送信側の接地電位GNDLの供給端子と、受信側の接地電位GNDHの供給端子の間に、コモンモード電圧VCMが印加される場合がある。このとき、コモンモード電圧VCMの電圧変化率が(dv/dt)であるとする。すると、寄生容量Cc1、Cc2には、変位電流i(=容量C×dv/dt)が流れる。そして例えば、受信側の接地電位GNDHの電位に対して、送信側の接地電位GNDLの電位が低い場合に、トランジスタN1がオンしている時は、経路i1に変位電流iが流れる。経路i1は、受信コイルL2の一端から、寄生容量Cc1、直列抵抗成分Rs1、トランジスタN1を介してグランド接地電位GNDLに至る経路である。そして経路i1は、トランスTRにとって非対称な電流経路である。一方、受信側の接地電位GNDHの電位に対して、送信側の接地電位GNDLの電位が低い場合に、トランジスタN2がオンしている時は、経路i2に変位電流iが流れる。経路i2は、受信コイルL2の他端から、寄生容量Cc2、直列抵抗成分Rs2、トランジスタN2を介して接地電位GNDLに至る経路である。そして経路i2も、トランスTRにとって非対称な電流経路である。この非対称な経路を流れる変位電流iによって、受信コイルL2側に信号成分とは無関係のノイズ電圧(=変位電流i×抵抗R)が発生する。すると、信号電圧にノイズ電圧が重畳してしまうため、受信回路130において、信号を誤って検出してしまう場合がある。
本願に開示される信号伝達装置は、送信コイルと受信コイルを備え、送信コイルと受信コイルとが電気的に絶縁されており、送信コイルから受信コイルへ信号を伝達する装置である。信号伝達装置は、送信コイルの第1端部と高位基準電位の供給端子との間に接続される上側第1スイッチと、送信コイルの第1端部と低位基準電位の供給端子との間に接続される下側第1スイッチを備える。信号伝達装置は、送信コイルの第2端部と高位基準電位の供給端子との間に接続される上側第2スイッチと、送信コイルの第2端部と低位基準電位の供給端子との間に接続される下側第2スイッチを備える。信号伝達装置は、さらに、上側第1スイッチ、下側第1スイッチ、上側第2スイッチ、下側第2スイッチの各々を制御するスイッチ制御部を備える。スイッチ制御部は、上側第1スイッチと下側第2スイッチをオンにし、上側第2スイッチと下側第1スイッチをオフにすることで、送信コイルに第1方向にコイル電流を発生させ、その後上側第1スイッチをオフにすることに応じて下側第1スイッチをオンにする第1制御を行う。また、スイッチ制御部は、上側第1スイッチと下側第2スイッチをオフにし、上側第2スイッチと下側第1スイッチをオンにすることで、送信コイルに第2方向にコイル電流を発生させ、その後上側第2スイッチをオフにすることに応じて下側第2スイッチをオンにする第2制御を行なう
この信号伝達装置では、送信コイルと受信コイルとが電気的に絶縁されており、送信コイルの低位基準電位と受信コイルの低位基準電位は分離されている。送信コイルと受信コイルによって、トランスが形成される。また、送信コイルと受信コイルの間には、寄生容量が存在する。そして、送信コイルの低位基準電位の供給端子と受信コイルの低位基準電位の供給端子との間にコモンモード電圧が印加されると、寄生容量に変位電流が流れる。例えば、受信コイルの低位基準電位に対して送信コイルの低位基準電位が低い状態でコモンモード電圧が印加されると、変位電流が、受信コイルから寄生容量および送信コイルを介して送信回路の低位基準電位へ流れる。受信コイルの両端には、直列抵抗成分が存在するため、変位電流が受信コイルに流れると、直列抵抗成分によってノイズ電圧が発生する。
本願の信号伝達装置では、第1制御時に上側第1スイッチがオフにされることに応じて、下側第1スイッチがオンされる。また、第2制御時に上側第2スイッチがオフにされることに応じて、下側第2スイッチがオンされる。すると、下側第1スイッチおよび下側第2スイッチの両方がオンとされている期間が存在する。この期間では、送信コイルの第1端部および第2端部の両方の電位が低位基準電位とされ、低インピーダンス状態とされる。そして、第1端部および第2端部の両方が低インピーダンス状態とされているため、コモンモード電圧による変位電流は、第1の電流経路(受信コイルの一端から、寄生容量、送信コイルの第1端部、下側第1スイッチを介して送信コイルの低位基準電位に至る経路)と、第2の電流経路(受信コイルの他端から、寄生容量、送信コイルの第2端部、下側第2スイッチを介して送信コイルの低位基準電位に至る経路)との双方の経路で流れる。よって、受信コイルの両端に、互いに逆向きの変位電流が流れるため、変位電流の影響を相殺することができる。これにより、受信コイル側にノイズ電圧が発生することを抑制できるため、受信回路で信号を誤って検出してしまう事態を防ぐことが可能となる。
本願に開示される信号伝達装置では、スイッチ制御部は、入力される信号の立ち上がりエッジを検出して第1パルス信号を出力する第1パルス出力部と、入力される信号の立ち下がりエッジを検出して第2パルス信号を出力する第2パルス出力部と、第1パルス信号を反転させた反転第1パルス信号を生成する第1反転部と、第2パルス信号を反転させた反転第2パルス信号を生成する第2反転部とをさらに備えることができる。また、第1パルス信号が上側第1スイッチに供給され、反転第1パルス信号が下側第1スイッチに供給されていると共に、第2パルス信号が上側第2スイッチに供給され、反転第2パルス信号が下側第2スイッチに供給されているとしてもよい。
上側第1スイッチに第1パルス信号が供給され、下側第1スイッチに反転第1パルス信号が供給される。第1パルス信号と反転第1パルス信号とは相補な信号である。よって、第1制御時において、上側第1スイッチがオフにされることに応じて、下側第1スイッチがオンされる制御を行なうことができる。同様に、上側第2スイッチに第2パルス信号が供給され、下側第2スイッチに反転第2パルス信号が供給される。第2パルス信号と反転第2パルス信号とは相補な信号である。よって、第2制御時において、上側第2スイッチがオフにされることに応じて、下側第2スイッチがオンされる制御を行なうことができる。これにより、下側第1スイッチおよび下側第2スイッチの両方がオンとされている期間が存在するようにスイッチ制御を行なうことが可能となる。
本願に開示される信号伝達装置では、スイッチ制御部は、第1パルス信号、第2パルス信号、反転第1パルス信号、反転第2パルス信号の立ち上がりエッジを所定時間遅延させる遅延回路をさらに備えることができる。また、遅延回路から出力された第1パルス信号および第2パルス信号が上側第1スイッチおよび上側第2スイッチに供給され、遅延回路から出力された反転第1パルス信号および反転第2パルス信号が下側第1スイッチおよび下側第2スイッチに供給されるとしてもよい。
遅延回路によって反転第1パルス信号の立ち上がりエッジが遅延されると、第1パルス信号の立下りエッジと反転第1パルス信号の立ち上がりエッジの間に、第1パルス信号および反転第1パルス信号が共にローレベルとされているデッドタイム期間が発生する。デッドタイム期間では、上側第1スイッチおよび下側第1スイッチの両方がオフとされるため、上側第1スイッチから下側第1スイッチへ貫通電流が流れることを防止することができる。また同様にして、遅延回路によって、第2パルス信号の立下りエッジと反転第2パルス信号の立ち上がりエッジの間にデッドタイム期間を発生させることができる。よって、上側第2スイッチから下側第2スイッチへ貫通電流が流れることを防止することができる。
本願に開示される信号伝達装置は、下側第1スイッチと並列に接続される下側第1電流経路と、下側第2スイッチと並列に接続される下側第2電流経路とをさらに備えることができる。また、下側第1電流経路のインピーダンスは下側第1スイッチのオン時のインピーダンスに比して高くされており、下側第2電流経路のインピーダンスは下側第2スイッチのオン時のインピーダンスに比して高くされているとしてもよい。
下側第1電流経路は、送信コイルの第1端部を常に低位基準電位の供給端子に接続する。また、下側第2電流経路は、送信コイルの第2端部を常に低位基準電位の供給端子に接続する。よって、下側第1スイッチや下側第2スイッチがオフとされる期間においても、送信コイルの第1端部および第2端部の両方を、常に低インピーダンス状態に維持することができる。これにより、信号伝達装置を動作させている全期間に渡って、受信コイル側にコモンモード電圧によるノイズ電圧が発生することを抑制できる。
また、下側第1電流経路のインピーダンスは下側第1スイッチのオン時のインピーダンスに比して高くされており、下側第2電流経路のインピーダンスは下側第2スイッチのオン時のインピーダンスに比して高くされている。よって、上側第1スイッチから下側第1電流経路に流れる貫通電流や、上側第2スイッチから下側第2電流経路に流れる貫通電流の値を、十分に小さくすることができる。
本願に開示される信号伝達装置では、下側第1スイッチ、下側第2スイッチ、下側第1電流経路、下側第2電流経路のそれぞれはNMOSトランジスタを備えているとしてもよい。下側第1電流経路のNMOSトランジスタのサイズは下側第1スイッチのNMOSトランジスタのサイズに比して小さくされていてもよい。下側第2電流経路のNMOSトランジスタのサイズは下側第2スイッチのNMOSトランジスタのサイズに比して小さくされていてもよい。また、スイッチ制御部は、下側第1電流経路および下側第2電流経路のNMOSトランジスタを常時オン状態に制御するとしてもよい。
トランジスタにより下側第1電流経路および下側第2電流経路を形成することができる。よって、別途ハイインピーダンスの電流経路を作成する必要がないため、回路設計や製造工程を簡略化することができる。また、下側第1電流経路のNMOSトランジスタのオン時のインピーダンスは、下側第1スイッチのNMOSトランジスタのオン時のインピーダンスに比して高くされている。また、下側第2電流経路のNMOSトランジスタのオン時のインピーダンスは、下側第2スイッチのNMOSトランジスタのオン時のインピーダンスに比して高くされている。よって、上側第1スイッチから下側第1電流経路に流れる貫通電流や、上側第2スイッチから下側第2電流経路に流れる貫通電流の値を、十分に小さくすることができる。
本願に開示される信号伝達装置は、下側第1スイッチ、下側第2スイッチ、下側第1電流経路、下側第2電流経路のそれぞれはNMOSトランジスタを備えているとしてもよい。下側第1電流経路は、NMOSトランジスタのドレイン端子に接続される第1抵抗をさらに備えていてもよい。下側第2電流経路は、NMOSトランジスタのドレイン端子に接続される第2抵抗をさらに備えていてもよい。また、スイッチ制御部は、下側第1電流経路および下側第2電流経路のNMOSトランジスタを常時オン状態に制御するとしてもよい。
下側第1電流経路および下側第2電流経路のNMOSトランジスタのドレイン端子に抵抗を接続することで、これらのトランジスタのオン時のインピーダンスを高くすることができる。よって、上側第1スイッチから下側第1電流経路に流れる貫通電流や、上側第2スイッチから下側第2電流経路に流れる貫通電流の値を、十分に小さくすることができる。
本願に開示される信号伝達装置は、上側第1スイッチと並列に接続されている並列第1スイッチと、上側第2スイッチと並列に接続されている並列第2スイッチとをさらに備えることができる。スイッチ制御部は、第1制御において、上側第1スイッチと並列第1スイッチを同時にオンにし、その後上側第1スイッチと並列第1スイッチを異なるタイミングでオフにする制御を行ってもよい。また、スイッチ制御部は、第2制御において、上側第2スイッチと並列第2スイッチを同時にオンにし、その後上側第2スイッチと並列第2スイッチを異なるタイミングでオフにする制御を行ってもよい。
受信コイル電圧は、送信コイルに流れる電流の時間変化率(di/dt)に比例する。そして、第1制御では、上側第1スイッチおよび並列第1スイッチを、オン時には同時にオンし、オフ時には異なるタイミングでオフするように制御する。また同様に、第2制御では、上側第2スイッチおよび並列第2スイッチを、オン時には同時にオンし、オフ時には異なるタイミングでオフするように制御する。すると、送信コイルに流れる電流の時間変化率を、オン時の増加率に対して、オフ時の減少率が小さくなるようにコントロールすることができる。これにより、スイッチのオン時に対応して受信コイルに発生するパルス電圧の振幅値を、スイッチのオフ時に対応して受信コイルに発生するパルス電圧の振幅値よりも大きくすることができる。よって、受信コイルにおいて、スイッチのオン時を検出しやすくすることができる。
また、送信コイルに流れる電流の時間変化率を、スイッチを緩やかにオフすることでコントロールする場合には、スイッチのオン/オフ電圧の中間電位を用いる必要がある。中間電位はスイッチが不安定な状態であるため、ノイズが発生し、信号が誤って伝達されてしまう場合がある。一方、本願の信号伝達装置は、スイッチを緩やかにオフするという制御を行なう必要がないため、スイッチのオン/オフ電圧の中間電位を用いる必要がない。これにより、送信コイルに流れる電流の時間変化率の制御を、スイッチが安定な状態で実現できるため、ノイズの発生を抑制することができる。
本願に開示される信号伝達装置では、上側第1スイッチ、並列第1スイッチ、上側第2スイッチ、並列第2スイッチのそれぞれは、PMOSトランジスタを備えていてもよい。並列第1スイッチのPMOSトランジスタのサイズは、上側第1スイッチのPMOSトランジスタのサイズに比して小さくされていてもよい。並列第2スイッチのPMOSトランジスタのサイズは、上側第2スイッチのPMOSトランジスタのサイズに比して小さくされていてもよい。また、スイッチ制御部は、第1制御において、並列第1スイッチをオフにした後に上側第1スイッチをオフにする制御を行うとしてもよい。また、第2制御において、並列第2スイッチをオフにした後に上側第2スイッチをオフにする制御を行うとしてもよい。
上側第1スイッチのトランジスタのサイズは、並列第1スイッチのトランジスタのサイズよりも大きくされている。そして、並列第1スイッチが先にオフされ、上側第1スイッチが後にオフされる。同様に、上側第2スイッチのトランジスタのサイズは、並列第2スイッチのトランジスタのサイズよりも大きくされている。そして、並列第2スイッチが先にオフされ、上側第2スイッチが後にオフされる。これにより、送信コイルに流れる電流の時間変化率を、オン時の増加率に対して、オフ時の減少率が小さくなるようにコントロールすることができる。
本願に開示される信号伝達装置では、受信コイルの巻数が送信コイルの巻数よりも大きくされていてもよい。
トランスを小型化すると、結合係数の劣化に伴い信号成分も劣化するため、信号伝達が困難となる。そこで本願の信号伝達装置では、受信コイルの巻数を増やすことにより、受信コイルのインダクタンスを増加させ、信号成分を増加させることができる。よって、トランスの小型化が可能となり、信号伝達装置の低コスト化を図ることが可能となる。なお、受信コイルの巻数を増加させると、直列抵抗成分も増加するため、ノイズ電圧も増加する。しかし、本願の信号伝達装置では、ノイズ電圧の発生自体を抑制できるため、受信コイルの巻数を増加することが可能となる。
本願によれば、送信回路に入力された信号を、その送信回路と電気的に絶縁されている受信回路に伝達する信号伝達装置において、コモンモード電圧に起因するノイズ電圧の発生を抑制することが可能となる。
以下に実施例の主要な特徴を列記する。
(第1形態)スイッチ制御部によって、上側第1スイッチと下側第2スイッチをオンにし、上側第2スイッチと下側第1スイッチをオフにすることで、送信コイルに第1方向にコイル電流を発生させ、その後下側第2スイッチをオフにすることに応じて上側第2スイッチをオンにする制御を行っても良い。また、上側第1スイッチと下側第2スイッチをオフにし、上側第2スイッチと下側第1スイッチをオンにすることで、送信コイルに第2方向にコイル電流を発生させ、その後下側第1スイッチをオフにすることに応じて上側第1スイッチをオンにする制御を行っても良い。これによっても、送信コイルの両端電位を低インピーダンスにするという目的は達成できる。
本願の実施例1について図面を参照して説明する。図1に、モータ駆動システム50を示す。モータ駆動システム50は、低圧系回路60と高圧系回路70を備える。低圧系回路60と高圧系回路70の間は絶縁されている。低圧系回路60は、低圧バッテリ61、マイコン62を備える。マイコン62は、制御信号CSを出力する。制御信号CSは、スイッチング回路72のスイッチ動作を制御するための信号である。
高圧系回路70は、制御回路71、スイッチング回路72、モータ73、高圧バッテリ74を備える。制御回路71は、信号伝達回路1と駆動回路75を備える。信号伝達回路1は、絶縁信号デバイスを備えた回路である。信号伝達回路1は、絶縁を保った状態で、マイコン62から出力された制御信号CSを駆動回路75に伝達する。また、絶縁信号デバイスとして、オンチップ・トランス等の小型デバイスが用いられることで、制御回路71は一体のICとして形成されている。よって、小型化・低コスト化が図られている。駆動回路75は、制御信号CSに応じて、スイッチング回路72を駆動する。これにより、モータ73の回転が制御される。
図2に、信号伝達回路1の詳細回路図を示す。信号伝達回路1は、入力端子IN、送信回路10、トランスTR、受信回路30、出力端子OUTを備える。送信回路10と受信回路30とは、トランスTRによって絶縁されている。また、送信回路10の接地電位GNDLと、トランスTRの接地電位GNDHとは、分離されている。入力端子INには入力電圧VINが入力され、出力端子OUTからは出力電圧VOUTが出力される。
送信回路10は、スイッチ制御回路20、インバータ15および16、バッファ17および18、Hブリッジ回路19を備える。スイッチ制御回路20を説明する。スイッチ制御回路20は、パルス発生器11および12、インバータ13、遅延制御回路14を備える。パルス発生器11には入力電圧VINが入力され、パルス信号PS1が出力される。パルス発生器12にはインバータ13で反転された入力電圧VINが入力され、パルス信号PS2が出力される。
遅延制御回路14は、立上り遅延回路21ないし24、インバータ25および26を備える。立上り遅延回路21にはパルス信号PS2が入力され、ゲート制御信号SP2が出力される。立上り遅延回路22にはパルス信号PS1が入力され、ゲート制御信号SP1が出力される。インバータ25にはパルス信号PS1が入力され、反転パルス信号PS1Bが出力される。立上り遅延回路23には反転パルス信号PS1Bが入力され、ゲート制御信号SN1が出力される。インバータ26にはパルス信号PS2が入力され、反転パルス信号PS2Bが出力される。立上り遅延回路24には反転パルス信号PS2Bが入力され、ゲート制御信号SN2が出力される。
図3に、立上り遅延回路21のブロック図を示す。立上り遅延回路21は、インバータ41、キャパシタ42、シュミットトリガインバータ43を備える。インバータ41は、PMOSトランジスタであるトランジスタP41と、NMOSトランジスタであるトランジスタN41を備える。トランジスタP41のゲート端子とトランジスタN41のゲート端子は共通接続され、入力端子とされる。トランジスタP41のソース端子には電源電位VDDLが入力される。トランジスタN41のソース端子には接地電位GNDLが入力される。トランジスタP41のドレイン端子とトランジスタN41のドレイン端子は共通接続され、出力端子とされる。また、トランジスタP41のサイズは、トランジスタN41のサイズよりも大きくされている。よって、トランジスタP41のオン時のインピーダンスは、トランジスタN41のオン時のインピーダンスに比して低くされている。
インバータ41の入力端子には、パルス信号PS2が入力される。キャパシタ42の第1端には、インバータ41の出力端子とシュミットトリガインバータ43の入力端子が接続される。キャパシタ42の第2端には、電源電位VDDLが入力される。シュミットトリガインバータ43からは、ゲート制御信号SP2が出力される。
図4に、立上り遅延回路21の動作波形図を示す。時刻t41において、パルス信号PS2がローレベルからハイレベルへ遷移すると、インバータ41の出力はハイレベルからローレベルへ遷移する。すると、キャパシタ42、トランジスタN41、接地電位GNDLの電流経路によってキャパシタ42が放電される。そして、キャパシタ42の出力電圧がシュミットトリガインバータ43の閾値電圧を下回ると、時刻t42において、ゲート制御信号SP2がローレベルからハイレベルへ遷移する。
同様に、時刻t43において、パルス信号PS2がハイレベルからローレベルへ遷移すると、インバータ41の出力はローレベルからハイレベルへ遷移する。すると、電源電位VDDL、トランジスタP41、キャパシタ42の電流経路によってキャパシタ42が充電される。そして、キャパシタ42の出力電圧がシュミットトリガインバータ43の閾値電圧を上回ると、時刻t43において、ゲート制御信号SP2がハイレベルからローレベルへ遷移する。
そして、トランジスタP41のオン時のインピーダンスは、トランジスタN41のオン時のインピーダンスに比して低くされている。よって、キャパシタ42の充電時間に比して、放電時間を長くすることができる。これにより、立上り遅延回路21は、パルス信号PS2の立上りエッジのみを遅延時間DT1分だけ遅延させて出力し、立下りエッジは遅延させずに出力するという動作を行うことができる。なお、遅延時間DT1の長さは、トランジスタN41の抵抗値とキャパシタ42の容量値を調整することによって、任意の値に設定することができる。なお、立上り遅延回路22ないし24の構成も、立上り遅延回路21と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
Hブリッジ回路19(図2)は、トランジスタP1、P2、N1、N2を備える。トランジスタP1およびP2はPMOSトランジスタであり、トランジスタN1およびN2はNMOSトランジスタである。トランジスタP1のドレイン端子は、トランスTRの第1入力端子T11に接続される。トランジスタP1のソース端子には、電源電位VDDLが入力される。トランジスタP1のゲート端子には、インバータ16で反転されたゲート制御信号SP1が入力される。トランジスタP1は、ゲート制御信号SP1がハイレベルのときにオン状態となり、ローレベルのときにオフ状態となる。トランジスタN1のドレイン端子は、トランスTRの第1入力端子T11に接続される。トランジスタN1のソース端子には、接地電位GNDLが入力される。トランジスタN1のゲート端子には、バッファ17を介してゲート制御信号SN1が入力される。トランジスタN1は、ゲート制御信号SN1がハイレベルのときにオン状態となり、ローレベルのときにオフ状態となる。
トランジスタP2のドレイン端子は、トランスTRの第2入力端子T12に接続される。トランジスタP2のソース端子には、電源電位VDDLが入力される。トランジスタP2のゲート端子には、インバータ15で反転されたゲート制御信号SP2が入力される。トランジスタP2は、ゲート制御信号SP2がハイレベルのときにオン状態となり、ローレベルのときにオフ状態となる。トランジスタN2のドレイン端子は、トランスTRの第2入力端子T12に接続される。トランジスタN2のソース端子には、接地電位GNDLが入力される。トランジスタN2のゲート端子には、バッファ18を介してゲート制御信号SN2が入力される。トランジスタN2は、ゲート制御信号SN2がハイレベルのときにオン状態となり、ローレベルのときにオフ状態となる。また、トランジスタP1のドレイン端子とトランジスタN1のドレイン端子は、ノードND1で接続される。同様に、トランジスタP2のドレイン端子とトランジスタN2のドレイン端子は、ノードND2で接続される。
トランスTRについて説明する。図2のトランスTRは等価回路である。トランスTRは、送信コイルL1と受信コイルL2を備えている。送信コイルL1と受信コイルL2とは、電気的に絶縁されている。また、受信コイルL2の巻数が、送信コイルL1の巻数よりも大きくされている。トランスTRの第1入力端子T11にはノードND1が接続され、第2入力端子T12にはノードND2が接続される。また、トランスTRの第1出力端子T21には、受信回路30が接続される。また、第2出力端子T22には、接地電位GNDHが供給される。また、送信コイルL1に流れる電流をコイル電流I1と定義し、受信コイルL2に流れる電流をコイル電流I2と定義する。
送信コイルL1の第1端部E11と第1入力端子T11との接続経路には直列抵抗成分Rs1が存在する。第2端部E12と第2入力端子T12との接続経路には直列抵抗成分Rs2が存在する。同様に、受信コイルL2の第1端部E21と第1出力端子T21との接続経路には直列抵抗成分Rs3が存在する。第2端部E22と第2出力端子T22との接続経路には直列抵抗成分Rs4が存在する。また、送信コイルL1の第1端部E11と受信コイルL2の第1端部E21との間に寄生容量Cc1が存在する。送信コイルL1の第2端部E12と受信コイルL2の第2端部E22との間に寄生容量Cc2が存在する。また、送信コイルL1の配線間に分布容量Cs1が存在し、受信コイルL2の配線間に分布容量Cs2が存在する。ここで、寄生容量Cc1、Cc2の各々の容量値を、容量Cと定義する。また、直列抵抗成分Rs3、Rs4の各々の抵抗値を、抵抗Rと定義する。
図5に、受信回路30を示す。受信回路30は、ローパスフィルタ31、ハイパスフィルタ32、コンパレータcmp1およびcmp2、信号処理回路33、RSフリップフロップ34を備える。ローパスフィルタ31の入力端子には、トランスTRの第1出力端子T21が接続される。ローパスフィルタ31の出力端子は、ハイパスフィルタ32の入力端子に接続される。ハイパスフィルタ32の出力端子からは受信コイル電圧Vdが出力される。コンパレータcmp1の非反転入力端子には受信コイル電圧Vdが入力され、反転入力端子には閾値Vthpが入力され、出力端子からは出力信号Vc1が出力される。また、コンパレータcmp2の非反転入力端子には受信コイル電圧Vdが入力され、反転入力端子には閾値Vthnが入力され、出力端子からは出力信号Vc2が出力される。
信号処理回路33には出力信号Vc1およびVc2が入力され、パルス信号Vsおよびパルス信号Vrが出力される。信号処理回路33は、入力電圧VINの立上りエッジおよび立下りエッジを検出する回路である。具体的には、信号処理回路33に出力信号Vc1が先、出力信号Vc2が後の順番で連続して入力された場合には、正方向(図2、コイル電流I1の矢印と同一方向)のコイル電流I1が発生した場合であると判断される。よって、送信回路10に入力電圧VINの立上りエッジが入力された場合であると判断され、信号処理回路33からパルス信号Vsが出力される。また、信号処理回路33に出力信号Vc2が先、出力信号Vc1が後の順番で連続して入力された場合には、負方向(図2、コイル電流I1の矢印と反対方向)のコイル電流I1が発生した場合であると判断される。よって、送信回路10に入力電圧VINの立下りエッジが入力された場合であると判断され、信号処理回路33からパルス信号Vrが出力される。
RSフリップフロップ34のセット端子にはパルス信号Vsが入力され、リセット端子にはパルス信号Vrが入力される。RSフリップフロップ34は、パルス信号Vsが入力されるとハイレベルの出力電圧VOUTを出力し、パルス信号Vrが入力されるとローレベルの出力電圧VOUTを出力する。
図6の動作波形図を用いて、信号伝達回路1の動作を説明する。期間PE1は入力電圧VINがハイレベルの期間であり、期間PE2は入力電圧VINがローレベルの期間である。
期間PE1の動作を説明する。時刻t1において、入力電圧VINの立上りエッジに応じて、パルス信号PS1がハイレベルへ遷移する(矢印Y1)。パルス信号PS1の立上りエッジに応じて、ゲート制御信号SN1がローレベルに遷移する(矢印Y2)。よって、時刻t1においてトランジスタN1はオフとされる。また、パルス信号PS1の立上りエッジから遅延時間DT1だけ遅れて、ゲート制御信号SP1がハイレベルに遷移する(矢印Y3)。よって、時刻t2においてトランジスタP1がオンとなる。また時刻t2においては、トランジスタP2はオフとされ、トランジスタN2はオンとされている。よって、電源電位VDDL、トランジスタP1、ノードND1、送信コイルL1、ノードND2、トランジスタN2、接地電位GNDLの電流経路が形成され、コイル電流I1が正方向に増加し始める。すなわち、入力電圧VINの立上りエッジに応じて、正方向のコイル電流I1が流れる。
受信コイルL2では、電磁誘導により、コイル電流I1の増加率(di/dt)に比例した2次電圧が発生する。2次電圧は、ローパスフィルタ31およびハイパスフィルタ32に入力され、ノイズが除去される。ハイパスフィルタ32からは、ノイズ除去後の2次電圧が、受信コイル電圧Vdとして出力される。そして、受信コイル電圧Vdが閾値Vthpを上回る期間の間、コンパレータcmp1の出力信号Vc1がハイレベルとなる(矢印Y4)。
時刻t3において、パルス信号PS1の立下りエッジに応じて、ゲート制御信号SP1がローレベルへ遷移する(矢印Y5)。よって、時刻t3においてトランジスタP1がオフとされ、電流経路が遮断されるため、コイル電流I1が減少し始める。また、パルス信号PS1の立下りエッジから遅延時間DT1だけ遅れて、ゲート制御信号SN1がハイレベルへ遷移する(矢印Y6)。よって、時刻t4においてトランジスタN1がオンとなる。
ハイパスフィルタ32からは、コイル電流I1電流の減少率(di/dt)に比例した受信コイル電圧Vdが出力される。そして、受信コイル電圧Vdが閾値Vthnを下回る期間の間、コンパレータcmp2の出力信号Vc2がローレベルとなる(矢印Y7)。
受信回路30の信号処理回路33(図5)では、出力信号Vc1のパルスが先、出力信号Vc2のパルスが後の順番で連続して入力されたことが検出される。よって信号処理回路33では、送信回路10に入力電圧VINの立上りエッジが入力された場合であると判断され、出力電圧VOUTがハイレベルとされる(矢印Y8)。これにより、入力電圧VINの時刻t1における立上りエッジが、出力電圧VOUTとして復元されることで、信号伝達が行われる。
また、遅延制御回路14の作用について説明する。遅延制御回路14によって、時刻t1のゲート制御信号SN1の立下りエッジと、時刻t2のゲート制御信号SP1の立ち上がりエッジの間に、遅延時間DT1のデッドタイムが形成される。また、遅延制御回路14によって、時刻t3のゲート制御信号SP1の立下りエッジと、時刻t4のゲート制御信号SN1の立ち上がりエッジの間に、遅延時間DT1のデッドタイムが形成される。デッドタイム期間では、トランジスタP1およびN1の両方がオフとされるため、トランジスタP1からトランジスタN1へ貫通電流が流れることを防止することができる。
次に、期間PE2の動作を説明する。時刻t6において、入力電圧VINの立下りエッジに応じて、パルス信号PS2がハイレベルへ遷移する(矢印Y11)。パルス信号PS2の立上りエッジに応じて、ゲート制御信号SN2がローレベルに遷移する(矢印Y12)。よって、時刻t6においてトランジスタN2はオフとされる。また、パルス信号PS2の立上りエッジから遅延時間DT1だけ遅れて、ゲート制御信号SP2がハイレベルに遷移する(矢印Y13)。よって、時刻t7においてトランジスタP2がオンとなる。また時刻t7においては、トランジスタP1はオフとされ、トランジスタN1はオンとされている。よって、電源電位VDDL、トランジスタP2、ノードND2、送信コイルL1、ノードND1、トランジスタN1、接地電位GNDLの電流経路が形成され、コイル電流I1が負方向に増加し始める。すなわち、入力電圧VINの立下りエッジに応じて、負方向のコイル電流I1が流れる。
ハイパスフィルタ32からは、コイル電流I1電流の増加率(di/dt)に比例した受信コイル電圧Vdが出力される。そして、受信コイル電圧Vdが閾値Vthnを下回る期間の間、コンパレータcmp2の出力信号Vc2がローレベルとなる(矢印Y14)。
時刻t8において、パルス信号PS2の立下りエッジに応じて、ゲート制御信号SP2がローレベルへ遷移する(矢印Y15)。よって、時刻t8においてトランジスタP2がオフとされ、電流経路が遮断されるため、コイル電流I1が減少し始める。また、パルス信号PS2の立下りエッジから遅延時間DT1だけ遅れて、ゲート制御信号SN2がハイレベルへ遷移する(矢印Y16)。よって、時刻t9においてトランジスタN2がオンとなる。
ハイパスフィルタ32からは、コイル電流I1電流の減少率(di/dt)に比例した受信コイル電圧Vdが出力される。そして、受信コイル電圧Vdが閾値Vthpを上回る期間の間、コンパレータcmp1の出力信号Vc1がハイレベルとなる(矢印Y17)。
受信回路30の信号処理回路33(図5)では、出力信号Vc2のパルスが先、出力信号Vc1のパルスが後の順番で連続して入力されたことが検出される。よって信号処理回路33では、送信回路10に入力電圧VINの立下りエッジが入力された場合であると判断され、出力電圧VOUTがローレベルとされる(矢印Y18)。これにより、入力電圧VINの時刻t6における立下りエッジが、出力電圧VOUTとして復元されることで、信号伝達が行われる。
実施例1に係る信号伝達回路1における、第1の効果を説明する。例として、送信側の接地電位GNDLの供給端子と、受信側の接地電位GNDHの供給端子の間に、コモンモード電圧VCMが印加される場合を説明する。また、コモンモード電圧VCMの電圧変化率が(dv/dt)である場合を説明する。また、例として、受信側の接地電位GNDHの電位に対して、送信側の接地電位GNDLの電位が低い場合を説明する。
まず比較のために、一般的な動作方法を説明する。図7は、信号伝達回路1を一般的な方法で動作させた場合の波形図である。一般的な方法では、期間PE1では、ゲート制御信号SN1がローレベル、ゲート制御信号SN2がハイレベルに維持されることで、トランジスタN1がオフ状態、トランジスタN2がオン状態に維持される。また、期間PE2では、ゲート制御信号SN1がハイレベル、ゲート制御信号SN2がローレベルに維持されることで、トランジスタN1がオン状態、トランジスタN2がオフ状態に維持される。すなわち、一般的な動作方法では、トランジスタN1およびN2は同時にオン状態(低インピーダンス状態)とされない。
そして、コモンモード電圧VCMに起因して、寄生容量Cc1、Cc2に変位電流i(=C×dv/dt)が流れる。期間PE1では、変位電流iが流れる経路は、図2の経路Ri2となる。経路Ri2は、受信コイルL2の第2端部E22から、寄生容量Cc2、直列抵抗成分Rs2、第2入力端子T12、ノードND2、トランジスタN2を介して接地電位GNDLに至る経路である。また、経路Ri2は、トランスTRにとって非対称な経路である。また、期間PE2では、変位電流iが流れる経路は、図2の経路Ri1となる。経路Ri1は、受信コイルL2の第1端部E21から、寄生容量Cc1、直列抵抗成分Rs1、第1入力端子T11、ノードND1、トランジスタN1を介して接地電位GNDLに至る経路である。また、経路Ri1は、トランスTRにとって非対称な経路である。
この非対称な経路を流れる変位電流iによって、入力電圧VINがハイレベルとローレベルの間で切り替わる際に、ノイズ電圧(=変位電流i×抵抗R)が受信コイルL2側に発生する。すると、受信コイル電圧Vdにノイズ電圧が重畳してしまう(図7、領域A11および領域A12)ため、受信回路30において、入力電圧VINの立上りエッジおよび立下りエッジを誤って検出してしまう場合がある。
一方、本願の動作方法(図6)では、期間PE1の時刻t4から時刻t6までの期間(領域A1)、および、期間PE2の時刻t9から時刻t10までの期間(領域A2)において、ゲート制御信号SN1およびSN2が共にハイレベルとされ、トランジスタN1およびN2の両方がオンとされている期間が存在する。この期間では、送信コイルL1の第1端部E11および第2端部E12の両方の電位が、低インピーダンス状態とされている。
そして、第1端部E11および第2端部E12の両方が低インピーダンス状態とされているため、コモンモード電圧VCMによる変位電流iは、経路Ri1と経路Ri2の双方の経路で流れる。すなわち、本願の信号伝達回路1では、図7の一般的な動作方法のように、変位電流の電流経路が経路Ri2とRi1の何れか一方となることがない。すると、トランスTRにとって、変位電流iの電流経路を対称にすることができる。よって、受信コイルL2の両端に、互いに逆向きの変位電流が流れるため、変位電流の影響を相殺することができる。よって、受信コイルL2側にノイズ電圧が発生することを抑制できる(図7、領域A3および領域A4)。これにより、受信コイル電圧Vdにノイズ電圧が重畳してしまうことを抑制できるため、受信回路30において、入力電圧VINの立上りエッジおよび立下りエッジをより正確に検出することが可能となる。
また、実施例1に係る信号伝達回路1における、第2の効果を説明する。トランスTRを小型化すると、結合係数の劣化に伴い受信信号成分も劣化するため、信号伝達が困難となる。そこで実施例1の信号伝達回路1では、受信コイルL2の巻数を送信コイルL1の巻数に比して多くすることにより、受信コイルL2のインダクタンスを増加させ、受信信号の強度を高くすることができる。よって、トランスTRの小型化が可能となり、信号伝達回路1の低コスト化を図ることが可能となる。なお、受信コイルL2の巻数を増加させると、直列抵抗成分Rs3、Rs4も増加するため、コモンモード電圧VCMに起因するノイズ電圧も増加する。しかし、実施例1の信号伝達回路1では、コモンモード電圧VCMに起因するノイズ電圧の発生自体を抑制できるため、受信コイルL2の巻数を増加することが可能となる。
本願の実施例2について図面を参照して説明する。図8に、実施例2に係る送信回路10aの詳細回路図を示す。なお、トランスTR、受信回路30の構成は実施例1(図2)と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
送信回路10aは、スイッチ制御回路20a、インバータ15および16、バッファ17および18、Hブリッジ回路19aを備える。またスイッチ制御回路20aは、パルス発生器11および12、インバータ13、遅延制御回路14aを備える。遅延制御回路14aは、電源電位VDDLをゲート制御信号SN3として出力する。なお、遅延制御回路14aのその他の構成は、実施例1の遅延制御回路14(図2)と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
Hブリッジ回路19aは、トランジスタP1およびP2、トランジスタN1ないしN4を備える。トランジスタP1およびP2はPMOSトランジスタであり、トランジスタN1ないしN4はNMOSトランジスタである。Hブリッジ回路19aは、実施例1のHブリッジ回路19(図2)に対して、トランジスタN3、N4を追加した構成である。
トランジスタN3は、トランジスタN1と並列に接続される。トランジスタN3のドレイン端子は、ノードND1に接続される。トランジスタN3のソース端子には接地電位GNDLが入力され、ゲート端子にはゲート制御信号SN3が入力される。トランジスタN3は、常時オン状態にされる。トランジスタN4は、トランジスタN2と並列に接続される。トランジスタN4のドレイン端子は、ノードND2に接続される。トランジスタN4のソース端子には接地電位GNDLが入力され、ゲート端子にはゲート制御信号SN3が入力される。トランジスタN4は、常時オン状態にされる。
トランジスタN3のサイズは、トランジスタN1のサイズに比して小さくされている。よって、トランジスタN3のオン時のインピーダンスは、トランジスタN1のオン時のインピーダンスに比して高くされている。これにより、トランジスタP1がオンとされる期間において、トランジスタP1からN3へ流れる貫通電流を小さくすることができる。また、トランジスタN4のサイズは、トランジスタN2のサイズに比して小さくされている。よってトランジスタN4のオン時のインピーダンスは、トランジスタN2のオン時のインピーダンスに比して高くされている。これにより、トランジスタP2がオンとされる期間において、トランジスタP2からN4へ流れる貫通電流を小さくすることができる。
なお、トランジスタN3、N4のサイズを小さくするほど、貫通電流を小さくすることができるが、後述するノイズ電圧の発生抑制効果が弱くなる。よって、貫通電流の許容値とノイズ電圧の許容値とのバランスをとって、トランジスタN3、N4のサイズを決定する必要がある。例えば、トランジスタN1およびN2のサイズに対して、トランジスタN3およびN4のサイズを、1/10〜1/50程度にすることが好ましい。なお、その他の構成は実施例1のHブリッジ回路19(図2)と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
実施例2に係る送信回路10aの効果を説明する。トランジスタP1とN1の駆動には、トランジスタP1およびN1の両方がオフとされるデッドタイムが必要である。これは、トランジスタP1からN1へ貫通電流が流れることを防止するためである。しかし、トランジスタN3がオフ状態であると、デッドタイム期間では、送信コイルL1の第1端部E11の電位が、ハイインピーダンス状態となる。すると、デッドタイム期間において発生した変位電流iは、経路Ri2のみに流れる。これはトランスTRにとって非対称な電流経路であるため、ノイズ電圧が発生する。同様にして、トランジスタP2とN2の駆動においても、トランジスタP2およびN2の両方がオフとされるデッドタイムが必要である。そして、トランジスタN4がオフ状態であると、デッドタイム期間において発生した変位電流iは、経路Ri1のみに流れ、ノイズ電圧が発生する。以上より、デッドタイムが長くなるほど、ノイズ電圧の影響を受けやすくなることが分かる。
しかし、実施例2の送信回路10aでは、トランジスタN3およびN4が常時オン状態とされている。よって、送信コイルL1の第1端部E11および第2端部E12の両方を、常に低インピーダンス状態に維持することができる。これにより、コモンモード電圧VCMによる変位電流iは、経路Ri1aと経路Ri2a(図8)の双方の経路で流れる。すると、トランスTRにとって、変位電流iの電流経路が対称となるため、受信コイルL2側にノイズ電圧が発生することを抑制できる。これにより、受信回路30において、コモンモード電圧VCMに起因するノイズ電圧の発生を常に抑制することができる。よって、デッドタイム期間の長さを自由に設定することが可能となる。
また、送信回路10aでは、経路Ri1aをトランジスタN3により形成し、経路Ri2aをトランジスタN4により形成している。これにより、トランジスタN1やN2を作成する工程と同様の工程を用いて、経路Ri1a、Ri2aを作成することができる。よって、経路Ri1a、Ri2aを形成するための専用の工程などを別途用意する必要がないため、回路設計や製造工程を簡略化することができる。
本願の実施例3について図面を参照して説明する。図9に、実施例3に係る送信回路10bの詳細回路図を示す。なお、トランスTR、受信回路30の構成は実施例1(図2)と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
送信回路10bは、スイッチ制御回路20b、インバータ15、16、57、58、バッファ17、18、53ないし56、Hブリッジ回路19bを備える。またスイッチ制御回路20bは、パルス発生器11および12、インバータ13、遅延制御回路14bを備える。
遅延制御回路14bは、立上り遅延回路21ないし24、27および28、51および52、インバータ25および26を備える。
立上り遅延回路27にはパルス信号PS1が入力され、ゲート制御信号SP1bが出力される。立下り遅延回路51にはパルス信号PS1が入力され、遅延パルス信号PS1Dが出力される。立上り遅延回路22には遅延パルス信号PS1Dが入力され、ゲート制御信号SP1が出力される。インバータ25には遅延パルス信号PS1Dが入力され、反転遅延パルス信号PS1DBが出力される。立上り遅延回路23には反転遅延パルス信号PS1DBが入力され、ゲート制御信号SN1が出力される。
また、立上り遅延回路28にはパルス信号PS2が入力され、ゲート制御信号SP2bが出力される。立下り遅延回路52にはパルス信号PS2が入力され、遅延パルス信号PS2Dが出力される。立上り遅延回路21には遅延パルス信号PS2Dが入力され、ゲート制御信号SP2が出力される。インバータ26には遅延パルス信号PS2Dが入力され、反転遅延パルス信号PS2DBが出力される。立上り遅延回路24には反転遅延パルス信号PS2DBが入力され、ゲート制御信号SN2が出力される。
図10に、立下り遅延回路51のブロック図を示す。立下り遅延回路51は、インバータ45、キャパシタ46、シュミットトリガインバータ47を備える。インバータ45は、PMOSトランジスタであるトランジスタP45と、NMOSトランジスタであるトランジスタN45を備える。トランジスタN45のサイズは、トランジスタP45のサイズよりも大きくされている。よって、トランジスタN45のオン時のインピーダンスは、トランジスタP45のオン時のインピーダンスに比して低くされている。
インバータ45の入力端子には、パルス信号PS1が入力される。キャパシタ46の第1端には、インバータ45の出力端子とシュミットトリガインバータ47の入力端子が接続される。キャパシタ42の第2端には、接地電位GNDLが入力される。シュミットトリガインバータ47からは、遅延ゲート制御信号PS1Dが出力される。
図11に、立下り遅延回路51の動作波形図を示す。時刻t51において、パルス信号PS1がローレベルからハイレベルへ遷移すると、キャパシタ46、トランジスタN45、接地電位GNDLの電流経路によってキャパシタ42が放電される。同様に、時刻t52において、パルス信号PS1がハイレベルからローレベルへ遷移すると、電源電位VDDL、トランジスタP45、キャパシタ46の電流経路によってキャパシタ46が充電される。
そして、トランジスタN45のオン時のインピーダンスは、トランジスタP45のオン時のインピーダンスに比して低くされている。よって、キャパシタ46の放電時間に比して、充電時間を長くすることができる。これにより、立下り遅延回路51は、パルス信号PS1の立下りエッジのみを遅延時間DT2分だけ遅延させて出力し、立上りエッジは遅延させずに出力するという動作を行うことができる。また、遅延時間DT2の長さは、トランジスタP45の抵抗値とキャパシタ46の容量値を調整することによって、任意の値に設定することができる。なお、立下り遅延回路52の構成も、立下り遅延回路51と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。また、遅延制御回路14bのその他の構成は、実施例1の遅延制御回路14(図2)と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
Hブリッジ回路19b(図9)は、トランジスタP1、P2、P1b、P2b、N1、N2を備える。トランジスタP1b、P2bはPMOSトランジスタである。Hブリッジ回路19bは、実施例1のHブリッジ回路19(図2)に比して、トランジスタP1b、P2bを追加した構成を有している。
トランジスタP1bは、トランジスタP1と並列に接続される。トランジスタP1bのドレイン端子は、ノードND1に接続される。トランジスタP1bのソース端子には、電源電位VDDLが入力される。トランジスタP1bのゲート端子には、インバータ57で反転されたゲート制御信号SP1bが、バッファ53を介して入力される。トランジスタP1bは、ゲート制御信号SP1bがハイレベルのときにオン状態となり、ローレベルのときにオフ状態となる。トランジスタP2bは、トランジスタP2と並列に接続される。トランジスタP2bのドレイン端子は、ノードND2に接続される。トランジスタP2bのソース端子には、電源電位VDDLが入力される。トランジスタP2bのゲート端子には、インバータ58で反転されたゲート制御信号SP2bが、バッファ55を介して入力される。
トランジスタP1bのサイズは、トランジスタP1のサイズに比して小さくされている。よって、トランジスタP1bのオン時のインピーダンスは、トランジスタP1のオン時のインピーダンスに比して高くされている。同様に、トランジスタP2bのサイズは、トランジスタP2のサイズに比して小さくされている。よって、トランジスタP2bのオン時のインピーダンスは、トランジスタP2のオン時のインピーダンスに比して高くされている。なお、Hブリッジ回路19bのその他の構成は、実施例1のHブリッジ回路19(図2)と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
図12の動作波形図を用いて、送信回路10bの動作を説明する。期間PE1は入力電圧VINがハイレベルの期間であり、期間PE2は入力電圧VINがローレベルの期間である。なお、遅延制御回路14bの立上り遅延回路21ないし24、27、28によって、遅延時間DT1分のデッドタイムが形成される。デッドタイム形成のメカニズムは、実施例1で説明したメカニズムと同様である。したがって、図12では、説明を分かりやすくするために、デッドタイムについては記載を省略して説明する。
期間PE1の動作を説明する。時刻t21において、入力電圧VINの立上りエッジに応じて、パルス信号PS1がハイレベルへ遷移する(矢印Y20)。パルス信号PS1の立上りエッジに応じて、ゲート制御信号SP1およびSP1bが同時にハイレベルに遷移する(矢印Y21)。よって、トランジスタP1およびP1bがオンする。また、パルス信号PS1の立上りエッジに応じて、ゲート制御信号SN1がローレベルに遷移する。よって、トランジスタN1はオフとされる。これにより、トランジスタP1を経由する第1電流経路と、トランジスタP1bを経由する第2電流経路が形成される。第1電流経路は、電源電位VDDLから、トランジスタP1、ノードND1、トランスTR、ノードND2、トランジスタN2を介して接地電位GNDLへ至る経路である。また第2電流経路は、電源電位VDDLから、トランジスタP1b、ノードND1、トランスTR、ノードND2、トランジスタN2を介して接地電位GNDLへ至る経路である。そして、第1電流経路および第2電流経路の両方の経路に、コイル電流I1が流れる。このとき、2つの経路でコイル電流I1が流れるため、電流経路の合成インピーダンスは低い状態とされる。よって、コイル電流I1の増加率(di/dt)は大きくなる。
受信コイルL2では、送信コイルL1に流れるコイル電流I1の増加率に比例して、受信コイル電圧Vdが得られる(矢印Y22)。受信コイル電圧Vdの波形は、図中上側に突出した山形状となり、その振幅は振幅AM1となる。そして、受信コイル電圧Vdが閾値Vthpを上回ることがcmp1によって検出されると、正方向(図2、コイル電流I1の矢印と同一方向)のコイル電流I1が発生したと受信回路30において判断される。これにより、送信回路10に入力電圧VINの立上りエッジが入力されたことが検出され、出力電圧VOUTがハイレベルとされる(矢印Y23)。
時刻t22において、パルス信号PS1の立下りエッジに応じて、ゲート制御信号SP1bがローレベルへ遷移する(矢印Y24)。よって、トランジスタP1bがオフとされ、第2電流経路が遮断されるため、コイル電流I1の電流経路は第1電流経路の1つのみとされる。すると、電流経路の合成インピーダンスが高い状態とされるため、コイル電流I1が減少し始める。
また、時刻t23において、パルス信号PS1bの立下りエッジから遅延時間DT2だけ遅れて、ゲート制御信号SP1がローレベルに遷移する。よって、トランジスタP1がオフとされ、第1電流経路が遮断される。よって、第1電流経路および第2電流経路の両方が遮断されるため、コイル電流I1がさらに大きな傾きで減少し始める。また、時刻t23において、ゲート制御信号SN1がハイレベルへ遷移することで、トランジスタN1がオンとされる。そして時刻t24において、コイル電流I1が0となる。
ハイパスフィルタ32からは、コイル電流I1の減少率(di/dt)に比例して、受信コイル電圧Vdが得られる(矢印Y25)。受信コイル電圧Vdの波形は、図中下側に突出した谷形状となり、その振幅は振幅AM2となる。
そして、時刻t21からt22までのコイル電流I1の増加傾きに対して、時刻t22からt24までのコイル電流I1の減少傾きの方が小さくされている。よって、受信コイル電圧Vdにおいて、コイル電流I1の増加時の振幅AM1よりも、コイル電流I1減少時の振幅AM2の方が小さくなる。
なお、トランジスタP1のサイズは、トランジスタP1bのサイズよりも大きくされている。そして、トランジスタP1bが先にオフされ、トランジスタP1が後にオフされる。よって、時刻t23からt24までのコイル電流I1の減少率に対して、時刻t22からt23までのコイル電流I1の減少率を小さくするようにコントロールすることができる。
なお、期間PE2においても、期間PE1と同様の動作が行われる。よって、時刻t26からt27までのコイル電流I1の増加傾きに対して、時刻t27からt29までのコイル電流I1の減少傾きの方が小さくされている。よって、受信コイル電圧Vdにおいて、コイル電流I1の増加時の振幅AM1よりも、コイル電流I1の減少時の振幅AM2の方が小さくなる。なお、期間PE2の動作内容は、期間PE1の動作内容と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
実施例3に係る送信回路10aの効果を説明する。受信コイル電圧Vdは、送信コイルL1に流れるコイル電流I1の時間変化率(di/dt)に比例する。そして、期間PE1では、トランジスタP1およびP1bを、オン時(時刻t21)には同時にオンし、オフ時には異なるタイミング(時刻t22、t23)でオフするように制御する。また同様に、期間PE2では、トランジスタP2およびP2aを、オン時(時刻t21)には同時にオンし、オフ時には異なるタイミング(時刻t22、t23)でオフするように制御する。
すると、送信コイルL1に流れるコイル電流I1の時間変化率を、トランジスタのオン時の増加率に対して、トランジスタのオフ時の減少率が小さくなるようにコントロールすることができる。これにより、トランジスタのオン時に発生する受信コイル電圧Vdの振幅AM1を、トランジスタのオフ時に発生する受信コイル電圧Vdの振幅AM2よりも大きくすることができる。よって、入力電圧VINの立ち上がり時(時刻t21)に対応して受信コイル電圧Vdに現れる波形を、大きな振幅を有する山形状(時刻t21からt22)とすることができる。また、入力電圧VINの立ち下がり時(時刻t26)に対応して受信コイル電圧Vdに現れる波形を、大きな振幅を有する谷形状(時刻t26からt27)とすることができる。すると、閾値Vthpを持つコンパレータcmp1によって、受信コイル電圧Vdが閾値Vthpを上回ることを検出することで、入力電圧VINの立ち上がり時を検出することができる。また、閾値Vthを持つコンパレータcmp2によって、受信コイル電圧Vdが閾値Vthnを下回ることを検出することで、入力電圧VINの立ち下がり時を検出することができる。よって、受信コイルL2において、トランジスタのオン時を検出しやすくすることができる。これにより、より確実に出力電圧VOUTを復元することが可能となる。
また、送信コイルL1に流れるコイル電流I1の時間変化率を、トランジスタを緩やかにオフすることでコントロールする場合には、一般的には、トランジスタのオン/オフ電圧の中間電位を用いる必要がある。中間電位はトランジスタが不安定な状態であるため、ノイズが発生し、信号が誤って伝達されてしまう場合がある。一方、本願の送信回路10bは、トランジスタを緩やかにオフするという制御を行なう必要がないため、トランジスタのオン/オフ電圧の中間電位を用いる必要がない。これにより、送信コイルL1に流れるコイル電流I1の時間変化率の制御を、トランジスタが安定な状態で実現できるため、ノイズの発生を抑制することができる。
以上、本願の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
実施例2のHブリッジ回路19aでは、トランジスタN1と並列に接続されるトランジスタN3と、トランジスタN2と並列に接続されるトランジスタN4を備えるとした。そして、トランジスタN3およびN4を常時オン状態に制御するとした。ここで、図13のHブリッジ回路19cに示すように、トランジスタN3、N4のドレイン端子に抵抗R3、R4を追加してもよい。これにより、トランジスタN3、N4のオン時のインピーダンスを高くすることができる。よって、トランジスタP1からトランジスタN3に流れる貫通電流や、トランジスタP2からトランジスタN4に流れる貫通電流の値を、十分に小さくすることができる。また、抵抗R3、R4によってトランジスタN3、N4のオン時のインピーダンスを調整することができる。よって、トランジスタのサイズ調整により、オン時のインピーダンスを調整する必要がない。これにより、トランジスタN3、N4のサイズを任意に設定することが可能となる。
また、図13のHブリッジ回路19cでは、常時オンとされるトランジスタN3、N4を備える場合を説明したが、この形態に限られない。Hブリッジ回路19cにおいて、トランジスタN3を備えず、抵抗R3のみによってノードND1が接地電位GNDLに接続される構成としてもよい。また、トランジスタN4を備えず、抵抗R4のみによってノードND1が接地電位GNDLに接続される構成としてもよい。これによっても、送信コイルL1の第1端部E11および第2端部E12の両方を、常に低インピーダンス状態に維持することができる。
また実施例1(図6)では、期間PE1の時刻t4から時刻t6までの期間(領域A1)、および、期間PE2の時刻t9から時刻t10までの期間(領域A2)において、トランジスタN1およびN2の両方をオンする制御を行う場合を説明したが、この形態に限られない。これらの期間において、トランジスタP1およびP2の両方をオンする制御を行ってもよい。これによっても、送信コイルL1の両端電位を低インピーダンスにするという目的は達成できる。ただし、これらの期間においては、トランジスタN1およびN2をオンさせる方が、より好ましい。これは、トランジスタN1およびN2のソース電圧が、接地電位GNDLで固定とされているためである。これにより、信号伝達回路1の起動時や立ち下げ時など、電源電位VDDLが安定しない状態においても、トランジスタN1およびN2を確実に動作させることができるため、Hブリッジ回路19の安定した動作が期待できる。
また、実施例2では、送信コイルL1の両端の電位を常に接地電位GNDLに維持する場合を説明したが、この形態に限られない。送信コイルL1の両端の電位を常に電源電位VDDLに維持するとしてもよい。これによっても、送信コイルL1の両端電位を低インピーダンスにするという目的は達成できる。よって、コモンモード電圧VCMによるノイズ電圧の発生を抑制する、という本願の効果を得ることができる。
また実施例3では、トランジスタP1に1つのトランジスタP1bを並列に接続し、トランジスタP2に1つのトランジスタP2bを並列に接続する場合を説明したが、この形態に限られない。トランジスタP1に2つ以上のトランジスタを並列に接続するとともに、トランジスタP2に2つ以上のトランジスタを並列に接続してもよい。そして並列に接続したトランジスタをそれぞれ異なるタイミングでオフするとしてもよい。これにより、コイル電流I1の時間変化率を緻密に制御することが可能となる。また、トランジスタP1およびP2に並列に接続されるトランジスタのサイズを各々異ならせれば、コイル電流I1の時間変化率の制御をより緻密に行うことが可能となる。
また実施例3では、トランジスタP1およびP1bを、オン時には同時にオンし、オフ時には異なるタイミングでオフすることで、オフ時の時間変化率を制御する場合を説明したが、この形態に限られない。トランジスタP1およびP1bを、オン時には異なるタイミングでオンし、オフ時には同時にオフすることで、オン時の時間変化率を制御することも可能である。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。