JP2008155461A - 液滴吐出ヘッド - Google Patents

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Abstract

【課題】高密度のピエゾアクチュエータのクロストークを防止することができるインクジェット記録ヘッドを得る。
【解決手段】振動板48の幅を圧力室50の幅よりも広く形成し、下部電極52の下部以外の領域において、振動板48を除去し、各圧電素子46毎で振動板48を分断している。これにより、各圧電素子46の振動板48が独立した状態となるため、圧電素子46の電歪動作時に圧電素子46間の相互干渉(クロストーク)がなくなる。
【選択図】図8

Description

本発明は、インクなどの液滴を吐出する液滴吐出ヘッドに関する。
従来から、主走査方向に往復移動する液滴吐出ヘッドとしてのインクジェット記録ヘッド(以下、単に「記録ヘッド」という場合がある)の複数のノズルから選択的にインク滴を吐出し、副走査方向に搬送されて来る記録紙等の記録媒体に文字や画像等を印刷するインクジェット記録装置は知られている。
そして、次世代の記録ヘッドとして1200dpi、さらには2400dpiの高解像度のピエゾ(圧電素子)タイプの低コスト記録ヘッドを開発していく課程において、プリンタの印字品質・印字速度などの向上の要求に応えるため、ピエゾアクチュエータの小型高密度化、低電圧作動化、高速応答化を図るための研究が進められている。
この中で、下部電極をパターニングしてアドレス配線とするピエゾアクチュエータの構成において、ピエゾアクチュエータにおける各ビット間のクロストーク(干渉)が問題となるが、そのためにはアクチュエータの振動板となる基板の肉厚を薄くすることが重要である。しかし、基板全体を薄くすると、基板の強度が低下するという相反する関係がある。
また、ピエゾアクチュエータの高密度化により、同一基板面上に設けられた複数の圧電/電歪作動部間の干渉や基板剛性の影響が増大し、変位効率が低くなり、その経時劣化、素子間ばらつきが大きくなる。
例えば、特許文献1では、下部電極の幅が圧力室の幅より狭く形成され、また、圧電素子の幅が下部電極の幅より大きく形成されることで、圧電素子の印刷ばらつきや焼成による圧電素子の収縮等による変形特性の影響を小さくし、下部電極の幅を正確に形成することで変形特性を均一にしているが、下部電極をアドレス配線とする構成では適用できない。
特開平7−148921号公報
そこで、本発明は、このような問題点に鑑み、高密度のピエゾアクチュエータのクロストークを防止することができる液滴吐出ヘッドを得ることを目的とする。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、液滴吐出ヘッドにおいて、液滴を吐出する複数のノズルと、各前記ノズルと繋がり、液体が充填される圧力室と、前記圧力室の一部を構成する振動板と、前記振動板を間に置いて前記圧力室と反対側に配置され、前記圧力室へ流路を介して供給する液体をプールする液体プール室と、前記振動板の表面に形成され、該振動板を変位させる圧電素子の一方の極性となる下部電極と、前記圧電素子の上面に設けられ、他方の極性となる上部電極と、を備え、前記下部電極が前記圧力室の幅よりも広く形成され、該下部電極の下部以外の領域において、隣り合う前記圧力室の間にある振動板は分断されていることを特徴とする。
請求項1に記載の発明では、振動板を間に置いて圧力室と反対側に液体プール室を設けることで、圧力室を互いに近接して配設することができるので、圧力室毎に設けられるノズルを高密度に配設することができる。
ここで、隣り合う圧力室の間にある振動板を分断することで、各圧電素子で振動板が独立した状態となるため、圧電素子の電歪動作時に圧電素子間の相互干渉(クロストーク)がなくなる。また、振動板によって圧力室の一部を構成し、振動板を圧力室の幅よりも広く形成する。これにより、振動板は圧力室の周縁部で保持されることとなり、圧電素子の変形における強度は確保される。
請求項2に記載の発明は、液滴を吐出する複数のノズルと、各前記ノズルと繋がり、液体が充填される圧力室と、前記圧力室の一部を構成する振動板と、前記振動板を間に置いて前記圧力室と反対側に配置され、前記圧力室へ流路を介して供給する液体をプールする液体プール室と、前記振動板の表面に形成され、該振動板を変位させる圧電素子の一方の極性となる下部電極と、前記圧電素子の上面に設けられ、他方の極性となる上部電極と、を備え、隣り合う前記圧力室の間にある振動板は薄膜化されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明では、隣り合う圧力室の間にある振動板を薄膜化することで、圧電素子の電歪動作時に隣接する圧電素子間の間で生じる互いに引張り合う力が軽減される。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、分断された前記振動板又は薄膜化されて区画された振動板と前記下部電極は同じ面積であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明では、分断された振動板又は薄膜化されて区画された振動板と下部電極を同じ面積とすることで、下部電極をドライエッチングする工程で振動板をドライエッチングすることができ、別途振動板を薄膜化するなどの工程を必要としない。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記圧電素子の電歪作動部は、平面視にて前記圧力室の内側にあることを特徴とする。
請求項4に記載の発明では、圧電素子の電歪作動部を、平面視にて圧力室の内側に設けるようにすることで、圧電素子を効率よく変位させることができると共に、繰り返し動作の中で変位の低下、圧電素子間のばらつきを抑制でき、圧電素子が本来有する特性を安定的に発揮することができる。
本発明は、上記構成としたので、高密度のピエゾアクチュエータのクロストークを防止することができる。
以下、本発明の最良な実施の形態について、図面に示す実施例を基に詳細に説明する。なお、液滴吐出装置としてはインクジェット記録装置10を例に採って説明する。したがって、液体はインク110とし、液滴吐出ヘッドはインクジェット記録ヘッド32として説明をする。また、記録媒体は記録用紙Pとして説明をする。
インクジェット記録装置10は、図1で示すように、記録用紙Pを送り出す用紙供給部12と、記録用紙Pの姿勢を制御するレジ調整部14と、インク滴を吐出して記録用紙Pに画像形成する記録ヘッド部16及び記録ヘッド部16のメンテナンスを行うメンテナンス部18を備える記録部20と、記録部20で画像形成された記録用紙Pを排出する排出部22とから基本的に構成されている。
用紙供給部12は、記録用紙Pが積層されてストックされているストッカー24と、ストッカー24から1枚ずつ取り出してレジ調整部14に搬送する搬送装置26とから構成されている。レジ調整部14は、ループ形成部28と、記録用紙Pの姿勢を制御するガイド部材29とを有しており、記録用紙Pは、この部分を通過することによって、そのコシを利用してスキューが矯正されるとともに、搬送タイミングが制御されて記録部20に供給される。そして、排出部22は、記録部20で画像が形成された記録用紙Pを、排紙ベルト23を介してトレイ25に収納する。
記録ヘッド部16とメンテナンス部18の間には、記録用紙Pが搬送される用紙搬送路27が構成されている(用紙搬送方向を矢印PFで示す)。用紙搬送路27は、スターホイール17と搬送ロール19とを有し、このスターホイール17と搬送ロール19とで記録用紙Pを挟持しつつ連続的に(停止することなく)搬送する。そして、この記録用紙Pに対して、記録ヘッド部16からインク滴が吐出され、記録用紙Pに画像が形成される。メンテナンス部18は、インクジェット記録ユニット30に対して対向配置されるメンテナンス装置21を有しており、インクジェット記録ヘッド32(図2参照)に対するキャッピングや、ワイピング、更には、ダミージェットやバキューム等の処理を行う。
図2で示すように、各インクジェット記録ユニット30は、矢印PFで示す用紙搬送方向と直交する方向に配置された支持部材34を備えており、この支持部材34に複数のインクジェット記録ヘッド32が取り付けられている。インクジェット記録ヘッド32には、マトリックス状に複数のノズル56が形成されており、記録用紙Pの幅方向には、インクジェット記録ユニット30全体として一定のピッチでノズル56が並設されている。
そして、用紙搬送路27を連続的に搬送される記録用紙Pに対し、ノズル56からインク滴を吐出することで、記録用紙P上に画像が記録される。なお、インクジェット記録ユニット30は、例えば、いわゆるフルカラーの画像を記録するために、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色に対応して、少なくとも4つ配置されている。
図3で示すように、それぞれのインクジェット記録ユニット30のノズル56による印字領域幅は、このインクジェット記録装置10での画像記録が想定される記録用紙Pの用紙最大幅PWよりも長くされており、インクジェット記録ユニット30を紙幅方向に移動させることなく、記録用紙Pの全幅にわたる画像記録が可能とされている。
ここで、印字領域幅とは、記録用紙Pの両端から印字しないマージンを引いた記録領域のうち最大のものが基本となるが、一般的には印字対象となる用紙最大幅PWよりも大きくとっている。これは、記録用紙Pが搬送方向に対して所定角度傾斜して(スキューして)搬送されるおそれがあるためと、縁無し印字の要望が高いためである。
以上のような構成のインクジェット記録装置10において、次にインクジェット記録ヘッド32について詳細に説明する。なお、図4はインクジェット記録ヘッド32の全体構成を示す概略平面図であり、図5は図4のX−X線断面図である。また、図6は、インクジェット記録ヘッド32として切断される前の天板40を示す概略平面図である。
図4及び図5に示すように、インクジェット記録ヘッド32には、インクタンク(図示省略)と連通するインク供給ポート36が設けられており、そのインク供給ポート36から注入されたインク110は、インクプール室38に貯留される。
インクプール室38は天板40と隔壁42とによって、その容積が規定されており、インク供給ポート36は、天板40の所定箇所に複数、列状に穿設されている。また、列をなすインク供給ポート36の間で、天板40よりも内側のインクプール室38内には、圧力波を緩和する樹脂膜製エアダンパー44(後述する感光性ドライフィルム96)が設けられている。
天板40の材質は、例えばガラス、セラミックス、シリコン、樹脂等、インクジェット記録ヘッド32の支持体になり得る強度を有する絶縁体であれば何でもよい。また、天板40には、後述する駆動IC60へ通電するための金属配線90が設けられている。この金属配線90は、樹脂膜92で被覆保護されており、インク110による侵食が防止されるようになっている。
隔壁42は樹脂(後述する感光性ドライフィルム98)で成形され、インクプール室38を矩形状に仕切っている。また、インクプール室38は、圧電素子46と、その圧電素子46によって上下方向に撓み変形させられる振動板48を介して、圧力室50と上下に分離されている。つまり、圧電素子46及び振動板48が、インクプール室38と圧力室50との間に配置される構成とされ、インクプール室38と圧力室50とが同一水平面上に存在しないように構成されている。
したがって、圧力室50を互いに接近させた状態に配置することが可能であり、ノズル56をマトリックス状に高密度に配設することが可能となっている。
振動板48は、Plasma−Chemical Vapor Deposition(P−CVD)法により、ゲルマニウム(Ge)が添加されたシリコン酸化膜(SiO膜)の上下に、不純物が何も添加されていないSiO膜が積層されて構成された3層構造とされ、少なくとも上下方向に弾性を有し、圧電素子46に通電されると(電圧が印加されると)、上下方向に撓み変形する(変位する)構成になっているが、この他にも振動板としてシリコンとシリコン酸化膜の積層膜などを採用してもよい。この場合、SOIウエハをベース基板として用いて振動板を作製する。なお、振動板48の厚さは、安定した剛性を得るために、1μm以上20μm以下(1μm〜20μm)とされている。
また、圧電素子46は、圧力室50毎に振動板48の上面に接着されている。圧電素子46の下面には一方の極性となる第2電極としての下部電極52が配置され、圧電素子46の上面には他方の極性となる第1電極としての上部電極54が配置されている。そして、上部電極54、圧電素子46及び下部電極52は、保護膜としての低透水性絶縁膜(以下「SiOx膜」という)80で被覆保護されている。圧電素子46を被覆保護しているSiOx膜80は、水分透過性が低くなる条件で着膜するため、水分が圧電素子46の内部に侵入して信頼性不良となること(圧電体としてのPZT膜65内の酸素を還元することにより生ずる圧電特性の劣化)を防止できる。
更に、低透水性絶縁膜(SiOx膜)80の上面は、樹脂膜82で被覆保護されている。これにより、インク110による侵食の耐性が確保されるようになっている。また、金属配線86も、樹脂保護膜88で被覆保護され、インク110による侵食が防止されるようになっている。
また、圧電素子46の上方は、樹脂膜82で被覆保護され、樹脂保護膜88が被覆されない構成になっている。樹脂膜82は、柔軟性がある樹脂層であるため、このような構成により、圧電素子46(振動板48)の変位阻害が防止されるようになっている(上下方向に好適に撓み変形可能とされている)。つまり、圧電素子46上方の樹脂層は、薄い方がより変位阻害の抑制効果が高くなるので、樹脂保護膜88を被覆しないようにしている。さらに、樹脂保護膜88の上面には、圧電素子46に対面するようにして、圧力波を緩和する樹脂膜製エアダンパー44(後述する感光性ドライフィルム96)が設けられている。
一方、駆動IC60は、隔壁42で規定されたインクプール室38の外側で、かつ天板40と振動板48との間に配置されており、振動板48や天板40から露出しない(突出しない)構成とされている。したがって、インクジェット記録ヘッド32の小型化が実現可能となっている。
また、その駆動IC60の周囲は樹脂材58で封止されている。この駆動IC60を封止する樹脂材58の注入口40Bは、図6で示す、製造段階における天板40において、各インクジェット記録ヘッド32を仕切るように格子状に複数個穿設されており、後述する圧電素子基板70の形成後、樹脂材58によって封止された(閉塞された)注入口40Bに沿って天板40を切断することにより、マトリックス状のノズル56(図4参照)を有するインクジェット記録ヘッド32が1度に複数個製造される構成になっている。
また、この駆動IC60の下面には、図5、図7で示すように、複数のバンプ62がマトリックス状に所定高さ突設されており、振動板48上に圧電素子46が形成された圧電素子基板70の金属配線86にフリップチップ実装されるようになっている。したがって、圧電素子46に対する高密度接続が容易に実現可能であり、駆動IC60の高さの低減を図ることができる(薄くすることができる)。これによっても、インクジェット記録ヘッド32の小型化が実現可能となっている。
また、図4において、駆動IC60の外側には、バンプ64が設けられている。このバンプ64は、天板40に設けられる金属配線90と、圧電素子基板70に設けられる金属配線86とを接続しており、当然ながら、圧電素子基板70に実装された駆動IC60の高さよりも高くなるように設けられている。
したがって、インクジェット記録装置10の本体側から天板40の金属配線90に通電され、その天板40の金属配線90からバンプ64を経て金属配線86に通電されて、そこから駆動IC60に通電される構成である。そして、その駆動IC60により、所定のタイミングで圧電素子46に電圧が印加され、振動板48が上下方向に撓み変形することにより、圧力室50内に充填されたインク110が加圧されて、ノズル56からインク滴が吐出する構成である。
インク滴を吐出するノズル56は、圧力室50毎に1つずつ、その所定位置に設けられている。圧力室50とインクプール室38とは、圧電素子46を回避するとともに、振動板48を貫通するインク流路66と、圧力室50から図5において水平方向へ向かって延設された連通路115とが連通することによって接続されている。
ところで、図8(A)は圧電素子46、振動板48及び圧力室50の関係を示す平面図であり、(B)は(A)の断面図である。本実施形態では、図8(A)、(B)に示すように、圧電素子46を略直方体状とし、下部電極52及び振動板48の幅を圧力室50の幅よりも広く形成して、隣接する圧力室50の間で下部電極52の下部以外の領域において、振動板48を除去している。
つまり、下部電極52と振動板48の面積を同じにし、下部電極52及び振動板48の外縁部と圧力室50の周縁部をオーバーラップさせ、このオーバーラップさせる幅Woを、圧力室50の幅Wpの50分の1(Wp/50)以上としている。
また、圧電素子46の電歪作動部46A(電歪効果により変形する領域;図8(A)のハッチング部)が、平面視にて圧力室50の内側となるようにし、圧電素子46の端面と圧力室50の内壁面との距離WqがWp/50以上となるようにしている。
そして、下部電極52の電極部52Aからは個々に金属配線87が接続されており、該金属配線87によって下部電極52がGND接続されるようになっている。
以上のような構成のインクジェット記録ヘッド32において、次に、その製造工程について、図9〜図12を基に詳細に説明する。図9で示すように、このインクジェット記録ヘッド32は、流路基板としてのシリコン基板72の上面に圧電素子基板70を作製し、そして、シリコン基板72の下面にノズルプレート74(ノズルフィルム68)を接合(貼着)することによって製造される。
図10−1(A)で示すように、まず、シリコン基板72を用意する。そして、図10−1(B)で示すように、Reactive Ion Etching(RIE)法により、そのシリコン基板72の圧力室50となる領域に開口部72Aを形成する。具体的には、ホトリソグラフィー法によるレジスト形成、パターニング、RIE法によるエッチング、酸素プラズマによるレジスト剥離である。
次いで、図10−1(C)で示すように、RIE法により、そのシリコン基板72の連通路115となる領域に溝部72Bを形成する。具体的には、上記と同様に、ホトリソグラフィー法によるレジスト形成、パターニング、RIE法によるエッチング、酸素プラズマによるレジスト剥離である。これにより、圧力室50と連通路115とからなる多段構造が形成される。
その後、図10−1(D)で示すように、連通路115を構成する開口部72Aと、圧力室50を構成する溝部72Bに、スクリーン印刷法により、ガラスペースト76を充填する(埋め込む)。スクリーン印刷法を用いると、深い開口部72Aや溝部72Bでも確実にガラスペースト76を埋め込むことができるので好ましい。
また、このガラスペースト76は、熱膨張係数が、1×10−6/℃〜6×10−6/℃であり、軟化点は、550℃〜900℃である。この範囲のガラスペースト76を使用することで、ガラスペースト76にクラックや剥離が発生するのを防止でき、更には、圧電素子46や振動板48となる膜に形状歪みが発生するのを防止できる。
ガラスペースト76を充填後、シリコン基板72を、例えば800℃で10分間、加熱処理する。このガラスペースト76の硬化熱処理に使用する温度は、後述する圧電素子46の成膜温度(例えば550℃)や振動板48の成膜温度(例えば700℃)よりも高い温度である。これにより、振動板48及び圧電素子46の成膜工程において、ガラスペースト76に高温耐性ができる。
つまり、少なくともガラスペースト76を硬化熱処理した温度までは、後工程で使用可能となるので、後工程での使用温度の許容範囲が広がる。その後、シリコン基板72の上面(表面)を研磨して余剰ガラスペースト76を除去し、その上面(表面)を平坦化する。これにより、圧力室50及び連通路115となる領域上にも薄膜等を精度よく形成することが可能となる。
次に、図10−2(E)で示すように、シリコン基板72の上面(表面)に、スパッタ法により、ゲルマニウム(Ge)膜78(膜厚1μm)を成膜する。このGe膜78は、後工程でガラスペースト76をフッ化水素(HF)溶液でエッチング除去するときに、振動板48(SiO膜)が一緒にエッチングされないように保護するエッチングストッパー層として機能する。なお、このGe膜78は、蒸着やCVD法でも成膜できる。また、エッチングストッパー層としては、シリコン(Si)膜も使用できる。
そして、図10−2(F)で示すように、そのGe膜78の上面に振動板48の一部となる薄膜、即ち不純物が何も添加されていないSiO膜(膜厚0.4μm)をP−CVD法により成膜し、次いで、振動板48の一部となる薄膜、即ちGeが添加されたSiO膜(膜厚9.2μm)をP−CVD法により成膜し、更に、振動板48の一部となる薄膜、即ち不純物が何も添加されていないSiO膜(膜厚0.4μm)をP−CVD法により成膜する。
具体的には、酸素(O)及びシリコン(Si)原料を含むガス、例えばテトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、シラン(SiH)の何れかを含むガスに、アルコキシド系のガスであるテトラメチルゲルマニウム(TMGe)を添加することにより成膜する。なお、このとき、Geが添加されたSiO膜の厚さが、振動板48全体の厚さの1/2以上となるようにする。
こうして、SiO膜を連続して成膜したら、窒素(N)雰囲気下で1時間、これ以降の工程における最高温度よりも高い温度、例えば700℃でアニール(熱処理)する。700℃でアニールすると、振動板48の応力値が数十MPa増加するが、一度アニールすることにより、それ以上に応力(ストレス)が変化しないようにできる。なお、アニール温度は700℃に限定されるものではなく、600℃以上1100℃以下(600℃〜1100℃)であればよい。
SiO膜を成膜してアニールし、3層構造の振動板48を形成したら、図10−2(G)で示すように、スパッタ法により、例えば厚み0.5μm程度のIrとTiとの積層膜63、即ち下部電極52を振動板48の上面に成膜する。そして、図10−2(H)で示すように、下部電極52の上面に、圧電素子46の材料であるPZT膜65と、上部電極54となるIr膜67を順にスパッタ法で積層(成膜)し、図10−2(I)で示すように、圧電素子46(PZT膜65)及び上部電極54(Ir膜67)をパターニングする。
具体的には、PZT膜スパッタ(膜厚5μm)、Ir膜スパッタ(膜厚0.5μm)、ホトリソグラフィー法によるレジスト形成、パターニング(Cl系又はF系のガスを用いたドライエッチング)、酸素プラズマによるレジスト剥離である。下部及び上部の電極材料としては、圧電体であるPZT材料との親和性が高く、耐熱性がある、例えばIr、Au、Ru、Pt、Ta、PtO、TaO、IrO等が挙げられる。また、PZT膜65の成膜温度は550℃であり、PZT膜65の積層(成膜)には、AD法、ゾルゲル法等も用いることが可能である。
次に、図10−3(J)で示すように、振動板48の上面に積層された下部電極52をパターニングする。具体的には、ホトリソグラフィー法によるレジスト形成、パターニング、RIE法による(Cl系のガスを用いた)ドライエッチング、酸素プラズマによるレジスト剥離である。なお、このとき、振動板48を、圧電素子46毎に分離させる。
次に、図10−3(K)で示すように、表面に露出している上部電極54の上面、圧電素子46の端面、下部電極52の上面及び振動板48の端面に保護膜として低透水性絶縁膜(SiOx膜)80を積層する。
なお、ここでは保護膜としてSiOx膜80(シリコン酸化膜)を用いたが、SiNx膜(シリコン窒化膜)、SiOxNy膜等であってもよい。また、SOG(Spin−On−Glass)や、Ta、Ti等の金属膜、TaO、Ta等の金属酸化膜、樹脂膜等でもよく、更にはそれらの単層膜ではなく、それらを組み合わせた複数層膜にしてもよい。酸化膜、窒化膜、SOG、金属膜、金属酸化膜は、絶縁性、耐湿性、膜層間の段差抑制(緩和)に優れ、中でも酸化膜、窒化膜、SOG、金属膜は、耐薬品(インク)性においても優れる。また、樹脂膜も段差抑制に優れ、酸化膜、窒化膜、SOGは、SiO膜82に添加されたGe(不純物)の拡散防止にも優れる。
そして、図10−3(L)で示すように、ドライエッチング加工によって、インクプール室38と圧力室50から図5において水平方向へ向かって延設された連通路115とを繋げるインク流路66を構成するインク供給口83を形成し、更に、図10−3(M)で示すように、ドライエッチング加工によって、圧電素子46と金属配線86(図5参照)を接続するための開口84(コンタクト孔)を形成する。なお、図示しないが、下部電極52の上にも開口85(図8参照)が形成される。
次いで、図10−4(N)で示すように、低透水性絶縁膜(SiOx膜)80の上面に、耐インク性と柔軟性を有する樹脂膜82、例えばポリイミド系、ポリアミド系、エポキシ系、ポリウレタン系、シリコン系等の樹脂膜を積層する。
そして、図10−4(O)で示すように、開口84内の上部電極54と樹脂膜82の上面に金属膜を積層し、金属配線86をパターニングする。具体的には、スパッタ法にてAl膜(厚さ1μm)を着膜する、ホトリソグラフィー法でレジストを形成する、塩素系のガスを用いたRIE法にてAl膜をエッチングする、酸素プラズマにてレジスト膜を剥離する、という加工を行い、上部電極54と金属配線86(Al膜)とを接合する。なお、図示しないが、開口85内の下部電極52とSiOx膜80の上面に金属膜を積層し、金属配線87をパターニングして、下部電極52と金属配線87を接続する。
そして更に、図10−4(P)で示すように、金属配線86及び樹脂膜82の上面に樹脂保護膜88をパターニングする。具体的には、SiOx膜に樹脂保護膜88を構成する感光性樹脂を塗布し、露光・現像することでパターンを形成し、最後にキュアする。このとき、樹脂保護膜88にインク流路66を形成しておく。また、樹脂保護膜88を構成する感光性樹脂は、ポリイミド系、ポリアミド系、エポキシ系、ポリウレタン系、シリコーン系等、耐インク性を有していればよい。
また、このとき、圧電素子46の上方で、金属配線86がパターニングされていない部位には、樹脂保護膜88を積層しないようにする(樹脂膜82のみが積層されるようにする)。
ここで、圧電素子46の上方(樹脂膜82の上面)に樹脂保護膜88を積層しないのは、振動板48(圧電素子46)の変位(上下方向の撓み変形)が阻害されるのを防止するためである。また、圧電素子46の上部電極54から引き出す(上部電極54に接続される)金属配線86が樹脂製の保護膜88で被覆されると、その樹脂保護膜88は、金属配線86が積層される樹脂膜82と同種の樹脂材料で構成されているため、金属配線86を被覆するそれらの接合力が強固になり、界面からのインク110の侵入による金属配線86の腐食を防止することができる。
なお、この樹脂保護膜88は、隔壁42(感光性ドライフィルム98)とも同種の樹脂材料となっているため、この隔壁42(感光性ドライフィルム98)に対する接合力も強固になっている。したがって、その界面からのインク110の侵入がより一層防止される構成である。また、このように、同種の樹脂材料で構成されると、それらの熱膨張率が略等しくなるので、熱応力の発生が少なくて済む利点もある。
図10−5(Q)で示すように、樹脂保護膜88の上面に、マトリックス状に配置された各圧電素子46に対面するように感光性ドライフィルム96(例えば、日立化成工業株式会社製Raytec FR−5025:25μm厚)を露光・現像によりパターニングする(架設する)。この感光性ドライフィルム96が圧力波を緩和するエアダンパー44となる。
次に、図10−5(R)で示すように、金属配線86にバンプ62を介して駆動IC60をフリップチップ実装する。このとき、駆動IC60は、予め半導体ウエハプロセスの終りに実施されるグラインド工程にて、所定の厚さ(70μm〜300μm)に加工されている。駆動IC60が厚すぎると、図5に示す隔壁42のパターニングやバンプ64の形成が困難になったりする。
駆動IC60を金属配線86にフリップチップ実装するためのバンプ62の形成方法には、電界メッキ、無電界メッキ、ボールバンプ、スクリーン印刷等が適用できる。こうして、圧電素子基板70が製造される。
次に、図11−1(A)で示すように、樹脂保護膜88が積層されず、金属配線86が露出している箇所にメッキ法等でバンプ64を形成する。このバンプ64を駆動IC60側の金属配線90(図5参照)と電気的に接続するため、図11−1(B)に示す感光性ドライフィルム98(隔壁42)よりもその高さが高くなるように形成される。
そして、図11−1(B)で示すように、樹脂保護膜88に感光性ドライフィルム98(100μm厚)を積層して露光・現像によりパターニングする。この感光性ドライフィルム98がインクプール室38を規定する隔壁42となる。なお、隔壁42は、感光性ドライフィルム98に限定されるものではなく、樹脂塗布膜(例えば、化薬マイクロケム社のSU−8レジスト)としてもよい。このときには、スプレー塗布装置にて塗布し、露光・現像をすればよい。
隔壁42とバンプ64が形成された後、図11−2(C)で示すように、駆動IC60周りに封止用樹脂材58(例えば、エポキシ樹脂)を注入する。このように樹脂材58を注入して駆動IC60を封止すると、駆動IC60を水分等の外部環境から保護できるとともに、圧電素子基板70と天板40との接着強度を向上させることができ、更には、後工程でのダメージ、例えば、できあがった圧電素子基板70をダイシングによってインクジェット記録ヘッド32に分割する際の水や研削片によるダメージを回避することができる。
次に、図11−2(D)で示すように、隔壁42、バンプ64及び封止用樹脂材58上に樹脂膜92(例えば、富士フイルムアーチ社製の感光性ポリイミド Durimide7320)を積層してパターニングする。そして、図11−3(E)に示すように、樹脂膜92の表面をエッチングし、図11−4(F)で示すように、樹脂膜92の凹部に金属配線90を積層してパターニングする。具体的には、スパッタ法にてAl膜(厚さ1μm)を着膜する、ホトリソグラフィー法でレジストを形成する、塩素系のガスを用いたRIE法にてAl膜をエッチングする、酸素プラズマにてレジスト膜を剥離する、という加工である。
そして、図11−4(G)に示すように、樹脂膜92及び金属配線90にガラス板を支持体とする天板40を熱圧着(例えば350℃、2kg/cmで20分間)により結合(接合)させる。なお、この天板40には、予めインクタンク(図示省略)と連通するインク供給ポート36を所定箇所に形成しておく。具体的には、ホトリソグラフィー法で感光性ドライフィルムのレジストをパターニングし、このレジストをマスクとしてサンドブラスト処理を行って開口を形成した後、そのレジストを酸素プラズマにて剥離する。
次に、図12−1(A)で示すように、シリコン基板72に充填した(埋め込んだ)ガラスペースト76を、HFを含む溶解液によって選択的にエッチング除去する。このとき、振動板48は、Ge膜78によりHF溶液から保護されるため、エッチングされることはない。つまり、このGe膜78は、上記したように、ガラスペースト76をHF溶液でエッチング除去する際に、振動板48が一緒にエッチング除去されてしまうのを防止するエッチングストッパー層として機能する。
なお、ここではガラスペースト76の除去に、HFを含んだ液体を用いたが、ガラスペースト76の除去には、HFを含んだガスや蒸気を使用してもよい。エッチング液を狭い入口から供給する場合には、被エッチング材(この場合はガラスペースト76)をエッチングした際に発生する気泡が抜けなかったり、新しいエッチング液との置換ができなかったりするため、エッチングの進行が阻害されることがある。ガスや蒸気を用いると、このような不具合は起きないため、上記のような場合には、ガスや蒸気とした方が好ましい。
Ge膜78の溶解液、例えば60℃に加熱した過酸化水素(H)を圧力室50側から供給して、Ge膜78の一部をエッチングして除去する。この段階で圧力室50及び連通路115が完成する。こうして、Ge膜78をエッチング除去したら、耐HF保護用レジスト88をアセトンによって除去する。なお、圧力室50及び連通路115を形成した部位以外では、Ge膜78が残ったままとなるが、特に問題はない。
そして、シリコン基板72の下面にノズルプレート74を貼着する。すなわち、図12−2(B)で示すように、ノズル56となる開口68Aが形成されたノズルフィルム68をシリコン基板72の下面に貼り付ける。
これにより、インクジェット記録ヘッド32が完成し、図5で示すように、インクプール室38や圧力室50内にインク110が充填可能とされる。なお、この製造方法は、一例であって、可能な場合、各工程の順番が前後しても良い。
例えば、本実施形態では、図11−4(G)において、樹脂膜92及び金属配線90に天板40を結合(接合)させた後、図12−1(A)において、シリコン基板72のガラスペースト76を除去したが、天板40の接合前に、ガラスペースト76を除去しても良い。
また、本実施形態では、シリコン基板72をRIEで開口してガラスペースト76を埋め込み、その後に以後の工程を行っているが、先に圧電素子46周辺の機能部を作製した後にシリコン基板72の裏面から開口して圧力室50を形成する方法でも作製可能である。
このようにして製造されるインクジェット記録ヘッド32を備えたインクジェット記録装置10において、次に、その作用を説明する。まず、インクジェット記録装置10に印刷を指令する電気信号が送られると、ストッカー24から記録用紙Pが1枚ピックアップされ、搬送装置26により搬送される。
一方、インクジェット記録ユニット30では、すでにインクタンクからインク供給ポートを介してインクジェット記録ヘッド32のインクプール室38にインク110が注入(充填)され、インクプール室38に充填されたインク110は、インク供給路114を経て圧力室50へ供給(充填)されている。そして、このとき、ノズル56の先端(吐出口)では、インク110の表面が圧力室50側に僅かに凹んだメニスカスが形成されている。
そして、記録用紙Pを搬送しながら、複数のノズル56から選択的にインク滴を吐出することにより、記録用紙Pに、画像データに基づく画像の一部を記録する。すなわち、駆動IC60により、所定のタイミングで、所定の圧電素子46に電圧を印加し、振動板48を上下方向に撓み変形させて(面外振動させて)、圧力室50内のインク110を加圧し、所定のノズル56からインク滴として吐出させる。こうして、記録用紙Pに、画像データに基づく画像が完全に記録されたら、排紙ベルト23により記録用紙Pをトレイ25に排出する。これにより、記録用紙Pへの印刷処理(画像記録)が完了する。
ここで、このインクジェット記録ヘッド32は、インクプール室38が、振動板48(圧電素子46)を間に置いて圧力室50の反対側(上側)に設けられている。換言すれば、インクプール室38と圧力室50の間に振動板48(圧電素子46)が配置され、インクプール室38と圧力室50が同一水平面上に存在しないように構成されている。
このように、インクプール室38と圧力室50が同一水平面上に存在しないようにすることで、圧力室50を互いに近接して配設することができるので、圧力室50毎に設けられるノズル56を高密度に配設することができる。
また、インクプール室38内に隔離室112を設け、該隔離室112によって圧電素子46をインク110から隔離することで、圧電素子46にはインク110による拘束力が負荷されない。このため、該拘束力によって圧電素子46の撓み変形が阻害されることはない。また、隔離室112によって圧電素子46をインク110から隔離することで、圧電素子46をインク侵食から保護することができる。
一方、圧電素子46の撓み変形によって圧力室50が加圧され、圧力室50と連通するノズル56からインク滴としてインク110が吐出されるとき、インク流路66を介してインクプール室38内へ伝達されるインク110の圧力波は、隔離室112に設けられたエアダンパー44によって緩和される。
ところで、本形態では、図8(A)、(B)に示すように、振動板48の幅を圧力室50の幅よりも広く形成し、下部電極52の下部以外の領域において、振動板48を除去し、各圧電素子46毎で振動板48を分断している。これにより、各圧電素子46の振動板48が独立した状態となるため、圧電素子46の電歪動作時に圧電素子46間の相互干渉(クロストーク)がなくなる。
ここで、振動板48の除去においては、下部電極52と振動板48の面積が同じであるため、下部電極52をドライエッチングする工程に続いて振動板48をドライエッチングすることで振動板48を除去できる。このため、振動板48を除去するための専用の工程を必要としない。なお、下部電極52と振動板48の面積は必ずしも同じである必要はなく、下部電極52の面積を振動板48よりも小さくしても良い。
また、下部電極52及び振動板48の幅を圧力室50の幅よりも広く形成して、振動板48及び下部電極52の外縁部と圧力室50の周縁部とをオーバーラップさせ、このオーバーラップの幅Woを、圧力室50の幅Wpの50分の1(Wp/50)以上とすることで、圧力室50の周縁部で下部電極52及び振動板48は確実に保持されることとなり、圧電素子46の変形における強度を確保するようにしている。
さらに、圧電素子46の電歪作動部46A(図8(A)のハッチング部)が、平面視にて圧力室50の内側となるようにしている。図13(A)に示すように、圧電素子46の電歪作動部46Aが圧力室50よりも大きい場合、圧電素子46の電歪作動部46Aが変位する際、該電歪作動部46Aの周縁部が圧力室50の周縁部によって拘束されるため、圧電素子46を効率よく変位させることができない。
これに対して、図13(B)に示すように、圧電素子46の電歪作動部46Aが圧力室50の内側となるようにする。具体的には、図8(A)、(B)に示すように、圧電素子46の電歪作動部46Aの端面と圧力室50の内壁面との距離WqがWp/50以上となるようにしている。
これにより、図13(A)の場合と比較すると、圧電素子46の電歪作動部46Aを効率よく変位させることができると共に、繰り返し動作の中で圧電素子46の変位の低下、圧電素子46間のばらつきを抑制でき、圧電素子46が本来有する特性を安定的に発揮することができる。
なお、ここでは、図8(A)、(B)に示すように、下部電極52の下部以外の領域において、振動板48を除去したが、図14(A)、(B)に示すように、下部電極52の下部の振動板48(厚膜部48A)の肉厚に対して、下部電極52の下部以外の領域の振動板48(薄膜部48B)の肉厚を薄膜化しても良い。
具体的には、振動板48の薄膜部48Bの厚さを厚膜部48Aの厚さの2/3以下にする。そして、振動板48の厚膜部48A及び下部電極52の外縁部と圧力室50の周縁部をオーバーラップさせ、このオーバーラップさせる幅Woを、圧力室50の幅Wpの50分の1(Wp/50)以上としている。
前述したように、図8(A)、(B)に示すように、下部電極52の下部以外の領域において、振動板48を除去し、各圧電素子46で振動板48を分断させることで、隣接する圧電素子46の電歪作動部46Aが同時に作動しても互いに干渉(クロストーク)することはないが、振動板48を分断(除去)することで、圧電素子46の強度(剛性)は低下してしまう。
このため、図14(A)、(B)に示すように、各圧電素子46で振動板48を完全に分断するのではなく、振動板48を途中まで削り込み、薄膜部48Bとすることで、隣接する圧電素子46の電歪作動部46Aが同時に作動しても互いに干渉することはなく、また、振動板48の強度(剛性)を維持することができる。
一方、図15(A)、(B)に示すように(なお、ここでは下部電極は図示していない)、上部電極54の電極部54Aは、平面視にて圧力室50の外側となっており、該電極部54Aは変形しない。このため、圧電素子46を効率よく変形させるには、電極部54Aと圧力室50内に位置する電歪作動部46A(図15(A)のハッチング部)との連結力が小さい方がよい。
従って、図16(A)、(B)に示すように、電極部54Aと電歪作動部46A(図15(A)のハッチング部)との間に幅狭部47を設け、電極部54Aと電歪作動部46Aとの連結力を小さくして、電歪作動部46Aを変形しやすくする。但し、この場合、圧電素子46の強度上の問題もあり、幅狭部47の幅を細くし過ぎると、その分、寿命は短くなってしまう。
なお、上記実施例のインクジェット記録装置10では、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色のインクジェット記録ユニット30から画像データに基づいて選択的にインク滴が吐出されてフルカラーの画像が記録紙Pに記録されるようになっているが、本発明におけるインクジェット記録は、記録紙P上への文字や画像の記録に限定されるものではない。
すなわち、記録媒体は紙に限定されるものでなく、また、吐出する液体もインクに限定されるものではない。例えば、高分子フィルムやガラス上にインクを吐出してディスプレイ用カラーフィルターを作成したり、溶接状態の半田を基板上に吐出して部品実装用のバンプを形成するなど、工業的に用いられる液滴噴射装置全般に対して、本発明に係るインクジェット記録ヘッド32を適用することができる。
また、上記実施例のインクジェット記録装置10では、紙幅対応のいわゆるFull Width Array(FWA)の例で説明したが、これに限定されず、主走査機構と副走査機構を有するPartial Width Array(PWA)であってもよい。
本発明の実施の形態に係るインクジェット記録装置を示す概略正面図である。 本発明の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドの配列を示す説明図である。 本発明の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドの印字領域の幅と記録媒体の幅との関係を示す説明図である。 本発明の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドの概略平面図である。 図4のX−X線断面図である。 本発明の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドとして切断される前の天板を示す概略平面図である。 本発明の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドの駆動ICのバンプを示す概略平面図である。 本発明の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドの圧電素子、振動板及び圧力室の関係を示す、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。 本発明の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドを製造する全体工程の説明図である。 本発明の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドのシリコン基板上に圧電素子基板を製造する工程(A)〜(D)を示す説明図である。 本発明の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドのシリコン基板上に圧電素子基板を製造する工程(E)〜(I)を示す説明図である。 本発明の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドのシリコン基板上に圧電素子基板を製造する工程(J)〜(M)を示す説明図である。 本発明の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドのシリコン基板上に圧電素子基板を製造する工程(N)〜(P)を示す説明図である。 本発明の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドのシリコン基板上に圧電素子基板を製造する工程(Q)〜(R)を示す説明図である。 本発明の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドのシリコン基板上に圧電素子基板を製造する工程(A)〜(B)を示す説明図である。 本発明の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドのシリコン基板上に圧電素子基板を製造する工程(C)〜(D)を示す説明図である。 本発明の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドのシリコン基板上に圧電素子基板を製造する工程(E)〜(F)を示す説明図である。 本発明の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドの圧電素子基板に天板を接合する工程(G)を示す説明図である。 本発明の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドのシリコン基板に圧力室を形成する工程(A)を示す説明図である。 本発明の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドのシリコン基板にノズルプレートを接合する工程((B)を示す説明図である。 (B)は、本発明の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドの圧電素子の作用を説明する断面図であり、(A)は(B)の比較例を示す断面図である。 本発明の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドの圧電素子、振動板及び圧力室の関係を示す変形例であり、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。 本発明の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドの圧電素子及び圧力室の関係を示す平面図である。 本発明の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドの圧電素子及び圧力室の関係を示す図15の変形例である。
符号の説明
10 インクジェット記録装置(液滴吐出装置)
32 インクジェット記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)
38 インクプール室(液体プール室)
46 圧電素子
46A 電歪作動部
48 振動板
48B 薄膜部(振動板)
50 圧力室
52 下部電極
54 上部電極
56 ノズル

Claims (4)

  1. 液滴を吐出する複数のノズルと、
    各前記ノズルと繋がり、液体が充填される圧力室と、
    前記圧力室の一部を構成する振動板と、
    前記振動板を間に置いて前記圧力室と反対側に配置され、前記圧力室へ流路を介して供給する液体をプールする液体プール室と、
    前記振動板の表面に形成され、該振動板を変位させる圧電素子の一方の極性となる下部電極と、
    前記圧電素子の上面に設けられ、他方の極性となる上部電極と、
    を備え、
    隣り合う前記圧力室の間にある振動板は分断されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  2. 液滴を吐出する複数のノズルと、
    各前記ノズルと繋がり、液体が充填される圧力室と、
    前記圧力室の一部を構成する振動板と、
    前記振動板を間に置いて前記圧力室と反対側に配置され、前記圧力室へ流路を介して供給する液体をプールする液体プール室と、
    前記振動板の表面に形成され、該振動板を変位させる圧電素子の一方の極性となる下部電極と、
    前記圧電素子の上面に設けられ、他方の極性となる上部電極と、
    を備え、
    隣り合う前記圧力室の間にある振動板は薄膜化されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  3. 分断された前記振動板又は薄膜化されて区画された振動板と前記下部電極は同じ面積であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液滴吐出ヘッド。
  4. 前記圧電素子の電歪作動部は、平面視にて前記圧力室の内側にあることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッド。
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