JP4666268B2 - 液体噴射装置及び液体噴射方法 - Google Patents

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Description

本発明は、液体噴射ヘッドに形成されたノズル開口から被処理物に向けて液滴を噴射する液体噴射装置及び方法に関する。
従来の液体噴射装置の代表例としては、画像記録用のインクジェット式記録ヘッドを備えたインクジェット式記録装置がある。その他の液体噴射装置としては、例えば液晶ディスプレー等のカラーフィルタ製造に用いられる色材噴射ヘッドを備えた装置、有機ELディスプレー、面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッドを備えた装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドを備えた装置、精密ピペットとしての試料噴射ヘッドを備えた装置等が挙げられる。
液体噴射装置の代表例であるインクジェット式記録装置は、印刷時の騒音が比較的小さく、しかも小さなドットを高い密度で形成できるため、昨今においてはカラー印刷を含めた多くの印刷に使用されている。
このようなインクジェット式記録装置は、一般に、キャリッジ上に搭載されて記録紙等の記録媒体(被処理物)の幅方向(ヘッド走査方向)に往復移動するインクジェット式記録ヘッドと、記録媒体をヘッド走査方向と直交する方向(送り方向)に移動させる送り機構と、を備えており、さらに、記録ヘッドに対向して配置され、送り機構により搬送される記録媒体を裏面から支持して記録ヘッドに対する記録媒体の位置を規定するプラテンを備えている。
このインクジェット式記録装置においては、印刷データに対応して記録ヘッドより記録媒体に対してインク滴を吐出させることで印刷が行われる。そして、キャリッジ上に搭載される記録ヘッドを、例えばブラック、イエロー、シアン、マゼンタの各色のインクの吐出が可能なものとすることにより、ブラックインクによるテキスト印刷ばかりでなく、各インクの吐出割合を変えることにより、フルカラー印刷を可能としている。
特開2002−113860号公報
上述したインクジェット式記録装置においては、記録中の記録媒体の浮き上がりやインク吸収時の変形によって記録媒体と記録ヘッドとが接触することを回避するために、記録媒体と記録ヘッドとの間には、ある程度の間隙(「プラテンギャップ」と呼ばれる。)が設けられている。また、近年の高画質化の要求に応えるために、記録ヘッドから吐出されるインク滴のサイズがますます小さくなっている。小さなサイズのインク滴は空気の粘性抵抗によって速度が急激に低下するので、記録ヘッドから吐出されたインク滴が記録媒体に到達せずにミスト化する可能性がある。
そして、ミスト化したインク滴は機内を汚損し、電気回路やリニアスケールへのインクミストの付着によって動作不良が発生したり、インクカートリッジに堆積してユーザーの手を汚すという問題を引き起こす。
さらに、小さなサイズのインク滴の場合、ミスト化することなく記録媒体に到達し得たとしても、速度が低下しているために着弾位置が安定せず、画質が劣化する(ボケた画像、ざらついた画像になる)恐れがあった。
小さなサイズのインク滴を記録媒体まで到達させるために吐出時の初速を高くする方法も考えられるが、あまり初速を高くすると、インク滴が引き伸ばされてメイン部分とサテライト部分とに分離してしまう場合がある。
このようにサテライトが発生するような状態で印刷を実行すると、メイン部分の着弾位置とサテライト部分の着弾位置とがヘッド走査方向にずれるため、記録媒体に形成されるドットが横長となり、画質のシャープさが落ちて画質が劣化する。さらに、メイン部分とサテライト部分とが個体間差や温度環境差により、或いはプラテンギャップによって合体又は分離して色目が変わってしまうという問題がある。また、小さなサイズのサテライト部分がミスト化して機内汚染を引き起こす可能性もある。
また、インク滴が飛行中にメイン部分とサテライト部分に分離する場合、メイン部分の速度は吐出時の初速の上昇に伴って上昇する傾向があるが、サテライト部分の速度は、吐出時の初速が上昇しても変化しない傾向がある。このため、吐出時の初速を高くすればするほど、メイン部分とサテライト部分との間の速度差が大きくなって、メイン部分の着弾位置とサテライト部分の着弾位置とのズレが大きくなり、上述の画質の劣化や色目の変化の問題が深刻化してしまう。
本発明は、上述した事情を考慮してなされたものであって、その目的とするところは、液体噴射ヘッドから被処理物に向けて吐出された液滴について、サテライトの発生を防止すると共に液滴のミスト化を防止することができる液体噴射装置及び方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明による液体噴射装置は、ノズル開口が形成されたノズルプレートと、前記ノズル開口に連通する圧力室と、前記圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生素子と、を有する液体噴射ヘッドと、前記圧力発生素子を駆動して前記ノズル開口から液滴を吐出させる駆動手段と、被処理物を介して前記液体噴射ヘッドの反対側に位置し、前記被処理物と接触しない導電性部材と、前記ノズルプレートと前記導電性部材との間に電圧を印加して前記ノズルプレートと前記被処理物との間に電位差を発生させ、電荷を帯びた状態で前記ノズル開口から吐出された液滴に対して前記被処理物の方向へのクーロン力を作用させる電位差発生手段と、を備え、前記駆動手段は、前記電位差発生手段による前記クーロン力が作用しなければ前記被処理物上の正規の位置に到達し得ない程度の速度にて液滴を前記ノズル開口から吐出させ、前記電位差発生手段は、前記ノズルプレート及び前記導電性部材のそれぞれの電圧極性を反転させる極性反転手段を有することを特徴とする。
また、好ましくは、前記極性反転手段は、一定の周期毎に電圧の極性を反転させる。
また、好ましくは、前記液体噴射ヘッドを走査させる走査機構をさらに有し、前記一定の周期は、前記走査機構による前記液体噴射ヘッドの走査動作の各パスに対応している。
また、好ましくは、前記極性反転手段は、前記液体噴射ヘッドからの液滴の吐出数が所定値に達した時点で電圧の極性を反転させる。
また、好ましくは、前記極性反転手段は、グランド電圧に対して極性が反転した正負逆の電圧間を切り換える。
上記課題を解決するために、本発明は、ノズル開口が形成されたノズルプレートと、前記ノズル開口に連通する圧力室と、前記圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生素子と、を有する液体噴射ヘッドを用いて被処理物に対して液体を噴射させる方法であって、前記被処理物を介して前記液体噴射ヘッドの反対側に位置し、前記被処理物と接触しない導電性部材と前記ノズルプレートとの間に電圧を印加して、前記ノズルプレートと前記被処理物との間に電位差を発生させる工程と、前記圧力発生素子を駆動して前記ノズル開口から液滴を吐出させる液滴吐出工程と、を備え、電荷を帯びた状態で前記ノズル開口から液滴を吐出することにより、前記ノズル開口から吐出された液滴に対して前記被処理物の方向へのクーロン力が作用し、液滴は、前記クーロン力が作用しなければ前記被処理物上の正規の位置に到達し得ない程度の速度にて前記ノズル開口から吐出され、前記ノズルプレート及び前記導電性部材のそれぞれの電圧極性を所定のタイミングで反転させることを特徴とする。
以上述べたように本発明によれば、ノズル開口から吐出された液滴は被処理物の方向へのクーロン力を受けるので、飛行中の液滴の分離を防止するために液滴の初速を小さく設定した場合でも、液滴を被処理物まで確実に到達させることが可能であり、これにより、サテライトの発生を防止すると共に、液滴が被処理物に到達できずにミスト化してしまうことを防止することができる。
以下、本発明による液体噴射装置及び方法の一実施形態としてのインクジェット式記録装置及び方法について、図面を参照して説明する。
本実施形態によるインクジェット式記録装置は、ノズル開口に連通する圧力室に対応して設けられた圧力発生素子により、圧力室内のインクに圧力変動を生じさせてノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッドの一種)を備えている。圧力発生素子としては、例えば圧電振動子を用いることができる。
図1及び図2は、本実施形態によるインクジェット式記録装置の概略構成を示した斜視図であり、図3は同インクジェット式記録装置のプラテン及びその周囲を拡大して示した図である。図1中符号1はキャリッジであり、このキャリッジ1はキャリッジモータ2により駆動されるタイミングベルト3を介して、ガイド部材4に案内されてプラテン5の軸方向に往復移動されるように構成されている。プラテン5は、記録紙6(被処理物の一種)をその裏面から支持して記録ヘッド12に対する記録紙6の位置を規定する。
キャリッジ1、キャリッジモータ2、タイミングベルト3、及びガイド部材4は、インクジェット式記録ヘッド12をキャリッジ1と共にヘッド走査方向に走査させる走査機構を構成している。
インクジェット式記録ヘッド12は、複数のノズル開口165のそれぞれに連通する複数の圧力室173を有し、キャリッジ1の記録紙6に対向する側に搭載されている。また、キャリッジ1には、記録ヘッド12にインクを供給するインクカートリッジ7が着脱可能に装着されている。なお、記録ヘッド12の詳細な構造については後述する。
インクジェット式記録装置の非印刷領域であるホームポジション(図1中、右側)にはキャップ部材13が配置されており、このキャップ部材13はキャリッジ1に搭載された記録ヘッド12がホームポジションに移動した時に、記録ヘッド12のノズル形成面に押し当てられてノズル形成面との間に密閉空間を形成するように構成されている。そして、キャップ部材13の下方には、キャップ部材13により形成された密閉空間に負圧を与えるためのポンプユニット10が配置されている。
キャップ部材13の印刷領域側の近傍には、ゴムなどの弾性板を備えたワイピング手段11が記録ヘッド12の移動軌跡に対して例えば水平方向に進退できるように配置されていて、キャリッジ1がキャップ部材13側に往復移動するに際して、必要に応じて記録ヘッド12のノズル形成面を払拭することができるように構成されている。
本実施形態によるインクジェット式記録装置は、さらに、記録ヘッド12により印刷処理が行われる記録紙6をヘッド走査方向に対して直交する送り方向に間欠的に搬送する送り機構を備えている。
図3に示したように送り機構は、記録紙6を挟み込んでプラテン5上へ送るために互いに対向配置された給紙ローラ14a、14bと、印刷された記録紙6を排出するために互いに対向配置された排紙ローラ15a、15bと、を備えている。なお、給紙ローラ14a及び排紙ローラ15aは従動ローラであり、給紙ローラ14b及び排紙ローラ15bは駆動ローラである。
図3から分かるようにプラテン5には、給紙方向(送り方向)Fと平行な方向に延びる複数のインク受け縦開口5c、5d、5e、5fと、給紙方向Fに対して直交するヘッド走査方向に延びる複数のインク受け横開口5a、5bとが形成されている。
複数のインク受け縦開口5c、5d、5e、5fのうち、一対のインク受け開口5cはA3サイズの記録紙6の左右端がそれぞれ真上を通過するように配置されており、一対のインク受け開口5dはB4サイズの記録紙6の左右端がそれぞれ真上を通過するように配置されており、一対のインク受け開口5eはA4サイズの記録紙6の左右端がそれぞれ真上を通過するように配置されており、一対のインク受け開口5fはB5サイズの記録紙6の左右端がそれぞれ真上を通過するように配置されている。
また、複数のインク受け横開口5a、5bは、給紙側に配置されている給紙側インク受け開口5aと、排紙側に配置されている排紙側インク受け開口5bとからなる。
これらのインク受け開口5a、5b、5c、5d、5e、5fには、いずれも、記録ヘッド12から吐出されたインクを吸収する吸収部材16が配置されている。
図4は、本実施形態によるインクジェット式記録装置の機能ブロック図である。図4に示したようにこの記録装置はプリンタコントローラ61と、プリントエンジン62とを備えている。プリンタコントローラ61は、ホストコンピュータ(図示せず)等から印刷データ等を受信するインターフェース63と、各種データの記憶等を行うRAM64と、各種データ処理のための制御ルーチン等を記憶したROM65と、CPU等から成る制御部82と、発振回路66と、駆動信号を発生する駆動信号発生回路(駆動信号発生手段)83と、ドットパターンデータ(ビットマップデータ)に展開された印刷データや駆動信号等をプリントエンジン62に送信するためのインターフェース67とを備えている。
この他に、プリンタコントローラ61は、記録媒体の一種であるメモリカード76を着脱可能に保持し、記録媒体保持部として機能するカードスロット77と、メモリカード76に記録された情報を制御部82に送信するカードインターフェース78とを備えている。上記のメモリカード76には、駆動信号の波形に関するデータが記録されている。なお、メモリカード76以外の記録媒体としては、例えば、フロッピーディスク、ハードディスク、光磁気ディスク等も使用することができる。
そして、制御部82はコンピュータの一種であり、メモリカード76に記録された駆動信号の波形データやROM65に記録された制御ルーチン等を参照してインク滴の吐出制御を行う。
インターフェース63は、例えばキャラクタコード、グラフィック関数、イメージデータのいずれか1つのデータ又は複数のデータからなる印刷データをホストコンピュータから受信する。また、インターフェース63は、ホストコンピュータに対してビジー(BUSY)信号やアクノレッジ(ACK)信号等を出力することができる。
RAM64は、受信バッファ、中間バッファ、出力バッファ及びワークメモリ(図示せず)等として利用されるものである。受信バッファにはホストコンピュータからの印刷データが一時的に記憶され、中間バッファには中間コードデータが記憶され、出力バッファにはドットパターンデータが展開される。
ROM65は、制御部82によって実行される各種制御ルーチン、フォントデータ、及びグラフィック関数等を記憶している。
なお、このROM65には、変更されずに継続的に使用される制御ルーチン(制御プログラム)が記憶されている。そして、駆動信号の波形に関するデータ等、バージョンアップや変更が予定されるものは、上記のメモリカード76に記録される。
また、制御部82は、メモリカード76から読み取った駆動信号の波形に関するデータに基づいて駆動信号発生回路83を制御して、印刷モードに応じて所定の駆動信号を生成させる。
プリントエンジン62は、記録ヘッド12を主走査方向に駆動するステッピングモータ80、記録紙を移送する紙送りモータ81、及び記録ヘッド12の電気駆動系71とから構成されている。記録ヘッド12の電気駆動系71は、シフトレジスタ72、ラッチ回路73、レベルシフタ74、スイッチ75、及び圧電振動子161等を備えている。なお、制御部82及び駆動信号発生回路83は、圧電振動子161を駆動して圧力室173内のインクに圧力変動を生じさせ、これによりノズル開口165から記録紙6に向けてインク滴を吐出させるための駆動手段を構成する。
なお、制御部82としては、例えば単体で直接的に記録装置に接続されたホストコンピュータや、また、ネットワークを介して接続された多数のコンピュータのうちの1つのコンピュータを使用することもできる。
図5は、記録ヘッド12の駆動回路の主要部を示しており、図4中のシフトレジスタ72、ラッチ回路73、レベルシフタ74、スイッチ75、及び圧電振動子161は、それぞれ、記録ヘッド12の各ノズル開口165(図4参照)に対応した素子72A〜N、73A〜N、74A〜N、75A〜N、161A〜Nから構成されている。そして、例えばアナログスイッチとして構成される各スイッチ素子75A〜Nに加わるビットデータが「1」の場合は、駆動振動が圧電振動子161A〜Nに直接印可され、各圧電振動子161A〜Nは駆動信号の信号波形に応じて変形する。逆に、各スイッチ素子75A〜Nに加わるビットデータが「0」の場合は、各圧電振動子161A〜Nへの駆動信号が遮断され、各圧電振動子161A〜Nは直前の電荷を保持する。
図6は、図1に示したインクジェット式記録装置の記録ヘッド12の構造を示した断面図である。
この記録ヘッド12は、合成樹脂製の基台163と、この基台163の前面(図の左側に相当する)に貼着された流路ユニット164とを備えている。そして、この流路ユニット164は、ノズル開口165が穿設されたノズルプレート166と、振動板167と、流路形成板168と、シート176とから構成されている。
基台163は、前面と背面に開放された収容空間169が設けられたブロック状部材である。この収容空間169には、固定基板170に固定された圧電振動子161が収容されている。
ノズルプレート166は、副走査方向に沿って多数のノズル開口165が穿設された薄い板状部材である。各ノズル開口165は、ドット形成密度に対応した所定ピッチで開設されている。振動板167及びシート176によって、圧電振動子161が当接する厚肉部としてのアイランド部171と、このアイランド部171の周囲を囲うように設けられ、弾性を有する薄肉部172とが形成されている。
アイランド部171は、一つのノズル開口165に一つのアイランド部171が対応するように、所定ピッチで多数設けられている。
流路形成板168は、圧力室173、共通インク室174、及び、これらの圧力室173と共通インク室174とを連通するインク供給口175を形成するための開口部が設けられている。
そして、ノズルプレート166を流路形成板168の前面に配設するとともに、振動板167及びシート176を背面側に配設し、ノズルプレート166と振動板167及びシート176とにより流路形成板168を挟んだ状態で、接着等により一体化されて流路ユニット164が形成されている。
この流路ユニット164では、ノズル開口165の背面側に圧力室173が形成され、この圧力室173の背面側に振動板167のアイランド部171が位置している。また、圧力室173と共通インク室174とがインク供給口175によって連通している。
圧電振動子161の先端は、アイランド部171に背面側から当接され、この当接状態で圧電振動子161が基台163に固定されている。また、この圧電振動子161には、フレキシブルケーブルを介して駆動信号(COM)や印刷データ(SI)等が供給される。
縦振動モードの圧電振動子161は、充電されると電界と直交する方向に収縮し、放電すると電界と直交する方向に伸長する特性を有する。したがって、この記録ヘッド12では、充電されることにより圧電振動子161は後方に収縮し、この収縮に伴ってアイランド部171が後方に引き戻され、収縮していた圧力室173が膨張する。この膨張に伴って共通インク室174のインクがインク供給口175を通って圧力室173内に流入する。一方、放電することにより圧電振動子161は前方に向けて伸長し、弾性板のアイランド部171が前方に押されて圧力室173が収縮する。この収縮に伴って圧力室173内のインク圧力が高くなる。
本実施形態においては、プラテン5に設けられた吸収部材16は導電性材料を含んでおり、例えば、ポリエチレン又はポリウレタンにカーボン等の導電性材料を混入させて発泡形成されている。或いは、ポリエチレン又はポリウレタンの発泡材に導電性材料をメッキにて付与して吸収部材16を形成することもできる。或いは、ポリエチレン又はポリウレタンの発泡材にNa、K、Cl、HCO などのイオンを有する電解質液体を含浸させることもできる。電解質液体としてインクを用いても良い。
そして、本実施形態によるインクジェット式記録装置は、図7に示したように、記録紙6に印加するプラスの電圧を発生させるための電源20と、この電源20からの電圧を記録紙6に印加するために記録紙6の裏面に当接される当接部21と、ノズルプレート166を接地するための配線22とを備えている。これらの電源20、当接部21、及び配線22は、ノズルプレート166と記録紙6との間に電位差を発生させる電位差発生手段30を構成する。
このように電位差発生手段30によって記録紙6にプラスの電圧を印加すると共にノズルプレート166を接地することにより、図8に示したように記録紙6にプラスの電荷が誘起されると共にノズルプレート166にマイナスの電荷が誘起される。これにより、図8に矢印で示したように記録紙6からノズルプレート166へ向かう電気力線が発生する。
また、ノズルプレート166にマイナスの電荷が誘起されることにより、ノズル開口165のインクメニスカス部分にもマイナスの電荷が誘起される。この電荷量は平行平板コンデンサの式を用いて簡単に計算することができる。インク滴は、ノズル開口165の面積分のマイナス電荷を持ってノズル開口165から吐出され、ノズルプレート166と記録紙6との間に発生している電界により、記録紙6の方向へのクーロン力Fを受ける。
さらに、本実施形態おいては、制御部82及び駆動信号発生回路83を含む上述の駆動手段は、ノズル開口165から吐出されたインク滴が飛行中に複数の部分に分離しない程度の低い速度であって、電位差発生手段30によるクーロン力Fがインク滴に作用しなければ記録紙6上の正規の位置に到達し得ない程度の速度にてインク滴をノズル開口165から吐出させる。
そして、ノズル開口165から吐出された、電荷を帯びたインク滴は、ノズルプレート166と記録紙6との間に存在する電界により記録紙6の方向へのクーロン力Fを受けるので、インク滴を記録紙6まで確実に到達させることができる。これにより、サテライトの発生を防止するためにインク滴の初速を小さく設定しているにも関わらず、インク滴が記録紙6に到達できずにミスト化してしまうようなことがない。
本実施形態の一変形例としては、図9に示したように、記録紙6を帯電させるための帯電手段23によって電位差発生手段30を構成することもできる。帯電手段23は、コロナ放電器又は帯電ブラシで構成されている。帯電手段23とノズルプレート166とはグランドを共通にしており、帯電手段23により記録紙6を帯電させることにより、ノズルプレート166と記録紙6との間に電位差が形成される。また、本変形例においては、記録紙6の印刷終了領域に対応する部分から静電気を除去するための除電手段24が、記録ヘッド12から見て記録紙6の送り方向の下流側に設けられている。この除電手段24は除電ブラシで構成されており、この除電ブラシは記録紙6の裏面に当接される。
本変形例においても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、図10は上記実施形態の他の変形例を示している。
この変形例においては、プラテン5に設けられた吸収部材16が導電性部材から成り、電源20からのプラスの電圧は吸収部材16に印加されるようになっている。即ち、電源20によって、ノズルプレート166と吸収部材16との間に電位差が形成される。さらに、本変形例においては、処理中の記録紙6を電気的に浮いた状態に保持するための保持手段が設けられている。具体的には、この保持手段は、図10に示したように処理中の記録紙6に接触する各部材、例えば給紙ローラ14a、14bの少なくとも表面に設けられた絶縁材料18a、18bを有する。
このように保持手段18a、18bによって処理中の記録紙6を電気的に浮いた状態にすることによって、記録紙6は単に誘電体として作用することになる。このため、ノズルプレート166と吸収部材16との間に記録紙6が挿入された場合、吸収部材16から出発した電気力線は記録紙6で遮断されることなくノズルプレート166まで延びる。
本変形例においても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、図10に示した上記変形例においては、導電性の吸収部材16に電圧を印加するようにしたが、図11及び図12に示したように、吸収部材16の上面に導電性材料から成る格子状部材25を隣接配置して、この格子状部材25に対して電源20からプラスの電圧を印加することもできる。格子状部材25は、ヘッド走査方向に沿って延在する導電性部分25aと、送り方向に沿って延在する導電性部分25bと、を有する。本変形例の場合には、必ずしも吸収部材16に導電性材料を含ませる必要はなく、例えば、スポンジ、ベルイータ等で吸収部材16を形成することができる。また、導電性の吸収部材16と導電性材料からなる部材とを併用しても良い。この場合、導電性材料からなる部材は格子状である必要はなく、ワイヤー状であっても良い。また、吸収部材16の上面ではなく下面に隣接配置しても良い。
本変形例においても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、上記実施形態及び上記各変形例において、電位差発生手段30により発生させる電界の向きを逆にすることもできる。即ち、図13に示したように当接部21及び配線26により、ノズルプレート166ではなく記録紙6を接地すると共に、電源20によりノズルプレート166にマイナスの電圧を印加しても良い。
なお、上記実施形態及び各変形例において、電位差発生手段30により発生させる電界の向きを逆にすることもできる。即ち、ノズルプレート166側をプラス電位とし、記録紙6側をマイナス電位とすることもできる。
また、図14は、図7に示した実施形態の他の変形例を示している。
本変形例においては、電位差発生手段30が、グランド電圧に対して極性が反転した正負逆の電源20A、20Bを備えている。さらに、電位差発生手段30は、印刷時に所定のタイミングで電源20Aと電源20Bとを切り換える極性反転手段31を備えている。
極性反転手段31によって電源20Aと20Bとを切り換える際の所定のタイミングとしては、例えば、一定の周期毎に電圧の極性を反転させる方法があり、好ましくは、走査機構による記録ヘッド12の走査動作の各パスに対応して切り換える。或いは、記録ヘッド12からのインク滴の吐出数が所定値に達した時点で電圧の極性を反転させることもできる。
このように本変形例においては、ノズルプレート166と記録紙6との間に電位差を発生させるための電圧の極性を、極性反転手段31によって所定のタイミングで反転させるようにしたので、帯電したインク滴が記録紙6に付着することにより記録紙6の電位が中和されて記録紙6がノズルプレート166と同電位になってしまうことを防止することができる。
即ち、ノズルプレート166と記録紙6との間に電位差を発生させるための電圧の極性を不変とした場合には、初期状態においてはノズルプレート166と記録紙6との間に電位差が生じているが、帯電したインク滴が印刷の最初のパスで記録紙6に付着すると記録紙6の電位が中和されてしまう。このため、ノズルプレート166と記録紙6との間に十分な電位差が確保できなくなり、2パス目以降では電界によるインク滴の加速効果が十分に得られない可能性がある。
これに対して本変形例は、ノズルプレート166と記録紙6との間に電位差を発生させるための電圧の極性を極性反転手段31によって所定のタイミングで反転させるようにしたので、記録紙6の電位の中和によるインク滴の加速効果の低減を防止することができる。
また、図15は、図9に示した例の一変形例を示しており、この変形例においても、図14に示した例と同様に極性反転手段31が設けられており、この極性反転手段31によって、帯電手段23により記録紙6に帯電させる電荷の正負を、上述した所定のタイミングにて切り換えることができる。
本変形例においても、図14に示した例と同様の効果、即ち記録紙6の電位の中和によるインク滴の加速効果の低減を防止するという効果を得ることができる。
また、図16は、図10に示した例の一変形例を示しており、この変形例においても、図14に示した例と同様に極性反転手段31が設けられており、この極性反転手段31によって、ノズルプレート166と導電性の吸収部材16との間に電位差を発生させるための電圧の極性を、上述した所定のタイミングで反転させることができる。
本変形例においても、図14に示した例と同様の効果、即ち記録紙6の電位の中和によるインク滴の加速効果の低減を防止するという効果を得ることができる。
また、図17は、図11及び図12に示した例の一変形例を示しており、この変形例においても、図14に示した例と同様に極性反転手段31が設けられており、この極性反転手段31によって、ノズルプレート166と導電性の格子状部材25との間に電位差を発生させるための電圧の極性を、上述した所定のタイミングで反転させることができる。
本変形例においても、図14に示した例と同様の効果、即ち記録紙6の電位の中和によるインク滴の加速効果の低減を防止するという効果を得ることができる。
また、図18は、図13に示した例の一変形例を示しており、この変形例においても、図14に示した例と同様に極性反転手段31が設けられており、この極性反転手段31によって、ノズルプレート166と当接部21との間に電位差を発生させるための電圧の極性を、上述した所定のタイミングで反転させることができる。
本変形例においても、図14に示した例と同様の効果、即ち記録紙6の電位の中和によるインク滴の加速効果の低減を防止するという効果を得ることができる。
また、図19は、図10に示した例の一変形例を示しており、この変形例においては、ノズルプレート166と導電性部材からなる吸収部材16夫々に極性反転手段31a及び31bが設けられており、この極性反転手段31a及び31bによって、ノズルプレート166と吸収部材16との間の電位差を発生させるための電圧の極性を、上述した所定のタイミングで反転させることができる。
本変形例においては、電位差を発生させるために1個の単一極性の電源を用いても、図10に示した例と同様の効果、即ち記録紙6の電位の中和によるインク滴の加速効果の低減を防止するという効果を得ることができ、コストダウンを図ることが出来る。
本発明による液体噴射装置の一実施形態としてのインクジェット式記録装置の概略構成を示した斜視図。 本発明による液体噴射装置の一実施形態としてのインクジェット式記録装置の概略構成を示した他の斜視図。 図1及び図2に示したインクジェット式記録装置のプラテン及びその周囲を拡大して示した図。 図1に示したインクジェット式記録装置の機能ブロック図。 図1に示したインクジェット式記録装置の記録ヘッド駆動回路の主要部を示した回路図。 図1に示したインクジェット式記録装置の記録ヘッドの構造を示す断面図。 図1及び図2に示したインクジェット式記録装置の電位差発生手段及びその周囲を拡大して示した断面図。 図1及び図2に示したインクジェット式記録装置の電位差発生手段によって生じる電気力線の様子を示した図。 図7に示した実施形態の一変形例を示した断面図。 図7に示した実施形態の他の変形例を示した平面図。 図7に示した実施形態の他の変形例を示した平面図。 図11に示した例の断面図。 図7に示した実施形態の他の変形例を示した断面図。 図7に示した実施形態の他の変形例を示した断面図。 図9に示した例の一変形例を示した断面図。 図10に示した例の一変形例を示した断面図。 図11及び図12に示した例の一変形例を示した断面図。 図13に示した例の一変形例を示した断面図。 図10に示した例の一変形例を示した断面図。
符号の説明
1 キャリッジ
5 プラテン
6 記録紙(被処理物)
12 インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)
14a、14b 給紙ローラ
16 吸収部材
18a、18b 絶縁材料
20、20A、20B 電源
21 当接部
22、26 配線
23 帯電手段
24 除電手段
25 導電性の格子状部材
30 電位差発生手段
31、31a、31b 極性反転手段
82 制御部
83 駆動信号発生回路
161 圧電振動子(圧力発生素子)
165 ノズル開口
166 ノズルプレート
173 圧力室

Claims (6)

  1. ノズル開口が形成されたノズルプレートと、前記ノズル開口に連通する圧力室と、前記圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生素子と、を有する液体噴射ヘッドと、
    前記圧力発生素子を駆動して前記ノズル開口から液滴を吐出させる駆動手段と、
    被処理物を介して前記液体噴射ヘッドの反対側に位置し、前記被処理物と接触しない導電性部材と、
    前記ノズルプレートと前記導電性部材との間に電圧を印加して前記ノズルプレートと前記被処理物との間に電位差を発生させ、電荷を帯びた状態で前記ノズル開口から吐出された液滴に対して前記被処理物の方向へのクーロン力を作用させる電位差発生手段と、を備え、
    前記駆動手段は、前記電位差発生手段による前記クーロン力が作用しなければ前記被処理物上の正規の位置に到達し得ない程度の速度にて液滴を前記ノズル開口から吐出させ、
    前記電位差発生手段は、前記ノズルプレート及び前記導電性部材のそれぞれの電圧極性を反転させる極性反転手段を有することを特徴とする液体噴射装置。
  2. 前記極性反転手段は、一定の周期毎に前記電圧極性を反転させる請求項記載の液体噴射装置。
  3. 前記液体噴射ヘッドを走査させる走査機構をさらに有し、
    前記一定の周期は、前記走査機構による前記液体噴射ヘッドの走査動作の各パスに対応している請求項記載の液体噴射装置。
  4. 前記極性反転手段は、前記液体噴射ヘッドからの液滴の吐出数が所定値に達した時点で電圧の極性を反転させる請求項記載の液体噴射装置。
  5. 前記極性反転手段は、グランド電圧に対して極性が反転した正負逆の電圧間を切り換える請求項乃至のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
  6. ノズル開口が形成されたノズルプレートと、前記ノズル開口に連通する圧力室と、前記圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生素子と、を有する液体噴射ヘッドを用いて被処理物に対して液体を噴射させる方法であって、
    前記被処理物を介して前記液体噴射ヘッドの反対側に位置し、前記被処理物と接触しない導電性部材と前記ノズルプレートとの間に電圧を印加して、前記ノズルプレートと前記被処理物との間に電位差を発生させる工程と、
    前記圧力発生素子を駆動して前記ノズル開口から液滴を吐出させる液滴吐出工程と、を備え、
    電荷を帯びた状態で前記ノズル開口から液滴を吐出することにより、前記ノズル開口から吐出された液滴に対して前記被処理物の方向へのクーロン力が作用し、
    液滴は、前記クーロン力が作用しなければ前記被処理物上の正規の位置に到達し得ない程度の速度にて前記ノズル開口から吐出され、
    前記ノズルプレート及び前記導電性部材のそれぞれの電圧極性を所定のタイミングで反転させることを特徴とする液体噴射方法。
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