JP4673379B2 - ゲルマニウム・ゼオライトを製造する方法 - Google Patents

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Description

本発明は、骨格中にゲルマニウムを有するゼオライト、好ましくはMFI型構造のゼオライト、最も好ましくはZSM−5 MFI型ゼオライト(以後、「Ge−ゼオライト」または、ゼオライトがZSM−5 MFIである場合には、Ge−ZSM−5と称する。)を製造する方法に関する。このGe−ゼオライトは、フッ化物化合物を使用せずに合成される。
ゼオライトは結晶質水和アルミノケイ酸塩であり、これは、ナトリウム、カルシウム、バリウム、およびカリウムなどの他の金属を含有することもあり、イオン交換特性(Encarta(登録商標)World English Dictionary[北アメリカ版](コピーライト)&(P)マイクロソフト社)を有している。ゼオライトを調製する方法は、(a)酸化ケイ素およびアルミニウムの酸化物の供給源の水性混合物を調製し、(b)ゼオライトの結晶が形成されるまで、水性混合物を結晶化条件下に維持する、各工程を有してなる。
合成ゼオライトは通常、過飽和合成混合物からのゼオライトの結晶化により調製される。次いで、得られた結晶質生成物を乾燥させ、か焼して、ゼオライト粉末を生成する。このゼオライト粉末を、特定の設備およびプロセス、例えば、流動床反応器に使用するために結合させてもよい。
特許文献1には、水酸化テトラプロピルアンモニウム、酸化ナトリウム、アルミニウムまたはガリウムの酸化物、ケイ素またはゲルマニウムの酸化物および水を含有する溶液から、その反応混合物を6時間から60日間に亘り100℃から175℃の温度まで加熱し、次いで、室温まで冷却し、濾過により固体生成物を分離し、水洗し、乾燥させることによって、結晶を形成することによるZSM−5ゼオライトの調製が開示されている。その実施例およびクレームはアルミノケイ酸塩に限定されていた。
特許文献2には、水酸化ナトリウムなどの苛性アルカリ水溶液中にアルミニウム源を溶解させ、次いで、これを水中のシリカ源の混合物に添加し、混合して反応混合物を均質化し、結晶化のために核形成温度まで加熱し、冷却によって生成物の結晶を分離し、濾過し、水洗し、乾燥することによる大きな結晶のゼオライトの合成が開示されている。
特許文献3には、アルミニウム、ホウ素、鉄、インジウムおよび/またはガリウムなどの3価元素およびケイ素、スズ、チタンおよび/またはゲルマニウムなどの4価元素の多孔性結晶質材料の、アルカリ水酸化物の代わりの鉱化剤としてのフッ化水素酸による、また有機型剤による合成が開示されている。
特許文献4には、ケイ素(必要に応じて、ゲルマニウムと共に)およびアルミニウムなどの3価および4価の元素の酸化物または水酸化物をフッ化水素酸中に溶解させ、沈殿物を形成し、沈殿物を分離し、沈殿物をか焼することによる、シリカ系MFI型ゼオライトの製造が開示されている。
特許文献5には、微小孔の形成を促進するため、またゼオライトを安定化させるために、3価元素を実質的に含まない状況で、型剤の存在下で調製されたシリカ/3価ゲルマニウムゼオライトが開示されている。フッ化水素酸などの移動剤(mobilizer)を用いて、ゼオライト骨格中に組み込むべきケイ素およびゲルマニウムを供給する試薬の溶解を促進させてもよい。
特許文献6には、合成において鉱化剤としてフッ化物、特にHFを用いた、ホウ素、鉄、インジウム、ガリウム、アルミニウムまたはその組合せなどの3価元素およびケイ素、スズ、チタン、ゲルマニウムまたはその組合せの4価元素の結晶質材料が開示されている。
骨格中にゲルマニウムを有するMFI型ゼオライトの合成が非特許文献1に開示されている。フッ化水素酸(HF)がその合成に用いられる。
ゲルマニウム・ゼオライトの合成にフッ素化合物を使用すると、ハロゲン化触媒が生じ、これらの触媒が高温で加熱されたときに(例えば、触媒熱処理、か焼またはプロセス条件)、その触媒は少量のHClおよび/またはHFを放出する。これにより、酸ハロゲン化物ガスが生成され、そのガスがプロセス設備中に存在する金属と反応する。
米国特許第3702886号明細書 欧州特許第951444号明細書 米国特許第6723300号明細書 米国特許第5246688号明細書 米国特許第5371307号明細書 米国特許第6471941号明細書 "Synthesis and Characterization of Ge-ZSM-5 Zeolites, H.Kosslick et al., J.Phys.Chem., vol.97, p.5678-5684 (1993)
合成ゲル中にフッ素化合物を使用しないゲルマニウム・ゼオライトタイプの触媒を製造する方法があれば有利であろう。
本発明は、フッ化物化合物が実質的に含まれない状況において、骨格中にアルミニウム、ケイ素およびゲルマニウムを含有するゼオライトを合成する方法を提供する。このゼオライト構造は、MFI、FAU、TON、MFL、VPI、MEL、AEL、AFI、MWWまたはMORのものであってよいが、ゼオライトは、MFI構造を有することが好ましく、ZSM−5 MFI型ゼオライトであることがより好ましい。Ge−ゼオライトは、シリカ源、ゲルマニウム源、アルミニウム源および型剤を含有する水性ゲルから、硫酸、酢酸、硝酸、リン酸、塩化水素酸または蟻酸などの、フッ素を含有しない酸の存在下で合成される。反応混合物のゲルは加熱されて、ゼオライト結晶が形成され、次いで、冷却される。ゼオライト結晶はゲルから分離され、洗浄され、乾燥され、か焼される。
ゼオライトは、結晶化ケイ酸塩であることが知られており、Tがケイ素などの四価の元素、およびアルミニウムなどの三価の元素を表しているTO4四面体の構造を含む。この構造は、酸素原子を共有することによって三次元網状構造を形成している。ゼオライトは一般に、水溶液から結晶化する。ゼオライトを合成するための一般的な技法は、シリカ源、ゲルマニウム源およびアルミニウム源の水性ゲルを、溶解/再結晶化機構を用いた熱水プロセスによって、ゼオライト結晶に転化する工程を含む。その反応媒体は、結晶化中にゼオライト網状構造の微小孔空間中に組み込まれる型剤を含有し、それゆえ、網状構造の構成を調節し、ゼオライトの各成分との相互作用によってその構造体を安定化させるのに役立つ。この反応は、硫酸、酢酸、硝酸、リン酸、塩化水素酸または蟻酸などの、フッ素を含有しない酸の存在下で行われる。
Ge−ゼオライトは、シリカ源、ゲルマニウム源、アルミニウム源および型剤を含有する水性ゲルから合成される。
シリカ源の例としては、Ludox AS−40(商標)として市販されているシリカゾル、Ultrasil VN3SP(商標)として市販されている沈降シリカ、およびAerosil 2000(商標)として市販されているヒュームドシリカなどの、様々な形態で得られる、酸化ケイ素またはシリカ(SiO2)が挙げられる。
アルミニウム源の例としては、アルミン酸ナトリウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウムおよび擬似ベーマイト(pseudobohemite)である。
ゲルマニウム源の例としては、酸化ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムイソプロポキシドおよびゲルマニウム酸ナトリウムが挙げられる。
型剤の例としては、水酸化テトラn−プロピルアンモニウム、臭化テトラn−プロピルアンモニウムおよび塩化テトラn−プロピルアンモニウムが挙げられる。
酸は、ブレンステッド酸またはルイス酸であってよい。本発明において有用な酸の、制限を意図しない酸は、硫酸、酢酸、硝酸、リン酸、塩化水素酸および蟻酸である。
反応混合物は、撹拌され、加熱されて、ゼオライト結晶が形成される。その温度は100℃から200℃の範囲にある。反応混合物は室温まで冷却される。ゼオライト結晶は、ゲルから分離される。ゲルの液体部分は、濾過、蒸発、噴霧乾燥またはゼオライト結晶から水を除去するための任意の他の手段によって除去されてもよい。ゼオライト結晶は、濾液のpHが約7.5になるまで、周囲温度で、好ましくは0℃から50℃で、脱イオン水により洗浄される。ゼオライト結晶は、4から24時間、好ましくは約6時間に亘り、90℃から110℃で空気中において乾燥される。ゼオライト結晶は、3から10時間、好ましくは約6時間に亘り、400℃から600℃、好ましくは約550℃で空気中においてか焼してよい。
MFI型ゼオライトのケイ素対アルミニウムの原子比(Si:Al)は、好ましくは10:1より大きい、より好ましくは20:1から200:1の範囲、最も好ましくは25:1から100:1の範囲にある。シリカ対ゲルマニアの比は、好ましくは100:1から8:1の範囲、より好ましくは50:1から10:1の範囲、最も好ましくは25:1から10:1の範囲にある。
ゼオライトは、好ましくは2オングストロームから100オングストロームの範囲、より好ましくは2オングストロームから50オングストロームの範囲、最も好ましくは2オングストロームから20オングストロームの範囲の平均細孔径を有する。
白金などの貴金属をGe−ゼオライト上に堆積させてもよい(以後、Pt/Ge−ゼオライトまたは、ゼオライトがZSM−5 MFIである場合、Pt/Ge−ZSM−5と称する)。Pt/Ge−ゼオライトをか焼して、Pt/Ge−ゼオライト触媒を製造してもよく、その触媒は、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの、分子当たり2から6の炭素原子を有するアルカンを芳香族への芳香族化のためのプロセスに用いてもよい。Pt/Ge−ゼオライトは、1から6時間、好ましくは約4時間に亘り、200℃から500℃、好ましくは約300℃で空気中においてか焼してよい。貴金属の堆積前または後、このゼオライトは、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、トリウム、ケイ素、ホウ素およびその混合物の酸化物により結合されてもよい。結合、貴金属の堆積およびゼオライトだけのか焼の各工程は、結合剤と共にまたは貴金属堆積物と共に、任意の順序で行っても差し支えない。
本発明を一般的に説明してきたが、以下の実施例は、本発明の特別な実施の形態として与えられ、その実施と利点を示すためのものである。実施例は、説明のために与えられ、本明細書または特許請求の範囲をいかようにも制限することは意図されていないことが理解されよう。
実施例1
以下の溶液の調製:
・ 溶液1: 37.84gの脱イオン水中に3.80gの水酸化ナトリウムを溶解させた。3.30gの酸化ゲルマニウムを加え、透明な溶液が得られるまで撹拌した。
・ 溶液2: 49.61gの脱イオン水中に0.85gのアルミン酸ナトリウム(57質量%のAl23、35質量%のNa2O、8質量%のH2O)を溶解させた。
溶液1を57.66gのコロイドシリカゾル(「Ludox AS−40」)に加え、室温で激しく撹拌して、均一な白色ゲルを形成した。溶液2を加え、よく混合した。その混合物に55.60gの40質量%の水酸化テトラn−プロピルアンモニウム(TPAOH)を加え、1時間に亘りよく撹拌した。11.42gの氷酢酸(AA)を加え、さらに15分間に亘り撹拌した。合成ゲルのモル比が表1に示されている。このゲルをPTFEが裏打ちされたオートクレーブ内に装填し、このゲルを一定に撹拌しながら36時間に亘り160℃に加熱した。モル比を前記成分から計算した。
Figure 0004673379
ゼオライトを濾過し、6時間に亘り550℃で空気を循環させながらオーブン内でか焼した。
実施例2
以下に示すように溶液を調製した:
・ 溶液1: 120.30gの脱イオン水中に12.15gの水酸化ナトリウムを溶解させた。6.89gのGeO2を加え、透明な溶液が得られるまで撹拌した。
・ 溶液2: 108.51gの40質量%のTPAOH溶液を222.29gの脱イオン水で希釈した。1.66gの擬似ベーマイト(アルコア(Alcoa)社からのHiQ−40)を加え、よく撹拌した。
溶液1を159.87gのコロイドシリカゾル(「Ludox AS−40」)に加え、均質な白色ゲルとなるまでよく撹拌した。溶液2を加え、よく撹拌した。25.68gの氷酢酸を加え、そのゲルを室温で15分間に亘り撹拌した。合成ゲルのモル組成が表2に示されている。このゲルをPTFEが裏打ちされたオートクレーブ内に装填し、一定に撹拌しながら36時間に亘り160℃で合成した。ゼオライトを濾過し、6時間に亘り550℃で空気を循環させながらオーブン内でか焼した。モル比を前記成分から計算した。
Figure 0004673379
比較例(酸を加えず)
溶液を以下に示したように調製した:
・溶液1: 45.26gの脱イオン水中に4.08gの水酸化ナトリウムを溶解させた。2.31gのGeO2を加え、透明で均質な溶液が得られるまで撹拌した。
・溶液2: 25.13gの脱イオン水中に0.76gのアルミン酸ナトリウム(57質量%のAl23、35質量%のNa2O、8質量%のH2O)を溶解させた。
・溶液3: 40.43gの40質量%のTPAOH溶液を58.37gの脱イオン水で希釈した。
溶液1を57.20gのコロイドシリカゾル(「Ludox AS−40」)に加え、よく撹拌して均質な白色ゲルにした。溶液2を加え、よく撹拌した。溶液3を加えた。このゲルのモル組成が表3に示されている。ゲルをPTFE裏打ちしたオートクレーブ内に装填し、一定に撹拌しながら、36時間に亘り160℃で合成を行った。ゼオライトを濾過し、6時間に亘り550℃で空気を循環させながらオーブン内でか焼した。モル比を前記成分から計算した。
Figure 0004673379
先の実施例からのゼオライトの各々を、X線蛍光分光法により分析して、ケイ素、アルミニウム、ナトリウムおよびゲルマニウムの含有量を求めた。
Figure 0004673379
上記結果により示されているように、酸などの非フッ化物試薬の添加は、ゼオライトの骨格中にゲルマニウムを良好に組み込むのに必要である。
本発明の数多くの改変および変更が、上記の技法に鑑みて可能である。添付の特許請求の範囲で、本発明は、具体的に記載した以外で実施してもよいことが理解されよう。

Claims (20)

  1. アルミニウム・ケイ素・ゲルマニウムゼオライトを合成する方法であって、
    a) シリカ源、ゲルマニウム源、アルミニウム源、型剤および水を組み合わせてゲルを形成することによって、反応混合物を調製し、
    b) 前記反応混合物を混合し、
    c) フッ素を含有しない酸を導入し、
    d) 前記反応混合物を加熱して、ゼオライト結晶を形成し、
    e) 前記反応混合物を冷却し、
    f) 前記ゼオライト結晶を前記反応混合物から分離し、
    g) 前記ゼオライト結晶を洗浄し、
    h) 前記ゼオライト結晶を乾燥させ、
    i) 前記ゼオライト結晶をか焼する、
    各工程を有してなり、
    アルミニウム・ケイ素・ゲルマニウムゼオライトが、反応混合物中においてフッ素化合物を使用しないで合成されることを特徴とする方法。
  2. 前記反応混合物を、100℃から200℃の範囲の温度に加熱することを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 前記反応混合物を室温まで冷却することを特徴とする請求項1記載の方法。
  4. 前記ゼオライト結晶を濾過により分離することを特徴とする請求項1記載の方法。
  5. 前記洗浄が、濾液のpHが約7.5となるまで、0℃から50℃で脱イオン水により行われることを特徴とする請求項1記載の方法。
  6. 前記ゼオライト結晶を、4から24時間に亘り90℃から110℃で空気中において乾燥させることを特徴とする請求項1記載の方法。
  7. 前記ゼオライト結晶を、3から10時間に亘り400℃から600℃で空気中においてか焼することを特徴とする請求項1記載の方法。
  8. 前記シリカ源が二酸化ケイ素であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  9. 前記シリカ源がシリカゾル、沈降シリカまたはヒュームドシリカであることを特徴とする請求項8記載の方法。
  10. 前記アルミニウム源がアルミン酸ナトリウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウムまたは擬似ベーマイトであることを特徴とする請求項1記載の方法。
  11. 前記ゲルマニウム源が酸化ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムイソプロポキシドまたはゲルマニウム酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1記載の方法。
  12. 前記型剤が水酸化テトラn−プロピルアンモニウム、臭化テトラn−プロピルアンモニウムまたは塩化テトラn−プロピルアンモニウムであることを特徴とする請求項1記載の方法。
  13. 前記酸が、硫酸、酢酸、硝酸、リン酸、塩化水素酸または蟻酸であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  14. 前記ゼオライトが、MFI、FAU、TON、MFL、VPI、MEL、AEL、AFI、MWWまたはMOR構造を有することを特徴とする請求項1記載の方法。
  15. 前記ゼオライトがMFI構造を有し、ケイ素対アルミニウムの原子比が10:1より大きいことを特徴とする請求項14記載の方法。
  16. 前記ケイ素対アルミニウムの原子比が20:1から200:1の範囲にあることを特徴とする請求項15記載の方法。
  17. 前記ケイ素対アルミニウムの原子比が25:1から100:1の範囲にあることを特徴とする請求項16記載の方法。
  18. 前記ゼオライトがMFI構造を有しシリカ対ゲルマニアのモル比が100:1から8:1の範囲にあることを特徴とする請求項14記載の方法。
  19. 前記シリカ対ゲルマニアのモル比が50:1から10:1の範囲にあることを特徴とする請求項18記載の方法。
  20. 前記シリカ対ゲルマニアのモル比が25:1から10:1の範囲にあることを特徴とする請求項19記載の方法。
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