JP2007331175A - 液滴吐出ヘッドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】平滑な振動板を形成する。
【解決手段】周溝72を形成することにより、圧力室50となる空間の中央部に支柱79を残す。そして、周溝72に充填材78を充填し、支柱79及び充填材78の表面に振動板を形成する。充填材78は、支柱79によって、支持されるので、振動板48の形成後に熱処理を伴う工程が行われた場合であっても、その熱処理による縮み変形を起こしにくく、また、その他の変形を起こしにくくなり、シリコン基板70の表面の平滑性や平坦性をより保てる。このように、支柱79と充填材78の両方を用いることにより、シリコン基板70上に形成される振動板48の平滑性や平坦性も向上する。
【選択図】図6−1
【解決手段】周溝72を形成することにより、圧力室50となる空間の中央部に支柱79を残す。そして、周溝72に充填材78を充填し、支柱79及び充填材78の表面に振動板を形成する。充填材78は、支柱79によって、支持されるので、振動板48の形成後に熱処理を伴う工程が行われた場合であっても、その熱処理による縮み変形を起こしにくく、また、その他の変形を起こしにくくなり、シリコン基板70の表面の平滑性や平坦性をより保てる。このように、支柱79と充填材78の両方を用いることにより、シリコン基板70上に形成される振動板48の平滑性や平坦性も向上する。
【選択図】図6−1
Description
本発明は、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドの製造方法に関する。
インクを記録媒体へ吐出して画像を記録するインクジェット記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)を製造する製造方法としては、チャンバ(圧力室)、振動板、アクチュエータ、ノズルなど構成要素を個々に形成してから、個々の構成要素を接合してインクジェット記録ヘッドを製造する製造方法がある。この方法では、ヘッドの低コスト化及び高集積化に限界がある。
そこで、シリコン(Si)などから選ばれる基板を用いると共に、スパッタやCVD等の成膜法、ドライエッチングやウェットエッチング等のフォトリソプロセスを利用して、インクジェット記録ヘッドを一体製造し、低コスト化及び高集積化を図る製造方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、基板にチャンバを開口して犠牲層を充填した後、振動板、圧電素子(ピエゾアクチュエータ)を形成し、最後に充填した犠牲層を除去する製造方法が開示されている。
また、特許文献2には、基板に犠牲層(広義の充填層)を形成し、犠牲層を覆うパッシベーション層を形成した後、裏面から犠牲層が露出するまでエッチング加工すると共に、犠牲層を除去し、パッシベーション層に孔加工するチャンバ及びノズルの製造方法が開示されている。
いずれの技術も、基板の孔に充填材を充填し、その上にインクジェット記録ヘッドの構成要素、例えば、振動板やノズルプレートを一連のプロセスで形成した後、充填材を除去する方法である。
特開2002−46283号公報
特開平10−181032号公報
ところが、本願発明者らが検討した結果、上述の従来技術、特に充填材の上に振動板やピエゾアクチュエータを設け、チャンバ、振動板、アクチュエータを一体製造する場合、(1)後工程の熱処理に伴う充填材の再収縮による凹みで、平坦かつ平滑な振動板が形成できない課題が、また、充填材を除去する際は、(2)効率よく除去することが困難で、充填材の除去に長時間を要する、あるいは充填材の残さが残る課題があり、(3)さらに充填材を硬化させるための熱処理で、基板及びチャンバ孔が歪んだり反ったりする課題のあることが明らかになった。
本発明は、上記事実を考慮し、平坦かつ平滑な振動板を効率よく形成できる液滴吐出ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
本発明の請求項1に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、基板の表面に周状の周溝を形成することにより、圧力室の内壁を形成する第1工程と、前記第1工程の後に、前記基板の表面に振動板、電極及び圧電素子を積層する第2工程と、前記第2工程の後に、前記周溝に囲まれる支柱を前記基板の裏面側から除去して、圧力室となる空間を形成する第3工程と、を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、基板の表面に周状の周溝を形成することにより、圧力室の内壁を形成する第1工程を行う。その後に、基板の表面に振動板、電極及び圧電素子を積層する第2工程を行う。その後に、周溝に囲まれる支柱を基板の裏面側から除去する第3工程を行う。
この構成では、周溝に囲まれる支柱を基板に残し、その基板上に振動板が形成される。このため、基板上に形成される振動板を支柱が支持するので、平滑な振動板が形成できる。
本発明の請求項2に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、請求項1の構成において、前記第2工程の前に、充填材を前記周溝に充填する第4工程と、前記第2工程の後に、前記充填材を前記基板の裏面側から除去する第5工程と、を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、第2工程の前に、充填材を周溝に充填する第4工程を行う。第2工程の後に、充填材を基板の裏面側から除去する第5工程を行う。
この構成では、基板上に形成される振動板を支柱及び充填材で支持するので、平滑な振動板が形成できる。また、充填材は支柱があることにより、熱による縮みなどの変形を起こしにくくなり、基板の表面の平滑性をより保てる。このように、支柱と充填材を用いることにより、基板の表面の平滑性をより保てるので、基板上に形成される振動板の平滑性も向上する。
本発明の請求項3に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、請求項2の構成において、前記第5工程は、前記第3工程の後に行われることを特徴とする。
この構成によれば、第5工程は、第3工程の後に行われる。すなわち、支柱を除去した後に、充填材が除去される。このため、充填材を除去するためのスペースが拡大されるので、充填材を速く除去でき、また、充填材の除去が容易となる。特に、充填材を液体などで溶解して除去する場合には、液体が効率よく作用し、充填材を効率よく除去でき、また、残渣を残さず除去できる。
本発明の請求項4に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、請求項1〜3のいずれか1項の構成において、前記第2工程の前に、前記支柱の上面に剥離層を形成する第6工程を備え、前記第3工程は、前記基板の裏面側から前記剥離層をエッチングすることにより、前記支柱を前記振動板から分離除去することを特徴とする。
この構成によれば、第2工程の前に、支柱の上面に剥離層を形成する第6工程を行う。
基板の裏面側から、その剥離層をエッチングすることにより、支柱を振動板から分離除去する。これにより、支柱の除去が容易となる。
基板の裏面側から、その剥離層をエッチングすることにより、支柱を振動板から分離除去する。これにより、支柱の除去が容易となる。
本発明の請求項5に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、請求項1〜4のいずれか1項の構成において、前記周溝は、ドライエッチングで形成されたことを特徴とする。
この構成によれば、溝幅に対して深さが大きい周溝を、良好に形成することができる。
本発明の請求項6に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、請求項1〜5のいずれか1項の構成において、前記第3工程の後に、プレートを前記基板の裏面に接合して、前記空間を封止する第7工程を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、空間を封止する前は、基板の裏面側に障害物がなく、充填材や支柱を効率よく除去することができ、各種の検査も容易に行える。この工程の後に、ノズル孔などを形成したプレートを接合することによって、圧力室となる封止空間が形成できる。
本発明の請求項7に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、請求項6の構成において、前記第7工程の前に、前記圧力室の内壁に保護膜を形成する第8工程を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、圧力室の内壁に保護膜を形成するので、圧力室の耐液性が高まる。
本発明は、上記構成としたので、平坦かつ平滑な振動板を効率よく形成できる。
以下に、本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。本実施形態では、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドの製造方法として、インクを吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録ヘッドの製造方法について説明する。
まず、本実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの製造方法によって製造されるインクジェット記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置について説明する。
なお、記録媒体は記録紙Pとして説明をする。また、記録紙Pのインクジェット記録装置10における搬送方向を副走査方向として矢印Sで表し、その搬送方向と直交する方向を主走査方向として矢印Mで表す。また、図において、矢印UP、矢印LOが示されている場合は、それぞれ上方向、下方向を示すものとし、上下の表現をした場合は、上記各矢印に対応しているものとする。
図1で示すように、インクジェット記録装置10は、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各インクジェット記録ユニット30(インクジェット記録ヘッド32)を搭載するキャリッジ12を備えている。このキャリッジ12の記録紙Pの搬送方向上流側には一対のブラケット14が突設されており、そのブラケット14には円形状の開孔14A(図2参照)が穿設されている。そして、その開孔14Aに、主走査方向に架設されたシャフト20が挿通されている。
また、主走査方向の両端側には、主走査機構16を構成する駆動プーリー(図示省略)と従動プーリー(図示省略)が配設されており、その駆動プーリーと従動プーリーに巻回されて、主走査方向に走行するタイミングベルト22の一部がキャリッジ12に固定されている。したがって、キャリッジ12は主走査方向に往復移動可能に支持される構成である。
また、このインクジェット記録装置10には、画像印刷前の記録紙Pを束にして入れておく給紙トレイ26が設けられており、その給紙トレイ26の上方には、インクジェット記録ヘッド32によって画像が印刷された記録紙Pが排出される排紙トレイ28が設けられている。そして、給紙トレイ26から1枚ずつ給紙された記録紙Pを所定のピッチで副走査方向へ搬送する搬送ローラー及び排出ローラーからなる副走査機構18が設けられている。
その他、このインクジェット記録装置10には、印刷時において各種設定を行うコントロールパネル24と、メンテナンスステーション(図示省略)等が設けられている。メンテナンスステーションは、キャップ部材、吸引ポンプ、ダミージェット受け、クリーニング機構等を含んで構成されており、吸引回復動作、ダミージェット動作、クリーニング動作等のメンテナンス動作を行うようになっている。
また、各色のインクジェット記録ユニット30は、図2で示すように、インクジェット記録ヘッド32と、それにインクを供給するインクタンク34とが一体に構成されたものであり、インクジェット記録ヘッド32の下面中央のインク吐出面32Aに形成された複数のノズル56(図3参照)が、記録紙Pと対向するようにキャリッジ12上に搭載されている。したがって、インクジェット記録ヘッド32が主走査機構16によって主走査方向に移動しながら、記録紙Pに対してノズル56から選択的にインク滴を吐出することにより、所定のバンド領域に対して画像データに基づく画像の一部が記録される。
そして、主走査方向への1回の移動が終了すると、記録紙Pは、副走査機構18によって副走査方向に所定ピッチ搬送され、再びインクジェット記録ヘッド32(インクジェット記録ユニット30)が主走査方向(前述とは反対方向)に移動しながら、次のバンド領域に対して画像データに基づく画像の一部が記録されるようになっており、このような動作を複数回繰り返すことによって、記録紙Pに画像データに基づく全体画像がフルカラーで記録される。
次に、インクジェット記録ヘッド32の構成について説明する。図3はインクジェット記録ヘッド32の構成を示す概略平面図であり、図4は図3のX−X線概略断面図である。この図3、図4で示すように、インクジェット記録ヘッド32には、インクタンク34と連通するインク供給ポート36が設けられており、そのインク供給ポート36から注入されたインク110は、インクプール室38に貯留される。
インクプール室38は天板40と隔壁42とによって、その容積が規定されており、インク供給ポート36は、天板40の所定箇所に複数、列状に穿設されている。また、列をなすインク供給ポート36の間で、天板40よりも内側のインクプール室38内には、圧力波を緩和する樹脂膜製エアダンパー44(後述する感光性ドライフィルム96)が設けられている。
天板40の材質は、例えばガラス、セラミックス、シリコン、樹脂等、インクジェット記録ヘッド32の支持体になり得る強度を有する絶縁体であれば何でもよい。また、天板40には、後述する駆動IC60へ通電するための金属配線90が設けられている。この金属配線90は、樹脂膜92で被覆保護されており、インク110による侵食が防止されるようになっている。
隔壁42は樹脂(後述する感光性ドライフィルム98)で成形され、インクプール室38を矩形状に仕切っている。また、インクプール室38は、圧電素子46と、その圧電素子46によって上下方向に撓み変形させられる振動板48を介して、圧力室50と上下に分離されている。つまり、圧電素子46及び振動板48が、インクプール室38と圧力室50との間に配置される構成とされ、インクプール室38と圧力室50とが同一水平面上に存在しないように構成されている。
したがって、圧力室50を互いに接近させた状態に配置することが可能であり、ノズル56をマトリックス状に高密度に配設することが可能となっている。また、このような構成にしたことにより、キャリッジ12の主走査方向への1回の移動で、広いバンド領域に画像を形成することができるので、その走査時間が短くて済む。すなわち、少ないキャリッジ12の移動回数及び時間で記録紙Pの全面に亘って画像形成を行う高速印刷が実現可能となっている。
圧電素子46は、圧力室50毎に振動板48の上面に接着されている。振動板48は、少なくとも上下方向に弾性変形する弾性素材で形成され、圧電素子46に通電されると(電圧が印加されると)、上下方向に撓み変形する(変位する)構成になっている。
圧電素子46の下面には一方の極性となる下部電極52が配置され、圧電素子46の上面には他方の極性となる上部電極54が配置されている。そして、この上部電極54に駆動IC60が金属配線86により電気的に接続されている。このように、圧力室50に充填されたインク110へ圧力を付与する駆動部(アクチュエータ)53は、圧電素子46、下部電極52、上部電極54、駆動IC60などから構成されている。
また、圧電素子46は、低透水性絶縁膜(SiOx膜)80で被覆保護されている。圧電素子46を被覆保護している低透水性絶縁膜(SiOx膜)80は、水分透過性が低くなる条件で着膜するため、水分が圧電素子46の内部に侵入して信頼性不良となること(PZT膜内の酸素を還元することにより生ずる圧電特性の劣化)を防止できる。なお、下部電極52と接触する金属(SUS等)製の振動板48は、低抵抗なGND配線としても機能するようになっている。
更に、圧電素子46は、その低透水性絶縁膜(SiOx膜)80の上面が、樹脂膜82で被覆保護されている。これにより、圧電素子46において、インク110による侵食の耐性が確保されるようになっている。また、金属配線86も、樹脂保護膜88で被覆保護され、インク110による侵食が防止されるようになっている。
また、圧電素子46の上方は、樹脂膜82で被覆保護され、樹脂保護膜88が被覆されない構成になっている。樹脂膜82は、柔軟性がある樹脂層であるため、このような構成により、圧電素子46(振動板48)の変位阻害が防止されるようになっている(上下方向に好適に撓み変形可能とされている)。つまり、圧電素子46上方の樹脂層は、薄い方がより変位阻害の抑制効果が高くなるので、樹脂保護膜88を被覆しないようにしている。
駆動IC60は、隔壁42で規定されたインクプール室38の外側で、かつ天板40と振動板48との間に配置されており、振動板48や天板40から露出しない(突出しない)構成とされている。したがって、インクジェット記録ヘッド32の小型化が実現可能となっている。
また、その駆動IC60の周囲は樹脂材58で封止され、駆動IC60の下面には、複数のバンプ62がマトリックス状に所定高さ突設されており、振動板48上に圧電素子46が形成された駆動部53の金属配線86にフリップチップ実装されるようになっている。したがって、圧電素子46に対する高密度接続が容易に実現可能であり、駆動IC60の高さの低減を図ることができる(薄くすることができる)。これによっても、インクジェット記録ヘッド32の小型化が実現可能となっている。
また、図3において、駆動IC60の外側には、バンプ64が設けられている。このバンプ64は、天板40に設けられる金属配線90と、駆動部53に設けられる金属配線86とを接続しており、当然ながら、駆動部53に実装された駆動IC60の高さよりも高くなるように設けられている。
したがって、図4、図5で示すように、インクジェット記録装置10の本体側に設けられて、インクの吐出を制御するボード74から天板40の金属配線90に通電され、その天板40の金属配線90からバンプ64を経て金属配線86に通電され、そこから駆動IC60に通電される構成である。そして、その駆動IC60により、所定のタイミングで圧電素子46に電圧が印加され、振動板48が上下方向に撓み変形することにより、圧力室50内に充填されたインク110が加圧されて、ノズル56からインク滴が吐出する構成である。
インク滴を吐出するノズル56は、圧力室50毎に1つずつ設けられ、圧力室50に接続された連通路55を介して、圧力室50と連通している。圧力室50とインクプール室38とは、圧電素子46を回避するとともに、振動板48に穿設された貫通孔48Aを通るインク流路66と、圧力室50から図4において水平方向へ向かって延設されたインク流路68とが連通することによって接続されている。このインク流路68は、インクジェット記録ヘッド32の製造時に、インク流路66とのアライメントが可能なように(確実に連通するように)、予め実際のインク流路66との接続部分よりも少し長めに設けられている。
次に、上記のインクジェット記録ヘッド32の製造方法について説明する。本実施形態に係るインクジェット記録ヘッド32は、総じていえば、シリコン基板70に圧力室50を形成すると共に、圧力室50に充填材78を充填してその充填材上に振動板48を積層し、さらに、圧電素子46などからなる駆動部53を振動板48上に形成すると共に、この駆動部53上にガラス基板(ガラス製の天板40)を積層することで製造される。
この製造工程のうち、圧力室50に充填材78を充填して、その充填材上に振動板48を積層すると共に、充填材78を除去する第1製造工程を説明する。図6−1、図6−2には、圧力室50及び振動板48をシリコン基板70に形成する第1製造過程について、概略的に示されている。
まず、図6−1(A)に示すように、所定の厚さ(例えば、0.3mm)のシリコン基板70を用意する。次に、図6−1(B)に示すように、シリコン基板70の表面に周状の周溝72をドライエッチングで形成することにより、圧力室50の内壁を形成する(請求項1の第1工程に相当)。また、周状の周溝72を形成することにより、周溝72に囲まれる領域に、支柱79が形成される。この周溝72を含む、周溝72に囲まれる領域が、圧力室50となる空間となるが、この空間の略中央部に、支柱79を形成するため、本実施形態では、周状の周溝72を形成している。
周溝72の形状は、本実施形態では、図7に示すように、長円形状(陸上競技のトラックの形状)をしている。なお、周溝72の形状は、環状、楕円形状、四角形状であってもよく、圧力室50の形状に対応して形成される。また、周溝72の溝幅W(圧力室50の内壁から支柱79までの距離)は、100μm〜10μmの範囲に設定され、例えば、50μmとされる。周溝72の溝幅Wが10μm未満であると、充填材78を充填する際に、充填しにくくなる。また、周溝72の溝幅Wが100μmを超えると、後述する支柱79の作用が低下してしまう。従って、周溝72の溝幅Wは、10μm〜100μmの範囲が最適となる。周溝72は溝幅に対して深さ寸法が大きく(例えば100μm)、ウェットエッチングで加工することは困難であり、ドライエッチングによって良好に形成することができる。
次に、図6−1(C)に示すように、スクリーン印刷法などにより、周溝72に充填材78を充填する(請求項2の第4工程に相当)。本実施形態では、充填材78として、ガラス粉末を練りこんだペーストガラスを用いている。
充填材78が充填されたシリコン基板70を加熱処理することにより、周溝72に充填された充填材78を焼成して硬化させる。これにより、充填材78中の溶剤揮発による「肉痩せ」が生じる。充填材78の焼成後の肉痩せが生じても、周溝72が完全に埋め込まれ、シリコン基板70の表面(上面)よりも上方に盛り上がるように、周溝72に充填される充填材78の量が調整される。
シリコン基板70の表面(上面)から上方にはみ出している充填材78を研磨などの表面処理することにより、充填材78の表面(上面)を平滑にする。
次に、図6−1(D)に示すように、支柱79の表面に、ゲルマニウム薄膜などからなる剥離層73を形成する(請求項4の第6工程に相当)。この剥離層73は、以下の工程で行う支柱79の除去の際に、エッチングするものであるから、剥離層73の材質としては、ゲルマニウム薄膜に限らず、支柱79の除去が容易となるように、エッチング性が良いもの(溶解が容易に行えるもの)を用いることが望ましい。
次に、図6−1(E)に示すように、剥離層73の表面及び平滑にされた充填材78の表面に、薄膜でなる振動板48を堆積形成する(請求項1の第2工程に相当)。さらに、下部電極52、圧電素子46及び上部電極54を積層形成する(請求項1の第2工程に相当)。なお、この下部電極52、圧電素子46及び上部電極54を形成する工程については、後述の第2製造工程において、改めて、具体的に説明する。
振動板48の材質は、充填材78とのエッチング選択性が得られるものであればよく、例えば、所定の厚さ(例えば、5μm)のポリシリコンを用いる。なお、振動板を成膜する前に、充填材78とのエッチング選択性が得られる材質の薄膜(例えば、ゲルマニウム薄膜)を充填材78の全面に成膜すれば、振動板48の材質は問われず、例えば、SiO2などを用いてもよい。
次に、図6−2(F)に示すように、シリコン基板70の裏面(下面)から研磨を行う。研磨としては、例えば、CMP研磨が用いられる。このように、研磨されることにより、シリコン基板70は、所望の厚さ(例えば、100μm)にされ、圧力室50の高さが規律される。なお、シリコン基板70の所望の厚さと同じ深さの周溝72を予め形成し、この周溝72の充填された充填材78の裏面が露出したところで研磨を終了することにより、シリコン基板70の厚さを調整してもよい。
次に、図6−2(G)に示すように、シリコン基板70の裏面(下面)側から充填材78をエッチングなどにより除去する(請求項2の第5工程に相当)。
次に、図6−2(H)に示すように、剥離層73をエッチングすることにより、支柱79を除去する(請求項1の第3工程の相当)。支柱79が除去されることにより、圧力室50となる空間が形成される。
支柱79を除去した後に、圧力室50の内壁面に、炭化珪素(SiC)、珪素窒化物(SiN)などから選ばれる保護膜65を形成する(請求項7の第8工程に相当)。これにより、圧力室50の内壁の耐液性を高められる。
次に、図6−2(I)に示すように、連通路55が形成された連通路プレート77をシリコン基板70の裏面(下面)に接合し、圧力室50となる空間を封止する(請求項6の第7工程の相当)。さらに、ノズル56が形成されたノズルプレート75を連通路プレート77に接合する。
このように、本実施形態では、周溝72を形成することにより、圧力室50となる空間の中央部に支柱79を残す。そして、周溝72に充填材78を充填し、圧力室50となる空間の上部、すなわち、支柱79及び充填材78の表面に振動板を形成する。
このため、シリコン基板70上に形成される振動板48を支柱79及び充填材78で支持するので、平滑な振動板48が形成できる。また、充填材78は、支柱79によって、支持されるので、振動板48の形成後に熱処理を伴う工程が行われた場合であっても、その熱処理による縮み変形を起こしにくく、また、その他の変形を起こしにくくなり、シリコン基板70の表面の平滑性をより保てる。このように、支柱79と充填材78の両方を用いることにより、シリコン基板70の表面の平滑性をより保てるので、シリコン基板70上に形成される振動板48の平滑性も向上する。
また、本実施形態では、シリコン基板70の裏面側から、その剥離層73をエッチングすることにより、支柱79を振動板48から分離除去する。これにより、支柱79の除去が容易となる。
なお、図6に示す例では、充填材78を充填する構成であったが、充填材78を充填しない構成であってもよい。この場合は、振動板48を成膜するのではなく、振動板48を予めフィルム状に形成して、シリコン基板70上に積層することで実現できる。
また、図6に示す例では、充填材78を除去した後に、支柱79を除去していたが、図8−1、図8−2に示すように、支柱79を除去した後に、充填材78を除去する構成であってもよい。
この構成では、まず、図8−1(A)に示すように、所定の厚さ(例えば、300μm)のシリコン基板70を用意する。次に、図8−1(B)に示すように、シリコン基板70の表面に周状の周溝72をドライエッチングで形成することにより、圧力室50の内壁を形成する(請求項1の第1工程に相当)。また、周状の周溝72を形成することにより、周溝72に囲まれる領域に、支柱79が形成される。この周溝72を含む、周溝72に囲まれる領域が、圧力室50となる空間となるが、この空間の略中央部に、支柱79を形成するため、本実施形態では、周状の周溝72を形成している。
周溝72の形状は、本実施形態では、図7に示すように、長円形状(陸上競技のトラックの形状)をしている。なお、周溝72の形状は、環状、楕円形状、四角形状であってもよく、圧力室50の形状に対応して形成される。また、周溝72の溝幅W(圧力室50の内壁から支柱79までの距離)は、100μm〜10μmの範囲に設定され、本実施形態では、例えば、50μmとされる。周溝72の溝幅Wが10μm未満であると、充填材78を充填する際に、充填しにくくなる。また、周溝72の溝幅Wが100μmを超えると、後述する支柱79の作用が低下してしまう。従って、周溝72の溝幅Wは、10μm〜100μmの範囲が最適となる。
次に、図8−1(C)に示すように、スクリーン印刷法などにより、周溝72に充填材78を充填する(請求項2の第4工程に相当)。本実施形態では、充填材78として、ガラス粉末を練りこんだペーストガラスを用いている。
充填材78が充填されたシリコン基板70を加熱処理することにより、周溝72に充填された充填材78を焼成して硬化させる。これにより、充填材78中の溶剤揮発による「肉痩せ」が生じる。充填材78の焼成後の肉痩せが生じても、周溝72が完全に埋め込まれ、シリコン基板70の表面(上面)よりも上方に盛り上がるように、周溝72に充填される充填材78の量が調整される。
シリコン基板70の表面(上面)から上方にはみ出している充填材78を研磨などの表面処理することにより、充填材78の表面(上面)を平滑にする。
次に、図8−1(D)に示すように、シリコン基板70の表面及び平滑にされた充填材78の表面に、薄膜でなる振動板48を堆積形成する(請求項1の第2工程に相当)。さらに、下部電極52、圧電素子46及び上部電極54を積層形成する(請求項1の第2工程に相当)。なお、この下部電極52、圧電素子46及び上部電極54を形成する工程については、後述の第2製造工程において、改めて、具体的に説明する。
振動板48の材質は、充填材78とのエッチング選択性が得られるものであればよく、例えば、所定の厚さ(例えば、5μm)のポリシリコンを用いる。なお、振動板を成膜する前に、充填材78とのエッチング選択性が得られる材質の薄膜(例えば、ゲルマニウム薄膜)を充填材78の全面に成膜すれば、振動板48の材質は問われず、例えば、SiO2などを用いてもよい。
次に、図8−1(E)に示すように、シリコン基板70の裏面(下面)から研磨を行う。研磨としては、例えば、CMP研磨が用いられる。このように、研磨されることにより、シリコン基板70は、所望の厚さ(例えば、100μm)にされ、圧力室50の高さが規律される。なお、シリコン基板70の所望の厚さと同じ深さの周溝72を予め形成し、この周溝72の充填された充填材78の裏面が露出したところで研磨を終了することにより、シリコン基板70の厚さを調整してもよい。
次に、図8−2(F)に示すように、シリコン基板70の裏面にラップ加工などを利用して微細な凹凸を形成する。これにより、アンカー効果を高め、シリコン基板70の裏面にプレートを接合する際の接着性を向上できる。
次に、図8−2(G)に示すように、支柱を除くシリコン基板70の裏面及び充填材78の裏面に、フォトリソにより、フォトレジスト膜69を形成する。
次に、図8−2(H)に示すように、支柱79をエッチングにより、除去する(請求項1の第3工程の相当)。これにより、充填材78の除去を促進するための促進孔67が形成される。
次に、図8−2(I)に示すように、シリコン基板70の裏面(下面)側から充填材78をエッチングなどにより除去する(請求項2の第5工程に相当)。これにより、圧力室50となる空間が形成される。
この構成では、促進孔67があるため、充填材78の表面積が拡大され、エッチング液が効率よく作用する。これにより、短時間で充填材78を効率よく除去でき、また、図8−2(J)に示すように、残渣を残さず隅々まで除去できる。
なお、充填材78を除去した後に、圧力室50の内壁面に、炭化珪素(SiC)、珪素窒化物(SiN)などから選ばれる保護膜を形成してもよい。これにより、圧力室50の内壁の耐液性を高められる。
次に、図8−2(K)に示すように、連通路55が形成された連通路プレート77をシリコン基板70の裏面(下面)に接合し、圧力室50となる空間を封止する(請求項6の第7工程の相当)。さらに、ノズル56が形成されたノズルプレート75を連通路プレート77に接合する。
以上のように、図8に示す例では、支柱79を除去した後に、充填材78が除去される。このため、充填材78を除去するためのスペースが拡大されるので、充填材78を速く除去でき、また、充填材78の除去が容易となる。特に、本実施形態のように、充填材78を液体などで溶解して除去する場合には、液体が効率よく作用し、充填材78を効率よく除去でき、また、残渣を残さず除去できる。
図6−1、図6−2及び図8−1、図8−2に示す例では、シリコン基板70に周溝72のみを形成していたが、図9−1、図9−2に示すように、周溝72と共に連通路55をシリコン基板70に形成する構成であってもよい。
まず、図9−1(A)に示すように、所定の厚さ(例えば、0.3mm)のシリコン基板70を用意する。次に、図9−1(B)に示すように、シリコン基板70の表面に周状の周溝72を形成することにより、圧力室50の内壁を形成する(請求項1の第1工程に相当)。また、周状の周溝72を形成することにより、周溝72に囲まれる領域に、支柱79が形成される。この周溝72を含む、周溝72に囲まれる領域が、圧力室50となる空間となるが、この空間の略中央部に、支柱79を形成するため、本実施形態では、周状の周溝72を形成している。
周溝72の形状は、本実施形態では、図10に示すように、長円形状(陸上競技のトラックの形状)をしている。なお、周溝72の形状は、環状、楕円形状、四角形状であってもよく、圧力室50の形状に対応して形成される。
また、周溝72の溝幅W(圧力室50の内壁から支柱79までの距離)は、100μm〜10μmの範囲に設定され、本実施形態では、例えば、50μmとされる。周溝72の溝幅Wが10μm未満であると、充填材78を充填する際に、充填しにくくなる。また、周溝72の溝幅Wが100μmを超えると、後述する支柱79の作用が低下してしまう。従って、周溝72の溝幅Wは、10μm〜100μmの範囲が最適となる。
図9−1及び図9−2に示す例では、周溝72に加えて、連通路55をシリコン基板70に形成する。連通路55は、周溝72に接続され横方向に延びる連通路55Aと、連通路55Aに接続され縦方向に延びる連通路55Bとを備えて構成されている。
この連通路55Aは、最終的に、圧力室50と連通路55Bとを連通させて、一方、連通路55Bは、最終的に、連通路55Aとノズル56を連通させる。
次に、図9−1(C)に示すように、スクリーン印刷法などにより、周溝72及び連通路55に充填材78を充填する(請求項2の第4工程に相当)。本実施形態では、充填材78として、ガラス粉末を練りこんだペーストガラスを用いている。
充填材78が充填されたシリコン基板70を加熱処理することにより、周溝72及び連通路55に充填された充填材78を焼成して硬化させる。これにより、充填材78中の溶剤揮発による「肉痩せ」が生じる。充填材78の焼成後の肉痩せが生じても、周溝72及び連通路55が完全に埋め込まれ、シリコン基板70の表面(上面)よりも上方に盛り上がるように、周溝72及び連通路55に充填される充填材78の量が調整される。
シリコン基板70の表面(上面)から上方にはみ出している充填材78を研磨などの表面処理することにより、充填材78の表面(上面)を平滑にする。
次に、図9−1(D)に示すように、支柱79の表面に、ゲルマニウム薄膜などからなる剥離層73を形成する(請求項4の第6工程に相当)。この剥離層73は、以下の工程で行う支柱79の除去の際に、エッチングするものであるから、剥離層73の材質としては、ゲルマニウム薄膜に限らず、支柱79の除去が容易となるように、エッチング性が良いもの(溶解が容易に行えるもの)を用いることが望ましい。
次に、図9−1(E)に示すように、剥離層73の表面及び平滑にされた充填材78の表面に、薄膜でなる振動板48を堆積形成する(請求項1の第2工程に相当)。さらに、下部電極52、圧電素子46及び上部電極54を積層形成する(請求項1の第2工程に相当)。なお、この下部電極52、圧電素子46及び上部電極54を形成する工程については、後述の第2製造工程において、改めて、具体的に説明する。
振動板48の材質は、充填材78とのエッチング選択性が得られるものであればよく、例えば、所定の厚さ(例えば、5μm)のポリシリコンを用いる。なお、振動板を成膜する前に、充填材78とのエッチング選択性が得られる材質の薄膜(例えば、ゲルマニウム薄膜)を充填材78の全面に成膜すれば、振動板48の材質は問われず、例えば、SiO2などを用いてもよい。
次に、図9−2(F)に示すように、シリコン基板70の裏面(下面)から研磨を行う。研磨としては、例えば、CMP研磨が用いられる。このように、研磨されることにより、シリコン基板70は、所望の厚さ(例えば、100μm)にされ、圧力室50の高さが規律される。なお、シリコン基板70の所望の厚さと同じ深さの周溝72を予め形成し、この周溝72の充填された充填材78の裏面が露出したところで研磨を終了することにより、シリコン基板70の厚さを調整してもよい。
次に、図9−2(G)に示すように、シリコン基板70の裏面(下面)側から充填材78をエッチングなどにより除去する(請求項2の第5工程に相当)。
次に、図9−2(H)に示すように、剥離層73をエッチングすることにより、支柱79を除去する(請求項1の第3工程の相当)。支柱79が除去されることにより、圧力室50となる空間が形成される。
なお、支柱79を除去した後に、圧力室50の内壁面に、炭化珪素(SiC)、珪素窒化物(SiN)などから選ばれる保護膜を形成してもよい(請求項7の第8工程に相当)。これにより、圧力室50の内壁の耐液性を高められる。
次に、図9−2(I)に示すように、ノズル56が形成されたノズルプレート75を連通路プレート77に接合し、圧力室50となる空間を封止する(請求項6の第7工程の相当)。
図9−1及び図9−2に示す例では、充填材78を除去した後に、支柱79を除去していたが、図8−1、図8−2に示すのと同様に、支柱79を除去した後に、充填材78を除去する構成であってもよい。
続いて、圧電素子46などからなる駆動部53を振動板48上に形成すると共に、この駆動部53上にガラス基板(ガラス製の天板40)を積層して形成する第2製造過程について説明する。
なお、この第2製造過程は、例えば、シリコン基板70上に振動板48が形成される工程(図6−1(E)、図8−1(D)図9−1(E)参照)と、シリコン基板70の裏面(下面)から研磨する工程(図6−1(F)、図8−1(E)図9−1(F)参照)との間に行われる。
まず、図11−1(A)に示すように、振動板48に、インク流路66の形成用の貫通孔48Aを形成する。
次に、図11−1(B)に示すように、例えば、スパッタ法により、振動板48の上面に下部電極52を積層し、振動板48の上面に積層された下部電極52をパターニングする。具体的には、ホトリソグラフィー法によるレジスト形成、パターニング、RIE法によるエッチング、酸素プラズマによるレジスト剥離である。この下部電極52が接地電位となる。
次に、図11−1(C)で示すように、下部電極52の上面に、圧電素子46の材料であるPZT膜と上部電極54を順にスパッタ法で積層し、図11−1(D)で示すように、圧電素子46(PZT膜)及び上部電極54をパターニングする。
具体的には、PZT膜スパッタ(膜厚3μm〜15μm)、金属膜スパッタ(膜厚500Å〜3000Å)、ホトリソグラフィー法によるレジスト形成、パターニング(エッチング)、酸素プラズマによるレジスト剥離である。下部及び上部の電極材料としては、例えば圧電素子であるPZT材料との親和性が高く、耐熱性がある、Au、Ir、Ru、Pt等が挙げられる。
次に、図11−2(E)で示すように、上面に露出している下部電極52と上部電極54の上面に低透水性絶縁膜(SiOx膜)80を積層し、更に、その低透水性絶縁膜(SiOx膜)80の上面に、耐インク性と柔軟性を有する樹脂膜82、例えばポリイミド系、ポリアミド系、エポキシ系、ポリウレタン系、シリコン系等の樹脂膜を積層して、それらをパターニングすることで、圧電素子46と金属配線86を接続するための開口84(コンタクト孔)を形成する。
具体的には、Chemical Vapor Deposition(CVD)法にてダングリングボンド密度が高い低透水性絶縁膜(SiOx膜)80を着膜する、感光性ポリイミド(例えば、富士フイルムアーチ社製の感光性ポリイミド Durimide7520)を塗布・露光・現像することでパターニングを行う、CF4系ガスを用いたReactive Ion Etching(RIE)法で上記感光性ポリイミドをマスクとしてSiOx膜をエッチングする、という加工を行う。なお、ここでは低透水性絶縁膜としてSiOx膜を用いたが、SiNx膜、SiOxNy膜等であってもよい。
次に、図11−2(F)で示すように、開口84内の上部電極54と樹脂膜82の上面に金属膜を積層し、金属配線86をパターニングする。具体的には、スパッタ法にてAl膜(厚さ1μm)を着膜する、ホトリソグラフィー法でレジストを形成する、塩素系のガスを用いたRIE法にてAl膜をエッチングする、酸素プラズマにてレジスト膜を剥離する、という加工を行い、上部電極54と金属配線86(Al膜)とを接合する。なお、図示しないが、下部電極52の上にも開口84が設けられ、上部電極54と同様に金属配線86と接続されている。
次に、図11−2(G)で示すように、金属配線86及び樹脂膜82の上面に樹脂保護膜88(例えば、富士フイルムアーチ社製の感光性ポリイミド Durimide7320)を積層してパターニングする。この樹脂保護膜88は、樹脂膜82と同種の樹脂材料で構成される。また、このとき、圧電素子46の上方で、金属配線86がパターニングされていない部位には、樹脂保護膜88を積層しないようにする(樹脂膜82のみが積層されるようにする)。
ここで、圧電素子46の上方(樹脂膜82の上面)に樹脂保護膜88を積層しないのは、振動板48(圧電素子46)の変位(上下方向の撓み変形)が阻害されるのを防止するためである。また、圧電素子46の上部電極54から引き出す(上部電極54に接続される)金属配線86が樹脂製の保護膜88で被覆されると、その樹脂保護膜88は、金属配線86が積層される樹脂膜82と同種の樹脂材料で構成されているため、金属配線86を被覆するそれらの接合力が強固になり、界面からのインク110の侵入による金属配線86の腐食を防止することができる。
なお、この樹脂保護膜88は、隔壁42(感光性ドライフィルム98)とも同種の樹脂材料となっているため、この隔壁42(感光性ドライフィルム98)に対する接合力も強固になっている。したがって、その界面からのインク110の侵入がより一層防止される構成である。また、このように、同種の樹脂材料で構成されると、それらの熱膨張率が略等しくなるので、熱応力の発生が少なくて済む利点もある。
次に、図11−2(H)で示すように、金属配線86にバンプ62を介して駆動IC60をフリップチップ実装する。このとき、駆動IC60は、予め半導体ウエハプロセスの終りに実施されるグラインド工程にて、所定の厚さ(70μm〜300μm)に加工されている。駆動IC60が厚すぎると、隔壁42のパターニングやバンプ64の形成が困難になったりする。
駆動IC60を金属配線86にフリップチップ実装するためのバンプ62の形成方法には、電界メッキ、無電界メッキ、ボールバンプ、スクリーン印刷等が適用できる。
こうして、シリコン基板70上に駆動部53が製造され、この駆動部53に、例えばガラス製の天板40が結合(接合)される。なお、以下の図12−1、図9−2では、説明の便宜上、配線形成面を下面として説明するが、実際の工程では上面になる。
こうして、シリコン基板70上に駆動部53が製造され、この駆動部53に、例えばガラス製の天板40が結合(接合)される。なお、以下の図12−1、図9−2では、説明の便宜上、配線形成面を下面として説明するが、実際の工程では上面になる。
ガラス製天板40の製造においては、図12−1(A)で示すように、天板40自体が支持体となる程度の強度を確保できる厚み(0.3mm〜1.5mm)を持っているので、別途支持体を設ける必要がない。まず、図12−1(B)で示すように、天板40の下面に金属配線90を積層してパターニングする。具体的には、スパッタ法にてAl膜(厚さ1μm)を着膜する、ホトリソグラフィー法でレジストを形成する、塩素系のガスを用いたRIE法にてAl膜をエッチングする、酸素プラズマにてレジスト膜を剥離する、という加工である。
そして、図12−1(C)で示すように、金属配線90が形成された面に樹脂膜92(例えば、富士フイルムアーチ社製の感光性ポリイミド Durimide7320)を積層してパターニングする。なお、このとき、一部の金属配線90には、バンプ64を接合するため、樹脂膜92を積層しないようにする。
次に、図12−1(D)で示すように、天板40の金属配線90が形成された面に、ホトリソグラフィー法でレジストをパターニングする。金属配線90が形成されていない面は、保護用レジスト94で全面を覆う。ここで、保護用レジスト94を塗布するのは、次のウエット(SiO2)エッチング工程で、天板40が金属配線90を形成した面の裏面からエッチングされるのを防止するためである。なお、天板40に感光性ガラスを用いた場合には、この保護用レジスト94の塗布工程を省略することができる。
次いで、図12−2(E)で示すように、天板40にHF溶液によるウエット(SiO2)エッチングを行い、その後、保護用レジスト94を酸素プラズマにて剥離する。そして、図12−2(F)で示すように、天板40に形成された開口40A部分に感光性ドライフィルム96(例えば、日立化成工業株式会社製Raytec FR−5025:25μm厚)を露光・現像によりパターニングする(架設する)。この感光性ドライフィルム96が圧力波を緩和するエアダンパー44となる。
そして次に、図12−2(G)で示すように、樹脂膜92に感光性ドライフィルム98(100μm厚)を積層して露光・現像によりパターニングする。この感光性ドライフィルム98がインクプール室38を規定する隔壁42となる。なお、隔壁42は、感光性ドライフィルム98に限定されるものではなく、樹脂塗布膜(例えば、化薬マイクロケム社のSU−8レジスト)としてもよい。このときには、スプレー塗布装置にて塗布し、露光・現像をすればよい。
そして最後に、図12−2(H)で示すように、樹脂膜92が積層されていない金属配線90にバンプ64をメッキ法等で形成する。このバンプ64が駆動IC60側の金属配線86と電気的に接続するため、図示するように、感光性ドライフィルム98(隔壁42)よりもその高さが高くなるように形成されている。
こうして、天板40の製造が終了したら、図13(A)で示すように、この天板40を駆動部53に被せて、両者を熱圧着により結合(接合)する。すなわち、感光性ドライフィルム98(隔壁42)を感光性樹脂層である樹脂保護膜88に接合し、バンプ64を金属配線86に接合する。
このとき、感光性ドライフィルム98(隔壁42)の高さよりもバンプ64の高さの方が高いので、感光性ドライフィルム98(隔壁42)を樹脂保護膜88に接合することにより、バンプ64が金属配線86に自動的に接合される。つまり、半田バンプ64は高さ調整が容易なので(潰れやすいので)、感光性ドライフィルム98(隔壁42)によるインクプール室38の封止とバンプ64の接続が容易にできる。
隔壁42とバンプ64の接合が終了したら、図13(B)で示すように、駆動IC60に封止用樹脂材58(例えば、エポキシ樹脂)を注入する。このように樹脂材58を注入して駆動IC60を封止すると、駆動IC60を水分等の外部環境から保護できる。
以上のようにして製造されるインクジェット記録ヘッド32(最終形状は図4参照)を備えたインクジェット記録装置10において、次に、その作用を説明する。まず、インクジェット記録装置10に印刷を指令する電気信号が送られると、給紙トレイ26から記録紙Pが1枚ピックアップされ、副走査機構18により、所定の位置へ搬送される。
一方、インクジェット記録ユニット30では、すでにインクタンク34からインク供給ポート36を介してインクジェット記録ヘッド32のインクプール室38にインク110が注入(充填)され、インクプール室38に充填されたインク110は、インク流路66、68を経て圧力室50へ供給(充填)されている。そして、このとき、ノズル56の先端(吐出口)では、インク110の表面が圧力室50側に僅かに凹んだメニスカスが形成されている。
そして、キャリッジ12に搭載されたインクジェット記録ヘッド32が主走査方向に移動しながら、複数のノズル56から選択的にインク滴を吐出することにより、記録紙Pの所定のバンド領域に、画像データに基づく画像の一部を記録する。すなわち、ボード74からのインク吐出指令が、金属配線90、バンプ64、金属配線86を経て駆動IC60に伝達される。そして、その駆動IC60により、所定のタイミングで、所定の圧電素子46に電圧を印加し、振動板48を上下方向に撓み変形させて(面外振動させて)、圧力室50内のインク110を加圧し、所定のノズル56からインク滴として吐出させる。
こうして、記録紙Pに画像データに基づく画像の一部が記録されたら、副走査機構18により、記録紙Pを所定ピッチ搬送させ、上記と同様に、インクジェット記録ヘッド32を主走査方向に移動しながら、再度複数のノズル56から選択的にインク滴を吐出することにより、記録紙Pの次のバンド領域に、画像データに基づく画像の一部を記録する。そして、このような動作を繰り返し行い、記録紙Pに画像データに基づく画像が完全に記録されたら、副走査機構18により、記録紙Pを最後まで搬送し、排紙トレイ28上に記録紙Pを排出する。これにより、記録紙Pへの印刷処理(画像記録)が完了する。
ここで、このインクジェット記録ヘッド32は、インクプール室38が、振動板48(圧電素子46)を間に置いて圧力室50の反対側(上側)に設けられている。換言すれば、インクプール室38と圧力室50の間に振動板48(圧電素子46)が配置され、インクプール室38と圧力室50が同一水平面上に存在しないように構成されている。したがって、圧力室50が互いに近接配置され、ノズル56が高密度なマトリックス状に配設されている。
また、圧電素子46に電圧を印加する駆動IC60は、振動板48と天板40との間に配設され、振動板48や天板40より外部へ露出しない(突出しない)構成とされている(インクジェット記録ヘッド32内に内蔵されている)。したがって、インクジェット記録ヘッド32の外部に駆動IC60を実装する場合に比べて、圧電素子46と駆動IC60の間を接続する金属配線86の長さが短くて済み、これによって、金属配線86の低抵抗化と高密度接続が実現されている。つまり、実用的な配線抵抗値で、ノズル56の高密度化を実現することができ、高解像度化を実現することができる。
また、上記したように、インクの吐出を制御するボード74(図5参照)と接続される金属配線90が、インクプール室38の天板40に形成され、更に、その金属配線90と、駆動IC60が接続されている金属配線86とが、振動板48と天板40との間に配置されたバンプ64で接続されるように構成されているので、その電気接続が容易にでき、かつ、従来、駆動IC60とボード74とを接続していたFPC等を省略することができる。つまり、このような構成を採用することにより、部品点数を削減することができるので、インクジェット記録ヘッド32の小型化を実現することができる。
具体的には、従来のFPC方式による電気接続では、ノズル解像度は600npi(nozzle per pitch)が限界であったが、本発明の方式では、容易に1200npi配列が可能となった。また、サイズについては、600npiのノズル配列を例にとって比較した場合、FPCを用いなくて済むため、1/2以下にすることが可能となった。
また、その金属配線90は樹脂膜92で被覆されているので、インクによる金属配線90の腐食は防止されている。また、上記したように、天板40にエアダンパー44を設けるようにしたので、エアダンパー44の大きさや位置等の変更を自由に行うことができる。つまり、エアダンパー44の最適化が容易にできる。そして、これにより、天板40に形成する金属配線90の引き回しの自由度も向上させることができる。
その他、上記実施例のインクジェット記録装置10では、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色のインクジェット記録ユニット30がそれぞれキャリッジ12に搭載され、それら各色のインクジェット記録ヘッド32から画像データに基づいて選択的にインク滴が吐出されてフルカラーの画像が記録紙Pに記録されるようになっているが、本発明におけるインクジェット記録は、記録紙P上への文字や画像の記録に限定されるものではない。
すなわち、記録媒体は紙に限定されるものでなく、また、吐出する液体もインクに限定されるものではない。例えば、高分子フィルムやガラス上にインクを吐出してディスプレイ用カラーフィルターを作成したり、溶接状態の半田を基板上に吐出して部品実装用のバンプを形成するなど、工業的に用いられる液滴噴射装置全般に対して、本発明に係るインクジェット記録ヘッド32を適用することができる。
また、上記実施例のインクジェット記録装置10では、主走査機構16と副走査機構18を有するPartial Width Array(PWA)の例で説明したが、本発明におけるインクジェット記録は、これに限定されず、紙幅対応のいわゆるFull Width Array(FWA)であってもよい。むしろ、本発明は、高密度ノズル配列を実現するのに有効なものであるため、1パス印字を必要とするFWAには好適である。
本発明は、本実施形態に限るものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変形、変更、改良が可能である。
32 インクジェット記録ヘッド
48 振動板
50 圧力室
70 シリコン基板
72 周溝
78 充填材
79 支柱
48 振動板
50 圧力室
70 シリコン基板
72 周溝
78 充填材
79 支柱
Claims (7)
- 基板の表面に周状の周溝を形成することにより、圧力室の内壁を形成する第1工程と、
前記第1工程の後に、前記基板の表面に振動板、電極及び圧電素子を積層する第2工程と、
前記第2工程の後に、前記周溝に囲まれる支柱を前記基板の裏面側から除去して、圧力室となる空間を形成する第3工程と、
を備えたことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。 - 前記第2工程の前に、充填材を前記周溝に充填する第4工程と、
前記第2工程の後に、前記充填材を前記基板の裏面側から除去する第5工程と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。 - 前記第5工程は、前記第3工程の後に行われることを特徴とする請求項2に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
- 前記第2工程の前に、前記支柱の上面に剥離層を形成する第6工程を備え、
前記第3工程は、前記基板の裏面側から前記剥離層をエッチングすることにより、前記支柱を前記振動板から分離除去することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。 - 前記周溝は、ドライエッチングで形成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
- 前記第3工程の後に、プレートを前記基板の裏面に接合して、前記空間を封止する第7工程を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
- 前記第7工程の前に、前記圧力室の内壁に保護膜を形成する第8工程を備えたことを特徴とする請求項6に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006163872A JP2007331175A (ja) | 2006-06-13 | 2006-06-13 | 液滴吐出ヘッドの製造方法 |
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JP2006163872A JP2007331175A (ja) | 2006-06-13 | 2006-06-13 | 液滴吐出ヘッドの製造方法 |
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JP (1) | JP2007331175A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2019123088A (ja) * | 2018-01-12 | 2019-07-25 | 株式会社リコー | 圧電アクチュエータユニットの製造方法 |
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2006
- 2006-06-13 JP JP2006163872A patent/JP2007331175A/ja active Pending
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