JP4644948B2 - リポ蛋白質分析方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、組織抽出液、血清、血漿などの試料中に含まれるリポ蛋白質の分析方法等に関する。
【0002】
【従来の技術】
リポ蛋白質は、コレステロール、トリグリセライド(中性脂肪)、リン脂質、ビタミンE、そしてアポ蛋白質等が会合した複合体である。リポ蛋白質はその粒子径や含有されるアポ蛋白質の種類により、高密度リポ蛋白質(以下「HDL」と記載する)、低密度リポ蛋白質(以下「LDL」と記載する)、超低密度リポ蛋白質(以下「VLDL」と記載する)、カイロミクロン(以下「CM」と記載する)に分類されている。そして近年では、これらに加え、中間型リポ蛋白質(以下「IDL」と記載する)の存在も明らかになっている。ヒト血清中のHDL、LDL、VLDLのそれぞれに含まれるコレステロール、トリグリセライド(中性脂肪)、リン脂質の含有量と、虚血性心疾患、肝疾患、糖尿病等の疾病や糖質代謝異常とが関連することが知られており、これらを分析することは、臨床診断上重要である。
【0003】
IDLは、VLDLがLDLに代謝される過程で生じるVLDLレムナントを初めとする中間体が主要成分と考えられており、CMがリポ蛋白リパーゼの働きにより水解され比重が増加するとIDL画分に含まれるようになるとの報告がある(多田紀夫、高脂血症(南江堂)、p209、1991年)。またIDLは健常人では見られないリポ蛋白質であり、冠動脈疾患の進展を反映するとの報告もなされており、その分析が臨床診断上重要になりつつある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
リポ蛋白質を分析するには、CM、VLDL、IDL、LDL、HDLを分離することが重要である。しかしながらCM、VLDL、IDL、LDL及びHDLの比重はそれぞれ0.930g/mL以下、0.930から1.006g/mL、1.006から1.019g/mL、1.019から1.063g/mL、1.063から1.210g/mLと近似しており、またその直径もそれぞれ75から1200nm、30から80nm、25から35nm、18から25nm、9から12nmである(Method of Enzymology、128、p10、1986年)ため、これらを分離するのは困難であったり、可能であったとしても複雑な操作や特殊な装置が必要であった。
【0005】
実際に超遠心分離装置、ゲルろ過クロマトグラフィー、電気泳動、通常の陰イオン交換カラムクロマトグラフィーによる分離が報告されている。超遠心分離法では、遠心分離後の試料の入ったチューブの底からペリスターポンプで試料を抜き取り、オンラインでコレステロール酵素液を混合し、反応し、検出する方法により、HDL、LDL、IDL、VLDLを分離検出することが出来る(Byungら、Methods of Enzymology、128、p181、1986年)ものの、超遠心分離器が必須で、分離自体に時間を要するため、当然に迅速分析が出来ないという課題がある。
【0006】
アガロースゲル電気泳動及びセルロースアセテート膜電気泳動では、HDL、LDL及びVLDLは分離可能であるが、LDLとIDL、IDLとVLDLの分離は出来ず、この結果IDLの分析を実施し得ないという課題がある。アクリルアミドゲルディスク電気泳動では、HDL、LDL、IDL及びVLDLを分離することは可能であるが、ディスクの調整に時間がかかり、しかも該ディスクは使い捨てで、一回の操作で分離可能な量には限りがあり、更には定量が困難であるという課題がある。
【0007】
ゲルろ過カラムによる分離法については、CM、VLDL、LDL及びHDLを分離し得るという報告(Okazakiら、Handbook of Lipoprotein Testing(AACC)、p531、1997年)はあるが、IDLを分離可能な方法は報告されていない。一方、陰イオン交換カラムによる分離法では、表面が親水性に富んだリポ蛋白質に対してダメージを最低限に押さえたゲル担体にジエチルアミノエチル基を導入したカラムを用いた報告(Yamaguchiら、J.Chromatography B、716、p57、1998年)があるが、IDLの分離については報告されていない。
【0008】
先に本願出願人は、2価の陽イオンを吸着出来る交換基を有した不溶性担体を充填したカラムを用いてリポ蛋白質を分析する方法において、前記カラムを少なくとも2価の陽イオン濃度が100mM以下である溶液で平衡化し、カラム体積に対して10%以下の試料を導入し、リポ蛋白質を前記2価の陽イオン存在下でカラムに吸着させ、1種類以上の溶液で、少なくとも高密度リポ蛋白質、低密度リポ蛋白質、そして超低密度リポ蛋白質を溶出させることで、HDL、LDL、VLDLを分離し分析可能で、脂質代謝異常(高脂血症)患者に由来する血清試料をこの方法で分離すると、LDL画分について溶出時間の遅い高吸着画分(LDL成分中の高吸着画分)に健常人に由来する血清試料には認められないピークが出現することや、脂質代謝異常患者に由来する血清試料は、健常人に由来する血清試料とは異なる、区別可能なクロマトグラムプロファイルを示すこと等を知見した(特願平2000−32768号、及び、特願2000−72492号)。そして今回、本願出願人の更なる研究により、前記出願において分離・溶出されていたLDL画分の溶出時間の遅い高吸着画分(LDL成分中の高吸着画分)がIDLであることが確認され(従って先の出願においてLDL低吸着画分として記載していたものはLDLである)、同時に、2価の陽イオンを吸着出来る交換基として硫酸基を有し、かつ、径が500nm以上又は18nm以下の細孔を有するか、或いは細孔を有していない不溶性担体を用いた場合はIDLの分離を更に良好にし得ることを新たに知見した。
【0009】
このように本願発明の第1の構成は、HDL、LDL、IDL及び/又はVLDLを通常の液体クロマトグラフィー装置を用いて分離し測定することを含むリポ蛋白質の分析方法を提供するものである。そして本願発明の第2の構成は、試料中に存在するHDL、LDL、IDL及び/又はVLDLを通常の液体クロマトグラフィー装置を用いて分離することを含むこれらリポ蛋白質画分の製造方法を提供するものである。前者は高脂血症等脂質代謝異常の診断や治療経過の観察を容易にするものであり、後者は前記各画分に含まれる分子種に特異的な抗体の製造や、いわゆる標準物質の製造を可能にする効果を通して高脂血症等の脂質代謝異常発生メカニズムや脂質代謝異常を検知するための新たな診断法を開発・確立するために有用である。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本願請求項1の発明は、2価の陽イオンを吸着出来る交換基を有した不溶性担体を充填したカラムを用いてリポ蛋白質を分析する方法において、前記カラムを少なくとも2価の陽イオン濃度が100mM以下である溶液で平衡化し、カラム体積に対して10%以下の試料を導入し、リポ蛋白質を前記2価の陽イオン存在下でカラムに吸着させ、1種類以上の溶液で、少なくともHDL、LDL、そしてVLDLを分離溶出させ、そして、分離したリポ蛋白質を測定する、リポ蛋白質分析方法である。本願請求項2の発明は、請求項1の発明に係り、少なくともHDL、LDL、IDL、そしてVLDLを分離溶出させ、そして分離したリポ蛋白質を測定することを特徴とする。
【0011】
本願請求項3の発明は請求項1の発明に係り、LDL成分中の低吸着画分のピーク頂点より早く溶出する画分の面積と、高吸着画分、即ちIDLを含む低吸着画分のピーク頂点より遅く溶出する画分の面積との差又は比を測定することを特徴とする。本願請求項4の発明は請求項1の発明に係り、LDL成分の溶出する時間の間に位置する一個所以上の時間で、LDL画分を区切ることにより得られる二個以上の画分の面積を測定することを特徴とする。本願請求項5の発明は請求項4の発明に係り、LDL成分中の低吸着画分のピーク幅又は面積と高さの比を測定することを特徴とする。本願請求項6の発明は請求項1の発明に係り、VLDL成分中の低吸着画分のピーク頂点より早く溶出する画分の面積と、高吸着画分を含む低吸着画分のピーク頂点より遅く溶出する画分の面積との差又は比を測定することを特徴とする。本願請求項7の発明は請求項6の発明に係り、VLDL成分の溶出する時間の間に位置する一個所以上の時間で、VLDL画分を区切ることにより得られた二個以上の画分の面積を測定することを特徴とする。
【0012】
本願請求項8の発明は請求項1の発明に係り、2価の陽イオンを吸着出来る交換基が硫酸基、リン酸基、ほう酸基又は2価陽イオンとキレート結合する化合物であることを特徴とする。本願請求項9の発明は請求項1の発明に係り、リポ蛋白質を吸着させる際に共存させる前記2価の陽イオンがマグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン、マンガンイオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン、鉛イオン又は亜鉛イオンであることを特徴とする。
【0013】
本願請求項10の発明は請求項1の発明に係り、カラムに吸着した各リポ蛋白質を分離溶出が塩濃度のステップグラジエント、リニアグラディエント、コンベックスグラディエント及び/又はコーンケーブグラディエントより行われることを特徴とする。本願請求項11の発明は請求項1の発明に係り、2価の陽イオンを吸着出来る交換基を有した不溶性担体が、径が500nm以上又は18nm以下の細孔を有するか、或いは細孔を有していないものであることを特徴とする。
【0014】
そして本願請求項12の発明は、2価の陽イオンを吸着出来る交換基を有した不溶性担体を充填したカラムを用いてリポ蛋白質を分析する方法において、前記カラムを少なくとも2価の陽イオン濃度が100mM以下である溶液で平衡化し、カラム体積に対して10%以下の試料を導入し、リポ蛋白質を前記2価の陽イオン存在下でカラムに吸着させ、1種類以上の溶液で分離溶出させることからなる、HDL、LDL、IDL及び/又はVLDL画分の製造方法である。以下、本願発明を詳細に説明する。
【0015】
本願発明では、マイナスチャージのリポ蛋白質をカラムに吸着させる際に、2価の陽イオンを間においた形でマイナスチャージの交換基をもつ不溶性担体に吸着させ、必要以上にリポ蛋白質と不溶性担体とを強固に吸着させないようにするため、結果的にリポ蛋白質の構造に与えるダメージを抑制し、安定したリポ蛋白質の分離を達成するものである。2価の陽イオンを吸着出来る交換基を有した不溶性担体としては、硫酸基、リン酸基、ほう酸基などを有した担体、また、2価陽イオンとキレート吸着する化合物を吸着した担体等が例示できる。中でも硫酸基を有する不溶性担体を使用すると、IDL成分を他の成分から良好に分離可能となる。不溶性担体は、分離に供する試料中のリポ蛋白質の量を推定したうえで、これを十分に吸着し得るイオン交換容量となるようにカラム等に充填して使用する。なお不溶性担体を充填するカラムは、通常の、円柱状の液体クロマトグラフ用のもの等を利用できるが、これに制限されるものではない。
【0016】
不溶性担体としては、シリカ系、ポリマー系等、特に制限なく使用することができるが、リポ蛋白質各成分の良好な分離を実現するためには形状が球形で、かつ、直径が1から100ミクロン程度のものが好ましい。ところで、本願発明はイオン交換クロマトグラフィーの原理によってこれらを分離・溶出させるものであり、溶離液中のイオン強度を徐々に高めることでHDL、LDL、IDL、VLDLを連続的に溶出できる。ところが、リポ蛋白質の粒子径はHDL、LDL、IDL、VLDLの順に大きくなることから、不溶性担体が100nm程度の細孔を有する多孔性担体であると、サイズ排除クロマトグラフィーの原理によってリポ蛋白質は粒子径の大きい順(VLDL、IDL、LDL、HDL)に分離、溶出されるが、ここでLDL、IDL及びVLDLを完全に分離することは困難であることから、本願発明においてはかかるサイズ排除クロマトグラフィーの原理が作用しない、径が500nm以上又は18nm以下の細孔を有する担体を使用することが好ましく、特に好ましくは細孔を有していない担体を使用する。100nm程度の細孔を有する担体を使用する場合には、上記したサイズ排除クロマトグラフィー的な作用が弱くなるように、例えば担体あたりのイオン交換基の数(量)を多くし、かつ、カラムの体積を小さくする等すれば良い。
【0017】
前記した硫酸基を有する不溶性担体としては、例えば市販のスルホプロピル基を持つポリマー系のTSKgel SP−NPR、同TSKgel SP−5PW(いずれも商品名、東ソー(株)製、前者は細孔を有しない担体である)等を例示できるが、ヘパリンやデキストラン硫酸等の硫酸基を有した物質を不溶性担体に結合して調製することもできる。2価陽イオンとキレート結合する化合物を結合した担体としては、例えばイミジノ酢酸を結合した担体を例示できるが、市販のものとしてTSKgel Chelate−5PW(商品名、東ソー(株)製)等を例示できる。ほう酸基を有した担体としては、例えばアミノフェニルボロン酸を結合した担体を例示できるが、市販のものとしてTSKgel Boronate−5PW(商品名、東ソー(株)製)等を例示できる。
【0018】
2価の陽イオンを吸着出来る交換基を有した不溶性担体を充填したカラムは、100mM以下、好ましくは1から10mM程度の2価陽イオンを含んだ溶液で平衡化し、前記交換基にイオンを配位させた状態にしておく。また、100mM以上の2価の陽イオンを含んだ溶液をカラムに導入し、交換基にイオンを配位させた後、2価の陽イオンを含まず、かつ、他の塩の濃度も10mM以下と低い濃度の溶液で平衡化しても良い。この場合には、平衡化後、直ちに試料を導入することが好ましい。平衡化後、交換基に配位したイオンが徐々にはずれてしまうからである。この平衡化に用いる2価陽イオンとしては、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン、マンガンイオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン、鉛イオン、亜鉛イオン等を例示できる。この溶液には緩衝作用を持たせることが好ましく、そのpHはリポ蛋白質が安定な6.5から8.5が適当である。かかる緩衝作用は、従来常用されている種々の緩衝剤を利用することにより、前記溶液に付与することができる。このように、カラムを平衡化する溶液は、中性から弱アルカリ性のpHを有することが好ましいことから、このようなpH範囲での溶解度が高い、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオンを使用することが特に好ましい。
【0019】
上記2価の陽イオンは、複数イオンを混合しても良いが、再現性を高めるためには1種類のイオンを用いることが好ましい。このカラムの平衡化は、上記したようにカラムへの試料の導入に先だって行えば良いが、後述するように、試料の導入と同時、即ち試料を導入する際の溶液として上記のような溶液を用いることでカラムの平衡化と試料の導入を同時に行うようにしても良い。なお、カラムの平衡化において、2価の陽イオン濃度が100mMを越える溶液を使用すると、試料中のリポ蛋白質が担体に速やかに吸着しないために、その後の分離が不十分となって、各リポ蛋白質の正確な分析が困難になる場合があるため、注意が必要である。
【0020】
カラムの平衡化と同時に、あるいは、カラムの平衡化の後に、カラムに試料を導入し、不溶性担体にリポ蛋白質を吸着させる。リポ蛋白質の吸着は、2価陽イオンの存在下で行うが、その2価陽イオンは前記平衡化の際に使用したイオンである。むろん、カラム平衡化の後に、いったんイオンの置換を行うことも可能ではあるが、迅速な分析の実施という観点から実務的ではない。また試料の導入は、カラムの平衡化、即ち2価陽イオンをカラムに導入してイオンを吸着出来る交換基に2価陽イオンを配位・吸着させた状態とする作業と同時に行うこともできる。この場合、リポ蛋白質を含む試料をあらかじめ2価陽イオンを含んだ溶液を加えた後、これをカラムに導入する。
【0021】
カラムに導入する試料は、カラム体積に対して10%(v/v)以下とする。これを越える量の試料をカラムに導入すると、HDL、LDL、IDL及び/又はVLDLを溶出させるときに、各リポ蛋白質の溶出画分が重複してしまい、これらの分離が不十分となって、各リポ蛋白質の正確な分析が困難になる。
【0022】
不溶性担体に吸着したリポ蛋白質の分離溶出は、カラム内の溶液のイオン強度を増加させて担体とリポ蛋白質の吸着を乖離させることにより行うか、カラムの平衡化に用いた溶液と同一のイオン強度液をカラムに導入し続けることにより行う。後者は、リポ蛋白質の分離溶出のための溶液を必要としないという利点があるが、反面、リポ蛋白質の分離溶出に時間がかかり、更にはカラム容量と導入した試料の量によってはリポ蛋白質の分離が不十分となる可能性があるため、前者を実施することが好ましい。
【0023】
上記のためには、例えばNaClやNaNO3等の塩を高濃度で含む溶液や、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン、マンガンイオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン、鉛イオン又は亜鉛イオン等の2価の陽イオンを高濃度で含む溶液を使用することが例示できる。これらは2種以上を組み合わせて使用することも可能であるが、特に2価の陽イオンを含む溶液を使用する場合は、カラムの平衡化で使用したのと同一のイオンを含む溶液を使用することが好ましい。またこの溶液には緩衝作用を持たせることが好ましく、そのpHはリポ蛋白質が安定な6.5から8.5が適当である。従って、通常は、カラムを平衡化する際に使用した溶液と同一のpHとすることが好ましい。かかる緩衝作用は、従来常用されている種々の緩衝剤を利用することにより、前記溶液に付与することができる。また、2価の陽イオンを高濃度で含む溶液を使用する場合には、中性から弱アルカリ性のpHで溶解度が高いマグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオンを使用することが特に好ましい。
【0024】
Nacl等の塩溶液を用いる場合、あるいは、2価の陽イオンを含む溶液を使用する場合のいずれの場合でも、リポ蛋白質の溶出にあたっては、溶液中のイオン強度徐々に高めることにより、HDL、LDL、VLDLを連続的に分離溶出することが可能となり、より短時間でのリポ蛋白質分析が可能になる。これは、例えば塩濃度を5から500mMの範囲で連続的又は段階的に上昇させたり、例えば2価の陽イオン濃度(実際は、溶液中で2価の陽イオンを生成する物質の濃度)を5から500mMの範囲で連続的又は段階的に上昇するで実施できる。
【0025】
塩濃度や2価の陽イオン濃度の上げ方としては、段階的にこれらの濃度を上げるステップグラディエント、直線的に塩濃度を上げるリニアグラディエント、徐々に一定時間における塩濃度の上げ幅を小さくしていくコンベックスグラディエント又は徐々に一定時間における塩濃度の上げ幅を大きくしていくコーンケーブグラディエントを例示することができ、更にはこれら2つ以上の方法を組み合わせたグラディエントのいずれでも良い。LDLからVLDLの溶出をゆっくりと行うことにより、LDLからVLDLにかけての分布も確認することが出来る。迅速かつ正確なリポ蛋白質の分析を行うために好適なグラジエントとして、20分間で、100から500mMまで塩濃度を上げるグラディエントや、20分間で、100から400mMまで2価の陽イオン濃度を上げるグラディエントを好ましい例として例示できる。
【0026】
脂質代謝異常(高脂血症)患者の血清を分離すると、LDL画分について溶出時間の遅い高吸着画分に健常人由来血清では認められないピークが出現する。これがIDL画分である。本願発明において、例えば硫酸基を有し、かつ、細孔を有しない担体を使用するなどしてリポ蛋白質の分離が最も良好な状態で行えば、このIDLの画分をLDL及びVLDLの画分とより明確に分離することが可能である。IDLは、高脂血症や動脈硬化等の脂質代謝異常を反映するLDL分子種の一つであるが、この画分を分離溶出するために特に好適な条件は、ステップグラディエントの場合には150mMから250mMの塩濃度範囲での、リニアグラディエントの場合は15から30分間程度かけての100から300mMの塩濃度範囲での溶出である。VLDL画分を分離溶出するために特に好適な条件は、ステップグラディエントの場合には300mMから400mMの塩濃度範囲での、リニアグラディエントの場合は20分間程度かけての300から400mMの塩濃度範囲での溶出である。従って本願発明を実施する場合には、分離・溶出させようとする対象成分を考えて塩濃度の範囲、塩濃度の上げ方並びに塩濃度を上げるための時間等の諸条件を予備的実験を行う等して決定しておくことが好ましい。
【0027】
本願発明のようなカラムクロマトグラフィーによる分析方法は、1回の分析を短時間かつ簡便に実施し得るという迅速性・容易性に加えて、同一又は異なる複数の試料を連続的に分析し得るという連続実施可能性を有している。本願発明においても、迅速性・容易性に加え、同一又は異なる複数の試料を連続的に分析可能である。連続分析を行う場合には、リポ蛋白質の溶出に際して、カラムの平衡化に用いたのと同一で、より高濃度の2価イオンを含む溶液を使用するか、あるいは、グラディエントにて、最終的により高濃度の2価陽イオン濃度となるようにすることが好ましい。最終的に高濃度の2価陽イオンを含む溶液でリポ蛋白質を分離溶出させると、再度カラムを平衡化するのに要する時間を短縮でき、結果として次の試料導入までに要する時間を短縮できるからである。
【0028】
カラムから分離溶出されたリポ蛋白質を含む溶出液に対して、既存の測定を実施することで、試料中に存在するHDL、LDL、VLDL各々の量(濃度)を分析することができる。具体的には、リポ蛋白質の構成成分であるコレステロール、トリグリセライド(中性脂肪)、リン脂質、アポ蛋白質等に着目し、これらのいずれか1つ以上に特異的な酵素を用いて測定することが例示できる。より具体的に、コレステロールは、コレステロールエステラーゼとコレステロールオキシダーゼに反応させ、発生する過酸化水素の量を測定する方法、トリグリセライド(中性脂肪)は、リポプロテインリパーゼとリポプロテインオキシダーゼに反応させ、発生する過酸化水素の量を測定する方法、リン脂質は、ホスホリパーゼとコリンオキシダーゼに反応させ発生する過酸化水素の量を測定する方法等が例示できる。
【0029】
上記測定は、酵素試薬を使用することにより、容易に実施できる。例えばコレステロールの測定にはデタミナーLTC(商品名、協和メディクス(株)製)、コレスカラーリキッド(商品名、東洋紡(株)製)、ピュアオートS CHO−N(商品名、第一化学薬品(株)製)、そして、コレステロールEテストワコー(商品名、和光純薬(株)製)が、トリグリセライドの測定にはデタミナーTG(商品名、協和メディクス(株)製)、ピュアオートS TG−N(商品名、第一化学薬品(株)製)、そしてトリグリセライドEテストワコー(商品名、和光純薬(株)製)が、リン脂質の測定にはデタミナーPL(商品名、協和メディクス(株)製)、そしてリン脂質テストワコー(商品名、和光純薬(株)製)等が例示できる。また、上記のような酵素を固定化した膜を過酸化水素電極上に設置した酵素センサー等を使用することもできる。またリン脂質については、その存在下で蛍光を発する試薬(cis−パリナリン酸;商品名、MolecularProbes Inc.製)等を利用して測定することもできる。
【0030】
上記のような酵素試薬を用いてリポ蛋白質の測定を行う場合には、カラムで分離され溶出した各画分と酵素試薬(酵素液)との反応に最適な混合比はおのずと決まっていることから、溶出液の全てを反応に供する必要はなく、カラムの後の流路に分岐路を設けて溶出液の一部のみを反応に供すれば、測定に要する時間はそのままで、測定に要する酵素試薬の量を軽減することができる。なお、カラムで分離され溶出した溶出液を光散乱光度計で測定すれば、各リポ蛋白質の濃度及び分子量の両方を一度に分析することも可能である。
【0031】
本願発明は、試料を導入する試料注入部、導入された試料中のリポ蛋白質を吸着分離する硫酸基などの2価の陽イオンを吸着出来る交換基を有した水不溶性担体を充填したカラム、分離溶出したリポ蛋白質を分析する分析系を有した検出部、リポ蛋白質をカラムに吸着させるために必要な2価陽イオンを含んだ溶液の容器、その溶液をカラムに送液するポンプ、を含む装置により実施できる。ここで好ましくは、複数の試料をセットすることにより、一定時間ごとに一定量の試料を自動的に導入する試料注入部を含んだオートサンプラーや、2価陽イオンを低濃度含む溶液と高濃度含む溶液の2種類の溶液を有し、それぞれの溶液を指定した流量で流すことが出来るポンプ、2つのポンプ出口の流路を結合させたうえで2種類の溶液を均一にする混合部、試料注入部、2価の陽イオンを吸着出来る交換基を有した担体を充填したカラム、そして検出部をこの順に連結すれば、ポンプの流速を制御して2種類の溶液を指定した比率で導入してグラディエントを発生させるとともに、複数の試料を自動的に分析する装置を提供できる。また1台のポンプを用いる場合であっても、2価陽イオン濃度の異なる2から4種類の溶液を用い、それぞれの流路に電磁弁を配置し、ポンプ入口側で流路を結合させ1本の流路としポンプ入口に結合し、ポンプ出口側の流路を、試料注入部、カラム、検出部へと順に連結した装置であれば、前記同様の自動分析を行い得る。そして、それぞれの溶液を配置した電磁弁の開閉を制御することにより、カラムに流れる溶液中の2価陽イオン濃度を順次上げながら導入することが出来る。
【0032】
更には、上記のような構成の装置に、試料注入部、ポンプなど各部を制御するとともに、検出部から得られたクロマトパターンを解析し数値化する機能を有する制御部を付加すれば、完全自動の試料中のリポ蛋白質分析装置を提供できる。
【0033】
後の実施例で詳細に示したように、具体的に、カラム体積の10%以下の試料(高脂血症患者由来の血清)を100mMのマグネシウムイオン存在下で0.04ミリ当量/カラムの硫酸基を有した担体を充填したカラムに導入し、リポ蛋白質を吸着させた後、244mM塩化マグネシウムを含む50mMトリス(pH7.5)で溶出すると、健常人由来血清中のLDL画分のピークトップ(LDL低吸着画分のピークトップ)はカラム体積の5ないし6倍量の位置に溶出する。従ってLDL高吸着画分(IDL)はカラム体積の5ないし6倍量の位置以降からカラム体積の15ないし18倍量の位置に溶出する。これを目安とするか、或いは予備的な分離を行った結果に基づいて溶出液を分取することにより、LDL高吸着画分(IDL)を取得することができる。なお、LDL画分中のLDL高吸着画分(IDL)の割合が50%以上であるような試料が大量に入手可能であれば、前記方法にてLDL高吸着画分(IDL)を容易に製造できるが、該画分の割合が低い試料について分取を行うとLDL低吸着画分(LDL)が混入し易くなり、IDLの純度が低下する。このような場合には、カラムサイズを大きくし、カラムに導入する試料の量をカラム体積に対して1%以下とすること等によってLDL高吸着画分(IDL)とLDL低吸着画分(LDL)の分離を向上したうえでLDL高吸着画分(IDL)を分取・製造することが好ましい。
【0034】
本願発明の分析方法の1の形態では、未知の血清や血漿試料について前記したようにリポ蛋白質を分離し、上記LDL高吸着画分(IDL)のピークトップが認められるか否かを分析するものである。該ピークトップが認められれば、その試料は脂質代謝異常患者に由来する試料であると分析できる。従って、IDLを明確に分離し得る本願発明の形態では、IDLに由来するピークが検出できるか否かを確認するだけで良く、IDLをLDL画分と明確に分離しない本願発明の形態では、LDLの高吸着画分(即ちIDLに由来するピーク)が検出できるか否かを確認するだけで良い。
【0035】
本願発明の分析方法の他の形態は、IDLをLDL画分と明確に分離しない本願発明の形態に対して適用され、LDL画分のピークトップより早く溶出するLDL画分(以下「LDL−a画分」とする)とLDL画分のピークトップより遅く溶出する画分(以下「LDL−b画分」とする)の面積の差や比を算出したり、或いは両画分の面積の差を、LDL画分の総面積、LDL画分面積とVLDL画分面積の和、リポ蛋白質画分の総面積等で除した値を算出し、健常人における同様の値と比較することを含むものである。この差が健常人の該差と比べて大きい場合や、例えばLDL−b画分の面積とLDL−a画分の面積の比(LDL−bをLDL−aで除した値)が健常人の該比と比べて大きい場合には、その試料は脂質代謝異常患者に由来する試料であると分析できる。
【0036】
また本願発明の分析方法の他の形態も、IDLをLDL画分と明確に分離しない本願発明の形態に対して適用され、LDLが溶出する時間の間に位置する一個所以上の時間点でLDL画分のピークを区切り、区切られた2個以上の画分の面積を分析することを含むものである。この場合、溶出時間が遅い画分にはLDL高吸着画分(IDL)が多く含まれることになる。画分の分割数は2個以上であれば良いが、好ましくは2から5程度である。得られた複数の面積値については、LDL高吸着画分(IDL)を多く含む画分の面積値をそのまま用いても良いし、その値をLDL画分の総面積、LDL画分面積とVLDL画分面積の和、又は、リポ蛋白質の総面積で割った値として用いても良い。また、LDL高吸着画分(IDL)を多く含んだ画分の面積とそれ以外の画分の面積との比を用いても良い。前記分割する時間点については、測定条件によっても最適時間点が異なるものの、例えば、検出系にコレステロール反応試薬を用いた場合は実施例に示したように、8〜12分の間で分割することを例示できる。また例えば検出系にトリグリセライド反応試薬を用いた場合は実施例2に示したように、20〜22分の間で分割することを例示できる。そして、以上のような値を健常人における同様の値と比較すれば良いのであるが、値が健常人の値よりも大きい場合にはその試料は脂質代謝異常患者に由来する試料であると分析できる。
【0037】
LDL画分のうち、溶出時間の部分のピーク、即ち充填剤との吸着が弱い成分の画分(以下「LDL低吸着画分」とする)のピークは、試料によりその幅が異なる。このことは、該成分が複数の分子種から構成されることを意味する。従って、IDLをLDL画分と明確に分離しない本願発明の形態に適用される本願発明の分析方法の他の形態では、このピーク形状の相違に基づいて試料が脂質代謝異常や動脈硬化の患者に由来するか否かを分析するものである。ピーク幅は、どの高さのピーク幅を用いても良いが、ベースラインからピークトップの高さを3分割した場合の、ベースラインから2分割目の高さより、10分割しベースラインから1分割目までの範囲の高さにおけるピーク幅を用いることを例示できる。ピークは高さが一定である場合、ピーク面積が大きくなる時には必ずピーク幅が広くなるから、前記に代えてLDL低吸着画分の面積とピーク高さの比の値を用いても同様である。この時のLDL低吸着分画面積として、前記LDL−a画分の面積や、一定の時間点より前の、LDL低吸着画分が多く含まれるLDL画分部分の面積を用いても良い。そして、以上のような値を健常人における同様の値と比較すれば良いのであるが、ピーク幅の値、ピーク面積をピーク高さで割った値が健常人の値と比べて大きい場合には、その試料は脂質代謝異常患者に由来する試料であると分析できる。
【0038】
上記した本願発明の形態のうち、第2から4番目の形態は、先に述べたようにIDLをLDL画分と明確に分離しない本願発明の形態に適用できるが、それ以外にも、カラムに吸着したリポ蛋白質を溶出させる際の条件が適当でない場合や、試料中にLDL高吸着画分(IDL)の成分が少量にしか存在しない場合等のように、LDL高吸着画分(IDL)のピークトップが不明確になり、見かけ上、溶出時間の早いLDL画分の一部として確認されてしまうような場合にも効果的である。
【0039】
また後の実施例で詳細に示したように、脂質代謝異常患者由来の試料では、健常人由来血清で出現するVLDL画分ピークよりも遅く溶出するVLDL画分(以下「VLDL高吸着画分」とする)が溶出することがある。カラム体積の10%以下の試料(高脂血症患者由来の血清)を100mMのマグネシウムイオン存在下で0.04ミリ当量/カラムの硫酸基を有した担体を充填したカラムに導入し、リポ蛋白質を吸着させ、カラム体積の9から10倍程度の244mM塩化マグネシウムを含む50mMトリス(pH7.5)を導入してLDL成分を溶出させ、カラムの2倍程度の容量を導入する間に400mM塩化マグネシウムを含む50mMトリス(pH7.5)に溶出液を変更すると、VLDL画分のピークトップはカラム体積の1ないし2倍量の位置に溶出する。従ってこの画分は、例えば予備的な分離を行った結果に基づいて溶出液を分取することにより製造することができる。なお、VLDL画分中のVLDL高吸着画分の割合が50%以上であるような試料が大量に入手可能であれば、前記方法にてVLDL高吸着画分を容易に製造できるが、該画分の割合が低い試料を用いて製造を行うとVLDL低吸着画分が混入し易くなる。このような場合には、カラムサイズを大きくし、カラムに導入する試料の量をカラム体積に対して1%以下とすること等によってVLDL高吸着画分とVLDL低吸着画分の分離を向上したうえでVLDL高吸着画分を製造することが好ましい。
【0040】
本願発明の分析方法の他の形態は、VLDL高吸着画分について分析することにより、試料が脂質代謝異常や動脈硬化の患者に由来するか否かを分析するものである。これは、未知の血清や血漿試料について前記したようにリポ蛋白質を分離し、上記VLDL高吸着画分のピークトップが認められるか否かを分析するものである。該ピークトップが認められれば、その試料は脂質代謝異常患者に由来する試料であると分析できる。
【0041】
本願発明の分析方法の他の形態は、VLDL画分のピークトップより早く溶出するVLDL画分(以下「VLDL−a画分」とする)とVLDL画分のピークトップより遅く溶出する画分(以下「VLDL−b画分」とする)の面積の差や比を算出したり、或いは両画分の面積の差を、VLDL画分の総面積、VLDL画分面積とLDL画分面積の和、リポ蛋白質画分の総面積等で除した値を算出し、健常人における同様の値と比較するものである。該差や比が大きい場合にはその試料は脂質代謝異常患者に由来する試料であると分析できる。
【0042】
また本願発明の分析方法の他の形態は、VLDLが溶出する時間の間に位置する一個所以上の時間点でVLDL画分のピークを区切り、区切られた2個以上の画分の面積を分析することを例示できる。この場合、溶出時間が遅い画分にはVLDL高吸着画分が多く含まれることになる。画分の分割数は2個以上であれば良いが、好ましくは2から5程度である。得られた複数の面積値については、VLDL高吸着画分を多く含む画分の面積値をそのまま用いても良いし、その値をVLDL画分の総面積、VLDL画分面積とLDL画分面積の和、又は、リポ蛋白質の総面積で割った値として用いても良い。また、VLDL高吸着画分を多く含んだ画分の面積とそれ以外の画分の面積との比を用いても良い。前記分割する時間点については、測定条件によっても最適時間点が異なるものの、例えば、検出系にコレステロール反応試薬を用いた場合は実施例に示したように、17〜19分の間で分割することを例示できる。そして、以上のような値を健常人における同様の値と比較すれば良い。この差が健常人の該差と比べて大きい場合や、例えばVLDL−bをVLDL−aで除した値を用いるのであれば、その比が健常人の該比に比べて大きい場合には、その試料は脂質代謝異常患者に由来する試料であると分析できる。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明を実施例により詳細な説明をするが、本願発明は実施例に限定されるものではない。
【0044】
実施例1
図1の装置を用いてリポ蛋白質の測定を行った。リポ蛋白質の分離溶出用の溶液A、B(以下、溶離液A、Bと記載する)として、それぞれ50mMトリス及び10mM塩化マグネシウムを含むpH7.8の溶液、50mMトリス及び500mM塩化マグネシウムを含むpH7.8の溶液を使用した。
【0045】
溶出したリポ蛋白質の測定には、市販のコレステロール測定試薬であるデタミナーLTC(商品名、協和メディクス(株)製)を用いた。この試薬は2つの液状試薬1と試薬2から構成されるが、試薬1と試薬2をあらかじめ3:1で混合して用いた。
【0046】
図1の装置において、デガッサーはSD−8022(商品名、東ソー(株)製)を用い、ポンプへ送る前に溶離液A、B中に溶存する気体成分を除去するようにした。溶離液A、Bを送液するポンプはCCPM−II(東ソー(株)製)を用いた。溶離液A、Bは、その後、ミキサー(MX−8010、商品名、東ソー(株)製)により均一に混合された後、カラムへと送られる。カラムは、TSKgel SP−5PW(商品名、東ソー(株)製、カラムサイズ7.5mmI.D.×75mm)を用い、カラムの前にはフィルター(フィルターK、商品名、東ソー(株)製)を設置した。オートサンプラーはAS−8020(商品名、東ソー(株)製)を用い、試料の導入量は20μlとした。カラムオーブン(CO−8020、商品名、東ソー(株)製)の設定温度は25℃とした。
【0047】
カラムからの溶出液は、スプリッター(マイクロスプリッターP−450、商品名、UPCHURCH SCIENTIFIC INC.製)により、その半分量を捨てるように設定した。残りの半分量をコレステロール測定試薬の混合液と混合し、反応コイル(サイズ0.4mmI.D.×7.5m)に導いた。リアクター(CO−8020、商品名、東ソー(株)製)の設定温度は37℃とした。
【0048】
検出器としてはUV−8020(商品名、東ソー(株)製)を用い、測定波長は550nmとした。エアートラップはエアートラップG(商品名、東ソー(株)製)を用い、測定試薬の混合液はエアートラップを通ってポンプへ送られるようにした。なお測定試薬の混合液を送液するポンプにはDP−8020(商品名、東ソー(株)製)を用い、流速は0.15ml/分とした。DP−8020に付けた抵抗管のサイズは0.2mmI.D.×2mとし、2本直列に接続して用いた。
【0049】
試料としては、人血清由来のHDL、LDL、VLDL(CHEMICON社製)をそれぞれ1、0.25、0.13mg/mlとなるよう生理食塩水で希釈し用いた。溶離液の流速は、溶離液A、B合わせて0.6ml/分で一定になるようにし、溶離液のグラディエントの設定は、試料導入時から12分間は溶離液A100%とし、12から20分にかけては溶離液A100%からB100%のリニアグラディエントとし、20から40分は溶離液B100%とし、40分以降は溶離液A100%とした。つまり、カラム平衡化は溶離液Aで行い、リポ蛋白質の分離溶出は溶離液A及びBの混合液(グラディエント)で行い、カラムの洗浄は溶離液Bにより行った。なお、本実施例では、70分ごとに新たな試料を導入して連続的に測定を行った。
【0050】
HDL、LDL、VLDL試料の測定結果を図2、3、4に示す。HDL、LDL、VLDLの溶出時間はそれぞれ6.51分、23.24分、24.93分であり、HDL、LDL、VLDLの順に、良好に分離した状態で溶出することが確認された。
【0051】
実施例 2
本実施例では、2価陽イオンとしてニッケルイオンを、カラムとしてTSKgel SP−NPR(商品名、カラムは東ソー(株)製、カラムサイズ4.6mmI.D.×35mm)を、溶離液A、Bとしてそれぞれ50mMトリス及び10mM塩化ニッケルを含むpH7.8の溶液、50mMトリス、30mM塩化ニッケル及び500mM硝酸ナトリウムを含むpH7.8の溶液を用いた。
【0052】
試料としては、人血清由来のHDL、LDL、VLDL(CHEMICON社製)の超遠心分離によるHDL分画、LDL分画、VLDL分画を、それぞれ0.5、0.25、0.25mg/mlとなるように生理食塩水で希釈し用いた。溶離液の流速は溶離液A、B合わせて0.6ml/分で一定になるようにし、溶離液のグラディエントの設定は、試料導入時から5分間は溶離液A100%とし、5から50分にかけては溶離液A100%からB100%のリニアグラディエントとし、50から70分は溶離液B100%とし、70分以降は溶離液A100%とした。つまり、カラム平衡化は溶離液Aで行い、リポ蛋白質の分離溶出は溶離液A及びBの混合液(グラディエント)で行い、カラムの洗浄は溶離液Bにより行った。なお、本実施例では、100分ごとに新たな試料を導入して連続的に測定を行った。
【0053】
上記以外は、実施例1と同様である。
【0054】
HDL、LDL、VLDL試料の測定結果を図5、6、7に示す。分離溶出の際、塩化ニッケルの濃度が上昇するとともに、クロマトグラムのベースの吸光度も上昇した。HDL、LDL、VLDLの溶出時間はそれぞれ40.92分、45.67分、50.67分となり、HDL、LDL、VLDLの順に分離溶出することが確認された。
【0055】
実施例 3
本実施例では、2価陽イオンとしてマグネシウムイオンを、カラムとしてTSKgel SP−NPR(商品名、東ソー(株)製、カラムサイズ4.6mmI.D.×35mm)を、溶離液A、Bとしてそれぞれ50mMトリス及び10mM塩化マグネシウムを含むpH7.8の溶液、50mMトリス及び500mM塩化マグネシウムを含むpH7.8の溶液を用いた。
【0056】
試料としては、人血清と人血清由来のVLDL(CHEMICON社製)を用いた。人血清は生理食塩水により4倍希釈とし、VLDLは0.25mg/mlになるよう生理食塩水で希釈し用いた。溶離液の流速は溶離液A、B合わせて0.6ml/分で一定になるようにし、溶離液のグラディエントの設定は、試料導入時から0.5分間は溶離液A100%とし、0.5から0.6分にかけては溶離液A100%から溶離液A70%・溶離液B30%へのリニアグラディエントとし、0.6から10分は溶離液A70%・溶離液B30%の比率(固定)とし、10から12分にかけては溶離液A70%・溶離液B30%の比率から溶離液B100%のリニアグラディエントとし、12から15分は溶離液B100%とし、15分以降は溶離液A100%とした。なお、本実施例では、23分ごとに新たな試料を導入して連続的に測定を行った。上記以外は、実施例1と同様である。
【0057】
測定結果を図8、9に示す。人血清では、HDL、LDL、VLDLの順に分離溶出することが確認された。LDLのピークは7.67分を最大であった。10分以降からVLDLが溶出するまでの間でもベース以上の吸光度が観察され、微量ではあるがリポ蛋白質が溶出していることが確認できた。このリポ蛋白質は、VLDLからLDLに移行する中間体に相当するものと思われる。VLDL試料の測定結果では、そのほとんどが16.16分のピークとして溶出した。
【0058】
実施例 4
2価陽イオンとしてカルシウムイオンを、カラムとしてTSKgel SP−NPR(商品名、東ソー(株)製、カラムサイズ4.6mmI.D.×35mm)を、溶離液A、Bとしてそれぞれ50mMトリス及び5mM塩化カルシウムを含むpH7.5の溶液、50mMトリス及び400mM塩化カルシウムを含むpH7.5の溶液を用いた。コレステロール測定試薬としてはコレステロールEテストワコー(商品名、和光純薬(株)製)を用い、測定波長は600nmとした。
【0059】
試料としては、人血清を生理食塩水により4倍希釈としたものを用いた。溶離液の流速は溶離液A、B合わせて0.6ml/分で一定になるようにし、溶離液のグラディエントの設定は、試料導入時から0.5分間は溶離液A100%とし、0.5から0.6分にかけては溶離液A100%から溶離液A55%・溶離液B45%へのリニアグラディエントとし、0.6から10分は溶離液A55%・溶離液B45%の比率(固定)とし、10から12分にかけては溶離液A55%・溶離液B45%の比率から溶離液B100%のリニアグラディエントとし、12から15分は溶離液B100%とし、15分以降は溶離液A100%とした。なお、本実施例では、25分ごとに新たな試料を導入して連続的に測定を行った。
【0060】
上記以外は、実施例1と同様である。
【0061】
測定結果を図10に示す。HDL、LDL、VLDLの順に分離溶出することが確認された。
【0062】
実施例 5
2価陽イオンとしてバリウムイオンを、カラムとしてTSKgel SP−NPR(商品名、東ソー(株)製、カラムサイズ4.6mmI.D.×35mm)を、溶離液A、Bとしてそれぞれ50mMトリス及び5mM塩化バリウムを含むpH7.5の溶液、50mMトリス及び400mM塩化バリウムを含むpH7.5の溶液を用いた。コレステロール測定試薬としてはコレステロールEテストワコー(商品名、和光純薬(株)製)を用い、測定波長は600nmとした。
【0063】
試料としては、人血清を生理食塩水により4倍希釈としたものを用いた。溶離液の流速は溶離液A、B合わせて0.6ml/分で一定になるようにし、溶離液のグラディエントの設定は、試料導入時から0.5分間は溶離液A100%とし、0.5から0.6分にかけては溶離液A100%から溶離液A70%・溶離液B30%へのリニアグラディエントとし、0.6から10分は溶離液A70%・溶離液B30%の比率(固定)とし、10から12分にかけては溶離液A70%・溶離液B30%の比率から溶離液B100%のリニアグラディエントとし、12分から15分は溶離液B100%とし、15分以降は溶離液A100%とした。なお、本実施例では、25分ごとに新たな試料を導入して連続的に測定を行った。
【0064】
上記以外は、実施例1と同様である。
【0065】
測定結果を図11に示す。HDL、LDL、VLDLの順に分離溶出することが確認された。
【0066】
実施例 6
以後の実験に先立ち、健常人由来の血清試料(1検体)と脂質代謝異常の患者血清(6検体)についてアガロース電気泳動を行った。電気泳動は、0.6%アガロースゲルを用い、1μlの血清を供し、400Vで15分行った。アガロース電気泳動において、Chy(カイロミクロン)画分、β画分、preβ画分、α画分に分離される。β画分はLDL画分に相当し、preβ画分はVLDL画分に相当し、α画分はHDL画分に相当する。
【0067】
電気泳動収量後、Fat Red 7Bによりゲルを染色し、スキャンした。結果を図12から図18に示す。図13から図18の脂質代謝異常の患者血清では、図12の健常人由来血清と比較してpreβ及びβ画分に変化が認められる。
【0068】
実施例 7
図1の装置を用いてリポ蛋白質の分析を行った。リポ蛋白質の分離溶出用の溶液A、B(以下、溶離液A、Bと記載する)として、それぞれ50mMトリス及び10mM塩化マグネシウムを含むpH7.5の溶液、50mMトリス及び400mM塩化マグネシウムを含むpH7.5の溶液を使用した。なお本実施例では、カラムとしてTSKgel SP−NPR(商品名、東ソー(株)製、カラムサイズ4.6mmI.D.×35mm)を用い、カラムの前にはフィルター(フィルターK、商品名、東ソー(株)製)を設置した。このカラムは交換基容量が0.04m当量/カラムであり、ゲルのポアサイズとしてはポリエチレングリコールで分子量1000以下で、事実上非多孔性である。
【0069】
溶出したリポ蛋白質の分析には、市販のコレステロール分析試薬であるコレステロールEテストワコー(商品名、和光純薬(株)製)を用い、測定波長は600nmとした。
【0070】
試料としては、実施例6で使用した健常人由来血清(1検体)及び脂質代謝異常患者由来血清(6検体)をそれぞれ生理食塩水で4倍に希釈し、20μlとした。溶離液の流速は、溶離液A、B合わせて0.6ml/分で一定になるようにし、溶離液のグラディエントの設定は、試料導入時から0.5分間は溶離液A100%とし、0.5から0.6分にかけては溶離液A100%から溶離液A40%・溶離液B60%の比率までのリニアグラディエントとし、0.6分から10分にかけては溶離液A40%・溶離液B60%の比率とし、10から12分にかけて溶離液A40%・溶離液B60%の比率から溶離液B100%のリニアグラディエントとし、12分から15分にかけては溶離液B100%の比率とした。15分以降は溶離液A100%とし、カラムを平衡化し26分ごとに試料を導入した。
【0071】
図19から25は、それぞれ健常人由来血清又は脂質代謝異常患者由来血清1から6の測定結果を示すクロマトグラムである。全検体について、HDL、LDL及びVLDLは良好に分離された。特に代謝異常患者由来血清3(図22)では、LDL高吸着画分(IDL、図中矢印を付す)が認められ、同血清5(図24)ではVLDL高吸着画分(図中矢印を付す)が認められ、そして同血清6(図25)では健常人由来血清(図19)に比較して明らかに広いLDL低吸着画分のピーク(図中矢印を付す)が認められた。
【0072】
表1は、それぞれの測定結果についてLDL−b画分の面積からLDL−a画分の面積を引いた値(以下「LDL−ba」とする)、LDL−baをLDL画分の総面積で除した値(以下「LDL−ba%」とする)、LDL―bをLDL−aで除した値(以下「LDL−b/a」とする)を示したものである。なお代謝異常患者由来血清3では、LDL高吸着分画の面積はLDL−b分画に含めてた。健常人由来血清と比べて代謝異常患者由来血清1、3及び4ではLDL−baが大きく、LDL−ba%とLDL−b/aでは、健常人血清に比べ、代謝異常患者由来血清1、3、4及び5が大きかった。
【0073】
【表1】
Figure 0004644948
またそれぞれの測定結果について、LDL画分を溶出時間が9分より早い画分の面積(以下「LDL−c」とする)と遅い分画の面積(以下「LDL−d値」とする)に分割した。なお代謝異常患者由来血清3では、LDL高吸着分画(IDL)の面積はLDL−d値に含めた。LDL−d、LDL−dとLDL分画の総面積の比(以下「LDL−d%」とする)、LDL−dをLDL−cで除した値(以下「LDL−d/c」とする)を算出し、表2に示した。LDL−d、LDL−d%、LDL−d/c共に、健常人血清に比べ、代謝異常患者由来血清1、3、4及び5が大きかった。
【0074】
【表2】
Figure 0004644948
またそれぞれの測定結果について、LDL低吸着分画(LDL)の1/2ピーク幅(ベースラインからピークトップの高さを2分割したときの、ベースラインから1分割目の高さ、以下「2H」とする)、1/5ピーク幅(ベースラインからピークトップの高さを5分割したときの、ベースラインから1分割目の高さ、以下「5H」とする)、或いは、LDL低吸着分画(LDL)のピーク高さで、LDL−a、又はLDL−cを除した値(以下それぞれ「LDL−a/h」又は「LDL−c/h」という)を算出し、結果を表3に示した。この結果、全ての値において、健常人血清に比べ、代謝異常患者由来血清が大きかった。
【0075】
【表3】
Figure 0004644948
またそれぞれの測定結果について、VLDL−b分画の面積からVLDL−a分画の面積を引いた値(以下「VLDL−ba」とする)、VLDL−baをVLDL分画の総面積で除した値(以下「VLDL−ba%」という)と、VLDL−b画分の面積をVLDL−a画分の面積で除した値(以下「VLDL−b/a」とする)を算出し、表4に示した。この結果、全ての値において、健常人血清に比べ、代謝異常患者由来血清1、2、3及び5が大きかった。
【0076】
【表4】
Figure 0004644948
またそれぞれの測定結果について、VLDL分画を18分より早く溶出した部分の面積(以下「VLDL−c」とする)と遅く溶出した部分の面積(以下「VLDL−d」とする)に分割した。VLDL−d、VLDL−dとLDL分画の総面積の比(以下「VLDL−d%」とする)、VLDL−dをLDL−cで除した値(以下「VLDL−d/c」とする)を算出し、表5に示した。VLDL−dは、健常人血清に比べ、代謝異常患者由来血清1、2、3及び5が大きかった。VLDL−d%とVLDL−d/cは、健常人血清に比べ、代謝異常患者由来血清1、2及び5が大きかった。
【0077】
【表5】
Figure 0004644948
実施例 8
実施例7に示した装置において、トリグリセライド測定試薬であるトリグリセリドEテストワコー(商品名、和光純薬(株)製)を用い、カラムからの溶出液は、スプリッター(製マイクロスプリッターP−450、商品名、UPCHURCH SCIENTIFIC INC.製)により、溶離液(流量0.6ml/分)中の0.35ml/分相当量を捨てるように設定した。残りの0.25ml/min分は酵素液と混合し、反応コイルに導いた。
【0078】
測定試料として、実施例6及び7で用いた健常人血清(1検体)及び代謝異常患者由来血清1から5(5検体)を生理食塩水で2倍に希釈し、試料導入量は30μLとした。溶離液の流速は溶離液A、B合わせて0.6ml/分と一定になるようにし、溶離液のグラディエントの設定は、試料導入時から0.5分は溶離液A100%とし、0.5分から0.6分にかけて溶離液A100%から溶離液A40%・溶離液B60%の比率までのリニアグラディエントとし、0.6分から10分にかけて溶離液A40%・溶離液B60%の比率とし、10分から12分にかけて溶離液A40%・溶離液B60%の比率から溶離液B100%のリニアグラディエントとし、12分から16分にかけて溶離液B100%の比率とした。16分以降は溶離液A100%とし、カラムを平衡化し28分ごとに試料を導入した。酵素液の流速は0.15ml/分とした。上記以外は、実施例7と同様である。
【0079】
結果を図26から31はそれぞれ健常人由来血清又は脂質代謝異常患者由来血清1から5の測定結果を示すクロマトグラムである。全検体について、HDL、LDL及びVLDLは良好に分離された。特に代謝異常患者由来血清2(図28)、3(図29)及び5(図31)では、LDL高吸着画分(IDL、図中矢印を付す)が認められた。
【0080】
表6は、それぞれの測定結果についてLDL−b画分の面積からLDL−a画分の面積を引いた値(以下「LDL−ba」とする)、LDL−baをLDL画分の総面積で除した値(以下「LDL−ba%」とする)、LDL―bの面積をLDL−aの面積で除した値(以下「LDL−b/a」とする)を示したものである。なお代謝異常患者由来血清2、3及び5では、LDL高吸着分画の面積はLDL−b分画に含めてた。健常人由来血清と比べて全代謝異常患者由来血清でLDL−baとLDL−ba%が大きく、LDL−b/aでは健常人血清に比べ、代謝異常患者由来血清1及び4が大きかった。
【0081】
【表6】
Figure 0004644948
またそれぞれの測定結果について、LDL画分を溶出時間が21分より早い画分の面積(以下「LDL−c」とする)と遅い分画の面積(以下「LDL−d値」とする)に分割した。なお代謝異常患者由来血清2、3及び5では、LDL高吸着分画(IDL)の面積はLDL−dに含めた。LDL−d、LDL−dとLDL分画の総面積の比(以下「LDL−d%」とする)、LDL−dをLDL−cで除した値(以下「LDL−d/c」とする)を算出し、表7に示した。LDL−dでは、健常人血清に比べ、全代謝異常患者由来血清が大きく、LDL−d%及びLDL−d/cでは、健常人血清に比べ、代謝異常患者由来血清1、2、3及び5が大きかった。
【0082】
【表7】
Figure 0004644948
またそれぞれの測定結果について、LDL低吸着分画(LDL)の1/2ピーク幅(ベースラインからピークトップの高さを2分割したときの、ベースラインから1分割目の高さ、以下「2H」とする)、或いは、LDL低吸着分画(LDL)のピーク高さで、LDL−a、又はLDL−cを除した値(以下それぞれ「LDL−a/h」又は「LDL−c/h」という)を算出し、結果を表8に示した。この結果、2HとLDL−a/hでは、健常人血清に比べ、代謝異常患者由来血清1、3及び4が大きく、LDL−c/hでは、健常人血清に比べ、代謝異常患者由来血清1、3、4及び5が大きかった。
【0083】
【表8】
Figure 0004644948
実施例9
図1の装置を用いてリポ蛋白質の分析を行った。リポ蛋白質の分離溶出用の溶液A、B(以下、溶離液A、Bと記載する)として、それぞれ50mMトリス及び10mM硝酸マグネシウムを含むpH7.5の溶液、50mMトリス及び300mM硝酸マグネシウムを含むpH7.5の溶液を使用した。なお本実施例でもカラムとしてはTSKgel SP−NPR(商品名、東ソー(株)製、カラムサイズ4.6mmI.D.×35mm)を用い、カラムの前にはフィルター(HLC723GHbIII用フィルターS、商品名、東ソー(株)製)を設置した。
【0084】
溶出したリポ蛋白質の分析には、市販のコレステロール分析試薬であるコレステロールEテストワコー(商品名、和光純薬(株)製)を用い、測定波長は600nmとした。なお反応コイルは、サイズが0.4mmI.D.×20mのものとした。
【0085】
試料としては、インフォームドコンセントを得て取得した脂質代謝異常患者由来血清(3検体、これまでの実施例で用いたものとは異なるもの)を用い、試料導入量はそれぞれ5μlとした。溶離液の流速は、溶離液A、B合わせて0.6ml/分で一定になるようにし、溶離液のグラディエントの設定は、試料導入時から1分間は溶離液A100%とし、1から20分にかけては溶離液A100%から溶離液A60%・溶離液B40%の比率のリニアグラディエントとし、20から30分にかけては溶離液A60%・溶離液B40%の比率で固定し、30から40分にかけては溶離液B100%の比率で固定した。40分以降は溶離液A100%とした。なお、本実施例では、55分ごとに新たな試料を導入して連続的に分析を行った。
【0086】
これとは別に、市販のアクリルアミドゲル電気泳動による市販リポ蛋白質分析キット(リポフォー、商品名、(株)常光製)を用いて検体の分析を行った。このキットは、スダンブラックBによる脂質前染色キットである。測定はキットに付属するマニュアルに従って行った。分析後、分離ゲルをデンシトメーターでスキャンして結果をグラフ化した。
【0087】
図32から36は上記の結果を示すものであり、図32、34及び36はそれぞれ検体1から3についての本願発明による分析結果(クロマトグラム)、そして図33、35及び37はそれぞれ検体1から3についての電気泳動の結果である。検体1では、いずれの結果においてもIDLのピークは確認されず、検体2及び3ではいずれの結果でもIDLのピークがLDLから完全に分離された状態で観察される。本実施例から明らかなように、IDLが試料中に含まれている場合には、本願発明を実施することによりこれを分離することが可能である。
【0088】
実施例 10
図1の装置を用いてリポ蛋白質の分析を行った。リポ蛋白質の分離溶出用の溶液A、B(以下、溶離液A、Bと記載する)として、それぞれ50mMトリス及び10mM酢酸マグネシウムを含むpH7.5の溶液、50mMトリス、10mM酢酸マグネシウム及び400mM塩化マグネシウムを含むpH7.5の溶液を使用した。なお本実施例でもカラムとしてはTSKgel SP−NPR(商品名、東ソー(株)製、カラムサイズ4.6mmI.D.×35mm)を用い、カラムの前にはフィルター(HLC723GHbIII用フィルターS、商品名、東ソー(株)製)を設置した。溶出したリポ蛋白質の分析には、市販のコレステロール分析試薬であるコレステロールEテストワコー(商品名、和光純薬(株)製)を用い、測定波長は600nmとした。なお反応コイルは、サイズが0.4mmI.D.×20mのものとした。
【0089】
試料としては、インフォームドコンセントを得て取得した脂質代謝異常患者由来血清(1検体、これまでの実施例で用いたものとは異なるもの)を用い、試料導入量はそれぞれ5μlとした。溶離液の流速は、溶離液A、B合わせて0.6ml/分で一定になるようにし、溶離液のグラディエントの設定は、試料導入時から2分間は溶離液A100%とし、2から20分にかけては溶離液A100%から溶離液A60%・溶離液B40%の比率のリニアグラディエントとし、20から25分にかけては溶離液A60%・溶離液B40%の比率で固定し、25から30分にかけては溶離液B100%の比率で固定した。30分以降は溶離液A100%とした。なお、本実施例では、45分ごとに新たな試料を導入して連続的に分析を行った。結果(クロマトグラム)を図38に示す。
【0090】
次に、検体を超遠心分離にかけて得たHDL、LDL、IDL及びVLDLの4つの分画を試料として、上記の液体クロマトグラフィー操作を実施した。まず、検体0.8mLにNaBr0.27gを加えて溶解し、遠心分離チューブに入れた後、比重をそれぞれ1.210g/mL、1.063g/mL、1.019g/mL、1.006g/mLに調整したNaBr溶液をそれぞれ2.6mL、3.3mL、3.0mL、1.1mLずつこの順に重層した。次に遠心分離チューブを遠心分離ロータ(RPS40T、商品名、(株)日立製作所製)に入れ、15℃、30000rpmで24時間遠心分離した。
【0091】
遠心分離後、上層から0.5mLずつ4サンプル(以後Fr.1からFr.4とする)、1.0mLずつ6サンプル(以後Fr.5からFr.10とする)の合計10試料を得た。Fr.1からFR.10の結果(クロマトグラム)を図39から48に示す。
【0092】
Fr.1(図39)ではVLDL及びIDLが確認された。Fr.2からFr.4(図40から42)では、LDL分画の中でも溶出時間の遅い、IDLに近い性質のLDLが主成分として確認された。Fr.5からFr.7(図43から45)の主成分はLDLであった。Fr.8からFr.10(図46から48)の主成分はHDLであった。
【0093】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、カラムクロマトグラフィーの手法により、HDL、LDL、VLDL及び/又はIDLを分離することができる。この結果、これらのリポ蛋白質を製造したり分析することが容易となる。またかかる操作1回あたりに要する時間も20分程度に短縮することができ、しかも、担体に吸着したリポ蛋白質の分離溶出に使用する溶液を工夫することにより、カラムを再平衡化するためにわずかな時間を要するのみで、複数の試料を次々と連続的に処理することも可能である。
【0094】
本発明の方法では、カラムやポンプというような、超遠心分離装置等に比較して安価かつ入手し易い分析装置等によって実施可能である。しかも、超遠心分離を行う方法と比較して短時間で測定操作を終了できるという効果を有する。また本発明の方法は、実施例の記載からも明らかなように、従来のゲルろ過クロマトグラフィーによる方法やイオン交換カラムによる方法では分離できなかったリポ蛋白質をも分離可能である。この結果、HDL、LDL、VLDL及び/又はIDLをそれぞれ正確に分析したり、高純度の標品を製造する、という、従来の方法では困難で、達成されていない効果を初めて達成するものである。
【0095】
以上に説明したように、簡便で、自動分析やルーチン分析に好適な液体クロマトグラフの手法により試料中のリポ蛋白質を分離し、分離結果を分析することによって当該試料が高脂血症等の脂質代謝異常患者や動脈硬化患者に由来する試料であるか否かを知ることが可能である。従来の液体クロマトグラフの手法では、リポ蛋白質を完全に分離することはできず、上記のような分析を実施することは困難である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で使用した測定装置の概要を示す図である。
【図2】実施例1におけるHDL試料の測定結果(クロマトグラム)であり、横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のHDLは高密度リポ蛋白質のピークを示す。
【図3】実施例1におけるLDL試料の測定結果(クロマトグラム)であり、横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のLDLは低密度リポ蛋白質のピークを示す。
【図4】実施例1におけるVLDL試料の測定結果(クロマトグラム)であり、横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のVLDLは超低密度リポ蛋白質のピークを示す。
【図5】実施例2におけるHDL試料の測定結果(クロマトグラム)であり、横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のHDLは高密度リポ蛋白質のピークを示す。
【図6】実施例2におけるLDL試料の測定結果(クロマトグラム)であり、横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のLDLは低密度リポ蛋白質のピークを示す。
【図7】実施例2におけるVLDL試料の測定結果(クロマトグラム)であり、横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のVLDLは超低密度リポ蛋白質のピークを示す。
【図8】実施例3における血清試料の測定結果(クロマトグラム)であり、横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のHDL、LDL、VLDLは、それぞれ超低密度リポ蛋白質、低密度リポ蛋白質、高密度リポ蛋白質のピークを示す。
【図9】実施例3におけるVLDL試料の測定結果(クロマトグラム)であり、横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のVLDLは超低密度リポ蛋白質のピークを示す。
【図10】実施例4における血清試料の測定結果(クロマトグラム)であり、横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のHDL、LDL、VLDLは、それぞれ超低密度リポ蛋白質、低密度リポ蛋白質、高密度リポ蛋白質のピークを示す。
【図11】実施例5における血清試料の測定結果(クロマトグラム)であり、横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のHDL、LDL、VLDLは、それぞれ超低密度リポ蛋白質、低密度リポ蛋白質、高密度リポ蛋白質のピークを示す。
【図12】実施例6における、健常人由来血清の電気泳動結果を示すものである。
【図13】実施例6における、脂質代謝異常患者由来血清の電気泳動結果を示すものである。
【図14】実施例6における、脂質代謝異常患者由来血清の電気泳動結果を示すものである。
【図15】実施例6における、脂質代謝異常患者由来血清の電気泳動結果を示すものである。
【図16】実施例6における、脂質代謝異常患者由来血清の電気泳動結果を示すものである。
【図17】実施例6における、脂質代謝異常患者由来血清の電気泳動結果を示すものである。
【図18】実施例6における、脂質代謝異常患者由来血清の電気泳動結果を示すものである。
【図19】実施例7における健常人由来血清の測定結果(クロマトグラム)であり、横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のHDL、LDL、VLDLは、それぞれ超低密度リポ蛋白質、低密度リポ蛋白質、高密度リポ蛋白質を示す。
【図20】実施例7における脂質代謝異常患者由来血清1の測定結果(クロマトグラム)であり、横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のHDL、LDL、VLDLは、それぞれ超低密度リポ蛋白質、低密度リポ蛋白質、高密度リポ蛋白質を示す。
【図21】実施例7における脂質代謝異常患者由来血清2の測定結果(クロマトグラム)であり、横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のHDL、LDL、VLDLは、それぞれ超低密度リポ蛋白質、低密度リポ蛋白質、高密度リポ蛋白質を示す。
【図22】実施例7における脂質代謝異常患者由来血清3の測定結果(クロマトグラム)であり、横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のHDL、LDL、VLDLは、それぞれ超低密度リポ蛋白質、低密度リポ蛋白質、高密度リポ蛋白質を示す。LDL分画は、6.34分にピークトップを持つ低吸着分画と、9.15分にピークトップを持つ高吸着分画の2つの分画に分かれて溶出している。
【図23】実施例7における脂質代謝異常患者由来血清4の測定結果(クロマトグラム)であり、横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のHDL、LDL、VLDLは、それぞれ超低密度リポ蛋白質、低密度リポ蛋白質、高密度リポ蛋白質を示す。
【図24】実施例7における脂質代謝異常患者由来血清5の測定結果(クロマトグラム)であり、横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のHDL、LDL、VLDLは、それぞれ超低密度リポ蛋白質、低密度リポ蛋白質、高密度リポ蛋白質を示す。VLDL分画は、16.02分にピークトップを持つ低吸着分画の後にピークとして分離されていないが、高吸着分画が確認される。
【図25】実施例7における脂質代謝異常患者由来血清6の測定結果(クロマトグラム)であり、横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のHDL、LDL、VLDLは、それぞれ超低密度リポ蛋白質、低密度リポ蛋白質、高密度リポ蛋白質を示す。
【図26】実施例8における健常人由来血清の測定結果(クロマトグラム)であり、横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のHDL、LDL、VLDLは、それぞれ超低密度リポ蛋白質、低密度リポ蛋白質、高密度リポ蛋白質を示す。
【図27】実施例8における脂質代謝異常患者由来血清1の測定結果(クロマトグラム)であり、横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のHDL、LDL、VLDLは、それぞれ超低密度リポ蛋白質、低密度リポ蛋白質、高密度リポ蛋白質を示す。
【図28】実施例8における脂質代謝異常患者由来血清2の測定結果(クロマトグラム)であり、横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のHDL、LDL、VLDLは、それぞれ超低密度リポ蛋白質、低密度リポ蛋白質、高密度リポ蛋白質を示す。LDL分画は、18.76分にピークトップを持つ低吸着分画と、22.39分にピークトップを持つ高吸着分画の2つの分画に分かれて溶出している。
【図29】実施例8における脂質代謝異常患者由来血清3の測定結果(クロマトグラム)であり、横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のHDL、LDL、VLDLは、それぞれ超低密度リポ蛋白質、低密度リポ蛋白質、高密度リポ蛋白質を示す。LDL分画は、18.18分にピークトップを持つ低吸着分画と、20.67分にピークトップを持つ高吸着分画の2つの分画に分かれて溶出している。
【図30】実施例8における脂質代謝異常患者由来血清5の測定結果(クロマトグラム)であり、横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のHDL、LDL、VLDLは、それぞれ超低密度リポ蛋白質、低密度リポ蛋白質、高密度リポ蛋白質を示す。
【図31】実施例8における脂質代謝異常患者由来血清6の測定結果(クロマトグラム)であり、横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のHDL、LDL、VLDLは、それぞれ超低密度リポ蛋白質、低密度リポ蛋白質、高密度リポ蛋白質を示す。LDL分画は、17.53分にピークトップを持つ低吸着分画と、21.25分にピークトップを持つ高吸着分画の2つの分画に分かれて溶出している。
【図32】実施例9における分析結果(クロマトグラム)を示すものであり、図中横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のHDL、LDL、VLDLはそれぞれ高密度リポ蛋白質、低密度リポ蛋白質、超低密度リポ蛋白質を示す。
【図33】実施例9における電気泳動の結果(デンシトグラム)を示すものであり、図中横軸は泳動における移動距離(dot)を示す。図中のHDL、LDL、VLDLはそれぞれ高密度リポ蛋白質、低密度リポ蛋白質、超低密度リポ蛋白質を示す。
【図34】実施例9における分析結果(クロマトグラム)を示すものであり、図中横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のHDL、LDL、IDL、VLDLはそれぞれ高密度リポ蛋白質、低密度リポ蛋白質、中間型リポ蛋白質、超低密度リポ蛋白質を示す。
【図35】実施例9における電気泳動の結果(デンシトグラム)を示すものであり、図中横軸は泳動における移動距離(dot)を示す。図中のHDL、LDL、IDL、VLDLはそれぞれ高密度リポ蛋白質、低密度リポ蛋白質、中間型リポ蛋白質、超低密度リポ蛋白質を示す。
【図36】実施例9における分析結果(クロマトグラム)を示すものであり、図中横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のHDL、LDL、IDL、VLDLはそれぞれ高密度リポ蛋白質、低密度リポ蛋白質、中間型リポ蛋白質、超低密度リポ蛋白質を示す。
【図37】実施例9における電気泳動の結果(デンシトグラム)を示すものであり、図中横軸は泳動における移動距離(dot)を示す。図中のHDL、LDL、IDL、VLDLはそれぞれ高密度リポ蛋白質、低密度リポ蛋白質、中間型リポ蛋白質、超低密度リポ蛋白質を示す。
【図38】実施例10における検体の分析結果(クロマトグラム)を示すものであり、図中横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のHDL、LDL、IDL、VLDLはそれぞれ高密度リポ蛋白質、低密度リポ蛋白質、中間型リポ蛋白質、超低密度リポ蛋白質を示す。
【図39】実施例10におけるFr.1の分析結果(クロマトグラム)を示すものであり、図中横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のIDL、VLDLはそれぞれ中間型リポ蛋白質、超低密度リポ蛋白質を示す。
【図40】実施例10におけるFr.2の分析結果(クロマトグラム)を示すものであり、図中横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中LDLは低密度リポ蛋白質を示す。
【図41】実施例10におけるFr.3の分析結果(クロマトグラム)を示すものであり、図中横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のLDLは低密度リポ蛋白質を示す。
【図42】実施例10におけるFr.4の分析結果(クロマトグラム)を示すものであり、図中横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のLDLは低密度リポ蛋白質を示す。
【図43】実施例10におけるFr.5の分析結果(クロマトグラム)を示すものであり、図中横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のLDLは低密度リポ蛋白質を示す。
【図44】実施例10におけるFr.6の分析結果(クロマトグラム)を示すものであり、図中横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のLDLは低密度リポ蛋白質を示す。
【図45】実施例10におけるFr.7の分析結果(クロマトグラム)を示すものであり、図中横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のLDLは低密度リポ蛋白質を示す。
【図46】実施例10におけるFr.8の分析結果(クロマトグラム)を示すものであり、図中横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のHDLは高密度リポ蛋白質を示す。
【図47】実施例10におけるFr.9の分析結果(クロマトグラム)を示すものであり、図中横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のHDLは高密度リポ蛋白質を示す。
【図48】実施例10におけるFr.10の分析結果(クロマトグラム)を示すものであり、図中横軸は試料を装置に供してからの時間(分)を示す。図中のHDLは高密度リポ蛋白質を示す。
【符号の説明】
1溶離液A、2溶離液B、3酵素液、4デガッサー、5エアートラップ、6・7送液ポンプ、8ミキサー、9フィルター、10カラム、11カラムオーブン(恒温器)、12抵抗管、13反応コイル、14リアクター(恒温器)、15検出器、16スプリッター、17オートサンプラー

Claims (7)

  1. 2価の陽イオンを吸着出来る交換基を有した不溶性担体を充填したカラムを用いてリポ蛋白質を分析する方法において、
    前記カラムを少なくとも2価の陽イオン濃度が100mM以下である溶液で平衡化し、
    カラム体積に対して10%以下の試料を導入し、
    リポ蛋白質を前記2価の陽イオン存在下でカラムに吸着させ、
    1種類以上の溶液で、少なくとも高密度リポ蛋白質、低密度リポ蛋白質超低密度リポ蛋白質を分離溶出させ
    分離したリポ蛋白質を測定する、リポ蛋白質分析方法であって、
    低密度リポ蛋白質画分中に高吸着画分のピーク頂点が認められれば、脂質代謝異常患者に由来する試料であると分析する、前記分析方法。
  2. 2価の陽イオンを吸着出来る交換基を有した不溶性担体を充填したカラムを用いてリポ蛋白質を分析する方法において、
    前記カラムを少なくとも2価の陽イオン濃度が100mM以下である溶液で平衡化し、
    カラム体積に対して10%以下の試料を導入し、
    リポ蛋白質を前記2価の陽イオン存在下でカラムに吸着させ、
    1種類以上の溶液で、少なくとも高密度リポ蛋白質、低密度リポ蛋白質、超低密度リポ蛋白質を分離溶出させ、
    分離したリポ蛋白質を測定する、リポ蛋白質分析方法であって、
    低密度リポ蛋白質画分のピーク頂点より早く溶出する画分の面積と、
    ピーク頂点より遅く溶出する画分の面積との差又は比を測定し、
    健常人試料の該差又は該比と比べて大きい場合、脂質代謝異常患者に由来する試料であると分析する、前記分析方法。
  3. 2価の陽イオンを吸着出来る交換基を有した不溶性担体を充填したカラムを用いてリポ蛋白質を分析する方法において、
    前記カラムを少なくとも2価の陽イオン濃度が100mM以下である溶液で平衡化し、
    カラム体積に対して10%以下の試料を導入し、
    リポ蛋白質を前記2価の陽イオン存在下でカラムに吸着させ、
    1種類以上の溶液で、少なくとも高密度リポ蛋白質、低密度リポ蛋白質、超低密度リポ蛋白質を分離溶出させ、
    分離したリポ蛋白質を測定する、リポ蛋白質分析方法であって、
    低密度リポ蛋白質が溶出する時間の間に位置する一個所以上の時間点で低密度リポ蛋白質画分のピークを区切り、区切られた二個以上の画分の面積を測定し、
    高吸着画分を多く含む画分の面積値又は高吸着画分を多く含む画分の面積とそれ以外の画分との面積比が健常人試料よりも大きい場合、脂質代謝異常患者に由来する試料であると分析する、前記分析方法。
  4. 2価の陽イオンを吸着出来る交換基を有した不溶性担体を充填したカラムを用いてリポ蛋白質を分析する方法において、
    前記カラムを少なくとも2価の陽イオン濃度が100mM以下である溶液で平衡化し、
    カラム体積に対して10%以下の試料を導入し、
    リポ蛋白質を前記2価の陽イオン存在下でカラムに吸着させ、
    1種類以上の溶液で、少なくとも高密度リポ蛋白質、低密度リポ蛋白質、超低密度リポ蛋白質を分離溶出させ、
    分離したリポ蛋白質を測定する、リポ蛋白質分析方法であって、
    低密度リポ蛋白質画分のうち低吸着画分のピーク幅の値又はピーク面積をピーク高さで割った値を測定し、その値が健常人試料の値と比べて大きい場合、脂質代謝異常患者に由来する試料であると分析する、前記分析方法。
  5. 2価の陽イオンを吸着出来る交換基を有した不溶性担体を充填したカラムを用いてリポ蛋白質を分析する方法において、
    前記カラムを少なくとも2価の陽イオン濃度が100mM以下である溶液で平衡化し、
    カラム体積に対して10%以下の試料を導入し、
    リポ蛋白質を前記2価の陽イオン存在下でカラムに吸着させ、
    1種類以上の溶液で、少なくとも高密度リポ蛋白質、低密度リポ蛋白質、超低密度リポ蛋白質を分離溶出させ、
    分離したリポ蛋白質を測定する、リポ蛋白質分析方法であって、
    超低密度リポ蛋白質画分中に高吸着画分のピーク頂点が認められれば、脂質代謝異常患者に由来する試料であると分析する、前記分析方法。
  6. 2価の陽イオンを吸着出来る交換基を有した不溶性担体を充填したカラムを用いてリポ蛋白質を分析する方法において、
    前記カラムを少なくとも2価の陽イオン濃度が100mM以下である溶液で平衡化し、
    カラム体積に対して10%以下の試料を導入し、
    リポ蛋白質を前記2価の陽イオン存在下でカラムに吸着させ、
    1種類以上の溶液で、少なくとも高密度リポ蛋白質、低密度リポ蛋白質、超低密度リポ蛋白質を分離溶出させ、
    分離したリポ蛋白質を測定する、リポ蛋白質分析方法であって、
    超低密度リポ蛋白質画分のピーク頂点より早く溶出する画分の面積と、
    ピーク頂点より遅く溶出する画分の面積との差又は比を測定し、
    健常人試料の該差又は該比と比べて大きい場合、脂質代謝異常患者に由来する試料であると分析する、前記分析方法。
  7. 2価の陽イオンを吸着出来る交換基を有した不溶性担体を充填したカラムを用いてリポ蛋白質を分析する方法において、
    前記カラムを少なくとも2価の陽イオン濃度が100mM以下である溶液で平衡化し、
    カラム体積に対して10%以下の試料を導入し、
    リポ蛋白質を前記2価の陽イオン存在下でカラムに吸着させ、
    1種類以上の溶液で、少なくとも高密度リポ蛋白質、低密度リポ蛋白質、超低密度リポ蛋白質を分離溶出させ、
    分離したリポ蛋白質を測定する、リポ蛋白質分析方法であって、
    超低密度リポ蛋白質成分の溶出する時間の間に位置する一個所以上の時間点で超低密度リポ蛋白質画分のピークを区切り、区切られた二個以上の画分の面積を測定し、
    高吸着画分を多く含む画分の面積値又は高吸着画分を多く含む画分の面積とそれ以外の画分との面積比が健常人試料よりも大きい場合、脂質代謝異常患者に由来する試料であると分析する、前記分析方法。
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