JP4654479B2 - 硬化性組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は改質された硬化性組成物に関する。特に、優れた硬化性および耐汚染性を有し、また該組成物から得られた硬化物に塗装を施す場合、塗料の乾燥性が改善される硬化性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
加水分解性シリル基を有する各種重合体を硬化させてシーラント、接着剤などに使用する方法はよく知られており、工業的に有用である。このような重合体のうち、特に主鎖がポリオキシアルキレンである重合体は室温で液状であり、かつ硬化物が比較的低温でも柔軟性を保持する特徴を活かして、シーラント、接着剤などに利用されているが、一般的には作業性向上と、得られる硬化物の物性調節のために可塑剤と併用される場合が多い。
【0003】
しかし、通常用いられているフタル酸ジオクチル(DOP)のような低分子量の可塑剤を使用した場合には可塑剤が表面にしみ出す現象、いわゆるブリードアウトが生じ、硬化物の表面や硬化物に塗装が施される場合には、その塗料に空気中の塵埃が付着し汚染されやすい問題があった。この問題を解決するために高分子可塑剤を使用する方法が種々提案されている。
【0004】
特開昭63−108058には、可塑剤として分子量500〜3000のポリオキシプロピレングリコールが提案されている。このような可塑剤を用いると、硬化物の表面に塗料を上塗りした場合、DOP添加系や可塑剤無添加系と比較して塗料汚染が生じにくく、硬化物の硬化過程でしわや亀裂の発生がない効果がある一方、低粘度のため移行性が高く、塗料の耐汚染性が不充分な問題があった。
【0005】
特開平1−279958には、可塑剤として両末端がアリル化された数平均分子量2400〜7500のポリオキシプロピレン系重合体、および末端に水酸基を有し、数平均分子量5100、重量平均分子量/数平均分子量(以下、Mw/Mn)=1.1かつ数平均分子量1000以下の成分が4%であるポリオキシプロピレン系重合体を用いると、Mw/Mn=1.1かつ数平均分子量3000のポリオキシプロピレングリコールやDOPと比較してアルキッド系塗料の乾燥性が改善されることが記載されている。しかし両末端がアリル化されたポリオキシプロピレン系重合体は、製造工程が複雑となる問題がある。また、数平均分子量5100のポリオキシプロピレン系重合体は、粘度が低くブリードアウトしやすいので、塗料の汚染が大きい問題がある。
【0006】
特開平2−142850には、可塑剤として分子量700〜3000のポリオキシプロピレンモノn−ブチルエーテルまたは分子量600〜2100のポリオキシプロピレンモノフェニルエーテルを用いると、DOP添加系や可塑剤無添加系と比較して、硬化物表面に粘着を生じにくく、また上塗りされた塗料の汚染が発生しにくいことが記載されている。しかし、これらの化合物は低粘度のため移行性が高く、塗料の耐汚染性は不充分であった。
【0007】
特開平5−339490には、Mw/Mnが1.5以下かつ分子量1000〜4000のポリオキシアルキレンモノオールを用いると、硬化物の耐汚染性や硬化性に優れることが記載されている。しかし、これらの化合物は低粘度のため移行性が高く、塗料の耐汚染性は不充分であった。また、Mw/Mn=1.35かつ分子量6000のポリオキシアルキレンモノオールは、耐汚染性と硬化遅延しにくい点が優れるが、作業性や揺変性が良くないことが記載されている。
【0008】
また特開平7−113049には、水酸基数1〜4かつ水酸基あたりの分子量が1000〜2000のポリオキシアルキレンモノオールまたはテトラオールを用いると、DOP添加系と比較して、硬化性に優れた硬化性組成物を与えることが記載されている。しかし、これらの化合物は低粘度のために移行性が高く、塗料の耐汚染性については不充分であった。
【0009】
ポリオキシアルキレン重合体は優れた耐汚染性を有し、加水分解性シリル基含有有機重合体との相溶性にも優れ、可塑化効率も高いが、末端水酸基が加水分解性シリル基含有有機重合体中の加水分解性シリル基と反応する可能性があるために、組成によっては増粘や硬化遅延などの問題を生じ実用上問題がある。これは硬化触媒が共存する1液組成物において特に著しい。
【0010】
これらの問題を解決するために末端の水酸基をアリルオキシ基、カルボニルオキシ基などの他の基に変換することも提案されているが、その工程が複雑となる。また基によっては、触媒存在下の加水分解性シリル基との反応性が水酸基よりも高くなる場合もあり好ましくない。この傾向は、カルボニルオキシ基に変換した場合著しい。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記のような欠点を解決した硬化性組成物であり、保存後の硬化性の変化が少なく、硬化物の表面の汚染性が改良され、さらに該組成物からの硬化物の表面に塗装を施す場合、その乾燥性が良好でしわがよりにくい硬化性組成物の提供を目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、特定範囲の水酸基を有し、かつ特定範囲の粘度を有するポリオキシアルキレン重合体を可塑剤として用いることを特徴とする下記の発明である。加水分解性シリル基含有有機重合体(A)、および、水酸基の数が〜4であり、水酸基あたりの数平均分子量が2700〜5000でありかつ25℃の粘度が15〜55ポアズである水酸基含有ポリオキシアルキレン重合体(B)、を含有してなる硬化性組成物。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明における加水分解性シリル基含有有機重合体(A)中の加水分解性シリル基としては式(1)で表される基が好ましい。
−SiXa1 3-a・・・(1)
ただし、式(1)中、R1は炭素数1〜20の置換または非置換の1価の炭化水素基、Xは水酸基または加水分解性基、aは1、2または3である。また、R1が複数個存在するときはそれらのR1は同じでも異なってもよく、Xが複数個存在するときはそれらのXは同じでも異なってもよい。
加水分解性シリル基含有有機重合体(A)中の加水分解性シリル基の数は平均して1以上であり、1〜8が好ましく、2〜6が特に好ましい。その位置は分子鎖末端または側鎖末端が好ましい。
【0014】
加水分解性シリル基含有有機重合体(A)としては、ポリオキシアルキレン、ポリエステルおよびポリカーボネートから選ばれる有機重合体であって、式(1)で表される加水分解性シリル基を有するものが挙げられる。またエチレン、プロピレン、イソブチレンなどのモノオレフィン類、(メタ)アクリル酸エステル類、ビニルアルキルエーテル類、ブタジエン、クロロプレンなどのジオレフィン類、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンなどのハロゲン化モノオレフィン類などの重合性単量体と加水分解性シリル基含有重合性単量体を共重合して得られる加水分解性シリル基含有ビニル系重合体などが挙げられる。
【0015】
加水分解性シリル基含有有機重合体(A)としては、ポリオキシアルキレン、ポリエステルおよびポリカーボネートから選ばれる有機重合体であることが好ましく、加水分解性シリル基含有ポリオキシアルキレン重合体(以下、(a)という)が好ましい。
【0016】
以下、加水分解性シリル基含有ポリオキシアルキレン重合体(a)について説明する。このような重合体は、下記に述べるように官能基を有するポリオキシアルキレン重合体を原料とし、末端に適宜有機基を介して加水分解性シリル基を導入して製造されることが好ましい。
原料ポリオキシアルキレン重合体としては、触媒の存在下ヒドロキシ化合物などの活性水素化合物を開始剤としてモノエポキシドなどを反応させて製造される水酸基末端のものが好ましい。
【0017】
モノエポキシドとしてはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらは、単独使用でも2種以上の併用でもよい。これらのうち、プロピレンオキシドが好ましい。
触媒としては、カリウム系化合物やセシウム系化合物などのアルカリ金属触媒、複合金属シアン化物錯体触媒、金属ポルフィリン触媒、ホスファゼニウム化合物触媒などが挙げられる。
【0018】
原料ポリオキシアルキレン重合体として高分子量のポリオキシアルキレン重合体を使用する場合には、アルカリ触媒などを用いて製造した比較的低分子量のポリオキシアルキレン重合体に塩化メチレンなどの多ハロゲン化合物を反応させて多量化して得られるポリオキシアルキレン重合体が使用できる。
【0019】
複合金属シアン化物錯体触媒を用いて製造したポリオキシアルキレン重合体は、アルカリ触媒を用いた場合に比べMw/Mnの値が小さく、良好な硬化性が得られるため、複合金属シアン化物錯体触媒を用いて製造したポリオキシアルキレン重合体を用いることが好ましい。
【0020】
複合金属シアン化物錯体としては亜鉛ヘキサシアノコバルテートを主成分とする錯体が好ましく、なかでもエーテルおよび/またはアルコール錯体が好ましい。エーテルとしてはエチレングリコールジメチルエーテル(グライム)およびジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)が好ましく、アルコールとしてはt−ブタノールが好ましい。
【0021】
原料ポリオキシアルキレン重合体の官能基数は2以上が好ましく、硬化物特性として柔軟性を強調したい場合には2または3が特に好ましく、接着性や硬化性を強調したい場合には3〜8が特に好ましい。
特に好ましい原料ポリオキシアルキレン重合体はポリオキシプロピレンジオールとポリオキシプロピレントリオールである。また、下記(イ)や(ニ)の方法を用いる場合、アリル末端ポリオキシプロピレンモノオールなどのエチレン性不飽和末端のポリオキシアルキレン重合体も使用できる。
【0022】
式(1)で表される加水分解性シリル基について説明する。式(1)中R1は炭素数1〜20の置換または非置換の1価の炭化水素基であり、好ましくは炭素数8以下のアルキル基、フェニル基またはフルオロアルキル基である。特に好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基などである。R1が複数個存在するときはそれらのR1は同じでも異なってもよい。
【0023】
Xにおける加水分解性基としては、たとえばハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルケニルオキシ基、(N−置換)カルバモイル基、アミノ基、アミノオキシ基、ケトキシメート基などがある。
【0024】
これらのうち炭素原子を有する加水分解性基の炭素数は6以下が好ましく、4以下が特に好ましい。好ましいXは炭素数4以下の低級アルコキシ基、特にメトキシ基、エトキシ基またはプロポキシ基が例示できる。Xが複数個存在するときはそれらのXは同じでも異なってもよい。
aは1、2または3である。
【0025】
加水分解性シリル基の原料ポリオキシアルキレン重合体への導入の方法は特には限定されないが、たとえば以下の(イ)〜(ニ)の方法で導入できる。
(イ)水酸基を有するポリオキシアルキレン重合体の末端にエチレン性不飽和基を導入したものと、式(2)で表されるヒドロシリル化合物を反応させる方法。
HSiXa1 3-a・・・(2)
ただし、式(2)中、R1、X、aは前記に同じである。
【0026】
ここでエチレン性不飽和基を導入する方法としては、i)エチレン性不飽和基および官能基を有する化合物をポリオキシアルキレン重合体の末端水酸基に反応させて、エーテル結合、エステル結合、ウレタン結合またはカーボネート結合などにより結合させる方法、または、ii)アルキレンオキシドを重合する際に、アリルグリシジルエーテルなどのエチレン性不飽和基含有エポキシ化合物を添加して共重合させることにより原料ポリオキシアルキレン重合体の側鎖にエチレン性不飽和基を導入する方法、などが挙げられる。
【0027】
(ロ)水酸基を有するポリオキシアルキレン重合体の末端に式(3)で表される化合物を反応させる方法。
1 3-a−SiXa−R2NCO・・・(3)
ただし、式(3)中、R1、X、aは前記に同じであり、R2は炭素数1〜17の2価炭化水素基である。
【0028】
(ハ)水酸基を有するポリオキシアルキレン重合体の末端にトリレンジイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物を反応させてイソシアネート基末端とした後、該イソシアネート基に式(4)で表されるケイ素化合物のW基を反応させる方法。
1 3-a−SiXa−R2W・・・(4)
ただし、式(4)中、R1、R2、X、aは前記に同じであり、Wは水酸基、カルボキシル基、メルカプト基およびアミノ基(1級または2級)から選ばれた活性水素含有基である。
【0029】
(ニ)水酸基を有するポリオキシアルキレン重合体の末端にエチレン性不飽和基を導入し、そのエチレン性不飽和基と、Wがメルカプト基である式(4)で表されるケイ素化合物のメルカプト基を反応させる方法。
【0030】
また、加水分解性シリル基含有ポリオキシアルキレン重合体(a)の存在下、溶剤の存在下または非存在下に、重合性単量体を重合させて得られる重合体組成物(b)も重合体(A)として使用できる。さらに加水分解性シリル基含有ポリオキシアルキレン重合体(a)の前駆体の存在下に、同様に重合性単量体を重合させて、さらに該前駆体に加水分解性シリル基を導入して得られる重合体組成物(c)も重合体(A)として使用できる。
【0031】
重合性単量体とは、たとえば下記式(5)で表される化合物の単独または2種以上の混合物である。
CR3 2=CR45・・・(5)
式(5)中、R3は水素原子、ハロゲン原子または1価の炭化水素基であり、R4、R5は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、グリシドキシカルボニル基、シアノ基、アルケニル基、アシルオキシ基、カルバモイル基およびピリジル基から選ばれる基である。R3としては、水素原子または1価の炭化水素基が好ましい。
【0032】
重合性単量体としては、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸、そのエステルまたは(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリル酸系単量体、アクリロニトリル、2,4−ジシアノブテン−1などのシアノ基含有単量体、酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体、イソプレン、ブタジエン、クロロプレンなどのジオレフィン系単量体、エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのモノオレフィン系単量体、および、その他不飽和エステル類、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンなどのハロゲン化オレフィン類、ビニルアルキルエーテルなどがある。
【0033】
また、重合性単量体としては下記式(6)で表される加水分解性シリル基含有の化合物を用いてもよい。
7−SiXa1 3-a・・・(6)
式(6)中、R7はエチレン性不飽和基を有する1価の有機基であり、X、R1、aは前記に同じである。
【0034】
式(6)で表される化合物としては具体的には以下の化合物が例示できる。
CH2=C(CH3)COO(CH23Si(OCH33
CH2=C(CH3)COO(CH23Si(CH3)(OCH32
CH2=C(CH3)Si(OCH33
CH2=C(CH3)Si(CH3)(OCH32
【0035】
さらに加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤の存在下で重合性単量体を重合できる。加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤としては以下の化合物などが挙げられる。
HS(CH23Si(OCH33
HS(CH23Si(CH3)(OCH32
【0036】
加水分解性シリル基含有有機重合体(A)の数平均分子量は1000〜50000が好ましい。加水分解性シリル基含有有機重合体(A)として加水分解性シリル基含有ポリオキシアルキレン重合体(a)を使用する場合には、数平均分子量が8000〜50000のものを使用することが好ましい。数平均分子量が8000未満のときは硬化体が硬くなり、かつ伸びが低くなるので好ましくない。数平均分子量が50000を超えると硬化体の柔軟性および伸びは問題ないが、粘度が著しく大きくなり、実用性が低くなる。数平均分子量は10000〜30000が特に好ましい。
【0037】
本発明における水酸基含有ポリオキシアルキレン重合体(B)は、主鎖が本質的にポリオキシアルキレン鎖であり加水分解性シリル基を有しない。水酸基含有ポリオキシアルキレン重合体(B)は、加水分解性シリル基含有ポリオキシアルキレン重合体(a)の原料ポリオキシアルキレン重合体と同様に、触媒の存在下活性水素化合物を開始剤としてモノエポキシドなどを反応させて製造されることが好ましい。低分子量の不純物含有量が少ない方が発明の効果が大きく、複合金属シアン化物錯体などの触媒を用いて製造されることがより好ましい。
水酸基含有ポリオキシアルキレン重合体(B)の水酸基の数は1以上であり、2〜8が好ましく、2〜4が特に好ましい。水酸基の数は開始剤の活性水素の数に等しい。
【0038】
水酸基含有ポリオキシアルキレン重合体(B)の25℃における粘度(以下、単に粘度という)は15〜100ポアズ、好ましくは20〜90ポアズである。粘度が20ポアズ未満の場合、塗膜の汚染が悪くなる傾向にある。また、水酸基あたりの数平均分子量は2700〜5000である。
【0039】
このような水酸基含有ポリオキシアルキレン重合体(B)としては、たとえば複合金属シアン化物触媒を使用して製造した数平均分子量7000〜10000、粘度20〜48ポアズのポリオキシプロピレンジオール、数平均分子量8100〜15000、粘度20〜90ポアズのポリオキシプロピレントリオール、数平均分子量10000〜20000、粘度24〜90ポアズのポリオキシプロピレンテトラオールなどのポリオキシアルキレンポリオールが挙げられる。
【0040】
水酸基含有ポリオキシアルキレン重合体(B)は単独使用でも2種以上の併用でもよい。水酸基含有ポリオキシアルキレン重合体(B)は、加水分解性シリル基含有有機重合体(A)製造時に溶剤として配合しておいてもよい。
水酸基含有ポリオキシアルキレン重合体(B)の使用量は、加水分解性シリル基含有有機重合体(A)100gに対して10〜500gが好ましく、20〜200gが特に好ましい。
【0041】
本発明において、水酸基含有ポリオキシアルキレン重合体(B)は可塑剤の効果を発現するために必須成分であるが、組成物の相溶性を制御するなどの目的のために、少量であればその他の可塑剤も併用できる。そのような可塑剤としては公知の可塑剤が使用できる。可塑剤の使用量は、水酸基含有ポリオキシアルキレン重合体(B)に対して同質量以下が好ましく、特に50質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。しかし、硬化物表面に塗装を施す場合、塗料の乾燥性が悪化することから併用しないことが好ましく、併用しないことが最も好ましい。併用しうる可塑剤の具体例としては以下のものが挙げられる。
【0042】
DOP、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸エステル類、アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチル、オレイン酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル類、リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジルなどのリン酸エステル類、エポキシ化大豆油、3,4−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸−ビス(2−エチルヘキシルエステル)、エポキシステアリン酸ベンジルなどのエポキシ可塑剤、塩素化パラフィン、水酸基を有しないポリオキシアルキレンなど。
【0043】
本発明では加水分解性シリル基含有有機重合体(A)を硬化させるために硬化触媒を使用してもよい。硬化触媒を使用しない場合、加水分解性シリル基の架橋反応速度は充分ではないので、使用することが好ましい。硬化触媒の使用量としては、加水分解性シリル基含有有機重合体(A)100gに対して0.001〜10gが好ましく、0.01〜5gが特に好ましい。
【0044】
硬化触媒としてはジブチルスズジラウレートなどのような各種金属のカルボン酸塩、アセチルアセトナート錯体、アセト酢酸エステレート錯体、各種の酸および塩基物質が挙げられる。
具体的には、スズビス(2−エチルヘキサノエート)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズビスアセチルアセトナート、鉛ビス(2−エチルヘキサノエート)などの金属塩、有機アミン、ジブチルアミン−2−エチルヘキサノエートなどのようなアミン塩などが挙げられる。これらの触媒は単独使用でも2種以上の併用でもよい。
【0045】
その他の公知の充填剤も併用できる。充填剤の使用量は加水分解性シリル基含有有機重合体(A)100gに対して50〜800gが好ましく、50〜250gが特に好ましい。充填剤の具体例としては以下のものが挙げられる。これらの充填剤は単独使用でも2種以上の併用でもよい。
【0046】
炭酸カルシウム、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸、カーボンブラック、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、酸化第二鉄、酸化亜鉛、活性亜鉛華、シラスバルン、ガラスバルン、樹脂バルン、木粉、パルプ、木綿チップ、マイカ、くるみ穀粉、もみ穀粉、グラファイト、アルミニウム微粉末、フリント粉末などの粉体状充填剤、ガラス繊維、ガラスフィラメント、炭素繊維、ケブラー繊維、ポリエチレンファイバなどの繊維状充填剤。
【0047】
本発明の組成物は、さらに公知の種々の添加剤などを含有してもよい。添加剤としてはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、アミノシラン、エポキシシランなどの接着性付与剤、水添ヒマシ油などのチキソ性付与剤、酸化鉄、酸化クロム、酸化チタンなどの無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどの有機顔料、各種の老化防止剤、紫外線吸収剤などが使用できる。
本発明の硬化性組成物は、シーリング材、防水剤、接着剤、コーティング剤などに使用しうるが、特に硬化物自体の充分な強度や高い接着性が要求される用途に好適である。
【0048】
【実施例】
本発明の組成物を実施例(例1〜10、22〜24)および比較例(例11〜21、25〜29)に基づき説明するが、本発明はこれらに限定されない。
ポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量は、その水酸基価から換算した水酸基あたりの分子量(Mc)および開始剤の積で計算した、水酸基価換算分子量である。水酸基価はJIS K1557記載の方法により求めた。加水分解性シリル基含有ポリオキシアルキレン重合体(a)、末端アリルオキシ化ポリオキシアルキレン重合体の数平均分子量は原料としたポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量から求めた。
【0049】
ポリオキシアルキレンポリオール、加水分解性シリル基含有有機重合体の粘度はJIS K1557記載の方法により25℃で測定した。
製造例1〜4は加水分解性シリル基含有ポリオキシアルキレン重合体(a)の製造例、製造例5〜19は可塑剤の製造例である。なお、得られた可塑剤について表1に示す。
【0050】
(製造例1)
グリセリンにプロピレンオキシド(以下、POという)を反応させて得られた数平均分子量1000のポリオキシプロピレントリオール(以下、ポリオールta)を開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテート−グライム錯体触媒(以下、触媒ZHという)の存在下POを反応させて、数平均分子量20000のポリオキシプロピレントリオールを得た。
【0051】
このポリオキシプロピレントリオール1000gを耐圧反応器に入れ、さらにナトリウムメトキシドの28質量%メタノール溶液を、ナトリウムが水酸基に対して1.05倍モルとなる量を添加し、120℃で30分間撹拌した。撹拌後、減圧下で脱メタノール反応を行った後、アリルクロリド13gを添加して1時間反応させた。減圧下で未反応の揮発成分を留去し、副生した無機塩などを除去精製して末端アリルオキシ化ポリオキシプロピレン重合体を得た。不飽和基の定量から、水酸基95%、アリルオキシ基5%であることがわかった。
【0052】
得られた末端アリルオキシ化ポリオキシプロピレン重合体500gに対し、耐圧反応器中で、ジビニルテトラメチルジシロキサン白金錯体のキシレン溶液(白金3%含有)を50μm添加し、均一に撹拌した後、メチルジメトキシシラン7.5gを添加し、70℃で5時間反応させた。さらに、イルガノックス245(ヒンダードフェノール系酸化防止剤)を1000ppm添加撹拌し、反応器から抜き出して、淡黄色で粘度180ポアズの末端メチルジメトキシシリル基含有ポリオキシプロピレン重合体(P−1)を得た。
【0053】
(製造例2)
ジプロピレングリコールにPOを反応させて得られた数平均分子量1000のポリオキシプロピレンジオール(以下ポリオールdb)を開始剤とし、触媒ZHの存在下POを反応させて、数平均分子量16000のポリオキシプロピレンジオール(以下ポリオールdc)を得た後、製造例1と同様に行い、水酸基の95%がアリルオキシ基に変換された、末端アリルオキシ化ポリオキシプロピレン重合体を得た。
【0054】
得られた末端アリルオキシ化ポリオキシプロピレン重合体500gに対し、製造例1と同様に行い(メチルジメトキシシランの使用量5.6g)、淡黄色で粘度120ポアズの末端メチルジメトキシシリル基含有ポリオキシプロピレン重合体(P−2)を得た。
【0055】
(製造例3)
ポリオールtaを開始剤とし、触媒ZHの存在下POを反応させて、数平均分子量15000のポリオキシプロピレントリオール(以下ポリオールte)を得た後、製造例1と同様に行い、水酸基の95%がアリルオキシ基に変換された、末端アリルオキシ化ポリオキシプロピレン重合体を得た。
【0056】
得られた末端アリルオキシ化ポリオキシプロピレン重合体500gに対し、製造例1と同様に行い(メチルジメトキシシランの使用量7.8g)、淡黄色で粘度60ポアズの末端メチルジメトキシシリル基含有ポリオキシプロピレン重合体(P−3)を得た。
【0057】
(製造例4)
製造例2で得られたポリオキシプロピレン重合体(P−2)300gを耐圧反応器に入れ、100℃に加熱し、撹拌下、メチルメタクリレート80g、スチレン30g、ブチルアクリレート15g、ステアリルメタクリレート30g、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート3g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.5g、アゾビスイソブチロニトリル3gの混合溶液を3時間かけて滴下した。さらにアゾビスイソブチロニトリル1gをメタノール10gに溶かした溶液を30分かけて滴下し、さらに1時間加熱撹拌した。減圧下で、未反応モノマーおよび溶媒を留去して、重合体組成物(P−4)を得た。
【0058】
(製造例5)
ポリオールdbを開始剤として、触媒ZHの存在下POを反応させ、精製後、数平均分子量7000、粘度20ポアズのポリオキシプロピレンジオール(Q−1)を得た。
【0059】
(製造例6)
ポリオールdbを開始剤として、触媒ZHの存在下POを反応させ、精製後、数平均分子量10000、粘度48ポアズのポリオキシプロピレンジオール(Q−2)を得た。
【0060】
(製造例7)
ポリオールtaを開始剤として、触媒ZHの存在下POを反応させ、精製後、数平均分子量8100、粘度20ポアズのポリオキシプロピレントリオール(Q−3)を得た。
【0061】
(製造例8)
ポリオールtaを開始剤として、触媒ZHの存在下POを反応させ、精製後、数平均分子量12000、粘度55ポアズのポリオキシプロピレントリオール(Q−4)を得た。
【0062】
(製造例9)
製造例3で製造されたポリオールteを精製して、粘度90ポアズのポリオキシプロピレントリオール(Q−5)を得た。
【0063】
(製造例10)
ポリオールdbを開始剤として、触媒ZHの存在下POを反応させ、精製後、数平均分子量6000、粘度13ポアズのポリオキシプロピレンジオール(Q−6)を得た。
【0064】
(製造例11)
製造例2で製造されたポリオールdcを精製して、粘度150ポアズのポリオキシプロピレンジオール(Q−7)を得た。
【0065】
(製造例12)
ポリオールtaを開始剤として、触媒ZHの存在下POを反応させ、精製後、数平均分子量20000、粘度150ポアズのポリオキシプロピレントリオール(Q−8)を得た。
【0066】
(製造例13)
n−ブタノールにPOを反応させて得られた平均分子量約1000のポリオキシプロピレンモノオールを開始剤として、触媒ZHの存在下POを反応させ、精製後、数平均分子量6000、粘度43ポアズのポリオキシプロピレンモノオール(Q−9)を得た。
【0067】
(製造例14)
ペンタエリスリトールにPOを反応させて得られた平均分子量約1000のポリオキシプロピレンテトラオールを開始剤として、触媒ZHの存在下POを反応させ、精製後、数平均分子量8000、粘度18ポアズのポリオキシプロピレンテトラオール(Q−10)を得た。
【0068】
(製造例15)
製造例14で製造したポリオキシプロピレンテトラオール(Q−10)を開始剤として、触媒ZHの存在下POを反応させ、精製後、数平均分子量13000、粘度35ポアズのポリオキシプロピレンテトラオール(Q−11)を得た。
【0069】
(製造例16)
製造例5で得られたポリオキシプロピレンジオール(Q−1)1000gを用いて、製造例1と同様に末端水酸基のアリルオキシ化を行い(アリルクロリド添加量24.0g)、アリルオキシ基98%、水酸基2%の末端アリルオキシ化ポリオキシプロピレン重合体(AQ−1)を得た。
【0070】
(製造例17)
製造例6で得られたポリオキシプロピレンジオール(Q−2)1000gを用いて、製造例1と同様に末端水酸基のアリルオキシ化を行い(アリルクロリド添加量16.8g)、アリルオキシ基97%、水酸基3%の末端アリルオキシ化ポリオキシプロピレン重合体(AQ−2)を得た。
【0071】
(製造例18)
製造例7で得られたポリオキシプロピレントリオール(Q−3)1000gを用いて、製造例1と同様に末端水酸基のアリルオキシ化を行い(アリルクロリド添加量31.6g)、アリルオキシ基98%、水酸基2%の末端アリルオキシ化ポリオキシプロピレン重合体(AQ−3)を得た。
【0072】
(製造例19)
製造例9で得られたポリオキシプロピレントリオール(Q−5)1000gを用いて、製造例1と同様に末端水酸基のアリルオキシ化を行い(アリルクロリド添加量16.8g)、アリルオキシ基が96%、水酸基が4%の末端アリルオキシ化ポリオキシプロピレン重合体(AQ−4)を得た。
【0073】
得られたQ−1〜AQ−4について、可塑剤の名称、分子量、水酸基あたりの分子量(Mc)および粘度を表1に示す。
また、例1〜29で使用した主な原料を以下に示す。
【0074】
膠質炭酸カルシウム:白艶華CCR、白石工業社製、
重質炭酸カルシウム:ホワイトンSB、白石工業社製、
酸化チタン:KR−820、KR−630、石原産業社製。
【0075】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤:チヌビン327、チバスペシャリティケミカルズ社製、
ヒンダードアミン系光安定剤:LA−63P、旭電化工業社製、
ヒンダードフェノール系酸化防止剤:イルガノックス1010、チバスペシャリティケミカルズ社製。
【0076】
脂肪酸アミドチキソ性付与剤:ディスパロン6500、楠本化成工業社製、
樹脂バルン:マイクロスフェアMFL80GCA、松本油脂製薬社製、
エポキシ樹脂:エピコート828、油化シェルエポキシ社製。
【0077】
サンソサイザーEPS:3,4−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ビス(2−エチルヘキシル)、新日本理化社製、
光硬化性化合物:アロニクスM309、東亞合成社製、
EL−5030:分子量5000のポリオキシプロピレントリオール、旭硝子社製。
【0078】
U−220:ジブチルスズビスアセチルアセトナート、日東化成工業社製、
No.918:ジブチルスズオキシドとDOPの反応物、三共有機合成社製。
【0079】
(例1〜10(実施例)および例11〜21(比較例))
表2〜5に示した重合体および可塑剤を表2〜5に示した量(単位:g)、膠質炭酸カルシウム75g、重質炭酸カルシウム75g、酸化チタン(KR−820)の20g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の1g、ヒンダードアミン系光安定剤1g、ヒンダードフェノール系酸化防止剤1g、脂肪酸アミドチキソ性付与剤3gをよく混練し、100℃に加熱して減圧下で脱水乾燥を行った。常温に冷却後、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン3g、グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン0.5g、桐油2g、樹脂バルン2g、ビニルトリメトキシシラン2g、テトラエチルシリケート0.5gをよく混練してから、さらに表2〜5に示したスズ化合物の表2〜5に記載した量を混練し、乾燥雰囲気下でシーラント用カートリッジに充填して1液型の硬化性組成物を得た。これを下記の試験に供して評価した。結果を表2〜5に示す。
【0080】
(塗装試験)
型枠を使用して、硬化性組成物を3cm×10cm×0.5cmのシート状に成形し、20℃、65%湿度の条件下で7日間、つづいて50℃、65%湿度の条件下で7日間養生して硬化させた。得られたシートにアトムペイント社製のアルキッド塗料(溶剤型アルキッド塗料)または水性アクリル塗料を塗布し、常温で乾燥させ、3週間後の塗料の乾燥状態および塗膜表面の平滑性を観察した。
【0081】
また、塗装を施したシートを60℃に7日間加熱した後、JISテストパウダー関東ロームNo.8を2g吹き付けた後に水洗いし、目視で汚染物質の付着状態を観察した。表中の○は、表面にしわなし、×は表面にしわありを表す。また、塗料の乾燥状態は全くべたつきがないものを10、ほとんど硬化していないものを1として、10段階で評価した。さらに、塗膜表面の汚染状態は全く汚染されていないものを10とし、一番結果の良くなかったものを1として10段階で評価した。
【0082】
(タックフリータイム)
カートリッジを50℃で4週間保存前後での硬化時間の変化を観察した。硬化時間は、20℃、65%湿度の条件下で硬化性組成物の表面が硬化して指に樹脂が付着しなくなるまでの時間(タックフリータイム、時間(h)分(m))とした。
【0083】
【表1】
Figure 0004654479
【0084】
【表2】
Figure 0004654479
【0085】
【表3】
Figure 0004654479
【0086】
【表4】
Figure 0004654479
【0087】
【表5】
Figure 0004654479
【0088】
(例22〜24(実施例)および例25〜29(比較例))
表6、7に示した重合体および可塑剤を、表6、7に示した量(単位:g)、グリセリンのトリストリメチルシリルエーテル1g、膠質炭酸カルシウム110g、重質炭酸カルシウム30g、酸化チタン(KR−630)の10g、樹脂バルン2g、エポキシ樹脂5g、水添ヒマシ油5g、光硬化性化合物5g、桐油5g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の1g、ヒンダードアミン系光安定剤1g、ヒンダードフェノール系酸化防止剤1gを混練して主剤とし、そこにスズビス(2−エチルヘキサノエート)3gおよびラウリルアミン1gをよく混練した硬化触媒を硬化剤として加えてさらに混練して、硬化性組成物を得た。
【0089】
各硬化性組成物について、例1〜21の試験内容と同様にして、汚染物質の付着状態、塗料の乾燥状態、および塗膜表面の平滑性について評価した。結果を表6、7に示す。
【0090】
【表6】
Figure 0004654479
【0091】
【表7】
Figure 0004654479
【0092】
【発明の効果】
本発明における特定の水酸基含有ポリオキシアルキレン重合体を高分子可塑剤として使用した配合物は、保存後の硬化性の変化が少なく、硬化物の表面の汚染性が改良され、さらに表面にアルキッド塗料やアクリル塗料の塗装を施す場合、その乾燥性が良好でしわがよりにくい特徴を有する。

Claims (2)

  1. 加水分解性シリル基含有有機重合体(A)、および、水酸基の数が〜4であり、水酸基あたりの数平均分子量が2700〜5000でありかつ25℃の粘度が15〜55ポアズである水酸基含有ポリオキシアルキレン重合体(B)、を含有してなる硬化性組成物。
  2. 水酸基含有ポリオキシアルキレン重合体(B)が、複合金属シアン化物錯体を触媒として活性水素含有化合物にモノエポキシドを反応させて得られたものである請求項1に記載の硬化性組成物。
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