JP4671835B2 - 魚介類を用いた常温保存が可能な加工食品およびその製造方法 - Google Patents

魚介類を用いた常温保存が可能な加工食品およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、加圧加熱殺菌をすることなく常温で長期間保管ができる魚介類を用いた加工食品およびその製造方法に関する。
近年、加工食品に対する品質の向上が望まれており、常温で長期間保管ができる加工食品においても、即食用に調理された料理と同様に、具材は大きく、適度な歯ごたえがあり食感のよいもののニーズが高まっている。常温で長期間保管ができる加工食品としては、野菜類、畜肉類、魚介類を調理したものを容器に詰めて加圧加熱殺菌する加圧加熱殺菌食品が知られている。しかしながら、加圧加熱殺菌食品においては具材が褐変したり、特有の不快臭(レトルト臭)が生じるという問題があった。また、畜肉類や魚介類においては肉汁性(ジューシーさ)が乏しくパサパサになってしまい、しかも加熱過多になるとボロボロに煮崩れてしまうという問題があり、野菜類においては簡単に煮崩れてしまい、加熱過多になると形を止めないものになってしまうという問題があった。また、調味液が高温加熱によって、酸化し、メイラード反応がおこり、褐変や不快臭の原因となるという問題もある。
一般的には、畜肉類や魚介類の食感改善は、食感を軟らかくするべくおこなわれており、例えば、蛋白質分解酵素を使用する方法(特許文献1,2)、塩類を使用する方法(特許文献3,4)、アミノ酸類似物を使用する方法(特許文献5)、それらを併用する方法(特許文献6)などが知られている。しかしながら、これらの方法を加圧加熱殺菌食品に適用すると、肉類は収縮し硬くなるか、バラバラに砕けてしまうかのいずれかであった。
レトルト袋(もしくは缶詰)の中に不活性ガスを封入し加圧加熱殺菌を行って品質の向上を目指した、含気レトルトという商品が近年市販され始めている。魚介類の含気レトルト商品も一部流通しているが、食感が硬く、価格も高く、しかも液体が同梱されていないため、輸送中の変形(身崩れ)が懸念される。
ところで、魚介類の加工食品を調製する場合に、食品を酸もしくはアルカリと接触させることが行われている。酸を含む作用物質と食品を接触させる目的は、原料のpHを下げることで、混合原料(ソース)を加熱殺菌する場合の殺菌効率を上げる点にあると考えられる。しかしながら、加熱殺菌中やその後の混合原料(ソース)のpHの挙動については考慮されていないため、殺菌後魚介類に含浸した酸がソース中へ溶出することにより、あるいは、これに加えて使用する他の原料によってpHが変化しやすく、特に保存時にソースが酸性化すると、魚介類の食感が硬化し、味も変化しやすいという問題があった。
そこで、対象原料(魚介類等)を酸もしくはアルカリ(酸もしくはアルカリを含む水溶液等)と接触処理する加工食品の調製方法、または、該接触処理の後、該水溶液および/または他の原料(ソースや他の種類の原料等)と混合して保存する加工食品の調製方法において、上記接触処理中やそれ以降に該水溶液又は他の原料のpHが特定の値から変化し、原料に影響を及ぼすことを回避するための加工食品の調製方法が提言されている(特許文献7)。
特開平5−7476号公報 特開平5−252911号公報 特開平9−2675497号公報 特開平4−36167号公報 特開昭61−239862号公報 特開平9−209号公報 特開2002−315550号公報
本発明は、食感については缶詰食品(レトルト食品)のようなボソボソ感や身の硬化がない、常温で長期間保存可能な魚介類を用いた加工食品を提供することを目的とする。より具体的には、含気レトルト商品と比べ食感がよく、安価で、輸送中の変形(身崩れ)の問題が生じにくい加工食品を提供することを目的とする。
発明者らは、上記課題を解決するために、低温で殺菌を行うことにより缶詰食品(レトルト食品)の加熱による食感の劣化を防ぎ、果汁を用いて、必要に応じさらに有機酸を用いてpHを調整することで保存性を確保した。
本発明における魚介類とは、加圧加熱殺菌を行うレトルト食品に広く使用されている固形状の食品となる魚介類または、魚介類および野菜類を指し、より具体的には魚類、貝類、エビ、イカ、タコなどの魚介類および野菜類などのことである。具材の大きさは、通常調理に使用される大きさであり、ペーストなど形を止めないものは除く。
すなわち、本発明は以下の(1)ないし()の常温保存が可能な加工食品の製造方法である。
(1)カッティングおよび100℃より低い温度でブランチングのなされた魚介類または、魚介類および野菜類からなる具材を果汁と混合し、その際、pHを4.6以下に調整し、具材を構成する魚介類または、魚介類および野菜類はそれぞれの形状を維持して、具材全体に果汁が行き渡り均質な混合物となるように均質化し、密封容器に充填し、その後75〜90℃で湯殺菌する、常温保存が可能な加工食品の製造方法。
)魚介類が、フグ、アンコウ、およびカキからなる群から選ばれる1以上の魚介類である()の常温保存が可能な加工食品の製造方法。
)果汁が、かぼす、ゆず、すだち、レモン、およびブドウからなる群から選ばれる1以上の果汁である(1)または(2)の常温保存が可能な加工食品の製造方法。
)pHの調整に有機酸を用いる(1)ないし()のいずれかの常温保存が可能な加工食品の製造方法。
)pHの調整後にトレハロースを加える(1)ないし()のいずれかの常温保存が可能な加工食品の製造方法。
)pH調製後に天然甘味料を加える(1)ないし()のいずれかの常温保存が可能な加工食品の製造方法。
また、本発明は以下の()の常温保存が可能な加工食品である。
)上記(1)ないし()のいずれかの製造方法で得られた常温保存が可能な加工食品。
本発明によれば、含気レトルト商品と比べ食感がよく、安価で、輸送中の変形(身崩れ)の問題が生じにくい、常温で長期間保存可能な魚介類を用いた加工食品を提供することができる。
本発明は、カッティングおよびブランチングなどの前処理がなされた魚介類を漬け液(または調味液、果汁もしくはpHを調整するために加える有機酸を含むもの)に漬け込み、その果汁もしくは果汁と有機酸を用いてpHを調整し、100℃よりも低い温度で加熱殺菌するというものである。より詳細には、以下の手順で製造が行われる。
(i)魚介原料を前処理し(例えば、頭の切り落とし、内臓除去、皮剥ぎ、切断など)、ブランチングをすることで灰汁を除き、その後冷却を行い容器詰の具材とする。ブランチングは、100℃数秒ないし90℃約2分の湯をくぐらせる程度の、表面の殺菌を主目的とする前処理である。本発明の実施例では、ブランチングは、100℃より低い温度の湯中で、好ましくは95℃の温度の湯中で1ないし2分間という程度の、新鮮な外観、特有の風味と食感を維持したままのブランチング品とするための短時間加熱処理を採用している。それゆえ、本発明に用いる魚介類は、100℃以上の加熱による場合は身の硬化等の劣化が見られる魚介類に特に適しており、フグ、アンコウ、カキ等が好ましいものとして例示されるが、これらに限定されない。
(ii)上記の(i)で調製した前処理済みの具材を容器に充填し、漬け液(果汁もしくはpHを調整するために加える有機酸を含むもの)を充填し、その際、そこに果汁を具材に対して一定割合になるように混合し、均質化し、均質化た後のpHが4.6以下、好ましくはpH4.2〜4.6の範囲になるようにpHを調整する。ここで、「具材を果汁と混合して均質化し、その際、pHを4.6以下に調」するとは、具材と果汁を混合し、その際、pHを4.6以下になるように具材と果汁を配合する、という意味である。更に具材全体に果汁が行き渡り均質な混合物となることである。具材を構成する魚介類または、魚介類および野菜類はそれぞれの形状を維持しており、形がつぶれて果汁とともにペーストになるような状態を意味するものではない。
漬け液に浸ける魚介類が新鮮な外観、特有の風味と食感を維持したままのブランチング品の状態であることが、うまみが漬け液に流出することを従来のレトルト殺菌後魚介類と比べて少なくすることができるだけでなく、その後でのpHが一定範囲になるようにすることで、保存時に魚介類の食感が硬化したり、味が変化したり、残存微生物が増殖することがない。
本発明に用いる果汁としては、かぼす果汁、ゆず果汁、すだち果汁、レモン果汁、ブドウ果汁等が例示され、これらの1種類以上の果汁を用いるが酸性の果汁であればこれらに限定されない。すなわち、果汁を使用することを第一義とし、好ましくは果汁が、かぼす、ゆず、すだち、レモン、およびブドウからなる群から選ばれる1以上の果汁である。
pHを調整するためにリンゴ酸、クエン酸、酢酸等の有機酸、それらを含む果実酢、穀物酢を用いても良い。
また、トレハロース等の糖を加えることで、食感に変化を与えたり、酸味のマスキングをしてもよい。ここで、pHの調整後に、糖類(オリゴ糖を含む)を加えることを第一義とし、好ましくはpHの調整後にトレハロースを加える。
さらにまた、pH調後にステビア/甘草などの天然甘味料を加え、味を調えることもできる。
容器への充填は、通常の具材入り缶詰もしくはパウチの要領で行われる。具体的には最初に容器に固形具材を投入し、続いて漬け液を充填し、缶詰の場合は巻き締め殺菌を行い、パウチの場合は溶封殺菌を行う。
(iii)上記の(ii)で調製した加工食品を密封し、75〜90℃の湯浴中で加熱処理を行う。殺菌条件としては密封後具材の中心温度が80℃×10分間(温度と時間の組合せ)と同等以上の殺菌効力があれば問題ない。好ましい範囲としては80℃×30分〜90℃×15分が例示される。このような殺菌条件を採用することにより、具材については、新鮮な外観、特有の風味と食感を維持したままのブランチング品の状態を維持することができる。また、具材および調味液については、加熱処理により、アミラーゼ、プロテアーゼやリパーゼのような酵素が失活するので、酵素の働きによって調味液の風味劣化や粘度低下などが発生することを防ぐことができる。
この加熱処理後、耐熱菌、好気性の耐熱芽胞、嫌気性の耐熱芽胞などの微生物が生存するが、これらの菌は常温でpH4.6以下では増殖することが不可能であるため、常温の保存性・安全性について確保できる。
なお、上記の(i)で具材として、野菜類(ニンジン等の野菜に限られず、シメジ等のきのこ、ギンナン等の木の実を含む)を一緒に入れて処理することも可能であるが、その時は、全ての具材を合わせ、果汁を一定割合で混合し、均質化した後のpHを4.6以下に調整する必要がある。
以下では、本発明の詳細を実施例で説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
[実施例1]
(フグ切り身の調製法)
原料として頭・内臓・皮を除いたフグを用いた。フグは1個が25g〜30gのブツ切りとなるようにカットした。充填前処理として95℃の湯にて2分間ブランチングを行い、ブランチング後氷水により冷却を行った。
漬け液として、かぼす果汁とチキンブイヨンを用い、pH調整用としてリンゴ酸を用いてpHを4.6以下にした。続いて、フグ100gに対し漬け液100gを袋(パウチ)に充填し、85℃の湯浴中で30分間の殺菌処理を行った。
[実施例2]
(フグ鍋具材の調製法)
原料として頭・内臓・皮を除いたフグと、ニンジン、シメジ、ギンナン、コンブを用いた。フグは1個が25g〜30gのブツ切りとなるようにカットした。充填前処理としてフグを95℃の湯にて2分間ブランチングを行い、ブランチング後氷水により冷却を行った。ニンジンは厚さ2mmにスライスを行い、95℃の湯にて1分間ブランチングを行い、ブランチング後氷水により冷却を行った。シメジは石附を取り数本ずつの房に分け、95℃の湯にて1分間ブランチングを行い、ブランチング後氷水により冷却を行った。ギンナンは市販の缶詰ギンナンを用いた。コンブは2cm×4cmにカットしたものを用いた。
漬け液として、かぼす果汁とチキンブイヨンを用いpH調整用としてリンゴ酸を用いてpHを4.5以下にした。缶詰の配合にはフグ120g、ニンジン2枚、シメジ10g、ギンナン4個、コンブ1枚、漬け液160gを缶に詰めた。
缶の殺菌条件として、フグ肉の中心温度が85℃×15分以上となるように設定し湯殺菌を行った。
保存性の試験として、37℃×1ヶ月間の細菌検査を経時的に行ったところ、好気性菌、嫌気性菌ともに増殖しなかったことを確認することができた。
[参考例1]
実施例2と比較すべく、加熱殺菌後の品質が最も良いとされる含気レトルトのフグ身を用いた加工食品を製造した。製造方法は、フグ身を実施例2と同様にカット、ブランチングし、冷却し、その後、袋内を窒素にて置換を行い密封しレトルト殺菌を行うという手順である。
[官能検査]
官能検査の結果を表1に示す。
完成した実施例1,2および参考例1の加工食品をフグ鍋としてポン酢で食した結果、実施例1および2の加工食品は、いずれも缶詰商品にはない身の軟らかさとジューシー感を持つ、新鮮なフグを加工したものであることが窺われる外観を呈し、フグ特有の風味とフグ特有の食感を維持したままのフグ袋詰め商品であったが、参考例1の加工食品は身がボソボソとして非常に商品価値の低い物であった。
[実施例3]
(カキ鍋具材の調製法)
原料として冷凍カキを用いた。カキは予備解凍を行い、95℃の湯にて1分間ブランチングを行い、ブランチング後氷水に取り冷却を行った。漬け液として、かぼす果汁と和風だしを用いpH調整用としてクエン酸を用いてpHを4.6以下に調整した。
袋詰の配合としてはカキ100gに対し漬け液100gを袋に充填し、85℃の湯浴中で30分間の殺菌処理を行った。
保存性の試験として、37℃×1ヶ月間の細菌検査を経時的に行ったところ、好気性菌、嫌気性菌ともに増殖しなかったことを確認することができた。
[参考例2]
対照として加熱殺菌後の品質が最も良いとされる含気レトルトのカキを調し、官能比較を行った。カキを実施例3と同様にブランチング、冷却を行った。その後、袋内を窒素にて置換を行い密封しレトルト殺菌を行った。
[官能検査]
官能検査の結果を表2に示す。
でき上がった実施例3の加工食品をカキ鍋としてポン酢で食した結果、身も軟らかくボソボソ感のない非常に商品価値の高い、新鮮で良質なカキを加工したものであることが窺われる外観を呈し、カキ特有の風味とカキ特有の食感を維持したままの袋詰食品として仕上がった。一方、参考例2の加工食品を官能したところ、非常に小さく凝固し、食感ももろく悪いものであった。
[実施例4]
(アンコウ鍋具材の調法)
原料として冷凍アンコウフィレを用いた。アンコウは予備解凍を行い、1個が25g〜30gのブツ切りとなるようにカットした。95℃の湯にて1分間ブランチングを行い、ブランチング後氷水に取り冷却を行った。漬け液として、ワイン(ブドウ果汁発酵物)を用いpH調整用としてクエン酸を用いてpHを4.6以下に調整した。
袋詰の配合としてはアンコウ100gに対し漬け液100gを袋に充填し、85℃の湯浴中で30分間の殺菌処理を行った。
保存性の試験として、37℃×1ヶ月間の細菌検査を経時的に行ったところ、好気性菌、嫌気性菌ともに増殖しなかったことを確認することができた。
[参考例3]
対照として加熱殺菌後の品質が最も良いとされる含気レトルトのアンコウを調し、官能比較を行った。アンコウを実施例4と同様にブランチング、冷却を行った。その後、袋内を窒素にて置換を行い密封しレトルト殺菌を行った。
[官能検査]
官能検査の結果を表3に示す。
でき上がった実施例4の加工食品をアンコウ鍋としてポン酢で食した結果、身も軟らかくボソボソ感のない非常に商品価値の高い新鮮なアンコウを加工したものであることが窺われる外観を呈し、アンコウ特有の風味とアンコウ特有の食感を維持したままの袋詰食品として仕上がった。一方、参考例3の加工食品を官能したところ、非常に小さく凝固し、食感ももろく悪いものであった。
本発明により、魚介類を、必要に応じ野菜とともに、加圧加熱殺菌をすることなく新鮮
な外観、特有の風味と食感を維持したままのブランチング品の状態で常温長期間保管が可能となり、魚介類の食への利用性を高めることができ、家庭での利用のみならず、業務用途での利用が大いに期待される。
実施例3の加工食品と参考例2の加工食品の写真である。

Claims (7)

  1. カッティングおよび100℃より低い温度でブランチングのなされた魚介類または、魚介類および野菜類からなる具材を果汁と混合し、その際、pHを4.6以下に調整し、具材を構成する魚介類または、魚介類および野菜類はそれぞれの形状を維持して、具材全体に果汁が行き渡り均質な混合物となるように均質化し、密封容器に充填し、その後75〜90℃で湯殺菌する、常温保存が可能な加工食品の製造方法。
  2. 魚介類が、フグ、アンコウ、およびカキからなる群から選ばれる1以上の魚介類である請求項の常温保存が可能な加工食品の製造方法。
  3. 果汁が、かぼす、ゆず、すだち、レモン、およびブドウからなる群から選ばれる1以上の果汁である請求項1または2の常温保存が可能な加工食品の製造方法。
  4. pHの調整に有機酸を用いる請求項1ないしのいずれかの常温保存が可能な加工食品の製造方法。
  5. pHの調整後にトレハロースを加える請求項1ないしのいずれかの常温保存が可能な加工食品の製造方法。
  6. pH調後に天然甘味料を加える請求項1ないしのいずれかの常温保存が可能な加工食品の製造方法。
  7. 請求項1ないしのいずれかの製造方法で得られた常温保存が可能な加工食品。
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