JP4647133B2 - 流下物捕捉構造および流下物捕捉工 - Google Patents

流下物捕捉構造および流下物捕捉工 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、土石流、泥流、流下土砂礫、流木、落石等の土砂捕捉工、河川区間における流木の捕捉工、火山地域における火砕流、火山泥流、流下土砂礫等の捕捉工、斜面落石防止工、雪崩防止工、それらの区域の緊急対策工および安全管理対策工等に利用することができる流下物捕捉構造および流下物捕捉工に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、台風や大雨の水害によって河川の上流や源流付近で発生した土石流、泥流、流下土砂礫、流木、落石等(以下流下物という。)により、家屋、田畑等に土砂災害を与えたり、流下物が流下して橋脚に衝突して破壊させたり、橋脚間を塞いでそこに作用する流圧力が過大となって橋を流失させることがある。また、橋脚間が埋塞されることにより洪水が側岸に溢流氾濫、道路、人家、田畑等に災害を与えることがある。
【0003】
そこで、上流に主としてコンクリートや鋼鉄によってダム状の種々の形態の重力式土砂等捕捉工を構築することが行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の重力式土砂等捕捉工は、外力に対抗する手段として剛構造として構造体を構成するために、コンクリートや鋼材等の重量材料を大量に使用する必要がある。
そのために、これら構造体の建設費用はそれら重量材料を運搬するための工事用道路の建設費や運搬費を含めると膨大な費用となり、しかもその施工期間は数年や早くとも数カ月を費やすことが多く、緊急対策には間に合わない等の問題があり、特に火山地域では規模が大きくなるために施設整備が遅れがちとなる。
【0005】
さらに、これら捕捉工には、透過型と不透過型があるが、いずれにせよその構造体の上流側には土石流、泥流、流下土砂礫、流木、落石等の流下物が堆積して所期の目的が達せられなくなった場合は、それら流下物を取り除くことが必要となるが、一般に不動構造であるため、堆積物の除去作業は長時間を要し、経費も高くなる。また、捕捉工自体の老朽化や劣化に対して補強工事が必要となるが、それら保守・管理工事が大規模な工事となる問題がある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明は、渓床に配置した剛構造体と少なくとも一個所に伸縮材を連結した複数本の綱状の張力材を組み合わせ、その張力材を接地部に固定支持した支持アンカーに連結して渓谷間に張設したことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
第1実施の形態例
図1は正面説明図、図2は背面斜視説明図、図3は作用状態を示す説明図であり、図において、1は基礎、2はこの基礎1の上に所定間隔に配置した剛構造体であり、コンクリートや鋼製等による管状体もしくは柱状体であって断面形状は円形、角形、H形等どのような構造でもよい。
【0008】
また、この剛構造体2は必ずしも直立状態でなくてもよく、例えば図4に示す如く、上部が川下側となるような傾斜状態で設置してもよく、この剛構造体2を後述する如く、支持材によって川上側から引張支持する場合には川上側に倒れないように川下側に多少傾斜させておくとよい。
この剛構造体2は、その下端の基礎1との接触部が支点となって頭部が前後方向(川の流れと平行の方向)に回動(移動、揺動)できるように設置してあり、基礎1には剛構造体2の下端が外れないような構造、例えば係止凸部や係止凹部3が形成してある。この回動できる構造は基礎1に係止凹部3を形成する構造に限らずどのような構造でもよく、剛構造体の下部に回動部を形成し、下端を基礎1に固定したような構造でもよく、要は、剛構造体2の頭部が川下方向に回動可能であり、上記した如く、剛構造体2が川上側に倒れない構造であればよい。また、河床の状態によっては必ずしも基礎1を必要としない場合もある。
【0009】
4は上記剛構造体2を川上側から支持する綱状の支持材であり、渓床に設けたアンカー基礎部5と剛構造体2を連結している。この支持材4の構造は、例えば剛構造体2の上部と下部からそれぞれアンカー基礎部5に対して綱状の張力材6を張設し、その剛構造体2およびアンカー基礎部5との連結部の少なくとも一方もしくは途中に伸縮材7を配置した構造である。
【0010】
なお、上記支持材4は、上部の張力材6を渓床に設けたアンカー基礎部5でなく、渓岸に設けたアンカー基礎部に連結する構造にしてもよく、さらには、渓岸間に張った綱状の張力材に連結する構造としてもよい。また、渓床の状態や剛構造体2の構造によっては支持材4を設けなくてもよい。
上記各剛構造体2間は複数の綱状の張力材8からなる水平材9によって連結すると共にそれによって流下物を捕捉する閉止状態を構成する。この閉止状態を構成する水平材9の端部もしくは途中に伸縮材10を配置して剛構造体2に連結してあり、必要に応じては上下端の水平材9間に綱状の張力材8からなる垂直材11を渡して網状に構成してもよい。これら水平材9、垂直材11の状態は必ずしも両端で強力に引張しておかなくてもよく、たわませた状態で設けてもよい。
【0011】
上記綱状の張力材6、8は金属線、天然繊維、合成繊維もしくはそれらの組み合わせ等による綱や索等の微小の伸び能力を有する紐状体であり、例えば図5に示す如く、金属線、天然繊維もしくは合成繊維を捩ったロープ12であり、必要に応じて外周をゴム等の耐磨耗性、耐衝撃性の被覆材13で覆ったもの等である。
【0012】
上記伸縮材7、10は、張力材8にかかる衝撃力や静的荷重のエネルギー吸収力と伸び能力を有する構造であればよく、例えば図6に示すような、外筒14内にスプリングやゴム等の弾性材15を内蔵させた伸縮構造や、図7に示す如く、外筒14の内側端部に剛性体製のストッパを間隔をあけて複数配置し、そのストッパの破棄によって衝撃力を吸収するような延伸構造や、さらには図8に示す如く、外筒14内に液体を入れておき、衝撃力が作用すると液体が内部もしくは外部に移動する構造等弾性力を発生する延伸構造等どのような構造でもよい。
【0013】
17は渓岸や渓床等の接地部であり、この接地部17と上記剛構造体2間に水平材18が渡してあり、この水平材18は上記の水平材9と同様に綱状の張力材8とその端部もしくは途中に連結した伸縮材10とによって構成されている。
19は水平材18を渓岸や渓床等の接地部17に支持固定する支持アンカーであり、上記水平材18の端部に取り付けた伸縮材10が連結される。なお、支持アンカー19に伸縮材10を取り付け、その伸縮材10に水平材18を連結するようにしても全く同様であり、全体として水平材18が支持アンカー19と一体となるように連結されていればどのような構成でもよい。
【0014】
20は水平材18の連結を行うと共に水平材18に荷重を伝達する垂直材であり、水平材18と同様に綱状の張力材8とその端部に連結した伸縮材10とによって構成される。この垂直材20と上記水平材18とによって網状体21が構成される。これら水平材18、垂直材20の状態も上記同様に必ずしも両端で引張しておかなくてもよく、たわませた状態で設けてもよい。
【0015】
この垂直材20の下端は必要に応じて支持アンカー19によって、渓岸や渓床等の接地部17に支持固定され、上端はいちばん上の水平材18かもしくは図示しないが水平材18の上方に設けた水平材18と同様に接地部17と剛構造体2間に渡して水平材18の一部とした高張力の水平材に支持固定される。なお、この垂直材20を支持する支持アンカー19は、水平材18が荷重を支持する主構造体であるのとは異なるために支持アンカーの支持強度は低くてもよい。また、状況によっては支持アンカー19の設置をしないで最下段の水平材18で固定してもよい。
【0016】
この水平材18と垂直材20との交差部は係止具によって固定し、全体として上記の網状体21が構成される。
なお、上記の構成において、水平材18および垂直材20の伸縮材10は必ず取り付けなければいけないものではなく、現場の状況や規模によっては組み合わせなくてもよい。また、支持アンカーの設置間隔は現場の状況や規模によって決めればよく、その間隔によって網状体21の網目の大きさも決まり、それによって透過させる流下物の大きさを決めることができる。また、支持アンカーの設置間隔を狭く設定しておき、網目を選択して変えることにより流下物捕捉機能を変更させることができることになる。
【0017】
上記の構成において、両渓岸側に形成した網状体21の水平材18の固定状態は、垂直状態や上方の水平材18ほど上流側に固定した状態で固定する等現場の状況に応じて決定される。
また、必要に応じて上端の水平材18に両渓岸もしくは片渓岸から張力材による補強材を渡して補強してもよい。
【0018】
このように下部を支点として回動して傾くことができる剛構造体2を水平材9もしくはそれと垂直材11とによって連結すると共に支持材6によって支持し、それと網状体21とによって川の断面積を覆うように配置することにより、流下物の衝撃荷重を構造全体の傾斜および網状体21の伸縮変形によって軽減させて捕捉することができる。また、剛構造体2の間隔および網状体21の網目の大きさは任意に設定されるもので、大きな流下物を捕捉し、通過させてもよい大きさの流下物のみを流出させることができるように決定される。
【0019】
第2実施の形態例
上記第1実施の形態例では、剛構造体を下部を支点として回動可能に設置した構造としたが、剛構造体を自立させて前後方向(川の流れと平行の方向)に移動可能に設置した構造とすることもできる。
本実施の形態例はそのような構造例である。図9は背面斜視図、図10は作動状態を示す説明図であり、渓床に所定面積の基礎1を形成する。この基礎1上に、鉄骨材やPCパネル等を組み合わせた骨組みや面組みもしくはそれらの組み合わせによる通水構造となる剛構造体2を配置し、その剛構造体2の底面は倒れないで自立できるように縦、横方向に所定の支持間隔を形成する骨組みの寸法を有しており、骨組みの各骨間は大きな流下物を捕捉し、通過させてもよい大きさの流下物のみを流出させることができる寸法にしてある。
【0020】
剛構造体2の形状は図面では大略長方形を示したが任意であり、湾曲形や三角形等どのような形状でもよい。組み合わせ構造も図面ではボックス構造を示したが、トラス構造等剛構造が構成できる構造であればどのような構造でもよい。
また、剛構造体2の幅は、渓床幅いっぱいでもよくまたその一部であってもよい。
【0021】
4は上記剛構造体2を川上側から支持する綱状の支持材であり、渓床に設けたアンカー基礎部5と剛構造体2を連結している。この支持材4の構造は、上記第1実施の形態例と同様に剛構造体2の上部と下部からそれぞれアンカー基礎部5に対して綱状の張力材6を張設し、その剛構造体2およびアンカー基礎部5との連結部の少なくとも一方もしくは途中に伸縮材7を配置した構造でもよいが、図示する如く、渓岸間に張った綱状の張力材27に上方の張力材6を連結した構造としてもよい。また、上記支持材4は、上部の張力材6を渓床に設けたアンカー基礎部5でなく、渓岸に設けたアンカー基礎部に連結した構造としてもよい。
【0022】
17は渓岸や渓床等の接地部であり、この接地部17と上記剛構造体2間に水平材18が渡してあり、この水平材18は上記と同様に綱状の張力材とその端部もしくは途中に連結した伸縮材10とによって構成されている。
19は水平材18を渓岸や渓床等の接地部17に支持固定する支持アンカーであり、上記水平材18の端部に取り付けた伸縮材10が連結される。なお、支持アンカー19に伸縮材10を取り付け、その伸縮材10に水平材18を連結するようにしても全く同様であり、全体として水平材18が支持アンカー19と一体となるように連結されていればどのような構成でもよい。
【0023】
20は上下の水平材18の連結を行うと共に水平材18に荷重を伝達する垂直材であり、水平材18と同様に綱状の張力材8とその端部に連結した伸縮材10とによって構成される。この垂直材20と上記水平材18とによって網状体21が構成される。これら水平材18、垂直材20の状態も上記同様に必ずしも両端で引張しておかなくてもよく、たわませた状態で設けてもよい。
【0024】
この垂直材20の下端は支持アンカー19によって、渓岸や渓床等の接地部17に支持固定され、上端はいちばん上の水平材18かもしくは図示しないが水平材18の上方に設けた水平材18と同様に接地部17と剛構造体2間に渡して水平材18の一部とした高張力の水平材に支持固定される。なお、この垂直材20を支持する支持アンカー19は、水平材18が荷重を支持する主構造体であるのとは異なるために支持アンカーの支持強度は低くてもよい。また、場合によっては設置せずに水平材18に固定してもよい。
【0025】
この水平材18と垂直材20との交差部は係止具によって固定し、全体として上記の網状体21が構成される。
上記綱状の張力材8および伸縮材10は、上記第1実施の形態例で説明したものと同様のものでよい。
なお、上記の構成において、水平材18および垂直材20の伸縮材10は必ず取り付けなければいけないものではなく、現場の状況や規模によっては組み合わせなくてもよい。また、支持アンカーの設置間隔は現場の状況や規模によって決めればよく、その間隔によって網状体21の網目の大きさも決まり、それによって透過させる流下物の大きさを決めることができる。また、支持アンカーの設置間隔を狭く設定しておき、網目を選択して変えることにより流下物捕捉機能を変更させることができることになる。
【0026】
上記の構成において、両渓岸側に形成した網状体21の水平材18の固定状態は、垂直状態や上方の水平材18ほど上流側に固定した状態で固定する等現場の状況に応じて決定される。
また、必要に応じて上端の水平材18に両渓岸もしくは片渓岸から張力材による補強材を渡して補強してもよい。
【0027】
このように、下部が基礎に沿って移動できる剛構造体2を水平材18もしくはそれと垂直材20とによって連結支持して川の断面積を覆うように配置することにより、流下物の衝撃荷重を構造全体の移動および網状体21の伸縮変形によって軽減させて捕捉することができる。また、剛構造体2の骨組み間隔および網状体21の網目の大きさを任意に設定することができるものである。大きな流下物を捕捉し、通過させてもよい大きさの流下物のみを流出させることができる。
【0028】
第3実施の形態例
上記第1実施の形態例および第2実施の形態例では、剛構造体2は回動や移動等による可動状態であったが、剛構造体を自立させて固定した構造と網状張力材を組み合わせた構造とすることもできる。
図11は正面説明図、図12は背面斜視説明図、図13は作用状態を示す説明図である。剛構造体2は所望の間隔に配置してある。この剛構造体2は渓床を掘削等して外力に対して前後左右の方向に対して回動や移動のないように自立させてある。
【0029】
この剛構造体2の構造は、図面では大略台形形状を示したが、かならずしもこのような形状である必要はなく、湾曲型、円錐台形、円柱形、箱構造もしくはトラス構造等剛構造が構成できる構造であればどのような構造でもよい。また、それを構築する材質はコンクリート、鋼管、鋼材もしくはそれらの組み合わせた複合材等でよい。
【0030】
さらに、剛構造体2の構造は、図14に示す如く、前面から支持部材によって支持する構造でもよく、さらには図15に示す如く、剛構造体2を単に張力材で支持した構造としてもよい。
このような剛構造体2間および接地部と剛構造体間は第1実施の形態例と同様に複数の網状の張力材8からなる水平材9および水平材18によって連結すると共にそれによって流下物を捕捉する閉止状態を構成する。
【0031】
この閉止状態を構成する水平材9および18は両端もしくは途中に伸縮材10を配置して剛構造体2に連結してあり、必要に応じては上端の水平材9から綱状の張力材8からなる垂直材11、20を支持アンカーにわたして網状体を構成してもよい。これら水平材9、18、垂直材11、20の状態も上記同様に必ずしも両端で引張しておかなくてもよく、たわませた状態で設けてもよい。
【0032】
上記綱状の張力材8および伸縮材10は上記各実施の形態例のものと同様である。
なお、上記水平材9は、自立剛構造体2毎に連結してもよいが、図16および図17に示す如く、途中の自立剛構造体2には通孔構造を設けて貫通させ、端部を渓岸や渓床の接地部に直接連結してもよい。
【0033】
また、垂直材11、20の渓床や渓岸への連結は図16に示す如く、必要に応じてはコンクリートブロック、自然石等の重量物に連結してもよく、状況によっては支持アンカー19や上記のような重量物に連結せずに最下段水平材9もしくは18で固定してもよい。
このように自立した剛構造体2間と渓床や渓岸を水平材9、18もしくはそれと垂直材11、20によって連結支持して配置することにより、図13に示す如く、流下物の衝撃荷重を構造全体および網状体の伸縮変形によって軽減させて捕捉することができる。また、網目の大きさを任意に設定することができるものであり、大きな流下物は捕捉し、通過させてもよい大きさの流下物は流出させることができる。
【0034】
第4実施の形態例
上記第1実施の形態例、第2実施の形態例および第3実施の形態例では、渓床に回動、移動もしくは固定状態の剛構造体2を構築し、その剛構造体2と渓岸や渓床に対する設置はアンカーと張力材を連結する構造としたが、本実施の形態例は、既存の剛構造体もしくは新築の剛構造体で固定状態の剛構造体と綱状の張力材との組み合わせによる構造である。
【0035】
図18に示す如く、ダム状の重力式土砂等捕捉工の剛構造体2の一部に起立部22を残したり新設して間隙23を形成し、この間隙23を複数の綱状の張力材8からなる水平材9によって連結すると共にそれによって流下物を捕捉する閉止状態を構成する。この閉止状態を構成する水平材9の両端もしくは途中に伸縮材10を配置して剛構造体2に連結してあり、必要に応じては上端の水平材9から綱状の張力材8からなる垂直材11を支持アンカーに渡して網状体に構成してもよい。これら水平材9、垂直材11の状態も上記同様に必ずしも両端で引張しておかなくてもよく、たわませた状態で設けてもよい。
【0036】
上記綱状の張力材8および伸縮材10は上記各実施の形態例のものと同様である。
なお、上記水平材9は、各起立部22毎に連結してもよいが、図示する如く途中の起立部22には通孔を設けて貫通させ、両端によって連結してもよい。
また、剛構造体2の起立部22の間隔および網状体の網目の大きさを任意に設定することができるものである。
【0037】
このように剛構造体2に形成した起立部22を水平材9もしくはそれと垂直材11とによって連結支持して配置することにより、図19に示す如く、流下物の衝撃荷重を構造全体および網状体の伸縮変形によって軽減させて捕捉することができる。また、網目の大きさを任意に設定することができるものであり、大きな流下物を捕捉し、通過させてもよい大きさの流下物のみを流出させることができる。
【0038】
なお、上記における起立部22の形状は、図面では直立した直方体を示したが、その形状は任意であり、湾曲形、円錐形、円柱形等どの様な形状でもよい。また、その材質もコンクリート、鋼管もしくはそれらを含めた複合材等剛体構造が構築できる形状および材質であればよい。
図20は起立部を形成しない形態であり、所望の大きさの開口24を形成し(水通し部として形成されている場合があり、そのような場合にはそれを利用してもよいし、その水通し部が浅い場合には深く加工してもよい。)、その開口24間を複数の綱状の張力材8からなる水平材9によって連結すると共にそれによって流下物を捕捉する閉止状態を構成する。この閉止状態を構成する水平材9の両端もしくは途中に伸縮材10を配置して剛構造体2に連結してあり、必要に応じては上端の水平材9から綱状の張力材8からなる垂直材11を支持アンカーに渡して網状体に構成してもよい。
【0039】
上記綱状の張力材8および伸縮材10は、上記第1実施の形態例で説明したものと同様のものでよい。
以上の構成によると、図21に示す如く、流下物の衝撃荷重を構造全体および網状体の伸縮変形によって軽減させて捕捉することができる。また、網状体の網目の大きさを任意に設定することができるものである。大きな流下物を捕捉し、通過させてもよい大きさの流下物のみを流出させることができる。
【0040】
なお、このように起立部を形成しない形態もあるが、この場合は開口幅が狭い場合はよいが、開口幅が広い場合、外力をすべて水平材9の両端と垂直材11でもたせると各部材がすべて大きくしかも工事も大がかりとなる場合がある。そこで、そのような場合、図22、図23に示す如く、開口間の所定間隔に上記各実施の形態のような剛構造体を配置することにより水平材9や垂直材11および支持アンカー等への負担を軽減させることができ、施工規模および各部材の軽量化をはかることができる。
【0041】
なお、上記の各実施の形態例による張力材である水平材、垂直材および引張材による網目の形成は現場で係止具によって固定して網状体を構成するように説明を行ったが、規模や現場の状況等の条件によっては予め工場等で網状体に形成したものを使用することができ、その網状体を伸縮材を介して現場の支持アンカーに連結してもよい。
【0042】
また、上記各実施の形態例による張力材である水平材、垂直材および引張材はアンカー基礎部5に固定した構造として説明したが、図24の説明図に示す如く、コンクリート、自然石もしくは土嚢等の重量物26を渓床や渓岸に配置してそれに連結してもよく、さらに場合によっては近隣の立木に連結してもよい。
以上説明した各実施の形態例によると、剛構造体と網状体とによって川の断面を覆うことにより、台風や大雨等により流されてきた流木や岩石等の流下物は原則として網目より小さいものは透過流出され(網目より小さくてもかみ合って網目より大きい状態となって網目で止まるものもある。)、大きな流下物が網状体に当たると、その衝突荷重は網状体や伸縮材によって吸収される。しかもその流下物は網状体で捕捉され、網状体と伸縮材の反力で押し戻され、その後の押圧力には伸縮材の耐荷力で対応することになる。
【0043】
【発明の効果】
以上詳細に説明した本発明によると、剛構造体と綱状の張力材による網状体により川の断面を覆って土砂や流木等の流下物を捕捉するようにしたことにより、原則として網目より小さい流下物は透過流出され、大きな流下物の衝突エネルギーを網状体および伸縮材で吸収させて構造体に加わる荷重を大幅に減衰させることができ、ひいては、軽量で建設費が安く、短期間の施工期間とすることができる効果を有する。
【0044】
また、流下物の衝撃荷重を網状体や伸縮材が吸収するために、基本的に掘削を伴わないアンカー基礎等で網状体を支持して外力に対抗することができるようになり、渓岸の掘削による環境破壊をなくし、現地発生土による施設機能の減衰や停止を防止し、施工期間中の掘削手戻り災害をなくすという効果を有する。
さらに、伸縮材と支持アンカーとの連結をはずすことにより、網状体の上流側に堆積した土砂礫、流下物等を流水により自然流下させたり、重機により下流に押し出すことにより、簡単に除去できて機能を復元させることが容易であるという効果を有する。
【0045】
また、渓床に流下物が堆積して渓床が上昇した場合にも、上方にさらに追加工事することが容易であるという効果を有すると共に、土砂礫等の現象・規模が変化した場合には伸縮材と支持アンカーとの連結を外すことにより事前の設置アンカーに流出土砂礫等の現象・規模に応じた強度と網目を有する網状体を緊急的に設置することにより、短期間に低価格で嵩上げすることが可能となる効果を有する。
【0046】
さらに、土砂崩れ等の危険が予知されるような個所の場合、予め支持アンカーを施工しておくことにより、いつでも必要に応じて短期間に設置することができるために建設費用が安価で景観や環境に影響の少ない恒久対策として利用することができる効果を有する。
また、各材料が軽量で基礎も簡単な構造であるために、工事用道路のない山間部での建設が可能であり、外力は渓岸および渓床の支持アンカーにより支持するため地耐力の少ない不良地盤等においても地盤改良を行わずに工事をすることが可能となる効果を有する。また、柔構造であるために水平材、垂直材に各種検知装置を取り付けることにより、土石流や土砂流動の流動深、流下速度、流下エネルギー等を確実に検知することが可能となり、安全管理のトリガーとして利用することができる効果を有する。
【0047】
また、従来の構造物と異なり渓流空間を完全に遮断する構造でないために渓流の景観や魚の遡上等の渓流環境を壊さず、維持保全することができる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施の形態例を示す正面図
【図2】背面斜視図
【図3】作用状態を示す説明図
【図4】剛構造体を傾斜させた例を示す説明図
【図5】張力材の例を示す説明図
【図6】伸縮材の例を示す説明図
【図7】延伸材の例を示す説明図
【図8】延伸材の例を示す説明図
【図9】第2実施の形態例を示す背面斜視図
【図10】作用状態を示す説明図
【図11】第3実施の形態例を示す正面図
【図12】斜視説明図
【図13】作用状態を示す説明図
【図14】剛構造体の他の例を示す説明図
【図15】剛構造体の他の例を示す説明図
【図16】水平材を剛構造体に固定させない状態の説明図
【図17】水平材を剛構造体に固定させない状態の説明図
【図18】第4実施の形態例を示す正面図
【図19】作用状態を示す説明図
【図20】起立部を形成しない形態例を示す正面図
【図21】作用状態を示す説明図
【図22】起立部を形成しない形態例を剛構造体にした例を示す正面図
【図23】起立部を形成しない形態例を剛構造体にした例を示す正面図
【図24】端部をアンカー基礎部以外のもので固定した場合の説明図
【符号の説明】
1 基礎
2 剛構造体
3 係止凹部
4 支持材
5 アンカー基礎部
6 張力材
7 伸縮材
8 張力材
9 水平材
10 伸縮材
11 垂直材
17 接地部
18 水平材
19 支持アンカー
20 垂直材
21 網状体
22 起立部
23 間隙
24 開口
25 支柱
26 重量物
27 張力材

Claims (6)

  1. 渓床に配置した剛構造体と、途中の少なくとも一個所に伸縮材を連結した複数本の状の張力材を組み合わせ、その張力材の端部を接地部に固定支持した支持アンカーに連結して渓谷間に張設したことを特徴とする流下物捕捉構造。
  2. 請求項1において、柱状体の剛構造体を間隔を設けて渓床に複数配置し、その各剛構造体を川上側から支持材で引張して支持すると共に張力材で互いに連結し、両側の剛構造体に連結した張力材の端部を接地部に固定支持した支持アンカーに連結したことを特徴とする流下物捕捉構造。
  3. 請求項1において、剛構造体を通水構造としたことを特徴とする流下物捕捉構造。
  4. 請求項1において、支持アンカーを渓床や渓岸に設置したブロックや土嚢等の重量物としたことを特徴とする流下物捕捉構造。
  5. 請求項1において、剛構造体の下端を基礎に川の流れと平行する方向に移動もしくは回動可能となるように設置したことを特徴とする流下物捕捉構造。
  6. 既存の重力式土砂等捕捉工に通水用の開口を設け、その開口間に張力材として途中の少なくとも一個所に伸縮材を連結した水平材を設け、その水平材と交差するように連結した垂直材を設けて網状体を構成してなることを特徴とする流下物捕捉
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