JP4649832B2 - 異方性導電フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、厚み方向にのみ導電性を有する異方性導電フィルムに係り、特に、樹脂基板とりわけポリイミド樹脂基板への接着性に優れた異方性導電フィルムに関する。
異方性導電フィルムは、導電性粒子が分散された接着剤樹脂組成物を成膜したものであり、厚さ方向に加圧することにより厚さ方向に導電性が付与される。この異方性導電フィルムは、例えば、相対峙する回路間に介装し、回路間を加圧、加熱することにより回路間を導電性粒子を介して接続すると共に、これら回路間を接着固定する目的に使用される。
この異方性導電フィルムは、フレキシブルプリント基板(FPC)やTABと液晶パネルのガラス基板上に形成されたITO(スズインジウム酸化物)端子とを接続する場合をはじめとして、種々の端子間に異方性導電膜を形成し、それにより該端子間を接着すると共に電気的に接合する場合に使用されている。
従来の異方性導電フィルムは、一般にエポキシ系又はフェノール系樹脂と硬化剤を主成分とする接着剤に導電性粒子を分散させたもので構成され、中でも使用上の便宜等の点から接着剤としては1液型の熱硬化型のものが主流になっている。また、異方性導電フィルムとしては、高温高湿下でも安定した接続信頼性が得られるようにするため、種々の方法により接着強度の強化が図られているが、従来のエポキシ系又はフェノール系樹脂を用いた異方性導電フィルムは、接着力が低く、作業性が悪く、耐湿耐熱性に問題があった。
このような点から、本出願人は、先にポリビニルアルコールをアセタール化して得られるポリアセタール化樹脂を主成分とする熱又は光硬化性接着剤からなる異方性導電フィルム(特開平10−338860号公報)、或いは、アクリル系モノマー及び/又はメタクリル系モノマーを重合して得られる(メタ)アクリル系樹脂を主成分とする熱又は光硬化性接着剤からなる異方性導電フィルム(特開平10−338844号公報)を提案した。
ところで、近年、この基板の軽量化や薄肉化を目的として基板の構成材料がポリイミドに変更されるようになってきた。
しかしながら、従来の異方性導電フィルムでは、ポリイミドに対して高い接着力を得ることができず、その改良が望まれている。本発明者は、異方性導電フィルムにリン酸系化合物を配合することにより異方性導電フィルムのポリイミドへの接着性を改善することを提案している(特開2003−89775号公報)。同号公報中には、接着剤樹脂組成物が熱硬化性の場合、該組成物中に有機過酸化物を配合することが記載されている。
特開2003−89775号公報
本発明者が種々研究を重ねた結果、リン酸系化合物と有機過酸化物とが共存する接着剤樹脂組成物よりなる異方性導電フィルムにおいては、貯蔵中にリン酸系化合物が有機過酸化物の分解反応を促進することに起因して、異方性導電フィルムの貯蔵安定性が低下することがあることが見出された。
本発明は上記従来の問題点を解決し、高い接着力を示すと共に、貯蔵安定性に優れた異方性導電フィルムを提供することを目的とする。
本発明の異方性導電フィルムは、導電性粒子が分散された熱硬化性の接着剤樹脂組成物を成膜してなる異方性導電フィルムにおいて、接着剤樹脂組成物にリン酸系化合物有機過酸化物及びシランカップリング剤が配合されている異方性導電フィルムであって該リン酸系化合物が、メチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、モノブチルホスフェート、ジフェニルホスホロクロリデート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、リン酸クロライドの1種又は2種以上であり、該リン酸系化合物が、粒径が5〜100μmであるマイクロカプセル内に封入されていることを特徴とするものである。
本発明の異方性導電フィルムは、従来の異方性導電フィルムと同様に回路間の導通及び接着固定に用いることができる。この場合、接着時の圧力や熱によってマイクロカプセルが破壊され、内包されていたリン酸系化合物が樹脂組成物に添加される。
異方性導電フィルムを構成する接着剤樹脂組成物にリン酸系化合物を配合することにより、ポリイミドに対する接着力が大幅に改善される。
この接着剤樹脂組成物には、硬化剤として有機過酸化物が配合される。本発明では、上記リン酸系化合物をマイクロカプセルに封入しているので、貯蔵中に各々の成分が直接接触することが防止され、異方性導電フィルムの貯蔵安定性が向上する。
以下に本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明において、接着剤を構成する樹脂組成物のベース樹脂は、ポリビニルアルコールをアセタール化して得られるポリアセタール化樹脂及び/又はこのポリアセタール化樹脂の側鎖に脂肪族不飽和基を導入してなる変性ポリアセタール化樹脂、あるいは、溶剤に可溶なポリエステル不飽和化合物が好適である。
ポリアセタール化樹脂としては、アセタール基の割合が30モル%以上であるものが好ましい。アセタール基の割合が30モル%より少ないと耐湿性が悪くなる恐れが生じる。このポリアセタール化樹脂としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等が挙げられるが、特にはポリビニルブチラールが好ましい。このようなポリアセタール化樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば電気化学工業社製「デンカPVB3000−1」「デンカPVB2000−L」などを用いることができる。
変性ポリアセタール化樹脂としても、変性ポリビニルブチラールが好ましい。
このポリビニルブチラール樹脂は、下記式(1)に示すように、ビニルブチラール単位A、ビニルアルコール単位B及び酢酸ビニル単位Cから構成されている。上記脂肪族不飽和基はこれら単位A,B,Cのいずれの側鎖に導入されていてもよいが、ポリビニルアルコール単位Bの側鎖に導入されているものが好ましい。脂肪族不飽和基としては、例えばビニル基、アリル基、メタアクリル基、アクリル基等が好適である。
このポリビニルアルコール単位Bの側鎖への脂肪族不飽和基の導入は、該側鎖水酸基を酸変性することによって行うことが好ましく、この酸変性に用いる酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、ステアリル酸、マレイン酸、フタル酸などが挙げられ、下記式(2)に示すように脂肪族不飽和結合を導入することができる。
Figure 0004649832
(式中、Rは水素原子又はアルキル基、R’はアルケニル基等の脂肪族不飽和基又はこれを含有する基を示す。)
なお、上記式(1)において、ビニルアルコール単位Bは好ましくは3〜70モル%、より好ましくは5〜50モル%、更に好ましくは5〜30モル%であり、3モル%より少ないと酸変性の反応性が悪く、70モル%より多いと耐熱性、耐湿性が劣る場合が生じる。
本発明においては、接着剤樹脂組成物のベース樹脂は、溶剤(ここで、溶剤とは例えば、アセトン、MEK、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸セロソルブ、ジオキサン、THF、ベンゼン、シクロヘキサノン、ソルベッソ100等の有機溶剤を指す。)に可溶なポリエステル不飽和化合物であってもよい。このポリエステル不飽和化合物は、多塩基酸と多価アルコールとを反応させることによって得られる不飽和ポリエステルと、溶剤に可溶な飽和共重合ポリエステルに(メタ)アクリロキシ基を導入した化合物などのラジカル反応硬化性のポリエステル不飽和化合物である。即ち、このポリエステル不飽和化合物とは
(a) 不飽和ポリエステル化合物
(b) 飽和ポリエステルに(メタ)アクリロキシ基及び/又はメタクリロキシ基を導入した化合物
の2種類である。
ここで、溶剤に可溶な飽和共重合ポリエステルとしては、テレフタル酸とエチレングリコール及び/又は1,4−ブタンジオールを主たる構成成分とし、全酸成分の5〜50モル%のフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン酸等の酸成分及び/又は全アルコール成分の5〜50モル%の量で1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール等のアルコール成分を1種又は2種以上で共重合したものである。
このような飽和共重合ポリエステルへの(メタ)アクリロキシ基の導入方法としては、
(1) イソシアネートアルキル(メタ)アクリレートを前記飽和共重合ポリエステルの水酸基と反応させる方法、
(2) アルキル(メタ)アクリレートと前記飽和共重合ポリエステルの水酸基とのエステル交換反応による方法、
(3) ジイソシアネート化合物とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの反応によるイソシアナートアルキル(メタ)アクリレートを前記飽和共重合ポリエステルの水酸基と反応させる方法
を採用することができる。
本発明では、このようなベース樹脂のポリイミド樹脂等への接着性を向上させるために、ベース樹脂に対しリン酸系化合物を配合する。リン酸系化合物としては、酸価が100〜800特に500〜700のものが好ましい。酸価が100以下であると接着力向上効果が低く、800以上であると、酸性度が高すぎ、導通特性、貯蔵安定性が極めて悪くなるおそれがある。リン酸系化合物としては、酸性リン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸塩が好適であり、具体的にはメチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、モノブチルホスフェート、ジフェニルホスホロクロリデート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、リン酸クロライドが例示される。これらのリン酸系化合物は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
このリン酸系化合物の配合量は、接着剤樹脂組成物100重量部に対し0.1〜50重量部(phr)特に0.3〜4重量部が好ましい。この配合量が0.1phr未満であると接着力向上効果が低く、50phrを超えると、酸性度が高すぎ、導通特性、貯蔵安定性が極めて悪くなるおそれがある。
本発明においては、接着剤樹脂組成物に対し、硬化剤として有機過酸化物を配合する。この有機過酸化物としては、70℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものであればいずれも使用可能であるが、半減期10時間の分解温度が50℃以上のものが好ましく、成膜温度、調製条件、硬化(貼り合わせ)温度、被着体の耐熱性、貯蔵安定性を考慮して選択される。
使用可能な有機過酸化物としては、例えば2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4’−ビス
(t−ブチルパーオキシ)バレレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート、ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、ヒドロキシヘプチルパーオキサイド、クロロヘキサノンパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、クミルパーオキシオクトエート、サクシニックアシッドパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、m−トルオイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。これらの有機過酸化物は1種を単独で用いても2種以上を併用しても良い。
このような有機過酸化物はベース樹脂100重量部に対して好ましくは0.1〜10重量部配合される。
本発明では、上記のリン酸系化合物をマイクロカプセルに封入する。このマイクロカプセルとしては、芯材をリン酸系化合物とし、シェル材料(壁材料)を尿素、メラミン系樹脂その他の樹脂としたものが好適である。
このマイクロカプセルの粒子径は、5〜100μm特に10〜80μmが好適である。粒子径が5μm未満であると、圧力負荷時にマイクロカプセルが破壊せず、内部の薬品(リン酸系化合物)が反応に寄与しない。また、100μmより大きいと、異方性導電フィルムの導電粒子の均一分散に悪影響を与える可能性がある。
芯材(コア材)をリン酸系化合物としたマイクロカプセルを製造するには、コア材の粉体及び/又は粒体をシェル組成物の溶液あるいは分散液中に分散させた後、スプレードライ法等によって加熱乾燥処理を施すことにより、コア組成物をシェル組成物で被覆してなるマイクロカプセルを得るのが好適である。
このシェル組成物としては、例えば尿素樹脂、ポリビニルアルコール、メラミン樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリウレアなどを用いることができる。
本発明に係るフィルムを構成する接着剤樹脂組成物においては、異方性導電フィルムの接着性の向上のためにメラミン系樹脂及びアルキド樹脂の少なくとも1種を配合してもよい。
メラミン系樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂、n−ブチル化メラミン樹脂等のブチル化メラミン樹脂、メチル化メラミン樹脂、等の1種又は2種以上が挙げられる。このようなメラミン系樹脂は、前記ベース樹脂100重量部に対して1〜200重量部、特に1〜100重量部配合するのが好ましい。
アルキド樹脂としては、純粋アルキド樹脂、変性アルキド樹脂のいずれでも良いが、オイルフリー、或いは短油性ないし中油性のものが好ましい。このようなアルキド樹脂は、前記ベース樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部、特に0.5〜5重量部配合するのが好ましい。
この接着剤樹脂組成物には、接着層への気泡の混入を防止してより一層高い導電性と接着力を確保するために尿素系樹脂を配合してもよい。この尿素系樹脂としては、尿素樹脂、ブチル化尿素系樹脂等を用いることができる。なお、同様の目的でフェノール樹脂、ブチル化ベンゾグアナミン樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。
尿素系樹脂等の気泡混入防止のための樹脂は、ベース樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部、特に0.5〜5重量部とするのが好ましい。
本発明においては、異方性導電フィルムの物性(機械的強度、接着性、光学的特性、耐熱性、耐湿性、耐候性、架橋速度等)の改良や調節のために、接着剤樹脂組成物にアクリロキシ基、メタクリロキシ基又はエポキシ基を有する反応性化合物(モノマー)を配合することが好ましい。この反応性化合物としては、アクリル酸又はメタクリル酸誘導体、例えばそのエステル及びアミドが最も一般的であり、エステル残基としてはメチル、エチル、ドデシル、ステアリル、ラウリルのようなアルキル基のほかに、シクロヘキシル基、テトラヒドロフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。また、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多官能アルコールとのエステルも同様に用いられる。アミドとしては、ダイアセトンアクリルアミドが代表的である。多官能架橋助剤としては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等のアクリル酸又はメタクリル酸エステル等が挙げられる。また、エポキシ基含有化合物としては、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノール(EO)5グリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、グリシジルメタクリレート、ブチルグリシジルエーテル等が挙げられる。また、エポキシ基を含有するポリマーをアロイ化することによって同様の効果を得ることができる。
これらの反応性化合物は1種又は2種以上の混合物として、前記ベース樹脂100重量部に対し、通常0.5〜80重量部、好ましくは0.5〜70重量部添加して用いられる。この配合量が80重量部を超えると接着剤の調製時の作業性や成膜性を低下させることがある。
接着剤樹脂組成物には、接着促進剤としてシランカップリング剤を添加する。シランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等の1種又は2種以上の混合物が用いられる。
これらのシランカップリング剤の添加量は、ベース樹脂100重量部に対し通常0.01〜5重量部で充分である。
また、接着剤樹脂組成物には、加工性や貼り合わせ性等の向上の目的で炭化水素樹脂を添加することができる。この場合、添加される炭化水素樹脂は天然樹脂系、合成樹脂系のいずれでもよい。天然樹脂系では、ロジン、ロジン誘導体、テルペン系樹脂が好適に用いられる。ロジンではガム系樹脂、トール油系樹脂、ウッド系樹脂を用いることができる。ロジン誘導体としてはロジンをそれぞれ水素化、不均一化、重合、エステル化、金属塩化したものを用いることができる。テルペン系樹脂ではα−ピネン、β−ピネン等のテルペン系樹脂の他、テルペンフェノール樹脂を用いることができる。また、その他の天然樹脂としてダンマル、コバル、シェラックを用いてもよい。一方、合成樹脂系では石油系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂が好適に用いられる。石油系樹脂では脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、水素化石油樹脂、純モノマー系石油樹脂、クマロンインデン樹脂を用いることができる。フェノール系樹脂ではアルキルフェノール樹脂、変性フェノール樹脂を用いることができる。キシレン系樹脂ではキシレン樹脂、変性キシレン樹脂を用いることができる。
このような炭化水素樹脂の添加量は適宜選択されるが、ベース樹脂100重量部に対して1〜200重量部が好ましく、更に好ましくは5〜150重量部である。
以上の添加剤のほか、本発明に係るフィルムを構成する接着剤樹脂組成物には、老化防止剤、紫外線吸収剤、染料、加工助剤等を本発明の目的に支障をきたさない範囲で用いてもよい。
導電性粒子としては、電気的に良好な導体であれば良く、種々のものを使用することができる。例えば、銅、銀、ニッケル等の金属ないし合金粉末、このような金属又は合金で被覆された樹脂又はセラミック粉体等を使用することができる。また、その形状についても特に制限はなく、りん片状、樹枝状、粒状、ペレット状等の任意の形状をとることができる。
なお、導電性粒子は、弾性率が1.0×10〜1.0×1010Paであるものが好ましい。即ち、プラスチックフィルムを基材とする液晶フィルムなどの被接着体の接続で異方性導電フィルムを使用する場合、導電性粒子として弾性率の高いものを用いると、被接着体にクラックが生じるなどの破壊や圧着後の粒子の弾性変形回復によるスプリングバックなどが発生し、安定した導通性能を得ることができない恐れがあるため、上記弾性率範囲の導電性粒子を用いることが推奨される。これにより、被接着体の破壊を防止し、圧着後の粒子の弾性変形回復によるスプリングバックの発生を抑制し、導電性粒子の接触面積を広くすることが可能になって、より安定した信頼性の高い導通性能を得ることができる。なお、弾性率が1.0×10Paより小さいと、粒子自身の損傷が生じ、導通特性が低下する場合があり、1.0×1010Paより大きいと、スプリングバックの発生が生じる恐れがある。このような導電性粒子としては、上記のような弾性率を有するプラスチック粒子の表面を前述の金属又は合金で被覆したものが好適に用いられる。
本発明において、このような導電性粒子の配合量は、前記ベース樹脂に対して0.1〜15容量%であることが好ましく、また、この導電性粒子の平均粒径は0.1〜100μmであることが好ましい。このように、配合量及び粒径を規定することにより、隣接した回路間で導電性粒子が凝縮し、短絡し難くなり、良好な導電性を得ることができるようになる。
本発明の異方性導電フィルムは、このような導電性粒子を接着剤樹脂組成物中に分散させてなるものである。この導電性粒子を含む接着剤樹脂組成物は、メルトインデックス(MFR)が1〜3000、特に1〜1000、とりわけ1〜800であることが好ましく、また、70℃における流動性が10Pa・s以下であることが好ましく、従って、このようなMFR及び流動性が得られるように配合を選定することが望ましい。
本発明の異方性導電フィルムは、前記接着剤樹脂組成物と、導電性粒子とを所定の配合で均一に混合し、押出機、ロール等で混練した後、カレンダーロール、Tダイ押出、インフレーション等の成膜法により所定の形状に成膜してリン酸系化合物非含有層及びリン酸系化合物含有層を形成し、これらを積層することにより製造することができるが、共押出しによって成膜してもよい。また、リン酸系化合物の非含有層及び含有層はそれぞれ、接着剤樹脂組成物と導電性粒子を溶媒に溶解ないし分散させ、セパレーターの表面に塗付した後、溶媒を蒸発させることによっても成膜することができる。この場合、一方の層を成膜した後、その上に他方の層を上記溶媒蒸着プロセスによって成膜してもよい。なお、成膜に際しては、ブロッキング防止、被着体との圧着を容易にするため等の目的で、エンボス加工を施してもよい。
このようにして得られた異方性導電フィルムによって被着体同士を接着するには、例えば、熱プレスによる貼り合わせ法や、押出機、カレンダーによる直接ラミネート法、フィルムラミネーターによる加熱圧着法等の各種の手法を用いることができる。
本発明の異方性導電フィルムにおける硬化条件としては、用いる有機過酸化物の種類に依存するが、通常70〜170℃、好ましくは70〜150℃で、通常10秒〜120分、好ましくは20秒〜60分である。
この接着時には、接着方向に1〜4MPa特に2〜3MPa程度の圧力を加える。この圧力により、マイクロカプセルが破壊され、マイクロカプセル内のリン酸系化合物が接着剤樹脂組成物と混合される。
なお、本発明の異方性導電フィルムは、フィルム厚さ方向に10Ω以下、特に5Ω以下の導電性を有し、面方向の抵抗は10Ω以上、特に10Ω以上であることが好ましい。
本発明の異方性導電フィルムは、例えばFPCやTABと液晶パネルのガラス基板上のITO端子との接続に好適であるが、その他の用途にも用いることができる本発明の異方性導電フィルムによれば、硬化時に架橋構造が形成されると共に、高い接着性と、優れた耐久性、耐熱性が得られる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。説明の便宜上、先に比較例について説明する。
[比較例1]
ポリビニルブチラール(電気化学工業社製「デンカPVB3000−1」)のトルエン25重量%溶液を調製し、ポリビニルブチラール100重量部に対して表1に示す成分を表1に示す量で混合し、これをバーコーターによりセパレーターであるポリテレフタル酸エチレン上に塗布した。トルエンを蒸発させることにより、幅5mm、厚さ15μmのフィルムを得た。
製造後1日以内の上記のフィルムを、PET樹脂基板にSiO膜を介してITO端子を形成した基板と、ポリイミド基板に銅箔をパターニングした基板(FPC)との接着用として、セパレーターを剥離してモニターで位置決めをし、130℃で20秒間、3MPaにおいて加熱圧着した。なお、表1の通り、この比較例ではリン酸系化合物としてモノブチルホスフェート(酸価670)を用いている。また、導電性粒子の平均粒径は5μm、接着剤樹脂組成物に対する容量比は4%である。得られたサンプルについて、引張試験機による90°剥離試験(50mm/min)により接着力を測定すると共に、デジタルマルチメータにより厚み方向の導通抵抗を測定し、結果を表1に示した。
[比較例2]
製造後10日経過したフィルムを用いたこと以外は、比較例1と全く同様にして接着試験を行った。その結果を表1に併せて示す。
[実施例1]
シェル材料としてポリビニルアルコール溶液中にモノブチルホスフェートを分散させた。次いで、この溶液をスプレードライし、溶媒を除去し、平均粒径10μmのマイクロカプセルを製造した。シェルの厚さは、比重で除算の結果、平均1μmであった。
モノブチルホスフェートの代りにこのマイクロカプセルを用いたこと以外は比較例1と同様にしてフィルムを製造した。製造後1日以内のこのフィルムを用いて比較例1と同様にして接着試験を行った。その結果を表1に示す。
[実施例2]
製造後10日経過したフィルムを用いたこと以外は、実施例1と全く同様にして接着試験を行った。その結果を表1に併せて示す。
Figure 0004649832
表1より、本発明の異方性導電フィルムは10日経過後も著しく接着性及び導通性が優れており、貯蔵安定性に優れることがわかる。

Claims (7)

  1. 導電性粒子が分散された熱硬化性の接着剤樹脂組成物を成膜してなる異方性導電フィルムにおいて
    接着剤樹脂組成物にリン酸系化合物有機過酸化物及びシランカップリング剤が配合されている異方性導電フィルムであって
    該リン酸系化合物が、メチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、モノブチルホスフェート、ジフェニルホスホロクロリデート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、リン酸クロライドの1種又は2種以上であり、
    該リン酸系化合物が、粒径が5〜100μmであるマイクロカプセル内に封入されていることを特徴とする異方性導電フィルム。
  2. 請求項1において、リン酸系化合物の含有量が接着剤樹脂組成物100重量部に対して0.01〜50重量部であることを特徴とする異方性導電フィルム。
  3. 請求項1又は2において、有機過酸化物の含有量が接着剤樹脂組成物100重量部に対し0.1〜10重量部であることを特徴とする異方性導電フィルム。
  4. 請求項1ないしのいずれか1項において、該接着剤樹脂組成物が、ポリビニルアルコールをアセタール化して得られるポリアセタール化樹脂及び/又はこのポリアセタール化樹脂の側鎖に脂肪族不飽和基を導入してなる変性ポリアセタール化樹脂よりなるベース樹脂を含む熱硬化性又は光硬化性樹脂組成物であることを特徴とする異方性導電フィルム。
  5. 請求項1ないしのいずれか1項において、該接着剤樹脂組成物は、溶剤に可溶なポリエステル不飽和化合物をベース樹脂としたものであることを特徴とする異方性導電フィルム。
  6. 請求項1ないしのいずれか1項において、該導電性粒子の配合量が接着剤樹脂組成物に対して0.1〜15容量%であることを特徴とする異方性導電フィルム。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1項において、前記シランカップリング剤が、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランの1種又は2種以上であることを特徴とする異方性導電フィルム。
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