JP4670532B2 - 複合成形品 - Google Patents

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本発明は、例えばパソコンやOA機器、携帯電話等の部品や筐体部分として用いられる軽量、高強度・高剛性でかつ薄肉化が要求される用途に適した複合成形品に関する。
現在、パソコン、OA機器、AV機器、携帯電話、電話機、ファクシミリ、家電製品、玩具用品などの電気・電子機器の携帯化が進むにつれ、より小型、軽量化が要求されている。その要求を達成するために、機器を構成する部品、特に筐体には、外部から荷重がかかった場合に筐体が大きく撓んで内部部品と接触、破壊を起こさないようにする必要があるため、高強度・高剛性化を達成しつつ、かつ薄肉化が求められている。
そこで、高強度・高剛性な成形品を得るために一方向に連続な強化繊維を含む熱可塑性樹脂シート又はそれを積層したシートと熱可塑性樹脂が一体化してなる複合射出成形物が提案されているが(例えば、特許文献1参照)、連続な強化繊維を含む熱可塑性シート又はそれを積層したシートの片面全体に熱可塑性樹脂を射出成形により形成しているため、結果として厚みは、
(連続な強化繊維を含む熱可塑性シート又はそれを積層したシートの厚み)
+(熱可塑性樹脂層の厚み)
となり、より薄肉で剛性を上げることが困難であった。
このように通常、積層部材(II)と樹脂部材(III)とを接合する場合、積層部材表面部分に互いが重なり合う接合シロが必要であり、この接合シロの厚みが薄肉化を妨げている要因でもあった。また、積層方向接合部分で接合する場合も薄肉になればなるほど、十分な接合面積が取れず必要な接合強度を得ることが困難であった。
特開平9−272134号公報
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み、軽量、高強度・高剛性で、かつ薄肉化を図ることができるものであり、これらの特性が要求される用途に適した複合成形品を提供することを課題とする。
上記課題を達成するための本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、
(1)サンドイッチ構造を有する積層部材(II)と該積層部材(II)の板端部周囲の少なくとも一部に樹脂部材(III)を配した複合成形品(I)であって、該サンドイッチ構造は硬質部材層(IIa)と軟質部材層(IIb)を有し、前記硬質部材層(IIa)が
(a)強化繊維を含んだシート
(b)強化繊維に少なくとも炭素繊維を含んだシート
(c)一方向に配列した連続強化繊維を含んだシート
(d)一方向に配列した少なくとも炭素繊維を含む連続強化繊維を含んだシート
(e)連続強化繊維織物を含んだシート
(f)少なくとも炭素繊維を含む連続強化繊維織物を含んだシート
からなる群の中から選ばれた少なくとも1種類から構成されるとともに、前記硬質部材層(IIa)に含まれるシートがマトリックスとしてエポキシ樹脂を主成分とする樹脂シートであり、積層部材(II)と成形収縮率が0〜0.5%である樹脂部材(III)との接合部において、樹脂部材(III)が軟質部材層(IIb)に対し、少なくとも一部が凸形状を形成していることを特徴とする複合成形品(I)。
)前記軟質部材層(IIb)が、発泡材および/または樹脂シートから構成されている(1)に記載の複合成形品(I)。
)前記積層部材(II)の厚みが3mm以下である(1)または(2)に記載の複合成形品(I)。
)前記樹脂部材(III)が強化繊維を含む(1)〜(3)のいずれかに記載の複合成形品(I)。
)前記積層部材(II)に樹脂部材(III)が射出成形されて形成されている(1)〜(4)のいずれかに記載の複合成形品(I)。
)前記積層部材(II)および樹脂部材(III)のUL−94に基づく難燃性が0.1〜3.0mmのいずれかの厚みの試験片でV−1またはV−0である(1)〜(5)のいずれかに記載の複合成形品(I)。
)前記積層部材(II)または/および前記樹脂部材(III)が少なくともリン系の難燃剤を含む(1)〜(6)のいずれかに記載の複合成形品(I)。
(1)〜(7)のいずれかに記載の複合成形品(I)を用いた電子機器用筐体。
本発明の複合成形品は、軽量、高剛性・高強度で、薄肉化を図ることができ、これらの特性を有するパソコン、ディスプレイや携帯情報端末などの電気・電子機器の筐体およびその筐体を製造するのに適する。
本発明の複合成形体(I)は、サンドイッチ構造を有する積層部材(II)と該積層部材(II)の板端部周囲の少なくとも一部に樹脂部材(III)を配したものである。面板部分に軽量高剛性なサンドイッチ構造を有する積層部材(II)を配し、周囲の比較的複雑な形状を必要とする部分に、形状自由度の高い樹脂部分を配することにより、軽量高剛性でかつ薄肉な複合成形品としたものである。ここで、板端部周囲とは、板の断面が露出している部分をいい、板の外周部および、板の内部に切りかかれた部分の内周部のいずれも含むものとする。
本複合成形品の積層部材(II)の一部をなすサンドイッチ構造には、硬質部材層(IIa)と軟質部材層(IIb)を有することが必要である。硬質部材層(IIa)は、剛性を確保するために必要であり、軟質部材層(IIb)は、かかる組合せのサンドイッチ構造とすることにより、後述するような接合形態を達成するために必要となるものである。すなわち、積層部材(II)と樹脂部材(III)との接合部において、樹脂部材(III)の少なくとも一部を軟質部材層(IIb)に対し、凸形状とすることにより、硬質部材層(IIa)と樹脂部材(III)の前記凸形状となった部分に勘合構造を形成せしめ、接着剤等を使用した接合と比較して各段に接合強度が向上した接合が得られるためである。
かかる勘合構造を形成するためのサンドイッチ構造としては、硬質部材層(IIa)と軟質部材層(IIb)のいずれが中央層となってもよい。すなわち硬質部材層(IIa)が中央層となった場合には樹脂部材(III)の前記凸形状となった部分に硬質部材層(IIa)が挟まれるタイプの勘合構造となり、軟質部材層(IIb)が中央層となった場合には樹脂部材(III)の前記凸形状となった部分が硬質部材層(IIa)に挟まれるタイプの勘合構造となる。かかる態様のうち、より効果的に積層部材(II)の剛性を確保するためには、軟質部材層(IIb)が中央層、硬質部材層(IIa)を両外層に構成することが好ましい。材料力学上、曲げ剛性は積層部材(II)の表層に近い層の剛性の影響が中央層に近い層の剛性の影響に比べ極めて大きいため、表層は硬質部材層(IIa)で、中央層は発泡材や軽量樹脂シート等の軟質部材層(IIb)で構成することで積層部材(II)の軽量化を図りつつ、剛性も確保することができるためである。
硬質部材層(IIa)としては、強化繊維を含んだシートが好ましく用いられる。
強化繊維としては、例えばアルミニウム繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維などの金属繊維、ポリアクリロニトリル系、レーヨン系、リグニン系、ピッチ系等の炭素繊維や黒鉛繊維、ガラス繊維、シリコンカーバイト繊維、シリコンナイトライド繊維などの無機繊維や、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維などの有機繊維等が使用できる。これらの強化繊維は単独で用いても、また、2種以上併用しても良い。中でも、比強度、比剛性、軽量性のバランスの観点から炭素繊維が好ましく、比強度・比弾性率に優れる点でポリアクリロニトリル系炭素繊維を少なくとも含むことが好ましい。また、硬質部材層(IIa)としての強化繊維を含んだシートは、強化繊維を含む複数の層から構成されるものであっても良い。また、強化繊維が、連続強化繊維であれば、より高い強度・剛性を得られることから好ましい。連続強化繊維を含んだシートとは10mm以上の長さの連続した強化繊維がシート内(またはシートを構成する強化繊維を含む層内)に配列されているシートであって、必ずしもシート(または、シートを構成する強化繊維を含む層)全体にわたって連続している必要はなく、途中で分断されていても特に問題はない。具体的な連続強化繊維の形態としては、フィラメント、織物(クロス)、一方向引き揃え(UD)、組み物(ブレイド)等が例示できるが、プロセス面の観点から、クロス、UDが好適に使用される。また、これらの形態は単独で使用しても、2種以上の形態を併用してもよい。中でも、マルチフィラメントが一方向に引きそろえられたものが、より効率良く強度・剛性を得られることから好ましい。
硬質部材層(IIa)に含まれるシートのマトリックスとしては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、または金属などを用いることができる。熱可塑性樹脂としては例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル等のポリエステルや、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン等のポリオレフィンや、スチレン系樹脂の他や、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチレンメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性PPE、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、変性PSU、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルニトリル(PEN)、熱可塑性フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、更にポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系、フッ素系等の熱可塑エラストマー等や、これらの共重合体、変性体、および2種類以上ブレンドした樹脂があげられる。熱硬化性樹脂としては、例えば不飽和ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、フェノール(レゾール型)、ユリア・メラミン、ポリイミド等や、これらの共重合体、変性体、および、これらの少なくとも2種をブレンドした樹脂があげられる。これらの中でも、積層部材(II)の剛性、強度に優れることから、熱硬化性樹脂が好ましく、とりわけエポキシ樹脂を主成分とする熱硬化性樹脂が成形品の力学特性の観点からより好ましい。マトリックス樹脂には更に耐衝撃性向上等のために、熱硬化性樹脂に熱可塑性樹脂および/またはその他のエラストマーもしくはゴム成分等を添加した樹脂を用いてもよい。
また、マトリックスの別の好ましい態様として、チタン、マグネシウム、アルミ等の金属を用いることも可能である。
硬質部材層(IIa)として、強化繊維を含んだシートを用いる場合、強化繊維の割合は、成形性、力学特性の観点から20〜90体積%が好ましく、30〜80体積%がより好ましい。なお、体積%の測定はマトリックスが樹脂の場合はJIS K 7075に記載されている方法で測定する。マトリックスが金属の場合、アルミ等の比較的融点が低い金属は金属部分を溶融濾過し、繊維量を測定して算出するが、融点が高い金属は断面写真観察により繊維量を測定して算出する。
硬質部材層(IIa)の別の好ましい態様として、チタン、マグネシウム、アルミ等の金属シートが挙げられるがこれらに限定するものではなく、剛性、比重、薄肉性、コスト等の観点から積層部材(II)の要求特性に応じ適宜選定しても良い。
軟質部材層(IIb)としては、発泡材、樹脂シート等が好ましく使用できる。このうち発泡材を使用すると軽量な積層部材(II)が得られるために好ましく、さらには、軟質部材層(IIb)として発泡材を中央層とし、硬質部材層(IIa)がその両面に配された構造のサンドイッチ構造とすると、軽量かつ高剛性な面板が得られることからより好ましい。
特にノートパソコン等の携帯用電子機器においては、機器全体により小型化、薄肉化の要求が高くなっており、該機器の筐体にも薄肉化が必要であるため、積層部材(II)の厚みは3mm以下であることが好ましい。
樹脂部材(III)に使用される樹脂としては特に制限はなく、とりわけ、耐熱性、耐薬品性の観点からはPPS樹脂が、成形品外観、寸法安定性の観点からはポリカーボネート樹脂やスチレン系樹脂が、成形品の強度、耐衝撃性の観点からはポリアミド樹脂がより好ましく用いられる。
また、複合成形品(I)の高強度・高剛性化を図るために樹脂部材(III)の樹脂として、強化繊維を含有させたものを用いることも好ましい。強化繊維としては、例えばアルミニウム繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維などの金属繊維、ポリアクリロニトリル系、レーヨン系、リグニン系、ピッチ系等の炭素繊維や黒鉛繊維、ガラス繊維、シリコンカーバイト繊維、シリコンナイトライド繊維などの無機繊維や、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維などの有機繊維等が使用できる。これらの強化繊維は単独で用いても、また、2種以上併用しても良い。中でも、比強度、比剛性、軽量性のバランスの観点から炭素繊維が好ましく、比強度・比弾性率に優れる点でポリアクリロニトリル系炭素繊維を少なくとも含むことが好ましい。
さらに、樹脂部材(III)を構成する樹脂には、要求される特性に応じ、本発明の目的を損なわない範囲で他の充填材や添加剤を含有しても良い。例えば、無機充填材、リン系以外の難燃剤、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤、カップリング剤などが挙げられる。
また、積層部材(II)と樹脂部材(III)との接合部において、樹脂部材(III)を軟質部材層(IIb)に対し、凸形状をなすように形成させる方法としては、積層部材(II)の製造後、後加工によって予め積層部材(II)の端部に凹形状を加工したものに樹脂部材(III)を射出成形する方法や、軟質部材層(IIb)のサイズが硬質部材層(IIa)のサイズより小さいものを積層し積層部材(II)を製造した後、樹脂部材(III)を射出成形して製造する方法があるが、前述のような板端部への凹形状加工や、サイズの異なる積層をせずに、樹脂部材(III)を積層部材(II)に直接射出成形し、その射出圧力で軟質部材層(IIb)を凹ませ、樹脂部材(III)の凸形状を形成させると生産効率が高く好ましい。
また、積層部材(II)の軟質部材層(IIb)に発泡材のような比較的圧縮強度の低いものを用いれば、射出成形でより樹脂部材(III)を凸形状に形成しやすいと共に積層部材(II)をより軽量化する事ができ好ましい。
積層部材(II)に射出成形により樹脂部材(III)を設ける場合、射出樹脂の成形収縮により、複合成形品(I)に反りやねじれが発生する傾向があるため、射出樹脂は成形収縮率の小さいものを選定することが好ましい。反りやねじれの許容値にもよるが、実用上射出成形樹脂の成形収縮率を0〜0.5%にすることがより好ましい。さらに好ましくは0〜0.3%である。さらに強化繊維が含まれた樹脂を選定することで成形収縮率がより小さくなる傾向があり、反りやねじれをより低減するだけでなく、複合成形品(I)全体の剛性向上も図ることができ好ましい。
また、積層部材(II)の硬質部材層(IIa)には、連続強化繊維を一方向引き揃え(UD)の形態で含むことで複合成形品(I)の剛性を高めることができ好ましい。連続強化繊維に炭素繊維を用いることでさらに剛性を高めることができ、より好ましい。金属シートを積層してもよい。
本発明の複合成形品(I)の用途としては、例えば、パソコン、ディスプレイ、OA機器、携帯電話、携帯情報端末、ファクシミリ、コンパクトディスク、ポータブルMD、携帯用ラジオカセット、PDA(電子手帳などの携帯情報端末)、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、光学機器、オーディオ、エアコン、照明機器、娯楽用品、玩具用品、その他家電製品などの電気、電子機器の筐体及びトレイやシャーシなどの内部部材やそのケース、機構部品、自動車や航空機の電装部材、内部部品などが挙げられる。
とりわけ、本発明の複合成形品(I)はその優れた軽量性、高強度・高剛性、薄肉性を活かして、電気、電子機器用筐体や外部部材用に好適であり、さらには薄肉で広い投影面積を必要とするノート型パソコンや携帯情報端末などの筐体として好適である。
本発明の複合成形品(I)は、その用途に対する特性として、難燃性を有していることが好ましく、積層部材(II)および樹脂部材(III)のUL−94に基づく難燃性が0.1〜3.0mmのいずれかの厚みの試験片でV−1またはV−0であることが好ましい。より好ましくは0.1〜1.0mmのいずれかの厚みの試験片でV−1またはV−0である。難燃性はUL−94規格に基づき、垂直燃焼試験により評価する。
また、難燃性を付与するために積層部材(II)、樹脂部材(III)のいずれかもしくは共にリン系の難燃剤を含むことが好ましい。リン系の難燃剤としては例えば、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、ホスファフェナントレン系化合物などのリン含有化合物や赤リンが好ましく用いられる。なかでも赤リンは、難燃剤を付与する働きをするリン原子含有率が大きいため、十分な難燃効果を得るために加えるべき難燃剤の添加量が少量でよいため好ましい。
以下、本発明についてその一実施例に係る図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施例に係る複合成形品(I)の断面斜視図である。
図1において、本発明の複合成形品(I)は軟質部材層(IIb)として中央層に発泡材を配し、硬質部材層(IIa)としてその両外層に連続強化繊維を一方向引き揃え(UD)の形態で含むシートを積層したサンドイッチ構造の積層部材(II)の板端部周囲に樹脂部材(III)が接合されており、該接合部において、樹脂部材(III)が軟質部材層(IIb)に対し、少なくとも一部が凸形状となっている構成からなる。樹脂部材(III)が凸形状をなし、該凸形状を硬質部材層(IIa)が勘合する構造により接合しているため、接着剤等との接合と比較し各段に接合強度が向上するため、積層部材(II)の表面部分に接合シロを設けず、積層方向接合部分のみの十分な接合面積が取れないような部分のみの接合でも十分な接合強度を得ることができる。さらに接合強度が必要な場合には、接合シロと勘合接合を併用してもよい。勘合接合により積層部材(II)の厚みが3mm以下の薄肉になっても積層部材(II)の表面に接合シロを設けなくても十分な接合強度を得られる。
図2は、本発明の一実施例に係る複合成形品(I)の積層部材(II)の分解斜視図である。
図2において、本発明の複合成形品(I)の積層部材(II)は、軟質部材層(IIb)として中央層に発泡材を配し、硬質部材層(IIa)としてその両外層に連続強化繊維を一方向引き揃え(UD)の形態で含む層を繊維方向がほぼ直交するように各2層積層した構成からなるシートを配したものである。
ここで、硬質部材層(IIa)として、連続強化繊維を一方向引き揃え(UD)の形態で含む層を上下2層(計4層)としている理由は、連続強化繊維を一方向引き揃え(UD)の形態で含む層は、強化繊維の配列方向には強く、強化繊維の配列方向以外の方向には弱いといった方向により力学的特性が異なる異方性材料であることから(一例を挙げると炭素繊維による繊維強化層は繊維方向の曲げ弾性率に対し、繊維方向と直角方向の曲げ弾性率は約1/5程度である。)、このような材料を筐体に用いる場合、ある方向では強度的に満足できていてもそのほかの方向では満足できないということが起こり得るためである。かかる理由により、連続強化繊維を一方向引き揃え(UD)の形態で含む樹脂層の強化繊維配列方向を強度が要求される方向に適切に配列することが必要となるため、強化繊維が異なる配列を持つ層を組み合わせてシートを形成するのである。
しかし、連続強化繊維を一方向引き揃え(UD)の形態で含むシートは、連続強化繊維のマトリックスとして樹脂や金属を用いて一般的には加圧・加熱により成形を行っているため、ただ、闇雲に強化繊維配列方向を定めても各方向での成形収縮率や引っ張り強度等の違いにより連続強化繊維を一方向引き揃え(UD)の形態で含むシートに反りやねじれが発生してしまうという問題が生じる。例えば、強化繊維が炭素繊維でマトリックス樹脂がエポキシ樹脂の場合、炭素繊維配列方向の成形収縮率は炭素繊維配列方向と直交する方向と比べ1/50程度と極めて小さい。このため、異方性を抑えつつ、かつ成形時に反りやねじれ等が少なく、寸法安定性の高い積層部材(II)を得るためには、炭素繊維配列方向が中立層を規準とし、上下対称となるように配置した方が好ましい。ここで中立層とは、積層方向に対し、中央層のことである。具体的には、積層数が(2×n)層(nは正の整数)の場合はn層目と(n+1)層目の間の層を示し、積層数が(2×n−1)層(nは正の整数)の場合は、n層目のことである。なお、繊維強化層の層数はここでは4層としているが、特に限定するものではなく、厚みを厚くしたいときにはより多く積層し、逆に薄くしたい場合は、層数を減らすといった必要厚み、必要強度等によって適切に選定することが好ましい。ただ、上述した異方性を低減し、より剛性バランスのとれた積層部材(II)とするためには連続強化繊維を一方向引き揃え(UD)の形態で含む層を複数層積層しシートを形成することが好ましい。
特にノートパソコン用筐体の場合、特に外力から筐体内部部品を保護するため、外力を受けてもよりたわまないこと、すなわち曲げ剛性を高めることが要求されるが、この場合、積層部材(II)の最外層の強化繊維の方向が積層部材(II)のほぼ短辺方向(1a)になるように配置することが曲げ剛性向上の観点から好ましい。例えば、長辺と短辺との比が2である長方形形状の炭素繊維積層部材(II)を3層構成で製造する場合、1層目に含まれる強化繊維の配列方向を短辺方向(1a)に、2層目の強化繊維の配列方向を長辺方向(1b)に、3層目の強化繊維の配列方向を短辺方向に(1a)積層したものは、1層目の強化繊維の配列方向を長辺方向(1b)に、2層目の強化繊維の配列方向を短辺方向(1a)に、3層目の強化繊維の方向を配列長辺方向(1b)に積層したものと比べ、一定荷重がかかった場合のたわみは1/2程度となる。また、より軽量化を図りたい場合は中央層を軽量な樹脂シート、より好ましくは発泡材等、両外層を連続強化繊維を一方向引き揃え(UD)の形態で含むシートとするサンドイッチ構成の積層部材(II)を用いることもできる。材料力学上、曲げ剛性は積層部材(II)の表層に近い層の剛性の影響が前述した中立層に近い層の剛性の影響に比べ極めて大きいため、表層は繊維強化層で、中立層は発泡材や軽量樹脂シートで構成することで積層部材(II)の軽量化を図りつつ、剛性も確保することができるためである。
連続強化繊維を一方向引き揃え(UD)の形態で含むシート(または、連続強化繊維を一方向引き揃え(UD)の形態で含む複数の層から構成されるシート)を含む積層部材(II)の製造方法としては、プレス成形、ハンドレイアップ成形法、スプレーアップ成形法、真空バック成形法、加圧成形法、オートクレーブ成形法、トランスファー成形法などの熱硬化樹脂を使用した方法、およびプレス成形、スタンピング成形法などの熱可塑性樹脂を使用した方法などが挙げられる。とりわけ、プロセス性、力学特性の観点から真空バック成形法、プレス成形法、トランスファー成形法などが好適に用いられる。
図3は、硬質部材層(IIa)のみで構成されている積層部材(II)と樹脂部材(III)から構成されており、樹脂部材(III)が積層部材(II)に対し、凸形状を形成せずに接合されている従来の一般的な複合成形品(I)の断面斜視図である。積層部材(II)の表面に接合シロが形成されているため接合シロ部分が厚くなっている。
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、下記実施例は本発明を何ら制限するものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で変更することは、本発明の技術範囲である。
(実施例1)
積層部材(II)の軟質部材層(IIb)として、中央層に発泡材(ポリプロピレン樹脂)を配し、硬質部材層(IIa)としてその上下面に炭素繊維一方向プリプレグ(UD PP)P3052S(東レ(株)製 炭素繊維T700S(強度4900MPa、弾性率230GPa、炭素繊維含有率67重量%、ベースレジン:ジシアンジアミド/ジクロロフェニルメチルウレア硬化系エポキシ樹脂)を繊維配列方向がほぼ直交するように各2層積層したものをプレス成形(金型温度130℃、圧力1MPa、硬化時間120分)して製造し、これを300mm×230mmのサイズに加工後、射出成形金型内にセットし、型締めを行った後、樹脂部材(III)として長繊維ペレット TLP1146S(東レ(株)製 炭素繊維含有量20%、ベースレジン:ポリアミド6)を射出成形して複合成形品(I)を製造したところ、積層部材(II)と樹脂部材(III)の接合部において、樹脂部材(III)が積層部材(II)の軟質部材層(IIb)に対し、凸形状を形成し、十分な接合強度を得られたとともに複合成形品(I)の厚みも積層部材(II)の表面部分に接合シロがない部分では薄肉品を得ることができた。
(比較例1)
積層部材(II)として、炭素繊維一方向プリプレグ(UD PP)P3052S(東レ(株)製 炭素繊維T700S(強度4900MPa、弾性率230GPa、炭素繊維含有率67重量%、ベースレジン:ジシアンジアミド/ジクロロフェニルメチルウレア硬化系エポキシ樹脂)を繊維配列方向がほぼ直交するように8層積層したものをプレス成形(金型温度130℃、圧力1MPa、硬化時間120分)したものを300mm×230mmのサイズに加工後、射出成形金型内にセットし、型締めを行った後、樹脂部材(III)として長繊維ペレット TLP1146S(東レ(株)製 炭素繊維含有量20%、ベースレジン:ポリアミド6)を射出成形して複合成形品(I)を製造したところ、積層部材(II)の表面に接合シロがある分、十分な薄肉化を達成することができなかった。 実施例1、比較例1より以下のことが明らかになった。
実施例1の複合成形品(I)は軽量、高強度・高剛性である上、薄肉性を満足し、電気・電子機器の筐体として好適であった。
一方、比較例1の複合成形品(I)では、積層構成部材(II)の表面部分に接合シロがあるため、十分な薄肉性を確保できなかった。
本発明の複合成形品(I)は、ノート型パソコンや携帯端末などの電気・電子機器筐体用途に限らず、その優れた軽量性、高強度・高剛性、薄肉性を活かして、自動車部品用途等にも応用することができるが、その応用範囲は、これらに限られるものではない。
本発明の一実施例に係る複合成形品(I)の断面斜視図である。 本発明の一実施例に係る複合成形品(I)の積層部材(II)の分解斜視図である。 一般的な複合成形品(I)の断面斜視図である。
符号の説明
I :複合成形品
II :積層部材
IIa:硬質部材層
IIb:軟質部材層
III :樹脂部材

1a:連続強化繊維層の繊維配列方向(短辺方向)
1b:連続強化繊維層の繊維配列方向(長辺方向)

Claims (8)

  1. サンドイッチ構造を有する積層部材(II)と該積層部材(II)の板端部周囲の少なくとも一部に樹脂部材(III)を配した複合成形品(I)であって、該サンドイッチ構造は硬質部材層(IIa)と軟質部材層(IIb)を有し、前記硬質部材層(IIa)が
    (a)強化繊維を含んだシート
    (b)強化繊維に少なくとも炭素繊維を含んだシート
    (c)一方向に配列した連続強化繊維を含んだシート
    (d)一方向に配列した少なくとも炭素繊維を含む連続強化繊維を含んだシート
    (e)連続強化繊維織物を含んだシート
    (f)少なくとも炭素繊維を含む連続強化繊維織物を含んだシート
    からなる群の中から選ばれた少なくとも1種類から構成されるとともに、前記硬質部材層(IIa)に含まれるシートがマトリックスとしてエポキシ樹脂を主成分とする樹脂シートであり、積層部材(II)と成形収縮率が0〜0.5%である樹脂部材(III)との接合部において、樹脂部材(III)が軟質部材層(IIb)に対し、少なくとも一部が凸形状を形成していることを特徴とする複合成形品(I)。
  2. 前記軟質部材層(IIb)が、発泡材および/または樹脂シートから構成されている請求項1に記載の複合成形品(I)。
  3. 前記積層部材(II)の厚みが3mm以下である請求項1または2に記載の複合成形品(I)。
  4. 前記樹脂部材(III)が強化繊維を含む請求項1〜のいずれかに記載の複合成形品(I)。
  5. 前記積層部材(II)に樹脂部材(III)が射出成形されて形成されている請求項1〜のいずれかに記載の複合成形品(I)。
  6. 前記積層部材(II)および樹脂部材(III)のUL−94に基づく難燃性が0.1〜3.0mmのいずれかの厚みの試験片でV−1またはV−0である請求項1〜のいずれかに記載の複合成形品(I)。
  7. 前記積層部材(II)または/および前記樹脂部材(III)が少なくともリン系の難燃剤を含む請求項1〜のいずれかに記載の複合成形品(I)。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載の複合成形品(I)を用いた電子機器用筐体。
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