JP4666430B2 - 液晶表示素子及びそれを用いた液晶表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半透過反射型又は反射型液晶表示装置に用いられる、プラスチック基板液晶セル(以下、プラスチックセルと略称することがある。)を使用した中小型液晶表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置(以下、LCDと略称することがある。)は、卓上電子計算機、電子時計、パーソナルコンピューター、ワードプロセッサ等に使用されており、近年急激にその需要が増加している。LCDの用途も広がってきており、近年は携帯電話やPDA等の携帯用情報機器の普及に伴い、液晶表示パネルの軽量化、薄型化が要求されており、中小型液晶ディスプレイ用として、ガラス基板の代わりにプラスチック基板を用いた液晶表示パネルの開発と実用化が行われている。
【0003】
しかし、従来のガラス基板を使用した液晶セルの場合は、加熱加湿耐久性試験において偏光板の寸法が変化しても、ガラスの可とう性が低いため反りは発生しにくいが、プラスチック基板を使用した液晶セルの場合、プラスチック基板の可とう性が高く、偏光板の変形に伴い液晶セルも変形して反りが発生する。特に、加湿条件下等で液晶表示素子にストレスがかかった時に、反りが発生することによって、液晶表示における表示ムラが生じたり、最終製品の組立工程での作業性に不具合が生じるという問題がある。とりわけ、加熱加湿耐久性試験の前後において、|1.5|mm以上の反りが発生することが大きな問題となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、フロント側とリア側の偏光板の偏光子に貼り合わせる保護層の厚みを変え、かつ、厚み比を一定範囲内とすることにより、加熱加湿耐久性に優れ、液晶セルの反り量の少ない液晶表示素子を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明の液晶表示素子は、プラスチック基板液晶セルを使用した半透過反射型又は反射型液晶表示装置に用いられるパネルサイズ4インチ以下の液晶表示素子であって、前記液晶セルに対しフロント側の偏光板の偏光子に貼り合せる保護層単体の厚さAと、リア側の偏光板の偏光子に貼り合せる保護層単体の厚さBとが、以下の関係を有することを特徴とする。
A/B<0.65
【0006】
フロント側とリア側で、偏光板の偏光子に貼り合わせる保護層の厚みを変え、かつ、厚み比を上記範囲内とすることにより、プラスチック基板液晶セルの反りを解消することができる。
【0007】
前記液晶表示素子においては、前記液晶表示素子を40℃、92%RH条件下で120時間放置した後の、前記フロント側の偏光板単体のMD方向(縦方向)の寸法変化率Cと、前記リア側の偏光板単体のMD方向(縦方向)の寸法変化率Dとが、以下の関係を有することが好ましい。
C>D
【0008】
加湿条件下で、プラチックセルを使用した反射型液晶表示素子の反りが発生する原因の一つとして、セルのリア側に半透過反射板又は反射板を用いていることが挙げられる。この半透過反射板又は反射板があるため、セルに貼り合せた部材のフロント側とリア側の構成が非対称となり、加湿条件下にセルを放置したとき、セルのフロント側、リア側にそれぞれ異なる力がかかりセルに反りが発生する。従って、セルのフロント側、リア側の偏光板の加湿条件下での寸法変化率が上記関係を有する場合は、非対称であるがゆえに発生しているプラスチックセルの反りが解消され、加湿条件下での120時間試験後のプラスチックセル(パネルサイズ4インチ以下)の反り量を|1.5|mm以下(±1.5mm以下)に抑えることが出来る。
【0009】
また、前記液晶表示素子においては、前記フロント側の偏光板の保護層単体の厚さAが20〜200μm、前記リア側の偏光板の保護層単体の厚さBが70〜220μmであることが好ましい。
【0010】
また、前記液晶表示素子においては、前記寸法変化率Cが0.6〜1.6%、前記寸法変化率Dが0.1〜0.6%であることが好ましい。寸法変化率が上記範囲外の場合は、プラスチック基板液晶セルの反り量が1.5mm以上となる。
【0011】
また、前記液晶表示素子においては、前記フロント側及び/又はリア側の偏光板に、位相差板を積層することが好ましい。位相差板を積層することにより、STN液晶表示装置の液晶層の複屈折によって生じる着色を補償することができる。
【0012】
また、前記液晶表示素子においては、前記リア側の偏光板に、反射板又は半透過反射板を積層することが好ましい。半透過反射版又は反射版を積層することにより、フロント側とリア側にかかる力のバランスが良好となり、プラスチックセルの反り量を少なくすることができる。
【0013】
また、前記液晶表示素子においては、液晶表示における表示ムラを抑制する観点から、前記液晶表示素子を40℃、92%RH条件下で120時間放置した後の、前記プラスチック基板液晶セルの反り量は|1.5|mm以下であることが好ましく、特に1.0mm以下であることが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、プラスチック基板液晶セルを使用した半透過反射型又は反射型液晶表示装置において、パネルサイズ4インチ以下の液晶表示素子を用いる場合、フロント側偏光板の偏光子の両側に貼り合せる保護層の片側の厚さ(保護層単体の厚さ)Aと、リア側偏光板の偏光子の両側に貼り合せる保護層の片側の厚さ(保護層単体の厚さ)Bとの関係を、A/B<0.65とすることにより、液晶セルの反り量の少ない液晶表示素子を提供するものである。
【0015】
本発明において、フロント側の偏光板の保護層の厚さAとリア側の偏光板の保護層の厚さBとの関係は、A/Bが小さすぎる場合、フロント側、リア側それぞれの偏光板の厚み差が大きくなりすぎ、偏光板の挙動差も大きくなり、反り量が増大する傾向があることから、0.2<A/B<0.65であることが特に好ましい。
【0016】
また、本発明の液晶表示素子を、40℃、92%RH条件下で120時間放置した後の、フロント側の偏光板単体のMD方向(縦方向)の寸法変化率Cと、前記リア側の偏光板単体のMD方向(縦方向)の寸法変化率Dとが、C>Dの関係を有することが好ましい。この寸法変化率は小さければ小さい程好ましいが、偏光板単体のMD方向(縦方向)の寸法変化率は一般に0.1〜1.6%である。従って、本発明における前記フロント側の寸法変化率Cは0.6〜1.6%、前記リア側の寸法変化率Dは0.1〜0.6%の範囲であることが好ましい。
【0017】
次に本発明の液晶表示素子の構成を説明する。図1は、本発明の液晶表示素子の構成例を示す断面図である。図1において、1はフロント側の偏光板の偏光子、2a、2bはフロント側の偏光板の保護層、3はプラスチック基板、4はリア側の偏光板の偏光子、5a、5bはリア側の偏光板の保護層、6はフロント側の偏光板、7は液晶セル、8はリア側の偏光板である。
【0018】
本発明において用いる偏光板は、二色性物質含有のポリビニルアルコール系偏光フィルム等からなる偏光子の両側に、適宜の接着層を介して保護層となる透明保護フィルムを積層したものからなる。
【0019】
偏光子(偏光フィルム)としては、例えば、ポリビニルアルコールや部分ホルマール化ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系ポリマーからなる、厚さが75μm以下のフィルムに、膨潤処理、ヨウ素や二色性染料等よりなる二色性物質による染色処理、延伸処理、架橋処理を、適宜な順序や方式で施し、乾燥したものを用いることができる。染色、架橋、延伸の各工程は、別々に行う必要はなく同時に行ってもよい。一般に、自然光を入射させると直線偏光を透過するものであればよく、特に、光透過率や偏光度に優れるものが好ましい。偏光子の厚さは、2〜35μm、特に7〜30μmが好ましい。
【0020】
ポリビニルアルコール系ポリマーとしては、酢酸ビニルを重合した後にケン化したものや、酢酸ビニルに少量の不飽和カルボン酸、不飽和スルホン酸等の共重合可能なモノマーを共重合したもの等が挙げられる。フィルムの水への溶解度の点から、平均重合度は500〜1万が好ましく、より好ましくは1000〜6000であり、ケン化度は75モル%以上が好ましく、より好ましくは98モル%以上である。
【0021】
偏光子(偏光フィルム)の両側に設ける透明保護層となる保護フィルム素材としては、適宜な透明フィルムを用いることができる。中でも、透明性や機械的強度、熱安定性や水分遮蔽性等に優れるポリマーからなるフィルム等が好ましく用いられる。そのポリマーの例としては、例えば、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、あるいはアクリル系、ウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型ないし紫外線硬化型の樹脂等が挙げられる。なかでも、透明性の点より、アセテート系樹脂が好ましく、特に偏光特性や耐久性などの点より、表面をアルカリなどでケン化処理したトリアセチルセルロースフィルムが好ましい。
【0022】
偏光板の偏光子の両側に貼り合せる保護層単体の厚さは、フロント側は20〜200μmであり、好ましくは30〜120μmである。20μm未満の場合は耐久性が低下し、200μmを超えると透明性が低下する。一方、リア側は、70〜220μmであり、好ましくは50〜120μmである。70μm未満の場合は耐久性が問題となり、220μmを超えると透過率の不足が問題となる。
【0023】
なお、偏光子の両側に保護層を設ける場合、その表裏で異なるポリマー等からなる保護層とすることもでき、フロント側、リア側で異なるポリマー等からなる保護層とすることもできる。
【0024】
保護層に用いられる透明保護フィルムは、本発明の目的を損なわない限り、ハードコート処理や反射防止処理、スティッキングの防止や拡散ないしアンチグレア等を目的とした処理などを施したものであってもよい。ハードコート処理は、偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばシリコーン系、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り性等に優れる硬化皮膜を、透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。
【0025】
一方、反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止は隣接層との密着防止を目的に、アンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止などを目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式等による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて透明保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。
【0026】
前記の透明微粒子には、例えば平均粒径が0.5〜20μmのシリカやアルミナ、チタニアやジルコニア、酸化錫や酸化インジウム、酸化カドミウムや酸化アンチモン等が挙げられ、導電性を有する無機系微粒子を用いてもよく、また、架橋又は未架橋のポリマー粒状物等からなる有機系微粒子等を用いることもできる。透明微粒子の使用量は、透明樹脂100質量部あたり2〜70質量部、特に5〜50質量部が一般的である。
【0027】
透明微粒子配合のアンチグレア層は、透明保護フィルムそのものとして、あるいは透明保護フィルム表面への塗工層等として設けることができる。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角を拡大するための拡散層(視角補償機能など)を兼ねるものであってもよい。なお、上記の反射防止層やスティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、それらの層を設けたシートなどからなる光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0028】
前記偏光子(偏光フィルム)と保護層である透明保護フィルムとの接着処理は、特に限定されるものではないが、例えば、ビニルアルコール系ポリマーからなる接着剤、あるいは、ホウ酸やホウ砂、グルタルアルデヒドやメラミン、シュウ酸などのビニルアルコール系ポリマーの水溶性架橋剤から少なくともなる接着剤等を介して行うことができる。これにより、湿度や熱の影響で剥がれにくく、光透過率や偏光度に優れるものとすることができる。かかる接着層は、水溶液の塗布乾燥層等として形成されるものであるが、その水溶液の調製に際しては必要に応じて、他の添加剤や、酸等の触媒も配合することができる。
【0029】
偏光板は、実用に際して他の光学層と積層した光学部材として用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過反射板、位相差板(1/2波長板、1/4波長板などのλ板も含む)、視角補償フィルムや輝度向上フィルムなどの、液晶表示装置等の形成に用いられることのある適宜な光学層の1層又は2層以上を用いることができる。前述した偏光子と保護層からなる偏光板に、更に位相差板が積層されている楕円偏光板又は円偏光板、前述した偏光子と保護層からなる偏光板に、更に視角補償フィルムが積層されている偏光板、あるいは、前述した偏光子と保護層からなる偏光板に、更に輝度向上フィルムが積層されている偏光板とすることもできる。特に、前述した偏光子と保護層からなる偏光板に、更に位相差板が積層されている楕円偏光板又は円偏光板、更に反射板又は半透過反射板が積層されている反射型偏光板又は半透過反射板型偏光板が好ましい。
【0030】
位相差板は、直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられ、特に、直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変える位相差板としては、いわゆる1/4波長板(λ/4板とも言う)が用いられる。1/2波長板(λ/2板とも言う)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
【0031】
位相差板の具体例としては、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンやその他のポリオレフィン、ポリアリレート、ポリアミド等のポリマーからなるフィルムを延伸処理した複屈折性フィルムや液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどが挙げられる。また、傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮性フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理したものや液晶ポリマーを斜め配向させたものなどが挙げられる。フィルムの厚さは、使用目的に応じた位相差などにより適宜に決定することができるが、一般には1mm以下、好ましくは1〜500μm、特に好ましくは5〜300μmである。
【0032】
楕円偏光板は、スーパーツイストネマチック(STN)型液晶表示装置の液晶層の複屈折によって生じた着色(青又は黄)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示にする場合などに有効に用いられる。更に、3次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向 から見た際に生じる着色も補償(防止)することができ好ましい。円偏光板は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合などに有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。
【0033】
視角補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明に見えるように視角を広げるためのフィルムであり、このような視角補償フィルムとしては、トリアセチルセルロースフィルムなどにディスコティック液晶を塗工したものや、位相差板が用いられる。通常の位相差板には、その面方向に一軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視角補償フィルムとして用いられる位相差板には、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムとか、面方向に一軸に延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した傾斜配向ポリマーフィルムのような2方向延伸フィルムなどが用いられる。傾斜配向フィルムとしては、前述したように、例えばポリマーフィルムに熱収縮性フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどが挙げられる。位相差板の素材原料ポリマーは、先の位相差板で説明したポリマーと同様のものが用いられる。偏光板との積層についても同様である。
【0034】
輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶層、特にコレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものが用いられる。
【0035】
次に、反射型偏光板又は半透過反射板型偏光板を用いた反射型又は半透過型液晶表示素子を説明する。図2は、本発明の反射型液晶表示素子の構成例を示す断面図である。図2において、1はフロント側の偏光板の偏光子、2a、2bはフロント側の偏光板の保護層、3はプラスチック基板、4はリア側の偏光板の偏光子、5a、5bはリア側の偏光板の保護層、6はフロント側の偏光板、7は液晶セル、8はリア側の偏光板、9は位相差板、10は反射板である。
【0036】
反射板は、それを偏光板に設けて反射型偏光板を形成するためのものであり、反射型偏光板は、通常液晶セルの裏側に設けられ、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成でき、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。
【0037】
反射型偏光板の形成は、必要に応じ上記した透明保護フィルム等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。その具体例としては、必要に応じマット処理した透明保護フィルムの片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどが挙げられる。
【0038】
また、微粒子を含有させて表面を微細凹凸構造とした上記の透明保護フィルムの上に、その微細凹凸構造を反映させた反射層を有する反射型偏光板なども挙げられる。表面微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させて指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点などを有する。透明保護フィルムの表面微細凹凸構造を反映させた微細凹凸構造の反射層の形成は、例えば真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式などの適宜な方式で金属を透明保護フィルムの表面に直接付設する方法などにより行うことができる。
【0039】
また、反射板は、上記した偏光板の透明保護フィルムに直接付設する方式に代えて、その透明保護フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シートなどとして用いることもできる。反射板の反射層は、通常、金属を含むので、その反射面がフィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態は、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点などから好ましい。
【0040】
一方、半透過反射型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過反射型偏光板は、液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成できる。即ち、半透過反射型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的暗い雰囲気下においても内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。半透過反射板としては、金属膜からなるハーフミラーや、パール顔料を含有した合成樹脂板等を用いることができる。
【0041】
偏光板と位相差板、反射板又は半透過反射板との積層は、液晶表示装置の製造工程で順次別個に積層する方式にても行うことができるが、予め両者を積層することにより、品質の安定性や積層作業性等に優れ、液晶表示装置の製造効率を向上させることができる利点がある。なお、粘着層には、例えば、アクリル系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系等の適宜なものを用いることができ、中でも、耐熱性や光学特性等の点よりアクリル系のものが好ましく用いられる。なお、偏光板と位相差板との積層に際して、それらの透過軸や進相軸等の光軸の配置角度については特に限定はなく、適宜決定することができる。
【0042】
また、偏光板は、偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層又は3層以上の光学層とを積層したものからなっていてもよい。従って、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組合せた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであってもよい。2層又は3層以上の光学層を積層した光学部材は、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるものであるが、予め積層して光学部材としたものは、品質の安定性や組立作業性等に優れて液晶表示装置などの製造効率を向上させることができる利点がある。なお、積層には、上記の粘着層等の適宜な接着手段を用いることができる。
【0043】
前述した偏光板等の光学部材には、液晶セル等の他部材と接着するための粘着層を設けることもできる。その粘着層は、アクリル系等の従来に準じた適宜な粘着剤にて形成することができる。特に、吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性などの点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層であることが好ましい。また、微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層などとすることもできる。粘着層は必要に応じて必要な面に設ければよく、例えば、偏光子と保護層からなる偏光板の保護層について言及するならば、必要に応じて、保護層の片面又は両面に粘着層を設ければよい。なお、粘着層には、例えば、アクリル系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系等の適宜なものを用いることができる。
【0044】
偏光板や光学部材に設けた粘着層が表面に露出する場合には、その粘着層を実用に供するまでの間、汚染防止等を目的にセパレータにて仮着カバーすることが好ましい。セパレータは、上記の透明保護フィルム等に準じた適宜な薄葉体に、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤による剥離コートを設ける方式などにより形成することができる。
【0045】
なお、上記の偏光板や光学部材を形成する偏光フィルムや透明保護フィルム、光学層や粘着層などの各層は、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの適宜な方式により紫外線吸収能を持たせたものなどであってもよい。
【0046】
本発明のプラスチック基板液晶セルを使用した液晶表示素子は、半透過反射型又は反射型液晶表示装置の形成に用いられる。従って、本発明の液晶表示素子に用いられる液晶セルは、例えば薄膜トランジスタ型に代表されるアクティブマトリクス駆動型のもの、ツイストネマチック型やスーパーツイストネマチック型に代表される単純マトリクス駆動型のものなど、適宜なタイプの液晶セルを用いたものであってもよい。また、液晶セルの両側に偏光板や光学部材を設ける場合、本発明の要件を満足する限り、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えばプリズムアレイシートやレンズアレイシート、光拡散板やバックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0047】
【実施例】
実施例1
厚み75μmのポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ素とヨウ化カリウム配合の染色浴に浸漬して染色処理と3倍程度の延伸処理を行い、ホウ酸とヨウ化カリウムを添加した酸性浴中で総延伸倍率が5倍となるように延伸処理と架橋処理を行った。その後乾燥させ、厚み27μmの偏光子を得た。この偏光子の両面に、7質量%のポリビニルアルコール水溶液からなる接着剤を塗布し、フロント側に用いる偏光子の接着面に苛性ソーダ水溶液でケン化処理した厚さ50μmのトリアセチルセルロースフィルムを貼り合わせ、リア側に用いる偏光子の接着面に苛性ソーダ水溶液でケン化処理した厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムを貼り合わせて、2枚の偏光板を作製した。また、各偏光板の片側には、セルと貼りあわせる為に、厚み25μmの粘着剤を塗布した。
次に、作製した偏光板を3インチのサイズに2枚切り出し、リア側に用いる偏光板の片面に、銀を蒸着させたPETフィルムからなる半透過反射層を積層し、半透過反射偏光板を作製した。
プラスチックセル基板を使用した液晶表示用セル(3インチ 、プラスチック基板の厚さ400μm)を準備し、これのフロント側に偏光板もしくは円偏光板を貼り合わせ、リア側に半透過反射型偏光板もしくは円偏光板を半透過反射層がセルとは反対側になるように貼り合わせた。
【0048】
実施例2、比較例1〜2
フロント側の偏光板とリア側偏光板に貼り合わせるトリアセチルセルロースフィルムの厚みを、それぞれ表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして実験を行った。
【0049】
実施例、比較例で作製した液晶表示素子の性能を、以下の方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0050】
〔寸法変化率〕
上記の方法で作製した偏光板を、50mm×50mmの大きさに裁断し(試験片の個数2)、温度40℃、湿度92%RHの加湿条件下120時間放置した。試験片の試験前の縦方向(MD)の寸法(Lb)と、試験後の縦方向(MD)の寸法(La)を測定し、以下の式から寸法変化率(%)を求めた。
寸法変化率=[(La−Lb)/Lb]×100
【0051】
〔反り量〕
液晶セルに偏光板を貼り合せた状態で、40℃、92%RH条件下で120時間放置し、試験後の液晶セルの反り量(mm)を測定した。
【0052】
【表1】
【0053】
表1の結果から明らかなように、本発明の液晶表示素子は、液晶セルのフロント側の偏光板の偏光子に貼り合せる保護層の厚みAと、リア側の偏光板の偏光子に貼り合せる保護層の厚みBの関係が、A/B<0.65を満足する組合せになっている。また、フロント側の偏光板とリア側の偏光板の加湿条件下での寸法変化率がフロント側の方が大きく、フロント側の偏光板反り量>リア側の偏光板反り量の関係になっている。その結果、プラスチックセル基板を使用した液晶表示セルは、加湿条件下120h試験後の液晶セルの反り量の絶対値がl.5mm以下と小さいことがわかる。
【0054】
また、実施例1で作製した液晶表示素子を実装し、液晶表示装置を形成した。その結果、この表示装置は、加熱履歴による液晶セルの反り量が少ないため、長時間使用してもパネル端部の色抜けや、パネル面内の色相のバラツキが殆ど見られなかった。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、プラスチック基板液晶セルを使用した中小型半透過反射型又は反射型液晶表示装置において、フロント側偏光板の偏光子の両側に貼り合せる保護層の片側の厚み(保護層単体の厚み)Aと、リア側偏光板の偏光子の両側に貼り合せる保護層の片側の厚み(保護層単体の厚み)Bとの関係を、A/B<0.65とすることにより、加熱加湿耐久性が良好で、プラスチックセルの反りを解消することができる。そのため、最終製品の組立工程における作業性が向上し、液晶表示パネル面内の色相のバラツキやパネル色相の変化等、表示ムラをなくすことができる。よって、その工業的価値は大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液晶表示素子を示す断面図。
【図2】本発明の反射型液晶表示素子を示す断面図。
【符号の説明】
1 フロント側偏光板の偏光子
2a、2b フロント側偏光板の保護層
3 プラスチック基板
4 リア側偏光板の偏光子
5a、5b リア側偏光板の保護層
6 フロント側偏光板
7 液晶セル
8 リア側偏光板
9 位相差板
10 反射板
Claims (7)
- プラスチック基板液晶セルを使用し、前記セルのリア側に半透過反射板又は反射板を用いた半透過反射型又は反射型液晶表示装置に用いられるパネルサイズ4インチ以下の液晶表示素子であって、前記液晶セルに対しフロント側の偏光板の偏光子に貼り合せる保護層単体の厚さAと、リア側の偏光板の偏光子に貼り合せる保護層単体の厚さBとが、以下の関係を有することを特徴とする液晶表示素子。
0.2<A/B<0.65 - 前記液晶表示素子を40℃、92%RH条件下で120時間放置した後の、前記フロント側の偏光板単体のMD方向(縦方向)の寸法変化率Cと、前記リア側の偏光板単体のMD方向(縦方向)の寸法変化率Dとが、以下の関係を有する請求項1に記載の液晶表示素子。
C>D - 前記寸法変化率Cが0.6〜1.6%であり、前記寸法変化率Dが0.1〜0.6%である請求項2に記載の液晶表示素子。
- 前記フロント側の偏光板の保護層単体の厚さAが20〜200μmであり、前記リア側の偏光板の保護層単体の厚さBが70〜220μmである請求項1〜3のいずれかに記載の液晶表示素子。
- 前記フロント側及び/又はリア側の偏光板に、位相差板を積層した請求項1〜4のいずれかに記載の液晶表示素子。
- 前記リア側の偏光板に、反射板又は半透過反射板を積層した請求項1〜5のいずれかに記載の液晶表示素子。
- 前記液晶表示素子を40℃、92%RH条件下で120時間放置した後の、前記プラスチック基板液晶セルの反り量が|1.5mm|以下である請求項1〜6のいずれかに記載の液晶表示素子。
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