JP4662486B2 - 吹払式防雪柵 - Google Patents
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このことについて説明すると、図20(a)は順風時の風の流れを示すもので、風は、防雪板3の下面の上半部3aの下に膨らんだ凸形状面(図中の概ねm点より上側部分)に沿って流れ、さらに下半部3bの平坦面(図中の概ねm点より下側部分)に沿って直線状に流れて、下向きの風(吹払い風)となる。また、風に対する背面(上面)では、背面に沿う流れが途中で剥離し渦が生じて圧力が低下する。この場合に防雪板3が風から受ける抵抗の大きな要素として、風に対する背面側(上面側)の剥離位置より下流の板表面が低圧で覆われることによる圧力抵抗がある。なお、この防雪板3が受ける抵抗は、下面が凹面となる防雪板の場合の抵抗よりは小さく、それとの比較では基礎5に対する負担は小さい。
図20(b)は逆風時の風の流れを示すもので、風は防雪板3の上面に沿って流れるとともに、下端縁近傍から下面に回り込むが、その流れが下面の下半部3bの平坦面に沿う距離wは極めて短く、すぐに下面から剥離し、渦が発生する。このため、逆風時の背面(下面)の圧力はかなり低くなる。したがって、逆風時には、防雪板3が受ける抵抗の大きな要素である圧力抵抗は、順風時の抵抗と比べて大幅に大となる。
また、防雪柵は、高所の防雪板ほど設置角度が鉛直に近くなるので、低所の防雪板より逆風時の抵抗が大きくなり、逆風抵抗によるモーメントの中心が高所になる。さらに、高所の防雪板ほど鉛直に近く逆風時の剥離が大きいため、防雪板の上面と下面の圧力差が大きくなり、自励振動を誘発しやすい。
上述の通り、逆風時の抵抗は順風時の抵抗より大幅に大なので、設計上の風上から吹く順風に対して合理的な基礎寸法、構造を採用しようとすると、設計上の風下側から吹く風(逆風)では支持力不足となり、逆風を基準とすると、順風に対して過大な基礎寸法、構造となる。
従来、逆風時の抵抗を小さくするという発想の吹払式防雪柵は皆無であり、逆風時の抵抗を考慮する場合には、基礎寸法、構造を過大に設計するという対策しかなく、コスト高となるという問題があった。
前記防雪板の断面形状が、下面は全体として下に膨らんだ凸形状、上面は全体として平坦ないし上に膨らんだ凸形状であり、かつ、防雪板の水平方向端部間の周長が上面より下面が長いことを特徴とする。
請求項6は、請求項5における下面板の折り返し部が丸みを帯びていることを特徴とする。
また、防雪板の水平方向端部間の周長を上面より下面を長くしているので、吹払い効果を遠方まで及ぼすことができる。なお、防雪板の水平方向端部とは、厳格には、防雪板を水平に配置した状態における防雪板幅方向の前端部及び後端部を指す。
また、請求項6のように、下面板の折り返し部に丸みを付けることで、形状抵抗を小さくするために前縁を丸くすることを容易に実現できる。
さらに、図19の従来構造の吹払式防雪柵4と同様な作用であるが、ドライバーの目線高さ以下では、十分遠方まで増速するので、遠方まで吹払い効果が得られ、また、防雪板を通過した風が道路面に強く吹き付けてバウンドする現象は生じないので、ドライバーに対する視程障害の発生を防止でき、さらに、この防雪板には、風上の下方に向かう揚力が発生するので、防雪板が風の抵抗で吹き飛んでしまうことを防止できる等の効果が得られる。
図2(a)は順風時(道路と反対側から風が吹く場合)の風の流れを示すもので、風は防雪板13の下面の上半部13aの下に膨らんだ凸形状面(図中の概ねm点より上側部分)に沿って流れ、さらに下半部13bの同じく下に膨らんだ凸形状面(図中の概ねm点より下側部分)に沿って流れて吹払い風となる。
この場合に防雪板13が風から受ける抵抗の大きな要素として、風に対する背面側(上面側)の剥離位置より下流の板表面が低圧で覆われることによる圧力抵抗がある。
図2(b)は逆風時(道路側から風が吹く場合)の風の流れを示すもので、風は防雪板13の上面(逆風に対して前面)に沿って流れるとともに、下端縁近傍から下面(逆風に対して背面)に回り込むが、下面の下半部13bも下に膨らんだ凸形状であるから、下面を流れる風は下面からなかなか剥離しないまま下面に沿って流れる。すなわち、下面に回り込む流れの下面に沿う距離Wは、図20で説明した従来構造のように防雪板3の下半部3bが平坦面である場合と比べて、十分長くなる。
このように、流れが下面から剥離する位置が下流側(逆風の下流側:図2の左側)に移行するので、逆風時の背面(下面)側の圧力低下は少なく、圧力抵抗があまり大きくならない。したがって、この場合の防雪板13が受ける抵抗は、防雪板13の下半部13bが平坦面である場合と比べて、十分に小さくなる。このように逆風時に防雪板が受ける抵抗が従来構造と比べて十分小さくなることを確認した風洞実験結果を後述する。
なお、防雪板13の上面を流れる風についても、その上面が上に膨らんだ凸形状なので、図20のように上面が凹面で上端部に折り返しを持つ薄い板状の防雪板3と比べて抵抗が小さく、この点でも逆風時の抵抗が小さなものとなる。
また、実施例の防雪板13は板材で構成した中空構造なので、効率よく高い断面性能を確保することができ、したがって、必要な板材の延べ面積が増しても、その板厚は1枚板の場合の板厚より十分薄くすることができ、中空構造としたことに伴う重量増大は少なく、特にコスト増にもならない。
また、本発明の防雪板13は、水平方向端部からの周長を上面より下面を長くしているので、吹払い効果を遠方まで及ぼすことができる。
また、上記の各実施例では防雪板13、13’の下面の上半部13aの凸形状と比べて、下半部13bの凸形状が若干平坦に近い凸形状であるが、図4に示した防雪板13”のように、下面の上半部13aと下半部13b”とを対称形状にしてもよい。
これらの図に示すように、この防雪板23は、いずれも金属板(鋼板)である上面側の平坦な上面板21と下面側の凸形状の下面板22とを貼り合わせてなる中空構造である。上面板21と下面板22とからなる中空体のみを指して防雪板本体24と呼ぶ。
前記下面板22の断面形状は、金属平板の複数箇所を折曲して形成した左右対称(防雪板の幅方向について左右対称)の凸形状である。図示例の下面板22は、幅方向中央近傍は上面と平行(平行部を22cで示す)で左右それぞれ2箇所を折曲した凸形状であり、また、両端部は図8(ロ)に拡大して示すように丸みを付けて折り返している。折り返し部22bの丸みは、図示例では板厚t(例えば1.2mmなど)に対して概ね3tR程度である。この程度の丸みでも形状抵抗を小さくするために有効である。
そして、下面板22の折り返した端縁部22aに上面板21の端縁部を21aを重ねて、両者を例えばリベット(ブラインドリベット)25で接合している。
なお、図示例では上面板21の端縁部21aを下面板22の上側にして接合しているが、図9に示すように、下側(内側)にして接合してもよい。
実験に用いた防雪板は図5〜図8に示した防雪板23であり、この防雪板23を図10に示すように上下に間隔をあけて4枚取り付けた防雪柵20を、風洞内に設置した六分力天秤にターンテーブル31を介して取り付け、これに風を吹き付けてその時の防雪柵に作用する抗力、転倒モーメントを測定した。六分力天秤(six-component balance)は、風洞実験の際に用いられる天秤であり、風向きに対して前後、左右、上下の3軸方向の力と、それぞれの軸回りのモーメントが測定出来るようになっている。
支柱2に取り付けた防雪板23の鉛直面に対する角度θは、上側の3枚の防雪板23については50°、最下段の防雪板23については75°とした。
この防雪柵20を図10(ロ)に示すようにターンテーブル31上に固定し、ターンテーブル31を回転させて、防雪柵に対する風の向き(水平方向の向き(風向き角α))を変えた。防雪柵の転倒モーメントを測定した風向き角αは、0°(順風位置)、30°、60°、90°(防雪柵に沿う方向)、120°、150°、180°(逆風位置)、すなわち、0〜180°の範囲での30°きざみである。
本発明の防雪板23に対比するために用いた従来の防雪板3の断面形状は、図11(ロ)に示した断面形状である。
図13に示す通り、本発明の防雪板23では、従来の防雪板3と比べて、順風時(風向き角度α=0°)のモーメント係数はあまり差はないが、逆風時(風向き角度α=180°)のモーメント係数が顕著に小さい。モーメント係数が小さい(したがって、転倒モーメントが小さい)と、防雪柵基礎にかかるモーメントも小さくなり、基礎を小さくすることができる。
実験結果は特に示さないが、上述した図8の防雪板23の断面形状は、図14(イ)の、(ロ)の断面形状の防雪板23’、23”と比較しても、風の抵抗がそれほど大きくならないという実験結果を得ており、加工コストとの兼ね合いを考慮すると、図8の4箇所折曲の防雪板23は適切である。
この実施例の防雪板33における防雪板本体24は、図8に示した防雪板本体24と同じである。この実施例の防雪板33は、防雪板本体24の幅方向両端縁近傍における内部の下面板22に、防雪板長手方向に延びる図示例では山形鋼の補強部材36をボルト37とナットで固定し、防雪板本体24の両端に図18に示すような端面部材38を固定している。なお、この防雪板33は、図5〜図7に示した防雪板23と異なり、防雪板本体24内部の幅方向中央には防雪板長手方向に貫通する補強部材(角形鋼管27)を持たない。
端面部材38は、防雪板本体の内面輪郭に近い形状のリブ43の上下に、下面板22の両折り返し端縁部22a間に渡されて上面板21とともにボルト44とナットで固定される上板部41と、下面板22の中央の平行部22cにボルト45とナットで固定される下板部42とをそれぞれ溶接固定した形状であり、リブ43の外面側の中央に支柱2への取付軸39を溶接固定している。また、上板部41の端縁にフック掛け部40を溶接固定している。リブ43の下縁は、下板部42に連接された部分を除いて下面板22側に接触していない。
また、重ね合わせた上面板21の端縁部21aと下面板22の折り返した端縁部22aとは、防雪板本体24の両端部を除く複数箇所において、単にリベット25で接合している。
これは、防雪板本体中央を貫通する大サイズ(大重量)の補強部材(角形鋼管)の代わりに、防雪板長手方向に延びる補強部材36を防雪板本体24の幅方向両端縁近傍に配置することで、中央部に配置する場合と比べて補強部材が小サイズ(小重量)で済むと同時に、両端縁がすぼまった薄半月形の中空構造である防雪板本体24の曲げ剛性を高くする手段として、幅方向端縁近傍を補強することが、使用材料の重量との関連で効率的であると考えられる。
2 支柱
6 路肩法面
13、13’、13” 防雪板
13a (防雪板の下面の)上半部
13b、13b” (防雪板の下面の)下半部
13c 13c’ (防雪板の)上面
14、20 吹払式防雪柵
21 上面板
21a (上面板の)端縁部
22、22’、22” 下面板
22a (下面板の両端の)折り返し端縁部
22b (下面板の)折り返し部
22c (下面板の)中央の平行部
23、33 防雪板
24 防雪板本体
25 リベット
26 端面板
27 角形鋼管(補強部材)
28 受け材
29、39 取付軸
30、40 フック掛け部
38 端面部材
41 上板部
42 下板部
43 リブ
Claims (6)
- 道路に沿って間隔をあけて立設した支柱間に、複数の防雪板を上下に間隔をあけて、かつ道路側が低くなるように傾斜させて取り付けた吹払式防雪柵であって、
前記防雪板の断面形状が、下面は全体として下に膨らんだ凸形状、上面は全体として平坦ないし上に膨らんだ凸形状であり、かつ、防雪板の水平方向端部間の周長が上面より下面が長いことを特徴とする吹払式防雪柵。 - 前記防雪板の水平方向端部が丸く加工されていることを特徴とする請求項1記載の吹払式防雪柵。
- 前記防雪板が、その外面を板材で構成した中空構造であることを特徴とする請求項1又は2記載の吹払式防雪柵。
- 前記防雪板の上面が全体として平坦な場合であって、前記防雪板が、いずれも金属板である上面側の平坦な上面板と下面側の凸形状の下面板とを貼り合わせてなる中空構造であるとともに、前記下面板の断面形状は、金属平板の複数箇所を折曲して形成した左右対称の凸形状であることを特徴とする請求項3記載の吹払式防雪柵。
- 前記防雪板は、下面板の断面形状が、両端部を折り返した断面形状であり、その折り返した端縁部に上面板の端縁部を重ねて接合した構造であることを特徴とする請求項3又は4記載の吹払式防雪柵。
- 前記下面板の折り返し部が丸みを帯びていることを特徴とする請求項5記載の吹払式防雪柵。
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