JP3048382B2 - 軟磁性人工格子めっき膜およびその製造方法ならびに磁気ヘッド - Google Patents

軟磁性人工格子めっき膜およびその製造方法ならびに磁気ヘッド

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JP3048382B2 JP2243433A JP24343390A JP3048382B2 JP 3048382 B2 JP3048382 B2 JP 3048382B2 JP 2243433 A JP2243433 A JP 2243433A JP 24343390 A JP24343390 A JP 24343390A JP 3048382 B2 JP3048382 B2 JP 3048382B2
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Description

【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明は、軟磁性を有する人工格子めっき膜およびそ
の製造方法と、この人工格子めっき膜を磁極として有す
る磁気ヘッドとに関する。
<従来の技術> 薄膜磁気ヘッドの磁極や、メタルインギャップ(MI
G)型磁気ヘッドのギャップ部に形成される磁性膜など
には、高い飽和磁束密度が要求され、さらに、高透磁
率、低保磁力等の優れた軟磁気特性が要求される。
このような磁性膜の軟磁気特性向上の提案は種々なさ
れており、例えば、特開平1−283907号公報では、5〜
1000Å厚の中間膜を介して主磁性膜を積層することによ
り、主磁性膜を構成する結晶粒を微細化し、磁気異方性
の分散を小さくして軟磁気特性の向上をはかっている。
また、例えば、特開平2−42702号公報では、3〜800
nm厚の炭化鉄の層と0.5〜60nm厚の鉄の層とを交互に積
層し、鉄層の負の磁歪と炭化鉄層の正の磁歪とを相殺し
て高い透磁率を得ることが提案されている。
<発明が解決しようとする課題> ところで、金属の原子径オーダーの厚さの薄膜が周期
的に積層された構成をもつ人工格子は、バルク状の金属
とは異なった特性を示すために、近年注目されるように
なってきている。
上記各提案の多層膜も、このような人工格子の特性の
一部を利用したものと考えられる。
人工格子は一般に蒸着法等の気相めっき法により形成
され、上記各提案に示される多層膜もスパッタ法により
形成されている。
しかし、気相めっき法では、超高真空が必要とされる
ため、設備コストが高く、量産性がない。
なお、人工格子を気相めっき法以外の方法により製造
する提案は、例えばMat.Res.Soc.Symp.Proc.Vol.132.19
89 Materials Research Societyの第219〜224ページに
記載されている。
この提案では、電気めっき法により薄膜を積層して人
工格子を製造しているが、析出電位の異なる2種の金属
を一浴中で電気めっき法により積層する場合、同提案が
示されるように各金属の析出電位に応じた電圧を交互に
印加する必要がある。
ただし、このように変化する電圧を印加する電源の汎
用品はないため特別に製造しなければならず、コスト高
を招く。
また、この方法では、析出電位がある程度離れている
金属を用いる必要があり、積層可能な組成の組み合わせ
が限られてしまい、例えば、Fe薄膜とFe−Ni合金薄膜の
ような磁気ヘッドの磁極として好ましい組み合わせは成
膜することができない。
さらに、通常の液相めっき法では、人工格子程度の厚
さ、例えば500Å以下程度の薄膜を均質に形成すること
は極めて困難である。
本発明はこのような事情からなさるたものであり、優
れた軟磁気特性を有する軟磁性人工格子を、設備コスト
が低く量産性が高い液相めっき法を用いて、かつ複雑な
電位制御を行なうことなく実現することを目的とし、ま
た、このような軟磁性人工格子を磁極として有する磁気
特性の優れた磁気ヘッドを実現することを目的とする。
<課題を解決するための手段> このような目的は、下記(1)〜(8)の本発明によ
り達成される。
(1)少なくとも2層の軟磁性薄膜を含む薄膜が液相め
っき法により基本上に積層されており、無電解めっき法
により形成された薄膜および/または置換めっき法によ
り形成された薄膜を有することを特徴とする軟磁性人工
格子めっき膜。
(2)無電解めっき法により形成された薄膜に隣接して
無電解めっき法により形成された薄膜が存在する上記
(1)に記載の軟磁性人工格子めっき膜。
(3)無電解めっき法により形成された薄膜に隣接して
置換めっき法により形成された薄膜が存在する上記
(1)に記載の軟磁性人工格子めっき膜。
(4)無電解めっき法により形成された薄膜に隣接して
電気めっき法により形成された薄膜が存在する上記
(1)に記載の軟磁性人工格子めっき膜。
(5)置換めっき法により形成された薄膜に隣接して電
気めっき法により形成された薄膜が存在する上記(1)
に記載の軟磁性人工格子めっき膜。
(6)前記薄膜の厚さが500Å以下である上記(1)な
いし(5)のいずれかに記載の軟磁性人工格子めっき
膜。
(7)上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の軟磁
性人工格子めっき膜を製造する方法であって、液相めっ
き法により薄膜を形成する際に、高速めっき法を用いる
ことを特徴とする軟磁性人工格子めっき膜の製造方法。
(8)上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の軟磁
性人工格子めっき膜を磁極として有することを特徴とす
る磁気ヘッド。
<作用> 本発明の軟磁性人工格子めっき膜は、液相めっき法に
より形成された金属または合金の薄膜が基体上に積層さ
れた構成を有する。このため、気相めっき法に比べ設備
コストが低く、また、量産性が高い。
そして、本発明の軟磁性人工格子めっき膜は、無電解
めっき法により形成された薄膜および/または置換めっ
き法により形成された薄膜を有する。
本発明における各薄膜の好ましい組み合わせ態様は、
以下のとおりである。
(I)無電解めっき法により形成された薄膜に隣接して
無電解めっき法により形成された薄膜が存在する軟磁性
人工格子めっき膜 (II)無電解めっき法により形成された薄膜に隣接して
置換めっき法により形成された薄膜が存在する軟磁性人
工格子めっき膜 (III)無電解めっき法により形成された薄膜に隣接し
て電気めっき法により形成された薄膜が存在する軟磁性
人工格子めっき膜 (IV)置換めっき法により形成された薄膜に隣接して電
気めっき法により形成された薄膜が存在する軟磁性人工
格子めっき膜 上記各態様では、隣接する2層の薄膜のうち少なくと
も一方の形成に無電解めっき法または置換めっき法を用
い、隣接する両薄膜を連続して電気めっき法により形成
することがないので、電位を周期的に変えるための特殊
な電源を必要としない。
そして、態様(I)および(II)では、薄膜を無電解
めっき法または置換めっき法により形成するので、人工
格子を構成する500Å程度以下、特に200Å程度以下の厚
さにおいて、電気めっき法に比べ、より均質な膜が得ら
れ、特に無電解めっき法では、電気めっき法より緻密な
膜が得られる。また、これらの態様では各薄膜は別個の
浴中にて形成されるが、無電解めっき法および置換めっ
き法では電気めっき法と異なり電気接点を必要としない
ので、めっき浴間の移動が容易であり生産性に優れる。
さらに、これらのめっき法では電流分布がないので、大
面積で均質な膜が得られる。
また、態様(I)および(III)では、隣接する2層
の薄膜の析出電位の差を考慮することなく、めっき可能
なものから各薄膜の組成を選択して、自由に組み合わせ
ることができる。
さらに、態様(I)、(II)および(III)では、3
種以上の組成を用いた多層膜の形成が容易にできる。
態様(IV)では、隣接する2層の薄膜を同一めっき浴
中で形成することができ、生産性が高い。具体的には、
析出電位の異なる2種の金属のイオンを含有するめっき
浴を用い、より低い析出電位を有する金属を含有する薄
膜を電気めっき法により形成し、より高い析出電位を有
する薄膜を置換めっき法により形成する。この方法で
は、電圧印加が間欠的に行なわれ、電圧印加休止時に置
換めっきが行なわれることになる。そして、この場合、
電圧印加時間や電圧印加休止時間を制御することによ
り、種々の組成および厚さの薄膜を極めて容易に形成で
きる。
本発明では、各薄膜を液相めっきにより形成する際
に、高速めっき法を用いる。
厚さ500Å程度以下の薄膜を液相めっき法により形成
しようとすると、めっき膜がクラスター状に成長する傾
向が強く、このため人工格子としての効果が得られない
が、高速めっき法を用いることによりこれが防止され、
均質な薄膜が得られる。高速めっき法によるこのような
効果は、薄膜が薄くなるほど顕著であり、200Å程度以
下、特に100Å程度以下の厚さとする場合、高速めっき
法を用いないと均質な膜の形成は不可能である。
以上説明したようなめっき法の組み合わせにより形成
される本発明の軟磁性人工格子めっき膜は、少なくとも
2層の軟磁性薄膜を有し、高透磁率および低保磁力を示
す。これは、下記の理由による。
液相めっき法により膜を形成する場合、膜が薄いほど
結晶粒径は小さくなるので、積層膜は同一厚さの単層膜
に比べ結晶粒径を小さくでき、その結果、積層膜内にお
ける結晶磁気異方性の分散が抑えられて優れた軟磁気特
性が得られる。
また、本発明の軟磁性人工格子めっき膜では、各軟磁
性薄膜の厚さが極めて薄いため、各軟磁性薄膜のスピン
を平行にしようとする交換相互作用が強くはたらく。こ
のため、積層膜内における結晶磁気異方性の分散が著し
く減少し、優れた軟磁気特性が得られる。
なお、これら軟磁気特性向上効果は、各薄膜の厚さが
500Å以下、特に200Å以下、さらには100Å以下である
と顕著である。
このような本発明の軟磁性人工格子めっき膜は、薄膜
磁気ヘッドやMIG型磁気ヘッド、垂直磁気ヘッドの磁極
に好適であり、また、薄膜トランスにも好適である。
<具体的構成> 以下、本発明の具体的構成について、詳細に説明す
る。
本発明の軟磁性人工格子めっき膜(以下、単に人工格
子めっき膜という)は、液相めっき法により形成された
金属または合金の薄膜が基体上に積層された構成を有
し、前記薄膜のうち少なくとも2層が軟磁性薄膜であ
る。
軟磁性薄膜は隣接して存在してもよく、また、それら
の間に非磁性薄膜が存在してもよい。軟磁性薄膜が隣接
して存在する場合、これらの組成は異なるものである
が、軟磁性薄膜間に非磁性薄膜が存在する場合、両軟磁
性薄膜の組成は同一であっても異なっていてもよい。
人工格子めっき膜は、軟磁性薄膜だけを積層した構成
であってもよく、軟磁性薄膜と非磁性薄膜が交互に積層
された構成であってもよい。
また、軟磁性薄膜の積層体が非磁性薄膜を介して積層
された構成等、これらが混在している構成であってもよ
く、目的に応じて各種構成を適宜選択すればよい。
例えば、特開平2−42702号公報に示されるように、
正の磁歪を有する薄膜と負の磁歪を有する薄膜とを隣接
させて磁歪を相殺し、軟磁気特性の向上をはかる構成と
することができる。また、3種以上の薄膜を用いれば磁
歪の相殺がより容易となり、磁歪制御のために他の磁気
特性を犠牲にする必要も少なくなる。
また、例えば、Bsは高いが渦電流による高周波特性に
問題のあるFe等の軟磁性薄膜を、それよりも電気伝導度
の低い薄膜を介して積層することにより、高周波特性の
改善をはかることができる。この場合、より高いBsが得
られることから電気伝導度の低い薄膜は軟磁性薄膜であ
ることが好ましいが、電気伝導度のより低い非磁性薄膜
を選択してもよく、どちらかを重視するかによって適宜
選択すればよい。
そして、これらのいずれの構成においても、積層体の
厚さと同一厚さの単層膜に比べ、軟磁性薄膜の結晶粒径
を小さくでき、より高い軟磁気特性が得られる。また、
積層体内では交換相互作用により各磁性薄膜のスピンを
平行にしようとする力がはたらき、磁気異方性の分散が
減少して軟磁気特性が向上する。
軟磁性薄膜の厚さは、好ましくは500Å以下、より好
ましくは200Å以下、さらに好ましくは100Å以下とす
る。軟磁性薄膜の厚さが前記範囲を超えると、結晶粒が
大きくなりすぎ、また、交換相互作用によるスピン平行
化が不十分となる。
また、非磁性薄膜が存在する場合、非磁性薄膜の厚さ
が軟磁性薄膜と同様な範囲から選択することが好まし
い。非磁性薄膜の厚さが前記範囲を超えると、人工格子
めっき膜のBsが不十分となる。
なお、各薄膜の厚さの下限は特にないが、厚さを4Å
以上とすれば膜厚を均一に保つことが容易となり、膜質
も良好となる。
各薄膜の厚さは透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微
鏡、オージェ電子分光分析等により測定することがで
き、また、その結晶構造等はX線回折や高速反射電子線
回折等により確認することができる。
本発明の人工格子めっき膜の磁気特性は、要求される
特性およびそれにより選択される各薄膜の組成によって
も異なるが、本発明によれば、通常、保磁力が30e以
下、5MHzにおける透磁率が2000以上である優れた軟磁気
特性が得られる。
なお、組成の異なる軟磁性薄膜を2種以上有する人工
格子めっき膜では、人工格子めっき膜中に存在する各軟
磁性薄膜の磁気特性を独立して測定することができない
ため、通常、測定すべき軟磁性薄膜を、合計厚さが200
〜400Å程度になるまで積層して測定用サンプルを作製
し、これについて測定する。人工格子めっき膜中におい
て非磁性薄膜と組み合わせて使用する場合は、非磁性薄
膜も積層する。この際、軟磁性薄膜の厚さ、非磁性薄膜
の厚さおよびその組成は、人工格子めっき膜中における
ものと同じとする。
本発明の人工格子めっき膜において、薄膜の積層数に
特に制限はなく、各薄膜の厚さを上記した好ましい範囲
内から選択し、かつ、使用目的により決定される人工格
子めっき膜の全厚に応じて適宜決定すればよいが、生産
性を考慮して、通常、積層数を1000以下とすることが好
ましい。
なお、最上層の薄膜の表面には、窒化けい素や酸化け
い素等の酸化防止膜が設けられてもよく、用途によって
は電極引き出しのための金属導電層が設けられてもよ
い。
このような本発明の人工格子めっき膜は、無電解めっ
き法により形成された薄膜(以下、無電解めっき薄膜と
いう)および/または置換めっき法により形成された薄
膜(以下、置換めっき薄膜という)を有する。
なお、本明細書において単に薄膜と記載してある場合
は、軟磁性薄膜および非磁性薄膜のいずれであってもよ
いことを意味する。
本発明の人工格子めっき膜の好ましい態様としては、
上記した(I)〜(IV)が挙げられる。以下、各態様毎
に説明する。
態様(I) [無電解めっき法により形成された薄膜に隣接して無電
解めっき法により形成された薄膜が存在する人工格子め
っき膜] この態様では、各薄膜の組成に対応した複数の無電解
めっき浴を用い、組成の異なるめっき薄膜を積層する。
従って、隣接する2層の薄膜の析出電位の差を考慮す
ることなく、めっき可能なものから各薄膜の組成を選択
して、自由に組み合わせることができる。例えば、Bsの
高いFeやFe系合金は析出電位の差が小さいが、この態様
により容易に積層することができ、高Bsの人工格子めっ
き膜とすることができる。
また、この態様では、組成の異なる3種以上の薄膜の
積層も容易である。
態様(II) [無電解めっき法により形成された薄膜に隣接して置換
めっき法により形成された薄膜が存在する人工格子めっ
き膜] この態様では、無電解めっき浴と置換めっき浴とを用
い、無電解めっき薄膜形成後、めっき浴を換えて置換め
っき薄膜を形成する。
置換めっき法は、被めっき物の金属よりも貴な金属の
イオンを含有するめっき浴を用い、被めっき物をめっき
浴中に溶出させ、換わりに貴な金属を被めっき物上に析
出させるものである。
この態様の場合、通常、無電解めっき薄膜が被めっき
物である。置換めっき法により無電解めっき薄膜上に析
出する金属の析出電位は、無電解めっき薄膜から溶出す
る金属の析出電位よりも0.3V以上高いことが好ましい。
無電解めっき薄膜が2種以上の金属を含む合金の場合
は、合金構成金属のうち最も析出電位の高い金属とめっ
き浴中の金属とを比較したときに0.3以上の差があれば
よい。
なお、基体に最も近い薄膜を置換めっき薄膜とする場
合、基体あるいは基体と置換めっき薄膜との間に設ける
下地膜が被めっき物となる。そして、置換めっき薄膜上
に、無電解めっき薄膜を積層する。
無電解めっき浴の組成および置換めっき浴の組成を適
当に選択することにより、上記態様(I)と同様に、組
成の異なる3種以上の薄膜の積層を容易に行なうことが
できる。
態様(III) [無電解めっき法により形成された薄膜に隣接して電気
めっき法により形成された薄膜が存在する人工格子めっ
き膜] この態様では、無電解めっき浴と電気めっき浴とを用
い、無電解めっき薄膜形成後、めっき浴を換えて電気め
っき薄膜を積層するか、あるいは電気めっき薄膜形成
後、無電解めっき薄膜を積層する。
この態様においても、無電解めっき浴の組成および電
気めっき浴の組成を適当に選択することにより、上記態
様(I)と同様に、組成の異なる3種以上の薄膜の積層
を容易に行なうことができる。
態様(IV) [置換めっき法により形成された薄膜に隣接して電気め
っき法により形成された薄膜が存在する人工格子めっき
膜] この態様では、隣接する2層の薄膜を同一めっき浴中
で形成することができる。
具体的には、析出電位の異なる2種の金属のイオンを
含有するめっき浴を用い、より低い析出電位を有する金
属を電気めっき法により析出させ、より高い析出電位を
有する薄膜を置換めっき法により析出させる。
この場合、電流遮断時に置換めっきが行なわれるの
で、電圧を間欠的に印加することにより、電気めっき薄
膜と置換めっき薄膜を交互に積層することができ、複雑
な電圧制御を行なうことなく組成の異なる2種の薄膜の
積層を行なうことができる。
なお、このような方法の他、置換めっき浴と電気めっ
き浴を独立して設けて各めっきを行なうこともできる。
この場合、2種以上の置換めっき浴を用いることによ
り、上記態様(I)と同様に、組成の異なる3種以上の
薄膜の積層を容易に行なうことができる。
態様(IV)では、通常、電気めっき薄膜が置換めっき
法における引めっき物となる。置換めっき法により電気
めっき薄膜上に析出する金属の析出電位は、電気めっき
薄膜から溶出する金属の析出電位よりも0.3V以上高いこ
とが好ましい。電気めっき薄膜が2種以上の金属を含む
合金の場合は、合金構成金属のうち最も析出電位の高い
金属と析出する金属とを比較したときに0.3V以上の差が
あればよい。
なお、基体に最も近い薄膜を置換めっき薄膜とする場
合は、基体あるいは基体と置換めっき薄膜の間に設ける
下地膜が被めっき物となる。
本発明では、以上説明した態様(I)〜(IV)を組み
合わせることも好ましい。例えば、無電解めっき法、置
換めっき法および電気めっき法を用いて組成の異なる3
種以上の薄膜を積層してもよく、無電解めっき薄膜を2
層以上積層した積層体と電気めっき薄膜や置換めっき薄
膜とを積層した構成の人工格子めっき膜としてもよい。
すなわち、この他の組み合わせであっても、上記した
態様(I)〜(IV)の効果のいずれかが利用できるもの
であれば好ましい組み合わせである。
本発明では、上記各態様のように電気めっき薄膜が2
層以上連続して積層されることがないので、複雑な電圧
印加を行なう必要がなく、また、めっき浴間を移動する
たび毎に電気接点の接続を行なう必要がなくなり、生産
性は著しく向上する。
本発明の人工格子めっき膜の各薄膜を構成する金属や
合金は、各めっき法で成膜可能な金属や合金から、軟磁
性薄膜や非磁性薄膜として好ましい特性を有するものを
適宜選択すればよい。
例えば、無電解めっき法で成膜可能な金属としては、
Cu、Ni、Co、Ag、Au、Sn、Pt、Rh、Pd、In等の比較的電
位の高い金属が挙げられ、また、これらの金属同士の合
金も成膜可能である。さらに、これらの金属は、B、M
o、P、W、Zn、Mn、Sb、Ga等の1種以上の共析も可能
であるので、上記金属あるいは上記金属同士の合金とこ
れらの元素の1種以上との合金も成膜可能である。
置換めっき法で成膜可能な金属としては、無電解めっ
き薄膜や電気めっき薄膜、基体、基体上の下地膜などの
被めっき物に含有される金属よりも貴な金属であり、被
めっき物の組成にもよるが、例えば、Cu、Pt、Rh、Pd、
In、Au等であり、また、これらの金属のうち、析出電位
の近いもの同士の合金も成膜可能である。
薄膜積層体が形成される基体の材質に特に制限はな
く、用途等に応じて、例えば、酸化マグネシウム、ガラ
ス、けい素単結晶、チタン酸ストロンチウム単結晶、ガ
リウム−ヒ素単結晶、あるいは銅、鉄、コバルト等の金
属単結晶など、通常の人工格子に用いられる基体材質か
ら適宜選択すればよい。また、基体の寸法も用途に応じ
て適宜決定すればよい。
なお、基体に導電性がない場合には、薄膜との間に必
要に応じて下地膜を設けてもよい。下地膜としては、A
u、Cu、Ag、Pd、パーマロイ、Pt等の薄膜が好ましく、
その厚さは500Å程度以下、特に200Å以下であることが
好ましい。下地膜は、MBE法等の真空成膜法により形成
することが好ましい。
このような下地膜を設けることにより、めっき薄膜の
成長をより均質なものとすることができ、また、基体に
導電性を付与することもできる。
以下、本発明の人工格子めっき膜の製造方法について
説明する。
めっき膜が形成される基体には、必要に応じて前記し
たような下地膜が設けられる。次いで、基体は酸洗され
て表面が活性化され、さらに純水で水洗された後、めっ
き膜が形成される。なお、酸洗および水洗は、室温にて
行なうことが好ましい。
本発明において用いる無電解めっき浴の組成に特に制
限はく、薄膜組成に応じて通常の無電解めっき浴から適
宜選択すればよい。
例えば、析出金属源としての各種金属塩と、これを還
元析出させるための各種還元剤とを主成分とし、さら
に、pH調整剤、緩衝剤、錯化剤、促進剤、安定剤、改良
剤等の各種補助成分を含む無電解めっき浴を用いる。
無電解めっき浴のpHや温度等の各種条件は、浴組成等
に応じて適当な値を選択すればよい。
置換めっき浴としては、例えば、析出金属源といての
各種金属塩を主成分とし、さらに必要に応じて、過硫酸
アンモニウム、硝酸第一タリウム等の置換性向上剤や、
塩化ナトリウム等の導電助剤などの各種補助成分を含む
ものを用いる。
また、上記した態様(IV)を含む構成の人工格子めっ
き膜、すなわち、電気めっき薄膜に隣接して置換めっき
薄膜を設ける態様において、一浴中で電気めっきと置換
めっきを連続して行なう場合に用いるめっき浴として
は、析出電位の異なる2種の金属のイオンを含有するも
のを用いる。この態様では、より低い析出電位を有する
金属が電気めっき法により析出し、電圧印加を休止して
いるときに、より高い析出電位を有する金属が置換めっ
き法により析出する。
電圧印加パルス状に行なえば、所望の積層数の人工格
子めっき膜を形成することができる。
なお、この態様では、電気めっき法により合金を成膜
することができる。
上記態様(IV)以下では、薄膜を1層成膜する毎にめ
っき浴を換えるが、めっき浴を換える際に基体は純水に
て水洗されることが好ましい。水洗は室温にて行なうこ
とが好ましい。
なお、置換めっき法を用いる態様では、被めっき物中
の金属とめっき浴中の金属が置換し、被めっき物の厚さ
が減少するので、被めっき物となる無電解めっき薄膜や
電気めっき薄膜等は、厚さ減少分を見込んだ厚さに成膜
することが好ましい。
また、析出電位の異なる2種以上の金属イオンを含有
するめっき浴に錯化剤を添加することにより、各金属イ
オンの析出電位を同程度とすることができるので、無電
解めっき法や電気めっき法により合金を成膜する場合に
錯化剤の添加は有用である。
薄膜の形成速度、すなわちめっき速度は、用いるめっ
き法によっても異なるが、通常、50〜1000Å/min程度と
することが好ましい。
本発明では、各めっき法を用いる際に、高速めっき法
を利用する。
高速めっき法は、一般に電気めっき法において用いら
れる手法であり、陰極(被めっき物)近傍でめっき浴を
強制流動させ、これにより陰極表面付近の拡散層の形成
を阻害して、陰極表面に金属イオンを十分に供給する方
法である。
本発明では、このような高速めっき法を、電気めっき
法、無電荷めっき法および置換めっき法のいずれにも適
用することが好ましい。これらのめっき法では、金属の
析出に伴い基体近傍の金属イオン濃度が不均一となっ
て、めっき膜がクラスター状に成長する傾向があり、本
発明の人工格子めっき膜を構成する各薄膜は上記したよ
うに極めて薄いので、膜状とならないことがある。しか
し、高速めっき法では、基体近傍のめっき浴を強制流動
されるので、基体近傍において金属イオン濃度が不均一
となることが殆どなくなる。
高速めっき法としては、基体に対しめっき液を相対的
に強制流動させながらめっきを行なうか、めっき薄膜表
面を摩擦しながらめっきを行なう方法を用いることが好
ましく、特に、めっき液を強制流動させる方法が好まし
い。また、これらの方法を併用することも好ましい。
そして、これらの方法を用いた際の基体に対するめっ
き液の流速は、0.5m/s以上、特に5〜300m/sとすること
が好ましい。このような範囲で基体に対してめっき液を
相対的に流動させることにより、めっき薄膜の均質性は
著しく向上する。
より具体的に説明すると、高速めっき法としては、平
行流法、ジェット流法、超音波照射法、電極振動法、電
極の高速回転法、めっき中に電極面を摩擦する方法等を
用いることが好ましい。
平行流法は、電気めっき法に適用することが好まし
い。この方法では、陽極と陰極(基体)の間隔を狭く保
ち、その間隙のめっき液を高速度で流動させる。なお、
無電解めっき法に適用する場合には、陽極のかわりにテ
フロン板等を基体に対向して配置し、これらの間隙のめ
っき液を高速度で流動させればよい。平行流法を本発明
の人工格子めっき膜形成に適用する場合、めっき液の流
動速度は0.5m/s程度以上とすることが好ましい。
ジェット流法は、いずれのめっき法にも適用すること
ができる。この方法は、ノズルから基体に向けてめっき
液をジェット流状に噴射するものである。ノズルおよび
基体は、めっき浴中にあってもよく、めっき浴外にあっ
てもよい。ジェット流法を本発明の人工格子めっき膜形
成に適用する場合、層流に近い流れが望ましいため、基
体の中央付近にノズルを配置するのではなく、基体の端
部付近あるいは基体の保持本付近にノズルを配置し、そ
の位置からめっき液を噴射して、基体上に高速かつ一定
方向の流れを形成することが好ましい。
超音波照射法は、いずれのめっき法にも適用すること
ができる。この方法は、基体に超音波を照射し、基体付
近のめっき液を撹拌するものである。超音波照射法を本
発明の人工格子めっき膜形成に適用する場合、振動数は
500MHz以上とすることが好ましい。
電極振動法は、いずれのめっき法にも適用することが
できる。この方法では、基体を振動させながらめっきす
る。本発明の人工格子めっき膜形成に適用する場合、基
体の振幅は0.05〜1mm程度、振動数は100Hz〜100kHz程度
とすることが好ましい。
電極の高速回転法は、いずれのめっき法にも適用する
ことができる。この方法は、基体を回転させながらめっ
きを行なうものであり、円板や円筒などのように軸対称
形状を有する基体に対して有用である。
めっき中に電極面を摩擦する方法は、いずれのめっき
法にも適用することができる。この方法は、基体を絶縁
性物質で摩擦しながらめっきするものである。
なお、電気めっき法における高速めっき法は、「めっ
き教本」(電気鍍金研究会編 日刊工業新聞社発行)の
第184ページ〜第189ページに記載されている。
また、このような高速めっき法は、電気めっき法だけ
を用いて人工格子めっき膜を形成する際にも有効であ
り、例えば、前述したMat.Res.Soc.Symp.Proc.Vol.132.
1989 Materials Research Societyの第219〜224ページ
に記載されている提案のように、各金属の析出電位に応
じた電圧を交互に印加して電気めっき薄膜を積層する方
法に適用することもできる。
本発明の人工格子めっき膜は、高透磁率、低保磁力等
の優れた軟磁気特性が要求される各種用途に好適である
が、特に、薄膜磁気ヘッドの磁極層に好適である。
薄膜磁気ヘッドは、基本上に磁極層、ギャップ層、コ
イル層などを気相めっき法や液相めっき法等の薄膜形成
法により形成したものである。このような薄膜磁気ヘッ
ドは、通常、ハードディスク用の浮上型磁気ヘッドとし
て用いられる。
本発明が適用される薄膜磁気ヘッドの構成に制限はな
く、例えば第1図に示されるような構成を有する浮上型
の薄膜磁気ヘッドを始め、様々な構成のものに適用する
ことができる。
第1図に示される薄膜磁気ヘッド10は、基体20上に、
絶縁層31、下部磁極層41、ギャップ層50、絶縁層33、コ
イル層60、絶縁層35、上部磁極層45および保護層70を順
次有し、面内記録の磁気ディスクに対して用いられるも
のである。
コイル層60は、通常、Al、Cu等の金属で構成される。
基体20は、通常、Mn−ZnフェライトやAl2O3−TiC等の
セラミックスから構成される。
磁極は、通常、図示のように下部磁極層41および上部
磁極層45として設けられ、これらの磁極層に本発明の人
工格子めっき膜を用いる。
下部磁極層41と上部磁極層45の間にはギャップ層50が
形成される。
ギャップ層50は、Al2O3、SiO2等等の非磁性材料から
構成される、 コイル層60は、いゆるスパイラル型として、スパイラ
ル状に下部および上部磁極層41,45間に配設されてお
り、コイル層60と下部および上部磁極層41,45の間には
絶縁層33、35が設層されている。また下部磁極層41と基
体20の間には、絶縁層31が設層されている。
絶縁層の材料としては、例えば、SiO2、ガラス、Al2O
3等が用いられる。
上部磁極層45上には保護層70が設置されている。保護
層は、例えば、Al2O3等から構成される。また、保護層
上には、必要に応じて各種樹脂コート層等が積層され
る。
このような薄膜磁気ヘッドの製造工程は、通常、薄膜
作成とパターン形成とから構成される。
下部および上部磁極層41,45は、前述した各種液相め
っき法により形成される。なお、その際に、前述したよ
うな導電性下地膜を必要に応じて設けてもよい。
また、磁極層以外の各層は、例えば真空蒸着法やスパ
ッタ法等の気相成膜法を用いて形成すればよいが、材質
によっては液相めっき法を用いることもできる。
薄膜磁気ヘッドの各層のパターン形成は、通常、選択
エッチングや選択デポジション等により行なう。
このような薄膜磁気ヘッドは、アーム等の従来公知の
アセンブリと組み合わせて使用される。
本発明の人工格子めっき膜は、このような面内記録用
の薄膜磁気ヘッドの他、Co−Cr等の垂直磁化磁性層を有
する磁気記録媒体用の垂直磁気ヘッドにも好適である。
本発明の人工格子めっき膜が垂直磁気ヘッドに適用さ
れる場合、通常、主磁極として用いられる。
また、これらの他、本発明の人工格子めっき膜は、MI
G型磁気ヘッドに適用することもできる。
MIG型磁気ヘッドは通常のリング型磁気ヘッドのギャ
ップ近傍に、ヘッドのコアよりもBsの高い軟磁性膜を設
けた磁気ヘッドであり、通常、コアとしてはフェライト
が高Bsの軟磁性膜としてはセンダスト等の高Bs材料が用
いられている。MIG型磁気ヘッドでは、軟磁性膜が磁極
としてはたらくことになる。
本発明の人工格子めっき膜は、このようなMIG型磁気
ヘッドの軟磁性膜に適用される。
さらに、これら各種磁気ヘッドの他、本発明の人工格
子めっき膜は優れた軟磁気特性が要求される各種用途、
例えば、薄膜トランスや磁気抵抗効果型磁気ヘッド、磁
界センサ等にも好適である。
<実施例> 以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
[実施例1] 50×50×1mmのガラス基体(コーニング社製0211)表
面に、MBE法により厚さ100ÅのCu下地膜を形成した。
この下地膜表面を室温の0.1N−HClにて20秒洗浄し、
さらに純水により20秒間水洗した。
次いで下地膜上に、前述した態様(IV)に従い、下記
めっき浴Aを用いて電気めっき法および置換めっき法に
より薄膜を積層した。
(めっき浴A) 硫酸ニッケル 2 mol/ 硫酸第一鉄 0.04mol/ 塩化ナトリウム 1.5 mol ほう酸 1.0 mol/ ラウリル硫酸ナトリウム 0.1g/ 硫酸銅 0.01mol/ めっき浴温度は40℃、めっき浴のpHは2.0とした。
アノードにはPtを用い、基体とアノードとをセルに収
め、これらの間隙にめっき液を高速度で流動させる平行
流法によりめっきを行なった。セルの寸法は、高さ1c
m、幅3cm、長さ5cmであり、セル底面に基体を配置し、
基体と対向してアノードを配置した。そして、セルの長
さ方向に流速50m/sでめっき液を流した。
基体には、 のサイクルの電圧印加を30回繰り返し、 [Ni80Fe20(30)−Cu(15)]30 で表わされる人工格子めっき膜サンプルNo.1を作製し
た。なお、この表示は、30Å厚のNi80Fe20薄膜および15
Å厚のCu薄膜を積層する工程を30回繰り返したことを意
味する。
各薄膜の厚さは、透過型電子顕微鏡により測定した。
また、各薄膜の組成は、プラズマ発光分析(ICP)によ
り測定した。
なお、電圧印加中にNi80Fe20薄膜が形成され、電圧印
加休止時にCu薄膜が形成された。
サンプルNo.1の磁気特性を下記のようにして特性し
た。
(保磁力Hc) B−Hトレーサにより測定した。
(透磁率μ) 8の字コイルにより測定した。
(飽和磁歪定数λs) サンプルを膜面内に回転する磁界中に配置して、サン
プルの反りを同期整流方式によってレーザーを用いて検
出、測定した。
これらの測定の結果、 Hc=0.7Oe μ=3000(5MHz) λs=8×10-7 であった。
なお、平行流法におけるセルの長さ方向のめっき液の
流動速度を1.0m/sとしたところ、 Hc=1.0Oe μ=2500(5MHz) であり、十分な軟磁気特性が得られた。
また、流動速度を0.3m/sとしたところ、 Hc=1.9Oe μ=500(5MHz) であり、軟磁気特性が不十分であった。
[実施例2] 25×25×0.5mmのMgO(100)単結晶基体の表面に、ス
パッタ法により厚さ100ÅのFeの下地膜を形成した。
この下地膜表面を室温の0.1N−HClにて20秒洗浄し、
さらに純水により20秒間水洗した。
次いで下地膜上に、前述した態様(III)に従い、下
記めっき浴BおよびCを用いて電気めっき法および無電
解めっき法により薄膜を積層した。
(めっき浴B:Fe電気めっき浴) 硫酸第一鉄 0.7mol/ 塩化ナトリウム 1.5mol/ 酢酸ナトリムウ 0.3mol/ ラウリル硫酸ナトリウム 0.1g/ めっき浴温度は25℃、めっき浴のpHは1.4とした。
(めっき浴C:Cu無電解めっき浴) 硫酸銅 13g/ 37%ホルマリン 25g/ 酒石酸カリウムナトリウム 30g/ エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 4g/ このめっき浴には安定剤としてFe2+を5pm含有させ、
めっき浴の温度は25℃とし、めっき浴のpHはNaOHの添加
により12.3に調整した。
上記各めっき浴を用いた電気めっきおよび無電解めっ
きには、ノズルから基体に向けてめっき液をジェット流
状に噴射するジェット流法を適用した。ノズル径は5mm
とし、めっき液の流量は150/minとした。なお、ノズ
ルおよび基体は、めっき槽の外に配置した。
そして、 のサイクルを20回繰り返し、 [Fe(80)−Cu(30)]20 で表わされる人工格子めっき膜サンプルNo.2を作製し
た。
サンプルNo.2の磁気特性は、 Hc=1.2Oe μ=2000(5MHz) λs=2×10-6 であった。
[実施例3] 実施例2で用いた基体上に、MBE法により厚さ200Åの
Ni下地膜を形成した。
下地膜上に、前述した態様(I)に従って無電解めっ
き法により薄膜を積層した。
無電解めっき法には、下記めっき浴DおよびEを用い
た。
(めっき浴D:Ni−Fe−P無電解めっき浴) 硫酸ニッケル 0.1 mol/ 硫酸第一鉄 0.02mol/ クエン酸ナトリウム 0.2 mol/ 次亜リン酸ナトリウム 0.04mol/ めっき浴温度は80℃とし、めっき浴のpHはNH4OHの添
加により4.0に調整した。
(めっき浴E:Ni−B無電解めっき浴) 硫酸ニッケル 0.5mol/ ジメチルアミンボラン 0.1mol/ 塩化ナトリウム 0.2mol/ エチレンジアミン 0.2mol/ めっき浴の温度は30℃とし、めっき浴のpHは5.5とし
た。
上記各めっき浴を用いて無電解めっきには、実施例2
と同様なジェット流法を用いた。
そして、 のサイクルを20回繰り返し、 [Ni76Fe19P5(50)−Ni99B1(30)]20 で表わされる人工格子めっき膜サンプルNo.3を作製し
た。
サンプルNo.3の磁気特性は、 Hc=0.8Oe μ=2500(5MHz) λs=9×10-7 であった。
なお、実施例1〜3に示す例の他、前述した態様(I
I)に従って本発明の人工格子めっき膜を作製したとこ
ろ、上記各実施例で作製した人工格子めっき膜と同様、
優れた軟磁気特性を示すものであった。
[実施例4] 第1図に示される構成の薄膜磁気ヘッドを作製した。
下部磁極層41および上部磁極層45には、 [Fe60Co40(80)−Cu(15)−Fe(60)−Cu(15)]90 を用いた。
また、比較のために、電気めっき法により形成した厚
さ1.5μmのNi80Fe20単層膜を下部および上部磁極層と
して有する薄膜磁気ヘッドを作製した。
これらの薄膜磁気ヘッドの電磁変換特性を比較したと
ころ、本発明により再生出力が約27%向上したことが確
認できた。
以上の各実施例から、本発明の効果が明らかである。
なお、上記実施例1〜3において、高速めっき法を用
いずに通常の電気めっき、無電解めっきおよび置換めっ
きを行なったところ、Hcが10Oe以上でμが500以下であ
り、軟磁性膜としての使用に耐えないものであった。
<発明の効果> 本発明によれば、設備コストが低く量産性が高い液相
めっき法を用いて、優れた軟磁気特性を示す人工格子め
っき膜を実現できる。そして、製造の際に複雑な電位制
御を行なう必要がない。
【図面の簡単な説明】
第1図は、浮上型の薄膜磁気ヘッドの一例を示す部分断
面図である。 符号の説明 10……薄膜磁気ヘッド 20……基体 31,33,35……絶縁層 41……下部磁極層 45……上部磁極層 50……ギャップ層 60……コイル層 70……保護層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−258717(JP,A) 特開 昭64−73603(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01F 41/24

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくとも2層の軟磁性薄膜を含む薄膜が
    液相めっき法により基体上に積層されており、無電解め
    っき法により形成された薄膜および/または置換めっき
    法により形成された薄膜を有することを特徴とする軟磁
    性人工格子めっき膜。
  2. 【請求項2】無電解めっき法により形成された薄膜に隣
    接して無電解めっき法により形成された薄膜が存在する
    請求項1に記載の軟磁性人工格子めっき膜。
  3. 【請求項3】無電解めっき法により形成された薄膜に隣
    接して置換めっき法により形成された薄膜が存在する請
    求項1に記載の軟磁性人工格子めっき膜。
  4. 【請求項4】無電解めっき法により形成された薄膜に隣
    接して電気めっき法により形成された薄膜が存在する請
    求項1に記載の軟磁性人工格子めっき膜。
  5. 【請求項5】置換めっき法により形成された薄膜に隣接
    して電気めっき法により形成された薄膜が存在する請求
    項1に記載の軟磁性人工格子めっき膜。
  6. 【請求項6】前記薄膜の厚さが500Å以下である請求項
    1ないし5のいずれかに記載の軟磁性人工格子めっき
    膜。
  7. 【請求項7】請求項1ないし6のいずれかに記載の軟磁
    性人工格子めっき膜を製造する方法であって、液相めっ
    き法により薄膜を形成する際に、高速めっき法を用いる
    ことを特徴とする軟磁性人工格子めっき膜の製造方法。
  8. 【請求項8】請求項1ないし6のいずれかに記載の軟磁
    性人工格子めっき膜を磁極として有することを特徴とす
    る磁気ヘッド。
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