JP4657766B2 - テニスラケット - Google Patents
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しかしながら、ラケットとボールとの二物体が衝突する観点からみると、エネルギー保存則により、ラケットが軽くなるとボールの反発係数が低下する。よって、ラケットの軽量化は反発性能の低下を招くこととなる。
また、スイング方向の慣性モーメントを大きくすれば、プレーヤーにはラケットが重く感じられ、操作性を悪化させる。
さらに、フレームに重錘等を取り付けて反発性を高めることも考えらえるが、重量増加を招き、操作性が悪化する。
そこで、操作性と反発性を両立させるために、ラケットフレームの重量配置の調整が重要な課題となってきている。
また、女性やシニア層の中でも競技思考の強いプレーヤーにおいては、面安定性が高くコントロール性能に優れたテニスラケットへの要請も強い。
しかしながら、前記ラケットフレーム5は、打球時に歪が大きいトップ部5dで、最大幅とすることで、軽量化を維持するためには肉厚が薄くなり、やはり強度不足の問題があり、改良の余地があった。
前記ガット張架部、スロート部およびヨークの中で、最大幅部を前記スロート部に設けると共に最小幅部を前記ガット張架部のトップ部に設け、前記スロート部の幅は17mm以上23mm以下、トップ部の幅は7mm以上10mm以下とし、
かつ、前記フレームの肉厚は1.0mm以上1.8mm以下とし、
さらに、グリップレザー、グロメットおよびストリングを挿通する複数の筒部とこれら複数の筒部を連結する帯部とからなるストリング保護材を取り付けた状態で測定して、グリップ部の中心軸周りのセンター方向の慣性モーメントIcを16000g・cm2以上18000g・cm2以下の範囲内に設定していると共に、グリップ部の先端を支点とする打球面外へのスイング方向の慣性モーメントIsを462000g・cm2以上467000g・cm2以下の範囲内に設定していることを特徴としているテニスラケットを提供している。
一方、通常プレー中に地面等と接触しやすく強度が要求されるガット張架部のトップ部で最小幅とし、肉厚を厚くすることにより、強度を向上させることができ、破損しにくいラケットとすることができる。なお、ガット張架部のトップ部とは打球面を時計面とみて12時の位置を挟んで−15°〜+15°の範囲を指す。
これにより、反発性能の向上、軽量化、従来と同様なバランス設計ができ、耐強度の全てにおいて優れたラケットとすることができる。
このセンター方向の慣性モーメントを16000g・cm2以上18000g・cm2以下の範囲内としているのは、16000g・cm2未満では面安定性が低く、18000g・cm2より大きくすると、面安定性は向上するが、スイング時に重たく感じられ、操作性が低下することに因る。このセンター方向の慣性モーメントは、さらに、上限は17500g・cm2以下が好ましい。
センター方向の慣性モーメントを前記範囲に設定するには、フレームの幅および厚みの設定を前記形状とするほか、フレームの積層構造の工夫や重量物の取り付けによって重量配置を工夫する、あるいはこれらを組み合わせるなどの方法がある。
これは、462000g・cm2未満では、打球時にボールに負けてしまい、反発力が低下し、467000g・cm2より大きくすると、操作性が低下することに因る。
このフレームの肉厚は、ラケットの重量バランスの観点と、打球時に地面と接触するトップ部の強度保持の観点から設定されるが、前記スロート部の最大幅部でのフレームの肉厚は最小厚さとし、前記トップ部の最小幅部でのフレームの肉厚を最大厚さとしている。
前記打球面を時計面とみてトップ部を12時とした場合において、3時〜5時の範囲および7時〜9時の範囲に当たる位置の前記ローフレームと前記ストリング保護材との間に粘弾性材を介在させていることが好ましい。
前記複素弾性率を前記0℃〜10℃の温度下で2.0E+7dyn/cm2以上1.0E+10dyn/cm2以下の範囲内としているのは、2.0E+7dyn/cm2未満では、ストリングの張力により弾性材が押し潰されてしまい、反発効果を発揮できなくなり、1.0E+10dyn/cm2より大きくすると、ストリングの変形が小さくなり、反発性が低下することに因り、さらに好ましくは、1.0E+8dyn/cm2以上5.0E+9dyn/cm2以下の範囲内である。
図1に示すように、ヘッド部12の外周面側にはガット溝17を形成し、ガット張架部Gにはストリングを挿通する複数のガット孔18を貫通させて設けている。
ヘッド部12の幅は、打球面Fを時計面とみた場合において、3時(9時)位置から0時位置に当たるトップ部19に向かって幅を漸減させ、トップ部19の幅Woを前記のように最小幅としている。このとき、スロート部13の幅Wsは17mm以上23mm以内の範囲内としている。
トップ部19の最小幅Woは7mm以上10mm以下の範囲内とし、かつ、スロート部の最大幅Wsのトップ部の最小幅Woに対する比(Ws/Wo)が1.3以上2.0以下の範囲内となるように設定している。
以下の表1に示すとおり、テニスラケットのフレームの幅および厚さの設定、センター方向およびスイング方向の慣性モーメント、粘弾性材の有無、粘弾性材の材質(種類)、粘弾性材の厚み、粘弾性材の複素弾性率を異ならせた実施例1〜4と比較例1〜3を作製し、テニスラケットの反発係数を測定し、強度に関するテストも行った。
なお、表1中の複素弾性率は、レオロジ製のDVE−V4を使用して、以下の条件下で測定した数値のうち温度5°で測定した数値を代表して示しているが、実施例1、3と比較例1〜3については、0℃〜10℃のいずれの温度下でも2.0E+7dyn/cm2以上1.0E+10dyn/cm2以下の範囲内となっていた。
試料:幅5mm×長さ30mm×厚み2mm
試料における変形部位の長さ:20mm(長さ30mmのうち両端5mmを挟持)
初期歪み:10%(2mm)
振幅:12μm
周波数:10Hz
モード:引張モード
詳細には、ラケットフレームはカーボン繊維を強化繊維とし、マトリクスをエポキシ樹脂とした繊維強化熱硬化性樹脂のプリプレグシート(CFプリプレグ(東レT300、700、800、M46J))を、66ナイロンからなる内圧チューブを被覆したマンドレル(φ14.5)上に積層し、鉛直状の積層体を成形した。プリプレグ角度は0°、22°、30°、45°、90°とし、積層した。マンドレルを抜き取って上記積層体を金型にセットした。金型を型締して、金型を150℃に昇温し、30分間の加熱を行うと同時に内圧チューブ内に9kgf/cm2の空気圧を付加し、加圧保持し、加熱加圧成形により作成した。
前記第二実施形態と同一構成とし、ラケットフレーム11の幅と厚さを、スロート部13で最大とし、トップ部19で最小とした。即ち、ラケットフレーム11のトップ部19の幅Woを10mm、3時位置の幅W3を15mm、4時位置の幅W4を15mm、スロート部13の幅Wsを17mmとし、トップ部19の厚さToを27mm、3時位置の厚さT3を27mm、4時位置の厚さT4を28mm、スロート部13の厚さTsを28mmとした。センター方向の慣性モーメントは17500g・cm2、スイング方向の慣性モーメントは467000g・cm2とした。また、3時位置から5時位置に当たる範囲Aと7時位置から9時位置に当たる範囲Bには、フレーム11とストリング保護材21との間に、スチレン−ブタジエンゴム100重量部と硫黄1.5重量部とカーボンブラック40重量部とを配合した加硫成形されたゴムよりなる粘弾性材31を介在させた。この粘弾性材31は、厚みを3mm、前記条件下で測定された複素弾性率を3.86E+08dyn/cm2とした。
粘弾性材を取り付けなかったが、ラケットフレーム11を構成する前記繊維強化樹脂シートの積層中に、前記範囲Aおよび範囲Bに集中的に鉛を介在させ、センター方向の慣性モーメントを17000g・cm2、スイング方向の慣性モーメントを462000g・cm2とした。その他は実施例1と同一構成とした。
粘弾性材31をポリアミドエストラマー(ATOCHEM社製の「PEBAX5533」)で成形し、厚みを0.8mm、前記条件下で測定された複素弾性率を2.72E+09dyn/cm2とした。即ち、粘弾性材の厚みを薄くし、硬度は大とした。また、センター方向の慣性モーメントを16300g・cm2、スイング方向の慣性モーメントを467000g・cm2とした。その他は実施例1と同一構成とした。
前記第一実施形態と同一構成としたが、粘弾性材を取り付けず、センター方向の慣性モーメントを15000g・cm2、スイング方向の慣性モーメントを484000g・cm2としたが、その他は実施例1と同一構成とした。
フレーム11の幅を、スロート部13からヘッド部12のトップ部19まで同一幅の15mmとし、センター方向の慣性モーメントを17000g・cm2、スイング方向の慣性モーメントを463000g・cm2とした。その他は実施例1と同一構成とした。
ラケットフレーム11の幅をトップ部19で最大幅とした。即ち、トップ部19の幅W0を17mm、3時位置の幅W3を15mm、4時位置の幅W4を15mm、スロート部13の幅Wsを15mmとし、センター方向の慣性モーメントを16000g・cm2、スイング方向の慣性モーメントを493000g・cm2とした。その他は実施例1と同一構成とした。
ラケットフレーム11の幅をスロート部13で最小幅とした。即ち、トップ部19の幅Woを15mm、3時位置の幅W3を15mm、4時位置の幅W4を15mm、スロート部13の幅Wsを13mmとし、センター方向の慣性モーメントを17000g・cm2、スイング方向の慣性モーメントを467000g・cm2とした。その他は実施例1と同一構成とした。
図6(A)に示すように、テニスラケット10を慣性モーメント測定器で、テニスラケット10のグリップ15を上端として吊り下げ、センター周期Tcを測定し、下記の数式により、センター方向の慣性モーメント(グリップ部の中心軸回りの慣性モーメント)を計算した。
図6(B)に示すように、テニスラケット10を慣性モーメント測定器で、テニスラケット10のグリップ15を上端として吊り下げ、スイング周期Tsを測定し、下記の数式により、スイング方向の慣性モーメント(グリップ端を支点とする打球面外へのスイング方向の慣性モーメント)を計算した。
センター方向:Ic[g・cm2]
Ic=254458×(Tc/π)2−8357
スイング方向:Is[g・cm2]
Is=M×g×h(Ts/2/π)2−Ic
重心回り:Ig[g・cm2]
Ig=Is−m(1+2.6)2
ここで、M=m+mc、h=(m×l−mc×lc)/m+2.6であり、m:ラケット重量、l:ラケットバランスポイント、mc:チャック重量、lc:チャックバランスポイントである。
反発係数は、図7に示すように、実施例および比較例のテニスラケット10に、ストリングを縦60ポンド、横55ポンドの張力で張架し、各テニスラケット10を垂直状態でフリーとなるようにグリップ部15を柔らかく固定し、その打球面にボール打出機から一定速度V1(30m/sec)でテニスボールを打球面に衝突させ、跳ね返ったボールの速度V2を測定した。反発係数は発射速度V1、反発速度V2の比(V2/V1)であり、反発係数が大きいほどボールの飛びが良いことを示している。
実施例および比較例のテニスラケット10の打球面Fに、時速50m/sのテニスボールを衝突させ、1000回の衝突にも破損しなかったものは○、500回〜1000回の衝突で破損したものは△、500回以下の衝突で破損したものは×を表1に記した。
一方、比較例1はトップ部の幅Woが大きいため、強度が低下し、スロート部の幅が小さいため反発性が低下した。
比較例2はトップの幅が大きいため、重量が増加し、操作性が悪くなった。
比較例3はスロート部の幅が小さいため、打球時に捻れが大きくなり、反発性が低下した。
また、実施例4は粘弾性材が配されていないため、他の実施例に比して反発性が低下し、センター方向の慣性モーメントが低下するため面的安定性が低下した。
11 ラケットフレーム
12 ヘッド部
13 スロート部
15 グリップ部
19 トップ部
21 ストリング保護材
31 粘弾性材
F 打球面
G ガット張架部
Claims (5)
- 繊維強化樹脂製のパイプからなるフレームにより打球面を囲むガット張架部とグリップ部とを二股状に分岐するスロート部で連続させ、かつ、スロート部の間にヨークを取り付けて形成したテニスラケットであって、
前記ガット張架部、スロート部およびヨークの中で、最大幅部を前記スロート部に設けると共に最小幅部を前記ガット張架部のトップ部に設け、前記スロート部の幅は17mm以上23mm以下、トップ部の幅は7mm以上10mm以下とし、
かつ、前記フレームの肉厚は1.0mm以上1.8mm以下とし、
さらに、グリップレザー、グロメットおよびストリングを挿通する複数の筒部とこれら複数の筒部を連結する帯部とからなるストリング保護材を取り付けた状態で測定して、グリップ部の中心軸周りのセンター方向の慣性モーメントIcを16000g・cm2以上18000g・cm2以下の範囲内に設定していると共に、グリップ部の先端を支点とする打球面外へのスイング方向の慣性モーメントIsを462000g・cm2以上467000g・cm2以下の範囲内に設定していることを特徴としているテニスラケット。 - 前記スロート部の最大幅/トップ部の最小幅を1.3〜2.0の範囲としている請求項1に記載のテニスラケット。
- 前記ガット張架部およびスロート部の幅より、該幅と直交方向の厚さを大とし、該厚さは20mm以上40mm以下とし、かつ、
前記スロート部の最大幅部でのフレームの肉厚は最小厚さとし、前記トップ部の最小幅部でのフレームの肉厚を最大厚さとしている請求項1または請求項2に記載のテニスラケット。 - 前記ガット張架部に前記ストリング保護材を取り付け、かつ、
前記打球面を時計面とみてトップ部を12時とした場合において、3時〜5時の範囲および7時〜9時の範囲に当たる位置の前記フレームと前記ストリング保護材との間に粘弾性材を介在させている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のテニスラケット。 - 前記粘弾性材は、厚みが1mm以上5mm以下の範囲内であり、周波数10Hzで測定された複素弾性率が0℃〜10℃の温度下で2.0E+7dyn/cm2以上1.0E+10dyn/cm2以下の範囲内である請求項4に記載のテニスラケット。
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