以下、本発明の実施の形態を図面に示す実施例を基に詳細に説明する。以下の実施形態では、溝の概念はホールも含む。また、図において、矢印UP、矢印LOが示されている場合は、それぞれ上方向、下方向を示すものとし、上下の表現をした場合は、上記各矢印に対応しているものとする。また、第2実施形態以下では、既に説明した構成要素と同様のものには同じ符号を付してその説明を省略する。
[第1実施形態]
まず、第1実施形態について説明する。本実施形態では、記録媒体の一例として記録紙Pで説明をする。また、記録紙Pのインクジェット記録装置10における搬送方向を副走査方向として矢印Sで表し、その搬送方向と直交する方向を主走査方向として矢印Mで表す。
最初にインクジェット記録装置10の概要を説明する。図1で示すように、インクジェット記録装置10は、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各インクジェット記録ユニット30(インクジェット記録ヘッド32)を搭載するキャリッジ12を備えている。このキャリッジ12の記録紙Pの搬送方向上流側には一対のブラケット14が突設されており、そのブラケット14には円形状の開孔14A(図2参照)が穿設されている。そして、その開孔14Aに、主走査方向に架設されたシャフト20が挿通されている。
また、主走査方向の両端側には、主走査機構16を構成する駆動プーリー(図示省略)と従動プーリー(図示省略)が配設されており、その駆動プーリーと従動プーリーに巻回されて、主走査方向に走行するタイミングベルト22の一部がキャリッジ12に固定されている。したがって、キャリッジ12は主走査方向に往復移動可能に支持される構成である。
また、このインクジェット記録装置10には、画像印刷前の記録紙Pを束にして入れておく給紙トレイ26が設けられており、その給紙トレイ26の上方には、インクジェット記録ヘッド32によって画像が印刷された記録紙Pが排出される排紙トレイ28が設けられている。そして、給紙トレイ26から1枚ずつ給紙された記録紙Pを所定のピッチで副走査方向へ搬送する搬送ローラー及び排出ローラーからなる副走査機構18が設けられている。
その他、このインクジェット記録装置10には、印刷時において各種設定を行うコントロールパネル24と、メンテナンスステーション(図示省略)等が設けられている。メンテナンスステーションは、キャップ部材、吸引ポンプ、ダミージェット受け、クリーニング機構等を含んで構成されており、吸引回復動作、ダミージェット動作、クリーニング動作等のメンテナンス動作を行うようになっている。
また、各色のインクジェット記録ユニット30は、図2で示すように、インクジェット記録ヘッド32と、それにインクを供給するインクタンク34とが一体に構成されたものであり、インクジェット記録ヘッド32の下面中央のインク吐出面32Aに形成された複数のノズル56(図3参照)が、記録紙Pと対向するようにキャリッジ12上に搭載されている。したがって、インクジェット記録ヘッド32が主走査機構16によって主走査方向に移動しながら、記録紙Pに対してノズル56から選択的にインク滴を吐出することにより、所定のバンド領域に対して画像データに基づく画像の一部が記録される。
そして、主走査方向への1回の移動が終了すると、記録紙Pは、副走査機構18によって副走査方向に所定ピッチ搬送され、再びインクジェット記録ヘッド32(インクジェット記録ユニット30)が主走査方向(前述とは反対方向)に移動しながら、次のバンド領域に対して画像データに基づく画像の一部が記録されるようになっており、このような動作を複数回繰り返すことによって、記録紙Pに画像データに基づく全体画像がフルカラーで記録される。
以上のような構成のインクジェット記録装置10において、次にインクジェット記録ヘッド32について詳細に説明する。
図3はインクジェット記録ヘッド32の構成を示す概略平面図であり、図4−1は図3のX−X線概略断面図である。この図3、図4で示すように、インクジェット記録ヘッド32には、インクタンク34と連通するインク供給ポート36が設けられており、そのインク供給ポート36から注入されたインク110は、インクプール室38に貯留される。
インクプール室38は天板40と隔壁42とによって、その容積が規定されており、インク供給ポート36は、天板40の所定箇所に複数、列状に穿設されている。また、列をなすインク供給ポート36の間で、天板40よりも内側のインクプール室38内には、圧力波を緩和する樹脂膜製エアダンパー44(後述する感光性ドライフィルム96)が設けられている。
天板40の材質は、例えばガラス、セラミックス、シリコン、樹脂等、インクジェット記録ヘッド32の支持体になり得る強度を有する絶縁体であれば何でもよい。また、天板40には、後述する駆動IC60へ通電するための金属配線90が設けられている。この金属配線90は、樹脂膜92で被覆保護されており、インク110による侵食が防止されるようになっている。
隔壁42は樹脂(後述する感光性ドライフィルム98)で成形され、インクプール室38を矩形状に仕切っている。また、インクプール室38は、圧電素子46と、その圧電素子46によって上下方向に撓み変形させられる振動板48を介して、圧力室50と上下に分離されている。つまり、圧電素子46及び振動板48が、インクプール室38と圧力室50との間に配置される構成とされ、インクプール室38と圧力室50とが同一水平面上に存在しないように構成されている。
したがって、圧力室50を互いに接近させた状態に配置することが可能であり、56をマトリックス状に高密度に配設することが可能となっている。また、このような構成にしたことにより、キャリッジ12の主走査方向への1回の移動で、広いバンド領域に画像を形成することができるので、その走査時間が短くて済む。すなわち、少ないキャリッジ12の移動回数及び時間で記録紙Pの全面に亘って画像形成を行う高速印刷が実現可能となっている。
なお、図4−2に示すように、圧力室50の側壁面51は、上方に向けて徐々に広がるテーパ状にされており、全ての圧力室50は形状が良好で均一な寸法で形成されている。また、図4−3に示すように、ノズル56の側壁面57も、上方に向けて徐々に広がるテーパ状になっており、圧力室50と同様、全てのノズル56は形状が良好で均一な寸法で形成されている。
圧電素子46は、圧力室50毎に振動板48の上面に接着されている。振動板48は、SUS等の金属で成形され、少なくとも上下方向に弾性を有し、圧電素子46に通電されると(電圧が印加されると)、上下方向に撓み変形する(変位する)構成になっている。なお、振動板48は、ガラス等の絶縁性材料であっても差し支えはない。圧電素子46の下面には一方の極性となる下部電極52が配置され、圧電素子46の上面には他方の極性となる上部電極54が配置されている。そして、この上部電極54に駆動IC60が金属配線86により電気的に接続されている。
また、圧電素子46は、低透水性絶縁膜(SiOx膜)80で被覆保護されている。圧電素子46を被覆保護している低透水性絶縁膜(SiOx膜)80は、水分透過性が低くなる条件で着膜するため、水分が圧電素子46の内部に侵入して信頼性不良となること(PZT膜内の酸素を還元することにより生ずる圧電特性の劣化)を防止できる。なお、下部電極52と接触する金属(SUS等)製の振動板48は、低抵抗なGND配線としても機能するようになっている。
更に、圧電素子46は、その低透水性絶縁膜(SiOx膜)80の上面が、樹脂膜82で被覆保護されている。これにより、圧電素子46において、インク110による侵食の耐性が確保されるようになっている。また、金属配線86も、樹脂保護膜88で被覆保護され、インク110による侵食が防止されるようになっている。
また、圧電素子46の上方は、樹脂膜82で被覆保護され、樹脂保護膜88が被覆されない構成になっている。樹脂膜82は、柔軟性がある樹脂層であるため、このような構成により、圧電素子46(振動板48)の変位阻害が防止されるようになっている(上下方向に好適に撓み変形可能とされている)。つまり、圧電素子46上方の樹脂層は、薄い方がより変位阻害の抑制効果が高くなるので、樹脂保護膜88を被覆しないようにしている。
駆動IC60は、隔壁42で規定されたインクプール室38の外側で、かつ天板40と振動板48との間に配置されており、振動板48や天板40から露出しない(突出しない)構成とされている。したがって、インクジェット記録ヘッド32の小型化が実現可能となっている。
また、その駆動IC60の周囲は樹脂材58で封止されている。この駆動IC60を封止する樹脂材58の注入口40Bは、図5で示すように、製造段階における天板40において、各インクジェット記録ヘッド32を仕切るように格子状に複数個穿設されており、後述する圧電素子基板70と流路基板72とを結合(接合)後、樹脂材58によって封止された(閉塞された)注入口40Bに沿って天板40を切断することにより、マトリックス状のノズル56(図3参照)を有するインクジェット記録ヘッド32が1度に複数個製造される構成になっている。
また、この駆動IC60の下面には、図4、図6で示すように、複数のバンプ62がマトリックス状に所定高さ突設されており、振動板48上に圧電素子46が形成された圧電素子基板70の金属配線86にフリップチップ実装されるようになっている。したがって、圧電素子46に対する高密度接続が容易に実現可能であり、駆動IC60の高さの低減を図ることができる(薄くすることができる)。これによっても、インクジェット記録ヘッド32の小型化が実現可能となっている。
また、図3において、駆動IC60の外側には、バンプ64が設けられている。このバンプ64は、天板40に設けられる金属配線90と、圧電素子基板70に設けられる金属配線86とを接続しており、当然ながら、圧電素子基板70に実装された駆動IC60の高さよりも高くなるように設けられている。
したがって、インクジェット記録装置10の本体側から天板40の金属配線90に通電され、その天板40の金属配線90からバンプ64を経て金属配線86に通電され、そこから駆動IC60に通電される構成である。そして、その駆動IC60により、所定のタイミングで圧電素子46に電圧が印加され、振動板48が上下方向に撓み変形することにより、圧力室50内に充填されたインク110が加圧されて、ノズル56からインク滴が吐出する構成である。
インク滴を吐出するノズル56は、圧力室50毎に1つずつ、その所定位置に設けられている。圧力室50とインクプール室38とは、圧電素子46を回避するとともに、振動板48に穿設された貫通孔48Aを通るインク流路66と、圧力室50から図4において水平方向へ向かって延設されたインク流路68とが連通することによって接続されている。このインク流路68は、インクジェット記録ヘッド32の製造時に、インク流路66とのアライメントが可能なように(確実に連通するように)、予め実際のインク流路66との接続部分よりも少し長めに設けられている。
(製造方法)
以上のような構成のインクジェット記録ヘッド32において、次に、その製造工程について、図7乃至図13を基に詳細に説明する。図7で示すように、このインクジェット記録ヘッド32は、圧電素子基板70と流路基板72とを別々に作成し、両者を結合(接合)することによって製造される。そこで、まず、圧電素子基板70の製造工程について説明するが、圧電素子基板70には、流路基板72よりも先に天板40が結合(接合)される。
図8(A)で示すように、まず、貫通孔76Aが複数穿設されたガラス製の第1支持基板76を用意する。第1支持基板76は撓まないものであれば何でもよく、ガラス製に限定されるものではないが、ガラスは硬い上に安価なので好ましい。この第1支持基板76の作製方法としては、ガラス基板のフェムト秒レーザー加工や、感光性ガラス基板(例えば、HOYA株式会社製PEG3C)を露光・現像する等が知られている。
そして、図8(B)で示すように、その第1支持基板76の上面(表面)に接着剤78を塗布し、図8(C)で示すように、その上面に金属(SUS等)製の振動板48を接着する。このとき、振動板48の貫通孔48Aと第1支持基板76の貫通孔76Aとは重ねない(オーバーラップさせない)ようにする。なお、振動板48の材料として、ガラス等の絶縁性基板を用いても差し支えない。
ここで、振動板48の貫通孔48Aは、インク流路66の形成用とされる。また、第1支持基板76に貫通孔76Aを設けるのは、後工程で薬液(溶剤)を第1支持基板76と振動板48との界面に流し込むためで、接着剤78を溶解して、その第1支持基板76を振動板48から剥離するためである。更に、第1支持基板76の貫通孔76Aと振動板48の貫通孔48Aとを重ねないようにするのは、製造中に使用される各種材料が第1支持基板76の下面(裏面)から漏出しないようにするためである。
次に、図8(D)で示すように、振動板48の上面に積層された下部電極52をパターニングする。具体的には、金属膜スパッタ(膜厚500Å〜3000Å)、ホトリソグラフィー法によるレジスト形成、パターニング(エッチング)、酸素プラズマによるレジスト剥離である。この下部電極52が接地電位となる。次に、図8(E)で示すように、下部電極52の上面に、圧電素子46の材料であるPZT膜と上部電極54を順にスパッタ法で積層し、図8(F)で示すように、圧電素子46(PZT膜)及び上部電極54をパターニングする。
具体的には、PZT膜スパッタ(膜厚3μm〜15μm)、金属膜スパッタ(膜厚500Å〜3000Å)、ホトリソグラフィー法によるレジスト形成、パターニング(エッチング)、酸素プラズマによるレジスト剥離である。下部及び上部の電極材料としては、例えば圧電素子であるPZT材料との親和性が高く、耐熱性がある、Au、Ir、Ru、Pt等が挙げられる。
その後、図8(G)で示すように、上面に露出している下部電極52と上部電極54の上面に低透水性絶縁膜(SiOx膜)80を積層し、更に、その低透水性絶縁膜(SiOx膜)80の上面に、耐インク性と柔軟性を有する樹脂膜82、例えばポリイミド系、ポリアミド系、エポキシ系、ポリウレタン系、シリコン系等の樹脂膜を積層して、それらをパターニングすることで、圧電素子46と金属配線86を接続するための開口84(コンタクト孔)を形成する。
具体的には、Chemical Vapor Deposition(CVD)法にてダングリングボンド密度が高い低透水性絶縁膜(SiOx膜)80を着膜する、感光性ポリイミド(例えば、富士フイルムアーチ社製の感光性ポリイミド Durimide7520)を塗布・露光・現像することでパターニングを行う、CF4系ガスを用いたReactive Ion Etching(RIE)法で上記感光性ポリイミドをマスクとしてSiOx膜をエッチングする、という加工を行う。なお、ここでは低透水性絶縁膜としてSiOx膜を用いたが、SiNx膜、SiOxNy膜等であってもよい。
次いで、図8(H)で示すように、開口84内の上部電極54と樹脂膜82の上面に金属膜を積層し、金属配線86をパターニングする。具体的には、スパッタ法にてAl膜(厚さ1μm)を着膜する、ホトリソグラフィー法でレジストを形成する、塩素系のガスを用いたRIE法にてAl膜をエッチングする、酸素プラズマにてレジスト膜を剥離する、という加工を行い、上部電極54と金属配線86(Al膜)とを接合する。なお、図示しないが、下部電極52の上にも開口84が設けられ、上部電極52と同様に金属配線86と接続されている。
そして更に、図8(I)で示すように、金属配線86及び樹脂膜82の上面に樹脂保護膜88(例えば、富士フイルムアーチ社製の感光性ポリイミド Durimide7320)を積層してパターニングする。この樹脂保護膜88は、樹脂膜82と同種の樹脂材料で構成される。また、このとき、圧電素子46の上方で、金属配線86がパターニングされていない部位には、樹脂保護膜88を積層しないようにする(樹脂膜82のみが積層されるようにする)。
ここで、圧電素子46の上方(樹脂膜82の上面)に樹脂保護膜88を積層しないのは、振動板48(圧電素子46)の変位(上下方向の撓み変形)が阻害されるのを防止するためである。また、圧電素子46の上部電極54から引き出す(上部電極54に接続される)金属配線86が樹脂製の保護膜88で被覆されると、その樹脂保護膜88は、金属配線86が積層される樹脂膜82と同種の樹脂材料で構成されているため、金属配線86を被覆するそれらの接合力が強固になり、界面からのインク110の侵入による金属配線86の腐食を防止することができる。
なお、この樹脂保護膜88は、隔壁42(感光性ドライフィルム98)とも同種の樹脂材料となっているため、この隔壁42(感光性ドライフィルム98)に対する接合力も強固になっている。したがって、その界面からのインク110の侵入がより一層防止される構成である。また、このように、同種の樹脂材料で構成されると、それらの熱膨張率が略等しくなるので、熱応力の発生が少なくて済む利点もある。
次に、図8(J)で示すように、金属配線86にバンプ62を介して駆動IC60をフリップチップ実装する。このとき、駆動IC60は、予め半導体ウエハプロセスの終りに実施されるグラインド工程にて、所定の厚さ(70μm〜300μm)に加工されている。駆動IC60が厚すぎると、隔壁42のパターニングやバンプ64の形成が困難になったりする。
駆動IC60を金属配線86にフリップチップ実装するためのバンプ62の形成方法には、電界メッキ、無電界メッキ、ボールバンプ、スクリーン印刷等が適用できる。こうして、圧電素子基板70が製造され、この圧電素子基板70に、例えばガラス製の天板40が結合(接合)される。なお、以下の図9では、説明の便宜上、配線形成面を下面として説明するが、実際の工程では上面になる。
ガラス製天板40の製造においては、図9(A)で示すように、天板40自体が支持体となる程度の強度を確保できる厚み(0.3mm〜1.5mm)を持っているので、別途支持体を設ける必要がない。まず、図9(B)で示すように、天板40の下面に金属配線90を積層してパターニングする。具体的には、スパッタ法にてAl膜(厚さ1μm)を着膜する、ホトリソグラフィー法でレジストを形成する、塩素系のガスを用いたRIE法にてAl膜をエッチングする、酸素プラズマにてレジスト膜を剥離する、という加工である。
そして、図9(C)で示すように、金属配線90が形成された面に樹脂膜92(例えば、富士フイルムアーチ社製の感光性ポリイミド Durimide7320)を積層してパターニングする。なお、このとき、一部の金属配線90には、バンプ64を接合するため、樹脂膜92を積層しないようにする。
次に、図9(D)で示すように、天板40の金属配線90が形成された面に、ホトリソグラフィー法でレジストをパターニングする。金属配線90が形成されていない面は、保護用レジスト94で全面を覆う。ここで、保護用レジスト94を塗布するのは、次のウエット(SiO2)エッチング工程で、天板40が金属配線90を形成した面の裏面からエッチングされるのを防止するためである。なお、天板40に感光性ガラスを用いた場合には、この保護用レジスト94の塗布工程を省略することができる。
次いで、図9(E)で示すように、天板40にHF溶液によるウエット(SiO2)エッチングを行い、その後、保護用レジスト94を酸素プラズマにて剥離する。そして、図9(F)で示すように、天板40に形成された開口40A部分に感光性ドライフィルム96(例えば、日立化成工業株式会社製Raytec FR−5025:25μm厚)を露光・現像によりパターニングする(架設する)。この感光性ドライフィルム96が圧力波を緩和するエアダンパー44となる。
そして次に、図9(G)で示すように、樹脂膜92に感光性ドライフィルム98(100μm厚)を積層して露光・現像によりパターニングする。この感光性ドライフィルム98がインクプール室38を規定する隔壁42となる。なお、隔壁42は、感光性ドライフィルム98に限定されるものではなく、樹脂塗布膜(例えば、化薬マイクロケム社のSU−8レジスト)としてもよい。このときには、スプレー塗布装置にて塗布し、露光・現像をすればよい。
そして最後に、図9(H)で示すように、樹脂膜92が積層されていない金属配線90にバンプ64をメッキ法等で形成する。このバンプ64が駆動IC60側の金属配線86と電気的に接続するため、図示するように、感光性ドライフィルム98(隔壁42)よりもその高さが高くなるように形成されている。
こうして、天板40の製造が終了したら、図10(A)で示すように、この天板40を圧電素子基板70に被せて、両者を熱圧着により結合(接合)する。すなわち、感光性ドライフィルム98(隔壁42)を感光性樹脂層である樹脂保護膜88に接合し、バンプ64を金属配線86に接合する。
このとき、感光性ドライフィルム98(隔壁42)の高さよりもバンプ64の高さの方が高いので、感光性ドライフィルム98(隔壁42)を樹脂保護膜88に接合することにより、バンプ64が金属配線86に自動的に接合される。つまり、半田バンプ64は高さ調整が容易なので(潰れやすいので)、感光性ドライフィルム98(隔壁42)によるインクプール室38の封止とバンプ64の接続が容易にできる。
隔壁42とバンプ64の接合が終了したら、図10(B)で示すように、駆動IC60に封止用樹脂材58(例えば、エポキシ樹脂)を注入する。すなわち、天板40に穿設されている注入口40B(図5参照)から樹脂材58を流し込む。このように樹脂材58を注入して駆動IC60を封止すると、駆動IC60を水分等の外部環境から保護できるとともに、圧電素子基板70と天板40との接着強度を向上させることができ、更には、後工程でのダメージ、例えば、できあがった圧電素子基板70をダイシングによってインクジェット記録ヘッド32に分割する際の水や研削片によるダメージを回避することができる。
次に、図10(C)で示すように、第1支持基板76の貫通孔76Aから接着剤剥離溶液を注入して接着剤78を選択的に溶解させることで、その第1支持基板76を圧電素子基板70から剥離処理する。これにより、図10(D)で示すように、天板40が結合(接合)された圧電素子基板70が完成する。そして、この状態から、天板40が圧電素子基板70の支持体となる。
一方、流路基板72は、図11(A)で示すように、まず、貫通孔100Aが複数穿設されたガラス製の第2支持基板100を用意する。第2支持基板100は第1支持基板76と同様、撓まないものであれば何でもよく、ガラス製に限定されるものではないが、ガラスは硬い上に安価なので好ましい。この第2支持基板100の作製方法としては、ガラス基板のフェムト秒レーザー加工や、感光性ガラス基板(例えば、HOYA株式会社製PEG3C)を露光・現像する等が知られている。
そして、図11(B)で示すように、その第2支持基板100の上面(表面)に接着剤104を塗布し、図11(C)で示すように、その上面(表面)に樹脂基板102(例えば、厚さ0.1mm〜0.5mmのアミドイミド基板)を接着する。そして次に、図11(D)で示すように、その樹脂基板102の上面を金型106に押し付け、加熱・加圧処理する。その後、図11(E)で示すように、金型106を樹脂基板102から離型処理することにより、圧力室50やノズル56等が形成される流路基板72が完成する。
こうして、流路基板72が完成したら、図12(A)で示すように、圧電素子基板70と流路基板72とを熱圧着により結合(接合)する。そして次に、図12(B)で示すように、第2支持基板100の貫通孔100Aから接着剤剥離溶液を注入して接着剤104を選択的に溶解させることで、その第2支持基板100を流路基板72から剥離処理する。
その後、図12(C)で示すように、第2支持基板100が剥離された面を、アルミナを主成分とする研磨材を使用した研磨処理又は酸素プラズマを用いたRIE処理することにより、表面層が取り除かれ、ノズル56が開口される。そして、図12(D)で示すように、そのノズル56が開口された下面に撥水剤としてのフッ素材108(例えば、旭ガラス社製のCytop)を塗布することにより、インクジェット記録ヘッド32が完成し、図12(E)で示すように、インクプール室38や圧力室50内にインク110が充填可能とされる。
なお、感光性ドライフィルム96(エアダンパー44)は、天板40の内側のインクプール室38内に設けられるものに限定されるものではなく、例えば図13で示すように、天板40の外側に設けられる構成としてもよい。すなわち、インク110の充填工程の直前に、インクプール室38の外側から天板40に感光性ドライフィルム96(エアダンパー44)を貼り付ける構成としてもよい。
(金型の製造方法)
以下、金型106の製造工程について詳細に説明する。なお、以下の金型106の製造工程で異方性エッチングとは、等方性エッチングと、デポジションによる溝壁面への成膜とを繰り返して行うことにより基板深さ方向へエッチングすることを意味する。
まず、平板状のシリコン基板112を用意し、ノズル56を形成しない側(すなわち紙面上側)に酸化膜(SiO2 膜)114を成膜する。そして、この酸化膜114に所定寸法の開口116を形成する(図14−1(A)参照)。なお、酸化膜114に代えて窒化膜を形成してもよい。
次に、基板上側から異方性エッチングと等方性エッチングとを繰り返すことにより、側壁面119が上側にテーパ状に開いた溝118を形成する(図14−1(B)参照)。この溝118の開口側には酸化膜114による庇120が形成されている。
次に、酸化膜114及び庇120(図17参照)を除去する(図14−1(C)参照)。なお、テーパ状に開いた溝118が形成される原理や、庇120が除去される原理については図を用いて詳細に後述する。
そして、全面エッチングを行った後、更に、基板上側にレジスト液を塗布し、圧力室50及びインク流路68に相当する部位に開口126を有するレジスト膜124を形成する(図14−1(D)参照)。
そして、基板上側から異方性エッチングを行うことにより、インク流路68に相当する流路用溝128を形成する(図14−1(E)参照)。本実施形態では、流路用溝128の深さ数十〜数百μm程度の深堀りとする。
そして、レジスト膜124を除去する(図14−2(F)参照)。
更に、基板上側にレジスト液を塗布し、ノズル56に相当する部位に開口136を有するレジスト膜134を形成する(図14−2(G)参照)。
そして、基板上側から異方性エッチングと等方性エッチングとを繰り返すことにより、上側にテーパ状に開いた小穴138を形成する(図14−2(H)参照)。
そして、レジスト膜134を除去し、基板上側から全面エッチングを行い、小穴138の開口側に形成されている庇(図示せず)を除去し、マスター基板142とする(図14−2(I)参照)。
以下、このようにして形成されたテーパ壁面付きシリコン基板をマスター基板142として用い、金型106を製造することを図15を用いて説明する。
まず、溝118を上側に向けてマスター基板142を電鋳作業が可能な位置に載置する(図15(A)参照)。そして、Niで電鋳を行う(図15(B)参照)。
更に、マスター基板142をエッチング等で除去する。この結果、Niモールドの金型106が形成される(図15(C)参照)。
そして、樹脂基板102の上面に金型106に押し付け、加熱・加圧処理する(図11(D)参照)。
その後、金型106を樹脂基板102から離型処理することにより、圧力室50やノズル56等が形成された流路基板72が完成する(図11(E)参照)。
本実施形態では、マスター基板142の凹部を形成している溝118及び小穴138の壁面が開口側(紙面上側)に広がるテーパ状になっているので、金型106の凸部105の側壁面103、107(図15(C)参照)は根元側へ徐々に広がるテーパ状となっている。従って、金型106を樹脂基板102から離型処理する際、金型106の凸部105が樹脂基板102の凹部から離れやすい。
これにより、樹脂基板102を成形する際、安定して成形することができ、圧力室50やノズル56の形状、寸法を均一にすることができる。また、斜面を含む形状で成形することができ、設計の自由度が増大する。
なお、金型106の表面、又は樹脂基板102の表面に離型剤を塗布しておいてもよい。これにより、金型106と樹脂基板102との離型処理を更にスムーズに行うことができる。
以下、溝118や小穴138の壁面がテーパ状になることを図16、図17を用いて説明する。本実施形態では、異方性エッチングを行うには、デポジションによる成膜とエッチングとを繰り返し(3〜4サイクル)行っている。図16では、断面図の右横に、デポジションによる成膜時間を斜線で、エッチング時間を白抜きで、それぞれ示す。
本実施形態では、異方性エッチングでは溝の底部がエッチングされ、等方性エッチングでは、溝の底部と壁部との両者がエッチングされる。従って、異方性エッチングと等方性エッチングとを繰り返し行うことにより、基板深さ方向と基板全方向とのエッチングが繰り返して行われる。
このため、異方性エッチング(図16(A)参照)の後、等方性エッチング(図16(B)参照)がされ、更に異方性エッチング(図16(C)参照)、等方性エッチング(図16(D)参照)、異方性エッチング(図16(E)参照)、等方性エッチング(図16(F)参照)と順次行っていくことにより、テーパ状の側壁面119が形成された溝118(図16(G)参照)が形成される。小穴138についても同様である。
テーパ角度については、異方性エッチング及び等方性エッチングの時間比、エッチングの速度比などを調整することにより、任意の角度にすることができる。本実施形態では、エッチングの速度比を調整するには、出力比、ガス比などを変更することにより行っている。
ここで、図16(G)に示した段階では、酸化膜114による庇120が形成されており、この結果、窪み144がシリコン基板112に形成されている(図17(A)参照)。
そこで、この状態で、フッ酸等により酸化膜114の除去を行う(図17(B)参照)。酸化膜114でなく窒化膜を成膜した場合でも同様である。
そして、ドライエッチングで全面エッチングを行い、窪み144から上側の突起部分146を除去する(図17(C)参照)。その際、他の溝壁もエッチングされる。このドライエッチングによる全面エッチングは、数μm程度の微細な形状のコントロールを行うのに適しており、エッジに若干の丸みを持たせることが可能である。
なお、ドライエッチングで全面エッチングを行うことに代えて、図18に示すように、フッ硝酸を用いたウェットエッチングによる全面エッチングを行ってもよい。このウェットエッチングによる全面エッチングでは、シリコン表面を一様にエッチングするため、微細な寸法の制御を行うことにはあまり適さないが、エッジに充分な丸みを持たせることができる。
また、フッ酸やフッ硝酸を用いた酸化膜114の除去を行わずに、研磨処理を行って突起部分146を除去してもよい(図19参照)。この研磨処理では、ある程度の削りしろが必要であるため、微細な寸法制御を行うことにはあまり適さないが、フッ酸やフッ硝酸を用いた酸化膜114の除去を行わなくて済むので、工程の簡略化、すなわち製造時間の短縮化に大きく寄与する。
(作用)
以上のようにして製造されるインクジェット記録ヘッド32を備えたインクジェット記録装置10において、次に、その作用を説明する。まず、インクジェット記録装置10に印刷を指令する電気信号が送られると、給紙トレイ26から記録紙Pが1枚ピックアップされ、副走査機構18により、所定の位置へ搬送される。
一方、インクジェット記録ユニット30では、すでにインクタンク34からインク供給ポート36を介してインクジェット記録ヘッド32のインクプール室38にインク110が注入(充填)され、インクプール室38に充填されたインク110は、インク流路66、68を経て圧力室50へ供給(充填)されている。そして、このとき、ノズル56の先端(吐出口)では、インク110の表面が圧力室50側に僅かに凹んだメニスカスが形成されている。
そして、キャリッジ12に搭載されたインクジェット記録ヘッド32が主走査方向に移動しながら、複数のノズル56から選択的にインク滴を吐出することにより、記録紙Pの所定のバンド領域に、画像データに基づく画像の一部を記録する。すなわち、駆動IC60により、所定のタイミングで、所定の圧電素子46に電圧を印加し、振動板48を上下方向に撓み変形させて(面外振動させて)、圧力室50内のインク110を加圧し、所定のノズル56からインク滴として吐出させる。
こうして、記録紙Pに画像データに基づく画像の一部が記録されたら、副走査機構18により、記録紙Pを所定ピッチ搬送させ、上記と同様に、インクジェット記録ヘッド32を主走査方向に移動しながら、再度複数のノズル56から選択的にインク滴を吐出することにより、記録紙Pの次のバンド領域に、画像データに基づく画像の一部を記録する。そして、このような動作を繰り返し行い、記録紙Pに画像データに基づく画像が完全に記録されたら、副走査機構18により、記録紙Pを最後まで搬送し、排紙トレイ28上に記録紙Pを排出する。これにより、記録紙Pへの印刷処理(画像記録)が完了する。
以上説明したように、本実施形態では、金型106の凸部105の側壁面103、107(図15参照)を根元側に向けて徐々に広がるテーパ状としたので、金型106で樹脂基板102を成形する際、樹脂基板102から金型106を容易に離すことができ、樹脂基板102に成形不良が生じることが防止されている。これにより、樹脂基板102を成形する際、安定して成形することができ、圧力室50やノズル56の形状、寸法を均一にすることができる。また、泡の滞留をなくし、インクの流れを充分に良好にすることができる。更に、斜面を含む形状で成形することができ、設計の自由度が増大する。
また、ノズル56を先細り形状にすることができるので、メニスカスの制御性が向上する。
また、このインクジェット記録ヘッド32は、インクプール室38が、振動板48(圧電素子46)を間に置いて圧力室50の反対側(上側)に設けられている。換言すれば、インクプール室38と圧力室50の間に振動板48(圧電素子46)が配置され、インクプール室38と圧力室50が同一水平面上に存在しないように構成されている。したがって、圧力室50が互いに近接配置され、ノズル56が高密度に配設されている。
また、圧電素子46に電圧を印加する駆動IC60は、振動板48と天板40との間に配設され、振動板48や天板40より外部へ露出しない(突出しない)構成とされている(インクジェット記録ヘッド32内に内蔵されている)。したがって、インクジェット記録ヘッド32の外部に駆動IC60を実装する場合に比べて、圧電素子46と駆動IC60の間を接続する金属配線86の長さが短くて済み、これによって、金属配線86の低抵抗化が実現されている。
つまり、実用的な配線抵抗値で、ノズル56の高密度化、即ちノズル56の高密度なマトリックス状配設が実現されており、これによって、高解像度化が実現可能になっている。しかも、その駆動IC60は、振動板48に圧電素子46等が形成されてなる圧電素子基板70上にフリップチップ実装されているので、高密度の配線接続が容易にでき、更には駆動IC60の高さの低減も図れる(薄くできる)。したがって、インクジェット記録ヘッド32の小型化も実現される。
具体的には、従来のFPC方式による電気接続では、ノズル解像度は600npi(nozzle per pitch)が限界であったが、本発明の方式では、容易に1200npi配列が可能となった。また、サイズについては、600npiのノズル配列を例にとって比較した場合、FPCを用いなくて済むため、1/2以下にすることが可能となった。
また、この駆動IC60の周囲の隙間は、樹脂材58で埋められているため、天板40と圧電素子基板70の接合強度が増し、更には、その樹脂材58によって駆動IC60が封止されているので、水分等の外部環境から駆動IC60を保護することができる。また、圧電素子46と駆動IC60とを接続する圧電素子基板70上の金属配線86が、樹脂保護膜88によって被覆されているので、インク110による金属配線86の腐食を防止することができる。しかも、その金属配線86を挟むようにして被覆する樹脂保護膜88と樹脂膜82とが同種の樹脂材料とされているので、熱膨張率が略等しく、これによって、熱応力の発生も少ない。
以上、何れにしても、このインクジェット記録ヘッド32を構成する圧電素子基板70及び流路基板72は、常に硬い支持基板76、100上でそれぞれ製造され、かつ、それらの製造工程において、支持基板76、100がそれぞれ不要となった時点で、各支持基板76、100が取り除かれるという製造方法が採用されているので、極めて製造しやすい構成となっている。なお、製造された(完成した)インクジェット記録ヘッド32は、天板40によって支持されるので(天板40が支持体とされるので)、その剛性は確保される。
その他、上記実施例のインクジェット記録装置10では、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色のインクジェット記録ユニット30がそれぞれキャリッジ12に搭載され、それら各色のインクジェット記録ヘッド32から画像データに基づいて選択的にインク滴が吐出されてフルカラーの画像が記録紙Pに記録されるようになっているが、本発明におけるインクジェット記録は、記録紙P上への文字や画像の記録に限定されるものではない。
すなわち、記録媒体は紙に限定されるものでなく、また、吐出する液体もインクに限定されるものではない。例えば、高分子フィルムやガラス上にインクを吐出してディスプレイ用カラーフィルターを作成したり、溶接状態の半田を基板上に吐出して部品実装用のバンプを形成するなど、工業的に用いられる液滴噴射装置全般に対して、本発明に係るインクジェット記録ヘッド32を適用することができる。
また、上記実施例のインクジェット記録装置10では、主走査機構16と副走査機構18を有するPartial Width Array(PWA)の例で説明したが、本発明におけるインクジェット記録は、これに限定されず、紙幅対応のいわゆるFull Width Array(FWA)であってもよい。むしろ、本発明は、高密度ノズル配列を実現するのに有効なものであるため、1パス印字を必要とするFWAには好適である。
なお、以上の説明では、インクジェット記録ヘッド10を製造する例を挙げて説明したが、このようなテーパ形状の凸部を有するマスター基板を製造してモールド金型を形成し、このモールド金型を用いて良好に成形することは、インクジェット記録ヘッド10の製造に限らず、一般的な微細な金型を製造することにも適用できる。
具体的に図を用いて説明すると、図20に示すように、凸部160の側壁面159が先端側に向けて徐々に狭まるテーパ状(すなわち根元側に向けて徐々に広がるテーパ状)にされたマスター基板152を製造し、凸部160を上向きにして載置する(図20(A)参照)。
そして、モールド金型を形成する材料をマスター基板152の上側(成形面側)に供給する(図20(B)参照)。
この材料が固化していなければ固化させた上で、マスター基板152をエッチング等により除去する。この結果、モールド金型166が得られる(図20(C)参照)。
このモールド金型166を、樹脂基板等の被加工材172に押圧し、必要に応じて加熱・加圧処理する(図20(D)参照)。
その後、モールド金型166を樹脂基板102から離型処理することにより、所定の形状に成形された成形部材174が形成される(図20(E)参照)。モールド金型166の凸部160の側壁面159が上記のようにテーパ状であるので、この離型処理はスムーズに行われる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態に比べ、樹脂基板102に代えて、同形状のシリコンからなる流路基板212(図21−2(I)参照)を形成している。流路基板212を形成するには、以下に説明する工程を行うことによって形成する。
まず、所定厚みの平板状のシリコン基板182の両面に酸化膜(SiO2 膜)184を成膜し、ノズル56を形成しない側(すなわち紙面上側)に所定寸法の開口186を形成する(図21−1(A)参照)。なお、酸化膜184に代えて窒化膜を形成してもよい。
次に、基板上側から異方性エッチングと等方性エッチングとを繰り返すことにより、側壁面189が上側にテーパ状に開いた溝188を形成する(図21−1(B)参照)。この溝188の開口側には酸化膜184による庇190が形成されている。
次に、酸化膜184を除去する。この結果、酸化膜184及び庇190が除去される(図21−1(C)参照)。
そして、全面エッチングを行った後、更に、基板上側にレジスト液を塗布し、圧力室50及びインク流路68に相当する部位に開口196を有するレジスト膜194を形成する(図21−1(D)参照)。
そして、基板上側から異方性エッチングを行うことにより、インク流路68に相当する流路用溝198を形成する(図21−1(E)参照)。
そして、レジスト膜194を除去する(図21−2(F)参照)。
更に、基板上側にレジスト液を塗布し、ノズル56に相当する部位に開口206を有するレジスト膜204を形成する(図21−2(G)参照)。
そして、基板上側から異方性エッチングと等方性エッチングとを繰り返すことにより、上側にテーパ状に開いた小穴208を形成する(図21−2(H)参照)。なお、この段階で、小穴208は、エッチング面側と反対面側(ノズル面側Q)で開口していてもよい。
そして、レジスト膜204を除去し、基板上側から全面エッチングを行い、小穴208の上側に形成されている庇(図示せず)を除去する。そして、ノズル面側Qから研磨することにより、小穴208のノズル面側Qの開口径を調整する(図21−2(I)参照)。
この結果、流路基板72と同形状で、圧力室やノズル等が形成されたシリコン製の流路基板212が完成する。
この流路基板212を、インクジェット記録ヘッドの吐出部及びインク流路の構成部材として用い、インクジェット記録ヘッドを製造する。
本実施形態により、インクジェット記録ヘッドの吐出部及びインク流路を構成する流路基板212の形状を、様々な三次元構造に対応した形状にすることができる。従って、設計の自由度が広がると共にインクジェット記録ヘッドの性能を大きく向上させることができる。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態は、トレンチキャパシタ作製のためのトレンチを形成する例である。
図22(A)に示すように、本実施形態では、所定パターンのシリコン膜224及び酸化膜(SiO2 膜)226が表面に形成されているシリコン基板222にエッチングを行い、シリコン膜224と酸化膜226との間にトレンチ(溝)228を形成する。
このトレンチ228を形成する際、本実施形態では、異方性エッチングと等方性エッチングとを順次繰り返すことにより、トレンチ228の側壁面229がトレンチ底230から基板表面(トレンチ228の開口232が形成されている側)に向けて徐々に広がる形状にされている。
このような形状のトレンチ228を有する基板表面側にCVD法で成膜すると、図22(B)に示すように、カバレッジが良好なトレンチキャパシタ233及びポリシリコン膜234を形成することができ、ボイド等の不具合がトレンチキャパシタ233に発生することがない。