JP4655573B2 - 含クロム溶銑の酸化脱りん方法 - Google Patents

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Description

本発明は、Crを含有する溶銑(以下、含クロム溶銑という)からPを酸化して除去する脱りん処理に関し、特に溶融還元法等で溶製したCr含有量 3.0質量%以上の含クロム溶銑の脱りん処理に関するものである。
ステンレス鋼に代表されるCrを多量に含有する鋼種(以下、高クロム鋼という)では、鋼中のPが応力腐食割れや熱間割れを誘発するばかりでなく、溶接性の悪化も引き起こす。そのため高クロム鋼では、P含有量を可能な限り低減する必要がある。
高クロム鋼の製造方法として確立された技術は、下記の2種類に大別される。
(a) 高炉から排出した溶銑のPを低減(いわゆる溶銑予備処理)した後、転炉に収容してフェロクロム合金を添加するとともに脱炭精錬を行なう、
(b) 転炉を用いてクロム鉱石を溶融還元して含クロム溶銑を溶製し、さらに含クロム溶銑の脱炭精錬を行なう。
上記の (a),(b) の技術は、いずれもFeCr合金および副原料を使用するので、これらFeCr合金や副原料中に含まれるPが溶銑あるいは含クロム溶銑に混入する。特に (b)の技術では、含クロム溶銑の酸素ポテンシャルが低いので、副原料から含クロム溶銑へPが容易に移行する。したがって (b)の技術で高クロム鋼を製造する場合には、脱炭精錬に先立って、含クロム溶銑の脱りん処理を行なう必要がある。
一般に溶銑の脱りん処理は、
(A) 溶銑にCaやCaC2 等を添加してPをCa3 2 として除去する脱りん処理(いわゆる還元脱りん)と、
(B) 溶銑中のPをP2 5 として除去する脱りん処理(いわゆる酸化脱りん)
がある。しかし含クロム溶銑では、CrがPの活量係数を低下させるので、脱りん処理を行なうのは熱力学的に困難である。そこで、含クロム溶銑の脱りん処理を効果的に行なう技術が種々検討されている。
たとえば特許文献1には、含クロム溶銑にCaC2 を添加した後、さらにプラズマアークを照射して還元脱りんを行なう技術が開示されている。
また特許文献2には、精錬剤として BaCO3 , Li2O等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物あるいはその炭酸塩を含クロム溶銑に添加して酸化脱りんを行なう技術が開示されている。特許文献3には、安価なCaO−CaF2 系精錬剤を酸素ガスとともに含クロム溶銑に吹き込んで酸化脱りんを行なう技術が開示されている。特許文献4には、Crを5質量%以上,Cを 4.5質量%以上含有する含クロム溶銑をトーピードカーまたは溶銑鍋に収容した後、精錬剤としてCaO,CaF2 ,酸化鉄を含クロム溶銑に吹き込むとともに酸素ガスを上吹きして酸化脱りんを行なう技術が開示されている。
しかし特許文献1に開示された還元脱りん技術では、含クロム溶銑の酸素ポテンシャルPO2を極めて低位(PO2<10-19 atm )にしなければならない。しかも脱りん処理によって生じる Ca32 が大気中の水分と反応して、フォスフィンと呼ばれる有毒なPH3 を生成するので、環境汚染を引き起こす恐れがある。特許文献1に開示された還元脱りん技術を採用するためには、これらの問題を解決しなければならないので、未だ実用化には到っていない。
また特許文献2に開示された酸化脱りん技術では、高価なアルカリ金属やアルカリ土類金属を使用するので、脱りん処理コストの上昇を招く。
特許文献3,特許文献4に開示された酸化脱りん技術では、酸素ガスを使用するので、Crの酸化ロスが増大する。その結果、スラグが固化して脱りん処理が停滞するばかりでなく、Crの歩留りが低下することによって、高クロム鋼製造コストが上昇する。さらに含クロム溶銑中のCが飽和している場合には、脱りん処理の所要時間の経過にともなって含クロム溶銑の温度が低下し、含クロム溶銑中にCが析出する。そのため、含クロム溶銑中に供給される酸素ガスおよび/または酸化鉄が脱炭反応のみに消費され、脱りん処理の進行が阻害される可能性がある。
特開昭58-55514号公報 特公昭62-13405号公報 特許第2684113 号公報 特許第2758056 号公報
本発明は、有毒なPH3 を生成する恐れのない、酸化脱りん技術を対象としており、その目的は、含クロム溶銑の酸化脱りんを行なうにあたって、簡便な手段で効果的な脱りん処理を可能にし、含クロム溶銑の脱りん処理コストを削減できる酸化脱りん方法を提供することにある。
本発明は、精錬容器に収容したCr含有量 3.0質量%以上の含クロム溶銑に、酸化鉄含有物質,石灰含有物質およびホタル石含有物質からなる精錬剤を添加して、含クロム溶銑に含まれるPを酸化して除去する含クロム溶銑の酸化脱りん方法において、前記精錬剤を添加する前の含クロム溶銑の温度を1350〜1500℃の範囲内に制御するとともに、前記精錬剤を添加する前の含クロム溶銑のC含有量を 4.0質量%以上でかつ脱りん処理によってCが析出しない飽和量[%C] SAT 以下の範囲内に制御し、酸化鉄濃度(%FeO)と石灰濃度(%CaO)とホタル石濃度(%CaF2 )が下記の (1)式と (2)式を満足する精錬剤を含クロム溶銑に添加し、かつ前記飽和量[%C] SAT が下記の(8)式を用いて算出される含クロム溶銑の酸化脱りん方法である。
0.4 ≦(%CaO)/(%CaF2 )≦ 2.0 ・・・ (1)
0.4 ≦(%CaO)/(%FeO)≦ 2.0 ・・・ (2)
[%C] SAT =0.003545T+0.067142[%Cr]−0.20072 ・・・ (8)
(%FeO) :精錬剤の酸化鉄濃度(質量%)
(%CaO) :精錬剤の石灰濃度(質量%)
(%CaF2 ):精錬剤のホタル石濃度(質量%)
T :含クロム溶銑の温度(℃)
[%Cr] :含クロム溶銑のCr含有量(質量%)
本発明の酸化脱りん方法では、精錬剤を添加する前の含クロム溶銑のP含有量が 0.025質量%以下で、脱りん処理を終了した後の含クロム溶銑のP含有量が 0.008質量%以下であることが好ましい。また、精錬剤を添加する前の含クロム溶銑のSi含有量を0.05質量%以下に調整することが好ましい。また含クロム溶銑は、溶融還元法によって溶製し、次いで前記精錬容器に収容して前記精錬剤を添加することが好ましい。
本発明によれば、簡便な手段で効果的に含クロム溶銑の脱りん処理を行なうことができるので、含クロム溶銑の脱りん処理コストを削減できる。
含クロム溶銑の酸化脱りん反応は下記の (3)式で表わされる。この (3)式を促進するために酸素ガスが含クロム溶銑に供給されるが、その酸素ガスによって (4)式で表わされるCrの酸化反応と (5)式で表わされる脱炭反応が同時に発生する。 (3)式の酸化脱りん反応を効率良く進行させるためには、 (4)式と (5)式の反応を抑制する必要がある。
2[P]+5[O]→(P2 5 ) ・・・ (3)
2[Cr]+3[O]+CaO(S) →(CaO・Cr2 3 ) ・・・ (4)
[C]+[O]→CO ・・・ (5)
[P] :含クロム溶銑中のP
[O] :含クロム溶銑中のO
[Cr] :含クロム溶銑中のCr
[C] :含クロム溶銑中のC
(P2 5 ) :スラグ中のP2 5
(CaO・Cr2 3 ):スラグ中のCaOとCr2 3 の複合酸化物
CaO(S) :精錬剤として添加される固形CaO
ところが含クロム溶銑では、通常、 (4)式が優先的に進行し、生成したCr2 3 がスラグに取り込まれてスラグを固化し、スラグからの酸素供給を阻害する。しかもCrは含クロム溶銑中のPの活量係数に及ぼす影響(すなわち相互作用助係数)が負であり、CrがPの活量を低下させる要因になっている。つまり含クロム溶銑では、Crが存在する故に、スラグが固化するとともにPの活量が低下して、酸化脱りん反応の進行が阻害される。
一方、含クロム溶銑中のPの分配比LP は下記の (6)式で表わされ、Pの活量係数fP は下記の (7)式で表わされる。
logLP =logCP +logfP −logKP +(5/4)logPO2−0.487 ・・・ (6)
logfP =eP C[%C]+eP CR [%Cr] ・・・ (7)
P C =( 105.1/T)+0.0723
P CR =−0.019
P :スラグと含クロム溶銑間のPの分配比(=(%P)/[%P],ここに(%P)はスラグ中のP含有量,[%P]は含クロム溶銑のP含有量であり、単位はいずれも質量%)
P :スラグのフォスフェートキャパシティー
P :含クロム溶銑中のPの活量係数
P :脱りん速度定数
O2 :含クロム溶銑中の酸素ポテンシャル
P C :含クロム溶銑中のPのCに対する相互作用助係数
P CR :含クロム溶銑中のPのCrに対する相互作用助係数
[%C]:含クロム溶銑のC含有量(単位は質量%)
[%Cr]:含クロム溶銑のCr含有量(単位は質量%)
T :含クロム溶銑の温度(単位はK)
熱力学的には (7)式から明らかなように、含クロム溶銑のC含有量[%C]が増加すると、Pの活量係数fP が高くなる。その結果、 (6)式で示されるPの分配比LP が上昇して、酸化脱りん反応が促進される。
さらに (4)式の反応によって酸素ポテンシャルPO2が決定される。ここで、フォスフェートキャパシティーにCaO−CaF2 系スラグのものを適用すると仮定すれば、 (6)式から明らかなように、含クロム溶銑の温度が高いほど、酸化脱りん反応が促進される。
一方、酸化脱りんでは、安価なCaO−CaF2 系の精錬剤が広く使用されているが、その成分や添加量については、それぞれの脱りん処理の条件(たとえば含クロム溶銑の温度や成分等)に応じて適宜調整して対応している。
そこで、発明者らは、精錬剤の好適な使用方法を検討するために実験を行なった。図2は、実験装置の要部を模式的に示す断面図である。
含クロム溶銑4を溶解炉5に収容し、溶解炉5の上方から含クロム溶銑4内に攪拌羽根3を浸漬した。攪拌羽根3は回転シャフト2を介してモーター1に連結されており、モーター1の回転に伴って攪拌羽根3が回転することによって、含クロム溶銑4を攪拌する。なお、溶解炉5は電気的に加熱するように構成されている。
実験条件は表1に示す通りである。精錬剤は、安価な酸化鉄−CaO−CaF2 系を使用した。この精錬剤は、固体酸素(すなわち酸化鉄)が酸素源となる。攪拌羽根の回転数は 250回転/分で一定とし、含クロム溶銑の成分,温度および精錬剤の成分を種々変化させて実験を行なった。
Figure 0004655573
まず、含クロム溶銑の成分と温度を一定にし、精錬剤のCaO濃度(%CaO)とFeO濃度(%FeO)の比を変化させて脱りん処理を行ない、脱りん速度定数KP (1/min )を調査した。その実験条件を表2に示し、調査結果を図3に示す。なお、精錬剤のCaF2 は30質量%で一定にした。脱りん速度定数KP は、 (3)式の反応速度を1次反応と仮定して、その傾きから導出した。
Figure 0004655573
図3から明らかなように、(%CaO)/(%FeO)比が 0.4〜2.0 の範囲内で、良好なKP が得られる。つまり、(%CaO)/(%FeO)比が 0.4未満では、精錬剤の酸化力が過剰に大きくなり、 (4)式や (5)式で消費される酸化鉄量が増大する。また、CaOが少ないので、 (3)式で生成したP2 5 をスラグ中に固定できず、含クロム溶銑へ復りんが生じる。一方、(%CaO)/(%FeO)比が 2.0を超えると、CaOが過剰に増加するので、スラグの滓化が阻害され、 (3)式の反応が進行しない。
次に、精錬剤のCaO濃度(%CaO)とCaF2 濃度(%CaF2 )の比を変化させて脱りん処理を行ない、脱りん速度定数KP (1/min )を調査した。その調査結果を図4に示す。その実験条件は表2と同じである。なお、精錬剤の酸化鉄は30質量%で一定にした。脱りん速度定数KP は、 (3)式の反応速度を1次反応と仮定して、その傾きから導出した。
図4から明らかなように、(%CaO)/(%CaF2 )比が 0.4〜2.0 の範囲内で、良好なKP が得られる。つまり、(%CaO)/(%CaF2 )比が 0.4未満では、CaOが未飽和であるから、フォスフェートキャパシティーが低下し、スラグの脱りん能力が十分に発揮されない。一方、(%CaO)/(%CaF2 )比が 2.0を超えると、CaOが過剰に増加するので、スラグの滓化が阻害され、 (3)式の反応が進行しない。
さらに、精錬剤の成分を一定にし、精錬剤を添加する前の含クロム溶銑のC含有量[%C]を変化させて脱りん処理を行ない、脱りん速度定数KP (1/min )を調査した。その実験条件を表3に示し、調査結果を図5に示す。なお図5中に示した飽和量は、Fe−C−Cr系状態図に基づいて推定した (8)式を用いて、含クロム溶銑のCの飽和量[%C]SAT として算出した値である。
[%C]SAT =0.003545T+0.067142[%Cr]−0.20072 ・・・ (8)
含クロム溶銑のCr含有量[%Cr]が15質量%で、含クロム溶銑の温度Tが1400℃,1450℃,1500℃の場合の[%C]SAT は、 (8)式によればそれぞれ5.70,5.94,6.12である。
Figure 0004655573
図5から明らかなように、精錬剤を添加する前の[%C]が増加すると、KP が向上する傾向がある。この現象は、[%C]が増加することによって酸化脱りん反応が促進されることを意味しており、上記した (6)式と (7)式で熱力学的に説明した通りである。特に[%C]が4質量%以上で、良好なKP が得られる。ところが、精錬剤を添加する前の含クロム溶銑の[%C]が飽和量[%C]SAT を超えると、KP は著しく低下する。
[%C]が[%C]SAT を超える含クロム溶銑は、脱りん処理の時間の経過に伴って温度が低下して、過剰のCが析出する。この析出したCが精錬剤中の酸化鉄と反応するので、酸化脱りん反応に寄与する酸化鉄が減少する。図5中の飽和量を超える範囲でKP が低下する現象は、このようにして生じる。一方、[%C]が 4.0質量%未満では、熱力学的にPの活量係数が低下し、酸化脱りん反応の進行が妨げられる。したがって、精錬剤を添加する前の[%C]は 4.0質量%以上かつ[%C]SAT 以下とする必要がある。ここで、[%C]SAT 以下とは、脱りん処理の時間の経過に伴って温度が低下してもCが析出しない範囲を意味する。
次いで、表2と同じ成分の含クロム溶銑の温度を変化させて脱りん処理を行ない、精錬容器の耐火物や含クロム溶銑の歩留りを調査した。精錬剤は表2と同じものを使用した。含クロム溶銑では、 (6)式に示すように、精錬剤を添加する前の温度が高いほどPの分配比が増加する。しかも、高温で脱りん処理を行なえば、Crの酸化ロスが減少する。したがって、脱りん処理における含クロム溶銑の温度は、高い方が好ましい。しかし本発明では、CaF2 を含クロム溶銑に添加するので、1500℃を超える温度で脱りん処理を行なうと、スラグ中のCaF2 によって耐火物が著しく損耗する。一方、1350℃未満では、含クロム溶銑のCrの酸化ロスが増大する。しかも、脱りん処理の時間の経過に伴って温度が低下して熱余裕度が減少し、後工程における含クロム溶銑の歩留りが低下する。したがって、精錬剤を添加する前の含クロム溶銑の温度は1350〜1500℃の範囲内を満足する必要がある。
また、表2と同様の成分を有する含クロム溶銑のSi含有量[%Si]のみを変化させて脱りん処理を行ない、脱りん速度定数を調査した。その調査結果を図6に示す。なお、精錬剤は表2と同じものを使用した。
図6から明らかなように、精錬剤を添加する前の含クロム溶銑の[%Si]が0.05質量%を超えると、脱りん速度定数は大幅に低下する。その理由は、[%Si]が0.05質量%を超えると、精錬剤中の酸化鉄の大部分がSiの酸化反応に消費されて、酸化脱りん反応に寄与する酸素量が減少するからである。したがって、精錬剤を添加する前の含クロム溶銑の[%Si]は0.05質量%以下とするのが好ましい。
ステンレス鋼に代表される高クロム鋼の製品品質を向上するためには、その素材となる含クロム溶銑のP含有量を可能な限り低減する必要がある。後工程にてPが不可避的に混入することを考慮すると、脱りん処理を終了した後の含クロム溶銑のP含有量を 0.008質量%以下とするのが好ましい。さらに、本発明で使用する精錬剤の酸化力を考慮すれば、酸化脱りん反応で生じるスラグの発生量の増大を抑えるために、精錬剤を添加する前の含クロム溶銑のP含有量を 0.025質量%以下とするのが好ましい。
本発明で使用する精錬容器は、従来から普通鋼の溶銑の脱りん処理(いわゆる溶銑の予備処理)で使用する容器(たとえばトーピードカー,溶銑鍋等)が使用できる。含クロム溶銑の攪拌は、図2に示す機械攪拌の他に、ガス攪拌も使用できる。また、精錬剤の添加は、含クロム溶銑の上方から投入する方法、あるいは含クロム溶銑中に吹き込む方法(いわゆるインジェクション)等が使用できる。
つまり本発明を適用するにあたって、従来から使用している装置に大幅な改造を施す必要はない。しかも安価な精錬剤を使用して、酸化脱りん反応を効率的に促進するので、脱りん処理コストを削減できる。
溶融精錬で溶製した含クロム溶銑 180トンを溶銑鍋に収容し、図1に示す装置を用いて脱りん処理を行なった。
含クロム溶銑4を収容した溶銑鍋8を溶銑鍋台車9に載置し、溶銑鍋8の上方から含クロム溶銑4内に攪拌羽根3を浸漬した。攪拌羽根3は回転シャフト2を介してモーター1と連結されており、モーター1の回転に伴って攪拌羽根3が回転することによって、含クロム溶銑4を攪拌する。なお、これらのモーター1,回転シャフト2,攪拌羽根3からなる攪拌装置は、キャリッジ7によって上下に移動するように構成されている。
本発明で使用する精錬剤は、酸化鉄,石灰およびホタル石の混合物である。しかし表4に示すように、酸化鉄,石灰およびホタル石の配合比率を変化させて操業することを考慮して、酸化鉄,石灰,ホタル石は、それぞれ酸化鉄ホッパー11,石灰ホッパー12,ホタル石ホッパー13に個別に貯留した。そして含クロム溶銑4の脱りん処理を行なう際に、各ホッパーから所定量を切り出して含クロム溶銑4に投入した。
使用した精錬剤の成分、およびその精錬剤を添加する前の含クロム溶銑の成分,温度は表4に示す通りである。
Figure 0004655573
表4中の発明例1,2は、精錬剤の成分および精錬剤を添加する前の含クロム溶銑のC含有量,温度が本発明の範囲を満足する例である。発明例3は、発明例1,2と同様に精錬剤の成分および精錬剤を添加する前の含クロム溶銑のC含有量,温度が本発明の範囲を満足するものの、処理前のP含有量が0.03質量%と高くなっている。また発明例4では、同様に精錬剤の成分および精錬剤を添加する前の含クロム溶銑のC含有量,温度が本発明の範囲を満足するものの、処理前のSi含有量が0.10質量%と高くなっている。
比較例1は、精錬剤を添加する前の含クロム溶銑のC含有量が本発明の範囲を外れる例である。つまり (8)式から算出される[%C]SAT は6.08質量%であるのに対して、比較例1のC含有量は 6.2質量%であり、[%C]SAT を超える値になっている。このことは、脱りん処理の時間経過に伴って含クロム溶銑の温度が低下すれば、過剰のCが析出することを意味する。
比較例2は、精錬剤を添加する前の含クロム溶銑の温度が本発明の範囲を外れる例である。比較例3は、精錬剤の成分が本発明の範囲を外れる例である。
発明例1〜4および比較例1〜3は、いずれも精錬剤を添加した後、25分間、酸化脱りん反応を起こさせた。こうして脱りん処理が終了した後の含クロム溶銑のP含有量を測定し、脱りん量Δ[%P](Δ[%P]=(処理前の含クロム溶銑中P含有量)−(処理後の含クロム溶銑中P含有量))を調査した。さらに、含クロム溶銑を排出した後で溶銑鍋の耐火物の損耗状況を目視で観察した。また、脱りん処理で得られたCの酸化反応,Crの酸化反応の各種データを解析して、脱炭酸素効率とCrの酸化ロスを調査した。その結果は表5に示す通りである。なお、脱炭酸素効率は下記の (9)式で算出される値である。Crの酸化ロスは (4)式の反応によって酸化物としてスラグ中に取込まれるCrを指し、精錬剤を添加する前のCr含有量と脱りん処理が終了した後のCr含有量の差で評価した。
脱炭酸素効率(%)= 100×MC /MFLUX ・・・ (9)
C :含クロム溶銑中のCの酸化の消費された酸素量(Nm3 /ton )
FLUX:精錬剤中の酸化鉄の酸素換算量(Nm3 /ton )
Figure 0004655573
表5から明らかなように、発明例1,2は処理後のPが低位であり、良好な脱りん量Δ[%P]が得られ、 (3)式で表わされる酸化脱りん反応が効果的に進行した。したがって発明例1,2では、脱りん処理が終了した後の含クロム溶銑のP含有量がいずれも 0.008質量%以下であり、しかもCrの酸化ロスが少なくなっている。さらに発明例1,2では、溶銑鍋の耐火物には異常はなく、Cの析出も認められなかった。
発明例3はCrの酸化ロス,耐火物の異常損耗,Cの析出が見られず、脱りん量Δ[%P]も比較的良好であったが、処理前の含クロム溶銑中のP含有量が0.03質量%と高かったために、処理後の含クロム溶銑中のP含有量が発明例1,2と比べて高位になった。
また、発明例4もCrの酸化ロス,耐火物の異常損耗,Cの析出が見られなかったが、処理前の含クロム溶銑中のSi含有量が 0.1質量%と高かったために、精錬剤中の酸化鉄が含クロム溶銑中Siの酸化反応に消費され、その結果、脱りん量Δ[%P]は発明例1〜3に比べて低くなった。
これに対し、比較例1ではCの析出が認められ、精錬剤中の酸化鉄の大半がCの酸化反応に消費されたため、脱炭酸素効率が増大し、脱りん量Δ[%P]は非常に低位となった。比較例2では、溶銑鍋の耐火物が著しく損耗した。比較例3は、Crの酸化ロスが増大した。
本発明を適用する装置の例を模式的に示す断面図である。 実験装置の要部を模式的に示す断面図である。 (%CaO)/(%FeO)比と脱りん速度定数との関係を示すグラフである。 (%CaO)/(%CaF2 )比と脱りん速度定数との関係を示すグラフである。 [%C]と脱りん速度定数との関係を示すグラフである。 [%Si]と脱りん速度定数との関係を示すグラフである。
符号の説明
1 モーター
2 回転シャフト
3 攪拌羽根
4 含クロム溶銑
5 溶解炉
6 台車
7 キャリッジ
8 溶銑鍋
9 溶銑鍋台車
10 シューター
11 酸化鉄ホッパー
12 石灰ホッパー
13 ホタル石ホッパー

Claims (4)

  1. 精錬容器に収容したCr含有量 3.0質量%以上の含クロム溶銑に、酸化鉄含有物質、石灰含有物質およびホタル石含有物質からなる精錬剤を添加して、前記含クロム溶銑に含まれるPを酸化して除去する含クロム溶銑の酸化脱りん方法において、前記精錬剤を添加する前の含クロム溶銑の温度を1350〜1500℃の範囲内に制御するとともに、前記精錬剤を添加する前の含クロム溶銑のC含有量を 4.0質量%以上でかつ脱りん処理によってCが析出しない飽和量[%C] SAT 以下の範囲内に制御し、酸化鉄濃度(%FeO)と石灰濃度(%CaO)とホタル石濃度(%CaF2 )が下記の (1)式と (2)式を満足する精錬剤を前記含クロム溶銑に添加し、かつ前記飽和量[%C] SAT が下記の(8)式を用いて算出されることを特徴とする含クロム溶銑の酸化脱りん方法。
    0.4 ≦(%CaO)/(%CaF2 )≦ 2.0 ・・・ (1)
    0.4 ≦(%CaO)/(%FeO)≦ 2.0 ・・・ (2)
    [%C] SAT =0.003545T+0.067142[%Cr]−0.20072 ・・・ (8)
    (%FeO) :精錬剤の酸化鉄濃度(質量%)
    (%CaO) :精錬剤の石灰濃度(質量%)
    (%CaF2 ):精錬剤のホタル石濃度(質量%)
    T :含クロム溶銑の温度(℃)
    [%Cr] :含クロム溶銑のCr含有量(質量%)
  2. 前記精錬剤を添加する前の含クロム溶銑のP含有量が 0.025質量%以下で、前記脱りん処理を終了した後の含クロム溶銑のP含有量が0.008質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の含クロム溶銑の酸化脱りん方法。
  3. 前記精錬剤を添加する前の含クロム溶銑のSi含有量を0.05質量%以下に調整することを特徴とする請求項1または2に記載の含クロム溶銑の酸化脱りん方法。
  4. 前記含クロム溶銑を溶融還元法によって溶製し、次いで前記精錬容器に収容することを特徴とする請求項1、2または3に記載の含クロム溶銑の酸化脱りん方法。
JP2004284227A 2004-09-29 2004-09-29 含クロム溶銑の酸化脱りん方法 Expired - Fee Related JP4655573B2 (ja)

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