JP4649808B2 - 新設プラント機器および配管の洗浄方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新設プラントの稼動前にプラント機器および配管内を洗浄する新設プラント機器および配管の洗浄方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
大型プラント、特に原子力発電プラントのように稼動後厳格な運転水質が要求されるプラントにおいては、系統内の機器・配管に残存する錆、塵埃、油分等の異物を除去するため、プラント稼動前(建設時)にフラッシングと称する洗浄が行われる。
【0003】
従来の原子力発電プラントのBWR建設時の洗浄では、まず洗浄対象物の3〜4容量倍程度の洗浄水で一過式の押出フラッシング(流量:1,000〜1,500m3程度)を行って系統内の異物を除去し、洗浄水の濁度を低下させる。次いで、循環式の洗浄(循環フラッシング)に切替え、循環ライン中に設置した架設のストレーナ(60〜120メッシュ)に通水(流量:3,000m3/h程度)して、循環水(洗浄水)中の濁度を3mg/L以下にしている。循環水の濁度が3mg/L以上になった場合、一部の循環水をブローしながら洗浄水を補給し、系統内の濁度を希釈する方法が採られている。
【0004】
押出フラッシングは一過式(非循環式)で行われる洗浄方法で、具体的には、洗浄対象物に洗浄水をポンプを用いて通水し、その流速で洗浄対象物内の異物を除去する方法である。このとき、1,000〜1,500m3/hの流量を必要とする場合があり、その流量確保のために給排水配管として500A(内径約500mm)の大口径管が敷設される。
【0005】
洗浄水としては純水のほか、油分が付着残存することが予測される炭素鋼で構成される洗浄対象物においては、純水にヒドラジンなどのアルカリ性薬品を添加したものが使用されている。
【0006】
押出および循環フラッシングに使用された洗浄水は洗浄排水として排出されるが、排水中には異物、懸濁物質およびヒドラジンなど含有されているため、排出に当っては排水基準を満足するように排水処理を行う必要があり、pH調整、ヒドラジン処理、凝集沈殿処理などの処理が行われている。この処理は、バッチ式で行われ、始めに中和槽でヒドラジンを処理およびpHを調整し、次いで沈殿槽で懸濁物質および異物を処理している。
【0007】
図3は従来の洗浄装置の系統図である。図3において、1は純水タンク、2はミキシングヒータ、3はポンプ、4は洗浄対象物、5はストレーナ、11は給水配管、12は排水配管、13は循環路、15は純水、21は中和槽、22は沈澱槽、V1〜V7、V10、V12、V15はバルブである。
【0008】
洗浄対象物4は炭素鋼から構成された機器または油分の付着している機器である。純水15にはヒドラジン14が50〜100mg/Lの濃度となるように注入されて洗浄水として使用されるが、一部またはすべての工程でヒドラジン14の注入は省略される場合もある。ストレーナ5は80〜100メッシュのふるいを備えている。
図3の装置では下記(1)水圧テスト、(2)押出フラッシング、(3)循環フラッシング、(4)ブロー、(5)排水処理の工程により洗浄が行われる。
【0009】
(1)水圧テスト
バルブV1〜V7、V10、V12、V15は開の状態でポンプ3を起動して、純水タンク1中の純水15にヒドラジン14を注入しながら給水配管11を通して洗浄対象物4、ストレーナ5、循環路10に洗浄水を張り込む。次いでバルブV12、V15を閉じ、ポンプ3で系統内を10kg/cm2まで加圧し、漏れのないことを確認する。
【0010】
(2)押出フラッシング
バルブV1〜V5およびV12は開の状態で、他のバルブは閉の状態でポンプ3または本設のポンプ(図示は省略)を起動して、1,500m3/h程度の流量で一過式に洗浄水を洗浄対象物4に通水し、洗浄対象物4から異物を除去する。洗浄排水は中和槽21に排出し、そこでバッチ式に中和処理する。この押出フラッシングは洗浄対象物4の洗浄水の濁度が3mg/L以下となるまで実施し、通常洗浄対象物4の体積に対して数倍から数十倍の洗浄水を通水する。例えば1,000m3の対象物に対しては5,000〜10,000m3の洗浄水が使用される。
押出フラッシングでは1,500m3/hの流量で一過式に通水するので、その流量確保のために給水配管11および排水配管12には500A(内径約500mm)の大口径管を使用する必要がある。これは一般に、配管径は配管流速が約2m/sになるように選定されるため、配管内の圧力損失およびポンプの吸込揚程を確保する目的で選ばれる。ちなみに、1,500m3/hの流量の場合の押出フラッシングの流速は、次式で計算されるように2.1m/sである。
1,500m3/h÷(0.25m×0.25m×3.14×3,600s/h)=2.1m/s
【0011】
(3)循環フラッシング
押出フラッシング終了後、バルブV1、V2、V10、V12は閉で、バルブV3〜V7、V15は開の状態で、ポンプ3または本設のポンプ(図示は省略)を起動し、洗浄水をストレーナ5に通水しながら循環路13に循環させ、洗浄対象物4を洗浄する。
循環フラッシングはミキシングヒータ2で60〜80℃に加熱した洗浄水を循環水として流速1.5〜2.0m/sまたは設計流速で循環させ、濁度が3mg/L以下になるまで行う。通常、6〜12時間程度循環フラッシングを行うことにより、上記濁度になるまで洗浄することができる。なお洗浄水としてアルカリ性薬品を含む洗浄水を使用する場合、循環フラッシングはアルカリ洗浄と称されることもある。
【0012】
(4)ブロー
洗浄排水は排水配管12から中和槽21に排出する。
(5)排水処理
中和槽21に受け入れた洗浄排水は、中和槽21で中和処理を行う。次いで、沈澱槽22で沈降分離処理を実施し、処理後の上澄みを放流する。
【0013】
上記従来の洗浄方法には次のような問題点がある。
(1)洗浄水として大量の純水が必要である。通常、押出フラッシングおよび循環フラッシングの合計で、洗浄対象物の5〜6容量倍程度必要である。
(2)洗浄用に大容量の純水を確保する必要があり、それが洗浄工期の律速になることがある。例えば、純水の製造能力、貯蔵能力などが洗浄工期の律速になることがある。
(3)大量の洗浄排水中に含まれる懸濁物質およびアルカリ性薬品を処理するために、大容量の排水処理槽(中和槽、沈澱槽)が必要であり、建設にあたっては用地の確保が重要となっている。例えば、中和槽は洗浄対象物の1.5容量倍程度(例えば1500m3程度)、沈殿槽は中和槽の約2倍(例えば3000m3)とかなり大規模なものが必要である。また、この中和槽や沈殿槽は通常プラント建設後不要となってしまう。
(4)押出フラッシング流量を確保するために洗浄水の給排水配管として500A(内径約500mm)の大口径管にする必要がある。
(5)押出フラッシングは一過式で通水するので、洗浄に必要な流速を確保し難い場合がある。
【0014】
実際に、出力1350MW級の原子力発電プラントでは、3,000m3の純水タンクや500A×500mの給排水配管が必要とされ、約60,000m3にも及ぶ純水が使用された。また、それに伴い排出される洗浄排水を処理するために2,000m3の中和槽および3,600m3の沈澱槽が必要とされた。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記従来の問題点を解決するため、少ない洗浄水で、短期間に洗浄することができ、しかも排水処理が容易であり、給排水管として小口径のものを使用することができる新設プラント機器および配管の洗浄方法を提案することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は次の新設プラント機器および配管の洗浄方法である。
(1) 洗浄対象物となる新設プラント機器および配管内に洗浄水を通水し、混入している異物を除去する洗浄方法において、
洗浄対象物に洗浄水を通水して循環洗浄する循環路、および洗浄排水を排出する洗浄排水路を設け、
循環路にそれぞれバイパス路を有するストレーナおよびろ過装置を設け、
洗浄排水路に白金族触媒塔および/またはイオン交換樹脂塔を設け、
洗浄対象物に一過式で洗浄水を通水する洗浄を省略し、ストレーナおよびろ過装置を設けた循環路に、ヒドラジンを添加した洗浄水を循環しながら洗浄対象物に通水し、循環水をろ過しながら洗浄対象物を洗浄し、
ストレーナおよび/またはろ過装置が目詰まりした場合は、それぞれのバイパス路を通して洗浄水を循環して、ストレーナおよび/またはろ過装置の交換または再生を行い、
洗浄後の洗浄排水は、前記イオン交換樹脂塔でイオン交換樹脂もしくは白金族触媒と接触させて処理するか、または前記白金族触媒塔で白金族触媒と接触させたのちイオン交換樹脂と接触させて処理して、洗浄排水路から排出する
ことを特徴とする新設プラント機器および配管の洗浄方法。
(2)ろ過装置として、再生型または非再生型のフィルタを備えたろ過装置を使用する上記(1)記載の洗浄方法。
(3) 洗浄水としてヒドラジンを添加した純水を使用する上記(1)または(2)記載の洗浄方法。
(4) 洗浄水の給排水配管としてJIS G3452(配管用炭素鋼鋼管)で規定される200〜250Aの小口径の配管を使用する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の洗浄方法。
【0017】
本発明において、「フラッシング」とは新設プラントの稼動前に新設プラント機器および配管内に洗浄水を通水し、内部を洗浄することを意味する。
本発明において異物とは土、塵埃物質、汚物、切粉、スラグなどの混入物を意味し、粒子状のもので直径0.8mm以上のもの、繊維状のもので長さ1.6mm以上のものである。また懸濁物質とは、異物より小さいものを意味する。
【0018】
本発明の洗浄方法を適用する洗浄対象物は、原子力発電プラント、火力発電プラント、化学プラント等の大型の新設プラントの機器および配管などである。本発明はこのような洗浄対象物に対して、プラント稼動前、すなわち建設時に行う洗浄方法である。
【0019】
本発明の洗浄方法では、洗浄対象物に一過式で洗浄水を通水する洗浄を省略し、ろ過装置を設けた循環路に洗浄水を循環しながら洗浄対象物に通水し、循環水をろ過しながら洗浄対象物を洗浄する。すなわち、一過式の押出フラッシングにより異物を除去する洗浄は行わず、循環フラッシングのみにより異物を除去する洗浄方法である。循環フラッシングは、洗浄対象物に洗浄水を循環する循環路を設け、この循環路にろ過装置を設置して循環水中の異物および懸濁物質を除去し、このろ過水を循環路に戻して循環使用し、汚染対象物を洗浄する。
【0020】
洗浄水としては、ヒドラジンを添加した洗浄水、特にヒドラジンを添加した純水などが使用できる。アルカリ性薬品としてヒドラジンを添加した純水を洗浄に使用した場合、新設機器および配管の腐食を低減することができるほか、新設機器および配管に付着した油分を除去することができるので好ましい。洗浄対象物に炭素鋼が使用されている場合は油分の付着残存が予測されるのでヒドラジンを添加した洗浄水を添加するのが好ましい。
【0021】
洗浄水に添加するアルカリ性薬品としては、ヒドラジン、アンモニアなどがあげられる。アルカリ性薬品の濃度は従来と同じあり、ヒドラジンの場合10〜500mg/L、好ましくは50〜100mg/Lである。
【0022】
循環させる洗浄水の流速は0.5〜3m/s、好ましくは1.5〜2m/sとするのが望ましい。洗浄水として純水を使用する場合、通常常温で循環させるが、ヒドラジンなどのアルカリ性薬品を添加した洗浄水を使用する場合は40〜100℃、好ましくは60〜80℃で循環させるのが望ましい。
洗浄は洗浄対象物出口の洗浄水の濁度が0.1〜10mg/L、好ましくは1〜3mg/Lになるまで行うのが望ましい。
【0023】
循環路に設けるろ過装置としては、再生型(逆洗型)または非再生型のフィルタを備えたろ過装置を使用できる。再生型のフィルタは圧縮空気で再生できるものが好ましい。使用するフィルタのろ過精度は0.1〜100μm、好ましくは0.5〜4μmであるのが望ましい。このようなろ過精度のフィルタを使用することにより、従来異物とは定義されない数μmの懸濁物質まで除去可能である。
循環路にはストレーナ、例えば60〜120メッシュ、好ましくは80〜100メッシュのストレーナを併設する。ストレーナおよびろ過装置はそれぞれバイパス路を有するものを設ける。
【0024】
本発明の方法は一過式の洗浄を省略し、循環式の洗浄だけで全洗浄工程を行うので、洗浄水の使用量は洗浄対象物の1〜1.5容量倍で済み、従来の方法に比べて使用量を少なくすることができる。例えば、従来6万トンの洗浄水を用いて行っていた洗浄を、1万トンの洗浄水で実施することができる。また洗浄水の使用量が少ないため、洗浄工期が本設の純水製造能力および貯蔵能力の制約を受けにくく、その結果として洗浄工期を短縮することができる。
【0025】
洗浄水としてアルカリ性薬品を添加した純水を使用した場合、洗浄後の洗浄排水は、洗浄排水路に設けたイオン交換樹脂または白金族触媒に接触させることによりアルカリ性薬品を吸着または分解することができる。また白金族触媒と接触させたのち、イオン交換樹脂と接触させることにより処理することもできる。接触方法は限定されず、イオン交換樹脂または白金族触媒を充填した充填塔に洗浄排水を通水する方法などがあげられる。白金族触媒を充填した触媒塔に洗浄排水を通水することによりヒドラジンの90%以上を分解させることが可能であるので、白金族触媒で大部分のヒドラジンを分解し、その下流側でイオン交換樹脂に通水することによって、イオン交換樹脂の使用量も低減することができる。したがって洗浄排水は、白金族触媒で処理したのちイオン交換樹脂でさらに処理するのが好ましい。また触媒塔に洗浄排水を通水する際、触媒塔入口に過酸化水素等の酸化剤を注入することによりヒドラジンの分解効率を向上させることもでき、この場合下流側にイオン交換樹脂塔を設置することなく排水基準を満足できる。
【0026】
このようにして洗浄排水をイオン交換樹脂または白金族触媒と接触させて処理することにより、ヒドラジンなどのアルカリ性薬品を除去することができ、排水基準を満たすことが可能である。
洗浄水としてアルカリ性薬品を添加しない純水を使用した場合、洗浄排水の排水処理は省略することもできるが、イオン交換樹脂と接触させて処理する工程を設けておくのが好ましい。
【0027】
イオン交換樹脂としては、強酸性カチオン交換樹脂などのカチオン交換樹脂などが使用できる。
【0028】
白金族触媒としては、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)の白金族金属;これらを活性炭、ゼオライト、イオン交換樹脂等に担持した触媒などが使用できる。
【0029】
本発明の方法では循環水中の懸濁物質および異物がろ過装置により除去されるため、従来法では必要であった凝集沈澱処理が不要となる。また、ヒドラジンなどのアルカリ性薬品は白金族触媒やイオン交換樹脂により除去(分解または吸着)することができるため、pH調整の必要もない。従って、従来必要であった中和槽および沈殿槽を省略したり、設置する場合でも小規模化することができる。
【0030】
また本発明の方法は洗浄水使用量を低減することができるので、洗浄水の給排水時の流量は洗浄条件には無関係であり、その配管系は洗浄初期の水張りおよび排水に使用可能な時間にのみ影響する。このため洗浄水の給排水用の配管を洗浄流量に影響されず、従来使用されていた500Aに比べて小口径の配管を使用することができ、例えば200〜250A程度の小口径の配管を使用することができる。その結果として配管材料費の削減および軽量化に伴う配管敷設工事費(日数)の削減が可能である。
【0031】
下記に本発明の効果をまとめて示す。
(1)洗浄水の使用量を大幅に低減することができる。
(2)純水使用量の低減により、純水確保による制約が少なくなる。
(3)循環路に設けたろ過装置で異物を除去することにより、粒径の小さい懸濁物質も除去することができる(品質の向上)。
(4)アルカリ性薬品を含む洗浄排水をイオン交換樹脂または白金族触媒と接触させることにより、連続的に排水処理を行うことができる。
(5)洗浄水使用量の低減、およびイオン交換樹脂、白金族触媒これらを併用した連続排水処理により、排水処理貯槽(中和槽、沈澱槽)の小型化または省略が可能である。
(6)流量確保のための給排水配管を小口径配管にすることができる。
【0032】
【発明の効果】
本発明の洗浄方法は、洗浄対象物に洗浄水を通水して循環洗浄する循環路、および洗浄排水を排出する洗浄排水路を設け、循環路にそれぞれバイパス路を有するストレーナおよびろ過装置を設け、洗浄排水路に白金族触媒塔および/またはイオン交換樹脂塔を設け、洗浄水を一過式で通水する洗浄を省略し、ろ過装置を設けた循環路に洗浄水を循環して洗浄を行う循環フラッシングにより洗浄し、ストレーナおよび/またはろ過装置が目詰まりした場合は、それぞれのバイパス路を通して洗浄水を循環して、ストレーナおよび/またはろ過装置の交換または再生を行い、洗浄後の洗浄排水は、前記イオン交換樹脂塔でイオン交換樹脂もしくは白金族触媒と接触させて処理するか、または前記白金族触媒塔で白金族触媒と接触させたのちイオン交換樹脂と接触させて処理して、洗浄排水路から排出するので、少ない洗浄水で、短期間に洗浄することができ、しかも排水処理が容易であり、給排水管として小口径のものを使用することができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明を図面の実施例により説明する。図1は本発明の洗浄方法を実施する洗浄装置の系統図であり、洗浄水としてヒドラジンを含む純水を使用する場合の例を示している。
図1において、1は純水タンク、2はミキシングヒータ、3はポンプ、4は洗浄対象物、5はストレーナ、6はろ過装置、7は触媒塔、8はイオン交換樹脂塔、11は給水配管、12は排水配管、13は循環路、14はヒドラジン、15は純水、V1〜V15はバルブである。
【0034】
洗浄対象物4は炭素鋼から構成された機器または油分の付着している機器である。ろ過装置6はカートリッジフィルタを備え、逆洗により再生し、再使用可能である。触媒塔7にはRu/C触媒が充填されている。イオン交換樹脂塔8にはカチオン交換樹脂が充填されている。純水15にはヒドラジン14が50〜100mg/Lの濃度となるように注入され、洗浄水として使用される。ストレーナ5は80〜100メッシュのふるいを備えている。純水タンク1からバルブV2までの給水配管11およびバルブ12から下流の排水配管には200A〜250Aの小口径の配管が使用されている。
図1では下記(1)水圧テスト、(2)循環フラッシング、(3)ブロー(排水処理)の工程により洗浄が行われる。
【0035】
(1)水圧テスト
バルブV1〜V15は開の状態でポンプ3を起動して、純水タンク1中の純水15にヒドラジン14を注入しながら給水配管11から供給し、洗浄対象物4、ストレーナ5、ろ過装置6、触媒塔7、イオン交換樹脂塔8、循環路13に洗浄水を張り込む。次いでバルブV12、V15を閉じ、ポンプ3で系統内を10kg/cm2まで加圧し、漏れのないことを確認する。
【0036】
(2)循環フラッシング
上記(1)の水圧テスト終了後、バルブV1、V2、V10〜V14は閉で、バルブV3〜V9、V15は開の状態で、ポンプ3または本設のポンプ(図示は省略)を起動し、ヒドラジン14を含む洗浄水をストレーナ5およびろ過装置6に通水しながら循環路13に循環させ、この循環水により洗浄対象物4を洗浄する。洗浄対象物4を出た循環水はストレーナ5およびろ過装置6でろ過し、異物および懸濁物質を取り除き、ろ過水を再び洗浄対象物4に導入し、洗浄を行う。
【0037】
循環フラッシングはミキシングヒータ2で60〜80℃に加熱した循環水を流速1.5〜2.0m/sまたは設計流速で循環させ、濁度が3mg/L以下になるまで行う。通常、6〜12時間程度循環フラッシングを行うことにより、上記濁度にまで洗浄することができる。給水配管11および排水配管12には小口径の配管が使用されているが、洗浄条件には関係しない。
【0038】
ろ過装置が目詰まりした場合は、バルブV8およびバルブV9を閉、バルブV11を開とし、循環水をバイパス路16に流してろ過装置6をバイパスし、この間にカートリッジフィルタを圧縮空気で逆洗を行って再生する。再生したカートリッジフィルタはろ過装置6に装着し、バルブV8およびバルブV9を開、バルブV11を閉とし、循環水を再びろ過装置6に通水してろ過を行う。
ストレーナ6が目詰まりした場合も、上記と同様に循環水をバイパス路17に流し、この間にふるいを交換する。
【0039】
(3)ブロー(排水処理)
循環フラッシング終了後、すべてのバルブを開き、循環水を循環路13に循環させながら、洗浄排水を排水配管12から一部ずつ連続的に触媒塔7に通水してヒドラジンを分解し、さらにイオン交換樹脂塔8に連続的に通水してヒドラジン14を吸着除去する。
【0040】
図1において洗浄水としてヒドラジン14を注入しない純水を使用する場合は、ミキシングヒータ2、触媒塔7およびイオン交換樹脂塔8は省略することができ、この場合洗浄排水の排水処理を省略することができる。またヒドラジン14の代わりに他のアルカリ性薬品を使用することもできる。さらに触媒塔7の入口で洗浄排水に過酸化水素等の酸化剤を添加することにより、イオン交換樹脂塔8を省略し、触媒塔7単独で排水処理することもできる。
【0041】
上記洗浄方法を、例えば出力1350MW級の原子力発電プラントの洗浄に適用した場合、次のような効果が得られる。
(1)洗浄水を循環させているので、洗浄水使用量を10,000m3程度とすることができ、従来の60,000m3程度の使用量に比べて低減することができる。
(2)純水使用量が少なくなるので、本設の純粋製造装置、貯蔵タンクが小型化でき、工期を短縮することができる。
(3)フィルタでろ過しているので、懸濁物質も捕捉可能であり、品質が向上する。
(4)中和槽、沈殿槽などの排水処理設備が不要となるので、設置スペースを小さくすることができる。
(5)連続で排水処理することができるので、従来のように排水受入先の処理槽が空いていなければ次の作業ができないということはなく、工期を短縮することができる。
(6)給水配管および排水配管を配管径の小さいものを使用することができ、従来500Aの配管を使用したところに200A〜250Aの配管を使用することができる。
(7)洗浄に必要な流速を洗浄開始当初から容易に確保することができる。
【0042】
【実施例】
実施例1
純水30 literに模擬懸濁物質(カオリン、平均粒径1.5μm)6gを添加し、懸濁物質濃度を200mg/Lに調整した。この模擬フラッシング水をフィルタ(10インチ、ろ過精度:1μm)を装着したろ過装置に7.0L/minの流速で通水した。この通水は循環式で行った。試験条件を表1、懸濁物質濃度の経時変化の結果を表2および図2に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
表2からわかるように、循環フラッシングにより洗浄水中に移行する懸濁物質はフィルタにより除去することができる。
【0045】
実施例2
純水30 literにヒドラジンを添加し、ヒドラジン濃度を100mg/Lに調整した。このヒドラジン含有模擬フラッシング水を1.4 literの強酸性イオン交換樹脂を充填してカラムに25℃、0.9L/min(SV40h-1)で通水した。この試験は一過式で行った。試験条件を表3、カラム出口水の水質の結果を表4に示す。
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
表4の結果からわかるように、カラム出口水は排水基準を満たしている。
【0048】
実施例3
純水30 literにヒドラジンを添加し、ヒドラジン濃度を100mg/Lに調整した。このヒドラジン含有模擬フラッシング水を1.4 literのRu/C触媒を充填したカラムに35℃、0.7L/min(SV30h-1)で通水した。この試験は一過式で行った。試験条件を表5、カラム出口水の水質を表6に示す。
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】
表6の結果からわかるように、ヒドラジンは触媒に通水することによって90%以上分解した。このことから、触媒で大部分のヒドラジンを分解し、その下流側でイオン交換樹脂に通水することによって、イオン交換樹脂の使用量を少なくして排水処理を行うことができる。
【0052】
実施例4
純水30 literにヒドラジンを添加し、ヒドラジン濃度を100mg/Lに調整した。このヒドラジン含有模擬フラッシング水を1.4 literのRu/C触媒を充填したカラムに35℃、0.7L/min(SV30h-1)で通水した。この時カラム入口で、ヒドラジンに対して1.5倍当量の過酸化水素を連続注入した。この試験は一過式で行った。試験条件を表7、カラム出口水の水質を表8に示す。
【0053】
【表7】
【0054】
【表8】
【0055】
表8の結果からわかるように、触媒塔に洗浄排水を通水する際、触媒塔入口側で酸化剤として過酸化水素を注入することによりヒドラジンの除去率を向上させることもでき、この場合下流側にイオン交換樹脂塔を設置しなくても排水基準を満足できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の洗浄方法を実施する洗浄装置の系統図である。
【図2】実施例1の結果を示すグラフである。
【図3】従来の洗浄装置の系統図である。
【符号の説明】
1 純水タンク
2 ミキシングヒータ
3 ポンプ
4 洗浄対象物
5 ストレーナ
6 ろ過装置
7 触媒塔
8 イオン交換樹脂塔
11 給水配管
12 排水配管
13 循環路
14 ヒドラジン
15 純水
16、17 バイパス路
21 中和槽
22 沈殿槽
Claims (4)
- 洗浄対象物となる新設プラント機器および配管内に洗浄水を通水し、混入している異物を除去する洗浄方法において、
洗浄対象物に洗浄水を通水して循環洗浄する循環路、および洗浄排水を排出する洗浄排水路を設け、
循環路にそれぞれバイパス路を有するストレーナおよびろ過装置を設け、
洗浄排水路に白金族触媒塔および/またはイオン交換樹脂塔を設け、
洗浄対象物に一過式で洗浄水を通水する洗浄を省略し、ストレーナおよびろ過装置を設けた循環路に、ヒドラジンを添加した洗浄水を循環しながら洗浄対象物に通水し、循環水をろ過しながら洗浄対象物を洗浄し、
ストレーナおよび/またはろ過装置が目詰まりした場合は、それぞれのバイパス路を通して洗浄水を循環して、ストレーナおよび/またはろ過装置の交換または再生を行い、
洗浄後の洗浄排水は、前記イオン交換樹脂塔でイオン交換樹脂もしくは白金族触媒と接触させて処理するか、または前記白金族触媒塔で白金族触媒と接触させたのちイオン交換樹脂と接触させて処理して、洗浄排水路から排出する
ことを特徴とする新設プラント機器および配管の洗浄方法。 - ろ過装置として、再生型または非再生型のフィルタを備えたろ過装置を使用する請求項1記載の洗浄方法。
- 洗浄水としてヒドラジンを添加した純水を使用する請求項1または2記載の洗浄方法。
- 洗浄水の給排水配管としてJIS G3452で規定される200〜250Aの小口径の配管を使用する請求項1ないし3のいずれかに記載の洗浄方法。
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