JP3514800B2 - 軟磁性薄膜およびその製造方法 - Google Patents

軟磁性薄膜およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、磁気ヘッド材料、セン
サ材料や、トランス、チョークコイル、過飽和リアクト
ル、ノイズフィルタ等の磁心などに使用される軟磁性薄
膜と、この軟磁性薄膜の製造方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】磁気記録の分野では、高密度記録を行な
うために磁気記録媒体の高保磁力化が進んでいる。高保
磁力の磁気記録媒体に対しては、飽和磁束密度と透磁率
とが共に高い記録ヘッドが必要とされ、このため、通
常、高飽和磁束密度と高透磁率をもつ軟磁性薄膜を使用
した薄膜タイプやメタル・イン・ギャップタイプの記録
ヘッドが用いられている。この他、薄膜トランスの磁心
などに用いられる軟磁性薄膜にも、同様に高飽和磁束密
度、高透磁率が要求される。
【0003】従来、これらの用途に用いられている軟磁
性薄膜は、スパッタ法等の真空成膜法や電気めっき法に
より作製されており、組成としてはパーマロイ等が一般
的である。しかし、パーマロイは、良好な軟磁気特性を
示すFe/Niの比率範囲が狭いため、膜形成時の組成
制御が難しい。また、スパッタ法は量産性に乏しく、大
面積の膜を均一に形成することも困難である。一方、電
気めっき法を用いる場合、2価鉄の酸化の問題や電流密
度分布による組成分布の不均一等の問題が生じる。
【0004】なお、無電解めっき法によるパーマロイ膜
は、小島ら(東北大学科学研究所報告 第33巻 第1
号 P1〜13 1984)や鷹野ら(金属表面技術協
会第74回講演大会要旨集 16A−11)により提案
されているが、やはり組成制御が難しく、良好な特性を
示すFe/Ni範囲を再現性よく得ることは困難であ
る。また、前述の小島らにより無電解めっきCo−P薄
膜も検討されているが、保磁力はせいぜい5 Oe までし
か低下せず、十分な軟磁気特性は得られていない。
【0005】量産性に優れ、しかも組成制御の容易な軟
磁性薄膜として、Co−Feの電気めっき膜が提案され
ているが、電気めっき法を用いるため、電気密度分布に
起因して組成分布や厚さ分布の不均一さが生じるという
問題があり、また、導電性を有する基体しか用いること
ができないという制限がある。
【0006】このような事情から、特開平4−1964
02号公報では、Fe−Co−Bの3元系軟磁性薄膜を
提案している。この軟磁性薄膜は、組成分布および厚さ
分布の均一性が良好な膜が得られる無電解めっき法によ
り形成でき、しかも膜形成時の管理および制御が容易で
ある。しかし、同公報記載の軟磁性薄膜は、保磁力を低
くするためにFeの含有率を7原子%以下に抑えている
ので、飽和磁束密度が不十分である。また、この軟磁性
薄膜は耐熱性が低く、例えば400℃まで加熱すると保
磁力が5 Oe 以上に増大してしまう。磁気ヘッド製造時
のコア接合の際などには軟磁性薄膜が加熱されるため、
この軟磁性薄膜では軟磁気特性が劣化するおそれがあ
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、良好
な軟磁気特性を示し、組成分布および厚さ分布の均一性
が良好で、しかも飽和磁束密度が高く耐熱性が良好な軟
磁性薄膜を提供することであり、他の目的は、このよう
な軟磁性薄膜を、管理および制御が容易で量産性に優れ
た無電解めっき法により形成する方法を提供することで
ある
【0008】
【課題を解決するための手段】これらの目的は、下記
(1)〜()の構成により達成される。 (1) Co、FeおよびBを含有し、Feの含有率が
8〜15原子%であり、Pを含有し、その含有量が1原
子%以下であり、無電解めっき法により形成されたこと
を特徴とする軟磁性薄膜。 (2) Bの含有率が1〜7原子%である上記(1)の
軟磁性薄膜。 (3) 含まれる結晶質が実質的に面心立方晶単相であ
る上記(1)または(2)の軟磁性薄膜。 (Pの含有量が0.2原子%以下である上記
(1)〜(3)のいずれかの軟磁性薄膜。 () Coイオン、Feイオン、硼素含有還元剤およ
び亜燐酸イオンを含有し、硼素含有還元剤の濃度が0.
01〜0.10モル/リットルであり、亜燐酸イオンの
濃度が0.01モル/リットル以上である無電解めっき
を用いて軟磁性薄膜を形成することを特徴とする軟磁
性薄膜の製造方法。 (前記無電解めっき浴において、亜燐酸イオンの
濃度が1モル/リットル以下である上記()の軟磁性
薄膜の製造方法。 (前記無電解めっき浴が、錯化剤イオンとして酒
石酸イオンおよび/またはクエン酸イオンを含有する上
記()または()の軟磁性薄膜の製造方法。 () 上記(1)〜()のいずれかの軟磁性薄膜を
形成する上記(5)〜(7)のいずれかの軟磁性薄膜の
製造方法。
【0009】
【作用および効果】本発明では、Co、FeおよびBを
含む軟磁性薄膜を形成するに際し、無電解めっき法を用
いるため、組成分布および厚さ分布の均一性が良好な膜
が得られ、量産性も良好となる。
【0010】本発明では、軟磁性薄膜中のFe含有率を
8原子%以上とするので、高い飽和磁束密度が得られ
る。そして、Coイオン、Feイオンおよび硼素含有還
元剤に加え亜燐酸イオンを含む無電解めっき浴を用いる
ことにより、Fe含有率を8原子%以上とした場合で
も、保磁力の著しく低い軟磁性薄膜が容易に得られる。
しかも、この軟磁性薄膜は耐熱性が良好であり、500
℃程度まで加熱した後でも保磁力はわずかしか増大しな
い。亜燐酸イオンを含む無電解めっき浴を用いた場合、
ごく微量のPが膜中に共析して膜の微細構造に影響を与
えて軟磁気特性を向上させ、耐熱性も向上させると考え
られるが、詳しい作用はよくわかっていない。
【0011】なお、電気めっき法では、膜中に積極的に
Pを共析することを目的として、めっき浴中に次亜燐酸
イオンや亜燐酸イオンを添加することが知られている。
しかし、従来、電気めっき法においてPを共析させるの
は、アモルファス化して耐食性と磁気特性とを向上させ
るためであり、Pの含有率は1%を大きく超える。これ
に対し、本発明では後述するように膜中にPが含まれて
いるとしても極めて微量である。
【0012】また、無電解めっき法では、還元剤として
次亜燐酸をめっき浴中に添加することが知られている。
しかし、一般の無電解めっき法において用いられる次亜
燐酸は、成膜の際の還元剤として不可欠である。一方、
本発明では、還元力の小さい亜燐酸でも十分な効果が得
られることからも明白なように、還元剤としての作用は
それほど重要ではないと考えられる。実際、本発明で用
いる無電解めっき浴から亜燐酸イオンを除いても、成膜
反応は生じる。
【0013】ところで、8原子%以上のFeを含むCo
−Fe−B合金を急冷法により製造した報告もなされて
いるが、アモルファス状の急冷合金は耐熱性が不十分で
ある。しかし、結晶化させるためにはB含有率を高くし
なければならないので良好な軟磁気特性が得られず、例
えば保磁力が5 Oe 以上と大きくなってしまう。また、
急冷合金では、薄膜化やパターニングが実質的に不可能
である。
【0014】前述した特開平4−196402号公報に
は、9.2原子%のFeを含む無電解めっき膜が比較例
として記載されている。この膜は、亜燐酸イオンを含ま
ない無電解めっき浴を用いて形成されているため、保磁
力が25.3 Oe にも達し、軟磁性薄膜としての使用は
不可能である。
【0015】
【具体的構成】以下、本発明の具体的構成について詳細
に説明する。
【0016】<軟磁性薄膜>本発明の軟磁性薄膜は、C
o、FeおよびBを含有する。Feの含有率は、8〜1
5原子%である。Feが少なすぎると高飽和磁束密度が
得られず、多すぎると体心立方晶が析出して軟磁気特性
が不良となる。Bの含有率は好ましくは1〜7原子%、
より好ましくは、2〜5原子%である。Bが多すぎると
Co−B合金またはCo−Fe−B合金が主成分となっ
てしまい、またBが少なすぎるとCoまたはCo−Fe
結晶が主成分となり、いずれの場合も好ましい軟磁気特
性が得られにくくなる。軟磁性薄膜の残部は実質的にC
oから形成されるが、Ni、W、Mo、Cu、Zn、S
n、S、Ca等から選択される少なくとも1種が含有さ
れていてもよい。ただし、これらの元素の含有率は、合
計で5原子%以下であることが好ましい。
【0017】本発明の軟磁性薄膜は、後述するように亜
燐酸イオンを含むめっき浴を用いて無電解めっき法によ
り形成することにより、良好な軟磁気特性が容易に得ら
れる。しかし、亜燐酸イオンの添加量を良好な軟磁気特
性が得られる範囲とした場合、亜燐酸イオン由来のPは
蛍光X線分析では検出することができなかった。したが
って、Pの含有率は多くても1原子%であり、通常は
0.2原子%以下であると考えられる。亜燐酸イオン由
来のPは、結晶粒界に偏析して軟磁気特性向上に寄与し
ていると考えられるが、確認はできていない。
【0018】このような軟磁性薄膜が、微細な結晶粒を
有するアモルファス類似構造であるとき、極めて良好な
軟磁気特性が得られる。アモルファス類似構造とは、X
線回折においてブロードなピークを示す構造であり、例
えば、平均粒径100A 程度以下と推定される結晶質か
らなると考えられる。本発明の軟磁性薄膜においてブロ
ードなピークとして認められるのは、面心立方晶の(1
11)面に相当するピークなので、軟磁性薄膜に含まれ
る結晶質は実質的に面心立方晶単相からなると考えられ
る。ただし、保磁力が小さくなる組成範囲は、体心立方
晶相が共析する組成範囲と隣接しているので、極めて微
量の体心立方晶が局部的に偏析している可能性も考えら
れる。従って、「実質的に面心立方晶単相からなる」と
は、汎用のX線回折装置を用いた場合の評価結果とし、
このような装置では検出不可能な極めて微量の体心立方
晶を含む場合も包含する概念とする。
【0019】なお、Co−B系合金としてはCo2
(33.3原子%、すなわち8.41重量%B)やCo
B(50原子%、すなわち15.51重量%B)等が知
られているが、本発明の軟磁性薄膜はこれらとはまった
く異なる。すなわち、本発明の軟磁性薄膜のB含有率は
たかだか7原子%程度である。
【0020】本発明の軟磁性薄膜は軟磁気特性が良好で
ある。すなわち、膜形成直後の保磁力は、通常、1.0
Oe 以下であり、しかも、耐熱性が良好であるため、5
00℃程度まで加熱した後でも2 Oe 以下の低保磁力を
示す。また、透磁率が高く、例えば5MHz にて1000
以上の透磁率を示す。さらに、本発明の軟磁性薄膜は飽
和磁束密度が高く、通常、1550emu/cc以上の値を示
す。
【0021】本発明の軟磁性薄膜の厚さは特に限定され
ないが、均質な膜状とするためには0.05μm 以上と
することが好ましい。膜が厚くなると巨大結晶構造をと
りやすくなるため、好ましくは10μm 以下、より好ま
しくは5μm 以下とする。
【0022】より厚い膜としたい場合には、他の無電解
めっき層等の中間層を介して積層することができる。他
の無電解めっき層としては、非磁性層、例えばNi−P
層やCu層等がある。すなわち、好ましくは非磁性層を
中間層として設層し、その上下にCo−Fe−B層を形
成することも可能である。さらに中間層を増やし、何層
にも積層することも可能である。これは、Co−Fe−
Bの膜の構造が厚さによって変化してしまう場合に、薄
い膜を何層も重ねて目的とする厚さとするために役立
つ。中間層としては、磁性層であってもよいが、特に非
磁性めっき層が好ましい。このように積層する場合、C
o−Fe−B層を0.05〜2μm 程度とし、中間層を
その5〜30%程度の厚さとすることが好ましい。な
お、中間層として用いるNi−Pは、P含有率が5〜1
8重量%程度の組成とすることが好ましい。この他、中
間層は、0.01μm 以下のCo−P、Co−Ni−P
であってもよい。
【0023】本発明の軟磁性薄膜は、薄膜磁気ヘッドの
磁極材料、メタル・イン・ギャップ型の磁気ヘッドの軟
磁性薄膜、垂直磁気記録媒体の軟磁性下地膜、磁気セン
サ、距離センサ、方位センサ、傾斜センサ等のセンサ薄
膜、トランス、チョークコイル、ノイズフィルタ、過飽
和リアクトル等の薄膜磁心、磁気シールド用薄膜等とし
て有用である。
【0024】<製造方法>上述した軟磁性薄膜は、Co
イオン、Feイオン、硼素含有還元剤および亜燐酸イオ
ンを含有するめっき浴を用いる無電解めっき法により、
容易に形成することができる。
【0025】めっき浴中におけるCoイオン濃度および
Feイオン濃度は、目的とする膜組成や要求される膜形
成速度などに応じて適宜決定すればよいが、通常、Co
イオン濃度を0.05〜3.0モル/リットルとし、F
eイオン/Coイオン(モル比)を、好ましくは0.0
05〜0.3、より好ましくは0.01〜0.2とす
る。これらの金属イオンの供給源は、硫酸塩、スルファ
ミン酸塩、酢酸塩、硝酸塩等の水溶性の塩から選択する
ことが好ましく、安価であることから特に硫酸塩を用い
ることが好ましい。また、この他、金属をめっき浴中に
浸漬して自然溶解させたり、電解により陽極を溶解して
供給することもできる。
【0026】Bの供給源には硼素含有還元剤を用いる。
硼素含有還元剤としては、ジメチルアミンボラン、トリ
メチルアミンボラン、水素化硼素ナトリウム等が好まし
く、特にジメチルアミンボランが好ましい。硼素含有還
元剤の濃度は、0.01〜0.10モル/リットルであ
ることが好ましい。
【0027】亜燐酸イオンの濃度は、0.01モル/リ
ットル以上であることが好ましい。亜燐酸イオンを含む
無電解めっき浴を用いることにより、上述したFe含有
率の高い軟磁性薄膜の保磁力を低くすることができ、膜
の耐熱性も良好となる。亜燐酸イオンの濃度が低いと、
低保磁力の膜が得ることが困難となる。亜燐酸イオンの
濃度の上限は特にないが、0.1モル/リットル程度の
濃度で十分な効果が得られ、1モル/リットルを超える
濃度としても効果が向上することもないので、経済性や
溶解限度を考慮して、1モル/リットル以下とすること
が好ましい。亜燐酸イオンの供給源には、亜燐酸または
その塩、例えば、亜燐酸ナトリウム、亜燐酸カリウムな
どを用いることができる。
【0028】めっき浴中には、錯化剤イオンが含まれる
ことが好ましい。錯化剤イオンとしては有機酸イオンが
好ましく、具体的には、酒石酸、クエン酸、コハク酸、
マロン酸、リンゴ酸、グルコン酸や、これらの塩を錯化
剤としてめっき浴に添加することが好ましく、特に酒石
酸もしくはその塩および/またはクエン酸もしくはその
塩、特に酒石酸ナトリウムおよび/またはクエン酸ナト
リウムを用いることが好ましい。錯化剤イオンの濃度
は、好ましくは0.05モル/リットル以上、より好ま
しくは0.1〜1モル/リットルである。めっき浴に錯
化剤を添加することにより、微細構造組織が安定して形
成され、軟磁気特性が向上する。
【0029】めっき浴中には、アンモニア源が含有され
ることが好ましい。アンモニア源としては、硫酸アンモ
ニウム、塩化アンモニウム等を挙げることができる。ア
ンモニア源を添加することによっても、膜の微細構造組
織が安定化し、軟磁気特性が向上する。アンモニア源の
濃度は、好ましくは0.1モル/リットル以上、より好
ましくは0.2〜0.4モル/リットルとする。
【0030】この他、めっき浴には、必要に応じ、硼酸
等の緩衝剤を添加してもよい。
【0031】めっき浴のpHは、7〜10とすることが
好ましい。pHが低すぎると析出速度が遅くなり、高す
ぎると浴が不安定となって分離しやすくなる。pH調整
剤は特に限定されないが、浴中のアンモニウムイオン量
を一定とするために水酸化ナトリウム等を用いてもよ
い。
【0032】めっき浴の温度は、好ましくは40〜95
℃、より好ましくは70〜90℃である。浴温が高すぎ
ると浴が不安定となって分離しやすくなり、低すぎると
析出速度が遅くなる。なお、大気中での沸点に近いよう
な高温の場合、浴が不安定となりやすいので、このよう
な場合には加圧状態で成膜してもよい。
【0033】めっき時間は、好ましくは2〜60分間、
より好ましくは10〜20分間で所定の膜厚とすること
が、工程上好ましい。
【0034】なお、膜を厚くする必要がある場合には、
電解めっきを併用したり、交流電解による無電解析出の
活性化を行なって、短時間に厚い膜を得ることも可能で
ある。さらに、これらの電解手法をめっき中の一定期間
にだけ行なうこともできる。例えば、初期に無電解めっ
きだけで0.5μm 厚まで成膜した後に、電解を併用し
たり、あるいは無電解めっき5分間と電解めっき併用5
分間とを交互に繰り返し行なうことも可能である。併用
する電解めっきの電流密度は0.5〜3A/dm2程度とす
ることが好ましく、交流電解は0.1〜1A/dm2 の電流
密度にて周波数1〜1000Hz程度で行なうことが好ま
しい。
【0035】軟磁性薄膜に適度の磁気異方性を付与した
い場合には、めっき中に直交磁場をかけることが好まし
い。例えば、磁化容易軸としたい方向に磁界強度800
Oeで10秒印加したのち、磁化困難軸としたい方向に
200 Oe で5秒印加しこれを成膜中繰り返す。あるい
は、基体を直流磁界中で回転することでも同様の効果が
得られる。このように、異なる方向からの磁場を交互に
印加したり、回転磁場を印加しながら成膜することによ
り、適度の磁気異方性が付与される。面内容易軸方向に
印加する磁界は、50〜1000 Oe 程度、また面内困
難軸方向に印加する磁界は50〜1000 Oe 程度とす
ることが好ましい。このような交番ないし回転磁界の印
加の周期は、一般に0.1〜200秒間程度とすればよ
い。
【0036】本発明では、前述したように軟磁性薄膜間
に非磁性中間層を挟む多層構造とすることもできるが、
非磁性中間層として、Ni−P層を設ける場合、P供給
源としては、次亜燐酸ナトリウム等を用いればよく、N
i供給源としては、硫酸ニッケルや塩化ニッケル等を用
いればよい。
【0037】軟磁性薄膜を担持する基体は用途に応じて
適宜選択すればよく、剛性のものであっても可撓性のも
のであってもよい。基体には、軟磁性薄膜形成前に、無
電解めっき等による公知の各種活性化処理を施してもよ
い。
【0038】なお、軟磁性薄膜は、必要に応じ、形成後
に基体から剥離して用いてもよい。
【0039】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を示し、本発明
をさらに詳細に説明する。
【0040】<実施例1、2、比較例1〜3>基体とし
て、スパッタ法により500A 厚のCu膜を形成した厚
さ0.7mmのガラス板(コーニング社製品番号705
9)を用意した。この基体を5%水酸化ナトリウム溶液
(室温)に30秒間浸漬して脱脂処理を行なった。次い
で、水洗した後、10%塩酸溶液(室温)に30秒間浸
漬して活性化処理を行なった。この基体に、表1に示す
めっき浴を用いて無電解めっきを10分間行ない、表2
に示す薄膜を形成した。
【0041】なお、めっき中の基体には交番直交磁場を
印加した。すなわち、永久磁石を2つ対にして向かい合
わせることで直流磁場を得、これらの永久磁石の位置を
基体に対して周期的に変化させることにより交番直交磁
場とした。磁場強度は、磁化容易軸方向で600 Oe 、
磁化困難軸方向で300 Oe とし、20秒ごとに印加方
向を変更した。
【0042】各薄膜について、厚さを段差計で、飽和磁
束密度(Bs )および保磁力(Hc)をVSMで、透磁
率(μ)を8の字コイル法で測定した。また、各薄膜を
硝酸により溶解した後、プラズマ発光分析を行ない、膜
中のFe含有率とB含有率とを定量した。結果を表2に
示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】表1および表2に示される結果から、本発
明の効果が明らかである。すなわち、実施例1および2
では、亜燐酸イオンを含む無電解めっき浴を用いてFe
含有率が8〜15原子%の範囲にある膜を形成している
ため、高飽和磁束密度が得られ、しかも保磁力が低く透
磁率が高くなっている。これに対し、比較例1では、亜
燐酸イオンを含まないめっき浴を用いてFe含有率が8
原子%以上の膜を形成しているため、保磁力が著しく大
きくなっている。比較例2では、Fe含有率が15原子
%を超えているため、保磁力が高く透磁率が低くなって
いる。比較例3では、亜燐酸イオンを含まないめっき浴
を用いているが、前述した特開平4−196402号公
報と同様にFe含有率を7原子%以下に抑えているた
め、良好な軟磁気特性が得られている。しかし、Fe含
有率が低いため、飽和磁束密度が不十分となっている。
【0046】なお、X線回折の結果、Fe含有率が15
原子%を超える比較例2の膜では、面心立方晶の(11
1)面に相当するブロードなピークに加え、体心立方晶
の(110)面に相当するブロードなピークが認められ
たが、実施例1、2および比較例1、3の膜では、面心
立方晶のピークだけしか認められなかった。
【0047】<実施例3>実施例1で形成した軟磁性薄
膜に熱処理を1時間施し、処理後に保磁力を測定した。
その結果、熱処理時の保持温度が300℃のときは0.
84 Oe 、400℃のときは1.00 Oe 、500℃の
ときは1.04 Oe であり、耐熱性が極めて良好である
ことが確認された。
【0048】<実施例4>めっき時間を変えることによ
り膜厚を変更した以外は実施例1と同様にして軟磁性薄
膜を形成した。その結果、膜厚が2.2μm のときの保
磁力は0.7 Oe、3.4μm のときも0.7 Oe であ
り、いずれも十分に低い保磁力が得られた。
【0049】以上の実施例の結果から、本発明の効果が
明らかである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭58−58268(JP,A) 特開 平4−196402(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01F 10/16 C23C 18/50 H01F 41/24 C23C 30/00

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Co、FeおよびBを含有し、Feの含
    有率が8〜15原子%であり、Pを含有し、その含有量
    が1原子%以下であり、無電解めっき法により形成され
    たことを特徴とする軟磁性薄膜。
  2. 【請求項2】 Bの含有率が1〜7原子%である請求項
    1の軟磁性薄膜。
  3. 【請求項3】 含まれる結晶質が実質的に面心立方晶単
    相である請求項1または2の軟磁性薄膜。
  4. 【請求項4】 Pの含有量が0.2原子%以下である請
    求項1〜3のいずれかの軟磁性薄膜。
  5. 【請求項5】 Coイオン、Feイオン、硼素含有還元
    剤および亜燐酸イオンを含有し、硼素含有還元剤の濃度
    が0.01〜0.10モル/リットルであり、亜燐酸イ
    オンの濃度が0.01モル/リットル以上である無電解
    めっき浴を用いて軟磁性薄膜を形成することを特徴とす
    る軟磁性薄膜の製造方法
  6. 【請求項6】 前記無電解めっき浴において、亜燐酸イ
    オンの濃度が1モル/リットル以下である請求項
    磁性薄膜の製造方法
  7. 【請求項7】 前記無電解めっき浴が、錯化剤イオンと
    して酒石酸イオンおよび/またはクエン酸イオンを含有
    する請求項または軟磁性薄膜の製造方法
  8. 【請求項8】 請求項1〜のいずれかの軟磁性薄膜を
    形成する請求項5〜7のいずれかの軟磁性薄膜の製造方
    法。
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