JP4645784B2 - 軟磁性薄膜およびその製造方法、並びにその薄膜を用いた薄膜磁気ヘッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記憶装置用薄膜磁気ヘッド、さらには薄膜インダクタや薄膜トランスなどの磁気デバイスの磁極材料として好適な軟磁性薄膜およびその製造方法、並びに磁気記憶装置用の薄膜磁気ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
軟磁性薄膜は、薄膜磁気ヘッドや薄膜インダクタ、薄膜トランスなどの工業分野などで広く用いられている。薄膜磁気ヘッドにおいては、高密度磁気記録を行うために、ますます強くかつ高速に変化する書き込み磁界を発生させる必要がある。特に高記録密度を達成するためには、ヘッドにはヘッドそのものの微細化とヘッドコア先端の書き込み部の微細化が必要とされている。また、微細なヘッドでは、そのコア材料からの書き込み能力が減少するために、高い書き込み能力を得るためには高飽和磁束密度Bsが必要である。無電解めっき法は、現行の電気めっき法に比べ、外部電源を用いず成膜が可能という特徴から、微細で複雑なパターンにおいても均一な膜厚、均一な組成が得やすい成膜方法である。そのために、無電解めっき法による磁気ヘッドコアの作製が期待される。また、薄膜インダクタ、薄膜トランスなどにおいても、ヘッド同様に高飽和磁束密度を有する軟磁性薄膜が求められており、より微細なパターンが求められている。
【0003】
無電解めっき法によるヘッドコア作製の試みは、たとえば、日本応用磁気学会誌23巻、4−2号、1397〜1400ページにより報告されている。
【0004】
高Bsを有する軟磁性薄膜としては、たとえば、特許第2821456号に電気めっき法によるBsが1.7〜2.1Tを有するCoNiFe軟磁性薄膜の製造方法が示されている。
【0005】
無電解めっき法による高Bsを有する軟磁性薄膜としては、たとえば特開平7−220921号公報において、Bs=1.6−1.8Tを有するCoFeB軟磁性薄膜の作製方法が示されている。
【0006】
The Journal of Electroanalytical Chemistryの2000年491号197〜202ページには、無電解めっき法によるCo77Ni13Fe9B1軟磁性薄膜の作製方法が示されているが、Bsは1.5T〜1.7T程度と高くない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、無電解めっき法により得られたBsが1.7T以上の値を有する軟磁性薄膜、その製造方法、その軟磁性薄膜を用いた薄膜磁気記録ヘッドを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、高い書き込み能力を有する微細なヘッドを作るためには、無電解めっき法により高Bsを有する軟磁性薄膜を作製する必要がある点に鑑み、鋭意検討を行った結果、無電解めっき法によりCo、Ni、FeおよびBを含有し、Co含有量が40〜80at%、Fe含有量が15〜40at%、Ni含有量が5〜20at%、B含有量が0.5〜5at%である薄膜を、Coイオン、Feイオン、Niイオン、錯化剤、ホウ素含有還元剤を含み、総金属塩濃度が0.5モル/リットル以下、特にホウ素含有還元剤としてジメチルアミンボランが0.01〜0.2モル/リットルである無電解めっき浴を用いて、Bsが1.8T以上、保磁力が8Oe以下の軟磁性薄膜の作製が可能であること、また、めっき液の撹拌を行うことで、より低保磁力を有する軟磁性薄膜の作製も可能であることを知見し、本発明をなすに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、Co、Ni、FeおよびBを含有し、Co含有量が40〜80at%、Fe含有量が15〜40at%、Ni含有量が5〜20at%、B含有量が0.5〜5at%であり、保磁力が8Oe以下、特に3Oe以下、飽和磁束密度が1.8T以上であって、無電解めっき法により形成されたことを特徴とする軟磁性薄膜を提供する。また、本発明は、Coイオン、Feイオン、Niイオン、錯化剤、ホウ素含有還元剤を含有し、総金属塩濃度が0.5モル/リットル以下である無電解めっき浴中に基板を浸漬して無電解めっきを行い、上記基板上に上記軟磁性薄膜を形成することを特徴とする軟磁性薄膜の製造方法を提供する。さらに、上記軟磁性薄膜を薄膜磁気記録ヘッドの磁極材料の一部もしくは全部に用いた薄膜磁気ヘッドを提供する。本軟磁性薄膜を薄膜磁気記録ヘッドの磁極材料の一部もしくは全部に用いた薄膜磁気ヘッドは、より微細で高い書き込み能力を付与することが可能であり、高密度、高速記録が可能となる。
【0010】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
【0011】
本発明の軟磁性薄膜は、Co、Ni、FeおよびBを含有し、Co含有量が40〜80at%、好ましくは50〜70at%、Fe含有量が15〜40at%、好ましくは20〜30at%、Ni含有量が5〜20at%、好ましくは10〜15at%、B含有量が0.5〜5at%、好ましくは0.5〜2at%であり、保磁力が8Oe以下、好ましくは5Oe以下、更に好ましくは3Oe以下である。
【0012】
また、Bsは1.8T以上である。
【0013】
本発明の軟磁性薄膜のうち、Ni含有量が10at%以上と高いめっき膜は、良好な耐食性を示す。また、異方性磁界を25〜30eと高く付与することが可能である。軟磁性薄膜に適度の磁気異方性を付与したい場合には、めっき中に直交磁場をかけることが好ましい。また、成膜後に磁場中で熱処理を行うことでも異方性を付与することが可能である。
【0014】
本発明の軟磁性薄膜は、Coイオン、Feイオン、Niイオン、錯化剤およびホウ素含有還元剤を含有するめっき浴を用いる無電解めっき法により、容易に形成可能である。
【0015】
めっき浴中におけるCoイオン濃度、Feイオン濃度およびNiイオン濃度は、目的とする膜組成や要求される膜形成速度などに応じて適宜決定するが、Coイオン、Feイオン、Niイオン濃度の合計は0.5モル/リットル以下、好ましくは0.2モル/リットル以下である。この場合、通常、Coイオン濃度を0.02〜0.2モル/リットル、Feイオン濃度を0.005〜0.05モル/リットル、Niイオン濃度を0.001〜0.01モル/リットルとする。好ましくはCoイオン濃度を0.04〜0.1モル/リットル、Feイオン濃度を0.02〜0.06モル/リットル、Niイオン濃度を0.02〜0.06モル/リットルとする。
【0016】
これらの金属イオンの供給源は、硫酸塩、スルファミン酸塩、酢酸塩、硝酸塩等の水溶性の塩から選択することが好ましく、特に硫酸塩を用いることが好ましい。
【0017】
還元剤としてはホウ素系還元剤を用いる必要がある。ホウ素系還元剤としては、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、水素化硼素ナトリウム等が好ましく、特にジメチルアミンボランが好ましい。ホウ素系還元剤の濃度は、0.01〜0.50モル/リットルであることが好ましい。特にジメチルアミンボランの場合は0.01〜0.3モル/リットルが好ましく、0.025〜0.2モル/リットルが特に好ましい。
【0018】
めっき浴中には、錯化剤イオンが必要である。錯化剤イオンとしては有機酸イオンが好ましく、具体的には、酒石酸、クエン酸、コハク酸、マロン酸、リンゴ酸、グルコン酸などのカルボン酸や、これらの塩を錯化剤としてめっき浴に添加することが好ましく、特に酒石酸もしくはその塩およびクエン酸もしくはその塩、とりわけ酒石酸ナトリウムおよびクエン酸ナトリウムを用いることが好ましい。錯化剤濃度は高くなると析出速度が減少し、それに伴い軟磁気特性が劣化するために、ある程度低いことが必要である。錯化剤イオンの濃度は、用いる錯化剤に応じて適宜決定するが、好ましくは2.0モル/リットル以下、より好ましくは0.1〜0.8モル/リットルである。
【0019】
めっき浴中には、アンモニア源が含まれることが好ましい。アンモニア源としては硫酸アンモニウム、塩化アンモニウムなどのアンモニウム塩が好ましい。アンモニアは添加することで析出速度が増加し、軟磁気特性が向上するが、添加量が多いと逆に析出速度が減少するために適量添加することが必要である。添加濃度は組み合わされる錯化剤と析出速度により適宜決定するが、0.05モル/リットル以上が好ましく、より好ましくは0.1〜0.5モル/リットルである。
【0020】
めっき浴には亜燐酸イオン等の結晶調整剤を用いても良く、このときの濃度は0.01モル/リットル以上、特に0.01〜0.2モル/リットルが好ましい。
【0021】
めっき浴には、必要に応じ、硼酸等の緩衝剤などを添加してもよい。
【0022】
なお、めっき浴のpHは2〜10、特に6〜10とすることが好ましい。
【0023】
上記めっき浴を用いて軟磁性薄膜を形成する場合は、軟磁性薄膜を形成すべき所用の基板に、その基板に応じた公知の前処理、活性化処理を施した後、この基板を上記めっき浴に浸漬するものである。なお、軟磁性薄膜を析出させる基板は用途に応じて適宜選択すればよく、導電層の有無を問わない。
【0024】
この無電解めっきにおいて、めっき温度は40〜95℃が好ましく、特に60〜80℃がより好ましい。
【0025】
また、めっき反応を促進させ、析出速度を増加させることにより軟磁気特性が得られ易いために、めっき液の撹拌を行うことが好ましい。このときの撹拌方法は基板の揺動や、回転ディスク電極撹拌めっき装置、めっき浴循環濾過装置によるめっき液の撹拌、パドルめっき装置による撹拌など、定量的な撹拌が好ましい。このときの撹拌速度は、撹拌手法により異なるが、撹拌を行わないときに比べ析出速度を増加させる撹拌速度で行うことが好ましく、特に析出速度が10%以上増加する範囲で行うことが好ましい。めっき浴の攪拌を行わないと、特に膜中の鉄含有量が15at%を超えるような高鉄含有量の軟磁性薄膜において、5Oe以下の低保磁力が得がたいものである。
【0026】
なお、めっき膜(軟磁性薄膜)の厚さは適宜選定されるが、通常0.3〜5μm、特に0.5〜3μmの範囲である。
【0027】
以下、本軟磁性薄膜(めっき膜)のヘッドへの応用方法について図面を参照して説明する。
【0028】
図1は、本発明の磁気ヘッドの一実施形態であり、図1(a)は、磁気ヘッドのエアベアリングサーフェース(ABS)と垂直な断面図及び図1(b)は、ABSから見た断面図である。
【0029】
ここで、1は基板、2は被覆層、3は下シールド層、4はギャップ層、5は磁気抵抗効果素子、6は下部磁性層、6’は上シールド層、7は下部磁極端、8はギャップ層、9は上部磁極端、10は書き込みコイル、11は絶縁層、12は上部磁性層、13は被覆層を示す。
【0030】
図1に示す薄膜磁気ヘッドは、下部磁性層6とギャップ層8が積層され、その上にパターニングされた上部磁極端9を配置し、パターニングした絶縁層11と導体層からなる書き込みコイル10を配置し、それらの上に上部磁性層12が積層されて成る記録用ヘッドと、下シールド層3の上に2つのギャップ層4に挟まれた磁気抵抗効果素子5を配置し、それらの上に上シールド層6’が積層されて成る再生用ヘッドとからなる。本第1の実施の形態では、下部磁性層6と上シールド層6’は同一のものである。ここで、下シールド層3は基板1上にスパッタ等により形成されたアルミナからなる被覆層2上に形成されている。さらに、上部磁性層12上は、スパッタ等によって形成されたアルミナからなる被覆層13によって覆われている。
【0031】
薄膜磁気ヘッドは、インダクティブヘッド素子を形成する上部磁性層12、上部磁極端9および下部磁性層6のうち全部もしくは一部に本発明の軟磁性薄膜(CoNiFeBめっき膜)を配置可能である。この場合、無電解めっき法で作製するために、絶縁層4、11もしくはギャップ層8上に電気めっきに必要な導通層を用いる必要性が無く、非常に薄い金属層もしくはPd活性化などを用いれば良い。その上に無電解めっき法により本発明の薄膜を形成することができ、無電解めっき法であるために非常な微細部においても、均一に再現性よく成膜が可能である。
【0032】
なお、どの部分にCoNiFeB薄膜を用いるかは、組み合わせる軟磁性薄膜のBs、比抵抗、及び膜厚により異なる。
【0033】
本発明のBsが高く微細パターンの作製が容易であるという点を活かすのならば、上部磁極端9のみに用いればよい。他の下部磁極6及び上部磁極12には、電気めっき及び無電解めっきによるパーマロイ薄膜などを用いることができる。
【0034】
さらに、本発明のBsが高く微細パターンの作製が容易であるという点を活かし、上部磁極端9、下部磁極6及び上部磁極12のすべてのインダクティブヘッド用磁極材料に用いてもよい。
【0035】
本発明よりBsが高い軟磁性薄膜と組み合わされる場合、上部磁極端9に本発明より高いBsを有する軟磁性薄膜を用い、下部磁極6及び上部磁極12の片方もしくは両方に、本発明のCoNiFeB膜を用いてもよい。
【0036】
上部磁性層12および下部磁性層6の膜厚は、うず電流による高周波での透磁率低下を避けるため5μm以下であり、3μm以下が好ましい。
【0037】
図2は、本発明の磁気ヘッドの他の実施形態であり、図2(a)は、磁気ヘッドのエアベアリングサーフェース(ABS)と垂直な断面図及び図2(b)は、ABSから見た断面図である。
【0038】
図2に示す薄膜磁気ヘッドは、下部磁性層6、パターニングされた下部磁極端7とギャップ層8が積層され、その上にパターニングされた上部磁極端9を配置し、パターニングした絶縁層11と導体層からなる書き込みコイル10を配置し、それらの上に上部磁性層12が積層されて成る記録用ヘッドと、下シールド層3の上に2つのギャップ層4に挟まれた磁気抵抗効果素子5を配置し、それらの上に上シールド層6’が積層されて成る再生用ヘッドとからなる。本第2の実施の形態では、下部磁性層6と上シールド層6’は同一のものである。ここで、下シールド層3は基板1上にスパッタ等により形成されたアルミナからなる被覆層2上に形成されている。さらに、上部磁性層12上は、スパッタ等によって形成されたアルミナからなる被覆層13によって覆われている。
【0039】
薄膜磁気ヘッドは、インダクティブヘッド素子を形成する上部磁性層12、上部磁極端9、下部磁性層6及び下部磁極端7のうち全部もしくは一部に本発明のCoNiFeBめっき膜を配置可能である。この場合も、無電解めっき法で作製するために、絶縁層4、11もしくはギャップ層8上に電気めっきに必要な導通層を用いる必要性が無く、非常に薄い金属層もしくはPd活性化などを用いれば良い。その上に無電解めっき法により本発明の薄膜を形成することができ、無電解めっき法であるために非常な微細部においても、均一に再現性よく成膜が可能である。
【0040】
どの部分にCoNiFeB薄膜を用いるかは、組み合わせる軟磁性薄膜のBs、比抵抗、及び膜厚により異なる。本発明のBsが高く微細パターンの作製が容易であるという点を活かすのならば上部磁極端9及び下部磁極端7の両方もしくは片方のみに用いればよい。上部磁性層12、上部磁極端9、下部磁性層6及び下部磁極端7のうち本発明であるCoNiFeB薄膜を用いなかった部分には、電気めっき及び無電解めっきによるパーマロイ薄膜などを用いることができる。本発明のBsが高く微細パターンの作製が容易であるという点を活かし、上部磁性層12、上部磁極端9、下部磁性層6及び下部磁極端7のすべてのインダクティブヘッド用磁極材料に用いてもよい。本発明よりBsが高い軟磁性薄膜と組み合わされる場合、上部磁極端9及び下部磁極端7の両方もしくは片方のみに本発明より高いBsを有する軟磁性薄膜を用い、上部磁性層12、上部磁極端9、下部磁性層6及び下部磁極端7のうち本発明より高いBsを有する膜を用いなかった部分にCoNiFeB薄膜を用いることができる。
【0041】
なお、上部磁性層12および下部磁性層6の膜厚は、うず電流による高周波での透磁率低下を避けるため5μm以下であり、3μm以下が好ましい。
【0042】
以上のように構成された薄膜磁気ヘッドは、本発明のBsが高いCoNiFeB薄膜を有する効果で、従来のヘッドに比べて高い書き込み能力を持つ。また、上部磁極端9や下部磁極端7を無電解めっき法で作製すれば、磁極端幅を容易に微細化が可能である。その結果、保磁力の大きな磁気ディスク媒体に低ノイズで分解能の高い磁気記録パターンを書き込むことができる。
【0043】
【実施例】
以下、実施例と参考例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0044】
[実施例1〜4、比較例1,2、参考例1〜4]
表1に示す組成の無電解めっき浴を調製し、これを用いて表1に示す条件で無電解めっきを行った。
【0045】
なお、表1において、IEICE transaction on Electronics 1995年E78−C巻第11号の1530〜1535ページに示されるNiFeB軟磁性薄膜、特開平7−220921号公報に示されるCoFeB軟磁性薄膜、The Journal of Electroanalytical Chemistryの2000年491号197〜202ページに示されるCo77Ni13Fe9B1軟磁性薄膜をそれぞれ参考例1〜3として示す。
【0046】
この場合、基板としては、Cu/Tiをスパッタしたガラスウェハもしくはシリコンウェハを用いた。この基板を10%硫酸に1分間浸漬した。更に、10ppm塩化パラジウム溶液に5秒間浸漬して活性化処理を行なった。この基板に、表1に示すめっき浴を用いて無電解めっきにより1μm成膜を行った。めっき中の基板には交番直交磁場を印加した。すなわち、永久磁石を2つ対にして向かい合わせることで直流磁場を起こし、磁場中にて成膜を行った。なお、撹拌はパドル撹拌装置にて行った。
【0047】
各薄膜について、厚さを重量法で、飽和磁束密度(Bs)および保磁力(Hc)をVSMで、透磁率(μ)を1ターンコイル法で測定した。各薄膜の組成分析は蛍光X線分析により含有金属組成比を、また硝酸により溶解した後プラズマ発光分析を行ない、膜中の金属含有率とB含有率を定量した。耐食性試験には、2.5重量%の食塩水中にて毎秒10mVで走引し、溶け出し電位から求めた。このとき基準電極には、銀/塩化銀電極を用いた。つまり、より正な電位ほど優れた耐食性を示している。
【0048】
結果を表2に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
表1および表2に示される結果から、本発明の効果が明らかである。すなわち、参考例4と本発明に係る実施例1〜4は、8Oe以下の良好な軟磁気特性を示すが、本発明の範囲をはずれると、良好な軟磁気特性は得られない。更に詳述すると、参考例4と比較例1より、Fe含有量を比較的低くおさえれば、撹拌なしでHc<8Oeが得られる。また、参考例4と参考例2より、Niを膜中に含有するために耐食性がよいめっき薄膜が得られている。参考例4と参考例1及び3を比較することで、本めっき膜はCoが多く、更にFeが15at%なので、Bs≧1.7Tが得られている。また、参考例1と同様に高い耐食性が得られている。
【0052】
更に、実施例1〜4と比較例1及び2より、鉄含有量が高いときは低保磁力が得られないが、撹拌を行うことで、8Oe以下、特に5Oe以下の低保磁力が得られることがわかる。
【0053】
一方、実施例1と実施例2及び3を比較して、撹拌を効果的に行うためには浴組成に適した撹拌速度がある。また、実施例2及び3と実施例4から、撹拌速度には最適値があることがわかる。
【0054】
以上の実施例の結果から、本発明の効果が明らかである。
【0055】
なお、図1、2の薄膜磁気ヘッドに示すようにヘッドコアの作製を試みたところ、高い飽和磁束密度を持つ軟磁性薄膜を有した微細なヘッドを作製できた。
【0056】
【発明の効果】
本発明の軟磁性薄膜は、良好な低保磁力、高いBsを有し、この軟磁性薄膜を用いた磁気ヘッドは、高い書き込み能力を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】上部コアの一部に本発明である高飽和磁束密度を有するCoNiFe軟磁性薄膜を無電解めっき法により作製した薄膜磁気ヘッドを示し、(a)は磁気ヘッドのエアベアリングサーフェースと垂直な断面図、(b)は(a)のI−I線に沿った断面図である。
【図2】上部コア及び下部コアの一部に本発明である高飽和磁束密度を有するCoNiFe軟磁性薄膜を無電解めっき法により作製した薄膜磁気ヘッドを示し、(a)は磁気ヘッドのエアベアリングサーフェースと垂直な断面図、(b)は(a)のI−I線に沿った断面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 被覆層
3 下シールド層
4 ギャップ層
5 磁気抵抗効果素子
6 下部磁性層
6’ 上シールド層
7 下部磁極端
8 ギャップ層
9 上部磁極端
10 書き込みコイル
11 絶縁層
12 上部磁性層
13 被覆層
Claims (10)
- Co、Ni、FeおよびBを含有し、Co含有量が40〜80at%、Fe含有量が15〜40at%、Ni含有量が5〜20at%、B含有量が0.5〜5at%であり、飽和磁束密度が1.8T以上、保磁力が8Oe以下であって、無電解めっき法により形成されたことを特徴とする軟磁性薄膜。
- 保磁力が3Oe以下であることを特徴とする請求項1記載の軟磁性薄膜。
- Co含有量が50〜70at%、Fe含有量が20〜30at%、Ni含有量が10〜15at%、B含有量が0.5〜2at%であることを特徴とする請求項1または2記載の軟磁性薄膜。
- Coイオン、Feイオン、Niイオン、錯化剤、ホウ素含有還元剤を含有し、総金属塩濃度が0.5モル/リットル以下である無電解めっき浴を用いて形成された請求項1〜3のいずれか1項記載の軟磁性薄膜。
- ホウ素含有還元剤としてジメチルアミンボランを0.01〜0.3モル/リットルで用いることを特徴とする請求項4記載の軟磁性薄膜。
- めっき浴を定量的に撹拌することによって得られたことを特徴とする請求項4または5記載の軟磁性薄膜。
- Coイオン、Feイオン、Niイオン、錯化剤、ホウ素含有還元剤を含有し、総金属塩濃度が0.5モル/リットル以下である無電解めっき浴中に基板を浸漬して無電解めっきを行い、上記基板上に請求項1、2または3記載の軟磁性薄膜を形成することを特徴とする軟磁性薄膜の製造方法。
- ホウ素含有還元剤としてジメチルアミンボランを0.01〜0.3モル/リットルで用いることを特徴とする請求項7記載の軟磁性薄膜の製造方法。
- めっき浴を定量的に攪拌することを特徴とする請求項7または8記載の軟磁性薄膜の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項記載の軟磁性薄膜を薄膜磁気記録ヘッドの磁極材料の一部もしくは全部に用いた薄膜磁気ヘッド。
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