JP4659810B2 - 乳化化粧料 - Google Patents

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近年、保湿効果に優れ、べたつきのないさっぱりした使用感の化粧料が好まれている。乳化化粧料は油性成分を乳化した乳化粒子を含有し、保湿効果や皮膚を柔軟にするエモリエント効果に優れているが、油性感やべたつき感が問題となっている。乳化化粧料の乳化粒子を小さくすることで油性感やべたつき感が低減し、乳化粒子をナノサイズまで小さくすると半透明の青白い外観を呈することから、さっぱりとした印象を与えることができるため、半透明の化粧料について色々な検討がなされている。
シリコーン油、高級アルコール、多価アルコール、水相、及びレシチン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸のいずれかを含有する透明〜半透明の乳化化粧水が知られている(特許文献1:特開2006−241032号公報)。しかしながら、必須成分として高級アルコールを含有するためみずみずしい使用感を実現することが困難であった。
リン脂質またはレシチンと、ポリオールまたは炭水化物の高濃度水溶液と脂質を含有する透明な脂肪様物質のエマルション様水溶性濃縮物が知られている(特許文献2:特表2006−513172号公報)。しかしながら、乳化化粧料としての透明性、安定性については検討されていない。
水素添加リン脂質と液状炭化水素とアニオン界面活性剤またはノニオン界面活性剤とエタノールを含有する半透明化粧水が知られている(特許文献3:特許第2521467号公報)。しかしながら、油性剤の含量が低く、エモリエント性が十分ではなかった。また、アニオン界面活性剤あるいはHLBの高いノニオン界面活性剤とエタノールを使用しており、安全性に問題があった。
油性成分と油性成分に対して10倍量以下の非イオン界面活性剤と水とを含み波長700nmの光の透過率が80%以上の透明組成物が知られている(特許文献4:特許第3298867号公報)。しかしながら、油性剤の含量が低く、エモリエント性が十分ではなかった。
特開2006−241032号公報 特表2006−513172号公報 特許第2521467号公報 特許第3298867号公報
皮膚の柔軟化、保湿性に優れた半透明の乳化化粧料を提供する。
本発明の主な構成は、次のとおりである。
(1)1〜10質量%のスクワランと、0.2〜2質量%のリン脂質と、1〜10質量%の多価アルコールと、ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩を含有し、
リン脂質とジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩以外の乳化剤を含有しない、
高圧乳化手段によって乳化粒子径が100nm以下に調整されており、波長750nmの光の透過率が50%以上の水中油型の半透明乳化化粧料。
(2)ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩がジラウロイルグルタミン酸リシン塩であることを特徴とする(1)に記載の半透明乳化化粧料。
(3)リン脂質とジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩の配合が質量比10:1〜1:1であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の半透明乳化化粧料。
皮膚の柔軟化、保湿性に優れ、経時安定性に優れた半透明の乳化化粧料を提供することができる。界面活性剤として、安全性が高く、保湿効果も高いリン脂質と、油のゲル化能や保湿機能が知れているジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩を用いて、皮膚柔軟化効果に優れたスクワランを乳化し、スクワランを1〜10質量%含有する、波長750nmの光の光路長1cmの透過率が50%以上の半透明乳化化粧料を提供することができる。
本発明は、水中油型乳化化粧料である。
本発明に用いるスクワランは、サメ肝油やオリーブ油等に含まれるスクワレンに水素を添加反応させて飽和炭化水素とした油剤である。スクワランはべたつきが少なく、エモリエント感に優れている。スクワランは化粧品原料として市販されており、市販品を用いることができる。スクワランの配合量は1〜10質量%である。1質量%未満であると、半透明乳化化粧料の透明性が高くなるが、十分な皮膚柔軟化効果が得られない。10質量%を超えると十分な透明性が得られなくなるとともに油性感が強くなる。
本発明の半透明乳化化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で、シリコーン油、エステル油、ロウ、動植物油等の化粧料に通常用いられる油剤を配合することができる。
本発明に用いるリン脂質としては、卵黄レシチンや大豆レシチン等の天然のリン脂質、レシチン中の不飽和炭素鎖を水素添加により飽和結合に変えた水素添加大豆レシチン、水素添加卵黄レシチン等のリン脂質、天然レシチンから精製するか、あるいは合成したホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール等が挙げられる。これらの中で、水素添加レシチン(水素添加大豆レシチン、水素添加卵黄レシチン)が安定性の点で特に好ましい。これらのリン脂質を単独で、あるいは組み合わせて用いることができる。本発明に用いるリン脂質の配合量は油剤重量に対して10質量%〜20質量%が好ましい。油剤重量に対して10質量%未満であると、透明性に劣る場合があり、20質量%を超えると増粘し乳化状態が悪くなることがある。
本発明に用いる多価アルコールとして、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、イソプレングリコール等が挙げられる。本発明に用いる多価アルコールの総配合量は油剤の配合量と同量以上が好ましい。多価アルコール総配合量が油剤の配合量よりも少ないと、乳化粒子が大きくなり、透明性が下がり、安定性も悪くなる。
本発明に用いるジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩は保湿性に優れ、油性ゲル化能、顔料分散能、乳化安定化能に優れる化合物である。ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩はL−リシン塩酸塩とN−脂肪酸アシル−L−グルタミン酸無水物を反応させて合成することができる。ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩は市販品を用いることが可能であり、市販品としては旭化成ケミカルズ株式会社製のペリセアL−30(ジラウロイルグルタミン酸リシンNa)が挙げられる。リン脂質とジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩を配合するときの質量比は10:1〜1:1であることが好ましい。ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩の配合量がリン脂質の配合量の1/10倍以下であると半透明乳化化粧料の透明性が得られにくくなり、ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩の配合量がリン脂質の配合量の1倍を超えても半透明乳化化粧料の透明性はあまり改善されない。
本発明の半透明乳化化粧料の乳化粒子径は100nm以下である。尚、この乳化粒子径はレーザーゼータ電位計を用いて25℃の光散乱強度からキュムラント解析により求めたものである。
本発明の半透明乳化化粧料の調製方法は、まず、高圧乳化により乳化粒子を調製し、それを水溶液に分散させることが好ましい。高圧乳化装置としては、プライミクス株式会社製 薄膜旋回型高速ホモミキサー(T.Kフィルミックス)、マイクロフルイディックス社製 超高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー)、エム・テクニック株式会社製 内部せん断力型ミキサー(クレアミックス)等を用いることができる。
例えば、マイクロフルイディックス社製 超高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー)を用いた場合には、乳化圧力22,000psi、パス回数2回で乳化粒子径100nm未満の乳化粒子を調製することができる。
本発明の半透明乳化化粧料の透明度は、波長750nmの光の光路長1cmの透過率が50%以上である。波長750nmの光の透過率を50%以上とすることにより、半透明乳化化粧料を手に取ったときに透明性が感じられるだけでなく、一般的なガラスビンに入れたときに半透明性が識別される(内径4cmのガラスビンに入れたときに、ガラスビンを通して明るいところを見ると光の透過を確認できる)。
本発明の半透明乳化化粧料には、保湿剤、増粘剤や機能成分等の通常の化粧料に使用される成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
実施例を次に示す。
実施例1〜12、比較例1〜11を表1及び表2に示す。表1及び表2の成分1〜12を混合し、85℃に加温し、ホモミキサーで1500rpm、1分攪拌し、粗乳化した。粗乳化液をマイクロフルイダイザーで室温にて乳化圧力22,000psi、パス回数2回で高圧乳化した。高圧乳化した成分1〜12を予め混合溶解した成分13〜14と攪拌混合し、半透明乳化化粧料を得た。尚、比較例10はホモミキサーの粗乳化のみで高圧乳化せずに調製した。比較例11は高圧乳化条件を乳化圧力10,000psi、パス回数2回として調製した。
<透過率>
半透明乳化化粧料を光路長1cmの石英セルに入れて、精製水を対照試料として、分光光度計(日立製、U-3210)で波長750nmの透過率を測定した。
<乳化粒子径>
レーザーゼータ電位計(大塚電子株式会社製、ELS-8000)を用いて25℃の光散乱強度を測定しキュムラント解析により乳化粒子径を求めた。
<透明性>
以下の基準により半透明乳化化粧料の透明性を目視評価した。
◎:内径4cmのガラスビンに入れたときに顕著に半透明である。
(ガラスビンを通して反対側の物体を確認できる)
○:内径4cmのガラスビンに入れたときに半透明と認識できる。
(ガラスビンを通して明るいところを見ると光の透過が確認できる)
△:内径4cmのガラスビンに入れたときに半透明と認識することは困難であるが、 手に取ったときに顕著に半透明である。
×:内径4cmのガラスビンに入れたときに透明性が殆ど認められず、手に取ったと きの透明性も低い。
<皮膚柔軟化効果>
以下の基準により半透明乳化化粧料の皮膚柔軟化効果を官能評価した。
◎:滑らかで皮膚が柔軟化された感触が顕著である。
○:滑らかで皮膚が柔軟化された感触が認められる。
△:滑らかで皮膚が柔軟化された感触がかすかに認められる。
×:滑らかで皮膚が柔軟化された感触が認められない。
Figure 0004659810
Figure 0004659810
<考察>
[実施例1〜12について]
実施例1〜12に示したように、本発明の半透明乳化化粧料は波長750nmの光の透過率が50%以上であり、透明性、皮膚柔軟化効果、経時安定性に優れるものであった。実施例2はスクワランの配合量が1質量%の半透明乳化化粧料、実施例4はスクワランの配合量が10質量%の半透明乳化化粧料を示す。実施例5〜8は、リン脂質とジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩の質量比が10:1〜1:1の半透明乳化化粧料を示している。
[比較例1〜11について]
比較例1に実施例11のジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム塩をモノステアリン酸デカグリセリルに置き換えた半透明乳化化粧料を示す。試作直後の乳化粒子径は92nmであり、100nm以下であったが、波長750nmの光の透過率が30%しかなく、透明性は不十分であった。
比較例2に実施例11のジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム塩をラウリルカルバミン酸イヌリンに置き換えた半透明乳化化粧料を示す。乳化粒子径は100nmを超え、波長750nmの光の透過率が23〜20%しかなく、透明性は不十分であった。
比較例3〜5に実施例11の処方からジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム塩を除去し、水素添加大豆リン脂質の配合量を0.6、0.8、1質量%とした半透明乳化化粧料を示す。比較例3,4は透明性が不十分であり、比較例5は粗乳化で油相が分離し、高圧乳化処理ができなかった。
比較例6〜9に実施例11のスクワランをトリグリセライド油のトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、ワックスエステル油のオクタン酸セチルに置き換えた半透明乳化化粧料を示す。いずれも乳化粒子径が大きく、透明性が不十分であった。
比較例10、11(高圧乳化なし及び、弱い高圧乳化)の結果、乳化粒子径は、半透明性や乳化安定性に影響し、さらに、乳化粒子径が大きい場合は皮膚柔軟化作用も低下することが分かる。乳化粒子径を小さくするうえで高圧乳化処理の有効性が確認できた。

Claims (3)

  1. 1〜10質量%のスクワランと、0.2〜2質量%のリン脂質と、1〜10質量%の多価アルコールと、ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩を含有し、
    リン脂質とジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩以外の乳化剤を含有しない、
    高圧乳化手段によって乳化粒子径が100nm以下に調整されており、波長750nmの光の透過率が50%以上の水中油型の半透明乳化化粧料。
  2. ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩がジラウロイルグルタミン酸リシン塩であることを特徴とする請求項1に記載の半透明乳化化粧料。
  3. リン脂質とジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩の配合が質量比10:1〜1:1であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半透明乳化化粧料。
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