JP2007130973A - 液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出ヘッド並びに液滴吐出装置 - Google Patents

液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出ヘッド並びに液滴吐出装置 Download PDF

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Abstract

【課題】ノズルの高密度化と、それに伴う微細ピッチ配線の形成を実現可能にして、高解像度化と小型化を図れる液滴吐出ヘッドの製造方法と、その製造方法によって製造される液滴吐出ヘッドと、その液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置の提供を課題とする。
【解決手段】支持基板76上に界面剥離層78を介して振動板48を設けるとともに、振動板48に圧電素子46を設け、天板41を振動板48に設けた後、ドライエッチングにより界面剥離層78を除去して、支持基板76を振動板48から取り外してなる圧電素子基板70に、圧力室50が形成された流路基板72を接合する液滴吐出ヘッド32の製造方法とする。そして、この製造方法によって製造される液滴吐出ヘッド32と、その液滴吐出ヘッド32を備えた液滴吐出装置10とする。
【選択図】図8

Description

本発明は、インク等の液滴を吐出するノズルと、ノズルと連通するとともに、インク等の液体が充填される圧力室と、圧力室の一部を構成する振動板と、圧力室へ流路を介して供給する液体をプールするプール室と、振動板を変位させる圧電素子と、を有する液滴吐出ヘッドの製造方法と、その製造方法によって製造される液滴吐出ヘッド、更には、その液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置に関する。
従来から、液滴吐出ヘッドの一例としてのインクジェット記録ヘッド(以下、単に「記録ヘッド」という場合がある)の複数のノズルから選択的にインク滴を吐出し、記録用紙等の記録媒体に画像(文字を含む)等を印刷するインクジェット記録装置(液滴吐出装置)は知られている。このようなインクジェット記録装置において、その記録ヘッドには圧電方式やサーマル方式等がある。
例えば、圧電方式の場合には、図22、図23で示すように、インクタンクからインクプール室202を経てインク200が供給される圧力室204に、圧電素子(電気エネルギーを機械エネルギーに変換するアクチュエーター)206が設けられ、その圧電素子206が圧力室204の体積を減少させるように凹状に撓み変形して中のインク200を加圧し、圧力室204に連通するノズル208からインク滴200Aとして吐出させるように構成されている。
このような構成のインクジェット記録ヘッドにおいて、近年では、低コストで小型でありながら、高解像度な印刷が可能とされることが求められている。この要求に応えるためには、ノズルを高密度に配設することが必要となるが、現状の記録ヘッドでは、図示するように、ノズル208の隣に(ノズル208とノズル208の間に)インクプール室202が設けられているため、ノズル208を高密度に配設することにも限界があった。
また、インクジェット記録ヘッドには、所定の圧電素子に電圧を印加する駆動ICを設けるが、従来は、図24で示すように、FPC(フレキシブルプリント配線基板)210で実装していた。つまり、振動板214上に設けられた圧電素子206上面の金属電極表面に、FPC210に形成したバンプ212を接合することによって接続していた。このFPC210には駆動IC(図示省略)が実装されているため、この段階で圧電素子206と駆動ICが電気的に接続されることになる。
また、記録ヘッドの外部表面に設けられた電極端子と、駆動ICが実装された実装基板上の電極端子をワイヤーボンディング法で接続するという方法がある(例えば、特許文献1参照)。更に、記録ヘッドの外部表面に設けられた電極端子に駆動ICを接合して接続した後、その記録ヘッドに設けられた引き出し配線の電極端子にFPCを接合して接続するという方式がある(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、何れの場合も、ピッチが微細(例えば、10μmピッチ以下)な配線を形成することができないため、ノズル密度が高くなると、実装基板やFPCのサイズが大きくなり、小型化を阻害したり、コストをアップさせたりする問題がある。また更に、ノズル密度が高くなった場合には、所望の抵抗値を有する配線を引き回せないという問題がある。つまり、配線密度の制限によるノズル高密度化の限界がある。
特開平2−301445号公報 特開平9−323414号公報
そこで、本発明は、このような問題点に鑑み、ノズルの高密度化と、それに伴う微細ピッチ配線の形成を実現可能にして高解像度化が図れ、かつ小型化も図れる液滴吐出ヘッドの製造方法と、その製造方法によって製造される液滴吐出ヘッドと、その液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置を得ることを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法は、液滴を吐出するノズルと、前記ノズルと連通し、液体が充填される圧力室と、前記圧力室の一部を構成する振動板と、前記圧力室へ流路を介して供給する液体をプールするプール室と、前記振動板を変位させる圧電素子と、を有する液滴吐出ヘッドの製造方法であって、支持基板上に界面剥離層を介して振動板を設けるとともに、該振動板に圧電素子を設け、天板を前記振動板に設けた後、ドライエッチングにより前記界面剥離層を除去して、前記支持基板を前記振動板から取り外してなる圧電素子基板に、圧力室が形成された流路基板を接合してなることを特徴としている。
また、本発明に係る請求項2に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法は、液滴を吐出するノズルと、前記ノズルと連通し、液体が充填される圧力室と、前記圧力室の一部を構成する振動板と、前記圧力室へ流路を介して供給する液体をプールするプール室と、前記振動板を変位させる圧電素子と、を有する液滴吐出ヘッドの製造方法であって、一方の支持基板上に界面剥離層を介して圧電素子を設けるとともに、他方の支持基板上に界面剥離層を介して振動板を設け、前記他方の支持基板上の振動板に、前記一方の支持基板上の圧電素子を設けた後、ドライエッチングにより前記一方の支持基板上の界面剥離層を除去して、該一方の支持基板を前記圧電素子から取り外し、天板を前記振動板に設けた後、ドライエッチングにより前記他方の支持基板上の界面剥離層を除去して、該他方の支持基板を前記振動板から取り外してなる圧電素子基板に、圧力室が形成された流路基板を接合してなることを特徴としている。
そして、請求項3に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法は、請求項1又は請求項2に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、ノズル形成基板上に界面剥離層を介してノズル形成部材を設け、該ノズル形成部材を前記流路基板に接合後、ドライエッチングにより前記界面剥離層を除去して、前記ノズル形成基板を前記流路基板から取り外してなることを特徴としている。
更に、請求項4に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、前記プール室を、前記振動板を間に置いて前記圧力室と反対側に設けたことを特徴としている。
請求項1乃至請求項4に記載の発明によれば、振動板や圧電素子等を備えた圧電素子基板を、支持基板で支持した状態で製造できるので、製造しやすい。また、圧力室を互いに近接して配設することができるので、圧力室毎に設けられるノズルを高密度に配設することができ、部品点数の削減も図れるので、液滴吐出ヘッドの小型化を実現することができる。
また、このような製造方法を採用することにより、圧電素子から引き出す配線の形成に、半導体プロセスのホトリソグラフィー技術を用いることができ、10μmピッチ以下の微細配線を形成することができるので、実用的な配線抵抗値で、ノズルの高密度化に対応できる。したがって、高解像度化を実現することができる。
更に、界面剥離層の除去をドライエッチング(気体)で行うので、液体でエッチングする場合の不具合を解消することができる。例えば、界面剥離層としてゲルマニウム(Ge)膜を用い、その溶解液として過酸化水素(H22)を用いると、エッチングにより発生した気泡が、溶解液の界面剥離層への供給を阻害してエッチングの進行を遅らせたり、液体であるために、界面領域において、古い溶解液と新しい溶解液の置換が気体に比べて遅くなっていた。
つまり、エッチング量の不均一性をもたらしたり、程度によっては、部分的にエッチングの進行が停止し、エッチングが完了しないという不具合を招いていた。更に、エッチング速度が低下するので、生産性の低下を招くといった問題があった。本発明は、気体によるドライエッチングなので、これらの問題を解決することができる。
すなわち、気体によるドライエッチングであるため、液体によるウェットエッチングで問題になった気泡による溶解液の界面剥離層への供給阻害はなく、高い歩留まりと生産性を確保することができる。また、エッチング剤の界面剥離層への供給が迅速に行われ、エッチング速度の低下(生産性の低下)が生じない。
また、請求項5に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、前記界面剥離層が、シリコン膜であることを特徴としている。
そして、請求項6に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法は、請求項5に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、前記ドライエッチングが、フッ化キセノンによって行われることを特徴としている。
更に、請求項7に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法は、請求項5又は請求項6に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、前記支持基板が、シリコン以外の材料で形成されていることを特徴としている。
請求項5乃至請求項7に記載の発明によれば、シリコン膜は、高融点であるため、高温プロセス(例えば、1000℃程度)にも対応できる。また、振動板にピンホールがあっても、そこから進入したエッチング剤(フッ化キセノン)が空洞内部(本発明の場合は圧電素子の周囲)に残留することがない。液体の場合は、長く滞留して、構造材料を浸食するので、初期不良や信頼性不良を招くおそれがある。
また、請求項8に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、前記界面剥離層が、シリコン酸化膜であることを特徴としている。
そして、請求項9に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法は、請求項8に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、前記ドライエッチングが、フッ化水素とメタノールの混合ガスによって行われることを特徴としている。
更に、請求項10に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法は、請求項8又は請求項9に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、前記支持基板が、シリコン酸化物以外の材料で形成されていることを特徴としている。
請求項8乃至請求項10に記載の発明によれば、シリコン酸化膜は、高融点であるため、高温プロセス(例えば、1000℃程度)にも対応できる。また、振動板にピンホールがあっても、そこから進入したエッチング剤(フッ化水素とメタノールの混合ガス)が空洞内部(本発明の場合は圧電素子の周囲)に残留することがない。液体の場合は、長く滞留して、構造材料を浸食するので、初期不良や信頼性不良を招くおそれがある。
また、請求項11に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法は、請求項7に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、前記支持基板が、ガラス製であることを特徴としている。
また、請求項12に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法は、請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、少なくとも前記圧電素子基板と前記流路基板が、熱圧着によって接合されることを特徴としている。
請求項11及び請求項12に記載の発明によれば、支持基板が、ガラス製であるため、熱処理時の熱膨張の差が小さく、反りや剥離に対して強い。したがって、天板と圧電素子基板、圧電素子基板と流路基板をそれぞれ好適に熱圧着することができる。
また、本発明に係る請求項13に記載の液滴吐出ヘッドは、請求項1乃至請求項12の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法によって製造されることを特徴としており、本発明に係る請求項14に記載の液滴吐出装置は、請求項13に記載の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴としている。
請求項13及び請求項14に記載の発明によれば、ノズルの高密度化を実現できるので、高解像度化を実現することができる。また、液滴吐出ヘッドの小型化を実現することができる。
以上、何れにしても本発明によれば、振動板を挟んで圧力室及びノズルがある側と反対側にプール室を形成できるため、ノズルを高密度に配置できる。また、本発明は、高解像度な液滴吐出ヘッドに要求される薄い振動板の形成にも有効である。したがって、高解像度化が図れ、かつ小型化も図れる液滴吐出ヘッドの製造方法と、それによって製造される液滴吐出ヘッドと、その液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置を提供することができる。
以下、本発明の最良な実施の形態について、図面に示す実施例を基に詳細に説明する。なお、液滴吐出装置としてはインクジェット記録装置10を例に採って説明する。したがって、液体はインク110とし、液滴吐出ヘッドはインクジェット記録ヘッド32として説明をする。また、記録媒体は記録用紙Pとして説明をする。
インクジェット記録装置10は、図1で示すように、記録用紙Pを送り出す用紙供給部12と、記録用紙Pの姿勢を制御するレジ調整部14と、インク滴を吐出して記録用紙Pに画像形成する記録ヘッド部16及び記録ヘッド部16のメンテナンスを行うメンテナンス部18を備える記録部20と、記録部20で画像形成された記録用紙Pを排出する排出部22とから基本的に構成されている。
用紙供給部12は、記録用紙Pが積層されてストックされているストッカー24と、ストッカー24から1枚ずつ取り出してレジ調整部14に搬送する搬送装置26とから構成されている。レジ調整部14は、ループ形成部28と、記録用紙Pの姿勢を制御するガイド部材29とを有しており、記録用紙Pは、この部分を通過することによって、そのコシを利用してスキューが矯正されるとともに、搬送タイミングが制御されて記録部20に供給される。そして、排出部22は、記録部20で画像が形成された記録用紙Pを、排紙ベルト23を介してトレイ25に収納する。
記録ヘッド部16とメンテナンス部18の間には、記録用紙Pが搬送される用紙搬送路27が構成されている(用紙搬送方向を矢印PFで示す)。用紙搬送路27は、スターホイール17と搬送ロール19とを有し、このスターホイール17と搬送ロール19とで記録用紙Pを挟持しつつ連続的に(停止することなく)搬送する。そして、この記録用紙Pに対して、記録ヘッド部16からインク滴が吐出され、記録用紙Pに画像が形成される。
メンテナンス部18は、インクジェット記録ユニット30に対して対向配置されるメンテナンス装置21を有しており、インクジェット記録ヘッド32に対するキャッピングや、ワイピング、更には、ダミージェットやバキューム等の処理を行う。
図2で示すように、各インクジェット記録ユニット30は、矢印PFで示す用紙搬送方向と直交する方向に配置された支持部材34を備えており、この支持部材34に複数のインクジェット記録ヘッド32が取り付けられている。インクジェット記録ヘッド32には、マトリックス状に複数のノズル56が形成されており、記録用紙Pの幅方向には、インクジェット記録ユニット30全体として一定のピッチでノズル56が並設されている。
そして、用紙搬送路27を連続的に搬送される記録用紙Pに対し、ノズル56からインク滴を吐出することで、記録用紙P上に画像が記録される。なお、インクジェット記録ユニット30は、例えば、いわゆるフルカラーの画像を記録するために、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色に対応して、少なくとも4つ配置されている。
図3で示すように、それぞれのインクジェット記録ユニット30のノズル56による印字領域幅は、このインクジェット記録装置10での画像記録が想定される記録用紙Pの用紙最大幅PWよりも長くされており、インクジェット記録ユニット30を紙幅方向に移動させることなく、記録用紙Pの全幅にわたる画像記録が可能とされている。つまり、このインクジェット記録ユニット30は、シングルパス印字が可能なFull Width Array(FWA)となっている。
ここで、印字領域幅とは、記録用紙Pの両端から印字しないマージンを引いた記録領域のうち最大のものが基本となるが、一般的には印字対象となる用紙最大幅PWよりも大きくとっている。これは、記録用紙Pが搬送方向に対して所定角度傾斜して(スキューして)搬送されるおそれがあるためと、縁無し印字の要望が高いためである。
以上のような構成のインクジェット記録装置10において、次にインクジェット記録ヘッド32について詳細に説明する。図4は第1実施形態のインクジェット記録ヘッド32の構成を示す概略平面図である。すなわち、図4(A)はインクジェット記録ヘッド32の全体構成を示すものであり、図4(B)は1つの素子の構成を示すものである。
また、図5(A)乃至図5(C)は、それぞれ図4(B)の各部をA−A'線、B−B'線、C−C'線の断面にて示すものである。ただし、後述する流路基板72及びプール室部材39は省略している。更に、図6はインクジェット記録ヘッド32を部分的に取り出して主要部分が明確になるように示した概略縦断面図である。
このインクジェット記録ヘッド32には、天板部材40が配置されている。本実施形態では、天板部材40を構成するガラス製の天板41は板状で、かつ配線を有しており、インクジェット記録ヘッド32全体の天板となっている。天板部材40には、駆動IC60と、駆動IC60に通電するための金属配線90が設けられている。金属配線90は、樹脂保護膜92で被覆保護されており、インク110による浸食が防止されるようになっている。
また、この駆動IC60の下面には、図7で示すように、複数のバンプ60Bがマトリックス状に所定高さ突設されており、天板41上の金属配線90にフリップチップ実装されるようになっている。したがって、圧電素子46に対する高密度配線と低抵抗化が容易に実現可能であり、これによって、インクジェット記録ヘッド32の小型化が実現可能となっている。なお、駆動IC60の周囲は樹脂材58で封止されている。
天板部材40には、耐インク性を有する材料で構成されたプール室部材39が貼着されており、天板41との間に、所定の形状及び容積を有するインクプール室38が形成されている。プール室部材39には、インクタンク(図示省略)と連通するインク供給ポート36が所定箇所に穿設されており、インク供給ポート36から注入されたインク110は、インクプール室38に貯留される。
天板41には、後述する圧力室50と1対1で対応するインク供給用貫通口112が形成されており、その内部が第1インク供給路114Aとなっている。また、天板41には、後述する上部電極54に対応する位置に、電気接続用貫通口42が形成されている。天板41の金属配線90は電気接続用貫通口42内にまで延長されて、その電気接続用貫通口42の内面を覆い、更に上部電極54に接触している。
これにより、金属配線90と上部電極54とが電気的に接続され、後述する圧電素子基板70の個別配線が不要になっている。なお、電気接続用貫通口42の下部は金属配線90によって閉塞された底部42B(図11−1(B)参照)となっており、電気接続用貫通口42は、上方にのみ開放された以外は閉じた空間となっている。
流路基板72には、インクプール室38から供給されたインク110が充填される圧力室50が形成され、圧力室50と連通するノズル56からインク滴が吐出されるようになっている。そして、インクプール室38と圧力室50とが同一水平面上に存在しないように構成されている。したがって、圧力室50を互いに接近させた状態に配置することが可能であり、ノズル56をマトリックス状に高密度に配設することが可能となっている。
流路基板72のノズル56が形成された側と反対側の面には、圧電素子基板70が貼着(接合)される。圧電素子基板70は振動板48を有しており、振動板48の振動によって圧力室50の容積を増減させて圧力波を発生させることで、ノズル56からのインク滴の吐出が可能になっている。したがって、振動板48が圧力室50の1つの面を構成している。
圧電素子46は、圧力室50毎に振動板48の上面に接着されている。振動板48は、Chemical Vapor Deposition(CVD)法で形成されたSiOx膜であり、少なくとも上下方向に弾性を有し、圧電素子46に通電されると(電圧が印加されると)、上下方向に撓み変形する(変位する)構成になっている。なお、振動板48は、Cr等の金属材料であっても差し支えはない。
また、圧電素子46の下面には一方の極性となる下部電極52が配置され、圧電素子46の上面には他方の極性となる上部電極54が配置されている。そして、圧電素子46は、低透水性絶縁膜(SiOx膜)80で被覆保護されている。圧電素子46を被覆保護している低透水性絶縁膜(SiOx膜)80は、水分透過性が低くなる条件で着膜するため、水分が圧電素子46の内部に侵入して信頼性不良となること(PZT膜内の酸素を還元することにより生ずる圧電特性の劣化)を防止できる。
更に、低透水性絶縁膜(SiOx膜)80上には、隔壁樹脂層119が積層されている。図4(B)で示すように、隔壁樹脂層119は、圧電素子基板70と天板部材40との間の空間を区画している。隔壁樹脂層119には、天板41のインク供給用貫通口112と連通するインク供給用貫通口44が形成されており、その内部が第2インク供給路114Bとなっている。
第2インク供給路114Bは、第1インク供給路114Aの断面積よりも小さい断面積を有しており、インク供給路114全体での流路抵抗が所定の値になるように調整されている。つまり、第1インク供給路114Aの断面積は、第2インク供給路114Bの断面積よりも充分に大きくされており、第2インク供給路114Bでの流路抵抗と比べて実質的に無視できる程度とされている。したがって、インクプール室38から圧力室50へのインク供給路114の流路抵抗は、第2インク供給路114Bのみで規定される。
また、このように、隔壁樹脂層119に形成したインク供給用貫通口44によってインク110を供給するようにしたことで、供給途中における圧電素子46領域へのインク漏れが防止されている。なお、隔壁樹脂層119には大気連通孔116が形成されており、インクジェット記録ヘッド32の製造時や画像記録時における天板41と圧電素子基板70の空間の圧力変動を低減している。
また、電気接続用貫通口42に対応する位置にも隔壁樹脂層118が積層されている。図4(B)で示すように、隔壁樹脂層118には、金属配線90が貫通する貫通孔120が形成されており、金属配線90の下端を上部電極54に接触可能としている。なお、図4(B)では、隔壁樹脂層118と隔壁樹脂層119が分離された位置での断面としているが、これらは、実際には部分的に繋がっている。
また、隔壁樹脂層118、119によって、天板部材40と圧電素子46(厳密には、圧電素子46上の低透水性絶縁膜(SiOx膜)80)との間に間隙が構成され、空気層となっている。この空気層により、圧電素子46の駆動や振動板48の振動に影響を与えないようになっている。
そして、電気接続用貫通口42の内部には、金属配線90に接触するようにして、半田86が充填されている。これにより、実質的に金属配線90が補強されて、上部電極54に対する接触状態(電気的な接続状態)が向上されており、例えば、熱ストレスや機械的ストレスなどによって接触状態が低下しそうになった場合でも、半田86によって、その接触状態が良好に維持される。
したがって、駆動IC60からの信号が、天板部材40の金属配線90に通電され、更に金属配線90から上部電極54に通電される。そして、所定のタイミングで圧電素子46に電圧が印加され、振動板48が上下方向に撓み変形することにより、圧力室50内に充填されたインク110が加圧されて、ノズル56からインク滴が吐出する。
なお、隔壁樹脂層119と隔壁樹脂層118は、その上面の高さが一定、即ち面一になるように構成されている。したがって、天板41から測った隔壁樹脂層119と隔壁樹脂層118の対向面の高さ(距離)も同一になっている。これにより、天板41が接触する際の接触性が高くなり、シール性も高くなっている。
以上のような構成のインクジェット記録ヘッド32において、次に、その製造工程について、図8乃至図13を基に詳細に説明する。図8で示すように、このインクジェット記録ヘッド32は、圧電素子基板70と流路基板72とを別々に作成し、両者を結合(接合)することによって製造される。そこで、まず、圧電素子基板70の製造工程について説明するが、圧電素子基板70には、流路基板72よりも先に天板部材40が結合(接合)される。
図9−1(A)で示すように、まず、非貫通孔76Bが複数穿設されたガラス製の第1支持基板76を用意する。第1支持基板76はシリコン(Si)以外の撓まないものであれば何でもよく、ガラス製に限定されるものではない(例えば、各種セラミックスでもよい)が、ガラスは硬い上に安価なので好ましい。この第1支持基板76の作製方法としては、ガラス基板のブラスト加工及びフェムト秒レーザー加工や、感光性ガラス基板(例えば、HOYA株式会社製PEG3C)を露光・現像する等が知られている。
そして、図9−1(B)で示すように、第1支持基板76の上面(表面)に、スパッタ法により、Si膜78(膜厚1μm)を着膜する。このSi膜78は接着層及び界面剥離層として機能する。なお、Si膜78は、蒸着やChemical Vapor Deposition(CVD)法でも成膜できる。
次に、図9−1(C)で示すように、そのSi膜78の上面に振動板48となる薄膜、例えば温度350℃、RFpower300W、周波数450KHz、圧力1.5torr、ガスSiH4/N2O=150/4000sccmのプラズマCVD法により、SiOx膜88(膜厚4μm)を成膜する。なお、この場合の振動板48の材料としては、SiNx膜、SiC膜、金属(Cr)膜等であってもよい。
その後、図9−1(D)で示すように、第1支持基板76の下面側をエッチングして、非貫通孔76Bを貫通させ、貫通孔76Aとする。具体的には、SiOx膜88の上面に保護用レジスト(保護膜)を塗布して、SiOx膜88を保護した状態で、第1支持基板76の下面側をフッ化水素(HF)でエッチングし、その後、保護用レジストを剥離する。なお、振動板48に、エッチング剤(HF)でエッチングされない材料を使用した場合には、保護用レジスト(保護膜)は不要である。
そして次に、図9−1(E)で示すように、SiOx膜88にインク供給路114形成用の孔部88Aをパターニングする。具体的には、ホトリソグラフィー法によるレジスト形成、パターニング(HFエッチング)、酸素プラズマによるレジスト剥離である。そして、図9−1(F)で示すように、スパッタ法により、例えば厚み0.5μm程度のAu膜62、即ち下部電極52を成膜する。
次いで、図9−2(G)で示すように、振動板48の上面に積層された下部電極52をパターニングする。具体的には、ホトリソグラフィー法によるレジスト形成、パターニング、Reactive Ion Etching(RIE)法によるエッチング、酸素プラズマによるレジスト剥離である。この下部電極52が接地電位となる。
そして更に、図9−2(H)で示すように、下部電極52の上面に、圧電素子46の材料であるPZT膜と上部電極54(Au膜)を順にスパッタ法で積層し、図9−2(I)で示すように、圧電素子46(PZT膜)及び上部電極54(Au膜)をパターニングする。
具体的には、PZT膜スパッタ(膜厚5μm)、Au膜スパッタ(膜厚0.5μm)、ホトリソグラフィー法によるレジスト形成、パターニング(エッチング)、酸素プラズマによるレジスト剥離である。下部及び上部の電極材料としては、圧電素子46であるPZT材料との親和性が高く、耐熱性がある、例えばAu、Ir、Ru、Pt等が挙げられる。
その後、図9−2(J)で示すように、上面に露出している下部電極52と上部電極54の上面に低透水性絶縁膜(SiOx膜)80を積層する。そして、パターニングにより、上部電極54と金属配線90を接続するための開口84(コンタクト孔)を形成する。
具体的には、CVD法にてダングリングボンド密度が高い低透水性絶縁膜(SiOx膜)80を着膜する、ホトリソグラフィー法によるレジスト形成、パターニング(エッチング)、酸素プラズマによるレジスト剥離である。なお、ここでは低透水性絶縁膜としてSiOx膜を用いたが、SiNx膜、SiOxNy膜等であってもよい。
次いで、図9−2(K)で示すように、隔壁樹脂層119及び隔壁樹脂層118をパターニングする。具体的には、隔壁樹脂層119、隔壁樹脂層118を構成する感光性樹脂を塗布し、露光・現像することでパターンを形成し、最後にキュアする。このとき、隔壁樹脂層119にインク供給用貫通口44を形成しておく。なお、隔壁樹脂層119と隔壁樹脂層118とは、同一膜であるが、設計パターンが異なっている。
こうして、圧電素子基板70が製造され、この圧電素子基板70に、例えばガラス板を支持体とする天板部材40が結合(接合)される。天板部材40の製造においては、図10(A)で示すように、天板部材40自体が支持体となる程度の強度を確保できる厚み(0.3mm〜1.5mm)の天板41を含んでいるので、別途支持体を設ける必要がない。この天板41に、図10(B)で示すように、インク供給用貫通口112及び電気接続用貫通口42を形成する。
具体的には、ホトリソグラフィー法で感光性ドライフィルムのレジストをパターニングし、このレジストをマスクとしてサンドブラスト処理を行って開口を形成した後、そのレジストを酸素プラズマにて剥離する。なお、インク供給用貫通口112及び電気接続用貫通口42は、断面視で内面が下方に向かって次第に接近するようなテーパー状(漏斗状)に形成されている。
このようにしてインク供給用貫通口112及び電気接続用貫通口42が形成された天板41(天板部材40)を、図11−1(A)で示すように、圧電素子基板70に被せて、両者を熱圧着(例えば、350℃、2kg/cm2で20分間)により結合(接合)する。このとき、隔壁樹脂層119と隔壁樹脂層118とは面一(同一高さ)になるように構成されているので、天板41が接触する際の接触性が高くなり、高いシール性で接合することができる。
そして、図11−1(B)で示すように、天板41の上面に金属配線90を成膜してパターニングする。具体的には、スパッタ法によるAl膜(厚さ1μm)の着膜、ホトリソグラフィー法によるレジストの形成、H3PO4薬液を用いたAl膜のウェットエッチング、酸素プラズマによるレジスト剥離である。
なお、電気接続用貫通口42の段差は非常に大きいので、ホトリソグラフィー工程ではレジストのスプレー塗布法と長焦点深度露光法を用いている。このとき、金属配線90の一部が、電気接続用貫通口42の内面から、上部電極54へと達するようにパターニングしておく。
これにより、電気接続用貫通口42の底部42Bが金属配線90で閉塞され、電気接続用貫通口42は、上方にのみ開放された以外は閉じた空間となる。なお、金属配線90を電気接続用貫通口42の深部まで厚く成膜したい場合には、スパッタ法よりも段差被覆性の良好なCVD法を採用すればよい。
そして、このように金属配線90がパターニングされた電気接続用貫通口42内(上記空間内)に、図11−1(C)で示すように、半田86を搭載する。この方法としては、半田ボール86Bを電気接続用貫通口42内に直接搭載する半田ボール法を用いることができる。
なお、半田ボール法以外に、図14(A)で示すように、インクジェットの原理を応用した加熱溶融半田吐出供給法を用いてもよい。この方法では、天板41と非接触で、かつ、マスクを用いることなく、半田86を所定の位置に供給することができる。更に、図14(B)で示すように、スクリーン印刷法を用いて半田86を供給してもよい。何れの供給方法であっても、電気接続用貫通口42は、断面視で内面が下方に向かって次第に接近するようなテーパー状(漏斗状)に形成されているので、半田86が電気接続用貫通口42の内面に付着しやすい。
次に、図11−2(D)で示すように、半田86をリフロー(例えば、280℃で10分間)し、電気接続用貫通口42の底部42Bにまで行き渡らせる。このとき、電気接続用貫通口42の底部42Bには、溶融した半田86が流れ出る経路がないので、高温の環境下で半田86を充分に溶融させて、電気接続用貫通口42の底部42Bまで確実に充填することができる。
つまり、この段階で、半田86の最下部は、天板41の下面(金属配線90が形成されていない面)よりも下側の電気接続用貫通口42内に位置しており、電気接続用貫通口42内の金属配線90に確実に接触するようになっている。また、この段階で、溶融した半田86が、天板41の上面(厳密には、金属配線90の上面)よりも上方に位置しないように、充填する半田86の量は予め所定量に決められている。
ここで、金属配線90の底部、即ち上部電極54と接触している部位は、金属配線90を構成しているAl膜が薄くなることがあり、隔壁樹脂層119の熱膨張等で機械的ストレスを受けて、金属配線90が断線しているおそれがある。しかし、このような場合でも、底部42Bに充填された半田86が、底部42Bと電気接続用貫通口42内の金属配線90を接続しているので、半田86による導通確保が可能となる。また、溶融した半田86が流れ出ないので、電気接続用貫通口42の近傍部分を半田86が不用意に短絡させてしまうおそれもない。
次に、図11−2(E)で示すように、金属配線90が形成された面に樹脂保護膜92(例えば、富士フイルムアーチ社製の感光性ポリイミド Durimide7320)を積層してパターニングする。なお、このとき、第1インク供給路114Aを樹脂保護膜92が覆わないようにする。また、この樹脂保護膜92としては、ポリイミド系、ポリアミド系、エポキシ系、ポリウレタン系、シリコーン系等、耐インク性を有していればよい。
更に、図11−2(F)で示すように、金属配線90に駆動IC60をフリップチップ実装する。このとき、駆動IC60は、予め半導体ウエハプロセスの終りに実施されるグラインド工程にて、所定の厚さ(70μm〜300μm)に加工されている。そして、駆動IC60の周囲を樹脂材58で封止し、駆動IC60を水分等の外部環境から保護できるようにする。
これにより、後工程でのダメージ、例えば、できあがった圧電素子基板70をダイシングによってインクジェット記録ヘッド32に分割する際の水や研削片によるダメージを回避することができる。そして、図11−3(G)で示すように、真空中において、Si膜78をフッ化キセノン(XeF2)ガスによってドライエッチングして除去し、第1支持基板76を圧電素子基板70から剥離処理する。
以上の製造工程により、図11−3(H)で示すように、天板部材40が結合(接合)された圧電素子基板70が完成する。そして、この状態から、天板部材40の天板41が圧電素子基板70の支持体となる。
次に、流路基板72の製造工程について説明する。まず、図12(A)で示すように、貫通孔100Aが複数穿設されたガラス製の第2支持基板100を用意する。第2支持基板100は第1支持基板76と同様に、撓まないものであれば何でもよく、ガラス製に限定されるものではないが、ガラスは硬い上に安価なので好ましい。この第2支持基板100の作製方法としては、ガラス基板のブラスト加工及びフェムト秒レーザー加工や、感光性ガラス基板(例えば、HOYA株式会社製PEG3C)を露光・現像する等が知られている。
そして、図12(B)で示すように、その第2支持基板100の上面(表面)に接着剤104を塗布し、図12(C)で示すように、その上面(表面)に樹脂基板102(例えば、厚さ0.1mm〜0.5mmのアミドイミド基板)を接着する。そして次に、図12(D)で示すように、その樹脂基板102の上面を金型106に押し付け、加熱・加圧処理する。その後、図12(E)で示すように、金型106を樹脂基板102から離型処理することにより、圧力室50やノズル56等が形成される流路基板72が完成する。
こうして、流路基板72が完成したら、図13−1(A)で示すように、圧電素子基板70と流路基板72とを熱圧着により接合する。接合時には、圧電素子基板70を、例えば上方の図示しない保持部材と、下方の流路基板72とで挟むようにして接合する。このとき、半田86が、天板41の上面よりも上方に位置しないように調整することで、電気接続用貫通口42から突出しなくなるので、接合部分等に不用意な力が作用したり、接合に不具合が生じたりすることはなく、確実に接合できる。
そして次に、図13−1(B)で示すように、第2支持基板100の貫通孔100Aから有機エタノールアミン(接着剤剥離溶液)を注入して接着剤104を選択的に溶解させることで、その第2支持基板100を流路基板72から剥離処理する。
その後、図13−2(C)で示すように、第2支持基板100が剥離された面を、アルミナを主成分とする研磨材を使用した研磨処理又は酸素プラズマを用いたRIE処理することにより、表面層が取り除かれ、ノズル56が開口される。そして、図13−2(D)で示すように、そのノズル56が開口された下面に撥水剤としてのフッ素材108(例えば、旭ガラス社製のCytop)を塗布する。
そして更に、図13−3(E)で示すように、天板部材40(天板41)の上面にプール室部材39を装着して、これらの間にインクプール室38を構成することにより、インクジェット記録ヘッド32が完成し、図13−3(F)で示すように、インクプール室38や圧力室50内にインク110が充填可能とされる。
以上のようにして製造されるインクジェット記録ヘッド32を備えたインクジェット記録装置10において、次に、その作用を説明する。まず、インクジェット記録装置10に印刷を指令する電気信号が送られると、ストッカー24から記録用紙Pが1枚ピックアップされ、搬送装置26により搬送される。
一方、インクジェット記録ユニット30では、すでにインクタンクからインク供給ポートを介してインクジェット記録ヘッド32のインクプール室38にインク110が注入(充填)され、インクプール室38に充填されたインク110は、インク供給路114を経て圧力室50へ供給(充填)されている。そして、このとき、ノズル56の先端(吐出口)では、インク110の表面が圧力室50側に僅かに凹んだメニスカスが形成されている。
そして、記録用紙Pを搬送しながら、複数のノズル56から選択的にインク滴を吐出することにより、記録用紙Pに、画像データに基づく画像の一部を記録する。すなわち、駆動IC60により、所定のタイミングで、所定の圧電素子46に電圧を印加し、振動板48を上下方向に撓み変形させて(面外振動させて)、圧力室50内のインク110を加圧し、所定のノズル56からインク滴として吐出させる。
こうして、記録用紙Pに、画像データに基づく画像が完全に記録されたら、排紙ベルト23により記録用紙Pをトレイ25に排出する。これにより、記録用紙Pへの印刷処理(画像記録)が完了する。
ここで、このインクジェット記録ヘッド32は、インクプール室38と圧力室50の間に振動板48(圧電素子46)が配置され、インクプール室38と圧力室50が同一水平面上に存在しないように構成されている。したがって、圧力室50が互いに近接配置され、ノズル56が高密度に配設されている。
また、圧電素子46に電圧を印加する駆動IC60は、圧電素子基板70(プール室部材39)から外方側へ突出しない構成とされている(インクジェット記録ヘッド32内に内蔵されている)。したがって、インクジェット記録ヘッド32の外部に駆動IC60を実装する場合に比べて、圧電素子46と駆動IC60の間を接続する金属配線90の長さが短くて済み、これによって、駆動IC60から圧電素子46までの低抵抗化が実現されている。
つまり、実用的な配線抵抗値で、ノズル56の高密度化、即ちノズル56の高密度なマトリックス状配設が実現されており、これによって、高解像度化が実現可能になっている。しかも、その駆動IC60は、天板41上にフリップチップ実装されているので、高密度の配線接続が容易にでき、更には駆動IC60の高さの低減も図れる(薄くできる)。したがって、インクジェット記録ヘッド32の小型化も実現される。
具体的には、従来のFPC方式による電気接続では、ノズル解像度は600npi(nozzle per pitch)が限界であったが、本発明の方式では、容易に1200npi配列が可能となった。また、サイズについては、600npiのノズル配列を例にとって比較した場合、FPCを用いなくて済むため、1/2以下にすることが可能となった。
また、天板41の金属配線90が、樹脂保護膜92によって被覆されているので、インク110による金属配線90の腐食を防止することができる。また、駆動IC60と上部電極54とは、天板41に形成された電気接続用貫通口42内の金属配線90で接続されるが、更に電気接続用貫通口42内は半田86が充填されており、底部42B(図11−1(B)参照)が補強されている。
このため、底部42Bへ熱ストレスや機械的ストレスが作用した場合でも金属配線90と上部電極54との接触状態を確実に維持できる。また、万が一、金属配線90が断線した場合であっても、半田86によって導通状態を確保できる。
また、天板41の裏面(下面)に、配線やバンプを形成することなく、天板部材40を圧電素子基板70と電気的に接続できる。すなわち、天板41に対して片面(上面)のみに加工を施せばよいので、製造が容易になる。
しかも、例えばバンプ等によって金属配線90と上部電極54とを電気的に接続する場合には、バンプの高さに大きなばらつきがあると接合が困難になることがあるが、本実施形態では、半田86の量にばらつきがあっても、過分の半田86は電気接続用貫通口42内に収容されているので、天板部材40と圧電素子基板70とを好適に接合できる。つまり、半田86の量のばらつきに対して、マージンを大きくとれるので、この点においても製造が容易になっている。
また、金属配線90と上部電極54との接続部分では、実質的に、金属配線90と、上部電極54と、半田86のみが存在しており、これらは高温耐性がある。このため、後工程(上記の製造過程では、流路基板72を接合する工程等)においても、加工方法や材料選択の自由度が高くなる。
また、第1支持基板76が、ガラス製であると、熱処理時の熱膨張の差が小さく、反りや剥離に対して強い。したがって、天板41と圧電素子基板70、圧電素子基板70と流路基板72をそれぞれ好適に熱圧着することができる。
また、本製造方法では、第1支持基板76の界面剥離層としてSi膜78を用い、XeF2ガス(温度:常温、圧力:3Torr)によりドライエッチングして、そのSi膜78を選択的に除去することにより、第1支持基板76を圧電素子基板70から剥離処理する。つまり、XeF2ガスが分解して生じたF(フッ素)が、第1支持基板76の貫通孔76Aを通ってSi膜78へ達し、そのSi膜78をエッチングする(2XeF2+Si→2Xe+SiF4)。
このように、気体供給によるドライエッチングであると、微細構造部への進入効率を高めることができる。つまり、界面剥離層の除去をドライエッチング(気体)で行うと、ウェットエッチング(液体)で行う場合の不具合を解消することができる。
例えば、界面剥離層としてゲルマニウム(Ge)膜を用い、その溶解液として過酸化水素(H22)を用いると、エッチングにより発生した気泡が、溶解液(H22)の界面剥離層(Ge膜)への供給を阻害して、エッチングの進行を遅らせたり、液体であるために、界面領域において、古い溶解液(H22)と新しい溶解液(H22)の置換が、気体に比べて遅くなる不具合があった。
つまり、エッチング量の不均一性をもたらしたり、程度によっては、部分的にエッチングの進行が停止し、エッチングが完了しないという不具合を招いていた。更に、エッチング速度が低下するので、生産性の低下を招くといった問題があった。本製造方法では、気体によるドライエッチングなので、これらの問題を解決することができる。
すなわち、気体によるドライエッチングであるため、液体によるウェットエッチングで問題になった気泡による溶解液の界面剥離層への供給阻害はなく、高い歩留まりと生産性を確保することができる。また、エッチング剤(XeF2ガス)の界面剥離層への供給が迅速に行われ、エッチング速度の低下、つまり、生産性の低下が生じない。
また、振動板48にピンホールがあっても、そこから進入したエッチング剤(XeF2ガス)が空洞内部(この場合は圧電素子46の周囲)に残留することがない。液体の場合は、長く滞留して、構造材料を浸食するので、初期不良や信頼性不良を招くおそれがある。
なお、界面剥離層とエッチング剤の組み合わせは、Si膜78とXeF2ガスの組み合わせに限定されるものではなく、例えば、界面剥離層として、シリコン酸化膜を用い、エッチング剤として、フッ化水素(HF)とメタノール(CH3OH)の混合ガスを用いる組み合わせも考えられる。
何れにしても、このような組み合わせにすれば、被エッチング材である界面剥離層とのエッチング選択比(被エッチング材のみをエッチングできるエッチングレート)が高いので好ましい。また、Si膜78やシリコン酸化膜は、高融点であるため、高温プロセス(例えば、1000℃程度)にも充分に対応できる。
次に、第2実施形態のインクジェット記録ヘッド32について説明する。なお、以下において、第1実施形態のインクジェット記録ヘッド32と同一の構成要素、部材等は同一符号を付して、その詳細な説明(作用を含む)を省略する。また、この第2実施形態のインクジェット記録ヘッド32は、第1実施形態のインクジェット記録ヘッド32と同じ構成になり、製造方法だけが異なる。したがって、その製造方法についてのみ、図15乃至図17を基に詳細に説明する。
第2実施形態のインクジェット記録ヘッド32では、圧電素子46(PZT膜64)を、第1支持基板76とは異なる第3支持基板74の上面(表面)に作製し、それを第1支持基板76(圧電素子基板70)上に転写する工程を採用している。すなわち、まず、図15(A)で示すように、貫通孔74Aが複数穿設されたガラス製の第3支持基板74を用意する。
第3支持基板74はシリコン(Si)以外の撓まないものであれば何でもよく、ガラス製に限定されるものではない(例えば、各種セラミックスでもよい)が、ガラスは硬い上に安価なので好ましい。この第3支持基板74の作製方法としては、ガラス基板のブラスト加工及びフェムト秒レーザー加工や、感光性ガラス基板(例えば、HOYA株式会社製PEG3C)を露光・現像する等が知られている。
そして、図15(B)で示すように、第3支持基板74上に、スパッタ法により、Si膜82(膜厚1μm)を着膜する。このSi膜82は接着層及び界面剥離層として機能する。なお、Si膜82は、蒸着やCVD法でも成膜できる。
次に、図15(C)で示すように、そのSi膜82の上面に、上部電極54(Au膜66:膜厚0.5μm)、圧電素子46(PZT膜64:膜厚5μm)、下部電極52(Au膜62:膜厚0.5μm)をスパッタ法にて順に積層する。なお、スパッタ法に限定されるものではなく、AD法、Sol−Gel法、バルク研磨法等を採用してもよい。また、上部及び下部の電極材料としては、圧電素子46であるPZT材料との親和性が高く、耐熱性がある、例えばAu、Ir、Ru、Pt等が挙げられる。
その後、図15(D)で示すように、上部電極54(Au膜66)、圧電素子46(PZT膜64)、下部電極52(Au膜62)をパターニングする。具体的には、ホトリソグラフィー法によるレジスト形成、パターニング、RIE法によるエッチング、酸素プラズマによるレジスト剥離である。
一方、図16−1(A)で示すように、ガラス製の第1支持基板76を用意する。第1支持基板76はシリコン(Si)以外の撓まないものであれば何でもよく、ガラス製に限定されるものではない(例えば、各種セラミックスでもよい)が、ガラスは硬い上に安価なので好ましい。
そして、図16−1(B)で示すように、第1支持基板76の上面(表面)に、スパッタ法により、Si膜78(膜厚1μm)を着膜する。このSi膜78は接着層及び界面剥離層として機能する。なお、Si膜78は、蒸着やCVD法でも成膜できる。
次に、図16−1(C)で示すように、そのSi膜78の上面に振動板48となる薄膜、例えば温度350℃、RFpower300W、周波数450KHz、圧力1.5torr、ガスSiH4/N2O=150/4000sccmのプラズマCVD法により、SiOx膜88(膜厚4μm)を形成(成膜)する。なお、この場合の振動板48の材料としては、SiNx膜、SiC膜、金属膜等であってもよい。
次いで、図16−1(D)で示すように、スパッタ法により、例えば厚み0.5μm程度の下部電極52(Au膜62)を成膜し、パターニングする。具体的には、ホトリソグラフィー法によるレジスト形成、パターニング、RIE法によるエッチング、酸素プラズマによるレジスト剥離である。
そして、図16−1(E)で示すように、図15(D)で示した第3支持基板74上の下部電極52を、図16−1(D)で示した第1支持基板76上の下部電極52に被せて熱圧着(例えば、600℃で60分間)により両者を接合する。すなわち、下部電極52同士を接合する。なお、この下部電極52が接地電位となる。
その後、図16−2(F)で示すように、真空中において、XeF2ガスにより、Si膜82をドライエッチングして除去し、図16−2(G)で示すように、第3支持基板74を剥離処理する。そして、図16−2(H)で示すように、上面に露出している下部電極52と上部電極54の上面に低透水性絶縁膜(SiOx膜)80を積層し、その後、パターニングにより、上部電極54と金属配線90を接続するための開口84(コンタクト孔)を形成する。
具体的には、CVD法にてダングリングボンド密度が高い低透水性絶縁膜(SiOx膜)80を着膜する、ホトリソグラフィー法によるレジスト形成、パターニング(エッチング)、酸素プラズマによるレジスト剥離である。なお、ここでは低透水性絶縁膜としてSiOx膜を用いたが、SiNx膜、SiOxNy膜等であってもよい。
次いで、図16−2(I)で示すように、隔壁樹脂層119及び隔壁樹脂層118をパターニングする。具体的には、隔壁樹脂層119、隔壁樹脂層118を構成する感光性樹脂を塗布し、露光・現像することでパターンを形成し、最後にキュアする。このとき、隔壁樹脂層119にインク供給用貫通口44を形成しておく。なお、隔壁樹脂層119と隔壁樹脂層118とは、同一膜であるが、設計パターンが異なっている。
こうして、圧電素子基板70が製造され、この圧電素子基板70に、例えばガラス板を支持体とする天板部材40が結合(接合)される。天板部材40の製造においては、図10(A)で示したように、天板部材40自体が支持体となる程度の強度を確保できる厚み(0.3mm〜1.5mm)の天板41を含んでいるので、別途支持体を設ける必要がない。この天板41に、図10(B)で示したように、インク供給用貫通口112及び電気接続用貫通口42を形成する。
具体的には、ホトリソグラフィー法で感光性ドライフィルムのレジストをパターニングし、このレジストをマスクとしてサンドブラスト処理を行って開口を形成した後、そのレジストを酸素プラズマにて剥離する。なお、インク供給用貫通口112及び電気接続用貫通口42は、断面視で内面が下方に向かって次第に接近するようなテーパー状(漏斗状)に形成されている。
このようにしてインク供給用貫通口112及び電気接続用貫通口42が形成された天板41(天板部材40)を、図17−1(A)で示すように、圧電素子基板70に被せて、両者を熱圧着(例えば、350℃、2kg/cm2で20分間)により結合(接合)する。このとき、隔壁樹脂層119と隔壁樹脂層118とは面一(同一高さ)になるように構成されているので、天板41が接触する際の接触性が高くなり、高いシール性で接合することができる。
そして、図17−1(B)で示すように、天板41の上面に金属配線90を成膜してパターニングする。具体的には、スパッタ法によるAl膜(厚さ1μm)の着膜、ホトリソグラフィー法によるレジストの形成、H3PO4薬液を用いたAl膜のウェットエッチング、酸素プラズマによるレジスト剥離である。
なお、電気接続用貫通口42の段差は非常に大きいので、ホトリソグラフィー工程ではレジストのスプレー塗布法と長焦点深度露光法を用いている。このとき、金属配線90の一部が、電気接続用貫通口42の内面から、上部電極54へと達するようにパターニングしておく。
これにより、電気接続用貫通口42の底部42Bが金属配線90で閉塞され、電気接続用貫通口42は、上方にのみ開放された以外は閉じた空間となる。また、金属配線90を電気接続用貫通口42の深部まで厚く成膜したい場合には、スパッタ法よりも段差被覆性の良好なCVD法を採用すればよい。
そして、このように金属配線90がパターニングされた電気接続用貫通口42内(上記空間内)に、図17−1(C)で示すように、半田86を搭載する。この方法としては、第1実施形態のインクジェット記録ヘッド32と同様に、半田ボール86Bを電気接続用貫通口42内に直接搭載する半田ボール法等を用いることができる。
次に、図17−2(D)で示すように、半田86をリフロー(例えば、280℃で10分間)し、電気接続用貫通口42の底部42Bにまで行き渡らせる。このとき、電気接続用貫通口42の底部42Bには、溶融した半田86が流れ出る経路がないので、高温の環境下で半田86を充分に溶融させて、電気接続用貫通口42の底部42Bまで確実に充填することができる。
そして、図17−2(E)で示すように、金属配線90が形成された面に樹脂保護膜92(例えば、富士フイルムアーチ社製の感光性ポリイミド Durimide7320)を積層してパターニングする。なお、このとき、第1インク供給路114Aを樹脂保護膜92が覆わないようにする。また、この樹脂保護膜92としては、ポリイミド系、ポリアミド系、エポキシ系、ポリウレタン系、シリコーン系等、耐インク性を有していればよい。
更に、図17−2(F)で示すように、金属配線90に駆動IC60をフリップチップ実装する。このとき、駆動IC60は、予め半導体ウエハプロセスの終りに実施されるグラインド工程にて、所定の厚さ(70μm〜300μm)に加工されている。そして、駆動IC60の周囲を樹脂材58で封止し、駆動IC60を水分等の外部環境から保護できるようにする。
これにより、後工程でのダメージ、例えば、できあがった圧電素子基板70をダイシングによってインクジェット記録ヘッド32に分割する際の水や研削片によるダメージを回避することができる。そして、図17−3(G)で示すように、真空中において、Si膜78をXeF2ガスによってドライエッチングして除去し、第1支持基板76を剥離処理する。
以上の製造工程により、図17−3(H)で示すように、天板部材40が結合(接合)された圧電素子基板70が完成する。そして、この状態から、天板部材40の天板41が圧電素子基板70の支持体となる。なお、第1支持基板76に貫通孔76Aが形成されていてもよいが、エッチング剤は気体(XeF2ガス)なので、貫通孔76Aが形成されていなくてもエッチング可能である。つまり、この第2実施形態のインクジェット記録ヘッド32の場合、XeF2ガスはインク流路114から進入できる。
また、流路基板72の製造工程は、上記第1実施形態のインクジェット記録ヘッド32の場合と全く同一であり、その後の工程も上記第1実施形態のインクジェット記録ヘッド32の場合と全く同一であるため、それらの説明は省略する。
次に、第3実施形態のインクジェット記録ヘッド32について説明する。なお、以下において、第1実施形態及び第2実施形態のインクジェット記録ヘッド32と同一の構成要素、部材等は同一符号を付して、その詳細な説明(作用を含む)を省略する。この第3実施形態のインクジェット記録ヘッド32では、第1実施形態及び第2実施形態のインクジェット記録ヘッド32と、ノズル56の製造方法が異なっている。
つまり、この第3実施形態のインクジェット記録ヘッド32では、ノズル56を第1支持基板76とは異なる第4支持基板98の上面(表面)に作製し、それを第1支持基板76(圧電素子基板70)に転写する工程を採用している。以下、その製造方法について、図18乃至図21を基に詳細に説明する。
この第3実施形態のインクジェット記録ヘッド32では、図18で示すように、流路基板72に圧力室50と連通路115のみが形成され、駆動IC60をフリップチップ実装する前に、その流路基板72が圧電素子基板70に接合されている。ここまでは、第1実施形態や第2実施形態のインクジェット記録ヘッド32と同様に製造される。
一方、図19(A)で示すように、ノズル形成基板として、ガラス製の第4支持基板98を用意する。第4支持基板98はシリコン(Si)以外の撓まないものであれば何でもよく、ガラス製に限定されるものではない(例えば、各種セラミックスでもよい)が、ガラスは硬い上に安価なので好ましい。
そして、図19(B)で示すように、その第4支持基板98の上面(表面)に、スパッタ法により、Si膜94(膜厚1μm)を着膜する。このSi膜94は接着層及び界面剥離層として機能する。なお、Si膜94は、蒸着やCVD法でも成膜できる。
その後、図19(C)で示すように、そのSi膜94の上に、ノズル形成部材としての感光性樹脂膜96を塗布する。すなわち、ポリイミド膜(膜厚25μm)を形成(着膜)する。そして、図19(D)で示すように、その感光性樹脂膜96を露光・現像し、ノズル56となる開口96Aを形成する。これにより、ノズル基板68が完成する。
その後、図20−1(A)で示すように、流路基板72にノズル基板68を結合(接合)する。すなわち、樹脂基板102の下面に、第4支持基板98の上面に形成された感光性樹脂膜96を熱圧着により接合する。そして次に、図20−1(B)で示すように、インク流路114からXeF2ガスを供給して、Si膜94をドライエッチングして除去し、図20−2(C)で示すように、第4支持基板98を剥離処理する。なお、エッチング剤は気体(XeF2ガス)なので、被エッチング材であるSi膜94まで充分に行き届く。
その後、駆動IC60をフリップチップ実装し、第1実施形態及び第2実施形態のインクジェット記録ヘッド32と同様に、天板部材40(天板41)の上面にプール室部材39を装着して、これらの間にインクプール室38を構成することにより、インクジェット記録ヘッド32が完成し、図21で示すように、インクプール室38や圧力室50内にインク110が充填可能とされる。
以上、何れにしても、インクジェット記録ヘッド32を構成する圧電素子基板70及び流路基板72は、常に硬い支持基板76、100上でそれぞれ製造され、それらの製造工程において、各支持基板76、100がそれぞれ不要となった時点で、各支持基板76、100が取り除かれるという製造方法が採用されているので、極めて製造しやすい構成となっている。なお、製造された(完成した)インクジェット記録ヘッド32は、天板41によって支持されるので(天板41が支持体になるので)、その剛性は確保される。
また、上記各実施形態においては、電気接続用貫通口42をテーパー状(漏斗状)に形成することで、開口部が広くなり、薄膜形成時の段差被覆性が改善するので、電気接続用貫通口42内の金属配線90(金属薄膜)を深部まで厚く形成することができる。これにより、半田86が電気接続用貫通口42の上方部まで充填されなくても、下層部の金属配線90(金属薄膜)が半田86と接触するため、良好な電気接続を実現できる。
なお、電気接続用貫通口42に充填されるものは半田86に限定されるものではなく、溶融金属、金属ペースト、導電性接着剤等でも構わない。これらの材料に求められる抵抗率は、素子に要求される特性に応じて異なって来るため、コストや工程マッチング(耐熱温度等)を考慮して適宜選択すればよい。
また、本発明に係る液滴吐出ヘッドとして、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するインクジェット記録ヘッド32を挙げ、液滴吐出装置としても、インクジェット記録ヘッド32を備えたインクジェット記録装置10を挙げたが、本発明に係る液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置は、記録用紙P上への画像(文字を含む)の記録に限定されるものではない。
すなわち、上記実施形態のインクジェット記録装置10では各色のインクジェット記録ユニット30のインクジェット記録ヘッド32から画像データに基づいて選択的にインク滴が吐出されてフルカラーの画像が記録用紙Pに記録されるようになっているが、記録媒体は記録用紙Pに限定されるものでなく、また、吐出する液体もインク110に限定されるものではない。
例えば、高分子フィルムやガラス上にインク110を吐出してディスプレイ用カラーフィルターを作成したり、溶接状態の半田を基板上に吐出して部品実装用のバンプを形成するなど、工業的に用いられる液滴噴射装置全般に対して、本発明に係るインクジェット記録ヘッド32を適用することができる。更に、上記実施形態のインクジェット記録装置10では、FWAを例に挙げたが、主走査機構と副走査機構を有するPartial Width Array(PWA)に本発明を適用してもよい。
インクジェット記録装置を示す概略正面図 インクジェット記録ヘッドの配列を示す説明図 記録媒体の幅と印字領域の幅との関係を示す説明図 (A)第1実施形態のインクジェット記録ヘッドの全体構成を示す概略平面図、(B)第1実施形態のインクジェット記録ヘッドの1素子の構成を示す概略平面図 (A)図4(B)のA−A'線断面図、(B)図4(B)のB−B'線断面図、(C)図4(B)のC−C'線断面図 第1実施形態のインクジェット記録ヘッドの構成を示す概略断面図 インクジェット記録ヘッドの駆動ICのバンプを示す概略平面図 第1実施形態のインクジェット記録ヘッドを製造する全体工程の説明図 第1実施形態に係る圧電素子基板を製造する工程(A)〜(F)を示す説明図 第1実施形態に係る圧電素子基板を製造する工程(G)〜(K)を示す説明図 天板部材を製造する工程(A)〜(B)を示す説明図 第1実施形態に係る圧電素子基板に天板部材を接合した後の工程(A)〜(C)を示す説明図 第1実施形態に係る圧電素子基板に天板部材を接合した後の工程(D)〜(F)を示す説明図 第1実施形態に係る圧電素子基板に天板部材を接合した後の工程(G)〜(H)を示す説明図 流路基板を製造する工程(A)〜(E)を示す説明図 第1実施形態に係る圧電素子基板に流路基板を接合した後の工程(A)〜(B)を示す説明図 第1実施形態に係る圧電素子基板に流路基板を接合した後の工程(C)〜(D)を示す説明図 第1実施形態に係る圧電素子基板に流路基板を接合した後の工程(E)〜(F)を示す説明図 (A)半田を搭載する別の方法を示す説明図、(B)半田を搭載する更に別の方法を示す説明図 第2実施形態に係る圧電素子基板を製造する工程(A)〜(D)を示す説明図 第2実施形態に係る圧電素子基板を製造する工程(A)〜(E)を示す説明図 第2実施形態に係る圧電素子基板を製造する工程(F)〜(I)を示す説明図 第2実施形態に係る圧電素子基板に天板部材を接合した後の工程(A)〜(C)を示す説明図 第2実施形態に係る圧電素子基板に天板部材を接合した後の工程(D)〜(F)を示す説明図 第2実施形態に係る圧電素子基板に天板部材を接合した後の工程(G)〜(H)を示す説明図 第3実施形態に係る圧電素子基板に流路基板を接合した状態を示す説明図 第3実施形態に係るノズル基板を製造する工程(A)〜(D)を示す説明図 第3実施形態に係る流路基板にノズル基板を接合した後の工程(A)〜(B)を示す説明図 第3実施形態に係る流路基板にノズル基板を接合した後の工程(C)を示す説明図 第3実施形態のインクジェット記録ヘッドの構成を示す概略断面図 従来のインクジェット記録ヘッドの構造を示す概略断面図 従来のインクジェット記録ヘッドの構造を示す概略平面図 従来のインクジェット記録ヘッドの構造を示す概略斜視図
符号の説明
10 インクジェット記録装置(液滴吐出装置)
30 インクジェット記録ユニット
32 インクジェット記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)
38 インクプール室
39 プール室部材
40 天板部材
41 天板
42 電気接続用貫通口
44 インク供給用貫通口
46 圧電素子
48 振動板
50 圧力室
52 下部電極
54 上部電極
56 ノズル
58 樹脂材
60 駆動IC
62 Au膜
64 PZT膜
66 Au膜
68 ノズル基板
70 圧電素子基板
72 流路基板
74 第3支持基板
76 第1支持基板
78、82、94 Si膜(界面剥離層)
80、88 SiOx膜
86 半田
90 金属配線
92 樹脂保護膜
96 感光性樹脂膜(ノズル形成部材)
98 第4支持基板(ノズル形成基板)
100 第2支持基板
102 樹脂基板
106 金型
108 フッ素材
110 インク(液体)
112 インク供給用貫通口
114 インク供給路
116 大気連通孔
118 隔壁樹脂層
119 隔壁樹脂層
120 貫通孔

Claims (14)

  1. 液滴を吐出するノズルと、
    前記ノズルと連通し、液体が充填される圧力室と、
    前記圧力室の一部を構成する振動板と、
    前記圧力室へ流路を介して供給する液体をプールするプール室と、
    前記振動板を変位させる圧電素子と、
    を有する液滴吐出ヘッドの製造方法であって、
    支持基板上に界面剥離層を介して振動板を設けるとともに、該振動板に圧電素子を設け、天板を前記振動板に設けた後、ドライエッチングにより前記界面剥離層を除去して、前記支持基板を前記振動板から取り外してなる圧電素子基板に、圧力室が形成された流路基板を接合してなることを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
  2. 液滴を吐出するノズルと、
    前記ノズルと連通し、液体が充填される圧力室と、
    前記圧力室の一部を構成する振動板と、
    前記圧力室へ流路を介して供給する液体をプールするプール室と、
    前記振動板を変位させる圧電素子と、
    を有する液滴吐出ヘッドの製造方法であって、
    一方の支持基板上に界面剥離層を介して圧電素子を設けるとともに、他方の支持基板上に界面剥離層を介して振動板を設け、前記他方の支持基板上の振動板に、前記一方の支持基板上の圧電素子を設けた後、ドライエッチングにより前記一方の支持基板上の界面剥離層を除去して、該一方の支持基板を前記圧電素子から取り外し、天板を前記振動板に設けた後、ドライエッチングにより前記他方の支持基板上の界面剥離層を除去して、該他方の支持基板を前記振動板から取り外してなる圧電素子基板に、圧力室が形成された流路基板を接合してなることを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
  3. ノズル形成基板上に界面剥離層を介してノズル形成部材を設け、該ノズル形成部材を前記流路基板に接合後、ドライエッチングにより前記界面剥離層を除去して、前記ノズル形成基板を前記流路基板から取り外してなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  4. 前記プール室を、前記振動板を間に置いて前記圧力室と反対側に設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  5. 前記界面剥離層は、シリコン膜であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  6. 前記ドライエッチングは、フッ化キセノンによって行われることを特徴とする請求項5に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  7. 前記支持基板は、シリコン以外の材料で形成されていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  8. 前記界面剥離層は、シリコン酸化膜であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  9. 前記ドライエッチングは、フッ化水素とメタノールの混合ガスによって行われることを特徴とする請求項8に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  10. 前記支持基板は、シリコン酸化物以外の材料で形成されていることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  11. 前記支持基板は、ガラス製であることを特徴とする請求項7に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  12. 少なくとも前記圧電素子基板と前記流路基板は、熱圧着によって接合されることを特徴とする請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  13. 請求項1乃至請求項12の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法によって製造されることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  14. 請求項13に記載の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009179049A (ja) * 2008-02-01 2009-08-13 Fuji Xerox Co Ltd 液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置

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