JP4660322B2 - 冷間タンデム圧延における板厚制御方法 - Google Patents

冷間タンデム圧延における板厚制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、冷間タンデム圧延においてオフゲージを極小化させるための板厚制御方法に関するものである。
冷間タンデム圧延ではコイルどうしを接合し、連続的に圧延する方法が一般的である。板厚の高精度化の要求は上昇の一途をたどっており、圧延の安定する定常部だけでなく、接合部等の非定常部の板厚精度向上の要求も大きくなっている。冷間タンデム圧延における制御系はそれを組み込んだ当時のミルの思想によって様々であるが、第1スタンドで圧下制御を行い、第2スタンド以降のスタンドではロール周速度を変化させる張力制御を行うことが多い。これは、第1スタンド以外は圧下による板厚制御が難しいという経験的な知見とそれを裏付ける解析例(非特許文献1)による。第1スタンドについてはBISRA-AGCのような相対値ゲージメータAGCやマスフローAGCが主として用いられており絶対値ゲージメータAGC(以下、絶対値AGCという)は用いられていないが、最終スタンドまたは第1スタンドと最終スタンドに絶対値AGCを用いる方法(特許文献1)等が技術的には開示されている。非定常部の板厚精度向上策としては中間スタンドから最終スタンドにかけての張力や圧下位置を変更することによって板厚を高精度化する方法(特許文献2〜6)や、セットアップ学習を最適化する方法(特許文献7)が開示されている。絶対値AGCとは圧延条件等からロールバイト直下の板厚を絶対値で推定して目標板厚との偏差を推定して制御する板厚制御方法である。
これまで、熱延仕上げスタンド等では絶対値AGCによる板厚制御が行われてきた。絶対値AGCを適用するにはミルストレッチと呼ばれる圧延機の弾性変形による上下ワークロール間ギャップの増分を正確に把握するための高精度ミルストレッチモデルが必要であり、特許文献8にはモデルの基本構成や基本的な使用方法に関する技術が開示されている。また、特許文献9にはこのモデルを熱延で使用する際に限定して本モデルから圧延荷重とロールベンディング力の影響係数を算出して、影響係数を用いた板厚制御方法に関する技術が開示されている。
また、特許文献10には板厚およびクラウン量に及ぼす圧延荷重とベンディング力の影響係数を用いた板厚・クラウン非干渉制御技術が開示されている。ミルストレッチ量をAGC周期毎に算出できれば良いが、絶対値AGCのような高応答性が要求される制御ではストレッチ量をリアルタイムに計算しAGCに反映させるのは計算時間の観点から難しいため、影響係数を用いた技術が一般的に適用されている。
特開2003−164904 特開平5−123725 特開平5−123726 特開平5−123727 特開平5−123728 特開平6−126312 特開平6−15318 特開昭60−30508 特開平6−285525 特開昭57−177818 「圧延百話」鈴木弘著 養賢堂2000年3月30日発行(p497)
特許文献1に開示されているように最終スタンドで製品厚を造り込むという考え方から最終スタンドで絶対値AGCによって高精度板厚制御を行うことは有効である。また第1スタンドと最終スタンドに絶対値AGCを適用することは第1スタンドで板厚外乱を消去することによる通板安定性と最終スタンドで製品厚の高精度化ができることから有効な方法である。両者とも最終スタンドの絶対値AGC化が必須として開示されているが、冷間タンデム圧延機の最終スタンドは非常に高速であるので、圧下制御を前提としていない現状の冷間タンデム圧延機では応答性の問題から現状のままでは適用できないミルが多い点が問題である。
特許文献2〜6には接合部近傍のような硬度変動がある材料を圧延する際に、中間スタンドでの板厚変動を最終スタンドや最終スタンドから1つ目、2つ目のスタンドを使用して修正する方法が開示されている。この方法は最終スタンド出側の板厚に注目して制御を行っている点に特徴があり、最終製品板厚が最重要であるために視点は評価されるが、接合部近傍の板厚・張力等の変動を考えたとき本制御では完全に変動を取り除くことが難しく、改良の余地がある。
特許文献7にはセットアップに学習を取り入れる方法が開示されている。冷間タンデム圧延では走間でセットアップされるため本方法は有効であるが、セットアップでも尚目標値との偏差が残ることが多く、非定常部の高精度制御にはセットアップ後の制御を考える必要がある。
非特許文献1に開示されているように第1スタンドの圧下位置の変更は最終スタンド出側板厚に大きな影響を及ぼす。また、近年冷間タンデム圧延機の第1スタンドには高応答な油圧圧下が多く取り入れられており、高精度制御可能な環境が整いつつある。現在、第1スタンドに適用されている圧下制御は従来技術で挙げたようなAGCがあるが、各AGCには次のような問題がある。
マスフローAGCでは入側板厚計と入出側速度計、もしくはそれに準じる測定器が備わっていればマスフロー一定則から第1スタンド出側板厚を推定することが可能である。しかし、ミルに設置されている板厚計のデータはフィルター等の影響も含まれており、接合部のような急激な板厚変化が生じている場合にはその急峻な変化を捉えることは難しい。また、板厚が急峻に変化することから張力変動も生じており、例えばパルスジェネレーター等の板速度計の場合、正確な速度を測定できるかどうかは疑問がある。もし、板厚推定値が正確であったとしても、トラッキングが正確でないとミル直下に当該部分が来たときに圧下位置を変化させることが難しくなる。以上のような状況からマスフローAGCでは特に接合部において制御ゲインをあまり高く設定することが難しいという問題がある。
BISRA AGCは予めミル定数を求めておき、ある圧延条件でロックオンし、その圧延条件からの圧延荷重変化に応じて圧下位置を補償する方法である。板厚の絶対値を推定できるわけではないので、ロックオン板厚が板厚目標値とずれている場合、板厚目標値に制御することはできない。そこで、圧延機出側の板厚計を用いたモニターAGCとの併用が不可欠である。同鋼種かつ同板幅で入出側とも同板厚であれば前コイルの情報によって次コイルの板厚をほぼ絶対値で推定することが可能であるが、接合部前後で鋼種・板厚・板幅のいずれか1つでも異なる圧延材についてはミルストレッチを絶対値で推定することができないので、板厚を絶対値で推定することは不可能である。以上のような状況からBISRA AGCでは制御ゲインをあまり高く設定することが難しいという問題がある。
次にモニターAGCについてはスタンド出側に設置されている板厚計の出力を用いた制御なので、接合部近傍のような急峻な板厚変動に対しては制御することはできないという問題がある。
上記いずれのAGCも、出側板厚の推定値が十分に高精度とはいえない状況から制御ゲインを上げることができずに第1スタンドにおいて高精度な板厚制御が不可能であることが問題である。
特許文献8〜10に開示されている絶対値AGCについては、高精度ミルストレッチモデルについては技術的には開示されているものの、冷間タンデム圧延機では第2スタンド以降の制御系は張力制御であり、元来圧下制御を行える装備になっていないミルが多い(a 全ての圧延機にロードセルが設置されているわけではない、b 高精度制御を実現するためには油圧圧下装置に増強する必要)など、冷延特有の問題もあり、またどのスタンドに適用すれば最小の投資で最大の効果が得られるのか検討されてはいなかった。それらを考慮して適切な配置でこれらの発明を利用するところに本発明の意義がある。
また、熱延ではスタンド間にルーパーを要しているため張力が比較的安定的であり、張力変化を考慮せずとも圧下による板厚制御が可能であり、その点が冷延とは決定的に異なる点である。
本発明はこのような点を考慮して、最小の投資で最大の効果を得られるとともに、定常部だけでなく非定常部においても高精度な板厚制御が可能な冷間タンデム圧延における板厚制御方法を提供することを課題としている。
本発明は上記したような従来法の問題点を解決するためのものであり、
第1発明の冷間タンデム圧延における板厚制御方法は、第1スタンドでワークロールにベンディング力を付与する冷間タンデム圧延における板厚制御方法において、第1スタンドで少なくとも圧延荷重およびロールベンディング力を測定し、これら測定値に基づいてミルストレッチ式により第1スタンド出側板厚を絶対値で推定し、第1スタンド出側板厚の目標値と前記推定値との出側板厚偏差に基づいて圧下位置を変更して板厚を制御すると共に、圧下位置を変更する前に任意の一定周期毎に第1スタンド出側張力を測定しておき、第1スタンド出側板厚偏差が特定の範囲内の定常圧延状態であるときの張力を目標値として第1スタンド出側張力を第2スタンドのロール周速度によって変化させることを特徴としている。
上記板厚制御方法において、最終スタンドの出側板厚を計測し、前記出側板厚計測値に基づき第2スタンド〜最終スタンドの出側板厚を張力制御するようにしてもよい。
第2発明の冷間タンデム圧延における板厚制御方法は、第1および第2スタンドでワークロールにベンディング力を付与する冷間タンデム圧延における板厚制御方法において、第1および第2スタンドで少なくとも圧延荷重およびロールベンディング力を測定し、これら測定値に基づいてミルストレッチ式によりそれぞれのスタンドの出側板厚を絶対値で推定し、第1および第2スタンドの出側板厚の目標値と前記推定値との出側板厚偏差に基づいて第1および第2スタンドの圧下位置をそれぞれ変更して板厚を制御すると共に、圧下位置を変更する前に任意の一定周期毎に第1・第2スタンド間張力および第2・第3スタンド間張力をそれぞれ測定しておき、第1および第2スタンドの前記出側板厚偏差が特定の範囲内の定常圧延状態であるときの第1・第2スタンド間張力および第2・第3スタンド間張力をそれぞれ目標値として第1・第2スタンド間張力および第2・第3スタンド間張力をそれぞれ第2スタンドおよび第3スタンドのロール周速度によって変化させることを特徴としている。
最終スタンドの出側板厚を計測し、前記出側板厚計測値に基づき第3スタンド〜最終スタンドの出側板厚を張力制御するようにしてもよい。
第1発明の板厚制御方法によれば、圧延条件によらず、冷延の定常圧延部分だけでなく、接合部近傍でも 高精度な制御を行うことが可能であり、張力変動に起因した圧延トラブルも回避し高生産性を実現できると共に、歩留向上およびコスト削減が可能となる。また、張力変動が小さいので、圧下AGCによる板厚への影響が大きく、板厚の制御効果が大きいため高応答かつ高精度な制御が可能である。また、張力制御をロール周速度で行えば、現在のミル構成のハードを変更する必要がなくソフト変更だけで本発明が実現できるので、低コストで高精度制御が実現できる。
第2発明の板厚制御方法によれば、さらに、圧下AGCを第2スタンドへも拡張することによって、第1スタンド制御しきれなかった急峻な板厚変動を第2スタンドを用いて補償したり、第1スタンドの圧下とロール周速度の応答性の位相差によって生じる外乱を第2スタンドで補償したりして、板厚制御を高精度化することが可能となる。また、第2スタンドへの拡張については、高応答制御スタンドが第2スタンドまで拡張されることを意味するので第1スタンドのみの高応答制御と比較して、高精度な板厚制御が可能となる。
冷間タンデム圧延では第2スタンド以降は最終スタンドや中間スタンド出側に設置された板厚計を利用し、ロール周速度を変化させることによって板厚を制御する張力AGCが一般的である。出側の板厚計を利用するモニターAGCである以上、接合部近傍のような急峻な板厚変化を制御することはできない。そこで、発明者らは冷間タンデム圧延を想定したダイナミックシミュレーションモデルを開発し、第1スタンド出側板厚の板厚推定値を推定誤差が有ったと仮定して最終スタンド出側板厚の制御精度を比較した。今回作成したシミュレーションモデルの制御系は以下の通りである。
1)冷間タンデム圧延で圧延スタンドは4スタンドである。
2)第1スタンド出側、第4スタンド出側に板厚計が装備されている。
3)第1スタンドには油圧圧下が装備されている。
4)第1スタンドには圧下制御が装備されている。ここで以下の2つのversionを作成した。いずれも第1スタンド出側板厚を推定して、制御するが、推定方法のみが異なる。
a マスフローAGCによる圧下制御。(マスフローversion)
b ゲージメータAGCによる圧下制御。(ゲージメータversion)
5)最終スタンド出側の板厚計出力と板厚目標値の差から第1、2、3スタンドのロール周速度を変化させる張力AGCが装備されている。但し、第1、2スタンドのロール周速度はマスフローを乱さないためだけに制御する。
6)第1スタンドの圧下制御に起因する第1・第2スタンド間張力変動は第2スタンドロール周速度を変化させることによって補償し、その補償による後段スタンドの張力変動も同様にロール周速度によって行う。
7)同様にして第1および第2スタンドに絶対値AGCを適用し、スタンド間張力等をロール周速によって制御するversionも作成する。その際、第2スタンド出側にも板厚計が装備されている。
まずは、第2スタンドには絶対値AGCを適用しない1)から6)の場合で、第1スタンド出側板厚推定誤差および最終スタンド出側板厚誤差について説明する。制御ゲインを一定にした場合の計算結果を図1に示す。今回、第1スタンドのAGCは比例ゲイン0.5、積分ゲイン0.5のPI制御とした。板厚推定値の精度が良ければ比例、積分ゲインとも1に近づけることは可能であるが、実操業では予期せぬ外乱もあることを考慮して0.5とした。また、最終スタンド出側の板厚計を用いたモニターAGCについては同様にPI制御とし、比例ゲイン0.02、積分ゲイン0.02を採用した。シミュレーションでは、まず板幅は960mmで圧下スケジュールは第1スタンド入側から最終スタンド出側まで順番に4.2mm、3.149mm、2.198mm、1.699mm、1.614mmとした。圧延速度は最終スタンド出側で780m/minとした。第1スタンドの板厚推定値が正確であるほど、最終スタンド出側の板厚変動は小さくなる。これは推定精度が向上したことにより第2スタンド出側の板厚変動が減少し、それ以降のスタンド間の張力変動も減少したためである。モニターAGCが基本で、ゲインを上げられない第2スタンド以降の張力AGCでは第1スタンドで除去しきれなかった板厚変動を取り除くことが難しいことを本結果は示している。
冷延では、第1スタンド以外のスタンドでの圧下AGCは普及していない。冷延ではスタンド間ルーパーがないので、圧下位置を変更した場合、張力変化を誘発し、それによって荷重が変化して圧下位置の変化量を相殺するため、圧下位置を変更しても板厚が変化しないと考えられてきたからである。それを回避するためには、圧下位置変更と同時に張力の制御端を変化させて張力を一定に保つことが必要となる。冷延において、その制御端としてはロール周速度が用いられる。しかしながら、ロール周速度の応答性は圧下位置の応答性より低い場合が多く、圧下位置変化による板厚変化分張力を補償して張力一定制御を行おうと思っても、張力変化が追いつけない場合もある。そこで、圧下位置を変化させた場合に張力がどの程度補償されていれば有効な板厚変化が得られるのかを確認した。圧下位置変化は50μm、100μm、150μmでその際の板厚変化量が目標板厚変化量の95%以上となる張力変化を測定した。ここで張力の制御方法としては、圧延条件の変化による先進率の変化は小さいと仮定して、板厚変化の割合だけロール周速度を変化させる方法をとった。圧下位置変化量によらず、圧下位置変化量と板厚変化量の割合の関係は等しく、いずれの場合も張力変化を10%以内に抑えると目標板厚変化に対して95%以上の精度が得られることが確認された。つまり、張力変化を10%以内に収めることが重要であることが確認された。また、95%以上とは、近年の板厚要求精度から決定した。この張力変化と圧下位置や板厚変化の関係は第2スタンドでも同様である。
次に、推定板厚と実際の板厚に誤差がある場合を検討する。これまでの議論は推定板厚と実際の板厚に誤差はないとして検討していたが、現実問題としてモデルによる板厚推定誤差はしばしば発生するものであるので、検討が必要である。第1・第2スタンド間張力制御を適用した場合の推定板厚誤差に対する張力変動の大きさを計算した。その結果、張力変動は推定板厚の誤差が大きくなればなるほど増加するものの、推定板厚誤差が1.5%以内であれば張力変動は10%以内に収まることが確認された。ここで、冷延では熱延で使用しているルーパーは適用されておらず、今回の制御では圧下は板厚制御に使用しているため、張力制御実施の場合にはロール周速度制御を行うことになる。第1スタンドで圧下制御を行うと同時に第1・第2スタンド間張力制御を実施すると、それより後段スタンド間のマスフローが乱れて張力変動を誘発する。そこで、マスフローを一定にするようにロール周速度を変化させてやれば、後段スタンド間でも張力を一定に保つことが可能であることも確認した。板厚推定精度が1.5%で張力変動が10%と同時に上記基準の最大値となった場合、目標板厚に対して±5%の精度を確保することは難しいが、板厚や張力変動が収束する時間は、現状制御と比較して半減以上の効果があったので、上記を閾値とした。
ここで、現状のAGCで用いられている板厚推定方法において、±1.5%の推定精度を有しうるかどうかを検討する。マスフローAGCでは入側板厚H、入側板速度Vin、出側板速度Vout、出側板厚hとするとh=H×Vin/Voutで表される。板厚計ではノイズ等の影響を防止するために、一般にローパスフィルターを使用する。そのため急峻な板厚変動を捉えることは難しくなる。発明者らは、急峻な板厚変動が生じる接合部近傍をX線板厚計で測定した結果と当該部分を接触式板厚計で測定した結果とを比較した。前コイルと次コイルの板厚が同じ場合、前コイルの方が厚い場合、および前コイルの方が薄い場合の3種類について計16サンプルについて調査した。前コイルと次コイルの板厚が同じ場合は最も誤差が小さかったものの、溶接部分では幾分急峻な変化があるため、平均2.1%程度の誤差を有していた。前コイルが厚い場合および薄い場合は、両者とも誤差が大きく、平均17.5%の誤差があった。また速度計については冷間タンデム圧延機で使用する方式としては接触ローラ式とレーザードップラー式の2種類が考えられる。接触ローラ式の場合、パルスをカウントして行くことになるので、1パルスのカウントが入るか入らないかで誤差が決定される。制御周期(測定周期)やローラ径、1カウントの角度等に依存するが、例えば制御周期50ms、ローラ径240mm、1200パルス/回転の場合、誤差は約1.5%となる。また、張力が緩んだ場合にはその誤差は更に大きくなる。レーザードップラー式の誤差を求めるために、実機で使用されている板速計と同型・同設定の板速計を用いてラボで実験した。等間隔に印を付けた板を種々の速度で通板し、ビデオカメラで定点観測して正確な板速を算出した。その結果とレーザードップラー板速計の出力とを比較した結果、平均で1.1%の誤差があることが判明した。
これらのことを考慮すると、接合部近傍では約20%程度の誤差を生じる可能性があることが分かる。また、マスフローAGCの場合、トラッキングの正確さが要求され、接合部のような急峻な板厚変動が生じるような箇所では0.2秒程度のトラッキング遅れ誤差でも実際の板厚と板厚推定値の誤差が,トラッキング正確にできている時の誤差と比較して32倍にもなる場合もあることが確認された。以上のように接合部近傍でマスフローAGCを用いて±1.5%の板厚推定精度を実現することは難しいことが確認された。一方、同一サイズの接合部においては、±1.5%は無理であった。
次に、BISRA AGCについて検討する。BISRA AGCでは予めミル定数を制御系に与えておいて、ロードセルにより検出される圧延荷重変化を元に補償する。そこで、ここではロードセルの検出誤差を検証した。圧延荷重検出精度に誤差はほとんどなく、応答遅れも制御周期を50msとした場合に問題があるレベルでないことが確認できた。ところで、出側板厚h、ロックオン圧延荷重P、ロックオン圧延荷重時の板厚L(P)と外乱等によって変化した圧延荷重P時のミルストレッチ差ΔMS(P−P)、および出側板厚計出力と板厚目標値との誤差Δhとすると、BISRA AGCでは式(1)を用いて制御している。
h=L(P)+ΔMS(P−P)+Δh …(1)
ここで、Δhは板厚計のモニタリングの結果、変化させる項である。また、ミルストレッチは圧延荷重P、ミル定数Mを用いて式(2)で表される。
ΔMS(P−P)=(P−P)/M …(2)
BISRA AGCではロックオン時の板厚L(P)が板厚目標値とは限らないため、板厚目標値にするにはΔhが必須である。板厚目標値とロックオン圧延荷重時の板厚との差は、圧延機出側の板厚計出力に頼らざるを得ない。また、ミルストレッチ差ΔMS(P−P)は、時系列の平均が0となるように圧下位置が制御される。前コイルと次コイルが同板厚・同鋼種・同板幅である場合には、ロックオン板厚を前コイルと同じにすることによりΔhは0に近くなるため、前後コイルで異厚の場合よりも板厚推定値は正確である。この時、ロックオン圧延荷重からの変化のみを補償して行くことになり、ミル定数によって補償されるため、ミル定数の正確さによって制御精度が変化することになる。BISRA AGCではミル定数は1つしか使用しない。つまり、ミル変形を線形と仮定していることと同義である。実際のミル変形は非線形であり、圧延荷重域、板幅、ロール径等によっても変化するため、本来コイル毎に使用されるべきミル定数を計算するのが望ましい。ミル定数を一定にして使用しているBISRA AGCとミル定数をコイル毎に計算する場合の誤差を計算した。ある一定期間を設定して操業データからミル定数を計算して板厚に及ぼす影響係数として誤差を見積もったところ、誤差が±1.5%から外れていた条件は76%に上った。このことからもBISRA AGCでは急峻な板厚変動が生じる接合部近傍の板厚を制御することが難しいことが分かる。さらに、BISRA AGCでは板厚を絶対値で推定できないことを絶対値AGCとの比較で記述する。板厚を絶対値で推定するには式(3)による計算が必要であり、その際に必要なのは正確なミルストレッチを求めることである。ここでhは板厚推定値、Sは無負荷時のギャップ、MS(P)は圧延荷重Pの時のミルストレッチである。
h=S+MS(P) …(3)
図2に曲線の両AGCによるミルストレッチの取り扱い方を示す。太い曲線はミルストレッチである。特に低圧延荷重時は、ロールを始めとする各接触部の当たり面(面積)が変化するために強い非線形性を有する。高圧延荷重域でも完全な直線ではないので、ミル変形を表すミル定数を一定とするには問題があることが分かる。絶対値AGCではこのミルストレッチを正確に推定することができなければならない。例えば、圧延荷重Pの時のミルストレッチを算出してMS(P)とし、外乱等によって圧延荷重が変化したときにはミルストレッチを新たに計算すれば良い。ミルストレッチ計算にはロール径・胴長・ロール形状・支点間距離・ベンダー形状・板幅等による影響を考慮する必要があるので、制御周期毎にミルストレッチを計算することは今の計算機能力を以ってしても難しい。そこで、基準のミルストレッチを求めておき、板厚に及ぼす影響係数を用いて外乱によって圧延荷重変化が生じたときのミルストレッチ変化を算出する方法がある。影響係数とはすなわち図2の接線の傾きであり、基準のミルストレッチに対応する圧延荷重(基準圧延荷重)を実圧延荷重の近くで計算するほど正確なミルストレッチを計算することができる。ミルストレッチを正確に計算できれば、無負荷時のギャップも分かっていることから板厚を絶対値で推定することが可能となる。また、ベンディング力についてもその負荷は板厚に影響を及ぼすので影響係数として用いる必要がある。なお、圧延機がシフト可能な中間ロールを備えた6段式圧延機である場合、圧延荷重およびベンダー力だけでなく中間ロールシフト量の板厚への影響も考慮する。
一方、BISRA AGCでは、圧延荷重変化によるミルストレッチ変化に対してミル定数を用いて圧下位置を変更する。ミル定数は前述の影響係数の逆数である。BISRA AGCでは、ある時点の圧延条件をロックオンする。その時の圧延荷重をPとすると出側板厚計によるモニターAGCが起動していない段階では、その時点のミルストレッチMS(P)にするために圧延荷重変化をミル定数で補償するのみである。ミルストレッチがMS(P)であることも計算しない。板厚は式(3)のように表されるので、正確なミルストレッチが分からなければ正確な板厚を推定することも不可能である。つまり、BISRA AGCでは接合部が板厚計に達するまでは現在の板厚が板厚目標値になっているのかどうかが分からないまま、ミル定数で制御しているだけということである。以上のようにBISRA AGCは、正しいかどうか分かっていないある点を基準にして、時間平均がその基準点になるように相対的な板厚変化のみをさせる制御であるので、前述の絶対値ゲージメータAGCに対して、相対値ゲージメータAGCに相当することが分かる。BISRA AGCの推定誤差は、接合部近傍では20%以上であった。
次に、モニターAGCについて述べる。モニターAGCでは出側板厚計の検出値を用いて、板厚目標値と検出板厚の差から圧下位置を変更する。板厚計は一般に圧延機から数m後方にあるので、定常部のように安定した圧延状態であれば良いが、急峻な板厚変動を有する接合部近傍の板厚を高精度に推定することは元々不可能である。
最後に、絶対値AGCによる板厚推定方法を述べる。前述したように絶対値AGCではミルストレッチを正確に推定することによって板厚を絶対値で推定する。
h=S+MS(P、F)+K×(P−P)+K×(F−F) …(4)
ここで、Pは任意の基準荷重、Fは任意のベンディング力、Kはミルストレッチに及ぼす荷重の影響係数、Kはミルストレッチに及ぼすベンディング力の影響係数である。ミルストレッチの正確な計算方法は従来技術で述べたように基本モデルは開示されている。本モデルでは板とロール間、ロールとロール間の圧延荷重分布を推定して計算する。圧延荷重分布を考える際にロードセルだけでなく、ベンダーからの負荷も考慮しなければ正確な圧延荷重分布を推定することは難しい。そのためロードセルとベンディング力の出力は必須である。このモデルを用いて計算した板厚推定値と接触式板厚計の検出値を比較した結果、推定誤差は最大で1.4%、平均で0.8%であった。つまり、本ミルストレッチモデルを用いた板厚推定値のみが±1.5%の板厚推定精度を有することが確認された。ここで、張力は板厚変化割合分だけロール周速度を変化させることによって安定化させた。
現在では、これまで紹介した板厚推定方法しか実現されていないので、絶対値AGCは接合部近傍で±1.5%の推定精度を実現する唯一の手段であると言える。
冷間タンデム圧延では第1スタンドで使用する板厚推定値を±1.5%以内にすることにより、現状の厳格材への対応も可能であり、張力が安定することにより板破断も激減することが期待される。更に、第1スタンドは現状でも圧下制御系が組まれているミルが多く、板厚推定方法を変更するというソフト的なAGC増強のみで最大の効果が得られることも設備投資の点から重要である。
次に、第1および第2スタンド両方に図6を用いて圧下制御を適用する場合について述べる。ほとんどの圧延材では第1スタンドの圧下制御で十分な最終製品板厚精度を得ることが可能であるが、先行材と後行材の圧下スケジュールが大きく変化する場合には、第1スタンドだけでは接合部近傍の板厚精度が十分確保できない場合がある。その際の対処法として第2スタンドでも絶対値AGCを適用する方法を発明した。タンデム圧延機前段で高精度制御を行うという思想は、第1スタンドに適用した点と同様である。この際、第1および第2スタンド間だけでなく、第2および第3スタンド間の張力制御も行う必要がある。例えば、急に第1スタンドの圧下量が増えた場合、本発明ではこれにすぐに対応して第2スタンドのモーターの回転が上がる。回転が上がると噛み込み量が増えるため第2スタンドの荷重が瞬間的に増加する。しかし、絶対値AGC を適用しているので第2スタンドで発生する板厚の変化はわずかである。逆に第1スタンドの圧下量が急に減少した場合も同様である。なお、第1スタンドの圧下量の増加による荷重増加に比べて第2スタンドの瞬間的な荷重増加は十分に小さいので、この方法で第3スタンドにまで絶対値AGCにするメリットは小さい。
先行材と後行材の圧下スケジュールが20%異なる場合についてシミュレーションを行ったが、第2スタンドまで絶対値AGCを適用することによって最終スタンド出側の板厚精度が12%向上することが確認された。
また、本発明はミル型式およびミル構成に影響されないのは言うまでもない。
本発明の板厚制御方法を実施する冷間タンデム圧延機を図3〜5に示す。図3はマスフローAGC圧延機、図4はBISRA AGC圧延機、図5は絶対値AGC圧延機をそれぞれ示す。なお、前述のシミュレーションで想定した、第1および第2スタンド両方に圧下制御を適用した冷間タンデム圧延機を図6に示す。
図3に示すマスフローAGC圧延機は第1スタンド〜第4スタンド11a〜11dのいずれのスタンドもワークロール13a〜13d、中間ロール14a〜14dおよびバックアップロール15a〜15dからなる6段圧延機である。第1スタンド〜第4スタンド11a〜11dのワークロール13a〜13dは、ACモーター17a〜17dで駆動される。第1スタンド11aは、圧延荷重を測定するロードセル21および圧下装置(油圧圧下装置)22を備えている。第1スタンド11aの入側および出側、ならびに第4スタンド11dの出側にそれぞれX線板厚計31、32、34が設置されている。また、第1スタンド11aの入出側にはそれぞれテンションメーター35、36が装備してあり、出力パルスで板速度を検出し、圧延材Sの後方張力および前方張力を求める。さらに、マスフローAGC圧延機は、マスフローAGC41および張力AGC46を備えている。
上記のように構成されたマスフローAGC圧延機において、マスフローAGC41は第1スタンド11aの入側板厚計31からの入側板厚信号および入側テンションメーター35からの入側板速度信号、ならびに出側テンションメーター36から出側板速度信号および張力信号が入力される。マスフローAGC41は、これら信号に基きマスフロー一定則に従って第1スタンド11aの圧下位置を演算し、加算器23を経由して油圧圧下装置22に圧下位置制御信号を出力する。また、第1スタンド11aの出側板厚計32から出側板厚信号が加算器23に出力されて加算され、圧下位置がフィードバック制御される。マスフローAGC41は、第2〜4スタンドの交流モーター17b〜17dにモーター速度制御信号を出力し、第1〜第4スタンドの隣り合うスタンド間の張力が一定となるようにスタンド間張力を制御する。さらに、第4スタンド11dの出側の板厚計34から張力AGC46に第4スタンド11dの出側板厚信号が入力される。張力AGC46は出側板厚信号を加算器18b、18cへ入力し,目標板厚との誤差から第1〜第4スタンドの隣り合うスタンド間の張力をモーターを用いたロール周速度によって制御し、第2〜第4スタンド11b〜11dの出側板厚をフィードバック制御(モニターAGC)する。
図4は、BISRA AGC圧延機を示している。以下の説明で、図3に示すマスフローAGC圧延機と同じ装置には同じ参照符号を付け、その詳細な説明は省略する。BISRA AGC圧延機の第1スタンド11a〜第4スタンド11dの構成は、マスフローAGC圧延機のものと同じである。BISRA AGC圧延機は、マスフローAGC圧延機のマスフローAGC41に代えてBISRA AGC42を備えている。
上記のように構成されたBISRA AGC圧延機において、第1スタンド11aのロードセル21から圧延荷重信号がBISRA AGC42に入力される。BISRA AGC42は圧延荷重信号およびミル剛性Mに基づき、前記式(1)および(2)により圧下位置を演算し、圧下位置信号を加算器23を経由して油圧圧下装置22に出力する。第1スタンド11aの出側板厚計32から出側板厚信号が加算器23に出力されて加算され、圧下位置がフィードバック制御される。また、マスフローAGC圧延機と同様に、第4スタンド11dの出側の板厚計34から張力AGC46に第4スタンド11dの出側板厚信号が入力される。張力AGC46は出側板厚信号に基づきマスフローAGCと同様に第1〜第4スタンド11a〜11dの隣り合うスタンド間の張力を制御し、第2〜第4スタンド11b〜11dの出側板厚をフィードバック制御(モニターAGC)する。
図5は、絶対値AGC圧延機を示すものである。絶対値AGC圧延機の第1スタンド11a〜第4スタンド11dの構成は、マスフローAGC圧延機あるいはBISRA AGC圧延機のものと同じである。第1スタンド11aは、ワークロール・ベンダー27を備えており、出側に板速度計37が配置されている。絶対値AGC圧延機3は、マスフローAGC41またはBISRA AGC42に代えて絶対値AGC43を備えている。
上記のように構成された絶対値AGC圧延機3において、第1スタンド11aのロードセル21からの圧延荷重信号、板速度計37から板速度信号およびワークロール・ベンダー27からのベンディング力信号が、それぞれ絶対値AGC43に入力される。絶対値AGC43はこれら信号およびロール径やロール胴長などの圧延機データに基づいてミルストレッチを計算して、前記式(3)および(4)により圧下位置を演算し、圧下位置信号を加算器23を経由して油圧圧下装置22に出力する。第1スタンド11aの出側板厚計32は出側板厚信号を絶対値AGC43に出力し、一定の間隔で出側板厚と推定板厚を比較してその差をゲージメータエラーとして加算器23を経由して油圧圧下装置22に出力し、圧下位置をフィードバック制御する。また、マスフローAGC圧延機またはBISRA AGC圧延機と同様に、第4スタンド11dの出側の板厚計34から張力AGC46に第4スタンド11dの出側板厚信号が入力される。張力AGC46は出側板厚信号に基づきマスフローAGCと同様に第1〜第4スタンド11a〜11dの隣り合うスタンド間の張力を制御し、第2〜第4スタンド11b〜11dの出側板厚をフィードバック制御(モニターAGC)する。
図6は、絶対値AGC圧延機4の他の例を示すものである。絶対値AGC圧延機の第1スタンド11a、第3スタンド11cおよび第4スタンド11dの構成は、絶対値AGC圧延機のものと同じである。第2スタンド11bは第1スタンド11aと同じであり、ワークロール・ベンダー28を備えており、出側に板速度計39が配置されている。また、絶対値AGC圧延機は、第1スタンド11aの圧下位置制御を行う第1絶対値AGC43および第2スタンド11bの圧下位置制御を行う第2絶対値AGC44を備えている。
上記のように構成された絶対値AGC圧延機において、第1スタンド11aおよび第2スタンド11bは、図5に示す絶対値AGC圧延機のものと同様に動作する。第1絶対値AGC43は速度信号を第2スタンド11bの交流モーター17bに出力し、第1・第2スタンド間の張力が一定となるように制御する。また、第2絶対値AGC44は速度信号を第3および第4スタンドの交流モーター17c、17dに出力し、第2・第3スタンド間および第3・第4スタンド間の張力が一定となるように制御する。さらに、第4スタンド11dの出側の板厚計34から張力AGC46に第4スタンド11dの出側板厚信号が入力される。張力AGC46は出側板厚信号に基づきマスフローAGCと同様に第2・第3スタンドの張力および第3・第4スタンド間の張力を制御し、第3スタンド11cおよび第4スタンド11dの出側板厚をフィードバック制御(モニターAGC)する。
本発明の効果を確認するために図3〜5に示した6Hi・4スタンドの冷間タンデム圧延機を使用した圧延実験を行った。
それぞれの制御系の圧延は3本を接合して行い、接合部近傍は板厚変化が急激で、フィルターの影響でX線板厚計では測定が難しいので、圧延後に接合部近傍だけサンプリングして接触式板厚計で測定し、それぞれの制御系の効果を見極めた。コイルは3本とも普通鋼で1本目のコイルは板幅1210mm、入側板厚は4.8mmで、以降第1スタンド出側以降のスケジュールは3.426mm、2.319mm、1.708mm、1.603mmである。2本目のコイルは板幅1111mm、入側板厚は4.3mmで、以降第1スタンド出側以降のスケジュールは3.088mm、2.102mm、1.588mm、1.498mmである。3本目のコイルについては1本目と同じコイルを用いたが、2本目と3本目の接合部近傍については第2スタンドから最終スタンドまでは圧下をかけず、第1スタンドの板厚推定値と実績板厚の比較に使用した。圧延機は4スタンドとも同じで、ロール径はバックアップロール径1291〜1340mm、中間ロール径491〜519mm、ワークロール径425〜430mmのものを使用した。ワークロールについては上下差はほとんど無く、0.3mm以内である。ベンディング力は一定で100kN/chockとした。接合部の圧延速度は最終スタンド出側で300m/minとした。
それぞれの制御系でオフゲージを比較した。オフゲージは将来的なことも考慮して現状の厳格材よりも更に厳しい板厚目標値の±1.0%として、先行材のボトム部でオフゲージになった部分から、後行材でオンゲージになった部分までの長さで比較した。
上記の条件で圧延したところ、板幅変化も小さく、圧下スケジュールも近いので圧延荷重変化が大きくはなかった。この圧延の結果、最終スタンド出側でオフゲージはマスフローAGCで3.5m、BISRA AGCで9.8m、絶対値AGCで0.5mであった。また、2本目と3本目の接合部部分(接合部前後20m)を50ms毎に板厚推定値と実績板厚で比較したところ、板厚推定値が±1.5%内であった割合はマスフローAGCで70%、BISRA AGCで55%、絶対値AGCで100%であった。ちなみに絶対値AGCでは最大誤差は1.2%であった。張力制御も行っていたが、絶対値AGCの張力変動が実際の接合部分以外では±8%以内に収まっていたのに対して、マスフローAGCとBISRA AGCでは接合部前後2〜3mは張力変動が10%も超えていた。張力の制御方法としては、圧延条件の変化先進率変化は小さいと仮定して、板厚変化の割合だけロール周速度を変化させる方法をとった。しかし、本来、先進率は圧延条件によって変化するものなので、先進率推定モデルを構築して、先進率に応じてロール周速度変化も変える制御を行うのが望ましいのは言うまでもない。
実施例1で示した冷間タンデム圧延機を用いて先行材と後行材で条件が大きく変化する場合の効果を検討した。1本目のコイルは板幅1291mm、入側板厚は4.8mmで、以降第1スタンド出側から順に3.426mm、2.319mm、1.708mm、1.603mmである。2本目のコイルは板幅1111mm、入側板厚は3.8mmで、以降第1スタンド出側から順に2.657mm、1.750mm、1.271mm、1.203mmである。3本目には1本目と同じコイルを用いて、実施例1と同様に2本目と3本目の接合部近傍は第2スタンド以降では圧下しなかった。
圧延の結果、最終スタンド出側でオフゲージはマスフローAGCで8.2m、BISRA AGCで14.5m、絶対値AGCで0.3mであった。また、2本目と3本目の接合部部分(接合部前後20m)を50s毎に板厚推定値と実績板厚で比較したところ、板厚推定値が±1.5%内であった割合はマスフローAGCで44%、BISRA AGCで23%、絶対値AGCで100%であった。ちなみに絶対値AGCの最大誤差は1.35%であった。張力制御も行っていたが、絶対値AGCの張力変動が実際の接合部部分以外では±9.5%以内に収まっていたのに対して、マスフローAGCとBISRA AGCでは接合部前後5〜7mで張力変動が10%を超えていた。
圧下スケジュールに変化が大きく、圧延荷重変動が大きい場合に絶対値AGCが威力を発揮することが確認された。
実施例1、2では板厚に関する制御だけを行った。圧下制御を行ったため、圧延荷重変動が生じて形状が乱れている部分も確認された。そこで今回は板厚と同時に形状制御も取り入れた。板厚に及ぼす圧延荷重とベンディング力の影響係数と同様にクラウンに及ぼす圧延荷重とベンディング力の影響係数も算出して実施例1と同様の3本のコイルを圧延した。今回、ベンダーを用いた制御を行ったのは絶対値AGCのみである。
圧延の結果、最終スタンド出側でオフゲージは0mであり、λが±0.9%内に入っていることが確認できた。実施例1ではλは±1.9%内であったので、板厚・形状非干渉制御の効果が確認された。ここで、λは急峻度であり、単位長さ(l)当りの波高さ(δ)を用いてλ=δ/lで表される。
第1スタンド出側板厚推定誤差値と第1・2スタンド間張力変動最大値との関係を示す線図である。 BISRA AGCと絶対値AGCにおけるミルストレッチの取り扱い方を示す概念図である。 実施例で用いた圧延機および制御系(マスフローAGC version)の構成図である。 実施例で用いた圧延機および制御系(BISRA AGC version)の構成図である。 実施例で用いた圧延機および制御系(絶対値AGC version)の構成図である。 シミュレーションで用いた圧延機および制御系(絶対値AGC version)の構成図である。
符号の説明
11 圧延スタンド
13 ワークロール
14 中間ロール
15 バックアップロール
17 モーター
18、23 加算器
21、24 ロードセル
22、25 油圧圧下装置
27、28 ワークロール・ベンダー
31〜34 板厚計
35〜37、39 板速度計(テンションメーター)
41 マスフローAGC
42 BISRA AGC
43、44 絶対値AGC
46 張力AGC
S 圧延材

Claims (4)

  1. 第1スタンドでワークロールにベンディング力を付与する冷間タンデム圧延における板厚制御方法において、第1スタンドで少なくとも圧延荷重およびロールベンディング力を測定し、これら測定値に基づいてミルストレッチ式により第1スタンド出側板厚を絶対値で推定し、第1スタンド出側板厚の目標値と前記推定値との出側板厚偏差に基づいて圧下位置を変更して板厚を制御すると共に、圧下位置を変更する前に任意の一定周期毎に第1スタンド出側張力を測定しておき、第1スタンド出側板厚偏差が特定の範囲内の定常圧延状態であるときの張力を目標値として第1スタンド出側張力を第2スタンドのロール周速度によって変化させることを特徴とする冷間タンデム圧延における板厚制御方法。
  2. 最終スタンドの出側板厚を計測し、前記出側板厚計測値に基づき第2スタンド〜最終スタンドの出側板厚を張力制御する請求項1記載の冷間タンデム圧延における板厚制御方法。
  3. 第1および第2スタンドでワークロールにベンディング力を付与する冷間タンデム圧延における板厚制御方法において、第1および第2スタンドで少なくとも圧延荷重およびロールベンディング力を測定し、これら測定値に基づいてミルストレッチ式によりそれぞれのスタンドの出側板厚を絶対値で推定し、第1および第2スタンドの出側板厚の目標値と前記推定値との出側板厚偏差に基づいて第1および第2スタンドの圧下位置をそれぞれ変更して板厚を制御すると共に、圧下位置を変更する前に任意の一定周期毎に第1・第2スタンド間張力および第2・第3スタンド間張力をそれぞれ測定しておき、第1および第2スタンドの前記出側板厚偏差が特定の範囲内の定常圧延状態であるときの第1・第2スタンド間張力および第2・第3スタンド間張力をそれぞれ目標値として第1・第2スタンド間張力および第2・第3スタンド間張力をそれぞれ第2スタンドおよび第3スタンドのロール周速度によって変化させることを特徴とする冷間タンデム圧延における板厚制御方法。
  4. 最終スタンドの出側板厚を計測し、前記出側板厚計測値に基づき第3スタンド〜最終スタンドの出側板厚を張力制御する請求項3記載の冷間タンデム圧延における板厚制御方法。
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