JP5522636B2 - イオン交換クロマトグラフィーによる血液中のカイロミクロン(cm)の分離方法、および、メタボリックシンドロームの識別方法 - Google Patents
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Description
CMの分離分析方法としては、超遠心分離装置(非特許文献2)、電気泳動(非特許文献3)、ゲルろ過クロマトグラフィー(非特許文献4)による方法があるが、超遠心分離装置は高価な装置であり汎用性に乏しく、更にCMの比重は水より軽いため、浮上時間により分離しなければならないため高度な手技を必要とする。電気泳動による分離の場合、CMは電荷をほとんど有しないため、原点に位置し、血液中の薬物などの不純物の影響を受けやすく分析精度が低いという問題点がある。ゲルろ過クロマトグラフィーの場合において、CMはゲルの細孔径に入らずにボイドの位置に溶出する。ゲルの細孔径は、製造ごとにある程度差が生じてしまうことは避けられず、このゲルの細孔径の差がCMの分離に影響を及ぼすために、測定精度が低下するという問題点がある。
1. ウエスト周囲径が男性85cm以上、女性90cm以上であること。
2. ウエスト周囲径に加えて、次の3項目のうち、2項目以上が当てはまる。
(i)脂質:中性脂肪130mg/dL以上かつ/または、HDLコレステロール40mg/dL未満
(ii)血圧:収縮期血圧130mmHg以上かつ/または、拡張期血圧85mmHg以上
(iii)血糖値:空腹時血糖値110mg/dL以上
また、CM、または、VLDLの中に含まれるコレステロール値を測定することにより、簡便に行えるメタボリックシンドロームの判別法を提供することにある。
すなわち、血液中のCMを分離する方法として、陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて、血液中の微量に存在するCMとLp(a)を吸着させるための溶離液(溶離液1)、CMを溶出するための溶離液(溶離液2)の塩濃度の異なる溶離液を1、2の順に陰イオン交換カラムに流すことにより、当該陰イオン交換カラムからCMを分離し、溶出する方法で、溶離液1は塩濃度が180mmol/Lから200mmol/Lであり、溶離液2の塩濃度が210mmol/Lから280mmol/Lの2つの塩濃度の異なる溶離液を用いることにより、使用する陰イオン交換カラムによって血液試料中に含まれるCMを分離溶出する方法を発明した。
また、非特許文献5の方法と本発明を用いることで、血液試料中に存在するHDL、LDL、IDL、VLDL、CM、Lp(a)の6つのリポ蛋白を順に分離し溶出する方法を確立し、下記の2つのグループの血液試料を測定したところ、メタボリックシンドロームの識別のために血液中のCMが含むコレステロール値と血液中のVLDLが含むコレステロール値が優れていることを見出した。
1. メタボリックシンドローム患者(8名)
2. 健常者(14名)
上述したように、血液中に微量に存在するCMは動脈硬化性疾患と密接な関連性があり、これらのリポ蛋白の分離・分析方法は、動脈硬化性疾患の研究を進める上で、重要である。また、メタボリックシンドロームは、動脈硬化性疾患の高いリスクとなる重要な疾患であり、CMまたはVLDLの中に含まれるコレステロール値を指標とするメタボリックシンドロームの簡便な判別法の提供は、メタボリックシンドロームあるいは動脈硬化性疾患の進展を研究する上で重要である。
分離した各リポ蛋白のフラクション(CMとLp(a)以外のリポ蛋白のフラクション、CMのフラクション、Lp(a)のフラクション)の検出方法としては、それぞれのフラクションを試験管に取得して、それぞれの中のリポ蛋白を構成する成分を測定することが出来る。リポ蛋白を構成する成分とその測定法の例としては、コレステロール;コレステロールオキシダーゼを用いた呈色試薬で測定する方法、中性脂肪;リポプロテインリパーゼを用いた呈色試薬で測定する方法、リン脂質;ホスホリパーゼDを用いた呈色試薬で測定する方法、ビタミンE;逆相クロマトグラフィーによる方法、アポリポ蛋白(A−1やBやEなど);抗体を用いたラテックス凝集法などがあげられる。また、コレステロールオキシダーゼを用いた呈色試薬で測定する方法、中性脂肪;リポプロテインリパーゼを用いた呈色試薬で測定する方法、については、非特許文献4、5、6に示されているように、フラクションを取らずにカラムからの溶出液に配管中で一定流速にて酵素試薬を混合し反応させ検出することにより良好に各リポ蛋白を検出、定量することが可能である。
図1に装置の形態を示す。実施例に用いた装置構成を下記に示す。
実施例に用いた装置は図1に示す。溶離液A(1)は50mM Tris−HCl pH7.5、溶離液B(2)は50mM Tris−HCl+500mM 過塩素酸ナトリウム pH7.5である。溶離液AとBを流すポンプ(4)は2台のDP−8020(東ソー(株)製)を用いた。DP−8020ポンプは、2台を制御することにより、2つの溶離液のグラディエントを行えるポンプである。溶離液AとBを混合するミキサー(5)はスタティックミキサーC(東ソー(株)製)を用いた。オートサンプラー(6)はAS−8020(東ソー(株)製)を、カラムオーブン(9)はCO−8021(東ソー(株)製)を用いた。カラム(8)はDEAE−NPRカラムサイズ3.0mmI.D.x25mm(東ソー(株)製)を、フィルター(7)はHLC−723GHb3型用のカラムフィルターSタイプ(東ソー(株)製)を用いた。コレステロール反応液(10)はTCHO−CL(セロテック社製)を、ポンプ直前にエアートラップ(11)を設置した。コレステロール反応液のためのポンプ(12)はDP−8020(東ソー(株)製)を用いた。溶離液AとBおよびコレステロール反応液については、脱気装置(3)を設置した。コレステロール反応液(コレステロール反応液は、主要な成分としてコレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、N−(2−ハイドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリンナトリウム、4―アミノアンチピリンが含まれる。)のラインに、抵抗管(13)0.1mmI.D.x2mを2つ直列につないで設置した。反応コイル(14)は、0.25mmI.D.x30mとした。検出器はUV−8020(東ソー(株)製)(15)を用いた。溶離液はAとBをあわせて0.5mL/minの流速とし、コレステロール反応液の流速は0.20mL/minとした。カラムオーブンの温度は25℃とし、反応コイルは37℃に保温した。検出器は600nmで検出した。使用したDEAE−NPRカラムは、粒子系が2.5μmで交換基容量が0.23meq/mL−gelのポリマー系非多孔質ゲルを充填したものである。測定の形態としては、まず、血清などのリポ蛋白を含んだ試料をオートサンプラー(6)から注入する。注入する配管はポンプ(4)とカラム(8)の間に設置されており、ポンプ(4)から溶離液を流すことにより試料はカラムに導入される。カラム(8)にポンプ(4)により比較的塩濃度の低い溶離液(溶離液Bの割合が低い)を予め流すことにより、カラム(8)を平衡化しておいて、試料中のリポ蛋白をカラムに吸着させる。続いて、溶離液Bの流す割合を溶離液Aに比べ高めてカラムに流す溶離液の塩濃度を高めることにより、吸着力の弱いリポ蛋白から順にカラム出口から溶出してくる。この溶出液とコレステロール反応液(10)を混合し、反応コイル(14)に導いて反応させる。反応液はコレステロールの量に依存して発色する試薬となっているので、その色を検出器(15)で測定することでコレステロール量に依存するクロマトグラムを取得し、そのピーク面積により、各リポ蛋白のコレステロール含量を算出するものである。
実施例1と同じ装置を用い、CMとLp(a)と同時にHDL、LDL、IDL、VLDLを分離分析する測定法の検討を行った。
溶離液の溶出パターンは、0.0分から3.5分はBの組成を20.0%に固定、3.5分から8.5分はBの組成を24.0%に固定、8.5分から11.0分はBの組成を27.0%に固定、11.0分から14.5分はBの組成を32.0%に固定、14.5分から17.5分はBの組成を45.0%に固定、17.5分から18.5分はBの組成を45.0%から100.0%にリニアグラディエント、18.5分から21.5分はBの組成を100.0%に固定、21.5分から22.5分はBの組成を100.0%から20.0%にリニアグラディエント、22.5分から31.0分はBの組成を100.0%に固定とした。なお、1検体の測定時間は31分とした。
実施例2の分析条件を用いて、メタボリックシンドローム8例(Metabolic)、健常人14例について、種々の項目を比較した(表4)。なお、用いた症例はすべて男性である。有為差検定には、Mann−Whitney法を用いた。一般的にメタボリックシンドロームの判定に有用であると言われているアディポネクチン(非特許文献7)については、測定したところ推測通り、健常人に比べメタボリックシンドローム群で低値であり、有為差が認められた(表4、図6)。続いて、本発明により得られた測定値であるHDL、LDL、IDL、VLDL、CM、Lp(a)の6つのリポ蛋白に含まれるコレステロール値を比較した。HDLについては、メタボリックシンドロームの診断基準にも含まれている項目であるので、当然有為差は認められた(表4、図7)。LDLとIDLについては、健常人とメタボリックシンドロームにおいて有為差は認められなかった(表4、図8、9)。VLDLとCMについては、健常人とメタボリックシンドロームにおいて有為差が認められ、メタボリックシンドロームを判別するに能力の高い指標になることが確認された(表4、図10、11)。VLDLとCMについて、健常人とメタボリックシンドロームを有為差検定したときのU値は、VLDLで17.5、CMで8.5となり、特にCMでその有為差は高かった。なお、アディポネクチンについて有為差検定を行ったときのU値は、8.0でありCMのU値(8.5)と同等であることから、アディポネクチンとCMコレステロール値のメタボリックシンドロームの判別能力は同等であると言える。このような、判別を行う場合には、通常、健常人を複数測定し、それらの値の平均値+2倍の標準偏差の値を閾値として、対象者を判別する。本技術の場合には、表4の結果から、VLDLコレステロールの場合、その値が健常人の平均値+2倍の標準偏差16.3mg/dLより高いと、その対象者がメタボリックシンドロームであると判定でき、また、CMコレステロールの場合、その値が健常人の平均値+2倍の標準偏差2.4mg/dLより高いと、その対象者がメタボリックシンドロームであると判定できる。表4のメタボリックシンドローム8名のデータにこの閾値を当てはめると、8名中の6名がVLDLコレステロールの場合でもCMコレステロールの場合でも判別できることがわかる(表5中のメタボリックシンドローム検体番号3番と4番は判別できてない)。この結果を考えても、図10および図11のそれぞれの値の分布を見ても、VLDLコレステロール値、および、CMコレステロール値はメタボリックシンドロームの判別において優れた性能を持つことは明らかである。Lp(a)については、健常人とメタボリックシンドロームにおいて有為差が認められメタボロックシンドロームで高値を示しているものの、個々のデータを見ると、3名の健常人で3mg/dLより高く、メタボリックシンドロームを判別する指標として望ましくないことが確認された(表4、図12)。
2 溶離液B
3 脱気装置
4 ポンプ
5 ミキサー
6 オートサンプラー
7 フィルター
8 カラム
9 カラムオーブン
10 コレステロール反応液
11 エアートラップ
12 コレステロール反応液のためのポンプ
13 抵抗管
14 反応コイル
15 検出器
Claims (2)
- 血液中のカイロミクロン(CM)が含むコレステロール値を測定し、その値が2.4mg/dLよりも高いときにメタボリックシンドロームであると識別する方法。
- 血液中のVLDL(超低比重リポ蛋白)が含むコレステロール値を測定し、その値が16.3mg/dLよりも高いときにメタボリックシンドロームであると識別する方法。
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