JP4655104B2 - 電池用電極箔、正電極板、電池、車両、電池搭載機器、電池用電極箔の製造方法、及び、正電極板の製造方法 - Google Patents

電池用電極箔、正電極板、電池、車両、電池搭載機器、電池用電極箔の製造方法、及び、正電極板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、電池の正電極板に用いる電池用電極箔、正電極板、電池、これを用いた車両
、電池搭載機器、電池用電極箔の製造方法、及び、正電極板の製造方法に関する。
近年、携帯電話、ノート型パソコン、ビデオカムコーダなどのポータブル電子機器やハ
イブリッド電気自動車等の車両の普及により、これらの駆動用電源に用いられる電池の需
要は増大している。
このような電池の中には、アルミニウム電極箔を基材とした正電極箔を用いた電池があ
る。例えば、Li化合物を含む正電極活物質を、このようなアルミニウム電極箔に塗布し
た正電極板を用いたリチウムイオン電池が挙げられる。
しかるに、アルミニウム電極箔の表面には、アルミニウム酸化物層(アルミナ層)が形
成されており、このようなアルミニウム電極箔上に正電極活物質を形成しても、これらの
間で導電性が低くなりがちである一方、このアルミニウム酸化物層では、耐蝕性が十分で
なく、塗布した正極活物質ペーストや、電池中の電解液で腐食が生じる虞がある。
そこで、特許文献1では、耐蝕性と導電性を向上させるべく、アルミニウム電極箔(ア
ルミニウム集電体)の表面に炭素膜を形成することが、また、特許文献2では、集電体の
表面をエッチングした後に、炭素、白金、あるいは金からなる導電性の被膜層を形成する
ものが開示されている。
特開平10−106585号公報 特開平11−250900号公報
しかしながら、特許文献1,2のように、炭素膜を形成する場合、量産性の高いスパッ
タリングによりこれを成膜しようとすると、絶縁性のダイヤモンドライクカーボン(DL
C)膜が形成され、むしろ導電性が低下する虞がある。
一方、白金や金を用いるのは、コストがかかり、現実的でない。
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであって、安価でありながら、良好な耐蝕性
及び導電性を備えた、電池の正電極板に用いる電池用電極箔を提供することを目的とする
。さらには、この電池用電極箔を用いた正電極板、この正電極箔を用いた電池、さらには
、これを用いた車両、電池搭載機器を提供すること、また、電池用電極箔の製造方法、及
び、正電極板の製造方法を提供することを目的とする。
その解決手段は、アルミニウム電極箔と、上記アルミニウム電極箔の表面に形成され、
上記アルミニウム電極箔をなす金属アルミニウムと直接接触してなる金属ジルコニウム、及び、この金属ジルコニウムの表面に形成されたジルコニア層からなる、厚さ5〜100nmの耐蝕層と、を備える電池用電極箔である。
本発明の電池用電極箔では、金属ジルコニウム、及び、この金属ジルコニウムの表面に形成されたジルコニア層からなる耐蝕層を備える。ジルコニウムはバルブ金属であり、その表面に自身の酸化物層(ジルコニア層)を形成して、内部への腐食の進行を防止するため、この電池用電極箔にアルカリ性の水溶液が触れる、あるいは、正電位とされて酸化されやすい状態としても、容易に腐食されない耐食性の良好な電池用電極箔となる。
さらに、この耐蝕層(ジルコニウム及びその表面の酸化物層)は導電性を有しており、
例えば、Zr(導電率40μΩ・cm)のように、Au(2.35μΩ・cm)、Cu(
1.67μΩ・cm)程ではないが、Ti(42μΩ・cm)よりも良好あるいは同程度
の導電性を有している。なお、Al23(1020μΩ・cm)である。しかも、この耐蝕層は、アルミニウム電極箔をなす金属アルミニウムと直接接触してなる。
従って、本発明の電池用電極箔では、通常のアルミニウム電極箔の表面に形成されるア
ルミニウム酸化物層(アルミナ層)が、アルミニウム電極箔と耐蝕層との間に介在しない
ので、接触抵抗の低い電池用電極箔となる。
さらに、アルミニウム電極箔の表面にジルコニウムからなる耐蝕層を形成した場合、耐
食性を調査(腐食ガス量調査)すると、5nm以下では、下地のアルミニウム電極箔が腐
食する場合があることがわかった。一方、100nmを超えると、耐蝕層を形成する際に
生じる応力で、アルミニウム電極箔にしわが生じ、平坦な電池用電極箔を形成し難くなる

従って、上述の範囲(5〜100nm)とするのが好ましい。
なお、ジルコニウム、及び、その表面に形成されたジルコニア層からなる耐蝕層の製造方法としては、アルミニウム電極箔の表面から、その表面に形成されている層(典型的には、アルミナ層)を、減圧下でプラズマエッチングにより除去し、金属アルミニウムを露出させた後に、引き続いて、スパッタリングなどの気相成長法で、耐蝕層を形成すると良い。
なかでも、スパッタリングによって耐蝕層を形成するのが好ましい。早い成膜速度を得
つつ、アルミニウム電極箔をなす金属アルミニウムと強固に密着させることができるから
である。
また、上述の電池用電極箔であって、前記耐蝕層は、その厚みが、10〜50nmであ
る電池用電極箔とすると良い。
耐蝕層の厚みを、10nm以上とすることで、下地のアルミニウム電極箔の腐食が充分
に防止できる。一方、耐蝕層の厚みが50nmを超えると、抵抗が増加するため、電池の
容量が低下する。また、耐蝕層を厚くすると、時間やコストが掛かるため、できるだけ薄
くしたい。従って、上述の範囲とするのがさらに好ましい。
さらに、他の解決手段は、上記電池用電極箔の主面上に担持された、正極活物質を含む
正極活物質層と、を備える正電極板である。
本発明の正電極板では、電池用電極箔に、前述の耐蝕層を備えているので、耐蝕性が高
い。しかも、電池用電極箔と正極活物質層との導電性も良好である。
さらに、耐蝕層が、低接触抵抗でアルミニウム電極箔に接触しているので、電池用電極
箔の主面上に担持された正極活物質層中の正極活物質が、アルミニウム電極箔と低抵抗で
、電子のやりとりをすることができる。即ち、低抵抗の正電極板とすることができ、内部
抵抗の低い電池を実現できる。
正極活物質層を担持させる段階において、正極活物質層となるペーストを塗布した場合
でも、電池用電極箔の主面が腐食されない利点がある。このため、正極活物質層が電池用
電極箔から脱落することなく、安定に正極活物質層を担持した正電極板となっている。ま
た、電池に使用した段階でも、電解液に接しても、電池用電極箔の主面が腐食されない。
このため、電池内において、腐食により、正極活物質層が電池用電極箔から脱落すること
なく、また、電解液が分解するなどの不具合を生じることなく、安定して正電極板を使用
することができる。
なお、正極活物質としては、実現する電池系における適宜の正極活物質を用いることが
できる。例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMn24、LiMnO2、LiCo0.5
Ni0.52、LiNi0.7Co0.2Mn0.12などのリチウム含有遷移金属酸化物が挙げられる。
さらに、他の解決手段は、上述の記載の正電極板を含む発電要素を備える電池である。
本発明の電池では、発電要素に前述の正電極板を含んでいる。このため、電池内で、正
極板が電解液に接しても、電池用電極箔の主面が腐食されない。従って、電池内において
、腐食により、正極活物質層が電池用電極箔から脱落することなく、また、電解液が分解
するなどの不具合を生じることなく、安定して使用することができる電池となる。
さらに、耐蝕層が、低接触抵抗でアルミニウム電極箔に接触しているので、電池用電極
箔の主面上に担持された正極活物質層中の正極活物質が、アルミニウム電極箔と低抵抗で
、電子のやりとりをすることができる。即ち、低抵抗の正電極板とすることができ、内部
抵抗が低く、大電流を流しうる電池を実現できる。
さらに、上述の電池であって、Liイオンを含む電解液を備え、前記正極活物質層は、
Li化合物からなる上記正極活物質を含む電池とすると良い。
Liイオン電池では、正極の電位(対Liイオン)が、4.0V近くにまで上がる場合
もあり、正電極の電池用電極箔が酸化されやすい状態となる。
しかるに、本発明の電池では、Liイオン電池でありながら、前述の電池用電極箔を用
いているので、この電池の使用中に電池用電極箔が酸化されることが無く、電池を安定し
て使用することができる。
なお、電解液としては、例えば、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、
ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの有機溶媒、あるいはこれらの混合有
機溶媒に、例えば、LiClO4、LiPF6、LiCF3SO3、LiAsF6、LiBF4
等の溶質を溶解させた電解液が挙げられる。このうち、例えば、上述のいずれかの有機溶
媒(混合有機溶媒)にLiClO4等の塩素系の溶質を含む電解液は、これを有する電池
において高出力を実現できるため、より好ましい。
さらに、上述の電池であって、前記電解液は、LiClO4を含んでなる電池とすると
良い。
電解液にLiClO4を用いると、電池の出力を大きくできる利点があるが、アルミニ
ウム電極箔はその表面にアルミニウム酸化物層が形成されていても、LiClO4を含む
電解液により腐食される。
これに対し、本件発明の電池では、電解液にLiClO4を含んでなるが、前述したジ
ルコニウム、及び、その表面に形成されたジルコニア層からなる耐蝕層を備えた電池用電極箔を備えた正電極板を用いているので、LiClO4を含む電解液に腐食されることなく使用することができ、このLiClO4の使用により、高出力の電池を実現することができる。
さらに、他の解決手段は、上述のいずれか1項に記載の電池を搭載した車両である。
本発明の車両では、前述のいずれかに記載の電池を搭載しているので、良好な走行特性
、安定した性能の車両とすることができる。
なお、車両としては、その動力源の全部あるいは一部に電池による電気エネルギを使用
している車両であれば良く、例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイ
ブリッド自動車、ハイブリッド鉄道車両、フォークリフト、電気車いす、電動アシスト自
転車、電動スクータが挙げられる。
さらに、他の解決手段は、上述のいずれか1項に記載の電池を搭載した電池搭載機器で
ある。
本発明の電池搭載機器では、前述のいずれかに記載の電池を搭載しているので、良好な
使用特性、安定した性能の電池搭載機器とすることができる。
なお、電池搭載機器としては、電池を搭載しこれをエネルギー源の少なくとも1つとし
て利用する機器であれば良く、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話、電池駆動の
電動工具、無停電電源装置など、電池で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業
機器が挙げられる。
さらに、他の解決手段は、アルミニウム電極箔の表面に、上記アルミニウム電極箔をな
す金属アルミニウムを露出させる露出工程と、露出した上記金属アルミニウム上に、金属
ジルコニウム、及び、この金属ジルコニウムの表面に形成されたジルコニア層からなる、厚さ5〜100nmの耐蝕層を直接形成する耐蝕層形成工程と、を備える電池用電極箔の製造方法である。
一般に、アルミニウム電極箔の表面には、アルミニウム酸化物層が自然に形成されてい
る。
そこで、本発明の電池用電極箔の製造方法では、露出工程において、アルミニウム電極
箔をなす金属アルミニウムを露出させ、その後、耐蝕層形成工程で、露出した金属アルミ
ニウム上に、ジルコニウム、及び、このジルコニウムの表面に形成されるジルコニア層からなる、厚さ5〜100nmの耐蝕層を直接形成する。
かくして、アルミニウム電極箔をなす金属アルミニウムと直接接触した、ジルコニウム
及びその酸化物からなる耐蝕層を有する電池用電極箔を、確実に製造することができる。
なお、耐蝕層形成工程としては、例えば、スパッタリング、真空蒸着、イオンプレーテ
ィングなどの物理蒸着(PVD)法や、CVD等の化学蒸着法(気相成長法)が挙げられ
る。特に、成膜速度も速くとれるので、スパッタリングが好ましい。
さらに、上述の電池用電極箔の製造方法であって、前記露出工程は、不活性ガスのイオ
ンによる物理的エッチングにより行う電池用電極箔の製造方法とすると良い。
本発明の電池用電極箔の製造方法では、不活性ガスのイオンによる物理的エッチングに
より、アルミニウム電極箔の表面に、金属アルミニウムを露出させる。
このような乾式のエッチングにより、金属アルミニウムを露出させるので、容易に次工
程である耐蝕層形成工程に移行して、耐蝕層を形成することができる。
不活性ガスのイオンによる物理的エッチングとしては、プラズマエッチング、スパッタ
イオンビームエッチングが挙げられる。このうち、スパッタイオンビームエッチングとし
ては、イオンに不活性ガスを用いて、スパッタによる物理的エッチングを行う手法が挙げ
られる。
さらに上述の電池用電極箔の製造方法であって、前記露出工程と前記耐蝕層形成工程と
を、前記アルミニウム電極箔の表面に露出させた前記金属アルミニウムが、実質的に酸化
しない低酸素雰囲気下で、続けて行う電池用電極箔の製造方法とすると良い。
本発明の電池用電極箔の製造方法では、露出工程と耐蝕層形成工程とを、低酸素雰囲気
下で続けて行うので、一旦露出させた金属アルミニウムを酸化させることなく、この上に
、耐蝕層を直接且つ確実に形成することができる。
なお、金属アルミニウムが、実質的に酸化しない低酸素雰囲気としては、例えば、10
-1Pa以下の真空中が挙げられる。
さらに、他の解決手段は、電池用電極箔と、上記電池用電極箔の主面上に担持された、
正極活物質を含む正極活物質層と、を備える正電極板の製造方法であって、上記電池用電
極箔は、請求項1または請求項2に記載の電池用電極箔であり、上記正極活物質層は、L
i化合物からなる上記正極活物質を含み、上記電池用電極箔の上記主面に、上記Li化合
物からなる正極活物質を含み、水を溶媒とした水系活物質ペーストを塗布し、乾燥させて
、上記電池用電極箔の上記主面上に上記正極活物質層を形成する正極活物質層形成工程を
備える正電極板の製造方法である。
Li化合物を含む水系活物質ペーストを用いた場合には、このLi化合物によりペース
ト自身が強アルカリとなるため、これを電池用電極箔に塗布すると、この電池用電極箔を
なすアルミニウムが腐食されて、水素ガスを発生し、内部に空隙を多数含んだ正極活物質
層ができやすい。
これに対し、本件発明の正電極板の製造方法では、電池用電極箔として前述の電池用電
極箔、つまり、ジルコニウム及びその酸化物からなる耐蝕層を備えるものを用いたので、
上述の水系活物質ペーストを用いても、電池用電極箔が腐食せず、空隙の発生を抑制した
緻密な正極活物質層を形成することができる。
(実施形態1)
次に、本発明の実施形態1について、図面を参照しつつ説明する。
まず、本実施形態1にかかる電池1について説明する。図1に電池1の斜視図を、図2
に電池1の部分破断断面図を示す。
本実施形態1にかかる電池1は、発電要素20及び電解液60を備える捲回形のリチウ
ムイオン二次電池である。この電池1は、発電要素20及び電解液60を矩形箱状の電池
ケース10に収容している。この電池ケース10は、共にアルミニウム製の電池ケース本
体11及び封口蓋12を有する。このうち電池ケース本体11は有底矩形箱形であり、内
側全面に樹脂からなる絶縁フィルム(図示しない)を貼付している。
また、封口蓋12は矩形板状であり、電池ケース本体11の開口部11Aを閉塞して、
この電池ケース本体11に溶接されている。この封口蓋12には、後述する発電要素20
と接続している正極集電部材71及び負極集電部材72のうち、それぞれ先端に位置する
正極端子部71A及び負極端子部72Aが貫通して、上面12aから突出している。これ
ら正極端子部71A及び負極端子部72Aと封口蓋12との間には、それぞれ樹脂製の絶
縁部材75が介在して、互いを絶縁している。さらに、この封口蓋12には矩形板状の安
全弁77も封着されている。
また、図示しない電解液60は、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボ
ネート(EMC)とを、体積比でEC:EMC=3:7に調整した混合有機溶媒に、溶質
としてLiClO4を添加し、リチウムイオンを1mol/lの濃度とした有機電解液で
ある。なお、一般的に、リチウムイオン二次電池では、電解液にLiClO4のような塩
素系の溶質を用いれば、LiPF6のようなフッ素系の溶質を用いるよりも、高い出力が
可能である。このため、本実施形態1の電池1では、高出力の電池を実現することができ
る。
また、発電要素20は、帯状の正電極板30及び負電極板40が、ポリエチレンからな
る帯状のセパレータ50を介して扁平形状に捲回されてなる(図1参照)。なお、この発
電要素20の正電極板30及び負電極板40はそれぞれ、クランク状に屈曲した板状の正
極集電部材71または負極集電部材72と接合されている。
発電要素20のうち負電極板40は、図3に示すように、長手方向DAに帯状に延び、
銅からなる負極箔42と、この負極箔42の第1箔主面42a及び第2箔主面42b上に
それぞれ積層配置している、第1負極活物質層41A及び第2負極活物質層41Bとを有
している。この負極活物質層41A,41Bには、それぞれ図示しないグラファイト及び
結着剤が含まれる。
次いで、上述の発電要素20を構成する正電極板30について説明する。この正電極板
30は、図4に示すように、長手方向DAに帯状に延びる正極箔32と、この正極箔32
の主面(第1箔主面32a,第2箔主面32b)上にそれぞれ担持された、第1正極活物
質層31A及び第2正極活物質層31Bとを有している。なお、これら第1正極活物質層
31A及び第2正極活物質層31Bは、その内部に多数の気泡を含まない緻密な正極活物
質層である。
このうち、第1正極活物質層31A及び第2正極活物質層31Bはいずれも、LiNi
2からなる正極活物質31X、アセチレンブラック(AB、図示しない)、ポリテトラ
フルオロエチレン(PTFE、図示しない)及びカルボキシルメチルセルロース(CMC
、図示しない)を含む。なお、第1,第2正極活物質層31A,31B内における、これ
らの重量比は、いずれも正極活物質31X:AB:PTFE:CMC=100:10:3
:1とした。なお、第1正極活物質層31A及び第2正極活物質層31Bは、後に詳述す
るが、上述の各物質をイオン交換水AQ中に分散させた活物質ペースト31Pを、正極箔
32の第1箔主面32a及び第2箔主面32bにそれぞれ塗工して乾燥させてなる。
また、正極箔32は、長手方向DAに帯状に延びる金属アルミニウムからなるアルミニ
ウム電極箔(以下、単にアルミ箔と言う)33と、このアルミ箔33の第1箔表面33a
及び第2箔表面33b上にそれぞれ担持された、第1耐蝕層34A及び第2耐蝕層34B
とを有している(図5参照)。この第1耐蝕層34A及び第2耐蝕層34Bは、いずれも
ジルコニウム、及び、このジルコニウムの表面に形成されたジルコニア層からなり、厚さ方向DTの層厚TZはいずれも10nmである。
なお、このうちのアルミ箔33は、これをなす金属アルミニウムが第1耐蝕層34Aと
第2耐蝕層34Bとに直接接触して、これを担持している。
金属アルミニウムは、その特性上、大気中で表面にごく薄い(5nm以下程度の)アル
ミナからなる不動態膜(酸化物層)が形成される。しかし、本実施形態1の正極箔32は
、後述する製造方法(露出工程)により、アルミ箔33の第1箔表面33a及び第2箔表
面33b上に形成された不動態膜を除去して、金属アルミニウムを露出させてある。そし
て、露出後に、箔表面33a,33b上に耐蝕層34A,34Bが形成してある。このた
め、本実施形態1の正極箔32は、アルミナ層が介在せず、金属アルミニウムの箔表面3
3a,33bに耐蝕層34A,34Bが直接接触している。
ところで、発明者らは、上述の正極箔32の特性を把握するため、この正極箔を有する
電池を試作して、各放電電流における電池の容量密度について検証した。
具体的には、金属アルミニウムが露出したアルミ箔の第1箔表面上に第1耐蝕層を直接
形成した正極箔を正電極板に用いた2032型のコイン型電池(以下、電池Aとも言う)
を製作した。一方、電池Aの比較例として、アルミ箔の第1箔表面に酸化アルミニウム(
Al23)からなるアルミナ層(層厚=5nm)が生じている正極箔を用いた電池(以下、電池Bとも言う)を製作した。なお、電池Aでは第1耐蝕層側に、電池Bではアルミナ層側に正極活物質層を同体積担持させて正電極板とした。また、正電極板の材質以外については全て同様に製作した(例えば、負極(対極)に金属リチウムを用いている)。
製作した各電池について、定電流放電試験を実施した。具体的には、25℃の温度環境
下で、満充電から放電終了電圧(=3.0V)まで定電流(30C)で放電させた。なお
、電池Aでは、第1耐蝕層の層厚が1,5,10,30,50,80,100nmについ
て評価した。このときの電池Aの結果を図6に示す。
図6のグラフは、電池Aにおける第1耐蝕層の各層厚の容量密度を示す。この容量密度
は、満充電時の電池電圧(=4.1V)から放電終了電圧(=3.0V)までの放電容量
を活物質の質量で割ったものである。
電池Bの容量密度が92mAh/gであったのに対し、電池Aの容量密度のうち、耐蝕
層の層厚が1,5,10,30nmのものについては、それぞれ100,98,95,8
8mAh/gの容量密度であり、電池Bよりも大きいことが判る。この結果から、耐蝕層
の層厚を30nm以下にすれば、電池Bよりも大きな容量密度を有することが判る。
さらに、発明者らは、第1耐蝕層34A及び第2耐蝕層34Bをなすジルコニウム、及び、このジルコニウムの表面に形成されたジルコニア層からなる耐蝕層の耐食性を調べるため、以下のような評価を行った。
即ち、耐蝕実験として、第1,第2耐蝕層34A,34Bをなすジルコニウム、及び、その表面のジルコニア層からなる耐蝕層を箔表面に有するアルミニウム箔(箔厚15μm)を10cm×10cmにしたものを、pH14に調整したLiOH水溶液100mlに5分間浸漬した。なお、ジルコニウム、及び、その表面のジルコニア層からなる耐蝕層の層厚が1,5,10,30,50,80,100nmについて評価した。そのときに発生した腐食ガス(水素ガス)の体積をそれぞれ測定した。この耐蝕実験についての結果を、図7に示す。
なお、比較実験として、アルミナ層(層厚5nm)を箔表面に有するアルミニウム箔(
箔厚15μm)を10cm×10cmにしたものを用いて、耐蝕実験と同様に浸漬して、
そのときに発生した腐食ガス(水素ガス)の体積を測った。この比較実験の結果について
も、耐蝕層厚を0nmとして、図7に記載した。
図7は、耐蝕実験及び比較実験にかかる、ジルコニウム、及び、その表面のジルコニア層からなる耐蝕層の層厚と腐食ガス量との関係を示すグラフである。このグラフによれば、○印で示すアルミナ層はあるが耐蝕層の無い場合(比較実験)には、腐食ガス量は428mlであったのに対し、1nmの耐蝕層を形成すると、腐食ガス量は145mlに減少する。さらに、耐蝕層が厚くなるにつれて腐食ガス量は減少し、層厚が5nmで腐食ガス量は25ml、層厚が10nmで腐食ガス量は10mlとなり、層厚が10nmを超える(例えば20mm以上)と、腐食ガス量は0mlとなることが判る。従って、耐蝕層34A,34Bの層厚TZを5nm以上とするのが良く、さらには、20nm以上とするのが良いことが判る。
但し、耐蝕層を厚くしすぎると(具体的には層厚を100nm以上とすると)、耐蝕層
を形成する際に生じる応力で、アルミニウム電極箔にしわが生じ、平坦な電池用電極箔を
形成し難くなることが判った。また、耐蝕層34A,34Bの層厚TZが厚いと、抵抗が
増加し、電池の容量が低下することから、層厚TZを100nm以下、より好ましくは、
50nm以下とするのが良いことも判ってきた。耐蝕層34A,34Bの層厚TZを厚く
しようとすると、これらの形成に時間及びコストが掛かるため、できるだけ薄くしたいと
いう要望もある。
以上より、アルミ箔33に形成する耐蝕層34A,34Bの層厚TZを、5〜100n
mとするのが好ましいことが判る。
さらには、耐蝕層34A,34Bの厚みを、10nm以上とすることで、腐食ガス量を
より減らすことができる。即ち、下地のアルミニウム電極箔の腐食が充分に防止できる。
一方、耐蝕層の厚みを50nm以下とすれば、抵抗の増加を抑制し、電池容量の低下を抑
制できる。また、時間やコストを削減することができる。従って、上述の範囲、即ち、1
0〜50nmとするのがさらに好ましい。
以上より、本実施形態1にかかる正極箔32では、この正極箔32にアルカリ性の水溶
液が触れる(例えば、溶媒が強アルカリとなる、Li化合物からなる正極活物質を含む水
系の活物質ペースト31P(後述)を塗布したとき)、あるいは、正電位とされて酸化さ
れやすい状態としても、容易に腐食されない耐食性の良好な正極箔となる。
しかも、本実施形態1の正極箔32は、金属アルミニウムと耐蝕層34A,34Bとが
直接接触している。このため、アルミニウム箔の表面にアルミニウム酸化物層が形成され
ている場合に比して、この正極箔32の箔主面32a,32b(耐蝕層34A,34B上
)に正極活物質層31A,31Bを形成した場合に、これらの間の導電性を良好に保つこ
とができる。即ち、耐蝕層34A,34Bをなすジルコニウムは導電性を有しており(導
電率40μΩ・cm)、しかも、この耐蝕層34A,34Bは、アルミ箔33をなす金属
アルミニウムと直接接触してなる。
従って、本実施形態1の正極箔32では、通常のアルミニウム電極箔の表面に形成され
るアルミナ層が、アルミ箔33と耐蝕層34A,34Bとの間に介在しないので、正極活
物質層31A,31Bとの間で、接触抵抗の低い正極箔32とすることができる。
これを確認すべく、発明者らは、アルミ箔33の箔表面33a,33bに、直接、ジル
コニウム、及び、その表面のジルコニア層からなる耐蝕層34A,34Bを形成した正極箔32同士を接触させた場合に、電極箔同士の間に生じる抵抗値を測定した。
具体的には、図8(a)に示すように、幅を2.0cmに切断したリボン状の正極箔3
2に導線LFを接合してなる試料A(耐蝕層の層厚:20nm)を2つ用意し、互いが2
.0cm×2.0cmからなる接触面で接触するように、2つの試料A同士を重ね合わせ
る(図8(b)参照)。さらに、接触面を挟圧可能な2つの平面を有する挟圧装置により
、重ね合わせ方向DPに沿って試料A同士を押圧する。なお挟圧装置は、10MPa/c
2の挟圧力Pで接触面を挟圧する。そして、挟圧装置で挟圧したまま、試料Aのそれぞ
れの導線LF,LFに1.0Aの電流を流す。そのときの電圧から、試料A同士の間に生
じる抵抗値を算出したところ、2.37mΩ・cm2であった。
また、比較例として、表面にアルミナ層(層厚:約5nm)を有するアルミニウム箔に
導線を接合してなる試料Bについても、上述の試料Aと同様に行って、試料B同士の間に
生じる抵抗値を算出したところ、8.44mΩ・cm2であった。
この結果から、試料A同士の間の抵抗値の方が、試料B同士の間よりも、低い抵抗値で
あることが判る。つまり、試料Aをなす正極箔32のアルミ箔33と耐蝕層34A,34
Bとの間に生じる抵抗は、試料Bをなすアルミニウム箔とアルミナ層との間に生じる抵抗
よりも低いことが判る。
かくして、本実施形態1の正電極板30は、正極箔32の箔主面32a,32b上に担
持された正極活物質層31A,31B中の正極活物質31Xが、アルミ箔33と低抵抗で
、電子のやりとりをすることができる。即ち、低抵抗の正電極板30とすることができ、
内部抵抗の低い電池1を実現できる。
また、正極箔32に正極活物質層31A,31Bを担持させる段階において、正極活物
質層31A,31Bとなる活物質ペースト31Pを塗布した場合でも、正極箔32の箔主
面32a,32bが腐食されない利点もある。このため、正極活物質層31A,31Bが
正極箔32から脱落することなく、安定に正極活物質層31A,31Bを担持した正電極
板30とすることができる。また、電池1に使用した段階でも、電解液60に接しても、
正極箔32の箔主面32a,32bが腐食されない。このため、電池1内において、腐食
により、正極活物質層31A,31Bが正極箔32から脱落することなく、また、電解液
60が分解するなどの不具合を生じることなく、安定して正電極板30を使用することが
できる。
また、本実施形態1の電池1では、発電要素20に上述の正電極板30を含んでいる。
このため、電池1内で、正電極板30が電解液60に接しても、正極箔32の箔主面32
a,32bが腐食されない。従って、電池1内において、腐食により、正極活物質層31
A,31Bが正極箔32から脱落することなく、また、電解液60が分解するなどの不具
合を生じることなく、安定して使用することができる電池となる。
さらに、第1,第2耐蝕層34A,34Bが、低接触抵抗でアルミ箔33に接触してい
るので、正極箔32の箔主面32a,32b上に担持された正極活物質層31A,31B
中の正極活物質31Xが、アルミ箔33と低抵抗で、電子のやりとりをすることができる
。即ち、低抵抗の正電極板30とすることができ、内部抵抗が低く、大電流を流しうる電
池1を実現できる。
また実施形態1の電池1は、リチウムイオン二次電池であるので、正電極板30の電位
(対Liイオン)が、4.0V近くにまで上がる場合もあり、正電極板30の正極箔32
が酸化されやすい状態となる。
しかるに、本実施形態1の電池1では、リチウムイオン二次電池でありながら、正極箔
32を用いているので、この電池1の使用中に正極箔32が酸化されることが無く、電池
1を安定して使用することができる。
また、正電極板30の耐蝕層34A,34Bにはジルコニウム及びジルコニア層を用いているので、アルミ箔33がLiClO4を含む電解液60に腐食されることなく使用することができる。
次に、本実施形態にかかる電池1の製造方法について、図面を参照しつつ説明する。
まず図9に、電池1の製造方法のうち、正極箔32の露出工程及び耐蝕層形成工程を担
う装置100の概略図を示す。この装置100は、アルミ箔33の箔表面33a,33b
から、その箔表面33a,33bに形成されているアルミナ層を、減圧下でプラズマエッ
チングにより除去し、箔表面33a,33bに金属アルミニウムを露出させた後に、引き
続きスパッタリングで耐蝕層を形成する装置である。
この装置100は、図9に示すように隣接する第1減圧室111、エッチング室112
、第2減圧室113、スパッタリング室114及び第3減圧室115のほか、アルミ箔3
3の巻出し部101、巻取り部102、複数の補助ローラ140、及び導通補助ローラ1
40Nを備えている。なお、巻出し部101に捲回されたアルミ箔33には、その箔表面
33a,33bに約5nmの層厚のアルミナ層が形成されている。また、いずれの減圧室
111,113,115、エッチング室112及びスパッタリング室114のアルミ箔3
3用の入口は、各室内の減圧あるいは真空圧を保持可能な形態を有している。
このうち、第1減圧室111、第2減圧室113及び第3減圧室115は、それらの外
部に配置された真空ポンプ(図示しない)によって、室内を10-1Pa程度まで減圧する
。これにより、これらと隣接する次述のエッチング室112及びスパッタリング室114
を大気圧から切り離すことができるので、エッチング室112及びスパッタリング室11
4をより減圧することができる。
また、これら第1減圧室111、第2減圧室113及び第3減圧室115の室内にはア
ルゴンガスを少量充填し、工程中(特に、露出工程と耐蝕層形成工程の間)におけるアル
ミ箔33の酸化反応(アルミナ層の形成)を抑制する。
また、エッチング室112には、室内に平板状の第1電極121と、この第1電極12
1と平行な平板状の第2電極122とを有する平行平板型プラズマエッチング装置が設置
されている。なお、この室内には、アルゴンガスが10-1Pa程度充填されている。
また、スパッタリング室114には、室内にジルコニウムからなるターゲット133F
を担持する第3電極(負極)131と、平板状の第4電極(正極)132とを有するスパ
ッタリング装置が設置されている。なお、この室内には、アルゴンガスが10-1Pa程度
充填されている。このスパッタリング室114で、アルミ箔33の箔表面33a,33b
に向けて耐蝕層を形成する。
まずアルミ箔33は、この第1箔表面33aを図9中上方に向けて、巻出し部101か
ら巻き出され、複数の補助ローラ140により長手方向DAに移動する。そして、アルゴ
ン雰囲気で減圧された第1減圧室111を通過後、エッチング室112において露出工程
を行う。
具体的には、室内を10-1Paにして、アルゴンガス雰囲気中で、アルミナ層を有する
アルミ箔33の第2箔表面33b側を第2電極122に接触させて、Arエッチングを行
う。なお、このときの第1電極121の出力を200Wとする。
すると、アルミ箔33の第1箔表面33a上のアルミナ層が、その第1箔表面33aか
ら除去されて、そこにはアルミ箔33をなす金属アルミニウムが露出する。
金属アルミニウムが露出したアルミ箔33は、エッチング室112から、アルゴン雰囲
気で減圧された第2減圧室113を通過してスパッタリング室114に移動する。このス
パッタリング室114でそのアルミ箔33に対し耐蝕層形成工程を行う。
具体的には、室内を3×10-1Paにして、室内にアルゴンガスを11.5sccm(
sccm:1.013Pa、25℃において単位分当たりに流れる流量(cc))の流量
で流しアルゴン雰囲気とする。アルミ箔33を第4電極132に接触させて、第3電極1
31と第4電極132との間に直流電力を与え(200W)、ターゲット133Fからジ
ルコニウムを放出させる。かくして、ジルコニウムからなる第1耐蝕層34Aをアルミ箔33の第1箔表面33aに形成させる。
上述の耐蝕層形成工程後、アルミ箔33は、第3減圧室115を通過して巻取り部10
2で巻き取られる。
次に、この装置100を再度用いて、アルミ箔33の第2箔表面33bについて同様の
工程を繰り返す。かくして、アルミ箔33の第1箔表面33aに、ジルコニウム、及び、その表面のジルコニア層からなる第1耐蝕層34Aを、第2箔表面33bに、同じく、ジルコニウム、及び、その表面のジルコニア層からなる第2耐蝕層34Bをそれぞれ形成した正極箔32が作製される。
本実施形態1の電池1の製造方法では、エッチング室112の露出工程で、アルミ箔3
3に自然に形成されたアルミナ層を除去し、アルミ箔33をなす金属アルミニウムを露出
させ、その後、スパッタリング室114の耐蝕層形成工程で、露出した金属アルミニウム
上に、ジルコニウム、及び、その表面のジルコニア層からなる耐蝕層34A,34Bを直接形成させる。
かくして、アルミ箔33をなす金属アルミニウムと直接接触した、耐蝕層34A,34
Bを有する正極箔32を、確実に製造することができる。
また、エッチング室112では、不活性ガスであるアルゴンガスのイオンによるエッチ
ングにより、アルミ箔33の箔表面33a,33bに、金属アルミニウムを露出させる。
このような乾式のエッチングにより、金属アルミニウムを露出させるので、容易に次工
程である耐蝕層形成工程に移行して、アルミ箔33に耐蝕層34A,34Bを形成するこ
とができる。
また、上述の製造方法では、エッチング室112における露出工程と、スパッタリング
室114における耐蝕層形成工程とを、アルゴン雰囲気で減圧された第2減圧室113を
通過して連続的に行う。即ち、いずれも低酸素雰囲気下である、エッチング室112、第
2減圧室113及びスパッタリング室114を通じて、露出工程と耐蝕層形成工程とを続
けて行うので、アルミ箔33に一旦露出させた金属アルミニウムを酸化させることなく、
この上に、耐蝕層34A,34Bを直接且つ確実に形成することができる。
次いで、耐蝕層34A,34Bに対し親水化処理を行う。
アルミ箔33の第1,第2箔表面33a,33bに形成された第1,第2耐蝕層34A
,34Bは、次述の水系の活物質ペースト31Pをはじいてしまう虞がある。
このため、コロナ放電処理により、耐蝕層34A,34B(第1,第2箔主面32a,
32b)に複数の親水性の官能基(例えば、水酸基等)を付着させる。具体的には、窒素
ガスと水素ガスとの混合ガス中(体積比がN2:H2=98:2)において、放電量を500W・min/m2としてコロナ放電処理を行った。酸素ガスを含有した雰囲気中でコロナ放電処理を行うと、酸化膜が厚くなり抵抗が高くなってしまうが、上述のように、窒素ガスと水素ガスとの混合ガス中でこの処理を行うことで、酸化膜による抵抗増加を防止しつつ密着性を向上させることが可能である。
これによって、耐蝕層34A,34B(第1,第2箔主面32a,32b)は、塗布さ
れた活物質ペースト31Pをはじくのを抑制できる。なお、親水化処理としては、上述の
コロナ放電処理のほかに、例えば、大気圧プラズマや電子ビームを用いた処理をしても良
い。
次いで、電池1の正極活物質形成工程のうち、塗工装置200を用いた担持工程につい
て説明する。
この塗工装置200は、図10に示すように、巻出し部201、ダイ210、乾燥炉2
20、巻取り部202、及び複数の補助ローラ240を備えている。
このうち、ダイ210は、活物質ペースト31Pを内部に保持してなる金属製のペース
ト保持部211と、このペースト保持部211に保持した活物質ペースト31Pを正極箔
32の第1箔主面32aあるいは第2箔主面32bに向かって活物質ペースト31Pを連
続的に吐出する吐出口212とを有する。
この吐出口212はスリット状で、長手方向DAに移動する正極箔32の第1箔主面3
2aあるいは第2箔主面32b)上に、帯状に活物質ペースト31Pを吐出するよう、正
極箔32の幅方向(図10中、奥行き方向)に平行に開口している。
なお、ダイ210が保持する活物質ペースト31Pは、LiNiO2からなる正極活物
質31Xのほか、アセチレンブラック(AB、図示しない)、ポリテトラフルオロエチレ
ン(PTFE、図示しない)およびカルボキシルメチルセルロース(CMC、図示しない
)をイオン交換水AQに分散させて混練してなる流動体である。また、この活物質ペース
ト31Pに含まれる、正極活物質31X、AB、PTFEおよびCMCの重量比は、前述
の通り、正極活物質31X:AB:PTFE:CMC=100:10:3:1である。な
お、この活物質ペースト31Pは、LiNiO2からなる正極活物質31Xを含むため、
強いアルカリ性を示す。
また、乾燥炉220では、正極箔32に塗布された活物質ペースト31Pに向けて、熱
風を送ることができる。これにより、正極箔32に塗布された活物質ペースト31Pは、
この乾燥炉220内を移動している間に、徐々に乾燥が進み、乾燥炉220を通過時には
、活物質ペースト31Pは全乾燥、即ち、活物質ペースト31P内の水分(イオン交換水
AQ)は全て蒸発する。
また、帯状の正極箔32は、複数の補助ローラ240により、その長手方向DAに移動
する。
この塗工装置200では、まず、巻出し部201に捲回した帯状の正極箔32を長手方
向DAに移動させ、その正極箔32の第1箔主面32aに、ダイ210により活物質ペー
スト31Pを塗布する。その後は、乾燥炉220で正極箔32と共に活物質ペースト31
Pを乾燥させて、第1箔主面32aに未圧縮正極活物質層(図示しない)を担持させた片
面担持電極箔32Kを、巻取り部202に一旦巻き取る。
次に、この塗工装置200を再度用いて、上述の片面担持電極箔32Kにおいて、正極
箔32の第2箔主面32bにも活物質ペースト31Pを塗布する。そして、この活物質ペ
ースト31Pを乾燥炉220で全乾燥させる。かくして、正極箔32の両箔主面32a,
32bに未圧縮正極活物質層(図示しない)を積層配置した、プレス前の正電極板30B
が作製される。
なお、上述したように、水系活物質ペースト31P自身が強アルカリとなるため、これ
を、例えば、アルミ箔に塗布すると、このアルミ箔をなす金属アルミニウムが腐食されて
、水素ガスを発生し、内部に空隙を多数含んだ正極活物質層ができやすい。
これに対し、本実施形態1の電池1の製造方法では、正極箔32としてジルコニウム、及び、その表面に形成されたジルコニア層からなる耐蝕層34A,34Bを備えるものを用いたので、上述の水系活物質ペースト31Pを用いても、正極箔32が腐食せず、空隙の発生を抑制した緻密な正極活物質層31A,31Bを形成することができる。
次いで、図11に、電池1の正極活物質形成工程のうち、プレス装置300を用いたプ
レス切断工程を示す。
プレス装置300は、巻出し部301、プレスローラ310、巻取り部302、切断刃
330および複数の補助ローラ320を備えている。そして、このプレス装置300では
、巻出し部301から上述のプレス前正電極板30Bを、2つのプレスローラ310の間
に通すことで、厚み方向に圧縮された上述の正電極板30を得ることができる。その後、
切断刃330で中央を切断して2つに分けた後、2つの巻取り部302で正電極板30を
巻き取る。
上述のプレス切断工程の後は、作製した正電極板30を、別途用意した負電極板40と
共にセパレータ50を介して捲回して発電要素20とする。さらに、この発電要素20に
正極集電部材71および負極集電部材72を溶接し、電池ケース本体11に挿入し、電解
液60を注入後、封口蓋12で電池ケース本体11を溶接で封口する。かくして、電池1
が完成する(図1参照)。
(実施形態2)
本実施形態2にかかる車両400は、前述した電池1を複数含むバッテリパック410
を搭載したものである。具体的には、図12に示すように、車両400は、エンジン44
0、フロントモータ420およびリアモータ430を併用して駆動するハイブリッド自動
車である。この車両400は、車体490、エンジン440、これに取り付けられたフロ
ントモータ420、リアモータ430、ケーブル450、インバータ460、及び、矩形
箱形状のバッテリパック410を有している。このうちバッテリパック410は、前述し
た実施形態1にかかる電池1を複数、矩形箱形状のバッテリケース411の内部に収容し
てなる。
このため、本実施形態2にかかる車両400では、前述に記載の電池1を搭載している
ので、良好な走行特性、安定した性能の車両とすることができる。
(実施形態3)
また、本実施形態3のハンマードリル500は、前述した電池1を含むバッテリパック
510を搭載したものであり、図13に示すように、バッテリパック510、本体520
を有する電池搭載機器である。なお、バッテリパック510はハンマードリル500の本
体520のうち底部521に可能に収容されている。
このため、本実施形態3にかかるハンマードリル500では、前述の記載の電池1を搭
載しているので、良好な使用特性、安定した性能の電池搭載機器とすることができる。
以上において、本発明を実施形態1,2,3に即して説明したが、本発明は上記した実
施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用で
きることは言うまでもない。
例えば、実施形態1等では、電池の電池ケースを矩形形状の収容容器としたが、例えば
、円筒形状や、ラミネート形状の収容容器としても良い。また、実施形態1等では、電池
用電極箔の作製において、プラズマエッチングによってアルミ箔33のアルミナ層を除去
したが、例えば、スパッタイオンビームエッチングを用いてアルミナ層を除去しても良い
。なお、この場合、イオンに不活性ガスを用いて、スパッタによる物理的エッチングを行
う手法が挙げられる。
また、電池用電極箔の作製において、スパッタリングによって耐蝕層を形成したが、例
えば、スパッタリングの他の、真空蒸着、イオンプレーティングなどの物理蒸着(PVD
)法や、CVD等の化学蒸着法(気相成長法)としても良い。
また、実施形態1等では、LiNiO2を有する正極活物質31Xとしたが、例えば、
LiNiO2以外の、LiCoO2、LiMn24、LiMnO2、LiCo0.5Ni0.52
、LiNi0.7Co0.2Mn0.12などのリチウム含有遷移金属酸化物としても良い。
さらに、実施形態1等では、電解液60の溶質にLiClO4を用いたが、例えば、L
iPF6、LiCF3SO3、LiAsF6、LiBF4等でも良い。
実施形態1,実施形態実施形態にかかる電池の斜視図である。 実施形態1,実施形態実施形態にかかる電池の断面図である。 実施形態1の負電極板の斜視図である。 実施形態1,実施形態実施形態の正電極板の斜視図である。 実施形態1,実施形態の正電極板の拡大端面図(図4のA部)である。 容量密度と電池電圧との関係を示すグラフである。 容量密度と電池電圧との関係を示すグラフである。 正極箔同士の間の抵抗値測定を示す説明図である。 実施形態1の露出工程及び耐蝕層形成工程の説明図である。 実施形態1の正極活物質形成工程の説明図である。 実施形態1の正極活物質形成工程の説明図である。 実施形態2にかかる車両の説明図である。 実施形態3にかかるハンマードリルの説明図である。
1 電池
20 発電要素
30 正電極板
31A 第1正極活物質層(正極活物質層)
31B 第2正極活物質層(正極活物質層)
31P 活物質ペースト(水系活物質ペースト)
31X 正極活物質
32 正極箔(電池用電極箔)
33 アルミ箔(アルミニウム電極箔)
33a 第1箔表面((アルミニウム電極箔の)表面)
33b 第2箔表面((アルミニウム電極箔の)表面)
34A 第1耐蝕層(耐蝕層)
34B 第2耐蝕層(耐蝕層)
60 電解液
400 車両
500 ハンマードリル(電池搭載機器)
AQ イオン交換水(水)
TZ 層厚((耐蝕層の)厚み)

Claims (12)

  1. アルミニウム電極箔と、
    上記アルミニウム電極箔の表面に形成され、上記アルミニウム電極箔をなす金属アルミ
    ニウムと直接接触してなる金属ジルコニウム、及び、この金属ジルコニウムの表面に形成されたジルコニア層からなる、厚さ5〜100nmの耐蝕層と、を備える
    電池用電極箔。
  2. 請求項1に記載の電池用電極箔であって、
    前記耐蝕層は、その厚みが、10〜50nmである
    電池用電極箔。
  3. 請求項1または請求項2に記載の電池用電極箔と、
    上記電池用電極箔の主面上に担持された、正極活物質を含む正極活物質層と、を備える
    正電極板。
  4. 請求項3に記載の正電極板を含む発電要素を備える
    電池。
  5. 請求項4に記載の電池であって、
    Liイオンを含む電解液を備え、
    前記正極活物質層は、Li化合物からなる上記正極活物質を含む
    電池。
  6. 請求項5に記載の電池であって、
    前記電解液は、LiClO4を含んでなる
    電池。
  7. 請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載の電池を搭載した車両。
  8. 請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載の電池を搭載した電池搭載機器。
  9. アルミニウム電極箔の表面に、上記アルミニウム電極箔をなす金属アルミニウムを露出
    させる露出工程と、
    露出した上記金属アルミニウム上に、金属ジルコニウム、及び、この金属ジルコニウムの表面に形成されたジルコニア層からなる、厚さ5〜100nmの耐蝕層を直接形成する耐蝕層形成工程と、を備える
    電池用電極箔の製造方法。
  10. 請求項9に記載の電池用電極箔の製造方法であって、
    前記露出工程は、不活性ガスのイオンによる物理的エッチングにより行う
    電池用電極箔の製造方法。
  11. 請求項10に記載の電池用電極箔の製造方法であって、
    前記露出工程と前記耐蝕層形成工程とを、前記アルミニウム電極箔の表面に露出させた
    前記金属アルミニウムが、実質的に酸化しない低酸素雰囲気下で、続けて行う
    電池用電極箔の製造方法。
  12. 電池用電極箔と、
    上記電池用電極箔の主面上に担持された、正極活物質を含む正極活物質層と、を備える
    正電極板の製造方法であって、
    上記電池用電極箔は、請求項1または請求項2に記載の電池用電極箔であり、
    上記正極活物質層は、Li化合物からなる上記正極活物質を含み、
    上記電池用電極箔の上記主面に、上記Li化合物からなる正極活物質を含み、水を溶媒
    とした水系活物質ペーストを塗布し、乾燥させて、上記電池用電極箔の上記主面上に上記
    正極活物質層を形成する正極活物質層形成工程を備える
    正電極板の製造方法。
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