JP3608773B2 - 流下物捕捉構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、河川上流における土石流、泥流、流下土砂礫、流木、落石等の土砂捕捉工、河川区間における流木の捕捉工、火山地域における火砕流、火山泥流、流下土砂礫等の捕捉工、斜面落石防止工、雪崩防止工それらの区域の緊急対策工および安全管理対策工等に利用することができる流下物捕捉構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、台風や大雨の水害によって河川の上流や源流付近で発生した土石流、泥流、流下土砂礫、流木、落石等(以下流下物という。)により、家屋、田畑等に土砂災害を与えたり、流下物が流下して橋脚に衝突して破壊させたり、橋脚間を塞いでそこに作用する流圧力が過大となって橋を流失させることがある。また、橋脚間が埋塞されることにより洪水が側岸に溢流氾濫、道路、人家、田畑等に災害を与えることがある。
【0003】
そこで、上流に主としてコンクリートや鋼鉄によってダム状の種々の形態の重力式土砂等捕捉工を構築することが行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の重力式土砂等捕捉工は、外力に対抗する手段として剛構造として構造体を構成するために、コンクリートや鋼材等の重量材料を大量に使用する必要がある。
そのために、これら構造体の建設費用はそれら重量材料を運搬するための工事用道路の建設費や運搬費を含めると膨大な費用となり、しかもその施工期間は数年を費やすことが多く、緊急対策には間に合わない等の問題があり、特に火山地域では規模が大きくなるために施設整備が遅れがちとなる。
【0005】
さらに、これら捕捉工には、透過型と不透過型があるが、いずれにせよその構造体の上流側には流下物が堆積して所期の目的が達せられない場合は、それら流下物を取り除くことが必要となるが、一般に不可動構造であるため、堆積物の除去作業は長時間を要し、経費も高くなる。また、捕捉工自体の老朽化や劣化に対して補強工事が必要となるが、それら保守・管理工事が大規模な工事となる問題がある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明は、渓岸や渓床に所望の間隔に支持アンカーを埋設し、これらの支持アンカーに、少なくとも一個所に伸縮材を連結した複数本の綱状の張力材の接地側端部をそれぞれ取り外し可能に連結することにより交差張設して柔構造の網状体とし、川の断面積を覆うように配置することを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
第1実施の形態例
図1は説明図、図2は作用状態を示す説明図であり、図において、1は渓岸や渓床等の接地部、2はこの接地部1間に渡した水平材であり、綱状の張力材3とその端部もしくは途中に連結した伸縮材4とによって構成されている。
【0008】
上記綱状の張力材3は金属線、天然繊維、合成繊維もしくはそれらの組み合わせ等による綱や索等の微小の伸び能力を有する紐状体であり、例えば図3に示す如く、金属線、天然繊維もしくは合成繊維を捩ったロープ5であり、必要に応じて外周をゴム等の耐磨耗性、耐衝撃性の被覆材6で覆ったもの等である。
また、上記伸縮材4は、張力材3にかかる衝撃力や静的荷重のエネルギー吸収力と伸び能力を有する構造であればよく、例えば図4に示すような、外筒7内にスプリングやゴム等の弾性材8を内蔵させ、連結材9に引張力を与えた構造のようなもの等弾性を発生する構造であればどのような構造でもよい。
【0009】
10は水平材2を渓岸や渓床等の接地部1に支持固定された支持アンカーであり、上記水平材2の端部に取り付けた伸縮材4が連結される。なお、支持アンカー10に伸縮材4を取り付け、その伸縮材4に張力材3を連結するようにしても全く同様であり、全体として水平材2が支持アンカー10と一体となるように連結されていればどのような構成でもよい。また、図示する如く、予め将来の嵩上げ用の支持アンカーを接地しておくとよい。
【0010】
11は上下の水平材2の連結を行うと共に水平材2に荷重を伝達する垂直材であり、水平材2と同様に綱状の張力材3とその端部に連結した伸縮材4とによって構成されている。
この垂直材11の下端は支持アンカー10によって、渓岸や渓床等の接地部1に支持固定され、上端はいちばん上の水平材2かもしくは図示しないが水平材2の上方に設けた水平材2と同様に接地部1に渡して水平材2の一部とした高張力の水平材に支持固定される。なお、この垂直材11を支持する支持アンカー10は、水平材2が荷重を支持する主構造体であるのとは異なるために支持アンカーの支持強度は低くてもよい。
【0011】
この水平材2と垂直材11との交差部は係止具によって固定し、全体として網状体12が構成される。
なお、上記の構成において、水平材2および垂直材11の伸縮材4は必ず取り付けなければいけないものではなく、現場の状況や規模によっては組み合わせなくてもよい。また、支持アンカーの設置間隔は現場の状況や規模によって決めればよく、その間隔によって網状体12の網目の大きさも決まり、それによって透過させる流下物の大きさを決めることができる。また、支持アンカーの設置間隔を狭く設定しておき、網目を選択して変えることにより流下物捕捉機能を変更させることができることになる。
【0012】
上記の構成において、水平材2の固定状態は、図5、図6に示す如く、垂直状態や上方の水平材2ほど上流側に固定して傾いた状態で固定する等現場の状況に応じて決定される。
また、必要に応じて図7に示す如く、上端の水平材2もしくは上記高張力の水平材に両渓岸もしくは片渓岸から張力材3による補強材13を渡して補強してもよく、一端を水平材2に連結し、他端を接地部1の支持アンカー10に伸縮材4を介して固定して一体に構成する。
【0013】
このように、水平材2と垂直材11とによって網状体を形成して川の断面積を覆うように配置することにより、流下物の衝撃荷重を構造全体の伸縮変形によって軽減させて捕捉することができる。また、網状体12の網目の大きさを任意に設定ることにより、大きな流下物を捕捉し、通過させてもよい大きさの流下物のみを流出させることができる。
【0014】
第2実施の形態例
上記第1実施の形態例では、水平材2を外力に対する主構造材としたが、垂直材11を外力に対する主構造材とすることもできる。本実施の形態例はそのような構造例であり、水平材2および垂直材11さらに支持アンカー10等は上記第1実施の形態例で説明したものと同様のものが用いられるが、垂直材11は張力材3の両端に伸縮材4が取り付けられているとよい。
【0015】
図8は説明図であり、水平材2の上部に水平材2と同等の構造もしくはそれより強度の大きい張力材3とそれに対応した伸縮材4とりよる高張力の水平材14を設け、両渓岸に渡したその高張力の水平材14と接地部1との間に垂直材11を張設したものであり、水平材2との交差部は上記第1実施の形態例と同様に係止具によって固定して網状体12を構成する。垂直材11の設置間隔や水平材2と垂直材11の網目状態等は現場の状況に応じて決定される。
【0016】
この実施の形態例では垂直材11が外力に対する主構造材となるために、水平材2を支持する支持アンカー10は、垂直材11の支持アンカー10よりアンカーの支持強度は低くてもよい。
なお、上記高張力の水平材14は必要に応じて設けられるものであり、水平材2に十分な強度があればその通常の水平材2でよい。上端の水平材2もしくは高張力の水平材14の張設位置は、図示する如く、他の水平材2と間隔をあけた位置でもよい。また、水平材2の固定状態は、図9、図10、図11に示す如く、垂直状態や上方の水平材2ほど上流側に固定して傾いた状態で固定したり、高張力の水平材14だけ上流側に固定する等現場の状況に応じて決定される。
【0017】
第3実施の形態例
上記第1実施の形態例および第2実施の形態例では、水平材2と垂直材11による網状体12はその説明および図面で交差部は直交もしくはそれに近い状態(実際は水平材はたるみがあるために水平状態ではない。)で交差するものとして説明を行ったが、必ずしも水平材2は水平で垂直材11は垂直である必要はない。
【0018】
現場の状況に応じてそれら張力材は水面に対して斜めに設置されてもよい。そこで、本形態例はそのような形態例を示すものである。
図12は説明図であり、図において、15は引張材であり、上記水平材や垂直材と同様に綱状の張力材3とその両端に連結した伸縮材4とによって構成されている。
【0019】
この引張材15の両端を両渓岸から順次渓岸および渓床等の接地部1の支持アンカー10に上記各実施の形態と同様に連結して取り付け、それぞれの交差部をこれも上記各実施の形態と同様に係止具によって固定して網状体12が構成される。
この引張材15の両渓岸からの張設角度や網み目の大きさ等は、現場の状況によって適宜設計される。
【0020】
さらに、16は引張材であり、上記水平材や垂直材と同様に綱状の張力材3とその端部に連結した伸縮材4とによって構成されている。
この引張材16の伸縮材4を順次渓岸や渓床に埋設した支持アンカー10に連結して取り付け、伸縮材4を取り付けていない端部は上記引張材15に連結固定し、各引張材15との交差部は上記各実施の形態と同様に係止具によって固定して網状体12が構成される。なお、必要によっては、引張材16の端部に伸縮材4を取り付けて引張材15に連結固定しても無論よい。
【0021】
これら引張材15、16の設置角度は、上記各実施の形態例同様に図13、図14に示す如く、垂直状態や上方の固定位置ほど上流側に傾けた状態で固定したり現場の状況に応じて決定される。
なお、上記の各実施の形態例による張力材である水平材、垂直材および引張材による網目の形成は現場で係止具によって固定して網状体を構成するように説明を行ったが、規模や現場の状況等の条件によっては予め工場等で網状体に形成したものを使用することができ、その網状体を伸縮材を介して現場の支持アンカーに連結してもよい。
【0022】
以上説明した各実施の形態例によると、網状体により川の断面を覆うことにより、台風や大雨等により流されてきた流木や岩石等の流下物は原則として網目より小さいものは透過流出され(網目より小さくてもかみ合って網目より大きい状態となって網目で止まるものもある。)、大きな流下物が網状体に当たると、その衝突荷重は網状体や伸縮材によって吸収される。しかもその流下物は網状体で捕捉され、網状体と伸縮材の反力で押し戻され、その後の押圧力には伸縮材の耐荷力で対応することになる。
【0023】
【発明の効果】
以上詳細に説明した本発明によると、綱状の張力材にって網状体を構成し、伸縮材を介して渓岸や渓床の接地部に固定配置した支持アンカーに連結して張設することにより川の断面を覆って土砂や流木等の流下物を捕捉するようにしたことにより、原則として網目より小さい流下物は透過流出され、大きな流下物の衝突エネルギーを網状体および伸縮材で吸収させて構造体に加わる荷重を大幅に減衰させることができ、ひいては、軽量で建設費が安く、短期間の施工期間とすることができる効果を有する。
【0024】
また、流下物の衝撃荷重を網状体や伸縮材が吸収するために、基本的に掘削を伴わないアンカー基礎等で外力に対抗することができるようになり、掘削による環境破壊をなくし、現地発生土による施設機能の減衰や停止を防止し、施工期間中の掘削手戻り災害をなくすという効果を有する。
さらに、伸縮材と支持アンカーとの連結をはずすことにより、網状体のう上流側に堆積した土砂礫、流下物等を流水により自然流下させたり、重機により下流に押し出すことにより、簡単に除去できて機能を復元させることが容易であるという効果を有する。
【0025】
また、渓床に流下物が堆積して渓床が上昇した場合にも、上方にさらに網状体を追加工事することが容易であるという効果を有すると共に、土砂礫等の現象・規模が変化した場合には伸縮材と支持アンカーとの連結を外すことにより事前の設置アンカーに流出土砂礫等の現象・規模に応じた強度と網目を有する網状体を緊急的に設置することにより、短期間に低価格で嵩上げすることが可能となる効果を有する。
【0026】
さらに、土砂崩れ等の危険が予知されるような個所の場合、予め支持アンカーを施工しておくことにより、いつでも必要に応じて短期間に網状体を設置することができるために建設費用が安価で景観や環境に影響の少ない恒久対策として利用することができる効果を有する。
また、各材料が軽量で基礎も簡単な構造であるために、工事用道路のない山間部での建設が可能であり、外力は渓岸および渓床の支持アンカーにより支持するため地耐力の少ない不良地盤等においても地盤改良を行わずに工事をすることが可能となる効果を有する。また、全断面が柔構造であるために水平材、垂直材に各種検知装置を取り付けることにより、土砂流や土砂流動の流動深、流下速度、流下エネルギー等を確実に検知することが可能となり、安全管理のトリガーとして利用することができる効果を有する。
【0027】
また、従来のコンクリートや鋼製等の剛構造物と異なり渓流空間を完全に遮断する構造でないために渓流景観や魚の遡上等の渓流環境を壊さず、維持保全することができる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施の形態例を示す説明図
【図2】作用状態を示す説明図
【図3】張力材の例を示す説明図
【図4】伸縮材の例を示す説明図
【図5】網状体の固定状態例を示す説明図
【図6】網状体の固定状態例を示す説明図
【図7】補強材を渡した状態の説明図
【図8】第2実施の形態例を示す説明図
【図9】網状体の固定状態例を示す説明図
【図10】網状体の固定状態例を示す説明図
【図11】網状体の固定状態例を示す説明図
【図12】第3実施の形態例を示す説明図
【図13】網状体の固定状態例を示す説明図
【図14】網状体の固定状態例を示す説明図
【符号の説明】
1 接地部
2 水平材
3 張力材
4 伸縮材
10 支持アンカー
11 垂直材で
12 網状体
13 補強材
14 水平材
15、16 引張材

Claims (3)

  1. 渓岸や渓床に所望の間隔に支持アンカーを埋設し、これらの支持アンカーに、少なくとも一個所に伸縮材を連結した複数本の綱状の張力材の接地側端部をそれぞれ取り外し可能に連結することにより交差張設して網状体としたことを特徴とする流下物捕捉構造。
  2. 請求項1において、張力材を水平材と垂直材とし、その水平材の接地側端部を渓岸や渓床に埋設した支持アンカーに取り外し可能に連結して外力に対する主構造材とし、垂直材の接地側端部を渓岸や渓床に埋設した支持アンカーに取り外し可能に連結したことを特徴とする流下物捕捉構造。
  3. 請求項1において、張力材を水平材と垂直材とし、その水平材の接地側端部を渓岸や渓床に埋設した支持アンカーに取り外し可能に連結し、垂直材の接地側端部を渓岸や渓床に埋設した支持アンカーに取り外し可能に連結し、他端部を水平材に連結して外力に対する主構造材としたことを特徴とする流下物捕捉構造。
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