JP4671329B2 - 多官能(メタ)アクリレート類の製造装置の洗浄方法 - Google Patents

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本発明は多塩基酸または多塩基酸無水物と、多価アルコール及び(メタ)アクリル酸とから合成される多官能(メタ)アクリレート類の製造装置の洗浄方法に関する。
多塩基酸または多塩基酸無水物と、多価アルコール及び(メタ)アクリル酸とから合成される多官能(メタ)アクリレート類を合成する方法は特許文献1に記載されているとおり公知である。
このような多官能(メタ)クリレートは重合性の二重結合を有するため、製造中に生成した多官能(メタ)アクリレートが一部重合する場合がある。そのため製造後の反応釜等の製造装置には溶剤で洗浄困難な重合物(原料および/または反応生成物を含む場合もある)が付着するため、製造装置を一旦分解し、人手により適当な道具で物理的に除去するという煩雑な方法がとられていた。
特開昭64−45480号報
本発明は、多官能(メタ)アクリレート類の製造装置の洗浄方法が、不経済かつ煩雑であったという問題点を解決し、経済的で簡便であり、洗浄液が繰り返し使用できるため環境負荷が小さい製造装置の洗浄方法を提供しようとするものである。
本発明の第1の要旨は、多塩基酸または多塩基酸無水物と、多価アルコール及び(メタ)アクリル酸とを反応させる製造装置から反応液を払い出した後、前記製造装置をアミン類またはその溶液で洗浄する製造装置の洗浄方法である。
本発明によれば多官能(メタ)アクリレート類の製造工程において製造装置内に付着した重合物を容易に除去できる。また、洗浄液は繰り返し使用できることから環境負荷が小さく経済的である。
以下、本発明を詳細に説明する。なお、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸またはメタクリル酸を表し、(メタ)アクリレートとはアクリレートまたはメタクリレートを表す。
多官能(メタ)アクリレート類を合成する際に用いる多塩基酸または多塩基酸無水物、多価アルコール及び(メタ)アクリル酸の比率は、特に限定されるものではないが、以下のようなモル比とすることが望ましい。
多塩基酸のカルボキシ基、または多塩基酸無水物を加水分解して得られる多塩基酸の有するカルボキシ基の数をA、多価アルコール1分子の有する水酸基の数をBとした場合において、多塩基酸または多塩基酸無水物1モルに対し、多価アルコールのモル数はA×0.5〜A×1.5が好ましく、A×0.9〜A×1.1がより好ましい。また、多価アルコール1モルに対し、(メタ)アクリル酸のモル数はA×(B−1)×0.5〜(B−1)×1.5が好ましく、A×(B−1)×1.0〜A×(B−1)×1.3がより好ましい。
多官能(メタ)アクリレート類を合成する際に用いる多塩基酸は、飽和多塩基酸でも不飽和多塩基酸でも構わない。また、多官能(メタ)アクリレート類を合成する際に用いる多塩基酸無水物は、飽和多塩基酸無水物でも不飽和多塩基酸無水物でも構わない。
多官能(メタ)アクリレート類を合成する際に用いる多塩基酸または多塩基酸無水物としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸
などが挙げられる。
多官能(メタ)アクリレート類を合成する際に用いる多価アルコール類としては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
多塩基酸または多塩基酸無水物、多価アルコール及び(メタ)アクリル酸の組み合わせとしては、例えば、
マロン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、
マロン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、
マロン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、
マロン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、
や、マロン酸の代わりにコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水コハク酸または無水マレイン酸を用いたものなどが挙げられる。
多官能(メタ)アクリレート類の製造装置としては、特に限定されないが、例えば、水分離装置、冷却器を付した撹拌型反応器などが挙げられる。
製造装置に、原料(多塩基酸または多塩基酸無水物と、多価アルコール及び(メタ)アクリル酸)を仕込んで多官能(メタ)アクリレート類を製造する方法としては特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
1.製造装置に、多塩基酸または多塩基酸無水物、多価アルコール、(メタ)アクリル酸、重合防止剤および反応溶剤を仕込み反応させる方法。
2.製造装置に、多塩基酸または多塩基酸無水物、多価アルコール、重合防止剤および反応溶剤を仕込み反応させ、次いで(メタ)アクリル酸を追加仕込みして反応させる方法。
3.製造装置に、多塩基酸または多塩基酸無水物、多価アルコール、および反応溶剤を仕込み反応させ、次いで(メタ)アクリル酸と重合防止剤を追加仕込みして反応させる方法。
4.製造装置に、多価アルコール、(メタ)アクリル酸、重合防止剤および反応溶剤を仕込み反応させ、次いで多塩基酸または多塩基酸無水物を追加仕込みして反応させる方法。
これらの方法においては、必要であれば反応触媒を用いても良く、いずれの段階で反応触媒を添加しても良い。反応触媒を用いる場合には一般的なエステル化触媒が使用できる。そのような触媒としては特に限定されないが、例えば、硫酸、硝酸、塩酸またはリン酸などの無機酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、蟻酸またはシュウ酸などの有機酸、3フッ化ホウ素エーテラートまたは塩化アルミニウムなどのルイス酸、酸性陽イオン交換樹脂などが挙げられ、これらのうち1種類あるいは2種類以上を混合して使用することができる。
触媒の使用量は特に限定されないが、原料の多価アルコール類100質量部に対して0.0001〜30質量部とすることが好ましく、0.001〜20質量部とすることがさらに好ましく、0.01〜10質量部とすることが特に好ましい。
重合防止剤は特に限定されないが、例えば、
ハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、ハイドロキノンモノメチルエーテルなどのフェノール化合物、
N−イソプロピル−N’−フェニル−パラ−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−パラ−フェニレンジアミン、N−(1−メチルヘプチル)−N’−フェニル−パラ−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−パラ−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−パラ−フェニレンジアミンなどのパラフェニレンジアミン類、
チオジフェニルアミンまたはフェノチアジンなどのアミン化合物、
塩化第一銅、硫酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅またはジメチルジチオカルバミン酸銅などの銅塩類、
ニトロソジフェニルアミン、亜硝酸イソアミル、N−ニトロソ−シクロヘキシルヒドロキシルアミン、N−ニトロソ−N−フェニル−N−ヒドロキシルアミンまたははその塩などのニトロソ化合物、
2,2,4,4−テトラメチルアゼチジン−1−オキシル、2,2−ジメチル−4,4−ジプロピルアゼチジン−1−オキシル、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル、2,2,5,5−テトラメチル−3−オキソピロリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、
4−アセトアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、
4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、6−アザ−7,7−ジメチル−スピロ(4,5)デカン−6−オキシル、
2,2,6,6−テトラメチル−4−アセトキシピペリジン−1−オキシル、
2,2,6,6−テトラメチル−4−ベンゾイルオキシピペリジン−1−オキシル、4,4’,4’’−トリス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)フォスファイトなどのN−オキシル化合物、
などが挙げられ、これらのうち1種類あるいは2種類以上を使用することができる。
重合防止剤の添加量は、(メタ)アクリル酸に対して0.0001〜1質量%が好ましく、0.001〜0.5質量%がより好ましい。
反応溶剤は特に限定されないが、水と共沸する溶剤が好ましく、例えば、トルエン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素類や、n−ヘプタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類などが挙げられ、これらのうち1種類あるいは2種類以上を使用することができる。
多塩基酸または多塩基酸無水物と、多価アルコール及び(メタ)アクリル酸とを反応させて多官能(メタ)アクリレート類を合成する際の反応温度は、エステル化が進行する温度であれば特に限定されないが、例えば、40〜180℃とすることが好ましく、より好ましくは60〜160℃である。
反応に要する時間は、使用する原料や、反応温度によって適宜設定でき、多官能(メタ)アクリレート類が所望の転化率に達するまでであれば特に限定されないが、1時間以上とすることが好ましく、より好ましくは3時間以上であり、反応時間が長ければ製造コストが高くなることから20時間以下とすることが好ましく、より好ましくは15時間以下である。
このようにして得られた反応液を洗浄や蒸留などにより精製することで目的の多官能(メタ)アクリレート類を得ることができる。
本発明は、このようにして多官能(メタ)アクリレート類を製造し、液体を払いだした後の製造装置に付着している重合物を、アミン類を用いて洗浄除去することを特徴とする。
洗浄に用いるアミン類としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、s−ブチルアミン、t−ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、エタノールアミンなどの1級アミン類、
N,N−ジメチルアミン、N−エチル−N−メチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジイソプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、N,N−ジイソブチルアミン、N,N−ジ−s−ブチルアミン、
N,N−ジ−t−ブチルアミン、N,N−ジペンチルアミン、N,N−ジヘキシルアミン、N,N−ジエタノールアミン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン
などの2級アミン類、
トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルモルホリンなどの3級アミン類、
ピロール、ピリジンなどの芳香族アミン類
などが挙げられる。
アミン類は希釈せずに使用してもよいが、適当な溶剤に希釈して溶液として使用することが、経済的な観点から好ましく、特に水で希釈して用いることが好ましい。
アミン類を希釈する場合の溶液濃度は重合物が洗浄可能な濃度であれば限定されないが、経済的な時間で洗浄することが可能である点から下限は0.1vol%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.5vol%以上であり、また、経済的な観点から上限は80vol%以下とすることが好ましく、より好ましくは60vol%以下、更に好ましくは40vol%以下である。
洗浄に用いるアミン類またはその溶液の量は特に限定されるものではないが、反応器の汚れを浸漬するに十分な量、例えば、反応器容積の80〜120vol%が好ましく、80〜100vol%がより好ましい。
洗浄に用いたアミン類またはその溶液は、繰り返して装置の洗浄に用いることが可能である。
以下、本発明を実施例によって詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<参考例1>
熱電対、撹拌機、水分離器を装備した3Lのガラス製フラスコ中にトリメチロールエタン270.2g(2.25mol)、無水コハク酸112.6g(1.125mol)、アクリル酸356.9g(4.95mol)、トルエン1560.6g、塩化第一銅6.6g、p−トルエンスルホン酸29.9gを仕込んだ。外温設定温度115℃で7時間反応を続けたところ、100mLの水が留出した。反応器を冷却し反応液を別の3Lガラス製フラスコへ移した。反応に用いた3Lガラス製フラスコの内側には難溶性の重合物が付着していた。
<実施例1>
参考例1の重合物の付着した3Lガラス製フラスコへ、アミン類としてエタノールアミンを用いた20vol%水溶液3Lを仕込んだ。内温30℃で2時間撹拌した後、内容物を抜き出した。フラスコに付着していた重合物を完全に洗浄除去することが出来た。
<実施例2−8>
参考例1の重合物の付着した3Lガラス製フラスコへ、表1に示すように、各種アミン類の水溶液3Lを用いて、各種温度、洗浄時間で洗浄を行った。その結果、全ての条件でフラスコに付着していた重合物を洗浄除去できた。
<比較例1〜4>
参考例1の重合物の付着した3Lガラス製フラスコへ、表1に示した洗浄溶剤を各種濃度の水溶液で3L仕込み、各種温度、洗浄時間で洗浄を行った。その結果、全ての条件でフラスコに付着していた重合物を洗浄除去することができなかった。
Figure 0004671329
本発明は多官能(メタ)アクリレート類の製造装置を洗浄する方法として有用である。


Claims (1)

  1. 多塩基酸または多塩基酸無水物と、多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とを反応させる製造装置から反応液を払い出した後、前記製造装置をエタノールアミン、ジエタノールアミンもしくはトリエタノールアミンまたはそれら溶液で洗浄する製造装置の洗浄方法。
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