JP4667648B2 - ポリイミド・金属箔積層体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子材料用途に幅広く使用されているポリイミド・金属箔積層体およびその製造方法に関する。
その中でも特に、カールを抑え、接着性、耐熱性、強度に優れたポリイミド・金属箔積層体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリイミド・金属箔積層体の大きな用途として、フレキシブルプリント配線基板がある。フレキシブルプリント配線基板の製造方法は、銅箔にポリイミド等のフィルムを接着剤を介して張り合わせたり、銅箔にポリイミド等の前駆体溶液を塗布し乾燥させる方法が採られている。
フレキシブルプリント配線基板をこのようにして製造する場合、材質の熱的挙動の相違から、カール、反り等を生じ、回路のパターニングができなくなる問題が生じていた。
従来、単一の樹脂の性質のみでカールを抑え、接着性、耐熱性、強度に優れたフレキシブルプリント配線基板を製造することは、困難であった。
そこで、カールした基材を熱処理して平滑化させる技術(特開昭56−23791号公報)や、銅箔上に高線膨張性の樹脂層を形成し、その上にさらに低線膨張性の樹脂層を形成させ、それぞれの厚みを制御して多層化することによりカールを小さくする技術(特開平8−250860号公報)等が開発されてきた。
【0003】
しかし、これらの様な方法では、工程上で加熱される度毎に平滑化のための後処理が必要となったり、工程数の増加が避けられないといったように、生産性の点で満足のいくものではなかった。上記のように、カールを抑え、接着性、耐熱性、強度に優れたポリイミド・金属箔積層体を製造することにおいては、課題が残されていた。
【0004】
一方、化学式(III)(化5)で表される繰り返し単位を有するポリイミドは、特公昭56−4587号公報に示されている通りに、公知の物質である。ところが、この物質が、フレキシブルプリント配線基板用のポリイミドとして有用であるといった知見や、カールを抑えたポリイミド・金属箔積層体を製造することにおいて好適であるとの認識は、全くなされていなかった。
【化5】
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、カールを抑え、接着性、耐熱性、強度に優れたポリイミド・金属箔積層体を製造し、提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を進めた結果、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン又は、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンをモノマーとするポリイミドを用いることにより、カールを抑え、接着性、耐熱性、強度に優れたポリイミド・金属箔積層体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の[1]〜[7]に記載した事項により特定される。
【0007】
[1] 化学式(I)(化6)で表される繰り返し単位を有するポリイミドを含んでなるポリイミド層、及び、
金属箔層
とを含んでなるポリイミド・金属箔積層体
(化学式(I)中、Rは、メチル基又はエチル基、Zは、置換されていてもよい4価の芳香族基又は、化学式(II)(化6)からなる群より選ばれた少なくとも1種の基である。
但し、化学式(II)において、Yは、直接結合、メチレン基、イソプロピリデン基、六フッ素化されたイソプロピリデン基、チオ基、スルフィニル基、スルホニル基、及び、オキシドからなる群より選ばれた基を表す。
rは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基、又は、ハロゲン基、フェニル基を表す。aは、0又は、1〜4の整数を表す。)。
【化6】
【0008】
[2] 化学式(III)(化7)で表される繰り返し単位を有するポリイミドを含んでなるポリイミド層、及び、
金属箔層
とを含んでなるポリイミド・金属箔積層体。
【化7】
【0009】
[3] 金属箔が、銅箔である、[1]又は[2]に記載した、ポリイミド・金属箔積層体。
【0010】
[4] 3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、又は、
3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンと芳香族テトラカルボン酸二無水物類を反応させて得られるポリアミド酸溶液を金属箔上に塗布し、乾燥、イミド化させることを特徴とする、
化学式(I)(化8)で表される繰り返し単位を有するポリイミドを含んでなるポリイミド層、及び、
前記金属箔層
と含んでなるポリイミド・金属箔積層体の製造方法
(化学式(I)中、Rは、メチル基又はエチル基、Zは、置換されていてもよい4価の芳香族基又は、化学式(II)(化8)からなる群より選ばれた少なくとも1種の基である。
但し、化学式(II)において、Yは、直接結合、メチレン基、イソプロピリデン基、六フッ素化されたイソプロピリデン基、チオ基、スルフィニル基、スルホニル基、及び、オキシドからなる群より選ばれた基を表す。
rは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基、又は、ハロゲン基、フェニル基を表す。aは、0又は、1〜4の整数を表す。)。
【化8】
【0011】
[5] 3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンとピロメリット酸二無水物を反応させて得られるポリアミド酸溶液を金属箔上に塗布し、乾燥、イミド化させることを特徴とする、
化学式(III)(化9)で表される繰り返し単位を有するポリイミドを含んでなるポリイミド層、及び、
前記金属箔層
とを含んでなるポリイミド・金属箔積層体の製造方法。
【化9】
【0012】
[6] 金属箔が、銅箔である、[4]又は[5]に記載した、ポリイミド・金属箔積層体の製造方法。
【0013】
[1]乃至[3]の何れかに記載したポリイミド・金属箔積層体を含んで構成されるフレキシブルプリント配線基板。
【0014】
本発明のポリイミド・金属箔積層体の製造方法は、特に限定されないが、金属箔に該ポリイミドのフィルムを接着剤を介して張り合わせる方法や、金属箔に該ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸溶液を塗布し乾燥させる方法で製造することが可能である。本発明のポリイミド・金属箔積層体の製造方法は、金属箔にポリアミド酸溶液を塗布し乾燥させる方法が特に好ましい。
【0015】
本発明のポリイミド・金属箔積層体を構成するポリイミドは、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンか又は、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンと芳香族テトラカルボン酸二無水物類を反応させて得られる
【0016】
このような芳香族テトラカルボン酸二無水物は、限定されるわけではないが、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2−ビス[(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,3−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、及び1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等が用いられる。これらの芳香族テトラカルボン酸二無水物は、単独でも二種以上を同時に用いることも可能である。
【0017】
本発明のポリイミド・金属箔積層体を構成するポリイミドの製造において、そしてまた該ポリイミド前駆体の製造においては、必要に応じて末端封止剤を用いることもできる。代表的な末端封止剤は、モノアミン又は、ジカルボン酸無水物である。
【0018】
モノアミンとしては、例えば、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、2,3−キシリジン、2,4−キシリジン、2,5−キシリジン、2,6−キシリジン、3,4−キシリジン、3,5−キシリジン、o−クロロアニリン、m−クロロアニリン、p−クロロアニリン、o−ブロモアニリン、m−ブロモアニリン、p−ブロモアニリン、o−ニトロアニリン、m−ニトロアニリン、p−ニトロアニリン、o−アニシジン、m−アニシジン、p−アニシジン、o−フェネチジン、m−フェネチジン、p−フェネチジン、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、o−アミノベンズアルデヒド、m−アミノベンズアルデヒド、p−アミノベンズアルデヒド、o−アミノベンゾニトリル、m−アミノベンゾニトリル、p−アミノベンゾニトリル、2−アミノビフェニル、3−アミノビフェニル、4−アミノビフェニル、2−アミノフェニルフェニルエーテル、3−アミノフェニルフェニルエーテル、4−アミノフェニルフェニルエーテル、2−アミノベンゾフェノン、3−アミノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、2−アミノフェニルフェニルスルフィド、3−アミノフェニルフェニルスルフィド、4−アミノフェニルフェニルスルフィド、2−アミノフェニルフェニルスルホン、3−アミノフェニルフェニルスルホン、4−アミノフェニルフェニルスルホン、α−ナフチルアミン、β−ナフチルアミン、1−アミノ−2−ナフトール、2−アミノ−1−ナフトール、4−アミノ−1−ナフトール、5−アミノ−1−ナフトール、5−アミノ−2−ナフトール、7−アミノ−2−ナフトール、8−アミノ−1−ナフトール、8−アミノ−2−ナフトール、1−アミノアントラセン、2−アミノアントラセン、9−アミノアントラセン、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、イソブチルアミン、ジイソブチルアミン、ペンチルアミン、ジペンチルアミン、ベンジルアミン、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。
【0019】
ジカルボン酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、2,3−ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、3,4−ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、2,3−ジカルボキシフェニルエーテル無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルエーテル無水物、2,3−ビフェニルジカルボン酸無水物、3,4−ビフェニルジカルボン酸無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルスルホン無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルスルホン無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルスルフィド無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルスルフィド無水物、1,2−ナフタレンジカルボン酸無水物、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物、1,2−アントラセンジカルボン酸無水物、2,3−アントラセンジカルボン酸無水物、1,9−アントラセンジカルボン酸無水物等が挙げられる。これらのモノアミン又は、ジカルボン酸無水物は、その構造の一部がアミン又は、ジカルボン酸無水物と反応性を有しない基で置換されても差し支えない。
【0020】
本発明において、金属箔に塗布する際のポリアミド酸の対数粘度は、特に限定されるものではないが、好ましい対数粘度としては、0.1〜2.0が好ましく、0.2〜1.9がより好ましく、0.3〜1.8がさらに好ましく、0.4〜1.7がさらに好ましく、0.5〜1.6がさらに好ましい。
【0021】
ポリアミド酸の対数粘度が低すぎると、一般に、ポリイミド層の強度や靱性が低下して問題となることがある。
ポリアミド酸の対数粘度が高すぎると、一般に、ポリアミド酸溶液の塗工性において問題となることがある。
【0022】
本発明のポリイミド・金属箔積層体を構成するポリイミドの製造において、そしてまた、ポリアミド酸の製造においては、反応を有機溶媒中で行うことが好ましい方法である。反応において用いられる溶媒は、限定されるわけではないが、例えば、
【0023】
(a) フェノール系溶媒である、フェノール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、
【0024】
(b) 非プロトン性アミド系溶媒である、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホロトリアミド、
【0025】
(c) エーテル系溶媒である、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、テトラヒドロフラン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル、1,4−ジオキサン、
【0026】
(d) アミン系溶媒である、ピリジン、キノリン、イソキノリン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、イソホロン、ピペリジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、
【0027】
(e) その他の溶媒である、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジフェニルエーテル、スルホラン、ジフェニルスルホン、テトラメチル尿素、アニソール等が挙げられる。これらの溶媒は、単独又は、2種以上混合して用いても差し支えない。これらの溶媒の中でも、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましい。
【0028】
本発明に用いるポリアミド酸溶液の製造においては、ポリアミド酸溶液中のポリアミド酸の濃度(ここで、濃度は、重量を基準としたものである。以下、『重合濃度』という。)は、何等制限はない。好ましい重合濃度は、5から40%であり、さらに好ましくは、10から30%である。
【0029】
本発明に用いるポリアミド酸溶液の製造においては、反応温度、反応時間および反応圧力には、特に制限はなく公知の条件が適用できる。即ち、反応温度は、およその範囲として、−10℃から100℃が好ましいが、更に好ましくは、氷冷温度(例えば、−2〜0℃)付近から60℃前後の範囲であり、実施面で最も好ましく実用的には、50〜60℃である。また、反応時間は、使用するモノマーの種類、溶媒の種類、および反応温度により異なるが、1〜48時間が好ましい。更に好ましくは、2、3時間から十数時間前後であり、実施面で最も好ましくは、4から10時間である。また更に、反応圧力は、常圧で十分である。
【0030】
ポリアミド酸溶液を金属箔に塗布する方法には、特に制限はなく、コンマコータ、ナイフコータ、ロールコータ、リバースコータ、ダイコータ等公知の塗布装置を使用することができる。
ポリアミド酸溶液を塗布した金属箔は、乾燥およびイミド化のため加熱されるが、その方法は、通常、減圧下あるいは、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性雰囲気下で行い、温度は、使用する溶媒の沸点以上かつイミド化反応が進行する温度以上であればよい。ちなみに、非プロトン性アミド系溶媒を用いた場合は、200℃以上であればよい。更にこの焼成処理時間は、特に限定はないが、通常2時間以上あれば十分である。
【0031】
本発明のポリイミド・金属箔積層体において、ポリイミド層の厚さには、特に制限はないが、通常3〜100μmの範囲が好ましく、特に5〜80μmの範囲が好ましい。本発明に用いられる金属箔は、如何なる金属箔でも構わないが、一般的には、銅箔やステンレス箔(SUS箔)である。
尚、金属箔の厚みに制限はないが、一般的には、好ましくは9〜150μm、より好ましくは9〜50μmである。
【0032】
本発明のポリイミド・金属箔積層体において、ポリイミドと金属箔の接着力をより強固なものとするために、金属箔の表面に何らかの処理を施していても問題はない。例えば、金属箔上にその金属の酸化物の層や合金の層を形成させたり、シラン系のカップリング剤で表面処理を行ったり、接着性に優れた樹脂をアンカーコート層として存在させる等の処理を施してもよい。
【0033】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これにより何等制限されるものではない。実施例中の各種試験の試験方法は、次に示すとおりである。
【0034】
(イ) 対数粘度(ηinh)
対数粘度(ηinh)は、ポリアミド酸溶液(20重量%)2.50g、即ち、ポリアミド酸として0.5gを、溶液に用いている溶媒100mlに溶解した後、35℃においてウベローデ粘度計で、定法に従い測定した。
【0035】
(ロ) 5%重量減少温度(Td5)
5%重量減少温度(Td5)は、空気中にてDTA−TG(マック・サイエンス社製TG−DTA2000)を用い、昇温速度10℃/minで測定した。
【0036】
(ハ) ガラス転移温度(Tg)・結晶融解温度(Tm)
ガラス転移温度(Tg)・結晶融解温度(Tm)は、示差走査熱量測定(DSC、マック・サイエンス社製DSC3100)により昇温速度10℃/minで測定した。
【0037】
(ニ)線膨張率
線膨張率は、TMA(マック・サイエンス社製TMA4000S)を用い、窒素中、荷重5g、昇温速度10℃/minで測定し、100〜200℃の領域で線膨張率を求めた。
【0038】
(ホ)フィルムの機械特性(引張強度、引張伸度及び引張弾性率)
フィルムの機械特性(引張強度、引張伸度及び引張弾性率)は、今田製作所製引張圧縮試験機を用いて測定した。
【0039】
[実施例1]
攪拌機、窒素導入管、および温度計を備えたフラスコに、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン30.0g(0.133mol)、および溶媒としてN,N−ジメチルアセトアミド150.7gを装入し、40℃で完全に溶解させた。
この後、一度室温付近まで冷却してからピロメリット酸二無水物28.6g(0.131mol)を温度の上昇に注意しながら装入する。
このとき、系内温度は、室温付近から55℃まで上昇する。完全に溶解状態となってから60℃で6時間反応させた。
反応終了後、得られたポリアミド酸溶液を5μmのフィルターで加圧濾過した。
このポリアミド酸溶液は、ηinhが0.53dl/gで、E型機械粘度が17300mPa・sであった。
【0040】
このポリアミド酸溶液をガラス板上に塗工厚が0.40mmとなるように塗工し、窒素置換されたイナートオーブンにて、昇温時間45分で室温から350℃として乾燥・イミド化を行った。
室温まで冷却した後、ガラス板からポリイミドフィルムを剥がした。
得られたポリイミドフィルムは、厚みが55μmであり、目視で確認する限り、反りは、認められなかった。
このポリイミドフィルムについて熱分析測定を行ったところ、Tgは、観察されず、Td5は、空気中で500℃であった。
また、このポリイミドフィルムの線膨張率は、100〜200℃の領域で11ppm/Kであった。
さらに、このポリイミドフィルムの機械物性は、引張強度が121MPa、引張弾性率が5.2GPa、伸度が3.3%であった。
測定結果をまとめて、表1に示す。
【0041】
[実施例2]
実施例1において用いた溶媒のN,N−ジメチルアセトアミドをN,N−ジメチルホルムアミドに変更し、それ以外は、実施例1と同様に処理を行い、ポリアミド酸溶液を得た。
このポリポリアミド酸は、ηinhが0.52dl/gで、E型機械粘度が10450mPa・sであった。
このポリアミド酸溶液をガラス板上に塗工厚が0.40mmとなるように塗工し、窒素置換されたイナートオーブンにて、昇温時間45分で室温から350℃として乾燥・イミド化を行った。
室温まで冷却した後、ガラス板からポリイミドフィルムを剥がした。
得られたポリイミドフィルムは、厚みが74μmであり、目視で確認する限り、反りは、認められなかった。
その他物性値の測定結果をまとめて、表1に示す。
【0042】
[比較例1]
実施例1において用いた3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン30.0g(0.133mol)を4,4’−ジアミノジフェニルメタン26.1g(0.133mol)に変更し、それ以外は、実施例1と同様に処理を行い、ポリアミド酸溶液を得た。
このポリアミド酸は、ηinhが0.52dl/gで、E型機械粘度が11000mPa・sであった。
このポリアミド酸溶液をガラス板上に塗工厚が0.40mmとなるように塗工し、窒素置換されたイナートオーブンにて、昇温時間45分で室温から350℃として乾燥・イミド化を行った。室温まで冷却した後、ガラス板からポリイミドフィルムを剥がした。
得られたポリイミドフィルムは、ガラス基板接着面方向に著しくカールした。
フィルムの厚みは、54μmであった。
その他物性値の測定結果をまとめて、表1に示す。
【0043】
[比較例2]
攪拌機、窒素導入管、および温度計を備えたフラスコに、4,4’−ジアミノベンズアニリド30.2g(0.133mol)、および溶媒としてN,N−ジメチルアセトアミド330.3gを装入し、40℃で完全に溶解させた。
この後、一度室温付近まで冷却してからピロメリット酸二無水物28.1g(0.129mol)を温度の上昇に注意しながら装入する。完全に溶解状態となってから60℃で6時間反応させた。
反応終了後、得られたポリアミド酸溶液を5μmのフィルターで加圧濾過した。このポリアミド酸は、ηinhが1.64dl/gで、E型機械粘度が70800mPa・sであった。
このポリアミド酸溶液をガラス板上に塗工厚が0.40mmとなるように塗工し、窒素置換されたイナートオーブンにて、昇温時間45分で室温から350℃として乾燥・イミド化を行った。室温まで冷却した後、ガラス板からポリイミドフィルムを剥がした。得られたポリイミドフィルムは、ガラス基板接着面方向に著しくカールした。フィルムの厚みは、34μmであった。
その他物性値の測定結果をまとめて、表1に示す。
【0044】
[実施例3]
実施例1において用いた3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン30.0g(0.133mol)を3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン 33.8g(0.133mol)に変更し、それ以外は、実施例1と同様に処理を行い、ポリアミド酸溶液を得た。
このポリアミド酸は、ηinhが0.48dl/gで、E型機械粘度が16400mPa・sであった。
このポリアミド酸溶液をガラス板上に塗工厚が0.40mmとなるように塗工し、窒素置換されたイナートオーブンにて、昇温時間45分で室温から350℃として乾燥・イミド化を行った。
室温まで冷却した後、ガラス板からポリイミドフィルムを剥がした。
得られたポリイミドフィルムは、厚みが54μmであり、目視で確認する限り、反りは、認められなかった。
その他物性値の測定結果をまとめて、表1に示す。
【0045】
[実施例4]
実施例1で得られたポリアミド酸ワニスを厚さ25μmの銅箔上に塗工厚が0.20mmになるように塗工し、窒素置換されたイナートオーブンにて、昇温時間1時間で室温から350℃とした後、350℃で1時間焼成した。室温まで冷却して、ポリイミドフィルムと銅箔の積層体を得た。この積層体は、反りは、見られず、ほぼ平滑なものであった。
【0046】
【表1】
【0047】
【発明の効果】
本発明の効果の一つは、カールが顕著に抑制されたポリイミド・金属箔積層体を提供することを可能としたことである。
本発明の効果の一つは、カールが顕著に抑制されて平滑であるのみならず、接着性、耐熱性、強度にも顕著に優れたポリイミド・金属箔積層体を提供することを可能としたことである。
本発明の効果の一つは、カールが顕著に抑制されて平滑であるのみならず、接着性、耐熱性、強度にも顕著に優れたポリイミド・金属箔積層体を使用することにより、高品質、かつ、高信頼性のフレキシブルプリント配線基板を提供することを可能としたことである。
本発明の効果の一つは、カールが顕著に抑制されて平滑であるのみならず、接着性、耐熱性、強度にも顕著に優れたポリイミド・金属箔積層体を使用することにより、高品質、かつ、高信頼性のフレキシブルプリント配線基板の生産性を向上することを可能としたことである。
Claims (7)
- 金属箔層と、化学式(I)で表される繰り返し単位を有するポリイミドを含む、単層のポリイミド層と、を含み、
前記ポリイミド層は、前記金属箔上にポリアミド酸溶液を塗布した後、乾燥およびイミド化させて得られ、かつ
前記ポリイミド層の引張弾性率は、5.2〜5.9GPaである、ポリイミド・金属箔積層体。
Zは、置換されていてもよい4価の芳香族基、または化学式(II)からなる群より選ばれた少なくとも1種の基である。
但し、化学式(II)において、Yは、直接結合、メチレン基、イソプロピリデン基、六フッ素化されたイソプロピリデン基、チオ基、スルフィニル基、スルホニル基およびオキシドからなる群より選ばれた基を表す。
rは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン基、フェニル基を表す。aは、0または1〜4の整数を表す。) - 前記金属箔が、銅箔である、請求項1または2に記載のポリイミド・金属箔積層体。
- 金属箔上に、ポリアミド酸溶液を塗布した後、乾燥およびイミド化させることにより、化学式(I)で表される繰り返し単位を有するポリイミドを含む、単層のポリイミド層を形成するステップを含み、
前記ポリイミド層の引張弾性率は、5.2〜5.9GPaである、ポリイミド・金属箔積層体の製造方法。
Zは、置換されていてもよい4価の芳香族基、または化学式(II)からなる群より選ばれた少なくとも1種の基である。
但し、化学式(II)において、Yは、直接結合、メチレン基、イソプロピリデン基、六フッ素化されたイソプロピリデン基、チオ基、スルフィニル基、スルホニル基およびオキシドからなる群より選ばれた基を表す。
rは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン基、フェニル基を表す。aは、0または1〜4の整数を表す。) - 前記金属箔が、銅箔である、請求項4または5に記載のポリイミド・金属箔積層体の製造方法。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載のポリイミド・金属箔積層体を含む、フレキシブルプリント配線基板。
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