JP4650062B2 - ロボット制御装置およびロボットの位置決め精度補正方法 - Google Patents
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特許文献1には、アームの温度を測定する温度センサを設け、制御部が所定の基準温度におけるアームの寸法と、温度センサによって測定されるアームの温度とに基づいて、その測定温度における前記アームの各部の寸法を演算し、該演算結果に基づいて前記アームを駆動する制御データを作成し出力する技術が開示されている。
また、特許文献2には、周囲温度を取り込む温度センサを別途設けて、教示を行って手先座標を記憶する一方、上記温度センサから再生時の温度を取り込み、上記教示時と再生時との温度差により手先座標を補正する技術が開示されている。
ところが、ロボットの運転を開始すると、駆動モータ、エンコーダの発熱や駆動機構、関節の摩擦など、様々な要因に起因してロボット自身が発熱し、ベルトの長さ、プーリの直径、ギアの直径およびアームの長さ等が徐々に変化するため、位置決め精度は伝達部の温度が一定になるまで安定しなかった。そのため、高い位置決め精度が要求されるアプリケーションにおいては、ロボットの運転に際しては、事前の十分なウォームアップを必要としていた。
一方、従来、ロボットを駆動するモータのエンコーダには、温度監視用の温度センサが設けられており、その温度センサのデータは、ロボット制御装置に入力され、温度監視がなされていた。
また、ロボットの運転に際して事前にウォームアップをすることは、生産性の低下につながるという問題があった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、ロボットを駆動するモータのエンコーダに設けられた温度センサを利用して、ロボットの位置決め精度を補正することのできるロボット制御装置を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、ロボットを駆動する複数のモータのエンコーダに設けられた各温度センサの温度データが入力されるロボット制御装置において、予め測定した前記温度データの平均値と前記ロボットの位置決め精度のデータとから求められた補正関数に基づき、前記温度データの平均値に応じて前記ロボットの位置決め精度を補償する補償手段を備えたことを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、前記温度データの平均値に代えて、前記各温度センサの温度データに対して重み付けを行って求めた温度データとしたことを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、前記予め測定した前記温度データは、測定時間に応じて測定対象とする温度センサを切り替えることで求められることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、前記温度センサの温度データが入力されるフィルタ手段を備え、前記フィルタ手段によって出力される温度データとロボットの位置決め精度のデータとの時定数を一致させたことを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、前記フィルタ手段のフィルタ時定数は、前記温度センサの温度データの時定数とロボットの位置決め精度データとの差に基づいて求められることを特徴とするものである。
請求項6に記載の発明は、前記エンコーダに設けられた温度センサに代えて、モータに設けられた温度センサとしたことを特徴とするものである。
請求項7に記載の発明は、前記補正関数に代えて、補正テーブルとしたことを特徴とするものである。
請求項8に記載の発明は、ロボットを駆動する複数のモータのエンコーダに設けられた各温度センサの温度データが入力されるロボット制御装置において、予め測定した前記温度データの平均値と前記ロボットの位置決め精度のデータに基づいて補正関数を求め、前記求められた補正関数に基づき、前記温度データの平均値に応じて前記ロボットの位置決め精度を補償するという手順で処理することを特徴とするものである。
請求項9に記載の発明は、前記温度データの平均値に代えて、前記各温度センサの温度データに対して重み付けを行って求めた温度データとしたことを特徴とするものである。
請求項10に記載の発明は、
前記予め測定した前記温度データは、測定時間に応じて測定対象とする温度センサを切り替えることで求められることを特徴とするものである。
請求項11に記載の発明は、前記温度センサの出力にフィルタを適用することで、前記温度データのフィルタ出力とロボットの位置決め精度の時定数を一致させたことを特徴とするものである。
請求項12に記載の発明は、前記フィルタ手段のフィルタ時定数は、前記温度センサの温度データの時定数とロボットの位置決め精度データとの差に基づいて求められることを特徴とするものである。
請求項13に記載の発明は、前記エンコーダに設けられた温度センサに代えて、モータに設けられた温度センサとしたことを特徴とするものである。
請求項14に記載の発明は、前記補正関数に代えて、補正テーブルとしたことを特徴とするものである。
また、事前のウォームアップ動作が不要になり、生産性が向上する。
本発明が特許文献1、2と異なる部分は、別途温度センサを設けることなく、エンコーダに設けられた温度センサにより位置決め精度の温度補償を行う点である。
一般的に、物質を温めた時の物質と外気の温度差Yと加熱量Xとの関係は、近似的に以下の方程式で表される。
X(t)=c*m*dY(t)/dt+h*Y(t) (1)
ただし、t:時間、比熱:c[J/(kg*K)]、質量:m[kg]、放熱係数:h[J/(s*K)]、加熱量:X[J/s]、物質と外気の温度差:Y[K]である。
Y(t)=a/h*(1−exp(−t/(cm/h)))
= A*(1−exp(−t/T)) (2)
ただし、A=a/h、T=cm/h(時定数)である。
ここで、半導体製造の工場内は温度管理がなされており、外気温は一定とみなせるので、
Yは物質(エンコーダ)と外気(工場内の一定気温)の温度差となるから、エンコーダの温度上昇を表すこととなる。
E(t)= B*(1−exp(−t/TE)) (3)
ただし、t:時間、B:定数、TE:時定数である。
そして、測定したエンコーダ温度データから、数式(2)の定数A、時定数Tを求め、エンコーダ温度の時間変化を示す関数を決定する。数式(2)の関数の定数A、時定数Tは、以下の通り求めることができる。
(1)Aは定常状態を考えることで求めることができる。すなわち、定常状態のときは数式(2)における時間tを∞として、以下のように表される。
Y(∞)=A (4)
よって、定常状態のときのエンコーダ(物質)と工場内の一定気温(外気)の温度差Yが定数Aとなる。
(2)時定数Tは以下のように求めることができる。
数式(2)における時間t=Tとすると、以下のように表される。
Y(T)=A(1−exp(−1))≒0.632A (5)
よって、エンコーダ(物質)と工場内の一定気温(外気)の温度差Yが0.632Aとなる時の時間が時定数Tとなる。
一方、位置決め精度の測定データから、位置決め精度の時間変化を示す関数を決定する。当該関数は、上記エンコーダ温度の場合と同様、定数Bと時定数TEから求めることができるので、詳細は省略する。
図2はロボット動作中における位置補正量を求める処理手順を示すフローチャートである。この図を用いて位置補正方法について順を追って説明する。
まず、ロボットに対する移動命令を開始する(ステップ21)。
次に、エンコーダ温度データを取得する(ステップ22)。
次に、エンコーダ温度に対応した位置決め精度を上記関数から計算し、補正量を求める(ステップ23)。
次に、求められた補正量を目標位置へ付加し、新たな目標位置とする(ステップ24)。
最後に、軌道生成処理を行い、ロボットは生成された軌道に従って移動する(ステップ25)
なお、上記のステップ21〜25の処理は図1における指令生成部11が行うものである。
ただし、温度補正モータ、もしくはエンコーダ温度および位置決め精度の時定数は材質によって異なるので、補正の効果はそれらによって異なるものとなる。すなわち、時定数が同一の場合は全時間領域において、補正が完全に行われる。また、位置決め精度の時定数のほうがエンコーダ温度の時定数より短い場合にも、補正が完全に行われる。一方、図3および図4に示すように、位置決め精度の時定数のほうがエンコーダ温度の時定数より長い場合には、全時間領域において補正を完全に行うことはできない。すなわち、途中までしか補償できない。しかし、図3における動作開始直後(時間t=0の近傍)での位置決め精度が悪いため、図5に示すような時定数の短いエンコーダ温度の静定までの補償であったとしても、図6に示すように十分な位置決め精度の改善が可能である。
本実施例でのエンコーダ温度を求める方法は、温度補償に必要なデータを求めるための測定を行う際に、複数モータのエンコーダ温度の平均値をもって、エンコーダ温度とするものである。複数モータのエンコーダの平均をとってロボット全体の発熱と擬制することで、温度−位置決め精度関数を精度良く求めることができる。
なお、平均値を求める際は、全てのエンコーダの温度センサの平均値ではなく、一部のエンコーダの温度センサの平均値をもって、エンコーダ温度としても良い。
具体的には、アーム先端に近いエンコーダの温度センサのデータについては、重みを重くし、逆に遠いものについては、重みを軽くするものである。
本実施例によれば、ロボットを駆動するモータの配置がアーム先端から見て偏りがある場合であっても、温度−位置決め精度関数を精度良く求めることができる。
また、アーム先端からの位置に基づいて重み付けをするのではなく、アームを駆動するモータに設けられたエンコーダの温度センサについて、重みを重くしても良い。さらには、これらを両方考慮して重み付けを行っても良い。
具体的には、温度測定開始時はアーム先端に近いエンコーダの温度センサの出力をもってエンコーダ温度とし、所定の時間が経過したのちは、残りの複数のエンコーダの温度センサ出力の平均値をもって、エンコーダ温度とするものである。
また、切り替え時間を決定する所定の時間は複数設け、当該複数の所定の時間の経過ごとに、対象とするエンコーダを切り替えてもよい。
具体的には、まず、温度補償に必要なデータを事前測定する際に、モータ軸毎に動作させ、対応する各関節軸の補正量(角度)を求める。
次に、各モータのエンコーダ温度の時間tの関数と対応する関節角度の時間tの関数とからエンコーダ温度と関節角度の位置決め精度との関係を表す補正関数(以下、温度−関節角度精度関数)を求める。
そして、プレイバック時に、温度−関節角度精度関数をもとにモータ軸ごとに補正量を付加し、新たな目標位置とすることで、最終的にロボットの位置決め精度を補償する。
ここで、モータ軸ごとの補正量は、温度−関節角度精度関数から補正すべき関節角度を求め、求められた補正すべき関節角度を動かすために必要なモータ角度を逆算することで求めるものである。
実施例2とは、補正量を求める際に温度−位置決め精度関数ではなく、温度−関節角度精度関数を用いる点およびモータ軸ごとに補正量を付加する点が異なる。
なお、本実施例に対して上記実施例2〜4を組合わせてもよい。
以上のように、本実施例によれば、各軸毎に補正関数を求めるため、複数軸により構成されるロボットをより正確に補正が行える。
そこで、本実施例においては、動作中のエンコーダ温度データ、または位置補正量に以下に示す遅れフィルタを適用し、時定数の調整を行うことで、以上の二つの問題を解決する。
一般に、遅れフィルタとして用いるIIR型フィルタは以下の離散式で表される。
Y(k)=r*U(k)+(1−r)*Y(k−1) (0≦r≦1) (6)
ただし、r:フィルタ定数、Y(k):現時点のフィルタ後のエンコーダ温度、または位置補正量、U(k):現時点のエンコーダ温度、または位置補正量、Y(k−1):一時点前のフィルタ後のエンコーダ温度、または位置補正量である。
ここで、処理周期は遅れフィルタの特性(時定数)に依存するため、時定数自体も計算で求めなければならない。そこで、以下の通りIIR型フィルタを、フィルタと温度補正の処理周期、遅れさせたい時定数により設計できるものとする。
Y(z)=r*U(z)+(1−r)*Y(z)/z (7)
ここで、温度の時定数に対し、温度補正の処理周期は十分小さいので、連続系とみなしてもよい。そこで、ラプラス変換すると、以下のように表される。
Y(s)=r*U(s)+(1−r)*Y(s)*exp(−T*s) (8)
ただし、T:サンプリング周期(温度補正の演算周期)である。
また、伝達関数は、以下のように表される。
G(s)=Y(s)/U(s)=1/[1/r+(r−1)/r *exp(−T*s)] (9)
ここで、
exp(−T*s)≒1−T*s (10)
と近似すると、
G(s)≒1/[1/r+(r−1)/r (1−T*s)] (11)
G(s)≒1/[1−(r−1)/r T*s] (12)
ここで、r≪1とすると、以下のように表され、一次遅れ系の伝達関数となる。
G(s)≒1/(T/r*s+1) (13)
ただし、T’=T/r:遅れフィルタの時定数、r=T/T’となる。
よって、IIR型フィルタは以下のように表される。
Y(k)= T/T’*U(k)+(1− T/T’)*Y(k−1) (14)
ここで、フィルタと温度補正の処理周期は、ハードウエア上の制約で決まる。一方、遅フィルタ時定数は、位置決め精度の時定数とエンコーダ温度の時定数の差から求めることができる。
なお、r≪1より、演算周期Tに対し、遅れフィルタの時定数は十分大きくとる必要があるが、CPUの処理能力と温度上昇の時間応答の遅さを考慮すると十分満たすことができる。
遅れさせたい時定数の設計は、エンコーダ温度の時間変化を示す関数と位置決め精度の時間変化を示す関数の時定数の差を埋めることができる。
また、エンコーダ温度のデータの最小単位が大きい場合にも、フィルタにて急峻に温度補正量を変えることなく滑らかに補正することができる。
なお、温度センサの分解能が粗い場合には、温度データを補間しなければ、位置補正後の位置決め精度がのこぎり状になってしまう。そこで、エンコーダ温度と位置決め精度の時定数が一致している場合は、補正量は補正温度単位でステップ状に変化し、温度が飽和する直前の温度での補正の時間が一番長いため、その温度での整定時間にフィルタ時定数を調整することにより、すべての温度において滑らかな補正を行うことができる。つまり、フィルタの時定数をエンコーダ温度の整定時間の1/3.91倍としても良い。
また、位置補正量は、同定した温度、位置決め精度の関数に基づいて求めているが、記憶手段に単位温度毎の位置補正量を補正テーブルとして記憶し、当該補正テーブルに基づいて位置補正量を求めてもよい。
また、補正の対象はアームの位置でなくてもよく、ロボット自身の位置としても良い。
12 I/F部
13 サーボ制御部
14 ロボット部
15 エンコーダ
16 制御装置
17 温度センサ
Claims (14)
- ロボットを駆動する複数のモータのエンコーダに設けられた各温度センサの温度データが入力されるロボット制御装置において、
予め測定した前記温度データの平均値と前記ロボットの位置決め精度のデータとから求められた補正関数に基づき、
前記温度データの平均値に応じて前記ロボットの位置決め精度を補償する補償手段を備えたことを特徴とするロボット制御装置。 - 前記温度データの平均値に代えて、前記各温度センサの温度データに対して重み付けを行って求めた温度データとしたことを特徴とする請求項1記載のロボット制御装置。
- 前記予め測定した前記温度データは、測定時間に応じて測定対象とする温度センサを切り替えることで求められることを特徴とする請求項1記載のロボット制御装置。
- 前記温度センサの温度データが入力されるフィルタ手段を備え、
前記フィルタ手段によって出力される温度データとロボットの位置決め精度のデータとの時定数を一致させたことを特徴とする請求項1記載のロボット制御装置。 - 前記フィルタ手段のフィルタ時定数は、前記温度センサの温度データの時定数とロボットの位置決め精度データとの差に基づいて求められることを特徴とする請求項4記載のロボット制御装置。
- 前記エンコーダに設けられた温度センサに代えて、モータに設けられた温度センサとしたことを特徴とする請求項1記載のロボット制御装置。
- 前記補正関数に代えて、補正テーブルとしたことを特徴とする請求項1記載のロボット制御装置。
- ロボットを駆動する複数のモータのエンコーダに設けられた各温度センサの温度データが入力されるロボット制御装置において、
予め測定した前記温度データの平均値と前記ロボットの位置決め精度のデータに基づいて補正関数を求め、
前記求められた補正関数に基づき、前記温度データの平均値に応じて前記ロボットの位置決め精度を補償する
という手順で処理することを特徴とするロボットの位置決め精度補正方法。 - 前記温度データの平均値に代えて、前記各温度センサの温度データに対して重み付けを行って求めた温度データとしたことを特徴とする請求項8記載のロボットの位置決め精度補正方法。
- 前記予め測定した前記温度データは、測定時間に応じて測定対象とする温度センサを切り替えることで求められることを特徴とする請求項8記載のロボットの位置決め精度補正方法。
- 前記温度センサの出力にフィルタを適用することで、前記温度データのフィルタ出力とロボットの位置決め精度の時定数を一致させたことを特徴とする請求項8記載のロボットの位置決め精度補正方法。
- 前記フィルタ手段のフィルタ時定数は、前記温度センサの温度データの時定数とロボットの位置決め精度データとの差に基づいて求められることを特徴とする請求項11記載のロボットの位置決め精度補正方法。
- 前記エンコーダに設けられた温度センサに代えて、モータに設けられた温度センサとしたことを特徴とする請求項8記載のロボットの位置決め精度補正方法。
- 前記補正関数に代えて、補正テーブルとしたことを特徴とする請求項8記載のロボットの位置決め精度補正方法。
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