークの半値幅が0.353以下となる充填密度の高い金属薄膜を用いることにより、金属薄膜とプリズムとの間に水分が浸入し難くなる。そのため、金属薄膜の表面(プリズムと反対側の面)に固定された生理活性物質の活性を維持するために当該金属薄膜を多湿環境下においた状態で(即ち、流路内を多湿状態にして)当該分析素子チップを保存しても、金属薄膜において例えば膜浮き等の欠陥が生じ難くなる。
以上より、本発明によれば、金属薄膜の表面に固定された生理活性物質の活性を維持するために当該金属薄膜が多湿環境下におかれても、金属薄膜に欠陥が生じ難い分析素子チップを提供することができる。
本実施形態に係る分析素子チップの概略縦断面図である。 プラズマ支援型スパッタ法(カソード電力100W)における支援コイル電力と、成膜された金属薄膜のX線メインピークの半値幅と、の関係を示す図である。 電子銃加熱真空蒸着法における成膜温度と、成膜された金属薄膜のX線メインピークの半値幅と、の関係を示す図である。 従来の分析素子チップの概略縦断面図である。
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
本実施形態に係る分析素子チップは、表面プラズモン共鳴の共鳴角の変化に基づいて検体を分析する分析装置や、検体に含まれる蛍光物質が表面プラズモン共鳴に基づくエバネッセント波により励起されて発した蛍光を測定する表面プラズモン共鳴蛍光分析装置に用いられる、いわゆるクレッチマン配置のセンサーチップである。
具体的に、分析素子チップは、図1に示されるように、プリズム11と、プリズム11の表面に成膜される金属薄膜15と、金属薄膜15上を当該金属薄膜15に接しつつ検体や試薬、洗浄液等の試料溶液(以下、単に「検体」とも称する。)が流れる流路21を形成する流路部材20とを備える。
プリズム11は、当該分析素子チップ10が表面プラズモン共鳴蛍光分析装置等に設置されて検体の分析を行うときに、当該装置の光源(図示省略)からの光を内部に入射させる入射面12と、この内部に入射した光を反射する反射面(所定の面)13と、反射面13で反射された光をプリズム11の外部に出射する出射面14とをその表面に含み、透明なガラス又は樹脂により形成されている。本実施形態のプリズム11は、屈折率が1.40〜1.75程度の透明なガラス又は樹脂により形成されている。尚、プリズムは、側面視が本実施形態のように三角プリズムの頂角部分を切り取ったような形状でもよく、また、側面視が三角形状であってもよい(図1の点線部参照)。即ち、プリズムは、入射面と反射面と出射面とをその表面に含み、入射面から内部に入射した光が反射面で全反射し、この全反射した光が内部で乱反射せずに出射面から外部に出射されるような形状であればよい。
金属薄膜15は、プリズム11の反射面13上に成膜(形成)された金属製の薄膜であり、本実施形態では、金により形成されている。この金属薄膜15は、プリズム11内において反射面13で光が全反射されることにより生じるエバネッセント波を増幅するための部材である。即ち、反射面13上に金属薄膜15を設けて表面プラズモン共鳴を生じさせることにより、金属薄膜15の設けられていない反射面13において光を全反射させエバネッセント波を生じさせた場合に比べ、反射面13の表面近傍に形成される電場を増強させることができる。尚、金属薄膜15は、表面プラズモン共鳴を生じさせることができるように膜厚が100nm以下の薄膜であり、好ましくは膜厚が40〜60nmとなるように反射面13上に成膜される。
金属薄膜15の表面(プリズムと反対側の面)15aには、検体中の特定の抗原等を捕捉するための生理活性物質16が固定されている。本実施形態の生理活性物質16としては、抗体が用いられる。この生理活性物質16は、表面処理によって金属薄膜15の表面15aに固定される。尚、金属薄膜15に固定される生理活性物質16が乾燥すると活性を示さなくなるため、分析素子チップ10を使用せずに長期間(数ヶ月程度)保存する場合には、生理活性物質16の活性を維持するために、金属薄膜15が多湿環境下におかれた状態(即ち、流路21内が多湿状態)に保たれる。本実施形態の分析素子チップ10は、流路21内に保存液が封入された状態で保存される。
このような金属薄膜15は、X線回折におけるメインピークの半値幅が0.353以下となるように反射面13上に成膜されている。金属薄膜15がこのような充填密度(緻密度)を有することにより、生理活性物質16の活性を維持するために金属薄膜15を多湿環境下においた状態で当該分析素子チップ10を保存しても、膜浮き等の金属薄膜15の欠陥が生じ難くなる。ここで、X線回折のメインピークの半値幅とは、基板上に形成された薄膜の結晶性評価を行う薄膜X線回折法により、プリズム11上に形成された金属薄膜15を測定して得られた測定結果におけるメインピークの半値幅のことをいう。
このような充填密度を有する金属薄膜15は、プリズム11を高温加熱(例えば、150〜350℃程度で加熱)した状態で成膜される。また、プリズム11が樹脂等で形成されているため高温加熱できない場合には、金属薄膜15は、イオンのエネルギーを利用して成膜される。また、成膜時の真空度を上げたり、成膜速度を遅くしてもよい。
具体的に、金属薄膜15は、電子銃(EB)加熱真空蒸着法、抵抗加熱真空蒸着法、マクネトロンスパッタ法、イオンアシスト蒸着(IAD)法、プラズマ支援型スパッタ法、イオンプレーティング法、及び分子線エピタキシー(MBE)法等により、反射面13上に成膜される。
流路部材20は、プリズム11の反射面13上に設けられ、検体等の試料溶液が流れる流路21を有する。この流路部材20は、透明な樹脂により形成される。本実施形態の流路部材20は、水平方向に拡がる板状の部材である。流路21は、抗原抗体反応が行われる検出部22と、分析素子チップ10の外部から検出部22へ試料溶液を案内し、又は検出部22から外部へ試料溶液を案内する案内部23とから成る。検出部22は、流路部材20の裏面(図1において下側の面)20bに設けられた溝とプリズム11上の金属薄膜15とにより囲まれている。即ち、この検出部22では、試料溶液が金属薄膜15の表面(生理活性物質16が固定されている面)15aと接しつつ流れる。各案内部23は、一方の端部が流路部材20の表面(図1において上側の面)20aで開口し、他方の端部(前記一方の端部と反対側の端部)が検出部22と接続されている。このように案内部23と検出部22と案内部23とが順に繋がることで、一本の流路21が形成される。
この流路部材20は、プリズム11と接着剤により接着(接合)されている。本実施形態では、検出部22を水平方向から囲み且つ流路部材20とプリズム11との間となる位置に、弾性体からなるシール部材25が設けられている。これにより、流路部材20とプリズム11との接合部位からの試料溶液の漏れが防止される。尚、流路部材20とプリズム11との接合は、接着に限定されず、レーザ溶着や超音波溶着、クランプ部材を用いた圧着等であってもよい。流路部材20とプリズム11とが液密に接合されていれば、前記検出部22を囲むシール部材25はなくてもよい。
以上の分析素子チップ10によれば、X線回折におけるメインピークの半値幅が0.353以下となる充填密度の高い金属薄膜15を用いることにより、金属薄膜15とプリズム11との間に水分が浸入し難くなる。そのため、金属薄膜15の表面(プリズム11と反対側の面)15aに固定された生理活性物質16の活性を維持するために当該金属薄膜15を多湿環境下においた状態で(即ち、流路21内を多湿状態にして)当該分析素子チップ10を保存しても、金属薄膜15において例えば膜浮き等の欠陥が生じ難くなる。
尚、本発明の分析素子チップは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
プラズマ支援型スパッタ法を用いて以下の条件でプリズム上に金属薄膜を成膜した。この実施例では、支援コイル電力を制御することにより、金属薄膜の結晶性(X線ピークの半値幅)の制御を行った。
<成膜条件>
・到達真空度:1×10−7Torr
・成膜真空度:5×10−4Torr
・ガス:99.9999%アルゴン
・カソード電力:100W(13.56MHz)
・支援コイル電力:可変(13.56MHz)
・膜厚:50〜55nm
・成膜構成:Au
・成膜レート:0.1nm/sec
・基板:COP樹脂
X線回折装置により、この成膜条件で成膜した金属薄膜におけるX線回折のメインピークの半値幅を測定し、金属薄膜を多湿環境下におくために本実施例では当該金属薄膜の表面上に水を溜めた状態にして6ヶ月間経過後に金属薄膜の表面を観察した。その結果を、以下の表1及び図2に示す。
Figure 2014222253

表1において、金属薄膜欠陥が○は、6ヶ月後に金属薄膜欠陥が生じなかったものであり、×は、6ヶ月後に金属薄膜欠陥が生じたものである。
これらの結果から、金属薄膜のX線回折のメインピークの半値幅が0.353以下のプリズムにおいては、金属薄膜を多湿環境下においた状態で6ヶ月間経過しても、金属薄膜欠陥現象が生じないことが確認できた。
電子銃(EB)加熱真空蒸着法を用いて以下の条件でプリズム上に金属薄膜を成膜した。この実施例では、成膜温度を制御することにより、金属薄膜の結晶性(X線ピーク強度)の制御を行った。
<成膜条件>
・到達真空度:1×10−7Torr
・成膜真空度:3×10−7Torr
・電子銃電力:6kV,80mA
・膜厚:50〜55nm
・成膜構成:Au
・成膜レート:1nm/sec
・成膜温度:可変
・基板:BK7
X線回折装置により、この成膜条件で成膜した金属薄膜におけるX線回折のメインピークの半値幅を測定し、金属薄膜を多湿環境下におくために本実施例では当該金属薄膜の表面上に水を溜めた状態にして6ヶ月間経過後に金属薄膜の表面を観察した。その結果を以下の表2及び図3に示す。
Figure 2014222253

表2において、金属薄膜欠陥が○は、6ヶ月後に金属薄膜欠陥が生じなかったものであり、×は、6ヶ月後に金属薄膜欠陥が生じたものである。
これらの結果からも、金属薄膜のX線回折のメインピークの半値幅が0.353以下のプリズムにおいては、金属薄膜を多湿環境下においた状態で6ヶ月間経過しても、金属薄膜欠陥現象が生じないことが確認できた。
10 分析素子チップ
11 プリズム
13 反射面(所定の面)
15 金属薄膜
15a 金属薄膜の表面
16 生理活性物質
20 流路部材
21 流路

Claims (2)

  1. 表面プラズモン共鳴の共鳴角の変化に基づいて検体を分析する表面プラズモン共鳴分析装置、又は検体に含まれる蛍光物質が表面プラズモン共鳴に基づくエバネッセント波により励起されて発した蛍光を測定する表面プラズモン共鳴蛍光分析装置に用いられる分析素子チップであって、
    プリズムと、前記プリズムの所定の面の面上に形成され、その表面に生理活性物質が固定される金属薄膜と、前記検体が前記金属薄膜と接しつつ流れる流路を形成する流路部材とを備え、
    前記金属薄膜のX線回折におけるメインピークの半値幅が0.353以下であるとともに、
    前記分析素子チップは、前記流路内に保存液が封入された状態又は前記金属薄膜の表面上に水を溜めた状態にすることによって、前記金属薄膜を多湿環境下においた状態で保存されていることを特徴とする分析素子チップ。
  2. 前記金属薄膜は、金薄膜である請求項1に記載の分析素子チップ。
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