JP4662486B2 - 吹払式防雪柵 - Google Patents

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Description

この発明は、積雪地方の道路に沿って設置され、風を利用して道路上の雪を吹き払い、かつ、雪による視程障害の発生を防止する吹払式防雪柵に関する。
積雪地方の道路に沿って設置する防雪柵として、吹払式防雪柵がある。吹払式防雪柵は、例えば図19に示すように、道路1に沿って設置した支柱2間に、風の吹込み側が高くなるように傾斜させた複数の防雪板3を上下に間隔をあけて取り付けた構造であり、上下の防雪板3間の隙間を通る風を斜め下向きの流れに偏向させて道路面に吹き降ろし、吹き降ろした下向き風を吹払い風として、道路面に堆積した雪を吹き払い、また、風上から飛んでくる雪を、ドライバーの目線高さ以下に押し下げて、ドライバーに対する視程障害を防ぐ作用をする。図19において、5は支柱2の基礎である。
この種の一般的な吹払式防雪柵は、防雪板間の隙間を通る風を下向きに偏向させる目的から、防雪板の下面を凹面としている(特許文献2等)が、図19に示した吹払式防雪柵4の防雪板3は、図20に拡大して示すように、下面の上半部3a(図中の概ねm点より上側部分)は下に膨らんだ凸形状としているが、下半部3b(図中の概ねm点より下側部分)は平坦にしている(特許文献1)。
特開2002−138417 特開平10−338909
上記の吹払式防雪柵4は、防雪板の下面が凹面となっているものと比較して、ドライバーの目線高さ以下では、十分遠方まで増速するので、遠方まで吹払い効果が得られ、また、防雪板を通過した風が道路面に強く吹き付けてバウンドする現象は生じないので、ドライバーに対する視程障害の発生を防止でき、さらに、この防雪板には、風上の下方に向かう揚力が発生するので、防雪板が風の抵抗で吹き飛んでしまうことを防止できる等の効果が得られる。
防雪柵として機能させる冬季に吹く風は、概ね、当該防雪柵4の設計上の風上から吹く風(道路と反対側(図19の左方)から吹く風:これを順風と呼ぶ)であり、上記種々の効果を発揮する。しかし、年間を通じては逆方向(図19の右方)から吹く風(これを逆風と呼ぶ)が吹くこともあり、その逆風の際には、順風の場合と比べて防雪板3の抵抗がかなり大きい。
このことについて説明すると、図20(a)は順風時の風の流れを示すもので、風は、防雪板3の下面の上半部3aの下に膨らんだ凸形状面(図中の概ねm点より上側部分)に沿って流れ、さらに下半部3bの平坦面(図中の概ねm点より下側部分)に沿って直線状に流れて、下向きの風(吹払い風)となる。また、風に対する背面(上面)では、背面に沿う流れが途中で剥離し渦が生じて圧力が低下する。この場合に防雪板3が風から受ける抵抗の大きな要素として、風に対する背面側(上面側)の剥離位置より下流の板表面が低圧で覆われることによる圧力抵抗がある。なお、この防雪板3が受ける抵抗は、下面が凹面となる防雪板の場合の抵抗よりは小さく、それとの比較では基礎5に対する負担は小さい。
図20(b)は逆風時の風の流れを示すもので、風は防雪板3の上面に沿って流れるとともに、下端縁近傍から下面に回り込むが、その流れが下面の下半部3bの平坦面に沿う距離wは極めて短く、すぐに下面から剥離し、渦が発生する。このため、逆風時の背面(下面)の圧力はかなり低くなる。したがって、逆風時には、防雪板3が受ける抵抗の大きな要素である圧力抵抗は、順風時の抵抗と比べて大幅に大となる。
また、防雪柵は、高所の防雪板ほど設置角度が鉛直に近くなるので、低所の防雪板より逆風時の抵抗が大きくなり、逆風抵抗によるモーメントの中心が高所になる。さらに、高所の防雪板ほど鉛直に近く逆風時の剥離が大きいため、防雪板の上面と下面の圧力差が大きくなり、自励振動を誘発しやすい。
ところで、防雪柵を設置をする道路は、その風上側に平地が広がっている場合が多く、そのような場所は一般に田園、湿地等の軟弱地盤であることが多く、したがって、地盤の支持力が小さく、図19に示したように、路肩の法面6に設置されることになる。法面部6では、順風時の抵抗を支える道路側基礎面(法面上側の基礎面)は十分な支持力を確保できるが、逆風時の抵抗を支える反対側基礎面(法面下側の基礎面)は十分な支持力を確保しにくい。
上述の通り、逆風時の抵抗は順風時の抵抗より大幅に大なので、設計上の風上から吹く順風に対して合理的な基礎寸法、構造を採用しようとすると、設計上の風下側から吹く風(逆風)では支持力不足となり、逆風を基準とすると、順風に対して過大な基礎寸法、構造となる。
従来、逆風時の抵抗を小さくするという発想の吹払式防雪柵は皆無であり、逆風時の抵抗を考慮する場合には、基礎寸法、構造を過大に設計するという対策しかなく、コスト高となるという問題があった。
本発明は上記従来の欠点を解消するためになされたもので、設計時に想定した風向きと反対の逆風に対する抵抗を低減させて、防雪柵の基礎寸法、構造を極力小さく設計することが可能でコストを安くできる吹払式防雪柵を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明は、道路に沿って間隔をあけて立設した支柱間に、複数の防雪板を上下に間隔をあけて、かつ道路側が低くなるように傾斜させて取り付けた吹払式防雪柵であって、
前記防雪板の断面形状が、下面は全体として下に膨らんだ凸形状、上面は全体として平坦ないし上に膨らんだ凸形状であり、かつ、防雪板の水平方向端部間の周長が上面より下面が長いことを特徴とする。
請求項2は、請求項1の吹払式防雪柵において、防雪板の水平方向端部が丸く加工されていることを特徴とする請求項1記載の吹払式防雪柵。
請求項3は、請求項1又は2の吹払式防雪柵における防雪板が、その外面を板材で構成した中空構造であることを特徴とする。
請求項3の吹払式防雪柵における防雪板の上面が全体として平坦な場合であって、防雪板が、いずれも金属板である上面側の平坦な上面板と下面側の凸形状の下面板とを貼り合わせてなる中空構造であるとともに、前記下面板の断面形状は、金属平板の複数箇所を折曲して形成した左右対称の凸形状であることを特徴とする。
請求項5は、請求項3又は4の吹払式防雪柵における防雪板が、下面板の断面形状が、両端部を折り返した断面形状であり、その折り返した端縁部に上面板の端縁部を重ねて接合した構造であることを特徴とする。
請求項6は、請求項5における下面板の折り返し部が丸みを帯びていることを特徴とする。
本発明によれば、防雪板の下面が上半部だけでなく下半部も含めた全体として下に膨らんだ凸形状なので、逆風時の下端縁近傍から下面に回り込む風は、下面から容易に剥離せず、剥離点までの距離が長くなる。したがって、逆風に対する防雪板の背面(下面)側の圧力はあまり低下せず、防雪板が受ける抵抗を小さくすることができる。したがって、当該吹払式防雪柵の基礎に対して、逆風時の抵抗を考慮した過大な支持力を要求することが不要となり、過大な基礎寸法、構造とする必要はなくなり、基礎のコストを安くすることができる。また、支柱その他の部材の剛性も小さく済み、この点でもコストを安くすることができる。
また、防雪板の水平方向端部間の周長を上面より下面を長くしているので、吹払い効果を遠方まで及ぼすことができる。なお、防雪板の水平方向端部とは、厳格には、防雪板を水平に配置した状態における防雪板幅方向の前端部及び後端部を指す。
防雪板は流れの中に傾斜させて置かれるため、防雪板の前縁(風上側の水平方向端部)の上面で流れは急に下向きに変化し、形状抗力が大きくなる。防雪板の前縁が鋭角であると、流れは鋭角な端部にて防雪板より剥離し、形状抗力が大きくなる。しかし、防雪板の前縁を丸くすることで流れが防雪板の上下面に滑らかに別れられるようになり、滑らかに分かれることで、流れが剥離しにくくなり、形状抗力(圧力抗力)は大きくならない。なお、前縁を丸くすると形状抵抗が小さくなるという作用は、順風時でも逆風時でも同様である。
請求項3によれば、防雪板を板材で構成した中空構造としたことで、効率よく高い断面性能を確保することができ、必要な板材の延べ面積が増しても、その板厚は1枚板の場合の板厚より十分薄くすることができ、中空構造としたことに伴う重量増大は少なく、特にコスト増にもならない。
請求項4のように、平坦な上面板と凸形状の下面板とを貼り合わせて中空構造にすることで、中空構造の防雪板の製造が容易になり、中空構造としたことでコスト増になることを避けられる。また、下面板の断面形状を、金属平板の複数箇所を折曲して形成した左右対称の凸形状とすることで、凸形状の下面板の製造が一層容易になり、コストを安くできる。
請求項5のように、下面板の断面形状を、両端部を折り返した断面形状とし、その折り返した端縁部に上面板の端縁部を重ねて接合した構造とすることで、上面板と下面板との接合を容易にすることができる。
また、請求項6のように、下面板の折り返し部に丸みを付けることで、形状抵抗を小さくするために前縁を丸くすることを容易に実現できる。
以下、本発明の吹払式防雪柵の実施例を、図1〜図18を参照して説明する。
図1は本発明の一実施例の吹払式防雪柵14の側面図である。この吹払式防雪柵14の基本構造は、道路1に沿って間隔をあけて立設した支柱2間に、複数の防雪板13を上下に間隔をあけて、かつ道路側が低くなるように傾斜させて取り付けた構成である。同図において、15は支柱2の基礎で、この基礎15は道路1の路肩の法面6に設置されている。なお、図には特に現していないが、各防雪板13は上側のものほど角度を急傾斜にして、吹払い効果を高める。
本発明では、前記防雪板13が、図2に拡大して示すように、下面は上半部13a(図中の概ねm点より上側部分)だけでなく下半部13b(図中の概ねm点より下側部分)も含めた全体として下に膨らんだ凸形状であり、上面は全体として平坦ないし上に膨らんだ凸形状である。図示例の防雪板13の上面13cは若干上に膨らんだ凸形状であるが、下面の凸形状と比べて平坦に近い凸形状である。すなわち、防雪板13の水平方向端部間の周長(図2でa点とb点間の沿面長さ)は上面より下面が長い。また、この防雪板13の水平方向端部は前端及び後端のいずれも丸く加工されている。また、外面を板材で構成した中空構造である。なお、図1〜図4では防雪板13の構造を模式的に示しているが、具体的構造を持つ実際的な実施例については後述する。
上記の吹払式防雪柵14は、吹払い方式の一般的な作用として、上下の防雪板13間の隙間を通る風を斜め下向きの流れに偏向させて道路面に吹き降ろし、吹き降ろした下向き風を吹払い風として、道路面に堆積した雪を吹き払い、また、風上から飛んでくる雪を、ドライバーの目線高さ以下に押し下げて、ドライバーに対する視程障害を防ぐ作用をする。
さらに、図19の従来構造の吹払式防雪柵4と同様な作用であるが、ドライバーの目線高さ以下では、十分遠方まで増速するので、遠方まで吹払い効果が得られ、また、防雪板を通過した風が道路面に強く吹き付けてバウンドする現象は生じないので、ドライバーに対する視程障害の発生を防止でき、さらに、この防雪板には、風上の下方に向かう揚力が発生するので、防雪板が風の抵抗で吹き飛んでしまうことを防止できる等の効果が得られる。
そして、本発明の防雪板13では以下に説明するような作用で、逆風時の風の抵抗が小さくなる。
図2(a)は順風時(道路と反対側から風が吹く場合)の風の流れを示すもので、風は防雪板13の下面の上半部13aの下に膨らんだ凸形状面(図中の概ねm点より上側部分)に沿って流れ、さらに下半部13bの同じく下に膨らんだ凸形状面(図中の概ねm点より下側部分)に沿って流れて吹払い風となる。
この場合に防雪板13が風から受ける抵抗の大きな要素として、風に対する背面側(上面側)の剥離位置より下流の板表面が低圧で覆われることによる圧力抵抗がある。
図2(b)は逆風時(道路側から風が吹く場合)の風の流れを示すもので、風は防雪板13の上面(逆風に対して前面)に沿って流れるとともに、下端縁近傍から下面(逆風に対して背面)に回り込むが、下面の下半部13bも下に膨らんだ凸形状であるから、下面を流れる風は下面からなかなか剥離しないまま下面に沿って流れる。すなわち、下面に回り込む流れの下面に沿う距離Wは、図20で説明した従来構造のように防雪板3の下半部3bが平坦面である場合と比べて、十分長くなる。
このように、流れが下面から剥離する位置が下流側(逆風の下流側:図2の左側)に移行するので、逆風時の背面(下面)側の圧力低下は少なく、圧力抵抗があまり大きくならない。したがって、この場合の防雪板13が受ける抵抗は、防雪板13の下半部13bが平坦面である場合と比べて、十分に小さくなる。このように逆風時に防雪板が受ける抵抗が従来構造と比べて十分小さくなることを確認した風洞実験結果を後述する。
なお、防雪板13の上面を流れる風についても、その上面が上に膨らんだ凸形状なので、図20のように上面が凹面で上端部に折り返しを持つ薄い板状の防雪板3と比べて抵抗が小さく、この点でも逆風時の抵抗が小さなものとなる。
したがって、当該吹払式防雪柵14の基礎15に対して、逆風時の大きな抵抗を考慮した過大な基礎寸法、構造とする必要はなく、基礎のコストを安くすることができる。また、支柱2その他の部材の剛性も小さく済み、この点でもコストを安くすることができる。
また、実施例の防雪板13は板材で構成した中空構造なので、効率よく高い断面性能を確保することができ、したがって、必要な板材の延べ面積が増しても、その板厚は1枚板の場合の板厚より十分薄くすることができ、中空構造としたことに伴う重量増大は少なく、特にコスト増にもならない。
また、防雪板の前縁が鋭角であると、流れは鋭角な端部にて防雪板より剥離し、形状抗力が大きくなるが、実施例のように防雪板の前縁を丸くすることで流れが防雪板の上下面に滑らかに別れられるようになり、滑らかに分かれることで、流れが剥離しにくくなり、形状抗力(圧力抗力)は大きくならない。なお、前縁を丸くすると形状抵抗が小さくなるという作用は、順風時でも逆風時でも同様である。防雪板の前縁丸みの曲率半径は、図示例ではかなり大きくしているが、後述する具体的構造の実施例で示した丸み程度でもよい。
また、本発明の防雪板13は、水平方向端部からの周長を上面より下面を長くしているので、吹払い効果を遠方まで及ぼすことができる
上記実施例では防雪板13の上面が上に膨らんだ凸形状であるが、図3に示した防雪板13’のように、上面13c’を平坦にしても、概ね同様な効果が得られる。なお、この防雪板13’の下面側(13a、13b)は前記防雪板13と同じである。
また、上記の各実施例では防雪板13、13’の下面の上半部13aの凸形状と比べて、下半部13bの凸形状が若干平坦に近い凸形状であるが、図4に示した防雪板13”のように、下面の上半部13aと下半部13b”とを対称形状にしてもよい。
上述の説明では防雪板の構造を模式的に示したが、図5〜図8に具体的構造を持つ実際的な防雪板の実施例を示す。図5は防雪板23の斜視図、図6は同平面図、図7は防雪板23の拡大側面図、図8(イ)は図7における防雪板本体24のみを示した断面図、図8(ロ)は図8(イ)における端部の拡大図である。
これらの図に示すように、この防雪板23は、いずれも金属板(鋼板)である上面側の平坦な上面板21と下面側の凸形状の下面板22とを貼り合わせてなる中空構造である。上面板21と下面板22とからなる中空体のみを指して防雪板本体24と呼ぶ。
前記下面板22の断面形状は、金属平板の複数箇所を折曲して形成した左右対称(防雪板の幅方向について左右対称)の凸形状である。図示例の下面板22は、幅方向中央近傍は上面と平行(平行部を22cで示す)で左右それぞれ2箇所を折曲した凸形状であり、また、両端部は図8(ロ)に拡大して示すように丸みを付けて折り返している。折り返し部22bの丸みは、図示例では板厚t(例えば1.2mmなど)に対して概ね3tR程度である。この程度の丸みでも形状抵抗を小さくするために有効である。
そして、下面板22の折り返した端縁部22aに上面板21の端縁部を21aを重ねて、両者を例えばリベット(ブラインドリベット)25で接合している。
なお、図示例では上面板21の端縁部21aを下面板22の上側にして接合しているが、図9に示すように、下側(内側)にして接合してもよい。
また、実施例の防雪板23は、中空の防雪板本体4を補強する補強部材として、防雪板本体24の内部に本体全長に亘る角形鋼管(補強部材)27を通し角形鋼管27の両端に端面板26を例えば溶接で固定し、この角形鋼管27に、両端部と中間2ヶ所の合計4ヶ所で、角形鋼管27の上面の高さ位置で防雪板幅方向に延びる受け材28を溶接固定し、この受け材28に防雪板本体24の両端部をリベット25で固定している。また、端面板26に防雪板23を支柱2に取り付けるための取付軸29を溶接固定している。また、端面板26に防雪柵組立時の防雪板吊り上げのためのフック掛け部30を溶接固定している。
上記の防雪板23を用いた防雪柵が逆風時に受ける抵抗を小さくするために極めて有効であることを確認した風洞実験について説明する。
実験に用いた防雪板は図5〜図8に示した防雪板23であり、この防雪板23を図10に示すように上下に間隔をあけて4枚取り付けた防雪柵20を、風洞内に設置した六分力天秤にターンテーブル31を介して取り付け、これに風を吹き付けてその時の防雪柵に作用する抗力、転倒モーメントを測定した。六分力天秤(six-component balance)は、風洞実験の際に用いられる天秤であり、風向きに対して前後、左右、上下の3軸方向の力と、それぞれの軸回りのモーメントが測定出来るようになっている。
支柱2に取り付けた防雪板23の鉛直面に対する角度θは、上側の3枚の防雪板23については50°、最下段の防雪板23については75°とした。
この防雪柵20を図10(ロ)に示すようにターンテーブル31上に固定し、ターンテーブル31を回転させて、防雪柵に対する風の向き(水平方向の向き(風向き角α))を変えた。防雪柵の転倒モーメントを測定した風向き角αは、0°(順風位置)、30°、60°、90°(防雪柵に沿う方向)、120°、150°、180°(逆風位置)、すなわち、0〜180°の範囲での30°きざみである。
本発明の防雪板23に対比するために用いた従来の防雪板3の断面形状は、図11(ロ)に示した断面形状である。
図12および図13に、本発明の防雪板23を用いた防雪柵及び従来構造の防雪板3を用いた防雪柵について、風速12m/sで実験した場合の、前記の各風向き(風向き角α)においてそれぞれ測定した抗力係数Cdおよびモーメント係数Cmをグラフで示す。なお、抗力係数Cdおよびモーメント係数Cmは、[表1]に記載の要領で求めた。
Figure 0004662486
図12に示す通り、本発明の防雪板23では、従来の防雪板3と比べて、順風時(風向き角度α=0°)および、逆風時(風向き角度α=180°)ともに抗力係数Cdが小さく(したがって抗力Dが小さく)なっており、特に、逆風時の抗力が従来の防雪板と比較して顕著に小さく、本発明の防風板の空気抵抗が小さくなっていることが分かる。
図13に示す通り、本発明の防雪板23では、従来の防雪板3と比べて、順風時(風向き角度α=0°)のモーメント係数はあまり差はないが、逆風時(風向き角度α=180°)のモーメント係数が顕著に小さい。モーメント係数が小さい(したがって、転倒モーメントが小さい)と、防雪柵基礎にかかるモーメントも小さくなり、基礎を小さくすることができる。
この実施例の防雪板23は、平坦な上面板21と凸形状の下面板22とを貼り合わせて中空構造にしているが、このような構造を採用することで、中空構造の防雪板の製造が容易になり、中空構造としたことでコスト増になることを避けられる。また、下面板22の断面形状を、金属平板の複数箇所を折曲して形成した左右対称の凸形状とすることで、次に述べるように、凸形状の下面板の製造が一層容易になり、コストを安くできる。
上述の防雪板23における下面板22の断面形状は、金属平板を折曲して凸形状にしたものであるが、図14(イ)に示した防雪板23’(防雪板本体24’)のように下面板22’を円弧状の断面形状とすると、風の抵抗を小さくする上では当然好ましい。しかし、円弧状に成形するのは、折り曲げて凸形状に加工する場合と比べて設備費が高くつき、コストが高くなる。すなわち、円弧状の断面形状をプレス加工する場合、湾曲面の金型が必要であり、かつ少なくとも材料幅を持つ金型が必要となる。しかし、複数箇所を折り曲げて凸形状にする加工は、1箇所をV曲げするためのV形の金型で行うことができ(但し、複数回のプレス動作をする)、かつ、幅の狭い金型でV曲げをすることが可能である。したがって、加工に用いる金型の費用が大幅に安く済む。
また、上述の防雪板23における下面板22の断面形状は、左右2箇所づつ合計4箇所で折曲して凸形状にしているが、図14(ロ)に示した防雪板23”(防雪板本体24”)のように、下面板22”を幅方向中心とその両側の2箇所の合計5箇所を折曲した凸形状とするなど、さらに折曲箇所を増やすと、下面が円弧状に近づき、風の抵抗を小さくする上では当然好ましい。しかし、折曲箇所が増えると、必要なV曲げ加工の回数が増えるので、工数がかかりコストが高くなる。
実験結果は特に示さないが、上述した図8の防雪板23の断面形状は、図14(イ)の、(ロ)の断面形状の防雪板23’、23”と比較しても、風の抵抗がそれほど大きくならないという実験結果を得ており、加工コストとの兼ね合いを考慮すると、図8の4箇所折曲の防雪板23は適切である。
図15〜図18に具体的構造を持つ実際的な防雪板の他の実施例を示す。図15は防雪板33の平面図、図16は図15の端部近傍の拡大図、図17は防雪板33の拡大した側面図である。
この実施例の防雪板33における防雪板本体24は、図8に示した防雪板本体24と同じである。この実施例の防雪板33は、防雪板本体24の幅方向両端縁近傍における内部の下面板22に、防雪板長手方向に延びる図示例では山形鋼の補強部材36をボルト37とナットで固定し、防雪板本体24の両端に図18に示すような端面部材38を固定している。なお、この防雪板33は、図5〜図7に示した防雪板23と異なり、防雪板本体24内部の幅方向中央には防雪板長手方向に貫通する補強部材(角形鋼管27)を持たない。
端面部材38は、防雪板本体の内面輪郭に近い形状のリブ43の上下に、下面板22の両折り返し端縁部22a間に渡されて上面板21とともにボルト44とナットで固定される上板部41と、下面板22の中央の平行部22cにボルト45とナットで固定される下板部42とをそれぞれ溶接固定した形状であり、リブ43の外面側の中央に支柱2への取付軸39を溶接固定している。また、上板部41の端縁にフック掛け部40を溶接固定している。リブ43の下縁は、下板部42に連接された部分を除いて下面板22側に接触していない。
また、重ね合わせた上面板21の端縁部21aと下面板22の折り返した端縁部22aとは、防雪板本体24の両端部を除く複数箇所において、単にリベット25で接合している。
防雪板の上面に雪が積もるとかなりの荷重となり、防雪板を大きく撓み変形させる恐れがあるので、防雪板は積雪荷重に耐えられる剛性を必要とする。しかし、剛性を高めるために防雪板を構成する各部材のサイズを大としたのでは、コスト高になってしまうので、防雪板の剛性を効率的に高くすることが望ましいが、上記の防雪板33では、防雪板本体24の幅方向中央を貫通する大サイズの補強部材(角形鋼管)がないので、また、防雪板長手方向中間の防雪板幅方向に延びる補強部材がないので、防雪板重量を大幅に軽減することができ、コストを安くできる。上記の防雪板33について行った荷重試験の詳細説明を省略するが、曲げ剛性は十分高かった。
これは、防雪板本体中央を貫通する大サイズ(大重量)の補強部材(角形鋼管)の代わりに、防雪板長手方向に延びる補強部材36を防雪板本体24の幅方向両端縁近傍に配置することで、中央部に配置する場合と比べて補強部材が小サイズ(小重量)で済むと同時に、両端縁がすぼまった薄半月形の中空構造である防雪板本体24の曲げ剛性を高くする手段として、幅方向端縁近傍を補強することが、使用材料の重量との関連で効率的であると考えられる。
本発明の一実施例の吹払式防雪柵の側面図である。 図1の吹払式防雪柵における防雪板の拡大図であり、(a)は順風時の風の流れを説明する図、(b)は逆風時の風の流れを説明する図である。 防雪板の断面形状の他の実施例を示す断面図である。 防雪板の断面形状のさらに他の実施例を示す断面図である。 具体的構造を持つ実際的な防雪板の一実施例を示す斜視図である。 図5の防雪板の平面図である。 図5の防雪板の拡大した側面図である。 (イ)は図7の防雪板における防雪板本体のみを示した断面図、(ロ)は(イ)における端部の拡大図である。 上面板の端縁部を下面板の下側にして接合した実施例を示すもので、図8(ロ)に対応する図である。 本発明の防雪板の効果を確認するために行った風洞実験について説明するもので、(イ)は実験に用いた防雪柵の側面図、(ロ)は風洞実験における防雪柵に対する風向き(水平方向の風向き)を説明する平面図である。 風洞実験に用いた本発明の防雪板(同図(イ))及びこれと比較する従来の防雪板(同図(ロ))について、断面形状及び空気の流れを説明する図である。 風洞実験の測定データから求めた、抗力係数Cdと風向きとの関係を示すグラフである。 風洞実験の測定データから求めた、モーメント係数Cmと風向きとの関係を示すグラフである。 (イ)、(ロ)はそれぞれ防雪板本体の形状についての他の実施例を示す断面図である。 具体的構造を持つ実際的な防雪板の他の実施例を示す平面図である。 図15の端部近傍の拡大図である。 図15の拡大した右側面図である。 図16における端部の補強部材のみを示した斜視図である。 従来の吹払式防雪柵の側面図である。 図19の吹払式防雪柵における防雪板の拡大図であり、(a)は順風時の風の流れを説明する図、(b)は逆風時の風の流れを説明する図である。
符号の説明
1 道路
2 支柱
6 路肩法面
13、13’、13” 防雪板
13a (防雪板の下面の)上半部
13b、13b” (防雪板の下面の)下半部
13c 13c’ (防雪板の)上面
14、20 吹払式防雪柵
21 上面板
21a (上面板の)端縁部
22、22’、22” 下面板
22a (下面板の両端の)折り返し端縁部
22b (下面板の)折り返し部
22c (下面板の)中央の平行部
23、33 防雪板
24 防雪板本体
25 リベット
26 端面板
27 角形鋼管(補強部材)
28 受け材
29、39 取付軸
30、40 フック掛け部
38 端面部材
41 上板部
42 下板部
43 リブ

Claims (6)

  1. 道路に沿って間隔をあけて立設した支柱間に、複数の防雪板を上下に間隔をあけて、かつ道路側が低くなるように傾斜させて取り付けた吹払式防雪柵であって、
    前記防雪板の断面形状が、下面は全体として下に膨らんだ凸形状、上面は全体として平坦ないし上に膨らんだ凸形状であり、かつ、防雪板の水平方向端部間の周長が上面より下面が長いことを特徴とする吹払式防雪柵。
  2. 前記防雪板の水平方向端部が丸く加工されていることを特徴とする請求項1記載の吹払式防雪柵。
  3. 前記防雪板が、その外面を板材で構成した中空構造であることを特徴とする請求項1又は2記載の吹払式防雪柵。
  4. 前記防雪板の上面が全体として平坦な場合であって、前記防雪板が、いずれも金属板である上面側の平坦な上面板と下面側の凸形状の下面板とを貼り合わせてなる中空構造であるとともに、前記下面板の断面形状は、金属平板の複数箇所を折曲して形成した左右対称の凸形状であることを特徴とする請求項3記載の吹払式防雪柵。
  5. 前記防雪板は、下面板の断面形状が、両端部を折り返した断面形状であり、その折り返した端縁部に上面板の端縁部を重ねて接合した構造であることを特徴とする請求項3又は4記載の吹払式防雪柵。
  6. 前記下面板の折り返し部が丸みを帯びていることを特徴とする請求項5記載の吹払式防雪柵。
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