JP4659486B2 - 電子デバイス用絶縁膜、電子デバイス及び電子デバイス用絶縁膜の製造方法 - Google Patents

電子デバイス用絶縁膜、電子デバイス及び電子デバイス用絶縁膜の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は膜形成用組成物に関し、さらに詳しくは電子デバイスなどに用いられる誘電率、機械強度等の膜性が良好な絶縁膜に関する。
近年、電子材料分野においては、高集積化、多機能化、高性能化の進行に伴い、回路抵抗や配線間のコンデンサー容量が増大し、消費電力や遅延時間の増大を招いている。中でも、遅延時間の増大は、デバイスの信号スピードの低下やクロストークの発生の大きな要因となるため、この遅延時間を減少させてデバイスの高速化を図るべく、寄生抵抗や寄生容量の低減が求められている。この寄生容量を低減するための具体策の一つとして、配線の周辺を低誘電性の層間絶縁膜で被覆することが試みられている。また、層間絶縁膜には、実装基板製造時の薄膜形成工程やチップ接続、ピン付け等の後工程に耐え得る優れた耐熱性やウェットプロセスに耐え得る耐薬品性が求められている。さらに、近年は、Al配線から低抵抗のCu配線が導入されつつあり、これに伴い、CMP(ケミカルメカニカルポリッシング)による平坦化が一般的となっており、このプロセスに耐え得る高い機械的強度が求められている。
高耐熱性の絶縁膜として、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミドが広く知られているが、極性の高いN原子を含むため、低誘電性、低吸水性、耐久性および耐加水分解性の面では、満足なものは得られていない。
また、有機ポリマーは概して有機溶剤への溶解性の不十分なものが多く、塗布液中での析出、絶縁膜中でのブツ発生の抑制が重要な課題となっているが、溶解性を向上させるためにポリマー主鎖を折れ曲がり構造にするとガラス転移点の低下、耐熱性の低下が弊害となりこれらを両立することは容易ではない。
また、ポリアリーレンエーテルを基本主鎖とする高耐熱性樹脂が知られており、誘電率は2.6〜2.7の範囲である。しかし、高速デバイスを実現するためには更なる低誘電率化が望まれており、多孔化せずにバルクでの誘電率を好ましくは2.6以下、より好ましくは2.5以下にすることが望まれている。
低誘電率化の手段として耐熱性の飽和炭化水素であるアダマンタンで構成する重合体の利用は有効な手段と考えられる。
特許文献1にエチニル基が置換したアダマンタンの熱重合体を利用した絶縁膜が開示されている。しかし、このモノマーは重合触媒を使用せずに重合するためには、反応に長時間必要であり、この結果、空気酸化等の望ましくない副反応が進行して得られる絶縁膜の比誘電率が高くなったり、塗布溶剤に溶けにくい重合体が大量に副生してしまい、溶解性の良好な重合体の収率が著しく低下する等の問題がある。
特開2003−292878号公報
本発明は上記問題点を解決するための膜形成用組成物に関し、さらに詳しくは電子デバイスなどに用いられる誘電率、機械強度等の特性が良好な絶縁膜に関する。
(1) 式(I)で表される化合物を溶剤およびパラジウムを含む金属触媒の存在下で重合させて得られる質量平均分子量1000〜500000の重合体と、塗布溶剤とを含む組成物を用いて形成した電子デバイス用絶縁膜。
Figure 0004659486
式(I)中、
Rはエチニル基を表わす。
Xはハロゲン原子またはアルキル基を表す。
mは1〜16の整数を表す。
nは0〜15の整数を表す
(2) 式(I)で表される化合物が窒素原子を有さないことを特徴とする(1)に記載の電子デバイス用絶縁膜。
(3) (1)又は(2)に記載の絶縁膜を有する電子デバイス。
(4) 式(I)で表される化合物を溶剤およびパラジウムを含む金属触媒の存在下で重合させて質量平均分子量1000〜500000の重合体を得、
得られた前記重合体と塗布溶剤とを含む組成物を用いて電子デバイス用絶縁膜を形成する電子デバイス用絶縁膜の製造方法。
Figure 0004659486
式(I)中、
Rはエチニル基を表わす。
Xはハロゲン原子またはアルキル基を表す。
mは1〜16の整数を表す。
nは0〜15の整数を表す。
本発明の膜形成用組成物は均一であり不溶物の析出がなく、該組成物から形成した絶縁膜は低い比誘電率、高い機械強度を有するため、電子デバイスなどにおける層間絶縁膜として利用できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
式(I)の化合物について説明する。
Figure 0004659486
式(I)中、Rはエチニル基を表わす。
はハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子、または沃素原子)またはアルキル基(メチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等)を表す。
mは1〜16の整数を表し、好ましくは1〜4であり、より好ましくは2〜3である。
nは0〜15の整数を表し、好ましくは0〜1であり、より好ましくは0である。
本発明の式(I)の化合物の分子量は好ましくは160〜1500、より好ましくは160〜1100、特に好ましくは160〜220である。
本発明の式(I)の化合物は単独で使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
以下に本発明のカゴ構造を有する化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
Figure 0004659486
本発明の式(I)の化合物の合成においてエチニル基を導入するためには、例えば市販の臭素置換アダマンタンを原料として、臭化アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化鉄等のルイス酸の存在下で臭化ビニルとフリーデルクラフツ反応させて2,2−ジブロモエチル基を導入、続けて強塩基で脱HBr化することによって容易に得ることができる。また、臭素置換アダマンタンとアリール誘導体とのフリーデルクラフツ反応によって、アリール基を導入することも容易に出来る。
また、本発明のカゴ型構造を有する化合物には、誘電率・膜の吸湿性の観点から窒素原子は含まないことが特に好ましく、特に、ポリイミド以外の化合物、即ちポリイミド結合を有しない化合物であることが好ましい。
式(I)の化合物の重合は溶媒中で行うことを特徴とする。
本発明者らは本発明の化合物を溶媒中で重合した方が無溶媒で重合したときと比較して、シクロヘキサノン等の塗布溶剤に可溶な重合体を高い収率で得られることを見出した。さらに塗布溶剤への溶解性が極めて高い重合体が得られるという、予想外の優れた特徴があることを見出した。
式(I)の化合物の重合反応で使用する溶媒は、原料モノマーが必要な濃度で溶解可能であり、かつ得られる重合体から形成する膜の特性に悪影響を与えないものであればどのようなものを使用しても良い。例えば水やメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶剤、アルコールアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、メチルベンゾエート等のエステル系溶剤、ジブチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶剤、トルエン、キシレン、メシチレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、N−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン等のハロゲン系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤などが利用できる。これらの中でより好ましい溶剤はアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、アニソール、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メシチレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンであり、より好ましくはテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、アニソール、トルエン、キシレン、メシチレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンであり、特に好ましくはγ−ブチロラクトン、アニソール、メシチレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンである。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
反応用の有機溶媒の沸点は50℃以上が好ましく、より好ましくは100℃以上であり、特に好ましくは150℃以上である。
反応液の濃度は好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは10〜20質量%である。
本発明の式(I)の化合物の重合はエチニル基の付加重合反応によって行うことが好ましい。本発明の付加重合反応としては、有機合成分野で公知のカチオン重合、アニオン重合、ラジカル重合、熱重合等が利用できる。
本発明において、式(I)の化合物の重合反応は、パラジウムを含む金属触媒を使用することを特徴とする。パラジウムを含む金属触媒を使用することで、反応時間短縮、反応温度の低下のメリットの他、特に本発明においては塗布溶剤への溶解性の良好な重合体をより高い収率で得ることができる優れた効果がある。使用できるパラジウムを含む金属触媒としては例えばPd(PPh3)4、Bis(benzonitrile)Palladiumchloride、Pd(OAc)2等のPd系触媒等が好ましく用いられる。Pd系の触媒を用いることによりシクロヘキサノンのような塗布溶剤に高い溶解性を有する可溶性重合体が収率よく得られる。
パラジウムを含む金属触媒の添加量は、エチニル基1モルに対して0.0001〜0.1モルが好ましく、0.0005〜0.05モルがより好ましく、0.001〜0.01モルが特に好ましい。
本発明における付加重合反応の最適な条件は、触媒、溶媒の種類、触媒の量、濃度等によって異なるが、好ましくは内温0℃〜230℃、より好ましくは100℃〜230℃、特に好ましくは180℃〜230℃で、好ましくは1〜50時間、より好ましくは2〜20時間、特に好ましくは3〜10時間の範囲である。
また、重合体の酸化分解を抑制するために不活性ガス雰囲気下(例えば窒素、アルゴン等)で反応させることが好ましい。
重合して得られるポリマーの質量平均分子量の好ましい範囲は1000〜500000、より好ましくは5000〜300000、特に好ましくは10000〜200000である。
本発明の上記式(I)の化合物の重合物は塗布溶剤に十分な濃度で溶解する必要がある
。溶解性の目安としては、電子デバイス製造の際に好ましく使用される塗布溶剤であるシクロヘキサノンに25℃で好ましくは3質量%以上、より好ましくは7質量%以上、特に好ましくは10質量%以上溶解することが好ましい。
本発明の膜形成用組成物は少なくとも上記式(I)の化合物の重合物と塗布溶剤を含む。
本発明に用いることの出来る好適な塗布溶剤の例としては特に限定はされないが、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−エトキシメタノール、3−メトキシプロパノール等のアルコール系溶剤、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、アニソール、フェネトール、ベラトロール等のエーテル系溶剤、メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、プロピルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、N−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤などが挙げられ、これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
より好ましい塗布溶剤は、アセトン、プロパノール、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、アニソール、メシチレン、1,2−ジクロロベンゼンであり、特に好ましくはシクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、アニソールである。
本発明の膜形成用組成物の固形分濃度は、好ましくは3〜50質量%であり、より好ましくは7〜35質量%であり、特に好ましくは10〜15質量%である。
本発明の重合体は単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
更に、本発明の塗布液には、得られる絶縁膜の特性(耐熱性、誘電率、機械強度、塗布性、密着性等)を損なわない範囲で、ラジカル発生剤、非イオン界面活性剤、フッ素系非イオン界面活性剤、シランカップリング剤、密着促進剤などの添加剤を添加してもよい。
ラジカル発生剤としては、例えば、t−ブチルパーオキシド、ペンチルパーオキシド、ヘキシルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。非イオン界面活性剤としては、例えば、オクチルポリエチレンオキシド、デシルポリエチレンオキシド、ドデシルポリエチレンオキシド、オクチルポリプロピレンオキシド、デシルポリプロピレンオキシド、ドデシルポリプロピレンオキシド等が挙げられる。フッ素系非イオン界面活性剤としては、例えば、パーフルオルオクチルポリエチレンオキシド、パーフルオルデシルポリエチレンオキシド、パーフルオルドデシルポリエチレンオキシド等が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、トリビニルエトキシシラン等が挙げられる。
これらの添加剤の添加量は、添加剤の用途または塗布液の固形分濃度によって適当な範囲が存在するが、一般的に、塗布液中の質量%で好ましくは0.001%〜10%、より好ましくは0.01%〜5%、特に好ましくは0.05%〜2%である。
本発明の膜形成用組成物は空孔形成剤を含むことが好ましい。空孔形成剤とは膜形成用組成物により得た膜中に空孔を形成する機能を有する物質である。例えば、空孔形成剤を含有する膜形成用組成物により形成された膜を加熱することにより、膜中に空孔形成剤による空孔を形成し、空孔を含有する膜を得ることができる。
空孔形成剤としては、特に限定されないが、加熱によって分解する熱分解性ポリマーを使用することができる。空孔形成剤としてのポリマーは、膜を構成するポリマーの熱分解温度より低い温度において熱分解するものが好ましい。
空孔形成剤として使用できる熱分解性ポリマーとしては、例えば、ポリビニル芳香族化合物(ポリスチレン、ポリビニルピリジン、ハロゲン化ポリビニル芳香族化合物など)、ポリアクリロニトリル、ポリアルキレンオキシド(ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドなど)、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクタム、ポリウレタン、ポリメタクリレート(ポリメチルメタクリレートなど)またはポリメタクリル酸、ポリアクリレート(ポリメチルアクリレートなど)およびポリアクリル酸、ポリジエン(ポリブタジエンおよびポリイソプレンなど)、ポリビニルクロライド、ポリアセタール、およびアミンキャップドアルキレンオキシド(HuntsmanCorp.からJeffamineTMポリエーテルアミンとして商業的に入手できる)などが挙げられる。
空孔形成剤としてのポリマーは、ホモポリマー、ブロックコポリマー、ランダムコポリマーなどいずれであってもよい。また、これらの混合物であっても良い。また、線状、分岐状、超分岐状、樹枝状または星様状であってもよい。
特にポリスチレンは、空孔形成剤として好適に使用できる。例えば、アニオン性重合ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、未置換および置換ポリスチレン(たとえば、ポリ(α−メチルスチレン))が挙げられ、未置換ポリスチレンがより好ましい。
空孔形成剤は、膜を形成する化合物に結合していることも好ましい。このように設計することで大きさが均一な空孔を形成することが可能となり、機械強度の低下を低減できる。
空孔形成剤は、また、絶縁膜に生成する空孔の大きさに対応した大きさの粒状物質であってもよい。このような物質としては、好ましくは0.5〜50nm、より好ましくは0.5〜20nmの平均直径を有する物質である。かかる物質の材質等に制限はなく、例としては、デンドリマーのような超分岐状ポリマー系およびラテックス粒子、特に架橋ポリスチレン含有ラテックスが挙げられる。
これらの物質の例としては、Dendritech,Inc.を通じて入手でき、また、Polymer J.(東京),Vol.17,117(1985)にTomalia等により記載されているポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、DSMCor
porationから入手できるポリプロピレンイミンポリアミン(DAB−Am)デンドリマー、フレチェット型ポリエーテルデンドリマー(J.Am.Chem.Soc.,Vol.112,7638(1990)、Vol.113,4252(1991)にFrechet等により記載されている)、パーセク型液晶モノデンドロン、デンドロン化ポリマーおよびそれらの自己集合高分子(Nature,Vol.391,161(1998)、J.Am.Chem.Soc.,Vol.119,1539(1997)にPercec等により記載されている)、ボルトロンHシリーズ樹枝状ポリエステル(PerstorpABから商業的に入手できる)が挙げられる。
空孔形成剤としてのポリマーの好適な質量平均分子量は好ましくは2000〜100000、より好ましくは3000〜50000、特に好ましくは5000〜20000である。
膜形成用組成物中の空孔形成剤の添加量は、全固形分に対して、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%、特に好ましくは20〜30質量%である。
本発明の膜形成用組成物は密着促進剤を含むことが好ましい。
本発明に用いられる密着促進剤の代表的な例は、シラン、好ましくはアルコキシ・シラン(例えばトリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシラン、アリルトリメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン)等のオルガノシラン、アセトキシシラン(例えばビニルトリアセトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、およびこれらの加水分解物あるいは脱水縮合物、ヘキサメチルジシラザン[(CH33−Si−NH−Si(CH33]、または、アミノシラン・カプラー、例えばγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、またはキレート(例えば、酸化アルミニウムを形成する点から、アルミニウムモノエチルアセトアセテートジイソプロピレート[((イソC37O)2Al(OCOC25CHCOCH3))]、アルミニウム・アルコキシド)などを挙げることができる。これらの材料を混合して用いてもよい。また、接着促進剤として市販されているものを用いてもよい。
膜形成用組成物中の密着促進剤の添加量は、全固形分に対して、一般的には0.05質量%〜5質量%、好ましくは0.1〜2質量%である。
絶縁膜は本発明の塗布液をスピンコーティング法、ローラーコーティング法、ディップコーティング法、スキャン法等の任意の方法により基板に塗布した後、溶剤を加熱処理で除去することにより形成することができる。加熱処理の方法は、特に限定されないが、一般的に使用されているホットプレート加熱、ファーネス炉を使用した方法、RTP(Rapid Thermal Processor)等によるキセノンランプを使用した光照射加熱等を適用することができる。
本発明の重合体は基盤上に塗布した後に加熱処理することによって硬化させることが特に好ましい。例えば重合体中に残存する三重結合を後加熱時に重合させることによって、不溶不融化することができる。この後加熱処理の条件は、好ましくは100〜450℃、より好ましくは200〜420℃、特に好ましくは350℃〜400℃で、好ましくは1分〜2時間、より好ましくは10分〜1.5時間、特に好ましくは30分〜1時間の範囲である。
後加熱処理は数回に分けて行っても良い。また、この後加熱は酸素による熱酸化を防ぐために窒素雰囲気下で行うことが特に好ましい。
本発明の塗布液を使用して得られる膜は、多様の目的に使用することが出来る。例えば半導体装置、マルチチップモジュール多層配線板等の電子部品における絶縁皮膜として好適であり、半導体用層間絶縁膜、表面保護膜、バッファーコート膜の他、LSIにおけるパッシベーション膜、α線遮断膜、フレキソ印刷版のカバーレイフィルム、オーバーコート膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜等として使用することが出来る。
さらに、別の用途として本発明の膜に電子ドナーまたはアクセプターをドープすることによって導電性を付与し、導電性膜として使用することも出来る。
以下の実施例は本発明を説明するものであり、その範囲を限定するものではない。
<実施例1>
米国特許4,918,158号明細書に記載の方法に従って、1,3−ジエチニルアダマンタンを合成した。次に、1,3−ジエチニルアダマンタン10gと1,3,5−トリイソプロピルベンゼン50mlおよびPd(PPh3)4 150mgを窒素気流下で内温200℃で10時間攪拌した。反応液を室温に下げて、不溶物をろ過した後、ろ液にイソプロピルアルコール300mlを添加した。析出した固体を濾過して、イソプロピルアルコールで洗浄した。質量平均分子量200000の重合体(A)を3.0g得た。
重合体(A)のシクロヘキサノンへの溶解度は室温で15質量%以上であった。
重合体(A)1.0gをシクロヘキサノン7.3gに室温で完全に溶解させて塗布液を調製した。この溶液を0.2ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で250℃で60秒間加熱した後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分焼成した結果、膜厚0.5ミクロンのブツのない均一な膜が得られた。この膜をシクロヘキサノンに室温で5時間浸漬したが膜圧は全く減少しなかった。膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ製水銀プローバおよび横川ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出したところ、2.49であった。また、MTS社ナノインデンターSA2を使用してヤング率を測定したところ、6.0GPaであった。
<実施例2>
塗布溶剤をアニソールに変更した他は実施例1と全く同じようにして、塗膜を作成した。誘電率は2.49、ヤング率は5.9GPaであった。
<実施例3>
合成した1,3,5−トリエチニルアダマンタン10gと1,3,5−トリイソプロピルベンゼン50mlおよびPd(PPh3)4 150mgを窒素気流下で内温200℃で10時間攪拌した。反応液を室温に下げて、不溶物をろ過した後、ろ液にイソプロピルアルコール300mlを添加した。析出した固体を濾過して、イソプロピルアルコールで洗浄した。質量平均分子量100000の重合体(B)を3.0g得た。
重合体(B)のシクロヘキサノンへの溶解度は室温で15質量%以上であった。
重合体(B)1.0gをシクロヘキサノン7.3gに室温で完全に溶解させて塗布液を調製した。この溶液を0.2ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で200℃で60秒間加熱した後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分焼成した結果、膜厚0.5ミクロンのブツのない均一な膜が得られた。この膜をシクロヘキサノンに室温で5時間浸漬したが膜圧は全く減少しなかった。膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ製水銀プローバおよび横川ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出したところ、2.50であった。また、MTS社ナノインデンターSA2を使用してヤング率を測定したところ、6.0GPaであった。
<実施例4>
合成した1−エチニルアダマンタン5gと1,3−ジエチニルアダマンタン5gと1,3,5−トリイソプロピルベンゼン50mlおよびPd(PPh3)4 150mgを窒素気流下で内温200℃で15時間攪拌した。反応液を室温に下げて、不溶物をろ過した後、ろ液にイソプロピルアルコール300mlを添加した。析出した固体を濾過して、イソプロピルアルコールで洗浄した。質量平均分子量100000の重合体(C)を3.0g得た。
重合体(C)のシクロヘキサノンへの溶解度は室温で15質量%以上であった。
重合体(C)1.0gをシクロヘキサノン7.3gに室温で完全に溶解させて塗布液を調製した。この溶液を0.2ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で150℃で60秒間加熱した後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分焼成した結果、膜厚0.5ミクロンのブツのない均一な膜が得られた。この膜をシクロヘキサノンに室温で5時間浸漬したが膜圧は全く減少しなかった。膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ製水銀プローバおよび横川ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出したところ、2.48であった。また、MTS社ナノインデンターSA2を使用してヤング率を測定したところ、6.2GPaであった。
<実施例5>
実施例1と同じ方法で重合体(A)のシクロヘキサノン塗布液を8.3g作った。この液に空孔形成剤として質量平均分子量13700のポリスチレン0.2gを加えて完溶させた。この塗布液を用いて実施例1と同じ方法で塗膜を作成した。膜の比誘電率は、2.30であった。またヤング率は5.3GPaであった。CSMインスツルメンツ社製ナノスクラッチテスターを使用して密着力を測定したところ、2.5mNであった。
<実施例6>
実施例5と同じ方法で、空孔形成剤の入った塗布液を8.5g作成した。ビニルトリアセトキシシランに3倍モルの水を加えて、室温で10分間攪拌して加水分解と脱水縮合を行い、密着促進剤として部分縮合体を合成した。この縮合体10mgを塗布液に加え、慣用させた。こうして得られた塗布液を使用して実施例1と同じ方法で塗膜を作成した。比誘電率は2.3GPa、ヤング率は5.4GPaであった。CSMインスツルメンツ社製ナノスクラッチテスターを使用して密着力を測定したところ、6.1mNであった。
<比較例1>
1,3,5−トリエチニルアダマンタン1gをアニソール10gに溶解して、触媒を用いないで内温200℃で50時間攪拌した。反応液のGPCを測定したが、97%が原料の1,3,5−トリエチニルアダマンタンであった。
得られた化合物を実施例1と同様に塗膜を作成したところ、均一な絶縁膜を形成することは出来なかった。
<比較例2>
1,3−ジエチニルアダマンタン5gをトリイソプロピルベンゼン中で触媒を用いないで210℃で100時間反応させ、実施例1の方法に準じて後処理を行った結果、1.0gの重合体(D)を得た。重合体(D)1.0gをシクロヘキサノン7.3gに室温で完全に溶解させて塗布液を調製して実施例1と同じ方法で塗膜を作成した。膜の比誘電率を測定した結果、2.63であった。また、MTS社ナノインデンターSA2を使用してヤング率を測定したところ、4.0GPaであった。
比較例に比べて、本発明の塗布液は、比誘電率、ヤング率、密着性が優れていることが判る。

Claims (4)

  1. 式(I)で表される化合物を溶剤およびパラジウムを含む金属触媒の存在下で重合させて得られる質量平均分子量1000〜500000の重合体と、塗布溶剤とを含む組成物を用いて形成した電子デバイス用絶縁膜。
    Figure 0004659486
    式(I)中、
    Rはエチニル基を表わす。
    Xはハロゲン原子またはアルキル基を表す。
    mは1〜16の整数を表す。
    nは0〜15の整数を表す。
  2. 式(I)で表される化合物が窒素原子を有さないことを特徴とする請求項1に記載の電子デバイス用絶縁膜。
  3. 請求項1又は2に記載の絶縁膜を有する電子デバイス。
  4. 式(I)で表される化合物を溶剤およびパラジウムを含む金属触媒の存在下で重合させて質量平均分子量1000〜500000の重合体を得、
    得られた前記重合体と塗布溶剤とを含む組成物を用いて電子デバイス用絶縁膜を形成する電子デバイス用絶縁膜の製造方法。
    Figure 0004659486
    式(I)中、
    Rはエチニル基を表わす。
    Xはハロゲン原子またはアルキル基を表す。
    mは1〜16の整数を表す。
    nは0〜15の整数を表す。
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