JP4646051B2 - ジ(メタ)アクリレート化合物およびその硬化性組成物 - Google Patents

ジ(メタ)アクリレート化合物およびその硬化性組成物 Download PDF

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Description

本発明は、新規なジ(メタ)アクリレート化合物およびこの化合物を含む硬化性組成物に関するものである。ここで、本発明のジ(メタ)アクリレート化合物とは、ジアクリレート化合物およびジメタクリレート化合物を意味する。本発明のジ(メタ)アクリレート化合物およびこの化合物を含む硬化性組成物は、レジストなどの感光性材料、インキ、塗料などのコーテイング材料、粘接着剤原料、建築材料、ポリマー原料、顕色剤、界面活性剤、可塑剤、殺虫剤、殺菌剤、医薬品、ゴム用薬品などの原料など、様々な技術分野で使用可能である
従来、アクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリレート、メタクリルアミド、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールAジグリシジルメタクリレートなどを原料とした放射線硬化性組成物に関しては、既にコーティング剤や塗料などの用途として、硬化性の速い、生産性の良好な材料として特許出願されている(特許文献1)。
しかしながら、これらの感光性組成物は、硬化収縮性、耐熱性、吸水性などの性能面で、十分な性能を有するものではない。
特開平4−11609号公報
本発明は、レジストなどの感光性材料、インキ、塗料などのコーテイング材料、粘接着剤原料、建築材料などとして、硬化収縮性、耐熱性、吸水性などの性能面を向上させる新規なジ(メタ)アクリレート化合物および該化合物を含む硬化性組成物を提供することを目的とする。
本発明は、テルペン骨格を有するジメチロール化合物と、(メタ)アクリル酸化合物を反応させて得られるジ(メタ)アクリレート化合物、およびその硬化性組成物に関する。
ここで、本発明のジ(メタ)アクリレート化合物としては、ビシクロ[2.2.2]−オクタン環を有するジ(メタ)アクリレート化合物およびこれを重合させた硬化性組成物であることが好ましい。ビシクロ[2.2.2]−オクタン環を有するジ(メタ)アクリレート化合物は、下記式(I)で表されるジ(メタ)アクリレート化合物である。
また、式(I)のジ(メタ)アクリレート化合物としては、下記式(II)で表されるジ(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
さらに、本発明の硬化性組成物は、このジ(メタ)アクリレート化合物にラジカル重合開始剤を加えた組成物であり、電子線あるいは紫外線などの放射線により硬化させることが可能な組成物である。









〔ただし、式(I)中、R1,R2,R3,R4,R5,R6は互いに同一または異なり、
水素原子、またはnが1〜5の整数である式Cn2n+1で表される炭化水素基を表す。R7は水素原子または、メチル基である。)
本発明のジ(メタ)アクリレート化合物およびこれを用いた硬化性組成物は、硬化収縮性、耐熱性、吸水性などの性能を向上させることができる。
本発明のジ(メタ)アクリレート化合物の中で、上記式(I)で表される化合物が好ましいが、さらに、具体的な化合物として、上記式(II)で表されるジ(メタ)アクリレート化合物や下記式(III)で表されるジ(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。しかしながら、式(I)で表される化合物は、これらの化合物に限定されるものではない。










また、式(I)、式(II)または式(III)などで表されるジ(メタ)アクリレート化合物には、シス型とトランス型の幾何異性体が存在するが、本発明のジ(メタ)アクリレート化合物は、シス型、トランス型にとらわれない。ただし、本発明のジ(メタ)アクリレート化合物をポリマー原料に使用する場合は、トランス型が好ましく用いられる。
本発明のジ(メタ)アクリレート化合物は、テルペン骨格を有するジメチロール化合物と、(メタ)アクリル酸化合物とを反応させて得られるものである。
本発明のジ(メタ)アクリレート化合物の製造例の1例を下記に示す。
すなわち、本発明のジ(メタ)アクリレート化合物は、次に示すような方法で製造することができる。しかしながら、これらの製造方法に限定されるものではない。
例えば、本発明のジ(メタ)アクリレート化合物は、(a)テルペン化合物と、(b)不飽和ジカルボン酸、その酸無水物、および不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルから選ばれた少なくとも1種の化合物とを反応させ、つづいて、還元反応を行い、ジメチロール化合物とした後、さらに(メタ)アクリル酸、あるいはその無水物とエステル化反応させて得られる。
この(a)テルペン化合物は、特に制限はないが、通常、α−ピネン、β−ピネン、カレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、d−リモネン、ジペンテン、ターピノーレン、α−フェランドレン、β−フェランドレン、パラメンタジエン類、ピロネン、カンフェン、アロオシメン、ミルセンなどを用いることができる。好ましくはd−リモネン、ジペンテン、α−フェランドレン、β−フェランドレン、α−テルピネンなどが用いられる。テルペン化合物は、単独または2種以上を併用して使用してもよい。
また、(b)不飽和ジカルボン酸、その酸無水物、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルは、特に制限はないが、通常、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸ジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸ジアルキルエステルなどを用いることができる。好ましくは不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルが用いられる。
これら不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルは、単独または2種以上を併用して使用してもよい。
また、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルのアルキル成分としては、特に制限はなく、例えば、ジメチル、ジエチル、ジプロピル、ジブチルなどが挙げられる。
上記テルペン化合物と不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物、および不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルから選ばれた少なくとも1種の化合物との反応としては、特に限定されないが、通常、環化付加反応が用いられる。好ましくはディールス−アルダー反応と呼ばれる環化付加反応が用いられる。このようにして得られる化合物は、通常、二重結合を有する環化付加反応物である。
この環化付加反応の反応方式は特に限定されないが、バッチ反応でも連続反応でも反応できる。
なお、(a)テルペン化合物と、(b)化合物との反応は、(a)テルペン化合物1モルに対し、通常、(b)化合物が0.5〜1.5モル、好ましくは0.8〜1.2モルである。
この環化付加反応の反応温度は、通常、0〜250℃、好ましくは30〜200℃、さらに好ましくは50〜180℃に加熱することで反応が行なわれる。反応温度が0℃未満では反応速度が極端に遅く、一方、250℃を超えると、重合などの副反応が顕著になり好ましくない。
この環化付加反応は、通常、無触媒で行われるが、触媒を用いて行ってもよい。反応触媒としては特に限定されないが、好ましくは、通常、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、活性白土などの酸触媒が用いられる。
このようにして得られた二重結合を有する環化付加反応物に、続いて二重結合への水素添加反応を行い、さらに還元反応を行うと、目的のジメチロール化合物が得られる。しかしながら、特に二重結合への水素添加反応を行わず、そのまま還元反応を行ってもよい。この場合、二重結合が残ったジメチロール化合物が得られるが、この二重結合はエポキシ化したり、重合反応などに利用することができる。
二重結合の水素添加反応、および還元反応の方法は特に限定されないが、通常、以下の二通りの方法が挙げられる。
すなわち、第1の方法は、まず触媒の存在下で水素による環化付加反応物の二重結合の水素添加反応を行った後、還元剤にて不飽和ジカルボン酸、その酸無水物、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルを還元してジメチロール化合物を得る方法である。
この水素添加反応で使用される触媒としては、特に限定されるものではなく、通常、水素添加反応用の金属触媒が用いられる。例えば、ニッケル系、銅系、パラジウム系、白金系などの触媒が挙げられる。また、水素添加反応の温度は、0〜300℃が好ましく、さらに好ましくは25〜100℃である。この場合、金属触媒の使用量は、環化付加反応物に対して、通常、0.1〜30重量%、好ましくは1〜25重量%である。
また、この還元反応で使用される還元剤は、特に限定されるものではないが、例えば、水素化リチウムアルミニウム、水素化硼素ナトリウム、ナトリウム水素化ビス(2−エトキシメトキシ)アルミニウムなどの還元剤が挙げられる。
この還元反応の反応温度は、通常、0〜120℃、好ましくは30〜100℃で反応が行われる。この場合、還元剤の使用量は、原料である飽和環化付加反応物1モルに対して、通常、1.6〜3.0モル、好ましくは2.0〜2.4モルである。
また、第2の還元反応の方法は、触媒を用い水素による接触水素化還元反応により、環化付加反応物の二重結合および不飽和ジカルボン酸、その酸無水物、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルを還元してジメチロール化合物を得る方法である。
その際使用される触媒は、特に限定されるものではなく、通常使用される接触還元触媒が使用できる。例えば、銅−クロム系触媒、銅−鉄−アルミニウム系触媒、パラジウム系、白金系、ルテニウム系などの金属系触媒などが挙げられる。また、温度は、0〜500℃が好ましく、さらに好ましくは100〜300℃である。この場合の金属系触媒の使用量は、環化付加反応物に対して、通常、0.1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%である。 また、上記水素化触媒で二重結合を水素添加したのちに、銅−クロム系触媒、銅−鉄−アルミニウム系触媒などの還元触媒で不飽和ジカルボン酸、その酸無水物、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルを還元することもできる。この場合、温度は、0〜500℃、好ましくは100〜300℃であり、また、還元触媒の使用量は、飽和環化付加反応物に対して、通常、0.1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%である。
このようにして生成したジメチロール化合物は、精製することにより高純度の製品として得られる。その精製方法は特に限定されないが、例えば、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどが挙げられる。
次に、このジメチロール化合物と(メタ)アクリル酸化合物との反応について、説明する。この反応には、上記ジメチロール化合物と(メタ)アクリル酸をエステル化反応させる方法、上記ジメチロール化合物と(メタ)アクリル酸ハロゲン化物を反応させる方法、上記ジメチロール化合物と(メタ)アクリル酸無水物を反応させる方法、上記ジメチロール化合物と(メタ)アクリル酸メチルや(メタ)アクリル酸エチルなどのアクリル酸エステルをエステル交換反応させる方法などがある。しかし、本発明に用いられる反応は、これらに限定されるものではない。
上記反応のうち、(メタ)アクリル酸を使用したエステル化反応の際の(メタ)アクリル酸の仕込み比率は、原料であるジメチロール化合物1モルに対し、0.1〜20モル、好ましくは1〜10モルである。(メタ)アクリル酸が、ジメチロール化合物1モルに対し0.1モル未満であるとエステル化反応が十分に進行しない可能性があり、一方、20モルを越えると未反応の(メタ)アクリル酸が残存しコスト高となる可能性があるので好ましくない。
また、溶媒は、通常、水と共沸する溶剤として、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物、ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素化合物、などを使用するが、(メタ)アクリル酸などが溶媒を兼ねるため、使用しなくてもよい。
溶媒を使用する場合、該溶媒の使用量は、原料であるジメチロール化合物に対し、30〜1000重量%、好ましくは50〜700重量%である。
触媒としては、硫酸、塩酸、p−トルエンスルホン酸、三フッ化ホウ素、イオン交換樹脂、活性白土、酵素などが使用できる。
触媒の使用量は、特に限定されるものではないが、原料であるジメチロール化合物1モルに対し、0.0001〜0.1モル、好ましくは0.001〜0.01モルである。
このエステル化反応の際には、重合禁止剤を添加することが好ましい。重合禁止剤としては、反応系内に発生するラジカルを捕捉しうる化合物であれば、特に限定されるものではないが、例えばハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、t−ブチルハイドロキノンなどを使用できる。重合禁止剤の添加量は、仕込み(メタ)アクリル酸に対して、通常、5〜10,000ppm、好ましくは20〜5,000ppm、さらに好ましくは50〜1,000ppmである。
エステル化の反応温度は、30〜200℃、好ましくは60〜150℃である。反応温度が、30℃未満であると反応速度が極端に遅い可能性があり、一方、200℃を超えると重合などの副反応が顕著になり好ましくない。エステル化反応は、通常、常圧下で行うが、用いる溶剤の沸点によって、減圧または加圧下で行うこともできる。
本発明のジ(メタ)アクリレート化合物は、赤外線吸収スペクトルにより、C−H伸縮に起因する3,000〜2,800cm-1、C=O伸縮に起因する1,725cm-1、C=C伸縮に起因する1,640〜1,620cm-1、C−H変角に起因する1,500〜1,350cm-1、C−O伸縮に起因する1,300〜1,180cm-1のピークにより確認することができる。
また、1H−NMRチャートにより、ビシクロ環および側鎖に起因する0.79〜1.86ppmのシグナル、エステルに隣接するメチレン基に起因する4.02〜4.36ppmのシグナル、アクリレートに起因する5.80〜6.42ppmのシグナルにより確認することができる。
さらに、13C−NMRおよびDEPTチャートにより、ビシクロ環および側鎖に起因する17.0〜45.5ppmのシグナル、エステルに隣接するメチレン基に起因する66.5および67.1ppmのシグナル、アクリレートに起因する128.6〜130.7ppmおよび166.4〜166.5ppmのシグナルにより確認することができる。
本発明のジ(メタ)アクリレート化合物にラジカル重合開始剤を配合した硬化性組成物は、電子線および紫外線などの放射線により硬化させることができるが、低圧または高圧水銀灯、キセノン灯を用いて、紫外線を照射することによって硬化させることが好ましい。
なお、本発明の硬化性組成物とは、本発明のジ(メタ)アクリレート化合物にラジカル重合開始剤が配合された組成物であるが、当該化合物がこの重合開始剤によってオリゴマーや重合物となったものをも広く包含する概念である。
ここで、本発明の重合開始剤(ラジカル重合開始剤)について説明する。
ラジカル重合開始剤は、ラジカル重合する開始剤であれば何でもよい。
具体的には、ベンジル、ベンゾイン、ベンジルアルキルケタノールなどのベンゾインエーテル系、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノンなどのアセトフェノン系、ベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸、4−4’−ジアルキルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−アルキルチオキサントンなどのチオキサントン系、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイド、その他、2−アルキルアントラキノンなどが挙げられる。
本発明の硬化性組成物において、上記のジ(メタ)アクリレート化合物とラジカル重合開始剤を含有する、配合割合は以下のようである。
ジ(メタ)アクリレート化合物を100重量部として、ラジカル重合開始剤は、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5.0重量部、さらに好ましくは0.3〜4.0重量部である。0.01重量部未満ではラジカル重合が十分進行せず、一方、10重量部を超えるとラジカル重合以外の余分なものが添加されることになる。
本発明の硬化性組成物には、上記の必須成分の他に、必要に応じ、その他の(メタ)アクリレート系化合物やその他の添加剤として熱重合禁止剤、酸化防止剤、可塑剤、染料、顔料、樹脂化合物、適当な希釈溶剤などを添加することができる。
なお、本発明の硬化性組成物を用いて、電子線および紫外線などの放射線で硬化させる ことができるが、紫外線照射が好ましい。紫外線照射は、0.3〜3J/cm2で行うことが好ましく、さらに好ましくは、0.5〜2J/cm2である。紫外線の強さが0.3J/cm2未満では、未硬化部分が残存する可能性が高くなり、一方、3J/cm2を越えると過剰露光により樹脂部分が変色する可能性が高くなるため、好ましくない。
硬化させる装置に関しては、通常使用されている電子線、紫外線の照射装置であれば特に指定はない。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
下記の実施例における分析は、下記の機器を使用した。
赤外吸収装置(IR):島津製作所製、FTIR−8100M
ガスクロマトグラフィー質量分析装置(GC−MS):HEWLETT PACKARD社製、HP6890 GC System、カラム:HP−5MS(Crosslinked 5% Ph Me Siloxane)、30m×0.25mm×0.25μm、イオン化モード:EI
NMR:日本電子(株)社製、JNM−LA400、周波数400MHz(溶媒:CDCl3、内部標準物質:テトラメチルシラン)
実施例1
ジ(メタ)アクリレート化合物の製造:
冷却管、温度計、撹拌棒を備えた500ml三つ口フラスコに、α−テルピネン71g(0.5モル)およびフマル酸58g(0.5モル)を仕込み、撹拌しながら昇温して、150〜160℃で12時間反応した。反応後、アセトンから再結晶することにより、フマル化α−テルピネン79g(α−テルピネン基準で収率60%、純度96%)を得た。
続いて、電磁撹拌装置を備えた内容500mlのオートクレーブに、上記で得られたフマル化テルピネン71g(0.27モル)、2−プロパノール140g、および粉末状の5%パラジウムカーボン触媒0.7gを仕込んだ。次いで、これを密閉し、雰囲気を窒素ガスで置換した後、水素ガス15kg/cm2の圧力をかけながら導入した。そして、撹拌を開始すると、内温が27℃から32℃へ上昇した。吸収された水素を補うことで圧力を15〜20kg/cm2に保ちながら4時間反応させた。その後、得られた懸濁液をブフナーロートで吸引ろ過を行い、触媒をろ別した。その後、ろ液を減圧濃縮することにより、水素化フマル化α−テルピネン69g(収率95%、純度95%)を得た。
次に、冷却管、温度計、撹拌棒、滴下ロートを備えた2l四つ口フラスコに、窒素気流下、脱水テトラヒドロフランを500ml入れ、水素化リチウムアルミニウム26.1g(0.687モル)を加えた。混合液を、65℃で30分間環流させた後、加熱をやめ、ここに上記のようにして得られた水添フマル化α−テルピネン60g(0.224モル)をテトラヒドロフラン300mlに溶解した溶液を3時間かけて滴下した。混合液を65℃で12時間環流させた後、0℃付近に冷却し、水を26ml、4規定水酸化ナトリウム水溶液を26ml、水80mlを順次加えた。灰色の部分がなくなるまで撹拌し、酢酸エチルを加え、油層と水層に分離した。油層を減圧蒸留にて溶媒を除去し、粗生成物53gを得た。これをカラムクロマトグラフィーで精製することにより、ジメチロール化合物の白色結晶20g(収率40%、純度99%)を得た。
次に、ディーンスターク管、冷却管、温度計、撹拌棒を備えた300ml四つ口フラスコに、上記のようにして得られたジメチロール化合物20g(0.088モル)とトルエン100g、アクリル酸12.7g(0.176モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテル2.5mg、およびイオン交換樹脂(アンバーリスト15E、ロームアンドハース社製)2.0gを仕込んだ。混合液を減圧下100℃で12時間還流させた後、得られた混合液をろ過して触媒をろ別した。次いで、減圧下80℃でトルエンを留去して、ジ(メタ)アクリレート化合物A20.6g(収率70%、純度72%)を得た。
得られたジ(メタ)アクリレート化合物Aの分析結果を図1〜5、表1〜2に示す。なお、表1および2の帰属を示す記号は、式(IV)に示した位置を示す。
・分析結果
1)図1:IRチャート 3,000〜2,800cm-1:C−H伸縮、1,725cm-1:C=O伸縮、1,640〜1,620cm-1:C=C伸縮、1,500〜1,350cm-1、:C−H変角、1,300〜1,180cm-1:C−O伸縮
2)図2:GC−MSチャート m/z=291[M−C37]+が観測された。
3)図3:1H−NMRチャート
4)図4:13C−NMRチャート
5)図5:DEPTチャート














硬化性組成物の製造:
上記ジ(メタ)アクリレート化合物Aを20g、光ラジカル重合開始剤としてベンゾイル0.5gを混合し、混合物をフィルターに通して濾過し、本発明の感光性組成物を得た。
(硬化収縮率)
上記感光性組成物を25℃の恒温水槽に放置した後、ピクノメーターを用いて、比重D1を測定した。次に、得られる塗膜の厚さが100μmになるようにガラス板に上記感光性組成物を挟み込み、メタルハライドランプで約1J/cm2照射した。JIS Z8807:1976に準じ、この塗膜の固体比重D2を求め、下記計算式により硬化収縮率を求めた。
硬化収縮率の測定結果を表3に記載した。
硬化収縮率(%)=〔(D2−D1)/D2〕×100
さらに、上記ジ(メタ)アクリレート化合物Aを20g、光ラジカル重合開始剤としてベンゾイル0.5gの混合物に、溶剤としてジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/ソルベントナフサ(50/50)25gを加え、反応温度70℃で機械攪拌を行い、樹脂Bを得た。
樹脂Bを25g、トリグリシジルイソシアヌレート7.5g、ベンゾイル0.5g、BYK357(ビッグケミー製消泡剤)0.5g、BYK054(ビッグケミー製表面平滑剤)0.5g、フタロシアニングリーン(山陽色素製)0.5g、タルク10g、硫酸バリウム5gを混合し、ニューロング精密工業社製スクリーン印刷機LS15GXを使用し、表面機械研磨を行った銅張積層板に膜厚40μmになるように塗布した。塗布した基板を70℃の乾燥機中に30分間放置し、平行光露光機で露光パターンフィルムを載せて250mJ/cm2の光量を露光した。露光後、トルエンで60秒間、1.5kg/cm2のスプレー圧で現像を行った。水洗後、160℃、1時間熱風乾燥機に入れ加熱硬化を行った。
得られた硬化膜を有する試験片について、ガラス転移温度(Tg)測定、吸水率、解像度の評価を行った。結果を表3に記載した。
試験方法および評価方法は、次のとおりである。
(ガラス転移温度(Tg)の測定)
塗膜を1度塗り、または2度塗りした基板から剥離し、JIS C:6481の試験方法に従って、TMA引っ張り試験により測定を行った。
(吸水率測定)
サンプルを120℃乾燥機中で一晩置き、十分乾燥させた後、重量(W0)を測定した。
次にこのサンプルをプレッシャークッカー(121℃、2atm)に1時間入れた。プレッシャークッカーから取り出した後、流水で3分間冷却し布で水分を拭き取り、2分間放置した後、重量(W1)を測定し、下式により吸水率を求めた。
吸水率(%)=〔(W1−W0)/W0〕×100
(解像度の評価)
レジスト硬化膜のライン幅が100、50、25μmの三種類の試験片を作製し、断面観察を行った。露光は200mJ/cm2とした。評価は、任意の20カ所を被検部分として選択し、顕微鏡で観察して、検査数に対する正常な部分の数で表示した。
比較例1
ジグリシジルメタクリレート20g、ベンゾイル0.25g、p−メトキシベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート0.25gを混合し、感光性組成物を得、実施例1と同様にして評価した。評価結果は表3に記載した。
本発明のジ(メタ)アクリレート化合物およびこれを含む硬化性組成物は、レジストなどの感光性材料、インキ、塗料などのコーテイング材料、粘接着剤原料、建築材料などとして利用できる。
実施例1で得られたジ(メタ)アクリレート化合物AのIRスペクトルチャートである。 実施例1で得られたジ(メタ)アクリレート化合物AのGC−MSスペクトルチャートである。 実施例1で得られたジ(メタ)アクリレート化合物Aの1H−NMRチャートである。 実施例1で得られたジ(メタ)アクリレート化合物Aの13C−NMRチャートである。 実施例1で得られたジ(メタ)アクリレート化合物AのDEPTチャートである。

Claims (8)

  1. (a)d−リモネン、ジペンテン、α−フェランドレン、β−フェランドレン、およびα−テルピネンから選ばれたテルペン化合物と、(b)不飽和ジカルボン酸、その酸無水物、および不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルから選ばれた少なくとも1種の化合物とをディールス−アルダー反応させ、つづいて還元反応を行って得られるテルペン骨格を有するジメチロール化合物と、(メタ)アクリル酸化合物とを反応させて得られる、ジ(メタ)アクリレート化合物。
  2. (b)化合物が、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸ジアルキルエステル、フマル酸、およびフマル酸ジアルキルエステルから選ばれた請求項記載のジ(メタ)アクリレート化合物。
  3. (a)テルペン化合物と(b)化合物との反応において、(a)テルペン化合物1モルに対し、(b)化合物を0.5〜1.5モルを用い、かつ反応温度が0〜250℃である、請求項1または2記載のジ(メタ)アクリレート化合物。
  4. 還元反応が、(1)触媒の存在下で水素によるディールス−アルダー反応物の二重結合の水素添加反応を行った後、還元剤にて不飽和ジカルボン酸、その酸無水物、または不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルを還元してテルペン骨格を有するジメチロール化合物を得る方法、あるいは(2)触媒を用い水素による接触水素化還元反応により、ディールス−アルダー反応物の二重結合および不飽和ジカルボン酸、その酸無水物、または不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルを還元してテルペン骨格を有するジメチロール化合物を得る方法である、請求項1〜いずれかに記載のジ(メタ)アクリレート化合物。
  5. テルペン骨格を有するジメチロール化合物と(メタ)アクリル酸化合物との反応が、テルペン骨格を有するジメチロール化合物と(メタ)アクリル酸をエステル化反応させる方法、テルペン骨格を有するジメチロール化合物と(メタ)アクリル酸ハロゲン化物を反応させる方法、テルペン骨格を有するジメチロール化合物と(メタ)アクリル酸無水物を反応させる方法、またはテルペン骨格を有するジメチロール化合物と(メタ)アクリル酸エステルをエステル交換反応させる方法である、請求項1〜いずれかに記載のジ(メタ)アクリレート化合物。
  6. テルペン骨格を有するジメチロール化合物と(メタ)アクリル酸を使用したエステル化反応の際、(メタ)アクリル酸の仕込み比率が原料であるテルペン骨格を有するジメチロール化合物1モルに対し0.1〜20モル、反応温度が30〜200℃である、請求項記載のジ(メタ)アクリレート化合物。
  7. ジ(メタ)アクリレート化合物が、下記の式(II)である請求項1〜いずれかに記載のジ(メタ)アクリレート化合物。
  8. 請求項1〜いずれかに記載のジ(メタ)アクリレート化合物100重量部に対し、ラジカル重合開始剤を0.01〜10重量部含有することを特徴とする硬化性組成物。
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