JP4117022B2 - Fe−Ce−Oグラニュラ薄膜の製造方法 - Google Patents

Fe−Ce−Oグラニュラ薄膜の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、磁気ヘッド等の磁気センサや電磁波吸収膜、薄膜インダクタ、薄膜トランスなどとして有用なグラニュラ薄膜を電析法により形成する技術に関する。
図1にみられるように、酸化物等のマトリックス2中に粒径数十nm程度の超微粒子状の磁性粒1が分散した磁性グラニュラ薄膜は、磁気ヘッド用磁気センサや電磁波吸収膜、更に薄膜インダクタや薄膜トランス等に利用が拡大している。
従来、Fe−Ce−OやCo−Ce−Oなどの金属―酸化物グラニュラ薄膜は、スパッタ法などのドライプロセスによって作製されてきた。(特許文献1参照)
しかし、これらの方法では、大掛かりな真空装置が必要なため、製造装置の費用やランニングコストなどに問題があった。また、成膜中に基板が高温になるため、耐熱性の弱い基板は使用できなかった。また、スパッタ法では、ターゲットからスパッタ粒子が飛散して成膜を行うため、ターゲットに対向した面にしか成膜が行えず、ガラス板のような平面な材料にしか成膜が行いにくかった。
さらに、マイクロ磁気デバイスの作製で必要となるフォトレジストなどを用いた微細パターンへの成膜においても、微細パターンのパターン幅に対するパタン−ンの厚みの比(アスペクト比)が大きい場合、パターンへの精密な成膜が困難であった。また、ターゲットの大きさに制約があるため、大面積の薄膜を得ることも困難である。このような点から、例えば、大面積の電磁波吸収体を樹脂シート表面上に形成することなどが困難であった。
そこで、Co−Ce−Oグラニュラ薄膜を電析法で作製する方法が最近報告されている(非特許文献1参照)。この方法は、塩化コバルトもしくは硫酸コバルトと、塩化セリウムとグリシンを含む水溶液中からCo−Ce−Oグラニュラ薄膜を電析法によって作製させる方法であり、スパッタ法の欠点を克服したものである。
特開2002-158486 N.Fujita, Y.Mori, R.Yagi, M.Izaki, M.Inoue, IEEE Transactions on Magnetics, 38, pp.2619 -2621(2002)
しかしながら、非特許文献1で報告されているCo−Ce−Oグラニュラ薄膜では、強磁性体がCoであるため、Feに比べて磁化の大きさは小さく、また、保磁力の大きさも160Oeと大きな値であり、良好な軟磁気特性が得られていない。
したがって、本発明はこれらの従来技術の問題点を解消して、保磁力が小さく優れた軟磁気特性を有するFe−Ce−Oグラニュラ薄膜を、簡単な装置により低コストで製造することを目的とする。
本発明者等は鋭意検討した結果、Fe−Ce−Oグラニュラ薄膜を電析により形成する際に、めっき浴中に酸化防止剤及び錯化剤を添加することによって、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成したものである。
すなわち、本発明はつぎの1.〜10.の構成を採用するものである。
1.(1)二価鉄塩、(2)セリウム塩、(3)酸化防止剤、及び(4)鉄と錯体を形成するがセリウムとは錯体を形成しない錯化剤を含む水溶液をめっき浴として使用し、電析により形成することを特徴とするFe−Ce−Oグラニュラ薄膜の製造方法。
2.(1)二価鉄塩が硫酸第一鉄及び塩化第一鉄から選択されたものであることを特徴とする1に記載のFe−Ce−Oグラニュラ薄膜の製造方法。
3.(2)セリウム塩が塩化セリウム及び硝酸セリウムから選択されたものであることを特徴とする1又は2に記載のFe−Ce−Oグラニュラ薄膜の製造方法。
4.(3)酸化防止剤がアスコルビン酸及びアスコルビン酸金属塩から選択されたものであることを特徴とする1〜3のいずれかに記載のFe−Ce−Oグラニュラ薄膜の製造方法。
5.(4)錯化剤が硫酸アンモニウムであることを特徴とする1〜4のいずれかに記載のFe−Ce−Oグラニュラ薄膜の製造方法。
6.めっき浴中に、(1)二価鉄塩10〜50mM、(2)セリウム塩1〜10mM、(3)酸化防止剤0.01〜10g/L、及び(4)錯化剤10〜50mMを含有することを特徴とする1〜5のいずれかに記載のFe−Ce−Oグラニュラ薄膜の製造方法。
7.めっき浴の温度が30〜80℃であることを特徴とする1〜6のいずれかに記載のFe−Ce−Oグラニュラ薄膜の製造方法。
8.電析の電流密度が0.1〜50mA/cmであることを特徴とする1〜7のいずれかに記載のFe−Ce−Oグラニュラ薄膜の製造方法。
9.めっき浴中の溶存酸素量が4mg/L以上であることを特徴とする1〜8のいずれかに記載のFe−Ce−Oグラニュラ薄膜の製造方法。
10.1〜9のいずれかに記載された製造方法により製造された保磁力が40〜90Oeで、飽和磁力が20〜160emu/gであることを特徴とするFe−Ce−Oグラニュラ薄膜。
本発明によれば、簡単で安価な装置を使用して、保磁力が小さく優れた軟磁気特性を有するFe−Ce−Oグラニュラ薄膜を低コストで製造することが可能となる。
また、100℃以下の低温で成膜が可能であるため基板に耐熱性が必要とされず、従来技術では使用することのできなかった基板にもFe−Ce−Oグラニュラ薄膜を形成することが可能となる。さらに、電析浴に接している部分には均一に成膜することができるため、複雑な表面形状を有する基板、微細パターンや大面積の基板にも成膜することができる。
本発明では、電析法によってFe−Ce−Oグラニュラ薄膜を形成する際に、めっき浴として(1)二価鉄塩、(2)セリウム塩、(3)酸化防止剤、及び(4)鉄と錯体を形成するがセリウムとは錯体を形成しない錯化剤を含む水溶液を使用することを特徴とする。
めっき浴を構成する(1)二価鉄塩としては、無機酸塩を使用することが好ましく、なかでも硫酸第一鉄又は塩化第一鉄を使用することが特に好ましい。二価鉄塩は単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。
めっき浴中の(1)二価鉄塩の含有量は、1〜100mM程度、特に10〜50mM程度とすることが好ましい。
めっき浴を構成する(2)セリウム塩としては無機酸塩を使用することが好ましく、なかでも塩化セリウム又は硝酸セリウムを使用することが特に好ましい。セリウム塩は単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。
めっき浴中(2)セリウム塩の含有量は、0.1〜50mM程度、特に1〜10mM程度とすることが好ましい。
めっき浴中に添加する(3)酸化防止剤としては、アスコルビン酸又はその金属塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等)を使用することが好ましく、これらは単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。特に好ましい酸化防止剤としては、L−アスコルビン酸が挙げられる。
めっき浴中の(3)酸化防止剤の含有量は、0.01〜10g/L程度、特に0.1〜1g/L程度とすることが好ましい。
めっき浴中に添加する(4)錯化剤としては、鉄と錯体を形成するがセリウムとは錯体を形成しない錯化剤を使用する。好ましい錯化剤としては、硫酸アンモニウム、アンモニア等が挙げられ、これらは単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。
めっき浴中の(4)錯化剤の含有量は、1〜100mM程度、特に10〜50mM程度とすることが好ましい。
めっき浴の温度は、30〜80℃程度とすることが好ましい。
また、電析の電源としては直流電源を使用し、電流密度を0.1〜50mA/cm程度、特に1〜10mA/cm程度とすることが好ましい。
そして、めっき浴中には空気バブリング等により酸素を供給し、溶存酸素量を4mg/L以上、特に6〜8mg/L程度に調整することが好ましい。
本発明では、めっき浴中の溶存酸素や水を還元することで陰極に発生するOHや、硝酸セリウムを含むめっき浴の場合は硝酸イオンを還元することで陰極に発生するOHを利用して、陰極にCeOを折出させる。また、二価の鉄は通常の金属の還元反応により折出させるため、セリウム酸化物と二価の鉄を同時に得ることができ、優れた軟磁気特性を有するFe−Ce−Oグラニュラ薄膜を形成することができる。
つぎに、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、以下の具体例は本発明を限定するものではない。
以下の例では、図2に示す構成を有する電析装置11を使用して、Fe−Ce−Oグラニュラ薄膜を形成した。この電析装置11は、めっき浴13を収容した電析槽12、陰極側に配置した基板14、参照電極15、対極16、ガルバノスタット17、クーロンメータ18を具備する。また、図示はしないが、酸素バブリングと窒素バブリングによりめっき浴中の溶存酸素量を調整することができる。
(実施例1)
この電析装置11において、被めっき対象物としてCu基板14を、対極(アノード)16としてFeシートを、またAg/AgClからなる参照電極15を使用した。
硫酸第一鉄10mM、塩化セリウム4mM、L−アスコルビン酸0.2g/L、硫酸アンモニウム40mMを含有する水溶液をめっき浴とし、液温60℃、4mA/cmの定電流密度で電析を行ない、Fe−Ce−Oグラニュラ薄膜を形成した。
(実施例2〜4)
下記の表1に示す組成のめっき浴を使用した以外は、実施例1と同様にして電析を行ない、Fe−Ce−Oグラニュラ薄膜を形成した。
Figure 0004117022
上記の各例で得られたFe−Ce−Oグラニュラ薄膜の膜組成の分析をエネルギー分散型X線分析装置(EDX分析装置:堀場製作所製、EMAX5770で測定)で分析し、めっき浴中の硫酸第一鉄の濃度と薄膜中のFeの含有量の関係を図3に示した。なお、Oについては、EDXの測定による定量精度が低いため、CeOとして析出していることを仮定し、Ceの2倍の原子濃度とした。また、X線光電子分光(ESCA:アルバックファイ社製、ESCA5700MCで測定)の測定から、Feが金属として存在していることを確認した。
図3にみられるように、電析めっき浴中の硫酸第一鉄濃度が10mM、20mM、30mM、40mMと増加するにしたがって、Fe−Ce−O薄膜のFe含有量は20vol.%、30vol.%、60vol.%、100vol.%と増加する。このように、本発明によれば、浴中のFeの濃度を変化させることにより、幅広い組成範囲で、Fe−Ce−Oグラニュラ薄膜を得ることができる。
(比較例1)
表1に示した電析めっき浴成分から、L−アスコルビン酸を除いためっき浴を使用して、実施例1と同様に電析を行なったところ、めっき浴中のFe2+イオンが酸化してFe3+イオンとなり、電析めっき浴が不安定となり、成膜が行えなくなったり、沈殿物が浴中に生成した。したがって、L−アスコルビン酸もしくは、L−アスコルビン酸ナトリウムなどの酸化防止剤が本発明の電析めっき浴では必要であることが判明した。
(比較例2)
表1に示した電析めっき浴成分から、硫酸アンモニウムを除いためっき浴を使用して、実施例1と同様に電析を行なったところ、析出した膜は粉状で密着性が悪かった。また、ESCAによって測定したFeの化学結合状態からは、Feが水酸化物もしくは酸化物として析出していることが確認された。
すなわち、硫酸アンモニウムを加えることで、膜は平滑で密着性の高いものとなり、またESCAの測定からFeが金属として存在していることが確認された。
非特許文献1に記載されたCo−Ce−O薄膜の場合は、グリシンがCoの水酸化もしくは酸化を防止する錯化剤として作用することが明らかにされているが、本発明のFe−Ce−O薄膜では、Feが水酸化物や酸化物にならないためには、硫酸アンモニウムが有効であることが判明した。
つぎに、上記各実施例で得られたFe−Ce−Oグラニュラ薄膜について、磁気特性を振動試料型磁力計(玉川製作所製)で測定した。各薄膜のFe濃度と保磁力及び飽和磁気との関係を図4に示す。
図4によれば、Fe濃度が100vol.%以外の膜は、電気抵抗も数キロΩと高く、かつFe濃度60vol.%の膜は、保磁力が50Oeと非特許文献1で示されているCo−Ce−O薄膜の160Oeに比較して1/3以下であり、良好な軟磁気性を示した。本発明により得られたFe−Ce−Oグラニュラ薄膜は、本発明者らの知る限りにおいて、電析により得られたグラニュラ薄膜のうち最も小さな保磁力が実現できたものである。
磁性グラニュラ薄膜の構造を説明する模式図である。 本発明で使用する電析装置の1例を示す模式図である。 本発明で得られるFe−Ce−Oグラニュラ薄膜中のFeの含有量とめっき浴中の硫酸第一鉄の濃度の関係を示す図である。 本発明で得られるFe−Ce−Oグラニュラ薄膜中のFe濃度と保磁力及び飽和磁化との関係を示す図である。
符号の説明
1 磁性金属超微粒子
2 絶縁マトリックス
11 電析装置
12 電析槽
13 めっき浴
14 基板
15 参照電極
16 対極
17 ガルバノスタット
18 クーロンメータ

Claims (10)

  1. (1)二価鉄塩、(2)セリウム塩、(3)酸化防止剤、及び(4)鉄と錯体を形成するがセリウムとは錯体を形成しない錯化剤を含む水溶液をめっき浴として使用し、電析により形成することを特徴とするFe−Ce−Oグラニュラ薄膜の製造方法。
  2. (1)二価鉄塩が硫酸第一鉄及び塩化第一鉄から選択されたものであることを特徴とする請求項1に記載のFe−Ce−Oグラニュラ薄膜の製造方法。
  3. (2)セリウム塩が塩化セリウム及び硝酸セリウムから選択されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のFe−Ce−Oグラニュラ薄膜の製造方法。
  4. (3)酸化防止剤がアスコルビン酸及びアスコルビン酸金属塩から選択されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のFe−Ce−Oグラニュラ薄膜の製造方法。
  5. (4)錯化剤が硫酸アンモニウムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のFe−Ce−Oグラニュラ薄膜の製造方法。
  6. めっき浴中に、(1)二価鉄塩10〜50mM、(2)セリウム塩1〜10mM、(3)酸化防止剤0.01〜10g/L、及び(4)錯化剤10〜50mMを含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のFe−Ce−Oグラニュラ薄膜の製造方法。
  7. めっき浴の温度が30〜80℃であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のFe−Ce−Oグラニュラ薄膜の製造方法。
  8. 電析の電流密度が0.1〜50mA/cmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のFe−Ce−Oグラニュラ薄膜の製造方法。
  9. めっき浴中の溶存酸素量が4mg/L以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のFe−Ce−Oグラニュラ薄膜の製造方法。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載された製造方法により製造された保磁力が40〜90Oeで、飽和磁力が20〜160emu/gであることを特徴とするFe−Ce−Oグラニュラ薄膜。














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