JP2008221788A - 基板及びそれを備えた液滴吐出ヘッド並びに液滴吐出装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】製造工程において、ペースト状導電性材料の膨張に伴う配線の破断や保護膜の劣化を防止できる基板及び液滴吐出ヘッド並びに液滴吐出装置の提供を課題とする。
【解決手段】ペースト状の導電性材料86が埋め込まれた複数の貫通口42と、貫通口42を塞ぐように設けられ、導電性材料86と電気的に接続される電極配線90と、電極配線90を被覆して保護する第1保護膜92と、を有する基板70において、電極配線90と第1保護膜92との間に、弾性保護膜94を設ける。そして、その基板70を備えた液滴吐出ヘッド32とし、その液滴吐出ヘッド32を備えた液滴吐出装置10とする。
【選択図】図6

Description

本発明は、ペースト状の導電性材料が埋め込まれる複数の貫通口を有する基板と、その基板を備えた液滴吐出ヘッドと、その液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置に関する。
従来から、インクジェット記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)の複数のノズルから選択的にインク滴を吐出し、記録用紙等の記録媒体に画像(文字を含む)等を印刷するインクジェット記録装置(液滴吐出装置)は知られている。そして、そのインクジェット記録ヘッドを構成する基板には、電気接続用貫通口やインク供給用貫通口(インク供給路)等が複数形成されている(例えば、特許文献1参照)。
また、このようなインクジェット記録ヘッドにおいて、電気接続用貫通口に、ペースト状の導電性材料が充填される場合がある(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、このような構成のインクジェット記録ヘッドでは、ペースト状の導電性材料が充填された後の製造工程で加熱処理がなされたときに、そのペースト状の導電性材料が膨張して電気接続用貫通口から盛り上がることがあった。
このような現象が起きると、例えば導電性材料と電気的に接続される電極配線が電気接続用貫通口を閉塞するように設けられている場合には、その電極配線が破断(断線)したり、電極配線を被覆していた耐インク性保護膜に亀裂(ひび割れ)が発生し、その電極配線等がインクによって浸食されるおそれがあった。
特開平11−320873号公報 特開2001−96741号公報
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、製造工程において、ペースト状導電性材料の膨張に伴う配線の破断や保護膜の劣化を防止することができる基板と、その基板を備えた液滴吐出ヘッドと、その液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置を得ることを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の基板は、ペースト状の導電性材料が埋め込まれた複数の貫通口と、前記貫通口を塞ぐように設けられ、前記導電性材料と電気的に接続される電極配線と、前記電極配線を被覆して保護する第1保護膜と、を有する基板であって、前記電極配線と前記第1保護膜との間に、弾性保護膜を設けたことを特徴としている。
請求項1に記載の発明によれば、電極配線と第1保護膜との間に、弾性保護膜を設けたので、製造工程において、加熱によりペースト状の導電性材料が膨張しても、その電極配線の破断(断線)や第1保護膜の劣化(ひび割れ)を防止することができる。
また、本発明に係る請求項2に記載の基板は、ペースト状の導電性材料が埋め込まれた複数の貫通口と、前記貫通口を塞ぐように設けられ、前記導電性材料と電気的に接続される電極配線と、前記電極配線を被覆して保護する第1保護膜と、を有する基板であって、前記第1保護膜の上に弾性保護膜を設けたことを特徴としている。
請求項2に記載の発明によれば、第1保護膜の上に弾性保護膜を設けたので、製造工程において、加熱によりペースト状の導電性材料が膨張しても、その電極配線の破断(断線)や第1保護膜の劣化(ひび割れ)を防止することができる。
また、本発明に係る請求項3に記載の基板は、ペースト状の導電性材料が埋め込まれた複数の貫通口と、前記貫通口を塞ぐように設けられ、前記導電性材料と電気的に接続される電極配線と、前記電極配線を被覆して保護する第1保護膜と、を有する基板であって、前記第1保護膜の上に弾性保護膜を設けるとともに、該弾性保護膜の上に第2保護膜を設けたことを特徴としている。
請求項3に記載の発明によれば、第1保護膜の上に弾性保護膜を設けるとともに、その弾性保護膜の上に第2保護膜を設けたので、製造工程において、加熱によりペースト状の導電性材料が膨張しても、その電極配線の破断(断線)や第1保護膜の劣化(ひび割れ)を防止することができる。
また、請求項4に記載の基板は、請求項1に記載の基板において、前記弾性保護膜が、導電性樹脂材料で構成されていることを特徴としている。
請求項4に記載の発明によれば、弾性保護膜が、導電性樹脂材料で構成されているので、万が一電極配線が破断(断線)しても通電させることができる。
また、請求項5に記載の基板は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の基板において、前記弾性保護膜が、耐液性樹脂材料で構成されていることを特徴としている。
請求項5に記載の発明によれば、耐液性に優れた基板を実現することができ、耐液性に対する信頼性を向上させることができる。
また、本発明に係る請求項6に記載の液滴吐出ヘッドは、請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の基板と、前記基板の導電性材料と電気的に接続され、ノズルから液滴を吐出させるためのアクチュエーターと、を有することを特徴としている。
請求項6に記載の発明によれば、液滴吐出ヘッドの製造工程において、加熱によりペースト状の導電性材料が膨張しても、電極配線の破断(断線)や第1保護膜の劣化(ひび割れ)を防止することができる。
また、本発明に係る請求項7に記載の液滴吐出装置は、請求項6に記載の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴としている。
請求項7に記載の発明によれば、液滴吐出ヘッドにおいて電極配線の破断(断線)や第1保護膜の劣化(ひび割れ)が防止された液滴吐出装置を得ることができる。
以上のように、本発明によれば、製造工程において、ペースト状導電性材料の膨張に伴う配線の破断や保護膜の劣化を防止することができる基板と、その基板を備えた液滴吐出ヘッドと、その液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置を提供することができる。
以下、本発明の最良な実施の形態について、図面に示す実施例を基に詳細に説明する。なお、液滴吐出装置としてはインクジェット記録装置10を例に採って説明する。したがって、液体はインク110とし、液滴吐出ヘッドはインクジェット記録ヘッド32として説明をする。また、記録媒体は記録用紙Pとして説明をする。また、これにより、本発明に係る「基板」とは、インクジェット記録ヘッド32を構成する圧電素子基板70(天板部材40を含む)を指す。
インクジェット記録装置10は、図1で示すように、記録用紙Pを送り出す用紙供給部12と、記録用紙Pの姿勢を制御するレジ調整部14と、インク滴を吐出して記録用紙Pに画像形成する記録ヘッド部16及び記録ヘッド部16のメンテナンスを行うメンテナンス部18を備える記録部20と、記録部20で画像形成された記録用紙Pを排出する排出部22とから基本的に構成されている。
用紙供給部12は、記録用紙Pが積層されてストックされているストッカー24と、ストッカー24から1枚ずつ取り出してレジ調整部14に搬送する搬送装置26とから構成されている。レジ調整部14は、ループ形成部28と、記録用紙Pの姿勢を制御するガイド部材29とを有しており、記録用紙Pは、この部分を通過することによって、そのコシを利用してスキューが矯正されるとともに、搬送タイミングが制御されて記録部20に供給される。そして、排出部22は、記録部20で画像が形成された記録用紙Pを、排紙ベルト23を介してトレイ25に収納する。
記録ヘッド部16とメンテナンス部18の間には、記録用紙Pが搬送される用紙搬送路27が構成されている(用紙搬送方向を矢印PFで示す)。用紙搬送路27は、スターホイール17と搬送ロール19とを有し、このスターホイール17と搬送ロール19とで記録用紙Pを挟持しつつ連続的に(停止することなく)搬送する。そして、この記録用紙Pに対して、記録ヘッド部16からインク滴が吐出され、記録用紙Pに画像が形成される。
メンテナンス部18は、インクジェット記録ユニット30に対して対向配置されるメンテナンス装置21を有しており、インクジェット記録ヘッド32に対するキャッピングや、ワイピング、更には、予備吐出やバキューム等の処理を行う。
図2で示すように、各インクジェット記録ユニット30は、矢印PFで示す用紙搬送方向と直交する方向に配置された支持部材34を備えており、この支持部材34に複数のインクジェット記録ヘッド32が取り付けられている。インクジェット記録ヘッド32には、マトリックス状に複数のノズル56が形成されており、記録用紙Pの幅方向には、インクジェット記録ユニット30全体として一定のピッチでノズル56が並設されている。
そして、用紙搬送路27を連続的に搬送される記録用紙Pに対し、ノズル56からインク滴を吐出することで、記録用紙P上に画像が記録される。なお、インクジェット記録ユニット30は、例えば、いわゆるフルカラーの画像を記録するために、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色に対応して、少なくとも4つ配置されている。
図3で示すように、それぞれのインクジェット記録ユニット30のノズル56による印字領域幅は、このインクジェット記録装置10での画像記録が想定される記録用紙Pの用紙最大幅PWよりも長くされており、インクジェット記録ユニット30を紙幅方向に移動させることなく、記録用紙Pの全幅にわたる画像記録が可能とされている。つまり、このインクジェット記録ユニット30は、シングルパス印字が可能なFull Width Array(FWA)となっている。
ここで、印字領域幅とは、記録用紙Pの両端から印字しないマージンを引いた記録領域のうち最大のものが基本となるが、一般的には印字対象となる用紙最大幅PWよりも大きくとっている。これは、記録用紙Pが搬送方向に対して所定角度傾斜して(スキューして)搬送されるおそれがあるためと、縁無し印字の要望が高いためである。
以上のような構成のインクジェット記録装置10において、次にインクジェット記録ヘッド32について詳細に説明する。図4は第1実施形態のインクジェット記録ヘッド32の構成を示す概略平面図であり、図5は図4のX−X線矢視概略断面図である。なお、図5において、後述するプール室部材39等は省略している。更に、図6はインクジェット記録ヘッド32を部分的に取り出して主要部分が明確になるように示した概略縦断面図である。
このインクジェット記録ヘッド32には、天板部材40が配置されている。本実施形態では、天板部材40を構成するガラス製の天板41は板状で、かつ電極配線を有しており、インクジェット記録ヘッド32全体の天板となっている。天板部材40には、駆動IC60と、駆動IC60に通電するための電極配線としての金属配線90が設けられている。金属配線90は、第1保護膜としての樹脂保護膜92で被覆保護されており、インク110による浸食が防止されるようになっている。
また、この駆動IC60の下面には、複数のバンプ60Bがマトリックス状に所定高さ突設されており、天板41上で、かつプール室部材39よりも外側の金属配線90にフリップチップ実装されるようになっている。したがって、圧電素子46に対する高密度配線と低抵抗化が容易に実現可能であり、これによって、インクジェット記録ヘッド32の小型化が実現可能となっている。なお、駆動IC60の周囲は樹脂材58で封止されている。
天板部材40には、耐インク性を有する材料で構成されたプール室部材39が貼着されており、天板41との間に、所定の形状及び容積を有するインクプール室38が形成されている。プール室部材39には、インクタンク(図示省略)と連通するインク供給ポート36が所定箇所に穿設されており、インク供給ポート36から注入されたインク110は、インクプール室38に貯留される。
天板41には、後述する圧力室115と1対1で対応するインク供給用貫通口112が形成されており、その内部が第1インク供給路114Aとなっている。また、天板41には、後述する上部電極54に対応する位置に、電気接続用貫通口42が形成されている。この電気接続用貫通口42内に、後述するペースト状の導電性材料(以下「導電性ペースト」という)86が充填されることにより、金属配線90と上部電極54とが電気的に接続され、後述する圧電素子基板70の個別配線が不要になっている。
なお、図4で示すように、金属配線90は、電気接続用貫通口42を被覆・閉塞するように設けられている。そして、その電気接続用貫通口42を被覆・閉塞する金属配線90を更に被覆するように(金属配線90と樹脂保護膜92との間に)、弾性保護膜94が設けられている。この弾性保護膜94により、製造工程の加熱(昇温)による導電性ペースト86の膨張を緩和できる構成である。つまり、インクジェット記録ヘッド32の製造工程において、加熱(昇温)により導電性ペースト86が膨張しても、その膨張速度を低減でき、膨張量を抑制できる構成である。したがって、金属配線90の破断(断線)や樹脂保護膜92及び後述するSiC膜96の劣化(ひび割れ)が防止される。
一方、流路基板としてのシリコン基板72には、インクプール室38から供給されたインク110が充填される圧力室115が形成され、圧力室115と連通するノズル56からインク滴が吐出されるようになっている。そして、インクプール室38と圧力室115とが同一水平面上に存在しないように構成されている。したがって、圧力室115を互いに接近させた状態に配置することが可能であり、ノズル56をマトリックス状に高密度に配設することが可能となっている。
また、シリコン基板72の下面には、ノズル56が形成されたノズルプレート74が貼着され、シリコン基板72の上面には、圧電素子基板70が形成(作製)される。圧電素子基板70は振動板48を有しており、振動板48の振動によって圧力室115の容積を増減させて圧力波を発生させることで、ノズル56からのインク滴の吐出が可能になっている。したがって、振動板48が圧力室115の1つの面を構成している。
振動板48を振動させるアクチュエーターとしての圧電素子46は、圧力室115毎に振動板48の上面に接着されている。振動板48は、Chemical Vapor Deposition(CVD)法(化学的気相成長法)で形成されたSiOx膜であり、少なくとも上下方向に弾性を有し、圧電素子46に通電されると(電圧が印加されると)、上下方向に撓み変形する(変位する)構成になっている。なお、振動板48は、Cr等の金属材料であっても差し支えはない。
また、圧電素子46の下面には一方の極性となる下部電極52が配置され、圧電素子46の上面には他方の極性となる上部電極54が配置されている。そして、圧電素子46は、低透水性絶縁膜(SiOx膜)80で被覆保護されている。圧電素子46を被覆保護している低透水性絶縁膜(SiOx膜)80は、水分透過性が低くなる条件で着膜するため、水分が圧電素子46の内部に侵入して信頼性不良となること(PZT膜内の酸素を還元することにより生ずる圧電特性の劣化)を防止できる。
更に、低透水性絶縁膜(SiOx膜)80上には、隔壁樹脂層119が積層されており、その隔壁樹脂層119は、圧電素子基板70と天板部材40との間の空間を区画している。また、隔壁樹脂層119には、天板41のインク供給用貫通口112と連通するインク供給用貫通口44が形成されており、その内部が第2インク供給路114Bとなっている。
第2インク供給路114Bは、第1インク供給路114Aの断面積よりも小さい断面積を有しており、インク供給路114全体での流路抵抗が所定の値になるように調整されている。つまり、第1インク供給路114Aの断面積は、第2インク供給路114Bの断面積よりも充分に大きくされており、第2インク供給路114Bでの流路抵抗と比べて実質的に無視できる程度とされている。したがって、インクプール室38から圧力室115へのインク供給路114の流路抵抗は、第2インク供給路114Bのみで規定される。
また、このように、隔壁樹脂層119に形成したインク供給用貫通口44によってインク110を供給するようにしたことで、供給途中における圧電素子46領域へのインク漏れが防止されている。なお、隔壁樹脂層119には大気連通孔(図示省略)が形成されており、インクジェット記録ヘッド32の製造時や画像記録時における天板41と圧電素子基板70の空間の圧力変動を低減している。また、電気接続用貫通口42に対応する位置にも隔壁樹脂層118が積層されており、隔壁樹脂層118には電気接続用貫通口42と連通する貫通孔120が形成されている。
また、少なくともインク110が接する壁面、即ち樹脂保護膜92、インク供給用貫通口112、隔壁樹脂層119、圧力室115、連通路50の内壁面には、炭化シリコン(SiC)膜96が、プラズマCVD法等により、それらの接合部分(境界部分)を含むように一体的に成膜されている(コーティングされている)。これにより、それらの耐インク性を更に向上できる構成である。
また、隔壁樹脂層118、119によって、天板部材40と圧電素子46(厳密には、圧電素子46上の低透水性絶縁膜(SiOx膜)80)との間に間隙が構成され、空気層となっている。この空気層により、圧電素子46の駆動や振動板48の振動に影響を与えないようになっている。また、隔壁樹脂層119と隔壁樹脂層118は、その上面の高さが一定、即ち面一になるように構成されている。したがって、天板41から測った隔壁樹脂層119と隔壁樹脂層118の対向面の高さ(距離)も同一になっている。これにより、天板41が接触する際の接触性が高くなり、シール性も高くなっている。
また、金属配線90にはフレキシブルプリント基板(FPC)100も接続される。したがって、駆動IC60からの信号が、天板部材40の金属配線90に通電され、電気接続用貫通口42の内部に充填された導電性ペースト86により、金属配線90から上部電極54に通電される。そして、所定のタイミングで圧電素子46に電圧が印加され、振動板48が上下方向に撓み変形することにより、圧力室115内に充填されたインク110が加圧されて、ノズル56からインク滴が吐出する。
以上のような構成のインクジェット記録ヘッド32において、次に、その製造工程について、図7〜図11を基に詳細に説明する。図7で示すように、このインクジェット記録ヘッド32は、流路基板としてのシリコン基板72の上面に圧電素子基板70を作製し、その後、シリコン基板72の下面にノズルプレート74(ノズルフィルム68)を接合(貼着)することによって製造される。
図8−1(A)で示すように、まず、シリコン基板72を用意する。そして、図8−1(B)で示すように、Reactive Ion Etching(RIE)法により、そのシリコン基板72の連通路50となる領域に開口部72Aを形成する。具体的には、ホトリソグラフィー法によるレジスト形成、パターニング、RIE法によるエッチング、酸素プラズマによるレジスト剥離である。
次いで、図8−1(C)で示すように、RIE法により、そのシリコン基板72の圧力室115となる領域に溝部72Bを形成する。具体的には、上記と同様に、ホトリソグラフィー法によるレジスト形成、パターニング、RIE法によるエッチング、酸素プラズマによるレジスト剥離である。これにより、圧力室115と連通路50とからなる多段構造が形成される。
その後、図8−1(D)で示すように、連通路50を構成する開口部72Aと、圧力室115を構成する溝部72Bに、スクリーン印刷法により、ガラスペースト76を充填する(埋め込む)。このガラスペースト76は、熱膨張係数が、1×10−6/℃〜6×10−6/℃であり、軟化点は、550℃〜900℃である。この範囲のガラスペースト76を使用することで、ガラスペースト76にクラックや剥離が発生するのを防止でき、更には、圧電素子46や振動板48となる薄膜に形状歪みが発生するのを防止できる。
そして、ガラスペースト76を充填後、シリコン基板72を、例えば800℃で10分間、加熱処理する。このガラスペースト76の硬化熱処理に使用する温度は、後述する圧電素子46や振動板48の成膜温度(例えば350℃)よりも高い温度である。これにより、振動板48及び圧電素子46の成膜工程において、ガラスペースト76に高温耐性ができる。
つまり、少なくともガラスペースト76を硬化熱処理した温度までは、後工程で使用可能となるので、後工程での使用温度の許容範囲が広がる。その後、シリコン基板72の上面(表面)を研磨して余剰ガラスペースト76を除去し、その上面(表面)を平坦化する。これにより、圧力室115及び連通路50となる領域上にも薄膜等を精度よく形成することが可能となる。
次に、図8−2(E)で示すように、シリコン基板72の上面(表面)に、スパッタ法により、ゲルマニウム(Ge)膜78(膜厚1μm)を着膜する。このGe膜78は、後工程でガラスペースト76をフッ化水素(HF)溶液でエッチング除去するときに、後述するSiOx膜82(振動板48)が一緒にエッチングされないように保護するエッチングストッパー層として機能する。なお、このGe膜78は、蒸着やCVD法でも成膜できる。また、エッチングストッパー層としては、シリコン(Si)膜も使用できる。
そして、図8−2(F)で示すように、そのGe膜78の上面に振動板48となる薄膜、例えば、温度350℃、RFpower300W、周波数450KHz、圧力1.5torr、ガスSiH/NO=150/4000sccmのプラズマCVD法により、SiOx膜82(膜厚4μm)を成膜する。なお、この場合の振動板48の材料としては、SiNx膜、SiC膜、金属(Cr)膜等であってもよい。
その後、図8−2(G)で示すように、スパッタ法により、例えば厚み0.5μm程度のAu膜62、即ち下部電極52を成膜する。そして、図8−3(H)で示すように、振動板48の上面に積層された下部電極52をパターニングする。具体的には、ホトリソグラフィー法によるレジスト形成、パターニング、RIE法によるエッチング、酸素プラズマによるレジスト剥離である。この下部電極52が接地電位となる。
次に、図8−3(I)で示すように、下部電極52の上面に、圧電素子46の材料であるPZT膜64と、上部電極54となるAu膜66を順にスパッタ法で積層し、図8−3(J)で示すように、圧電素子46(PZT膜64)及び上部電極54(Au膜66)をパターニングする。
具体的には、PZT膜スパッタ(膜厚5μm)、Au膜スパッタ(膜厚0.5μm)、ホトリソグラフィー法によるレジスト形成、パターニング(エッチング)、酸素プラズマによるレジスト剥離である。下部及び上部の電極材料としては、圧電素子46であるPZT材料との親和性が高く、耐熱性がある、例えばAu、Ir、Ru、Pt等が挙げられる。
その後、図8−4(K)で示すように、振動板48(SiOx膜82)にインク供給路114形成用の孔部82Aをパターニングする。具体的には、ホトリソグラフィー法によるレジスト形成、パターニング(HFエッチング)、酸素プラズマによるレジスト剥離である。
次に、図8−4(L)で示すように、上面に露出している下部電極52と上部電極54の上面に低透水性絶縁膜(SiOx膜)80を積層する。そして、パターニングにより、上部電極54と金属配線90を接続するための開口84(コンタクト孔)を形成する。具体的には、CVD法にてダングリングボンド密度が高い低透水性絶縁膜(SiOx膜)80を着膜する、ホトリソグラフィー法によるレジスト形成、パターニング(HFエッチング)、酸素プラズマによるレジスト剥離である。なお、ここでは低透水性絶縁膜としてSiOx膜を用いたが、SiNx膜、SiOxNy膜等であってもよい。
次いで、図8−4(M)で示すように、隔壁樹脂層119及び隔壁樹脂層118をパターニングする。具体的には、隔壁樹脂層119、隔壁樹脂層118を構成する感光性樹脂を塗布し、露光・現像することでパターンを形成し、最後にキュアする。このとき、隔壁樹脂層119にインク供給用貫通口44を形成しておく。
なお、隔壁樹脂層119と隔壁樹脂層118とは、同一膜であるが、設計パターンが異なっている。また、隔壁樹脂層119、隔壁樹脂層118を構成する感光性樹脂は、ポリイミド系、ポリアミド系、エポキシ系、ポリウレタン系、シリコーン系等、耐インク性を有していればよい。
こうして、シリコン基板72(流路基板)の上面に圧電素子基板70が作製され、この圧電素子基板70の上面に、例えばガラス板を支持体とする天板部材40が結合(接合)される。天板部材40の製造においては、図9(A)で示すように、天板部材40自体が支持体となる程度の強度を確保できる厚み(0.3mm〜1.5mm)の天板41を含んでいるので、別途支持体を設ける必要がない。この天板41に、図9(B)で示すように、インク供給用貫通口112及び電気接続用貫通口42を形成する。
具体的には、ホトリソグラフィー法で感光性ドライフィルムのレジストをパターニングし、このレジストをマスクとしてサンドブラスト処理を行って開口を形成した後、そのレジストを酸素プラズマにて剥離する。なお、インク供給用貫通口112及び電気接続用貫通口42は、断面視で内面が下方に向かって次第に接近するようなテーパー状(漏斗状)に形成されている。
このようにしてインク供給用貫通口112及び電気接続用貫通口42が形成された天板41(天板部材40)を、図10−1(A)で示すように、圧電素子基板70に被せて、両者を熱圧着(例えば、350℃、2kg/cmで20分間)により結合(接合)する。このとき、隔壁樹脂層119と隔壁樹脂層118とは面一(同一高さ)になるように構成されているので、天板41が接触する際の接触性が高くなり、高いシール性で接合することができる。
そして、図10−1(B)で示すように、スクリーン印刷法(又は直接スキージしてもよい)により、導電性ペースト86(例えば、ドータイトAE1650、ステイスティック191等の熱可塑性ペーストや、ペルトロンK−3434等のポリウレタン系ペースト、ドータイトXA−410S−10等の銀系ペースト)を電気接続用貫通口42及びインク供給用貫通口112、44に充填して(埋め込んで)硬化処理し、その後、その上面(表面)を研磨して平坦化する。
次いで、図10−2(C)で示すように、天板41の上面にAl(アルミニウム)等の金属配線90を成膜してパターニングする。具体的には、スパッタ法によるAl膜(厚さ1μm)の着膜、ホトリソグラフィー法によるレジストの形成、H3PO4薬液を用いたAl膜のウェットエッチング、アセトン(又は酸素プラズマ)によるレジスト剥離である。
次に、図10−2(D)で示すように、金属配線90の上面に、弾性保護膜94を積層してパターニングする。具体的には、膜厚が10μm〜50μmの感光性樹脂フィルム(弾性保護膜94)をラミネートし、マスク露光で潜像を形成した後、現像によってパターンを形成する。これにより、電気接続用貫通口42を塞ぐように(被覆するように)成膜された金属配線90の上面に、弾性保護膜94がその金属配線90を被覆するように着膜される(図4参照)。
なお、弾性保護膜94としては、感光性のポリイミド系、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系、アクリレート系及びこれらの混合物からなる耐液(インク)性樹脂材料や、Agフィラーあるいは金属ナノ粒子を有機物中に分散させた導電性樹脂材料(例えば、ドータイト:藤倉化成株式会社製、ナノペースト:ハリマ化成株式会社製など)が好適である。また、ここでは、電気接続用貫通口42毎に、個別に弾性保護膜94が着膜されている。
その後、図10−3(E)で示すように、金属配線90及び弾性保護膜94が形成された面に樹脂保護膜92(例えば、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ株式会社製の感光性ポリイミド Durimide7320)を積層してパターニングする。なお、このとき、インク供給用貫通口112(第1インク供給路114A)を樹脂保護膜92が覆わないようにする。また、この樹脂保護膜92としては、ポリイミド系、ポリアミド系、エポキシ系、ポリウレタン系、シリコーン系等、耐インク性を有していればよい。更に、この樹脂保護膜92を弾性保護膜94上に形成せずに、後述するSiC膜96で弾性保護膜94を被覆するようにしてもよい。この場合、そのSiC膜96が第1保護膜となる。
次いで、図10−3(F)で示すように、シリコン基板72に充填した(埋め込んだ)ガラスペースト76を、HFを含む溶解液によって選択的にエッチング除去する。このとき、SiOx膜82からなる振動板48は、Ge膜78によりHF溶液から保護されるため、エッチングされることはない。つまり、このGe膜78は、上記したように、ガラスペースト76をHF溶液でエッチング除去する際に、SiOx膜82からなる振動板48が一緒にエッチング除去されてしまうのを防止するエッチングストッパー層として機能する。
なお、ここではガラスペースト76の除去に、HFを含んだ液体を用いたが、ガラスペースト76の除去には、HFを含んだガスや蒸気を使用してもよい。エッチング液を狭い入口から供給する場合には、被エッチング材(この場合はガラスペースト76)をエッチングした際に発生する気泡が抜けなかったり、新しいエッチング液との置換ができなかったりするため、エッチングの進行が阻害されることがある。ガスや蒸気を用いると、このような不具合は起きないため、上記のような場合には、ガスや蒸気とした方が好ましい。また、ガラスペースト76をエッチングするHF溶液もしくはHFを含むガスや蒸気が、振動板48となる材料をエッチングしない構成とした場合には、Ge膜78のようなエッチングストッパー層は不要となる。
その後、図10−4(G)で示すように、Ge膜78の溶解液、例えば60℃に加熱した過酸化水素(H)を圧力室115側から供給して、Ge膜78の一部をエッチングして除去する。この段階で圧力室115及び連通路50が完成する。なお、圧力室115及び連通路50を形成した部位以外では、Ge膜78が残ったままとなるが、特に問題はない。
こうして、Ge膜78をエッチング除去したら、図10−4(H)で示すように、インク供給用貫通口112内の導電性ペースト86を、所定の剥離液(ペースト剥離剤)でウェットエッチングして除去する。なお、このとき、金属配線90及び弾性保護膜94は、樹脂保護膜92で被覆・保護されているので、損傷するおそれはない。また、この樹脂保護膜92により、電気接続用貫通口42内の導電性ペースト86が被覆・保護されるので、電気接続用貫通口42内の導電性ペースト86がエッチング除去されるおそれもない。インク供給用貫通口112内の導電性ペースト86をエッチング除去したら、樹脂保護膜92の硬化処理を行う。
そして次に、図11−1(A)で示すように、少なくともインク110が直接接触する内壁面、即ち樹脂保護膜92、インク供給用貫通口112、隔壁樹脂層119、圧力室115、連通路50の内壁面に、プラズマCVD法や液体ソースCVD(LS−CVD)法により、SiC膜96(膜厚1μm)を、それらの接合部分(境界部分)を含むようにして一体的に成膜する。これにより、それらの耐インク性が向上される。なお、樹脂保護膜92の上面において、プール室部材39が装着される部位よりも外側には、SiC膜96を成膜しなくてよい。
また、製造時の原料ガスに窒素(N)が含まれている場合、SiC膜96内に0%〜30%の窒素(N)が含まれる場合がある。このSiCN膜の場合、耐インク性膜としては、その窒素(N)の含有率が10%以下であることが好ましい。また、耐インク性膜としては、SiC膜96、SiCN膜に限定されるものではなく、DLC(Diamond Like Carbon)、Ta−C(Tetrahedral Amorphous Carbon)、WC(炭化タングステン)、TiN(窒化チタン)、MoB(ホウ化モリブデン)等の無機材料膜が使用可能である。
次いで、シリコン基板72の下面にノズルプレート74を貼着する。すなわち、図11−1(B)で示すように、ノズル56となる開口68Aが形成されたノズルフィルム68をシリコン基板72の下面に貼り付ける。その後、図11−2(C)で示すように、金属配線90に駆動IC60をフリップチップ実装する。このとき、駆動IC60は、予め半導体ウエハプロセスの終りに実施されるグラインド工程にて、所定の厚さ(70μm〜300μm)に加工されている。
そして、駆動IC60の周囲を樹脂材58で封止し、駆動IC60を水分等の外部環境から保護できるようにする。これにより、後工程でのダメージ、例えば、できあがった圧電素子基板70をダイシングによってインクジェット記録ヘッド32に分割する際の水や研削片によるダメージを回避することができる。そして、図11−2(D)で示すように、金属配線90にフレキシブルプリント基板(FPC)100を接続する。
次に、図11−3(E)で示すように、駆動IC60よりも内側の天板部材40(樹脂保護膜92)の上面にプール室部材39を装着して、これらの間にインクプール室38を構成する。これにより、インクジェット記録ヘッド32が完成し、図11−3(F)で示すように、インクプール室38や圧力室115内にインク110が充填可能とされる。
以上のようにして製造されるインクジェット記録ヘッド32を備えたインクジェット記録装置10において、次に、その作用を説明する。まず、インクジェット記録装置10に印刷を指令する電気信号が送られると、ストッカー24から記録用紙Pが1枚ピックアップされ、搬送装置26により搬送される。
一方、インクジェット記録ユニット30では、すでにインクタンクからインク供給ポートを介してインクジェット記録ヘッド32のインクプール室38にインク110が注入(充填)され、インクプール室38に充填されたインク110は、インク供給路114を経て圧力室115へ供給(充填)されている。そして、このとき、ノズル56の先端(吐出口)では、インク110の表面が圧力室115側に僅かに凹んだメニスカスが形成されている。
そして、記録用紙Pを搬送しながら、複数のノズル56から選択的にインク滴を吐出することにより、記録用紙Pに、画像データに基づく画像の一部を記録する。すなわち、駆動IC60により、所定のタイミングで、所定の圧電素子46に電圧を印加し、振動板48を上下方向に撓み変形させて(面外振動させて)、圧力室115内のインク110を加圧し、所定のノズル56からインク滴として吐出させる。こうして、記録用紙Pに、画像データに基づく画像が完全に記録されたら、排紙ベルト23により記録用紙Pをトレイ25に排出する。これにより、記録用紙Pへの印刷処理(画像記録)が完了する。
ここで、このインクジェット記録ヘッド32は、シリコン基板72が圧電素子基板70の支持体となって形成されている(圧電素子基板70をシリコン基板72で支持した状態で作製できる)。そのため、製造しやすい構造となっている。また、インクプール室38と圧力室115の間に振動板48(圧電素子46)が配置され、インクプール室38と圧力室115が同一水平面上に存在しないように構成されている。したがって、圧力室115が互いに近接配置され、ノズル56が高密度に配設される。
また、圧電素子46に電圧を印加する駆動IC60は、圧電素子基板70よりも外方側へ突出しない構成とされている(インクジェット記録ヘッド32内に内蔵されている)。したがって、インクジェット記録ヘッド32の外部に駆動IC60を実装する場合に比べて、圧電素子46と駆動IC60の間を接続する金属配線90の長さが短くて済み、これによって、駆動IC60から圧電素子46までの低抵抗化が実現されている。
つまり、実用的な配線抵抗値で、ノズル56の高密度化、即ちノズル56の高密度なマトリックス状配設が実現されており、これによって、高解像度化が実現可能になっている。しかも、その駆動IC60は、天板41上にフリップチップ実装されているので、高密度の配線接続が容易にでき、更には駆動IC60の高さの低減も図れる(薄くできる)。したがって、インクジェット記録ヘッド32の小型化も実現される。
また、インクジェット記録ヘッド32をほぼ組み立てた後、少なくともインク110が直接接触する樹脂保護膜92、インク供給用貫通口112、隔壁樹脂層119、圧力室115、連通路50の内壁面には、SiC膜96が、それらの接合部分(境界部分)を含むようにして一体的に(連続して)成膜されているので、それらの耐インク性を向上させることができる。
すなわち、種類の異なる部材を多数積層してインクジェット記録ヘッド32を構成しても、また、それぞれの部材の接合方法が異なっていても、インク流路となるこれら各部材の内壁面を、耐インク性のあるSiC膜96でコーティングしているので、これら各部材の接合部分や接着剤等をインク110から経時的に保護することができ、耐インク性に対する信頼性を向上させることができる。また、SiC膜96は高い親水性機能を有しているため、インク流路内での気泡排出性を向上させることができる。
また、駆動IC60と上部電極54とは、天板41に形成された電気接続用貫通口42内の導電性ペースト86で電気的に接続されるので、天板41の裏面(下面)に、金属配線90やバンプを形成することなく、天板部材40を圧電素子基板70と電気的に接続できる。すなわち、天板41に対して片面(上面)のみに加工を施せばよい(金属配線90を形成すればよい)ので、製造が容易になる。
また、天板41に金属配線90を形成(成膜)する際には、電気接続用貫通口42とインク供給用貫通口112、44が、全て導電性ペースト86で塞がれ、かつ、その上面(表面)が研磨されて平坦化される(孔部が無い状態とされる)ので、スパッタ法により容易に形成(成膜)することができる。また、これにより、金属配線90を被覆する樹脂保護膜92の面内均一性が良好になり、成膜制御が容易にできるので、樹脂保護膜92の厚膜化が容易に実現できる。したがって、生産性の低下を防止することができる。
なお、金属配線90が樹脂保護膜92によって被覆されることにより、インク110による金属配線90の腐食が防止される。また、導電性ペースト86は、スクリーン印刷法によって埋め込むので、深い電気接続用貫通口42やインク供給用貫通口112、44でも確実に埋め込むことができる。そして、充填材料が導電性ペースト86だけであるため、インクジェット記録ヘッド32の製造が低コストで容易にできる。また、ガラスペースト76も、スクリーン印刷法によって埋め込むので、深い貫通開口部72Aや溝部72Bでも確実に埋め込むことができる。
ところで、金属配線90を成膜した後、SiC膜96を成膜するときに、インクジェット記録ヘッド32を200℃程度に昇温する必要がある。そのため、その加熱によって導電性ペースト86が急激に膨張し、金属配線90及び樹脂保護膜92を介してSiC膜96が押し上げられることがある。金属配線90及びSiC膜96は、共に1μm〜2μmの薄膜であるため、導電性ペースト86が、例えば約2μm膨らんだ場合には、金属配線90が断線したり、樹脂保護膜92やSiC膜96にひび割れ(亀裂)が発生する。
そして、常温に戻った後でも、樹脂保護膜92やSiC膜96には亀裂が残ったままとなるので、インク110の浸入によって金属配線90や導電性ペースト86が浸食されるおそれがある。また、SiC膜96を形成した後のインクジェット記録ヘッド32の製造工程において、洗浄工程などで導電性ペースト86に、樹脂保護膜92やSiC膜96に形成された亀裂から水分が浸入することもあり、このような現象が起きると、導電性ペースト86が膨潤し、金属配線90の断線を更に引き起こしたり、樹脂保護膜92及びSiC膜96のひび割れ(亀裂)を更に悪化させる原因となる。
そのため、電気接続用貫通口42に充填された導電性ペースト86を被覆・閉塞するように設けられた金属配線90を、弾性保護膜94で更に被覆する構成としている。これによれば、製造工程における加熱(昇温)によって導電性ペースト86が(急激に)膨張しても、その弾性保護膜94により、金属配線90に加えられる押圧力を緩和でき、その金属配線90の断線を防止することができる。
また、これにより、樹脂保護膜92やSiC膜96のひび割れ(亀裂)を防止することができるため、樹脂保護膜92やSiC膜96からの水分(インク110を含む)の浸入を防止することができる。したがって、インクジェット記録ヘッド32内の耐液(インク)性を更に向上させることができ、耐液(インク)性に対する信頼性を更に向上させることができる。
次に、第2実施形態のインクジェット記録ヘッド32について説明する。なお、以下において、第1実施形態のインクジェット記録ヘッド32と同一の構成要素、部材等は同一符号を付して、その詳細な説明(作用を含む)を省略する。すなわち、この第2実施形態のインクジェット記録ヘッド32では、第1実施形態のインクジェット記録ヘッド32と異なる部位についてのみ、図12を基に説明する。
図12で示すように、このインクジェット記録ヘッド32では、電気接続用貫通口42(導電性ペースト86)を被覆・閉塞している金属配線90の上面に、先にSiC膜96(第1保護膜)が着膜され、その後、そのSiC膜96の上面に弾性保護膜94が着膜されている。このような構成にしても、製造工程において、導電性ペースト86の膨張による金属配線90及びSiC膜96への押圧力を緩和できるため、金属配線90の断線やSiC膜96のひび割れ(亀裂)を防止することができる。但し、この場合には、弾性保護膜94は、インクプール室38内において、インク110に接触するため、導電性樹脂材料ではなく、耐液(インク)性樹脂材料を使用することが望ましい。
次に、第3実施形態のインクジェット記録ヘッド32について説明する。なお、以下において、第1実施形態のインクジェット記録ヘッド32と同一の構成要素、部材等は同一符号を付して、その詳細な説明(作用を含む)を省略する。すなわち、この第3実施形態のインクジェット記録ヘッド32では、第1実施形態のインクジェット記録ヘッド32と異なる部位についてのみ、図13を基に説明する。
図13で示すように、このインクジェット記録ヘッド32では、電気接続用貫通口42(導電性ペースト86)を被覆・閉塞している金属配線90の上面に、先にSiC膜96(第1保護膜)が着膜され、その後、そのSiC膜96の上面に弾性保護膜94が着膜され、更に、その弾性保護膜94の上面にSiC膜98(第2保護膜)が着膜されている。このような構成にしても、製造工程において、導電性ペースト86の膨張による金属配線90及びSiC膜96、98への押圧力を緩和できるため、金属配線90の断線やSiC膜96のひび割れ(亀裂)を防止することができる。
なお、上記第1実施形態〜第3実施形態のインクジェット記録ヘッド32では、弾性保護膜94を、電気接続用貫通口42毎に個別に形成するようにしたが、図14、図15で示すように、複数の電気接続用貫通口42(導電性ペースト86)を一度に被覆できるように、弾性保護膜94を形成してもよい。但し、この場合には、弾性保護膜94として、導電性樹脂材料が使用不可となることは言うまでもない。
また、本発明に係る液滴吐出ヘッドとして、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するインクジェット記録ヘッド32を挙げ、液滴吐出装置としても、インクジェット記録ヘッド32を備えたインクジェット記録装置10を挙げたが、本発明に係る液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置は、記録用紙P上への画像(文字を含む)の記録に限定されるものではない。
すなわち、上記実施形態のインクジェット記録装置10では、各色のインクジェット記録ユニット30のインクジェット記録ヘッド32から画像データに基づいて選択的にインク滴が吐出されてフルカラーの画像が記録用紙Pに記録されるようになっているが、記録媒体は記録用紙Pに限定されるものでなく、また、吐出する液体もインク110に限定されるものではない。
例えば、高分子フィルムやガラス上にインク110を吐出してディスプレイ用カラーフィルターを作成したり、溶接状態の半田を基板上に吐出して部品実装用のバンプを形成するなど、工業的に用いられる液滴噴射装置全般に対して、本発明に係る液滴吐出ヘッドを適用することができる。更に、上記実施形態のインクジェット記録装置10では、FWAを例に挙げたが、主走査機構と副走査機構を有するPartial Width Array(PWA)に本発明を適用してもよい。
インクジェット記録装置を示す概略正面図 インクジェット記録ヘッドの配列を示す説明図 記録媒体の幅と印字領域の幅との関係を示す説明図 インクジェット記録ヘッドの構成を示す概略平面図 図4のX−X線矢視概略断面図 第1実施形態のインクジェット記録ヘッドの構成を示す概略断面図 インクジェット記録ヘッドを製造する全体工程の説明図 第1実施形態の圧電素子基板を製造する工程(A)〜(D)を示す説明図 第1実施形態の圧電素子基板を製造する工程(F)〜(G)を示す説明図 第1実施形態の圧電素子基板を製造する工程(H)〜(J)を示す説明図 第1実施形態の圧電素子基板を製造する工程(K)〜(M)を示す説明図 第1実施形態の天板部材を製造する工程(A)〜(B)を示す説明図 第1実施形態の圧電素子基板に天板部材を接合した後の工程(A)〜(B)を示す説明図 第1実施形態の圧電素子基板に天板部材を接合した後の工程(C)〜(D)を示す説明図 第1実施形態の圧電素子基板に天板部材を接合した後の工程(E)〜(F)を示す説明図 第1実施形態の圧電素子基板に天板部材を接合した後の工程(G)〜(H)を示す説明図 第1実施形態の圧電素子基板にノズルプレートを接合する工程(A)〜(B)を示す説明図 第1実施形態の圧電素子基板にノズルプレートを接合した後の工程(C)〜(D)を示す説明図 第1実施形態の圧電素子基板にノズルプレートを接合した後の工程(E)〜(F)を示す説明図 第2実施形態のインクジェット記録ヘッドの構成を示す概略断面図 第3実施形態のインクジェット記録ヘッドの構成を示す概略断面図 インクジェット記録ヘッドの変形例の構成を示す概略平面図 インクジェット記録ヘッドの変形例の構成を示す概略平面図
符号の説明
10 インクジェット記録装置(液滴吐出装置)
32 インクジェット記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)
40 天板部材
41 天板
42 電気接続用貫通口
44 インク供給用貫通口
46 圧電素子(アクチュエーター)
48 振動板
50 連通路
52 下部電極
54 上部電極
56 ノズル
60 駆動IC
62 Au膜
64 PZT膜
66 Au膜
68 ノズルフィルム
70 圧電素子基板
72 シリコン基板
74 ノズルプレート
76 ガラスペースト
78 Ge膜
80 SiOx膜
82 SiOx膜
86 導電性ペースト(導電性材料)
90 金属配線(電極配線)
92 樹脂保護膜(第1保護膜)
94 弾性保護膜
96 SiC膜(第1保護膜)
98 SiC膜(第2保護膜)
110 インク(液体)
112 インク供給用貫通口
114 インク供給路
115 圧力室
118 隔壁樹脂層
119 隔壁樹脂層

Claims (7)

  1. ペースト状の導電性材料が埋め込まれた複数の貫通口と、
    前記貫通口を塞ぐように設けられ、前記導電性材料と電気的に接続される電極配線と、
    前記電極配線を被覆して保護する第1保護膜と、
    を有する基板であって、
    前記電極配線と前記第1保護膜との間に、弾性保護膜を設けたことを特徴とする基板。
  2. ペースト状の導電性材料が埋め込まれた複数の貫通口と、
    前記貫通口を塞ぐように設けられ、前記導電性材料と電気的に接続される電極配線と、
    前記電極配線を被覆して保護する第1保護膜と、
    を有する基板であって、
    前記第1保護膜の上に弾性保護膜を設けたことを特徴とする基板。
  3. ペースト状の導電性材料が埋め込まれた複数の貫通口と、
    前記貫通口を塞ぐように設けられ、前記導電性材料と電気的に接続される電極配線と、
    前記電極配線を被覆して保護する第1保護膜と、
    を有する基板であって、
    前記第1保護膜の上に弾性保護膜を設けるとともに、該弾性保護膜の上に第2保護膜を設けたことを特徴とする基板。
  4. 前記弾性保護膜が、導電性樹脂材料で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の基板。
  5. 前記弾性保護膜が、耐液性樹脂材料で構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の基板。
  6. 請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の基板と、
    前記基板の導電性材料と電気的に接続され、ノズルから液滴を吐出させるためのアクチュエーターと、
    を有することを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  7. 請求項6に記載の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
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