JP2008517931A - 脂質関連疾患および障害を処置するための、PGC−1βを調節するための方法および組成物 - Google Patents

脂質関連疾患および障害を処置するための、PGC−1βを調節するための方法および組成物 Download PDF

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Abstract

本発明は、PGC−1βの発現または活性を調節することによって、脂質関連疾患および障害(例えば、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、心臓血管疾患、肥満症およびII型糖尿病)を処置するための方法ならびに脂質生合成、脂質輸送、血漿トリグリセリドレベルおよび/または血漿コレステロールレベルを調節するための方法を提供する。脂質関連疾患または障害を処置または予防することができる化合物を同定するための方法もまた記載される。

Description

(政府の権利)
本発明は、米国国立衛生研究所の助成金番号5R01DK54477から授与された助成金によって少なくとも一部において支援を受けた。米国政府が、本発明における一定の権利を有し得る。
(発明の背景)
肥満症および2型糖尿病は、先進国における罹患率および死亡率の主な原因である心臓血管疾患を発症する高い危険性に関連する(Flier(2004)Cell 116,337−350;Reaven et al.,(2004)Recent Prog.Horm.Res.59,207−223;Zimmet et al.,(2001)Nature 414,782−787)。アテローム性動脈硬化症を発症する素因は、高トリグリセリド血症ならびに高濃度の低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールおよび低レベルの高密度リポタンパク質(HDL)コレステロールによって特徴付けられる、インスリン抵抗性状態における病原性異脂肪血症の結果であるらしい(Betteridge(1999)Eur.J.Clin.Invest 29 Suppl.2,12−16;Goldberg(2001)J.Clin.Endocrinol.Metab.86,965−971)。遺伝学的および疫学的研究により、血漿LDLコレステロールが心臓血管疾患を発症する危険性と正の相関をするという抗しがたい証拠が提供されている(Breslow(2000)Annu.Rev.Genet.34,233−254;Sacks and Katan(2002)Am.J.Med.113 Suppl.9B,13S−24S)。さらに、高血漿トリグリセリドレベルは、冠動脈心疾患に対する独立した危険因子であることが示されている。遺伝因子、環境の影響および重要にはその2つの相互作用すべてが心臓血管疾患の進行に寄与するが、飽和脂肪およびトランス脂肪の食事摂取が著しく血漿LDLコレステロールを増加させ、HDLコレステロールを減少させると現在では理解されている(Sacks and Katan(2002)Am.J.Med.113 Suppl.9B,13S−24S;Spady et al.(1993)Annu.Rev.Nutr.13,355−381)。実際は、飽和脂肪およびトランス脂肪の食事摂取は、コレステロール自体の摂取より大きな高脂血症の効果を有する。飽和脂肪およびトランス脂肪の食事摂取とアテローム生成的な脂質の特性とが強く関連しているにもかかわらず、これらの脂質から高コレステロールレベルへ誘導する代謝経路および基本メカニズムはこれまで不明である。
肝臓は、全身性脂質ホメオスタシスの維持において中心的役割を果たす。肝細胞は、アテローム生成的なLDL粒子に対する前駆体である、超低密度リポタンパク質(VLDL)の合成および分泌に関与する。VLDLの役割は、末梢組織による貯蔵および利用に対する脂質、主にトリグリセリドを再分布することである。ヒトにおいて、肝臓は、デノボ脂質合成の主要な部位でもある。肝臓の脂質生合成は、主に遺伝子転写レベルで制御される(Girard et al.(1997)Annu.Rev.Nutr.17,325−352;Hellerstein et al.(1996)Annu.Rev.Nutr 16,523−557)。ステロール応答エレメント結合タンパク質(SREBP)ファミリーにおけるいくつかの転写因子は、脂質生成遺伝子の転写活性化の重要な制御因子であることが示されている(Horton et al.(2002)J.Clin.Invest.109,1125−1131)。すべてのSREBPアイソフォームは、小胞体膜において前駆体タンパク質として合成され、そしてタンパク質分解性切断の2工程を経る(Brown and Goldstein(1997)Cell 89,331−340)。これは、N末端の活性型の放出を誘導し、続いて核へ移動し、そして標的遺伝子の発現を刺激する。SREBP1aおよびSREBP1cアイソフォーム(ADD1としても知られる)は、転写開始部位の別の使用による単一遺伝子に由来し、異なるアミノ末端を有する2つのタンパク質を生じる(Shimomura et al.(1997)J.Clin.Invest.99,838−845;Tontonoz et al.(1993)Mol.Cell Bio.13,4753−4759);Yokoyama et al.(1993)Cell 75,187−197)。一方、SREBP2は、異なる遺伝子によってコードされる(Hua et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90,11603−11607)。SREBPの活性は、いくつかのメカニズムによって制御される。例えば、SREBP1c mRNAは、インスリンによって脂肪細胞と肝臓との両方において高い誘導性であり(Kim et al.(1998)J.Clin.Invest.101,1−9;Shimomura et al.(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96,13656−13661)、他方では、細胞におけるSREBP2のタンパク質分解性プロセシングは、ステロール欠乏に応答して刺激される(Brown and Goldstein(1997)Cell 89,331−340;Sakai et al.(1996)Cell 85,1037−1046)。細胞培養またはマウス肝臓における研究によって、SREBP1cおよびSREBP2は、脂肪酸およびコレステロール合成にそれぞれ関与する遺伝子の発現を優先的に制御することが明らかにされている(Horton et al.(1998)J.Clin.Invest.101,2331−2339;Kim and Spiegelman(1996)Genes Dev.10,1096−1107)。対照的に、SREBP1aは、両方の経路を活性化するらしい(Horton et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100,12027−12032;Pai et al.(1998)J.Biol.Chem.273,26138−26148)。特に、3つすべてのSREBPは、トリグリセリドおよびコレステロールが大量に蓄積しているトランスジェニックマウスにおける重度の脂肪肝表現型を誘導し、トランスジェニック肝細胞における脂質合成と分泌との不均衡を示唆する(Horton et al.(1998)J.Clin.Invest.101,2331−2339;Shimano et al.(1996)J.Clin.Invest.98,1575−1584;Shimano et al.(1997)J.Clin.Invest.99,846−854)。さらに、健常な動物およびヒトにおける肝臓の脂質生合成は、肝臓の脂肪変性を発症させないリポタンパク質分泌と相関する。
転写因子は、コアクチベータータンパク質のドッキングを介して機能する。肝臓の脂質生合成においてSREBPとともに機能するコアクチベーターは、大部分は調査されていない。最近の研究によって、コアクチベーターのPGC−1ファミリーが肝臓代謝において重要な役割を果たすことが示されている(Puigserver and Spiegelman(2003)Endocr.Rev.24,78−90)。
PGC−1βは、その生物学的活性がこれまで未知であるPGC−1αに強く関連している最近同定された転写コアクチベーターである(非特許文献1;非特許文献2)。PGC−1βは、PGC−1βと類似の組織分布を共有しているが、これら2つのコアクチベーターは、発生の間および栄養状態の変化に応答して、異なって制御されるらしい(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4)。PGC−1αのように、PGC−1βは、分化した筋管および肝細胞においてミトコンドリアバイオジェネシスおよび細胞性呼吸を強く活性化する(非特許文献5;非特許文献6)。しかしながら、PGC−1βは、糖新生遺伝子の発現に対して明らかな効果を有さず、これはおそらく肝臓の糖新生の重要な制御因子であるHNF4βおよびFOXO1を同時活性化する能力を欠いていることを反映している。
Kressler et al.J.Biol.Chem.(2002)277,13918−13925 Lin et al.J.Biol.Chem.(2002)277,1645−1648 Kamei et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2003)100,12378−12383 Lin et al.J.Biol.Chem.(2003)278,30843−30848 Lin et al.J.Biol.Chem.(2003)278,30843−30848 St−Pierre et al.J.Biol.Chem.(2003)278,26597−26603
(発明の概要)
本発明は、PGC−1βが、脂質生合成および脂質輸送の制御に関わり、従ってトリグリセリドおよびコレステロール(例えば、VLDLコレステロールおよびLDLコレステロール)の生合成および輸送を例えば肝臓において制御するという発見に少なくとも一部は基づく。本発明はまた、PGC−1βが、コレステロールおよび不飽和脂肪酸ではなく飽和脂肪およびトランス脂肪酸によって、肝臓および単離された肝細胞において誘導されるという発見に基づく。
従って、1つの局面において、本発明は、被験体(例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシまたはヒツジ)において、PGC−1β調節因子(modulator)を投与することによって脂質関連疾患または障害を処置および/または予防するための方法を提供する。1つの実施形態において、脂質関連疾患または障害は、高レベルのVLDLコレステロール、LDLコレステロールまたはトリグリセリドによって示される。脂質関連疾患または障害の例としては、例えば、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、心臓血管疾患、肥満症およびII型糖尿病が挙げられる。
1つの実施形態において、本発明の方法において使用されるPGC−1β調節因子は、PGC−1βを調節することができ、例えば、PGC−1βの発現または活性を減少させることができる。別の実施形態において、PGC−1β調節因子は、PGC−1βポリペプチド活性を調節することができる。なおも別の実施形態において、調節因子は、配列番号2のアミノ酸配列またはそのフラグメントを含むPGC−1βポリペプチドである。さらに別の実施形態において、調節因子は、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも60、65、70、75、80、85、90または95%同一なアミノ酸配列を含むPGC−1βポリペプチドを含む。
別の実施形態において、PGC−1β調節因子は、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドの天然に存在する単離された対立遺伝子改変体である。ここで、そのポリペプチドは、配列番号1からなる核酸分子の相補体に、0.2×SSC、0.1%SDS、65℃での1回以上洗浄の前に6×SSC、45℃でハイブリダイズする核酸分子にコードされる。
なおも別の実施形態において、PGC−1β調節因子は、PGC−1β核酸発現を調節することができる。例えば、PGC−1β調節因子は、PGC−1β核酸分子(例えば、配列番号1またはそのフラグメントのヌクレオチド配列を含むPGC−1β核酸分子)を含む。別の実施形態において、PGC−1β調節因子は、アンチセンスPGC−1β核酸分子、リボザイムまたはPGC−1βを標的化するRNA干渉物質(例えば、siRNA分子)である。
さらに別の実施形態において、PGC−1β調節因子は、SREBP転写因子の発現または活性を調節することができる。なおもさらなる実施形態において、PGC−1β調節因子は、脂質生成遺伝子(例えば、FAS、SCD−1、HMG−CoAレダクターゼ、DGATおよびGPAT)の発現または活性を調節することができる。なおもさらなる実施形態において、PGC−1β調節因子は、肝臓Xレセプター(LXR)標的遺伝子、例えば、LXRα標的遺伝子(例えば、PLTP、ABCA1およびABCG1)の発現または活性を調節することができる。PGC−1β調節因子としては、低分子、核酸分子、RNA干渉物質(例えば、siRNA)、抗体、ポリペプチドおよびペプチドまたはペプチド模倣物が挙げられるが、これらに限定されない。
別の局面において、本発明は、細胞(例えば、肝細胞)とPGC−1β調節因子とを接触させることによって細胞内の脂質生合成を調節する方法を提供し、脂質生合成が調節される。好ましい実施形態において、脂質生合成は、SREBP転写因子(例えば、SREBP1a、SREBP1cまたはSREBP2)によって調節される。別の実施形態において、脂質は、トリグリセリドまたはコレステロール(例えば、VLDLまたはLDLコレステロール)である。
なおも別の局面において、本発明は、細胞とPGC−1β調節因子とを接触させることによって、細胞からの脂質輸送を調節するための方法を提供し、脂質輸送が調節される。1つの実施形態において、脂質輸送は、LXR(例えば、LXRα)によって調節される。
さらに別の局面において、本発明は、細胞とPGC−1β調節因子とを接触させることによって、脂質生合成および細胞(例えば、肝細胞)からの脂質輸送を調節するための方法を提供し、脂質生合成および脂質輸送が調節される。
なおもさらなる局面において、本発明は、PGC−1β調節因子を被験体(例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシまたはヒツジ)に投与することによって、被験体における脂質生合成および脂質輸送の少なくとも1つを調節する方法を提供する。1つの実施形態において、PGC−1β調節因子は、PGC−1βがSREBP転写因子(例えば、SERBPlα、SREBP1cおよびSREBP2)に結合する能力を調節することができる。別の実施形態において、PGC−1β調節因子は、PGC−1βがLXRαに結合する能力を調節することができる。なおも別の実施形態において、脂質は、トリグリセリドまたはコレステロール(例えば、VLDLまたはLDLコレステロール)である。なおもさらなる実施形態において、脂質生合成および/または脂質輸送は、肝臓内である。
別の局面において、本発明は、その被験体にPGC−1β調節因子を投与することによって被験体における血漿トリグリセリドレベルおよび血漿コレステロールレベル(例えば、VLDLまたはLDLレベル)の少なくとも1つを調節する方法を提供する。
なおも別の局面において、本発明は、脂質関連疾患または障害を処置または予防することができる化合物のPGC−1β核酸発現またはPGC−1βポリペプチド活性を調節する能力をアッセイする工程を含む、その化合物を同定する方法を提供する。
なおもさらなる局面において、本発明は、脂質関連疾患または障害を処置または予防することができる化合物のPGC−1β核酸発現またはPGC−1βポリペプチド活性を調節する能力をアッセイすることによって、その化合物を同定する方法を提供する。1つの実施形態において、PGC−1β調節化合物は、脂質生成遺伝子(例えば、FAS、SCD−1、HMG−CoAレダクターゼ、DGATおよびGPAT)の発現または活性の調節を検出することによって決定される。別の実施形態において、PGC−1β調節化合物は、SREBP転写因子(例えば、SREBP1a、SREBP1cおよびSREBP2)の発現または活性の調節を検出することによって決定される。なおも別の実施形態において、PGC−1β調節化合物は、LXR標的遺伝子(例えば、PLTP、ABCA1およびABCG1)の発現または活性の調節を検出することによって決定される。なおもさらなる実施形態において、PGC−1β調節化合物は、コレステロールの血漿レベルおよびトリグリセリドの血漿レベルの少なくとも1つの調節を検出することによって決定される。なおもさらなる実施形態において、PGC−1β調節化合物は、コレステロールホメオスタシスの調節を検出することによって決定される。
別の局面において、本発明は、被験体において、トリグリセリドレベルおよび血漿コレステロールレベルを調節することができる化合物のPGC−1β核酸発現またはPGC−1βポリペプチド活性を調節する能力をアッセイすることによって、その化合物を同定する方法を提供する。
なおも別の局面において、本発明は、脂質生合成および脂質輸送の少なくとも1つを調節することができる化合物のPGC−1βの発現または活性を調節する能力をアッセイすることによって、その化合物を同定する方法を提供する。1つの実施形態において、脂質は、トリグリセリドおよびコレステロール(例えば、VLDLまたはLDLコレステロール)の少なくとも1つである。なおもさらなる実施形態において、脂質生合成および/または脂質輸送は、肝臓内である。
なおもさらなる局面において、本発明は、被験体(例えば、ヒト)において脂質関連疾患または障害を阻害するための試験化合物の効能を評価する方法を提供し、この方法は、被験体から得られ、試験化合物の存在下で維持される第1サンプルにおけるPGC−1βの発現または活性のレベルと、被験体から得られ、試験化合物の非存在下で維持される第2サンプルにおけるPGC−1βの発現または活性のレベルとを比較することによって実施される。
別の局面において、本発明は、被験体において脂質関連疾患または障害を阻害するための治療の効能を評価する方法を提供し、この方法は、被験体への治療の少なくとも一部を提供する前の被験体から得られた第1サンプルにおけるPGC−1βの発現または活性のレベルと、治療の一部の提供後の被験体から得られた第2サンプルにおけるPGC−1βの発現または活性のレベルを比較することによって実施される。
なおも別の局面において、本発明は、被験体の細胞または組織(例えば、肝臓細胞)におけるPGC−1βの発現または活性を検出することによって、被験体が脂質関連疾患もしくは障害に罹患しているか否か、または脂質関連疾患もしくは障害を発症する危険性があるか否かを評価するための方法を提供する。
さらに別の局面において、本発明は、細胞(例えば、肝細胞)と少なくとも1つの食事成分を含有するサンプルとを接触させ、そしてPGC−1βの発現または活性を計測することによって食事成分を分類する方法を提供する。1つの実施形態において、PGC−1βの発現または活性の増加は、アテローム発生の可能性が高い脂肪酸(例えば、トランス脂肪または飽和脂肪)の存在を示す。
なおもさらなる局面において、本発明は、細胞(例えば、肝細胞)とサンプルとを接触させて、PGC−1βの発現または活性を計測し、これによってサンプルにおけるアテローム生成的な脂肪酸の存在を検出する、サンプルにおけるアテローム生成的な脂肪酸の存在を検出する方法を提供する。1つの実施形態において、PGC−1βの発現または活性の増加は、サンプルにおけるアテローム生成的な脂肪酸(例えば、トランス脂肪または飽和脂肪)を示す。
(発明の詳細な説明)
本発明は、PGC−1βが、脂質生合成および脂質輸送の制御に関わり、そして例えば肝臓におけるトリグリセリドおよびコレステロール(例えば、VLDLコレステロールおよびLDLコレステロール)の生合成および輸送を制御するという発見に少なくとも一部は基づく。PGC−1βは、脂質生合成を実施するためにSREBP転写因子(例えば、SREBP1a、SREBP1cおよびSREBP2)を同時活性化し、そして脂質輸送および分泌を実施するためにLXRαを同時活性化する。PGC−1βの高い発現または活性により、循環するトリグリセリドおよびコレステロールが高レベルになり、そして被験体における肝臓の脂肪変性が減少する。従って、PGC−1βの誘導は、飽和脂肪およびトランス脂肪の食事摂取と循環コレステロールの増加とを結びつける重要な工程である。その結果、PGC−1βの調節(例えば、PGC−1βの発現もしくは活性および/またはPGC−1βによって制御される経路の調節)は、遺伝的または薬理学的方法を介して、脂質生合成、脂質輸送、血漿トリグリセリドレベルおよび血漿コレステロールレベルを調節し、それによって被験体における脂質関連疾患または障害(例えば、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、心臓血管疾患、肥満症およびII型糖尿病)を処置および/または予防する。
従って、1つの局面において、本発明は、被験体にPGC−1β調節因子を投与する工程を含む、被験体における脂質関連疾患または障害を処置または予防する方法を提供する。別の局面において、本発明は、PGC−1αの発現または活性を調節する化合物を同定する方法を提供する。この方法は、PGC−1αまたはPGC−1αを発現する細胞と試験化合物とを接触させて、PGC−1αの発現または活性に対する試験化合物の効果を測定し、それによってPGC−1α発現または活性を調節(例えば、増加または減少)する化合物を同定する工程を含む。
本発明はまた、PGC−1βが、肝臓および単離された肝細胞において、飽和脂肪およびトランス脂肪酸によって誘導されるが、コレステロールおよび不飽和脂肪酸によっては誘導されないという発見に基づく。従って、PGC−1βは、被験体における血液脂質プロファイルに対するこれらの成分の効果を予測するために食事成分を同定および分類するために使用され得る。従って、本発明は、細胞(例えば、肝細胞)と食事成分または脂肪酸を含有するサンプルとを接触させて、PGC−1βの発現または活性の調節を計測することによって食事成分およびアテローム生成的な脂肪酸を分類する方法を提供する。別の局面において、本発明は、被験体(例えば、哺乳動物)に食事成分またはアテローム生成的な脂肪酸を投与して、PGC−1βの発現または活性の調節を計測することによって食事成分およびアテローム生成的な脂肪酸を分類する方法を提供する。PGC−1βの発現または活性の増加は、脂肪酸(例えば、トランス脂肪または飽和脂肪)の存在を示し、これは、アテローム発生の可能性が高い。アテローム発生の可能性が高い食事成分は、被験体における脂質生合成、脂質輸送、トリグリセリドレベルおよび/または血漿コレステロールレベルの増加を引き起こし得、また被験体における脂質関連疾患または障害を発症させ得る。PGC−1βの発現または活性の調節を計測する方法は、本明細書中に示される。
(定義)
本明細書中で使用されるとき、用語「PGC−1βの発現または活性の調節因子」は、本明細書中に記載するようにPGC−1β発現または少なくとも1つのPGC−1β活性を調節または制御することができる化合物または物質を含む。PGC−1βの発現または活性の調節因子は、PGC−1βの発現または活性の誘導因子またはPGC−1βの発現または活性の阻害剤であり得る。本明細書中で使用されるとき、「PGC−1β活性の誘導因子またはアゴニスト」は、完全または部分的のいずれかでPGC−1β活性を作動(agonize)、刺激、促進および/または模倣する。「PGC−1β発現の誘導因子またはアゴニスト」は、完全または部分的のいずれかで、直接的または間接的にPGC−1β発現を増加、促進または刺激する。本明細書中で使用されるとき、「PGC−1β活性の阻害剤またはアンタゴニスト」は、完全または部分的のいずれかでPGC−1β活性を拮抗、減少または遮断する。「PGC−1β発現の阻害剤またはアンタゴニスト」は、完全または部分的のいずれかで、直接的または間接的にPGC−1β発現を減少または遮断する。PGC−1β阻害剤の例としては、低分子、アンチセンスPGC−1β核酸分子、リボザイム、siRNA分子および抗PGC−1β抗体が挙げられる。PGC−1β誘導因子の例としては、PGC−1β模倣物(例えば、ペプチド模倣物)、低分子、PGC−1βをコードする核酸分子およびPGC−1βタンパク質またはそれらのフラグメントが挙げられる。
本明細書中で交換可能に使用されるとき、「PGC−1β活性」、「PGC−1βの生物学的活性」または「PGC−1βの機能的活性」とは、標準的な技術に従ってインビトロおよび/またはインビボで測定される、PGC−1βポリペプチドまたは核酸分子によってPGC−1β応答性の分子、細胞または組織に対して発揮される活性のことをいう。例示的な実施形態において、PGC−1β活性は、脂質生成遺伝子(例えば、FAS、SCD−1、HMG−CoAレダクターゼ、DGATおよびGPAT)の発現または活性を調節する能力である。別の実施形態において、PGC−1β活性は、LXR/RXR、LXRαまたはLXRα標的遺伝子(例えば、PLTP、ABCA1およびABCG1)の発現または活性を調節する能力である。なおも別の実施形態において、PGC−1β活性は、SREBP転写因子(例えば、SREBP1a、SREBP1cおよびSREBP2)の発現または活性を調節する能力である。さらに別の実施形態において、PGC−1β活性は、例えば肝臓における脂質生合成および/または脂質輸送を調節する能力である。別の実施形態において、PGC−1β活性は、血漿トリグリセリドレベルおよび/または血漿コレステロールレベルを調節する能力である。なおも別の実施形態において、PGC−1β活性は、被験体における脂質関連疾患または障害を調節する能力である。
本明細書中で使用されるとき、用語「脂質関連疾患または障害」は、脂質代謝の機能不全または欠損によって引き起こされるかまたはそれらに関連する任意の疾患、障害または状態を含み、脂質代謝としては、脂質生合成、脂質輸送、トリグリセリドレベル、血漿レベル、血漿コレステロールレベルまたは任意の脂質特異的な経路もしくは活性の制御誤りもしくは調節が挙げられるが、これらに限定されない。脂質関連疾患または障害としては、肥満症および肥満症関連疾患および障害(例えば、肥満症、耐糖能障害(IGT)、インスリン抵抗性、アテローム性動脈硬化症、アテローム性疾患、心疾患、高血圧症、脳卒中、シンドロームX、インスリン非依存性糖尿病(NIDDMまたはH型糖尿病)およびインスリン依存性糖尿病(IDDMまたはI型糖尿病))が挙げられる。本発明の方法によって処置される糖尿病関連合併症としては、微小血管障害性病変、眼球の病変、網膜症、ニューロパシーおよび腎性病変が挙げられる。心疾患としては、心不全、冠状動脈不全および高血圧が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の化合物によって処置される他の肥満症関連障害は、高脂血症および高尿酸血症が挙げられる。本発明のなおも他の肥満症関連疾患または障害としては、悪液質、るいそう、食欲不振および過食症が挙げられる。
本明細書中で使用されるとき、用語「コレステロールレベル」とは、被験体における血清コレステロールのレベルまたはコレステロール形態(例えば、HDLコレステロール、LDL、コレステロールおよびVLDLコレステロールなど)のレベルのことをいう。
本明細書中で使用されるとき、用語「低密度リポタンパク質」または「LDL」は、当業者の共通の慣習に従って定義される。一般に、LDLとは、超遠心分離によって単離されるとき、d=1.019からd=1.063の密度範囲である脂質−タンパク質複合体のことをいう。
本明細書中で使用されるとき、用語「高密度リポタンパク質」または「HDL」は、当業者の共通の慣習に従って定義される。一般に「HDL」とは、超遠心分離によって単離されるとき、d=1.063からd=1.21の密度範囲である脂質−タンパク質複合体のことをいう。
本明細書中で使用されるとき、用語「食事成分」は、生物(例えば、哺乳動物)によって消費される食物および飲料の任意の構成成分を含む。食事成分としては、例えば、コレステロール、(例えば、LDL、VLDLおよびHDL)、食餌性脂肪、脂肪酸(例えば、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、トランス脂肪酸)を含む脂質、繊維、炭水化物、タンパク質、アミノ酸、ビタミンおよび/またはミネラルが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書中で使用されるとき、用語「処置」は、疾患もしくは障害、疾患もしくは障害の症状または疾患もしくは障害に対する素因を治療、治癒、緩和、軽減、変更、矯正、寛解、改善または作用する目的で、疾患もしくは障害、疾患もしくは障害の症状または疾患もしくは障害に対する素因を有する患者への治療薬の適用もしくは投与または患者から単離された組織または細胞株への治療薬の適用もしくは投与として定義される。治療薬としては、本明細書中に記載される、低分子、ペプチド、ペプチド模倣物、核酸分子、抗体、リボザイム、RNA干渉物質(例えば、siRNA分子)ならびにセンスオリゴヌクレオチドおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書中で使用されるとき、用語「動物または細胞に処置薬を投与する」とは、動物または細胞に処置薬を分配、送達または適用することをいうと意図される。治療薬に関して、用語「投与する」とは、接触または分配、動物の所望の部位への治療薬の送達(非経口経路または経口経路のいずれかによる送達、筋肉内注射、皮下/皮内注射、静脈内注射、頬側投与、鼻腔内または気道経路による経皮的な送達および投与を含む)に適した任意の経路によって動物に治療薬を送達または適用することをいうと意図される。
本明細書中で使用されるとき、用語「トランスジェニック動物」とは、動物の1以上の細胞が導入遺伝子を含む、非ヒト動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)のことをいう。トランスジェニック動物の他の例としては、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ヤギ、ニワトリ、両生類などが挙げられる。導入遺伝子は、トランスジェニック動物が発生する細胞のゲノムに組み込まれ、そして成熟した動物のゲノム中に残存し、それによってトランスジェニック動物の1以上の細胞タイプまたは組織において、コードされる遺伝子産物の発現を指示する外来性DNAである。この導入遺伝子は、直接的または間接的に、その細胞の前駆体への導入(例えば、マイクロインジェクション、トランスフェクションまたは感染(例えば、組換えウイルスを用いた感染によって)によって)細胞に導入される。遺伝的操作との用語は、組換えDNA分子の導入を含む。この分子は、染色体内に組み込まれ得るか、または染色体外で複製するDNAであり得る。
本明細書中で使用されるとき、用語「異所性発現」は、遺伝子発現の非野生型パターンを含む。本明細書中で使用されるとき、発現とは、転写、転写後(例えば、mRNA安定性)、翻訳および翻訳後の段階を含む。異所性発現としては:非野生型レベルでの発現、すなわち、過剰発現または過小発現;遺伝子が発現される時間または段階の点で野生型とは異なる発現のパターン(例えば、所定の発生の期間または段階における高発現または低発現(野生型と比較するとき);所定の細胞タイプまたは組織タイプにおける低発現(野生型と比較するとき)という点で野生型とは異なる発現のパターン;スプライシングの大きさ、アミノ酸配列、移行後の修飾または発現されたポリペプチドの生物学的活性の点で野生型とは異なる発現のパターン;遺伝子の発現に対する環境の刺激または細胞外の刺激の効果の点で野生型とは異なる発現のパターン(例えば、刺激の強さが強いかまたは弱い状態での高発現または低発現のパターン(野生型と比較するとき))が挙げられる。異所性発現は、トランスジェニック核酸からの任意の発現を含む。異所性発現は、例えば、遺伝子またはその制御配列の全部または一部の欠失によって誘導され得る、遺伝子または導入遺伝子の欠失または非発現を含む。
本明細書中で使用されるとき、用語「RNA干渉物質」は、RNA干渉(RNAi)によって標的遺伝子(例えば、本発明のマーカー)の発現を干渉または阻害する任意の物質として定義される。このようなRNA干渉物質としては、標的遺伝子(例えば、本発明のマーカー)に相同であるRNA分子、またはそれらのフラグメント、RNA干渉(RNAi)によって標的遺伝子の発現を干渉または阻害する、短鎖干渉RNA(short interfering RNA)(siRNA)および低分子を含む核酸分子が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書中で使用されるとき、用語「RNA干渉(RNAi)」は、進化的に保存されたプロセスであり、それによって標的遺伝子と同一またはそれと高度に類似する配列のRNAの発現または誘導により、標的化された遺伝子から転写されたメッセンジャーRNA(mRNA)の配列特異的な分解または特異的な転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)が起き(Coburn,G. and Cullen,B.(2002)J.of Virology 76(18):9225を参照のこと)、それによって標的遺伝子の発現を阻害する。1つの実施形態において、RNAは、二本鎖RNA(dsRNA)である。このプロセスは、植物細胞、無脊椎動物細胞および哺乳動物細胞において説明されている。本来は、RNAiは、長鎖dsRNAがsiRNAと呼ばれる二本鎖フラグメントへの連続移動的な切断を促進するdsRNA特異的エンドヌクレアーゼDicerによって開始される。siRNAは、標的mRNAを認識して切断するタンパク質複合体に組み込まれる。RNAiはまた、標的遺伝子の発現を阻害またはサイレンシングするために、核酸分子(例えば、合成siRNAまたはRNA干渉物質)を導入することによって開始され得る。本明細書中で使用されるとき、「標的遺伝子発現の阻害」または「マーカー遺伝子発現の阻害」は、発現もしくはタンパク質活性または標的遺伝子(例えば、本発明のマーカー遺伝子)もしくは標的遺伝子によってコードされるタンパク質(例えば、本発明のマーカータンパク質)のレベルの任意の低下を含む。標的遺伝子の発現またはRNA干渉物質によって標的化されていない標的遺伝子によってコードされるタンパク質の活性もしくはレベルと比較するとき、この低下は、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%以上であり得る。
本明細書中で使用されるとき、本明細書中で「低分子干渉RNA(small interfering RNA)」とも呼ばれる用語「短鎖干渉RNA」(siRNA)は、標的遺伝子の発現を(例えば、RNAiによって)阻害するように機能する物質として定義される。siRNAは、化学的に合成されてもよく、インビトロ転写によって生成されてもよく、または宿主細胞内で生成されてもよい。1つの実施形態において、siRNAは、約15〜約40ヌクレオチド長、好ましくは約15〜約28ヌクレオチド長、より好ましくは約19〜約25ヌクレオチド長およびより好ましくは約19、20、21または22ヌクレオチド長の二本鎖RNA(dsRNA)分子であり、約0、1、2、3、4または5ヌクレオチド長を有する各鎖において3’および/または5’突出を有し得る。突出の長さは、2本の鎖の間で独立している。すなわち、一方の鎖における突出の長さは、第2の鎖の突出の長さに左右されない。好ましくは、siRNAは、標的メッセンジャーRNA(mRNA)の分解または特異的な転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)を介してRNA干渉を促進することができる。
別の実施形態において、siRNAは、低分子ヘアピン(ステムループとも呼ばれる)RNA(shRNA)である。1つの実施形態において、これらのshRNAは、5〜9ヌクレオチドループに続く、短い(例えば、19〜25ヌクレオチド)アンチセンス鎖および類似のセンス鎖から構成される。あるいは、センス鎖は、ヌクレオチドループ構造より先にあり得、アンチセンス鎖がそれに続き得る。これらのshRNAは、プラスミド、レトロウイルスおよびレンチウイルス内に含まれ得、そして例えば、pol III U6プロモーターまたは別のプロモーター(例えば、Stewart、et al.(2003)RNA Apr;9(4):493−501を参照のこと。これは本明細書中に参考として援用される)から発現され得る。
本明細書中で使用されるとき、用語「構成的」プロモーターは、遺伝子産物をコードするか、または特定するポリヌクレオチドに作動可能に連結されるとき、細胞のほとんどまたはすべての生理学的条件下で生体のヒト細胞内で遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列である。
本明細書中で使用されるとき、用語「誘導性」プロモーターは、遺伝子産物をコードするか、または特定するポリヌクレオチドに作動可能に連結されるとき、実質的にプロモーターに相当する誘導因子が細胞内に存在するときだけ生体のヒト細胞内で遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列である。
本明細書中で使用されるとき、用語「組織特異的」プロモーターは、遺伝子産物をコードするか、または特定するポリヌクレオチドに作動可能に連結されるとき、実質的に細胞がプロモーターに対応する組織タイプの細胞である場合のみ、生体のヒト細胞内で遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列である。
本発明の様々な局面は、以下の小区分にさらに詳細に記載される:
(I.スクリーニングアッセイ:)
本発明は、例えば、PGC−1β発現またはPGC−1β活性に対する刺激または阻害の効果を有するか、または例えば、PGC−1β基質の発現または活性に対する刺激または阻害の効果を有する調節因子、すなわち、PGC−1βタンパク質に結合する、候補化合物もしくは試験化合物または試験物質(例えば、ペプチド、ペプチド模倣物、低分子(有機もしくは無機)または他の薬剤)を同定するための(本明細書中で「スクリーニングアッセイ」ともいわれる)方法を提供する。本明細書中に記載されるアッセイを使用して同定される化合物は、PGC−1βの発現または活性を調節する(例えば、PGC−1βの発現または活性を低下させる)のに有用であり得る。従って、これらの化合物は、脂質関連疾患または障害を処置または予防するのに有用であり得る。
これらのアッセイは、PGC−1βタンパク質に結合するか、もしくは相互作用する化合物またはPGC−1βタンパク質と相互作用するか、もしくは調節する他の細胞内または細胞外タンパク質に結合するか、もしくは相互作用する化合物を同定するために設計される。このような化合物としては、ペプチド、抗体、核酸分子、siRNA分子または小さい有機化合物もしくは無機化合物が挙げられ得るが、これらに限定されない。このような化合物は、他の細胞タンパク質も含み得る。
本明細書中に記載されるようなアッセイを介して同定される化合物は、例えば、(例えば、PGC−1βの発現または活性の減少を引き起こすことによって)PGC−1βを調節するのに有用であり得る。それらの活動としては、例えば、脂質輸送の調節、脂質生合成の調節、血漿トリグリセリドレベルの調節および血漿コレステロールレベルの調節が挙げられる。従って、これらの化合物は、脂質関連疾患または障害を処置または予防するのに有用であり得る。それによって低いPGC−1β活性または発現が所望される場合、PGC−1βタンパク質と相互作用する化合物は、PGC−1βタンパク質の発現または活性を阻害または抑制する化合物を含み得る。このような化合物は、PGC−1βタンパク質活性のレベルの効果的な減少を引き起こし得るので、脂質関連疾患または障害を処置または予防する。例えば、PGC−1βの発現または活性を減少させる投与量または時間の長さで投与される部分的なアンタゴニストまたはアンタゴニストは、脂質輸送および/または脂質生合成を低下させるように作用し得、これによって被験体における血漿トリグリセリドレベルおよび/または血漿コレステロールレベルが低下する。あるいは、それによって高いPGC−1β活性または発現が、例えば、肥満症関連疾患または障害(例えば、悪液質、るいそう、食欲不振または過食症)を処置または予防することが所望される。PGC−1βタンパク質と相互作用する化合物は、PGC−1βタンパク質の発現または活性を強調するかまたは増幅する化合物を含み得る。このような化合物は、PGC−1βタンパク質活性のレベルの効果的な増加を引き起こし得るので、化合物の投与量および化合物が投与される時間の長さに依存して、肥満症関連疾患または障害の誘導因子として作用する。
1つの実施形態において、本発明は、PGC−1βタンパク質もしくはポリペプチドまたはそれらの生物学的に活性な部分の基質またはそれらと相互作用する候補または試験化合物をスクリーニングするアッセイを提供する。別の実施形態において、本発明は、PGC−1βタンパク質もしくはポリペプチドまたはそれらの生物学的に活性な部分に結合するかまたはそれらの活性を調節する候補または試験化合物をスクリーニングするアッセイを提供する。本発明の試験化合物は、当該分野で公知のコンビナトリアルライブラリー法における多数のアプローチのいずれかを使用して得られ得る。コンビナトリアルライブラリー法としては:生物学的ライブラリー;空間的にアドレス呼び出し可能な平行固相または溶液相ライブラリー;デコンボルーションを必要とする合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー法;およびアフィニティークロマトグラフィ選択を使用する合成ライブラリー法が挙げられる。生物学的ライブラリーアプローチは、ペプチドライブラリーに限定されるが、他の4つのアプローチは、ペプチド、非ペプチドオリゴマーまたは化合物の低分子ライブラリーに適用可能である(Lam,K.S.(1997)Anticancer Drug Des.12:145)。
分子ライブラリーの合成方法の例は、当該分野、例えば、De Witt et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A.90:6909;Erb et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11422;Zuckermann et al.(1994).J.Med.Chem.37:2678;Cho et al.(1993)Science 261:1303;Carrell et al.(1994)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2059;Carell et al.(1994)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2061;およびGallop et al.(1994)J.Med.Chem.37:1233において見出し得る。
化合物のライブラリーは、溶液中(例えば、Houghten(1992)Biotechniques 13:412−421)またはビーズ上(Lam(1991)Nature 354:82−84)、チップ(Fodor(1993)Nature 364:555−556)、細菌(Ladner、米国特許第5,223,409号)、胞子(Ladner、米国特許第’409号)、プラスミド(Cull et al.(1992)Proc Natl Acad Sci USA 89:1865−1869)またはファージ上(Scott and Smith(1990)Science 249:386−390);(Devlin(1990)Science 249:404−406);(Cwirla et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.87:6378−6382);(Felici(1991)J.Mol.Biol.222:301−310);(Ladner前出)に存在し得る。
1つの実施形態において、アッセイは、PGC−1βタンパク質またはその生物学的に活性な部分を発現する細胞を、試験化合物と接触して、PGC−1β活性を調節する試験化合物の能力が測定される細胞に基づくアッセイである。PGC−1β活性を調節する試験化合物の能力の測定は、例えば、細胞内のカルシウム、IP、cAMPもしくはジアシルグリセロール濃度または細胞内のタンパク質のリン酸化プロファイルまたは下流の遺伝子の転写のレベルをモニターすることによって達成され得る。細胞は、哺乳動物起源(例えば、肝臓細胞)であり得る。1つの実施形態において、PGC−1β結合部位と相互作用する化合物は、リガンドとして機能する能力、すなわち、PGC−1β結合部位に結合して転写を調節するかまたはシグナル伝達経路を調節する能力についてスクリーニングされ得る。PGC−1βリガンドの同定およびリガンド−PGC−1β複合体の活性の計測により、この相互作用の調節因子(例えば、アンタゴニストまたはアゴニスト)が同定される。このような調節因子は、脂質関連疾患または障害の処置および予防、PGC−1βの調節(例えば、PGC−1βの発現または活性を低下させることによって)に有用であり得る。
基質に結合するPGC−1βを調節するか、またはPGC−1βに結合する試験化合物の能力もまた測定され得る。基質に結合するPGC−1βを調節する試験化合物の能力の測定は、例えば、PGC−1β基質と放射性同位体または酵素標識とを結合することによって達成され得るので、PGC−1βへのPGC−1β基質の結合が複合体における標識されたPGC−1β基質を検出することによって測定され得る。PGC−1βはまた、複合体におけるPGC−1β基質に結合するPGC−1βを調節する試験化合物の能力をモニターするために放射性同位体または酵素標識と結合され得る。PGC−1βを結合する試験化合物の能力の測定は、例えば、その化合物を放射性同位体または酵素標識と結合することによって達成され得るので、その化合物のPGC−1βへの結合は、複合体における標識されたPGC−1β化合物を検出することによって測定され得る。例えば、化合物(例えば、PGC−1βリガンドまたは基質)は、直接的または間接的のいずれかで125I、35S、14CまたはHおよび放射性放出(radioemmission)の直接的な計数またはシンチレーション計数によって検出される放射性同位体で標識され得る。化合物はさらに、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼまたはルシフェラーゼで酵素的に標識され得、そして酵素標識は、適切な基質の産物への変換の測定によって検出される。
任意の相互作用物の標識なしにPGC−1βと相互作用する化合物(例えば、PGC−1βリガンドまたは基質)の能力を測定することは、本発明の範囲内でもある。例えば、マイクロフィジオメーターは、化合物またはPGC−1βのいずれかの標識なしで化合物とPGC−1βとの相互作用を検出するために使用され得る(McConnell,H.M.et al.(1992)Science 257:1906−1912)。本明細書中で使用されるとき、「マイクロフィジオメーター」(例えば、Cytosensor)は、光アドレス可能電位差測定センサ(light−addressable potentiometric sensor)(LAPS)を使用して細胞がその環境を酸性化する速度を計測する分析機器である。この酸性化速度の変化は、化合物とPGC−1βとの間の相互作用の指標として使用され得る。
別の実施形態において、アッセイは、PGC−1β標的分子(例えば、PGC−1β基質)を発現する細胞と試験化合物とを接触する工程および試験化合物のPGC−1β標的分子の活性を調節する(例えば、刺激または阻害する)能力を測定する工程を含む細胞に基づくアッセイである。PGC−1β標的分子の活性を調節する試験化合物の能力の測定は、例えば、PGC−1β標的分子に結合するかまたは相互作用するPGC−1βタンパク質の能力を測定することによって達成され得る。
PGC−1β標的分子に結合するまたは相互作用するPGC−1βタンパク質またはその生物学的に活性なフラグメントの能力の測定は、直接的な結合を測定するための上記の方法の1つによって達成され得る。好ましい実施形態において、PGC−1β標的分子に結合するかまたは相互作用するPGC−1βタンパク質の能力の測定は、標的分子の活性を測定することによって達成され得る。例えば、標的分子の活性は、標的(すなわち、細胞内のCa2+、ジアシルグリセロール、IP、cAMP)の、細胞の第2メッセンジャーの誘導を検出すること、適切な基質上の標的の触媒的/酵素的活性を検出すること、(検出可能なマーカー(例えば、ルシフェラーゼ))をコードする核酸に作動可能に連結された標的応答性制御エレメントを含む)レポーター遺伝子の誘導を検出することまたは標的に制御される細胞応答(例えば、遺伝子発現)を検出することによって測定され得る。
なおも別の実施形態において、本発明のアッセイは、PGC−1βタンパク質またはその生物学的に活性な部分を、試験化合物と接触させ、そして試験化合物のPGC−1βタンパク質またはその生物学的に活性な部分に結合する能力を測定する無細胞系アッセイである。本発明のアッセイに使用されるPGC−1βタンパク質の好ましい生物学的に活性な部分は、非PGC−1β分子(例えば、表面確率スコアの高いフラグメント)との相互作用に関与するフラグメントを含む。PGC−1βタンパク質への試験化合物の結合は、上記したように直接的または間接的のいずれかで測定され得る。好ましい実施形態において、アッセイは、PGC−1βタンパク質またはその生物学的に活性な部分と、アッセイ混合物を形成するようにPGC−1βを結合する公知の化合物とを接触する工程、アッセイ混合物と試験化合物とを接触する工程および試験化合物がPGC−1βタンパク質と相互作用する能力を測定する工程を含み、ここで試験化合物がPGC−1βタンパク質と相互作用する能力を測定する工程は、公知の化合物と比較して、試験化合物が優先的にPGC−1βまたはその生物学的に活性な部分に結合する能力を測定する工程を含む。PGC−1βと公知の標的タンパク質との相互作用を調節する化合物は、PGC−1βタンパク質、特にPGC−1βタンパク質変異体の活性を制御するときに有用であり得る。
別の実施形態において、アッセイは、PGC−1βタンパク質またはその生物学的に活性な部分が、試験化合物と接触し、そして試験化合物がPGC−1βタンパク質またはその生物学的に活性な部分の活性を調節(例えば、刺激または阻害)する能力を測定する無細胞系アッセイである。試験化合物がPGC−1βタンパク質の活性を調節する能力の測定は、直接的な結合を測定するための上記の方法の1つによって、例えば、PGC−1β標的分子に結合するPGC−1βタンパク質の能力を測定することによって達成され得る。PGC−1βタンパク質がPGC−1β標的分子に結合する能力の測定はまた、リアルタイム生物分子相互作用解析(BIA)などの技術を使用して達成され得る(Sjolander,S. and Urbaniczky,C.(1991)Anal.Chem.63:2338−2345およびSzabo et al.(1995)Curr.Opin.Struct.Biol.5:699−705)。本明細書中で使用されるとき、「BIA」は、任意の相互作用物(例えば、BIAコア)を標識せずにリアルタイムで生体特異的な相互作用を研究するための技術である。表面プラズモン共鳴(SPR)の光学現象の変化は、生物学的分子間のリアルタイムな反応の指標として使用され得る。
別の実施形態において、試験化合物がPGC−1βタンパク質の活性を調節する能力の測定は、PGC−1β標的分子の下流のエフェクターの活性をさらに調節するPGC−1βタンパク質の能力を測定することによって達成され得る。例えば、適切な標的上のエフェクター分子の活性が、測定され得るか、または適切な標的へのエフェクターの結合が、前記したように測定され得る。
なおも別の実施形態において、無細胞系アッセイは、PGC−1βタンパク質またはその生物学的に活性な部分と、アッセイ混合物を形成するPGC−1βタンパク質を結合する公知の化合物とを接触させる工程、アッセイ混合物と試験化合物とを接触させる工程および試験化合物がPGC−1βタンパク質と相互作用する能力を測定する工程を含み、ここで試験化合物がPGC−1βタンパク質と相互作用する能力を測定する工程は、優先的にPGC−1β標的分子に結合するかまたはその活性を調節するPGC−1βタンパク質の能力を測定する工程を含む。
本発明の上記のアッセイ方法の他の実施形態において、PGC−1βまたはその標的分子の1つまたは両方の非複合型から複合型の分離を促進するためならびにアッセイの自動化を提供するためにそれらのタンパク質のいずれかを固定化することが望ましい可能性がある。候補化合物の存在下おおよび非存在下における、試験化合物のPGC−1βタンパク質への結合またはPGC−1βタンパク質と標的分子との相互作用は、反応物を含有するのに適した任意の容器中で達成され得る。このような容器の例としては、マイクロタイタープレート、試験管および微小遠心チューブが挙げられる。1つの実施形態において、1つまたは両方のタンパク質がマトリックスに結合することを可能にするドメインを添加する融合タンパク質が提供され得る。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ/PGC−1β融合タンパク質またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼ/標的融合タンパク質は、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical,St.Louis,MO)またはグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレートに吸着され得、そして試験化合物と混合されるか、または試験化合物および吸着されていない標的タンパク質もしくはPGC−1βタンパク質のいずれかおよびその混合物が、複合体形成を助長する条件下(例えば、塩およびpHについての生理学的条件)でインキュベートされる。インキュベーション後、ビーズまたはマイクロタイタープレートのウェルを任意の非結合成分を除去するために洗浄し、ビーズの場合はマトリックスを固定化し、例えば上記したように、直接的または間接的のいずれかで複合体を測定する。あるいは、複合体は、マトリックスから解離され得、そしてPGC−1β結合または活性のレベルを標準的な技術を使用して測定する。
マトリックス上のタンパク質を固定化する他の技術はまた、本発明のスクリーニングアッセイにおいて使用され得る。例えば、PGC−1βタンパク質またはPGC−1β標的分子のいずれかは、ビオチンおよびストレプトアビジンの結合体化を利用して固定化され得る。ビオチン化されたPGC−1βタンパク質または標的分子は、当該分野で公知の技術(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals、Rockford、IL)を使用してビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド)から調製され得、そしてストレプトアビジンコートされた96ウェルプレート(Pierce Chemical)のウェル内で固定化され得る。あるいは、PGC−1βタンパク質または標的分子に反応性であるが、標的分子へのPGC−1βタンパク質の結合を干渉しない抗体は、プレートのウェルに誘導体化され得て、非結合の標的またはPGC−1βタンパク質を抗体結合体化によってウェル内で捕捉され得る。GST−固定化複合体について上記したものに加えて、このような複合体を検出する方法としては、PGC−1βタンパク質または標的分子と反応性である抗体を使用する複合体の免疫検出ならびにPGC−1βタンパク質または標的分子に関連する酵素的活性の検出に依存する酵素結合アッセイが挙げられる。
別の実施形態において、PGC−1β発現の調節因子は、細胞が候補化合物と接触して、その細胞におけるPGC−1β mRNAまたはタンパク質の発現が測定される方法において同定される。候補化合物の存在下でのPGC−1β mRNAまたはタンパク質の発現のレベルは、候補化合物の非存在下でのPGC−1β mRNAまたはタンパク質の発現のレベルと比較される。次いで候補化合物は、この比較に基づいてPGC−1β発現の調節因子として同定され得る。例えば、PGC−1β mRNAまたはタンパク質の発現が候補化合物の非存在下より存在下のほうが高い(実質的に有意に高い)とき、候補化合物は、PGC−1β mRNAまたはタンパク質発現の刺激物質として同定される。あるいは、PGC−1β mRNAまたはタンパク質の発現が候補化合物の非存在下より存在下のほうが低い(実質的に有意に低い)とき、候補化合物は、PGC−1β mRNAまたはタンパク質発現の阻害剤として同定される。細胞におけるPGC−1β mRNAまたはタンパク質発現のレベルは、PGC−1β mRNAまたはタンパク質を検出するための本明細書中に記載される方法によって測定され得る。
本発明のなおも別の局面において、PGC−1βタンパク質は、PGC−1βに結合するかまたは相互作用して(「PGC−1β結合タンパク質」または「PGC−1β−bp」)、PGC−1β活性に関わる他のタンパク質を同定するためのツーハイブリッドアッセイまたはスリーハイブリッドアッセイにおける「ベイトタンパク質」として使用され得る(例えば、米国特許第5,283,317号;Zervos et al.(1993)Cell 72:223−232;Madura et al.(1993)J.Biol.Chem.268:12046−12054;Bartel et al.(1993)Biotechniques 14:920−924;Iwabuchi et al.(1993)Oncogene 8:1693−1696;およびBrent WO94/10300を参照のこと)。このようなPGC−1β結合タンパク質はまた、例えば、PGC−1β媒介シグナル伝達経路の下流のエレメントとしてPGC−1βタンパク質またはPGC−1β標的によるシグナルの伝達に関わる可能性がある。あるいは、このようなPGC−1β結合タンパク質は、PGC−1β阻害剤である可能性がある。
ツーハイブリッドシステムは、分離可能なDNA結合ドメインおよび活性化ドメインからなるほとんどの転写因子のモジュールの性質に基づく。簡潔には、アッセイは、2つの異なるDNA構築物を利用する。一方の構築物において、PGC−1βタンパク質についてコードする遺伝子は、公知の転写因子(例えば、GAL−4)のDNA結合ドメインをコードする遺伝子に融合される。他方の構築物において、同定されていないタンパク質(「プレイ」または「サンプル」)をコードするDNA配列のライブラリーからのDNA配列は、公知の転写因子の活性化ドメインについてコードする遺伝子に融合される。「ベイト」および「プレイ」タンパク質が、インビボでPGC−1β依存性複合体の形成に相互作用することができる場合、転写因子のDNA結合ドメインおよび活性化ドメインが近接近する。この接近により、転写制御部位に作動可能に連結されるレポーター遺伝子(例えば、LacZ)の転写が転写因子に応答性になる。レポーター遺伝子の発現は検出され得、機能的転写因子を有する細胞コロニーは、PGC−1βタンパク質と相互作用するタンパク質をコードするクローン化遺伝子を得るために単離および使用され得る。
さらなる実施形態において、アッセイは、PGC−1βとその基質および/または結合パートナーとの間の相互作用を調節する(例えば、正または負の影響を及ぼす)化合物を同定する目的で本発明の使用を通じて工夫され得る。このような化合物としては、分子(例えば、低分子)、抗体、ペプチド、ホルモン、オリゴヌクレオチド、核酸およびそれらのアナログが挙げられ得るが、これらに限定されない。このような化合物はまた、天然化合物および/または合成化合物の体系的なライブラリーを含む任意の利用可能な供給源から手に入れることができる。この実施形態における使用のための好ましいアッセイ成分は、転写コアクチベーター、本明細書中で同定されるPGC−1β、公知の結合パートナーおよび/または同じ基質ならびに試験化合物である。試験化合物は、任意の供給源から供給され得る。
PGC−1βとその結合パートナーとの間の相互作用を干渉する化合物を同定するために使用されるアッセイシステムの基本原理は、2つの生成物が相互作用および結合することができるのに十分な条件および時間で、PGC−1βおよびその結合パートナーを含有する反応混合物を調製し、このようにして複合体を形成する工程を含む。阻害活性について物質を試験するために、反応混合物は、試験化合物の存在下および非存在下で調製される。試験化合物は、まず反応混合物中に入れられ得るか、またはPGC−1βおよびその結合パートナーの添加の後に添加され得る。コントロール反応混合物は、試験化合物なしか、またはプラセボとともにインキュベートされる。次いでPGC−1βとその結合パートナーとの間の任意の複合体の形成が検出される。コントロール反応において複合体を形成するが、試験化合物を含有する反応混合物においてはこのような形成をほとんどしないかまたは全くしないということは、その化合物がPGC−1βとその結合パートナーとの相互作用を干渉することを示す。反対に、コントロール反応より化合物の存在下のほうがより多く複合体を形成するということは、その化合物は、PGC−1βとその結合パートナーとの相互作用を促進し得ることを示す。
PGC−1βとその結合パートナーとの相互作用を干渉する化合物についてのアッセイは、不均一または均一な形態に導かれ得る。不均一なアッセイは、固相にPGC−1βまたはその結合パートナーのいずれかを固定する工程および反応の最後に固相に固定された複合体を検出する工程を含む。均一なアッセイにおいて、反応全体が液相中で実施される。いずれかのアプローチにおいて、反応物の添加の順序は、試験される化合物についての様々な情報を得るために変更され得る。例えば、PGC−1βとその結合パートナーとの相互作用を干渉する(例えば、競合によって)試験化合物は、試験物質の存在下で反応を実施することによって、すなわち、試験物質を反応混合物に、PGC−1βおよび相互作用的な結合パートナーの添加前またはそれらと同時に添加することによって同定され得る。あるいは、予め形成された複合体を破壊する試験化合物(例えば、複合体から成分の1つを置換する、より高い結合定数を有する化合物)が、複合体が形成された後に試験化合物を反応混合物に添加することによって試験され得る。様々な形態が、簡潔に以下に記載される。
不均一なアッセイシステムにおいて、PGC−1βまたはその結合パートナーのいずれかが、固体表面またはマトリックスに固定され、他の対応する固定されない構成成分が、直接的または間接的のいずれかで標識され得る。実際のところ、マイクロタイタープレートがこのアプローチに利用されることが多い。固定された種は、当業者に周知である、非共有結合性または共有結合性のいずれかの多くの方法によって固定化され得る。非共有結合性付着は、PGC−1βまたはその結合パートナーの溶液で固体表面をコートして乾燥することによって簡単に達成され得ることが多い。あるいは、固定されるべきアッセイ構成成分に特異的な固定化された抗体が、この目的で使用され得る。このような表面は、多くの場合、予め調製されて、保存され得る。
関連実施形態において、アッセイ成分の1つまたは両方がマトリックスに固定されるのを可能にするドメインを添加する融合タンパク質が、提供され得る。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ/PGC−1β融合タンパク質またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼ/結合パートナーは、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma ChemicalTM,St.Louis,MO)またはグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレートに吸着され得て、次いで試験化合物または試験化合物および吸着されていないPGC−1βまたはその結合パートナーのいずれかを混合し、そして混合物を、複合体形成(例えば、生理学的条件)を誘導する条件下でインキュベートする。インキュベーション後、ビーズまたはマイクロタイタープレートのウェルを任意の非結合アッセイ成分を除去するために洗浄し、例えば上記したように、直接的または間接的のいずれかで固定化された複合体を評価する。あるいは、複合体は、マトリックスから解離され得、そしてPGC−1β結合または活性のレベルを標準的な技術を使用して測定する。
マトリックスにタンパク質を固定化する他の技術はまた、本発明のスクリーニングアッセイにおいて使用され得る。例えば、PGC−1βまたはPGC−1β結合パートナーのいずれかが、ビオチンおよびストレプトアビジンの結合体化を利用して固定化され得る。ビオチン化されたPGC−1βタンパク質または標的分子は、当該分野で公知の技術(例えば、ビオチン化キット、Pierce ChemicalsTM,Rockford,IL)を使用してビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド)から調製され得て、ストレプトアビジンコートされた96ウェルプレート(Pierce ChemicalsTM)のウェル内に固定化され得る。特定の実施形態において、タンパク質を固定化した表面は、予め調製されて、保存され得る。
アッセイを実施するために、固定化されたアッセイ構成成分の対応するパートナーは、試験化合物と一緒にか、またはそれ無しにコートされた表面に曝露される。反応が完了した後、未反応のアッセイ成分が(例えば、洗浄することによって)除去され、そして形成された任意の複合体が固体表面に固定化されたまま残り得る。固体表面に固定された複合体の検出は、多くの方法において達成され得る。固定化されていない構成成分が予め標識されている場合、表面に固定化された標識の検出は、複合体が形成されたことを示す。固定化されていない構成成分が予め標識されていない場合、間接的な標識が、表面に固定された複合体を検出するために使用され得る;例えば、はじめに固定化されていない種に特異的な標識された抗体(同様に、例えば標識された抗Ig抗体で直接標識され得るか、または間接的に標識され得る抗体)を使用して。反応成分の添加の順序に依存して、複合体形成を調節(阻害または促進)するか、または予め形成された複合体を破壊する試験化合物が検出され得る。
本発明の別の実施形態において、均一なアッセイが使用され得る。これは、試験化合物の存在下または非存在下で液相において実施される、上述したものと類似した代表的な反応である。次いで形成された複合体は、未反応成分から分離されて、形成された複合体の量が測定される。不均一なアッセイシステムについて述べたように、液相への反応物の添加の順序によって、試験化合物が複合体形成を調節(阻害または促進)して、予め形成された複合体を破壊することについての情報を得ることができる。
このような均一なアッセイにおいて、反応産物は、多くの標準的な技術(分画遠心法、クロマトグラフィ、電気泳動および免疫沈降が挙げられるが、これらに限定されない)のいずれかによって未反応のアッセイ成分から分離され得る。分画遠心法において、分子の複合体は、様々な大きさおよび密度に基づく複合体の様々な沈降平衡に起因して、一連の遠心分離の工程を介して複合体化していない分子から分離され得る(例えば、Rivas,G. and Minton,A.P.,Trends Biochem Sci 1993 Aug;18(8):284−7を参照のこと)。標準的なクロマトグラフィの技術はまた、複合体化されていない分子から複合体化された分子を分離するために利用され得る。例えば、ゲル濾過クロマトグラフィは、大きさに基づいてそしてカラム形態での適切なゲル濾過樹脂の利用を通じて分子を分離する。例えば、相対的に大きな複合体は、相対的に小さい複合体化されていない成分から分離され得る。同様に、複合体化されていない分子と比較されるとき、複合体の相対的に異なる電荷特性が、例えばイオン交換クロマトグラフィ樹脂の使用を介して、残存する個々の反応物から複合体を差次的に分離するために利用され得る。このような樹脂およびクロマトグラフィの技術は、当業者に周知である(例えば、Heegaard、1998、J.Mol.Recognit.11:141−148;Hage and Tweed、1997、J.Chromatogr.B.Biomed.Sci.Appl.、699:499−525を参照のこと)。ゲル電気泳動はまた、複合体化された分子を結合していない種から分離するために使用され得る(例えば、Ausubel et al.(eds.)、Current Protocols in Molecular Biology、J.Wiley & Sons、New York.1999を参照のこと)。この技術において、タンパク質または核酸複合体は、例えば大きさまたは電荷に基づいて分離される。電気泳動のプロセスの間、結合の相互作用を維持するために、還元剤の非存在下では非変性ゲルが代表的には好ましいが、特定の相互作用物に対して適切な条件は、当業者に周知であり得る。免疫沈降は、溶液からタンパク質−タンパク質複合体を単離するために利用される別の通常の技術である(例えば、Ausubel et al.(eds.)、Current Protocols in Molecular Biology、J.Wiley & Sons、New York.1999を参照のこと)。この技術において、結合する分子の1つに特異的な抗体に結合するすべてのタンパク質は、遠心分離によって容易に回収され得るポリマービーズへ抗体を結合体化することによって溶液から沈降される。結合アッセイ成分は、(複合体中のタンパク質−タンパク質相互作用を妨害し得ない、当業者に周知の特異的なタンパク質分解現象または他の技術を介して)ビーズから放出され、第2免疫沈降工程が実施される。今回は、対応して異なる、相互作用するアッセイ構成成分に特異的な抗体を利用する。この様式において、形成された複合体だけが、ビーズに付着したままであるはずである。試験化合物の存在下および非存在下の両方において複合体形成の差異が比較され得て、それによって、PGC−1βとその結合パートナーとの間の相互作用を調節する化合物の能力についての情報を提供する。
均一または不均一なアッセイシステムにおいてさらなるサンプルの操作なしにPGC−1βとその天然の結合パートナーおよび/または試験化合物との間の相互作用を直接検出する方法はまた、本発明の範囲内である。例えば、蛍光エネルギー移動の技術を利用することができる(例えば、Lakowicz et al.、米国特許第5,631,169号;Stavrianopoulos et al.、米国特許第4,868,103号を参照のこと)。一般に、この技術は、第1「ドナー」分子(例えば、PGC−1βまたは試験化合物)にフルオロフォア標識を添加する工程を含み、その放射蛍光性エネルギーが第2「アクセプター」分子(例えば、PGC−1βまたは試験化合物)に蛍光性標識によって吸着され得る。それは、同様に吸着されたエネルギーに起因して蛍光を発することができる。あるいは、「ドナー」タンパク質分子は、トリプトファン残基の天然の蛍光性エネルギーを単に利用し得る。様々な光の波長を発する標識が選択されるので、「アクセプター」分子標識は、「ドナー」の波長とは区別され得る。標識間のエネルギー移動の効率が、分子を分離する距離に関連するので、分子間の空間的関係が評価され得る。結合が分子間に生じる場合、アッセイ中の「アクセプター」分子標識の蛍光性の放出は、最大であるはずである。FET結合現象は、当該分野で周知の標準的な蛍光定量的な検出手段を介して(例えば、蛍光光度計を使用して)都合よく計測され得る。予め形成された複合体中の種の1つの関与を促進するか、または妨げる試験物質は、バックグラウンドに対するシグナル変動が生じ得る。このようにして、PGC−1βとその結合パートナーとの間の相互作用を調節する試験物質は、制御されたアッセイにおいて同定され得る。
別の実施形態において、PGC−1β発現の調節因子は、細胞を候補化合物と接触させて、PGC−1βに対応する細胞内のmRNAまたはタンパク質の発現を測定する方法で同定される。候補化合物の存在下でのmRNAまたはタンパク質の発現のレベルは、候補化合物の非存在下でのmRNAまたはタンパク質の発現のレベルと比較される。そして候補化合物は、この比較に基づいてPGC−1β発現の調節因子として同定され得る。例えば、PGC−1β mRNAまたはタンパク質の発現が、候補化合物の非存在下より存在下のほうが高い(実質的に有意に高い)とき、候補化合物は、PGC−1β mRNAまたはタンパク質発現の刺激物質として同定される。反対に、PGC−1β mRNAまたはタンパク質の発現が候補化合物の非存在下より存在下のほうが低い(実質的に有意に低い)とき、候補化合物は、PGC−1β mRNAまたはタンパク質発現の阻害剤として同定される。細胞におけるPGC−1β mRNAまたはタンパク質発現のレベルは、本明細書中に記載される、PGC−1β mRNAまたはタンパク質を検出する方法によって測定され得る。
別の局面において、本発明は、本明細書中に記載される2以上のアッセイの組み合わせに関する。例えば、調節物質は、細胞に基づくアッセイまたは無細胞系アッセイを使用して同定され得て、そして本明細書中に記載されているか、または例えば、Sathasivam K et al.Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci.1999 Jun 29;354(1386):963−9;Bates GP,et al.Hum Mol Genet.1997;6(10):1633−7;Shaw CA et al.Neurosci Biobehav Rev.2003 Oct;27(6):493−505;Menalled LB Trends Pharmacol Sci.2002 Jan;23(l):32−9;Legare ME et al.Genet Mol Res.2003 Sep 30;2(3):288−94;Oiwa Y J Neurosurg.2003 Jan;98(l):136−44;およびBard F et al.Nat Med.2000 Aug;6(8):916−9(これらの内容は、本明細書中に参考として援用される)に記載されているように、物質がPGC−1βタンパク質の活性を調節する能力が、インビボにおいて(例えば、脂質関連疾患または障害についての動物モデルなどの動物において)確認され得る。
本発明はさらに、上記のスクリーニングアッセイによって同定される新規物質に関する。従って、適切な動物モデルにおいて本明細書中に記載されるように同定される物質をさらに使用することは、本発明の範囲内である。例えば、本明細書中に記載されるように同定される物質(例えば、低分子、アンチセンスPGC−1β核酸分子、PGC−1β特異的抗体またはPGC−1β結合パートナー)は、このような物質を用いた処置の効能、毒性または副作用を測定するために動物モデルにおいて使用され得る。あるいは、本明細書中に記載されるように同定される物質は、このような物質の作用のメカニズムを決定するために動物モデルにおいて使用され得る。さらに、本発明は、本明細書中に記載されるような処置についての上記のスクリーニングアッセイによって同定される新規物質の使用に関する。
前述のアッセイシステムにおいて同定されるような化合物を含むが、これらに限定されない任意の化合物は、PGC−1β核酸発現またはPGC−1βポリペプチド活性を調節する能力を備える、脂質関連疾患または障害を処置または予防することができる化合物について試験され得、それによって脂質関連疾患または障害を処置または予防することができる化合物を同定する。脂質関連疾患または障害を処置または予防するそのような能力を示す化合物の同定に対する細胞に基づくアッセイおよび動物モデルに基づくアッセイを本明細書中に記載した。
1つの局面において、本明細書中に記載されるような細胞に基づくシステムは、PGC−1β核酸発現またはPGC−1βポリペプチド活性を調節するかまたは脂質関連疾患もしくは障害を処置するように作用し得る化合物を同定するために使用され得る。例えば、このような細胞システムは、曝露される細胞において、疾患症状の緩和を誘発するのに十分な濃度および十分な時間で、PGC−1βを調節するか、または脂質関連疾患もしくは障害を処置もしくは予防する能力を示すと推測される化合物に曝露され得る。曝露後、細胞を、1以上の疾患表現型(例えば、高トリグリセリド血症)が、例えば、より正常の表現型に似るかまたはより野生型の疾患表現型に似るように変化しているか否かを決定するために調べる。
さらに、本明細書中に記載されるシステムなどの動物に基づく疾患システムは、PGC−1β核酸発現もしくはPGC−1βポリペプチド活性または脂質関連疾患もしくは障害を調節するように作用し得る化合物を同定するために使用され得る。このような動物モデルは、PGC−1βを調節し、脂質関連疾患または障害(例えば、高トリグリセリド血症)を処置または予防するのに効果的であり得る薬物、医薬品、治療および介入の同定のために試験基質として使用され得る。
1つの実施形態において、脂質関連疾患または障害を処置または予防することができる化合物を、その化合物がPGC−1β核酸発現またはPGC−1βポリペプチド活性を調節する能力をアッセイすることによって同定する。PGC−1β核酸発現またはPGC−1βポリペプチド活性を調節することができる化合物は、脂質生成遺伝子(例えば、FAS、SCD−1、HMG−CoAレダクターゼ、DGATまたはGPAT)の発現または活性における調節を検出することによって同定され得る。
さらに別の実施形態において、脂質関連疾患または障害を処置または予防することがきる化合物は、LXRα標的遺伝子(例えば、PLTP、ABCA1およびABCG1)の発現または活性を調節する化合物の能力をアッセイすることによって同定される。
なおも別の実施形態において、脂質関連疾患または障害を処置または予防することができる化合物は、SREBP転写因子(例えば、SREBP1a、SREBP1cおよびSREBP2)の発現または活性を調節する化合物の能力をアッセイすることによって同定される。
さらに、遺伝子発現パターンは、(例えば、PGC−1βの発現または活性を低下させることによって)PGC−1βを調節する化合物の能力を評価するために利用され得る。従って、これらの化合物は、脂質関連疾患または障害を処置、予防または評価するのに有用であり得る。例えば、1以上の遺伝子の発現パターンは、このような評価において使用され得る「遺伝子発現プロファイル」または「転写プロファイル」の一部を形成し得る。本明細書中で使用されるとき、「遺伝子発現プロファイル」または「転写プロファイル」は、所与の条件セット下で所与の組織または細胞タイプについて得られるmRNA発現のパターンを含む。遺伝子発現プロファイルは、例えば、ディファレンシャルディスプレイ法、ノーザン解析および/またはRT−PCRを利用することによって生成され得る。1つの実施形態において、PGC−1β遺伝子配列は、このような遺伝子発現プロファイルの生成および確証のためにプローブおよび/またはPCRプライマーとして使用され得る。
遺伝子発現プロファイルは、細胞および/または動物に基づくモデルシステム内の公知の状態について特徴付けられる。続いて、これらの公知の遺伝子発現プロファイルは、試験化合物がこのような遺伝子発現プロファイルを改変して、より所望のプロファイルにより似たプロファイルにしなければならないという効果を確かめるために比較され得る。
(II.処置の方法:)
本発明は、被験体(例えば、脂質関連疾患または障害の危険性がある(または感受性の高い)ヒト)において、前記被験体にPGC−1β調節因子を投与することによって脂質関連疾患または障害を処置または予防する、予防的な方法と治療的な方法との両方を提供し、脂質関連疾患または障害を処置または予防する。予防的方法と治療的方法との両方を含む好ましい実施形態において、PGC−1β調節因子は、薬学的に許容可能な製剤形態で投与される。
処置の予防的方法と治療的方法との両方に関して、このような処置は、薬理ゲノミクスの分野から得られる知識に基づいて、特異的に目的に合わされ得るかまたは改変され得る。本明細書中で使用されるとき、「薬理ゲノミクス」とは、臨床開発および市場における薬物に対するゲノミクス技術(例えば、遺伝子配列決定、統計遺伝学および遺伝子発現解析)の適用のことをいう。より具体的には、この用語は、どのようにして患者の遺伝子が薬物に対する彼らの応答を決定するのか(例えば、患者の「薬物応答表現型」または「薬物応答遺伝子型」)についての研究のことをいう。
従って、本発明の別の局面は、その個体の薬物応答遺伝子型に従って、本発明のPGC−1β分子またはPGC−1β調節因子のいずれかを用いた被験体の予防的または治療的な処置を目的に合わせるための方法を提供する。薬理ゲノミクスにより、臨床医または医師が、その処置から最大の恩恵を受け得る患者に対する予防的または治療的処置を標的化することおよび有毒な薬物関連副作用を受け得る患者の処置を避けることが可能になる。
(A.予防的方法)
1つの局面において、本発明は、被験体にPGC−1β発現またはPGC−1β活性を調節する物質を投与することによって脂質関連疾患または障害を処置または予防する方法を提供する。本発明はまた、被験体における、脂質輸送、脂質生合成、血漿トリグリセリドレベルおよび血漿コレステロールレベルを調節する方法を提供する。脂質関連疾患または障害の危険性のある被験体は、例えば、本明細書中に記載される診断アッセイまたは予後アッセイのいずれかまたはそれらの組み合わせによって同定され得る。予防的物質は、脂質関連疾患または障害の特徴である症状の徴候の前に投与することができ、それらの脂質関連疾患または障害または症状は、予防されるか、または進行を遅延させる。PGC−1βの異常型に応じて、例えば、PGC−1βアゴニストまたはPGC−1βアンタゴニスト物質が、被験体を処置するために使用され得る。適切な物質は、本明細書中に記載されるスクリーニングアッセイに基づいて決定され得る。
(B.治療的方法)
本発明は、PGC−1βの発現または活性を誘導するかまたは阻害するPGC−1β調節因子を投与することによって、被験体においてPGC−1βを調節する方法を提供する。1つの実施形態において、PGC−1βの発現または活性は、PGC−1βの発現または活性の阻害剤またはアンタゴニストを投与することによって低下する。これによって、被験体における脂質輸送、脂質生合成、血漿トリグリセリドレベルおよび血漿コレステロールレベルを調節し、脂質関連疾患または障害を処置または予防する。
従って、本発明の別の局面は、治療的な目的および脂質関連疾患または障害の処置における使用のためのPGC−1βの発現または活性を調節する方法に関する。1つの実施形態において、本発明の調節的な方法は、細胞をPGC−1βまたは脂質関連疾患もしくは障害に関与するPGC−1βタンパク質活性の1以上の活性(例えば、脂質生合成、脂質輸送、血漿トリグリセリドレベル、血漿コレステロールレベルの調節)を調節する物質と接触させる工程を含む。PGC−1βタンパク質活性を調節する物質は、本明細書中に記載されるような物質(例えば、核酸またはタンパク質、PGC−1β mRNAを標的化するsiRNA、PGC−1βタンパク質の天然に存在する標的分子(例えば、PGC−1βリガンドまたは基質)、PGC−1β抗体、PGC−1βアゴニストもしくはアンタゴニスト、PGC−1βアゴニストもしくはアンタゴニストのペプチド模倣物または他の低分子)であり得る。1つの実施形態において、その物質は、1以上のPGC−1β活性を刺激する。このような刺激性物質の例としては、活性なPGC−1βタンパク質、PGC−1βをコードする核酸分子または低分子アゴニストまたは模倣物(例えば、ペプチド模倣物)が挙げられる。別の実施形態において、その物質は、1以上のPGC−1β活性を阻害する。そのような阻害性物質の例としては、アンチセンスPGC−1β核酸分子、siRNA分子、抗PGC−1β抗体、低分子およびPGC−1β阻害剤が挙げられる。これらの調節性の方法は、インビトロ(例えば、その物質とともに細胞を培養することによって)またはインビボ(例えば、その物質を被験体に投与することによって)において実施され得る。1つの実施形態において、本方法は、物質(例えば、本明細書中に記載されるスクリーニングアッセイによって同定される物質)またはPGC−1βの発現または活性を調節(例えば、アップレギュレートまたはダウンレギュレート)する物質の組み合わせを投与する工程を含む。別の実施形態において、本方法は、低いか、異常かまたは望ましくないPGC−1βの発現または活性を代償するための治療としてPGC−1βタンパク質または核酸分子を投与する工程を含む。
PGC−1β活性の低下は、PGC−1β活性の減少が、(例えば、脂質関連疾患または障害処置または予防に対して)有益な効果を有する可能性がある状況において望ましい。同様に、PGC−1β活性の刺激は、PGC−1β活性の増加が、(例えば、肥満症関連疾患または障害(例えば、悪液質、るいそう、食欲不振または過食症)の処置または予防に対して)有益な効果を有する可能性がある状況において望ましい。
((i)PGC−1βの発現または活性を低下させる方法)
PGC−1βの発現または活性を低下させると、脂質関連疾患または障害の処置または予防がもたらされる。従って、脂質関連疾患または障害(例えば、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、心臓血管疾患、肥満症およびII型糖尿病)を処置および/または予防する方法を提供する。種々の技術は、PGC−1βの発現、合成または活性を低下させるために使用され得る。
例えば、阻害性の活性を示す、本明細書中に記載されるアッセイを介して同定される化合物などは、本発明に従って使用され得る。このような分子としては、有機低分子、siRNA分子、ペプチド、抗体などが挙げられ得るが、これらに限定されない。
例えば、PGC−1βタンパク質に対して内在性リガンドと競合する化合物が、投与され得る。その結果生じた、リガンドに結合したPGC−1βタンパク質の量の減少は、内皮細胞の生理機能を調節し得る。この目的に特に有用であり得る化合物は、例えば、可溶性タンパク質またはペプチド(例えば、PGC−1βタンパク質の1以上の細胞外ドメインもしくは部分および/またはそれらのアナログを含むペプチド)を含み、それらは、例えば、Ig末端の融合タンパク質などの可溶性融合タンパク質を含む。(Ig末端の融合タンパク質の生成の議論については、例えば、米国特許第5,116,964号を参照のこと。)あるいは、リガンドアナログまたは抗体などの、PGC−1βレセプター部位に結合するが、そのタンパク質を活性化しない化合物(例えば、レセプターリガンドアンタゴニスト)は、PGC−1βタンパク質活性を阻害するのに効果的であり得る。
さらに、PGC−1β遺伝子の発現を阻害する、アンチセンスおよびリボザイム分子ならびにsiRNA分子はまた、本発明に従って、異常なPGC−1β遺伝子活性を阻害するために使用され得る。なおもさらに、三重らせん分子は、異常なPGC−1β遺伝子活性を阻害するときに利用され得る。
本発明の方法において使用されるアンチセンス核酸分子は、代表的には被験体に投与されるか、またはインサイチュで生成され、それらは、PGC−1βタンパク質をコードする、細胞のmRNAおよび/またはゲノムDNAとハイブリダイズするか、または結合し、それによってタンパク質の発現を阻害する(例えば、転写および/または翻訳を阻害することによって)。ハイブリダイゼーションは、安定な二重鎖を形成する通常のヌクレオチド相補性によってか、または、例えばDNA二重鎖に結合するアンチセンス核酸分子の場合、二重らせんの主溝における特異的な相互作用を介して起こり得る。本発明のアンチセンス核酸分子の投与の経路の例として、組織部位における直接注入が挙げられる。あるいは、アンチセンス核酸分子は、選択された細胞を標的化するように改変されて、全身投与され得る。例えば、全身投与に向けて、アンチセンス分子は、選択された細胞表面上に発現するレセプターまたは抗原に特異的に結合するように(例えば、アンチセンス核酸分子を、細胞表面のレセプターまたは抗原に結合するペプチドまたは抗体に結合することによって)改変され得る。アンチセンス核酸分子はまた、本明細書中に記載されるベクターを使用して細胞に送達され得る。アンチセンス分子の十分な細胞内の濃度を達成するために、アンチセンス核酸分子が強力なpol IIまたはpol IIIプロモーターの制御下に置かれているベクター構築物が好ましい。
なおも別の実施形態において、本発明の方法において使用されるアンチセンス核酸分子は、α−アノマー核酸分子である。α−アノマー核酸分子は、通常のβ−ユニットに反して、その鎖は互いに並行する相補RNAと特異的な二本鎖ハイブリッドを形成する(Gaultier et al.(1987)Nucleic Acids Res.15:6625−6641)。アンチセンス核酸分子はまた、2’−o−メチルリボヌクレオチド(Inoue et al.(1987)Nucleic Acids.Res.15:6131−6148)またはキメラRNA−DNAアナログ(Inoue et al.(1987)FEBS Lett.215:327−330)を含み得る。
さらに別の実施形態において、本発明の方法において使用されるアンチセンス核酸は、リボザイムである。リボザイムは、相補的な領域を有するmRNAなどの一本鎖の核酸を切断することができるリボヌクレアーゼ活性を有する触媒的RNA分子である。従って、リボザイム(例えば、ハンマーヘッド型リボザイム(Haselhoff and Gerlach(1988)Nature 334:585−591に記載されている))が、PGC−1β mRNA転写物を触媒的に切断するのに使用され得る。これによってPGC−1β mRNAの翻訳を阻害する。PGC−1βをコードする核酸に対して特異性を有するリボザイムは、本明細書中で開示されるPGC−1β cDNAのヌクレオチド配列(すなわち、配列番号1)に基づいて設計され得る。例えば、活性な部位のヌクレオチド配列が、PGC−1βをコードするmRNAにおいて切断されるヌクレオチド配列に相補的であるTetrahymena L−19 IVS RNAの誘導体が構築され得る(例えば、Cech et al.米国特許第4,987,071号;およびCech et al.米国特許第5,116,742号を参照のこと)。あるいは、PGC−1β mRNAは、特異的なリボヌクレアーゼ活性を有する触媒的RNAをRNA分子のプールから選択するために使用され得る(例えば、Bartel,D. and Szostak,J.W.(1993)Science 261:1411−1418を参照のこと)。
PGC−1β遺伝子発現はまた、標的細胞においてPGC−1β遺伝子の転写を予防する三重らせん構造を形成するPGC−1βの制御領域(例えば、PGC−1βプロモーターおよび/またはエンハンサー)に相補的なヌクレオチド配列を標的化することによって阻害され得る(例えば、Helene,C.(1991)Anticancer Drug Des.6(6):569−84;Helene,C.et al.(1992)Ann.NY.Acad.Sci.660:27−36;およびMaher,L.J.(1992)Bioassays 14(12):807−15を参照のこと)。
PGC−1βを標的化するRNA干渉物質(例えば、siRNA分子)はまた、PGC−1βの発現を阻害する(例えば、PGC−1βのメッセンジャーRNA(mRNA)の分解または特異的な転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)を介して)ために使用され得る。
PGC−1βタンパク質に特異的であり、かつその活性を干渉する抗体はまた、PGC−1βタンパク質の機能を調節または阻害するために使用され得る。このような抗体は、本明細書中に記載される標準的な技術を使用して生成され得て、これらの抗体は、PGC−1βタンパク質自体に対するかまたはこのタンパク質の部分に対応するペプチドに対するものである。このような抗体としては、ポリクローナル、モノクローナル、Fabフラグメント、一本鎖抗体またはキメラ抗体が挙げられるがこれらに限定されない。
標的遺伝子タンパク質が細胞内にあり、抗体全体が使用される場合、抗体を内部移行することは、好ましいであろう。リポフェクチンリポソームは、抗体または標的エピトープに結合するFab領域のフラグメントを細胞に送達するために使用され得る。抗体のフラグメントが使用されるとき、標的タンパク質の結合ドメインに結合する最小の阻害性フラグメントが好ましい。例えば、標的遺伝子タンパク質に結合する抗体の可変領域のドメインに対応するアミノ酸配列を有するペプチドが使用され得る。このようなペプチドは、化学的に合成され得るか、または当該分野で周知の方法を使用した組換えDNA技術を介して生成され得る(例えば、Creighton(1983)、前出;およびSambrook et al.(1989)前出に記載されている)。細胞内の標的遺伝子エピトープに結合する一本鎖中和抗体がまた、投与され得る。このような一本鎖抗体は、例えば、Marasco et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:7889−7893に記載されているような技術を利用することによって、例えば、標的細胞集団内で一本鎖抗体をコードするヌクレオチド配列を発現することによって投与され得る。
((ii)PGC−1βの発現、合成または活性を増加させる方法)
上で議論したように、PGC−1βの発現または活性を増加させることは、特定の状態(例えば、肥満症関連疾患または障害(例えば、悪液質、るいそう、AHS関連体重減少、食欲不振および過食症)の処置または予防)において望ましいであろう。種々の技術が、PGC−1β遺伝子および/またはタンパク質の発現、合成または活性を増加させるために使用され得る。例えば、PGC−1βタンパク質は、被験体に投与され得る。以下で議論される任意の技術は、このような投与に使用され得る。当業者は、以下に記載する技術などを利用して、PGC−1βタンパク質の有効で、毒性のない用量の濃度を決定する方法を容易に知り得る。
さらに、PGC−1βタンパク質をコードするRNA配列は、PGC−1βを調節するためのPGC−1βタンパク質のレベルを生成するのに十分な濃度で被験体に直接投与され得る。化合物の細胞内投与(例えばリポソーム投与など)を達成する、以下で議論する任意の技術は、このようなRNA分子の投与に使用され得る。RNA分子は、例えば、本明細書中に記載されるような組換え技術によって生成され得る。他の薬学的組成物、薬剤または治療薬は、本明細書中に記載されるPGC−1βアゴニストと組み合わせて使用され得る。さらに、被験体は、遺伝子置換治療によって処置され得、その結果、PGC−1βを永久的に調節する。PGC−1βの機能を有する正常なPGC−1βタンパク質の生成を指示するPGC−1β遺伝子またはそれらの部分の1以上のコピーは、リポソームなどの細胞にDNAを導入する他の粒子に加えてベクター(アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターおよびレトロウイルスベクターが挙げられるがこれらに限定されない)を使用して細胞に挿入され得る。さらに、上記したような技術は、ヒト細胞へのPGC−1β遺伝子配列の導入のために使用され得る。さらに、PGC−1βに対して作用する転写アクチベーターの発現または活性は、PGC−1βの発現および活性を増加させることによって増加され得る。直接的または間接的のいずれかでPGC−1βの発現または活性を誘導する低分子がまた、使用され得る。1つの実施形態において、低分子は、PGC−1βと標的分子またはリガンドとの間のタンパク質−タンパク質相互作用を妨害するように機能し、これによってPGC−1βの活性を調節(例えば、増加または減少)する。
次いでPGC−1βを発現する遺伝子配列を有する細胞、好ましくは自家細胞が、被験体に導入または再導入され得る。このような細胞置換技術は、例えば、遺伝子産物が分泌される細胞外遺伝子産物であるとき、好ましい可能性がある。
(C.薬学的組成物)
本発明の方法は、被験体にPGC−1βの発現または活性を調節する物質(例えば、本明細書中に記載されるスクリーニングアッセイによって同定される物質)またはそのような物質の組み合わせを投与する工程を含む。PGC−1β活性を調節する物質は、そのような投与に適した薬学的組成物を使用して被験体に投与され得る。そのような組成物は、代表的には物質(例えば、低分子、核酸分子、タンパク質、siRNAまたは抗体)および薬学的に許容可能な担体を含む。本明細書中で使用されるとき、専門語「薬学的に許容可能な担体」は、医薬品の投与に適合する、任意およびすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌性物質および抗真菌性物質、等張性物質および吸収遅延物質などを含むと意図される。薬剤的に活性な物質に対するそのような媒質および物質の使用は、当該分野で周知である。通常の任意の媒質または物質が、活性な化合物と不適合である範囲以外の、組成物におけるそれらの使用が企図される。補充性の活性な化合物がまた、組成物に組み込まれ得る。
本発明の治療的方法において使用される薬学的組成物は、意図される投与の経路に適合するように処方される。投与の経路の例としては、非経口(例えば、静脈内、皮内、皮下)、経口(例えば、吸入)、経皮的(局所的)、経粘膜的および直腸投与が挙げられる。非経口、皮内または皮下適用に使用される溶液または懸濁液としては、以下の成分:滅菌希釈剤(例えば、注射用蒸留水、食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒);抗菌物質(例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン);酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム;キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸);緩衝液(例えば、アセテート、シトレートまたはホスフェートおよび張度の調節のための物質(例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース)が挙げられ得る。pHは、酸または塩基(例えば、塩酸または水酸化ナトリウム)を用いて調節され得る。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチック製の、アンプル、使い捨て注射器または反復投与バイアルに封入され得る。
注射可能な使用に適した薬学的組成物としては、滅菌の注射可能な溶液または分散液の即席調製物用の滅菌水溶液(水溶性である)または分散液および滅菌粉末が挙げられる。静脈内投与について、適切な担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor ELTM(BASF,Parsippany,NJ)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。すべての場合において、組成物は、滅菌でなければならず、かつ容易に注射できる程度の流動性であるべきである。製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、かつ微生物(例えば、細菌および菌類)の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)およびそれらに適した混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合は求められる粒径の維持および界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の予防は、様々な抗菌性物質および抗真菌性物質、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成され得る。多くの場合、組成物中に等張性物質、例えば、糖、多価アルコール(例えば、マンニトール(manitol)、ソルビトール)および塩化ナトリウムを含むのが好ましいであろう。組成物中に吸収を遅延させる物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含むことによって注射可能な組成物の長期の吸収がもたらされ得る。
注射可能な滅菌溶液は、上で列挙された成分の1つまたは組み合わせで、適切な溶媒中に必要量でPGC−1β活性を調節する物質(例えば、PGC−1βタンパク質または抗PGC−1β抗体のフラグメント)を組み込むことによって調製され得て、必要に応じて、濾過滅菌される。一般に、分散液は、活性化合物を基本的な分散媒および上で列挙されたものから必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製され得る。滅菌注射可能な溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製の好ましい方法は、それらの予めフィルター滅菌された溶液から任意の追加の所望成分に加えて活性な成分の粉末を得る真空乾燥および凍結乾燥である。
経口組成物は、一般に不活性な希釈剤または可食の担体を含む。それらは、ゼラチンカプセルに封入され得るか、または錠剤に圧縮され得る。経口の治療的投与の目的で、活性化合物は、賦形剤とともに組み込まれ得て、錠剤、トローチ剤またはカプセルの形態で使用され得る。経口組成物はまた、うがい薬としての使用にむけて流体の担体を使用して調製され得る。ここで、流体の担体中の化合物は、経口的に投与され、くちゅくちゅされ、吐き出されるかまたは嚥下される。薬剤的に適合する結合物質および/または補助剤は、組成物の一部として含まれ得る。錠剤、丸剤、カプセル、トローチ剤などは、任意の類似の性質の以下の成分または化合物:結合剤(例えば、微結晶性セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチン);賦形剤(例えば、デンプンもしくはラクトース、崩壊剤(例えば、アルギン酸、Primogelもしくはトウモロコシデンプン);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムもしくはSterotes);滑剤(glidant)(例えば、コロイド状二酸化ケイ素;甘味剤(例えば、スクロースもしくはサッカリン);または着香料(例えば、ペパーミント、サリチル酸メチルもしくはオレンジ香味料)を含有し得る。
吸入による投与にむけて、化合物は、適切な噴霧剤(例えば、二酸化炭素などのガス)を含有する圧縮された容器もしくはディスペンサーまたは噴霧器からのエアロゾル噴霧の形態で送達される。
全身性投与もまた、経粘膜的または経皮的な手段によって実施され得る。経粘膜的または経皮的投与のために、透過される障壁に適切な浸透剤が、製剤形態で使用される。このような浸透剤は、一般に当該分野で公知であり、例えば、経粘膜的投与のために、界面活性剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜的投与は、点鼻薬または坐剤の使用を通じて達成され得る。経皮的投与のために、活性化合物は、一般に当該分野で公知なように軟膏剤(ointment)、軟膏剤(salve)、ゲルまたはクリームに処方される。
PGC−1β活性を調節する物質はまた、坐剤(例えば、通常の坐剤基剤(例えば、ココアバターおよび他のグリセリド)とともに)または直腸送達のための保持浣腸の形態で調製され得る。
1つの実施形態において、PGC−1β活性を調節する物質は、移植片およびマイクロカプセル化した送達システムを含む制御された放出製剤形態で、身体からの迅速な排出に対して化合物を保護し得る担体とともに調製される。生分解性で生体適合性のポリマーとしては、例えば、エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸が使用され得る。このような製剤形態の調製のための方法は、当業者に明らかであろう。材料はまた、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に入手することができる。リポソームの懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を有する感染細胞に標的化されたリポソームを含む)はまた、薬学的に許容可能な担体として使用され得る。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されているような当業者に公知の方法に従って調製され得る。
経口または非経口の組成物を処方することは、投与しやすい剤形単位および均一な投与量という点で特に有利である。本明細書中で使用されるとき、剤形単位とは、処置される被験体に対する単一の投与量として適した物理的に分離した単位のことをいい;各単位は、必要な薬学的担体に関連して所望の治療的効果を発揮するように計算された所定の量の活性化合物を含有する。本発明の剤形単位に対する規格は、PGC−1β活性および達成されるべき特定の治療的効果を調節する物質の特有の特徴および被験体の処置に向けてこのような物質を配合する当該分野に固有の制限によって規定され、これらに直接依存する。
このような物質の毒性および治療的効能は、例えば、LD50(集団の50%に対する致死量)およびED50(集団の50%における治療有効量)を測定するために細胞培養物または実験動物において標準的な薬学的手順によって測定され得る。毒性と治療的効果との間の用量比は、治療的指標であり、LD50/ED50比として表され得る。大きい治療的指標を示す物質が好ましい。有毒な副作用を示す物質が使用され得るが、感染していない細胞に対する損傷の可能性を最小にするために、患部組織の部位にこのような物質を標的化する送達システムを設計するように注意が払われるべきであり、それによって副作用が減少する。
細胞培養アッセイおよび動物研究から得られるデータは、ヒトにおける使用についての投与量の範囲を計画する際に使用され得る。このようなPGC−1β調節物質の投与量は、好ましくは毒性がほとんどないか、または全くないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、使用される投与形態および利用される投与の経路に依存してこの範囲内で変動し得る。本発明の治療的方法において使用される任意の物質について、治療に有効な用量は、初めに細胞培養アッセイから評価され得る。細胞培養において決定されるように、用量は、IC50(すなわち、症状の最大半量の阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように動物モデルにおいて計画され得る。このような情報は、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定するために使用され得る。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィによって計測され得る。
本明細書中で定義されるとき、治療有効量のタンパク質またはポリペプチド(すなわち、有効量)は、約0.001〜30mg/kg体重、好ましくは約0.01〜25mg/kg体重、より好ましくは約0.1〜20mg/kg体重およびなおもより好ましくは約1〜10mg/kg、2〜9mg/kg、3〜8mg/kg、4〜7mg/kgまたは5〜6mg/kg体重にわたる。当業者は、特定の要因が被験体を効果的に処置するのに必要な投与量に影響を及ぼし得ることを認識し得る。その要因としては、疾患または障害の重症度、事前の処置、被験体の身体全体の健康および/または年齢ならびに他の疾患の存在が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、治療有効量の低分子、核酸分子、タンパク質、siRNAまたは抗体による被験体の処置は、単一の処置を含み得るか、または好ましくは、一連の処置を含み得る。
好ましい実施例において、被験体は、約1〜10週間、好ましくは2〜8週間、より好ましくは約3〜7週間およびなおもより好ましくは約4、5または6週間の1週間あたり1回、約0.1〜20mg/kg体重の範囲の抗体、タンパク質またはポリペプチドで処置される。処置に使用される抗体、タンパク質またはポリペプチドの有効量が、特定の処置にわたって増加または減少し得ることも認識され得る。投与量の変更は、本明細書中に記載される診断アッセイの結果に起因し得て、そして明らかになり得る。
本発明は、発現または活性を調節する物質を包含する。物質は、例えば、低分子であり得る。例えば、このような低分子としては、ペプチド、ペプチド模倣物、アミノ酸、アミノ酸アナログ、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドアナログ、ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、約10,000グラム/モル未満の分子量を有する有機化合物または無機化合物(すなわち、ヘテロ有機化合物および有機金属化合物を含む)、約5,000グラム/モル未満の分子量を有する有機化合物または無機化合物、約1,000グラム/モル未満の分子量を有する有機化合物または無機化合物、約500グラム/モル未満の分子量を有する有機化合物または無機化合物ならびにこのような化合物の塩、エステルおよび他の薬学的に許容可能な形態が挙げられるが、これらに限定されない。低分子物質の適切な用量は、通常熟練した医師、獣医師または研究者の知識の範囲内の多くの因子に依存することが理解される。低分子の用量は、例えば、処置される被験体またはサンプルの個性、大きさおよび条件に依存し、さらに組成物が適用可能である場合、投与される経路;ならびに当業者が本発明の核酸またはポリペプチドに対して有する低分子に望む効果に依存して変動し得る。
例示的な用量としては、被験体またはサンプルの重量の1キログラムあたりの低分子の量のミリグラムまたはマイクログラム(例えば、約1マイクログラム/キログラム〜約500ミリグラム/キログラム、約100マイクログラム/キログラム〜約5ミリグラム/キログラムまたは約1マイクログラム/キログラム〜約50マイクログラム/キログラム)を含む。低分子の適切な用量は、調節される発現または活性に関する低分子の効力に依存することがさらに理解される。このような適切な用量は、本明細書中に記載されるアッセイを使用して決定され得る。PGC−1β分子の発現または活性を調節するために、1以上のこれらの低分子が、動物(例えば、ヒト)に投与されるとき、医師、獣医師または研究者は、適切な応答が得られるまで、例えば、最初は比較的低用量で、その後用量を増加して処方し得る。さらに、任意の特定の動物被験体に対する特異的な用量レベルが、使用される特異的な化合物の活性、年齢、体重、身体全体の健康、性別および被験体の食餌、投与回数、投与経路、排出速度、任意の薬物併用および調節される発現または活性の程度(例えば、アゴニストまたはアンタゴニストの意図された使用)を含む種々の因子に依存し得ることが理解される。
本発明はまた、RNA干渉物質(例えば、PGC−1βを標的化するsiRNA分子)を包含する。本明細書中で定義されるとき、RNA干渉物質(例えば、siRNA)の治療有効量(すなわち、有効量)は、約0.001〜3,000mg/kg体重、好ましくは約0.01〜2500mg/kg体重、より好ましくは約0.1〜2000、約0.1〜1000mg/kg体重、0.1〜500mg/kg体重、0.1〜100mg/kg体重、0.1〜50mg/kg体重、0.1〜25mg/kg体重およびなおもより好ましくは約1〜10mg/kg、2〜9mg/kg、3〜8mg/kg、4〜7mg/kgまたは5〜6mg/kg体重にわたる。治療有効量のRNA干渉物質での被験体の処置は、単回処置を含み得るか、または好ましくは、一連の処置を含み得る。好ましい実施例において、被験体は、約1〜10週間、好ましくは2〜8週間、より好ましくは約3〜7週間およびなおもより好ましくは約4、5または6週間、1週間に1回、約0.1〜20mg/kg体重の範囲のRNA干渉物質で処置される。
さらに、抗体(またはそのフラグメント)は、治療的部分、例えば、細胞毒、治療薬または放射性金属イオンに結合体化され得る。細胞毒または細胞傷害性物質は、細胞に有害な任意の物質を含む。例としては、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロミド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロールおよびピューロマイシンならびにこれらのアナログまたはホモログが挙げられる。治療薬としては、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルダカルバジン(decarbazine))、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパ(thioepa)クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンCおよびシス−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前のダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシンおよびアントラマイシン(AMC))ならびに抗有糸分裂物質(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の結合体は、所与の生物学的応答を改変するために使用され得、その薬物部分は、伝統的な化学治療薬に限定されるように解釈されない。例えば、薬物部分は、所望の生物学的活性を有するタンパク質またはポリペプチドであり得る。このようなタンパク質としては、例えば、トキシン(例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素もしくはジフテリアトキシン);タンパク質(例えば、腫瘍壊死因子、α−インターフェロン、β−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノゲンアクチベーター;または生物学的応答修飾因子(modifier)(例えば、リンフォカイン、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)もしくは他の成長因子など)が挙げられ得る。
このような治療的部分を抗体へ結合体化するための技術は、周知であり、例えば、Arnon et al.,“Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy,”in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Reisfeld et al.(eds.),pp.243−56(Alan R.Liss,Inc.1985);Hellstrom et al.,“Antibodies For Drug Delivery,”in Controlled Drug Delivery(2nd Ed.),Robinson et al.(eds.),pp.623−53(Marcel Dekker,Inc.1987);Thorpe,“Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review,”in Monoclonal Antibodies ’84:Biological And Clinical Applications,Pinchera et al.(eds.),pp.475−506(1985);“Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy,”in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy,Baldwin et al.(eds.),pp.303−16(Academic Press 1985)、およびThorpe et al.,“The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates,”Immunol.Rev.,62:119−58(1982)を参照のこと。あるいは、抗体は、Segalによる米国特許第4,676,980号に記載されているような抗体へテロ結合体(heteroconjugate)を形成する二次抗体に結合体化され得る。
本発明の方法において使用される核酸分子は、ベクターに挿入され得、そして遺伝子治療ベクターとして使用され得る。遺伝子治療ベクターは、例えば、静脈内注射、局所的な投与(米国特許第5,328,470号を参照のこと)または定位的注入(例えば、Chen et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci USA 91:3054−3057を参照のこと)によって被験体に送達され得る。遺伝子治療ベクターの薬学的調製物は、許容可能な希釈剤中に遺伝子治療ベクターを含み得るか、または遺伝子送達ビヒクルが包埋される緩効性マトリックスを含み得る。あるいは、完全な遺伝子送達ベクターが、組換え細胞(例えば、レトロウイルスベクター)から無傷で生成され得るとき、薬学的調製物は、遺伝子送達システムを生成する1以上の細胞を含み得る。
(III.予測医学:)
本発明はまた、診断アッセイ、予後アッセイおよび臨床試験のモニタリングが、予後(予測)目的に使用され、それによって個体を予防的に処置する予測医学の分野に関する。従って、本発明の1つの局面は、生物学的サンプル(例えば、血液、血清、体液、細胞(例えば、肝細胞)または組織(例えば、肝臓組織))に関してPGC−1βタンパク質および/または核酸発現ならびにPGC−1β活性を測定するための診断アッセイに関し、それによって、個体が脂質関連疾患または障害に罹患しているか否か、脂質関連疾患または障害が脂質関連疾患または障害を発症する危険性を有するか否かを判定する。本発明はまた、個体が脂質関連疾患または障害を発症する危険性があるか否かを決定するための予後(または予測)アッセイを提供する。例えば、PGC−1β遺伝子における変異が、生物学的サンプルにおいてアッセイされ得る。このようなアッセイは、予後または予測目的に使用され得て、それによって、脂質関連疾患または障害の発病の前に個体を予防的に(phophylactically)処置する。
1つの特定の実施形態は、被験体が脂質関連疾患または障害を発症する危険性を有する脂質関連疾患または障害に罹患しているか否かを評価する方法を含み、この方法は、被験体の細胞または組織サンプルにおけるPGC−1β遺伝子またはPGC−1βの活性の発現を検出する工程を含む。ここでPGC−1β遺伝子の発現の増加またはPGC−1βの活性の増加は、被験体における脂質関連疾患もしくは障害の存在または脂質関連疾患もしくは障害を発症する危険性を示す。この実施形態において、試験される被験体サンプルは、例えば、血液、血清、体液、細胞(例えば、肝細胞)または組織(例えば、肝臓組織)である。
本発明の別の局面は、臨床試験におけるPGC−1βの発現または活性に対するPGC−1β調節因子の影響をモニターすることに関する。
このような物質および他の物質は、以下の節にさらに詳細に記載される。
(A.予後および診断アッセイ)
被験体が、脂質関連疾患もしくは障害に罹患しているか否か、または脂質関連疾患もしくは障害を発症する危険性を有するか否かを判定するために、生物学的サンプルを、被験体から入手し得て、そしてその生物学的サンプルを、生物学的サンプルにおいて、PGC−1βタンパク質またはPGC−1βタンパク質をコードする核酸(例えば、mRNAもしくはゲノムDNA)を検出することができる化合物または物質と接触させ得る。
PGC−1β mRNAまたはゲノムDNAを検出するための好ましい物質は、PGC−1β mRNAまたはゲノムDNAにハイブリダイズすることができる標識された核酸プローブである。核酸プローブは、例えば、配列番号1に記述されているPGC−1β核酸またはその一部であり得る。例えば、少なくとも15、20、25、30、25、40、45、50、100、250または500ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドおよびストリンジェントな条件下でPGC−1β mRNAまたはゲノムDNAに特異的にハイブリダイズするのに十分なオリゴヌクレオチドであり得る。本発明の診断アッセイにおける使用に対して他の適切なプローブは、本明細書中に記載される。
用語「生物学的サンプル」は、被験体から単離した組織、細胞および生体液ならびに被験体内に存在する組織、細胞および体液(例えば、血液、血清、体液、細胞(例えば、肝細胞)または組織(例えば、肝臓組織))を含むと意図される。つまり、本発明の検出方法は、生物学的サンプル内のPGC−1β mRNA、タンパク質またはゲノムDNAをインビトロならびにインビボで検出するために使用され得る。例えば、PGC−1β mRNAを検出するためのインビトロ技術としては、ノーザンハイブリダイゼーションおよびインサイチュハイブリダイゼーションが挙げられる。PGC−1βタンパク質を検出するためのインビトロ技術としては、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ウエスタンブロット、免疫沈降および免疫蛍光法が挙げられる。PGC−1βゲノムDNAを検出するためのインビトロ技術としては、サザンハイブリダイゼーションが挙げられる。さらに、PGC−1βタンパク質を検出するためのインビボ技術としては、標識された抗PGC−1β抗体を被験体に導入することが挙げられる。例えば、抗体は、被験体中の存在および位置が、標準的なイメージング技術によって検出され得る放射性マーカーで標識され得る。
別の実施形態において、本方法はさらに、コントロール被験体からコントロール生物学的サンプルを得る工程、コントロールサンプルをPGC−1βタンパク質、mRNAまたはゲノムDNAを検出することができる化合物または物質と接触させて、PGC−1βタンパク質、mRNAまたはゲノムDNAの存在が生物学的サンプルにおいて検出される工程およびコントロールサンプルにおけるPGC−1βタンパク質、mRNAまたはゲノムDNAの存在を試験サンプルにおけるPGC−1βタンパク質、mRNAまたはゲノムDNAの存在と比較する工程を含む。
被験体における1以上のPGC−1β多型領域の解析は、被験体が、脂質関連疾患または障害を有するかまたは発症する可能性があるか否かを予測するために有用であり得る。好ましい実施形態において、本発明の方法は、被験体由来の細胞のサンプルにおける、PGC−1β遺伝子の1以上の多型領域の特異的な対立遺伝子改変体の存在または非存在を検出する工程を含むことで特徴付けられ得る。対立遺伝子の差異は:(i)少なくとも1つヌクレオチドの同一性における違いまたは(ii)ヌクレオチドの数の違いであり得る。この差異は、単一のヌクレオチドまたはいくつかのヌクレオチドであり得る。本発明はまた、PGC−1β遺伝子の差異、例えば、染色体再編成(例えば、染色体転位)を検出する方法を提供する。本発明はまた、出生前診断に使用され得る。
好ましい検出方法は、多型部位と重複するプローブおよび多型領域周辺の約5、10、20、25または30ヌクレオチドを有するプローブを使用した対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーションである。本発明の好ましい実施形態において、対立遺伝子改変体に特異的にハイブリダイズすることができるいくつかのプローブは、固相支持物(例えば、「チップ」)に付着される。オリゴヌクレオチドは、リソグラフィーを含む種々のプロセスによって固体支持物に結合され得る。例えば、チップは、最大250,000個のオリゴヌクレオチドを保持し得る(GeneChip、Affymetrix)。オリゴヌクレオチドを備えるこれらのチップを使用した変異検出解析は、「DNAプローブアレイ」とも呼ばれ、例えば、Cronin et al.(1996)Human Mutation7:244に記載されている。1つの実施形態において、チップは、遺伝子の少なくとも1つの多型領域のすべての対立遺伝子改変体を含む。次いで固相支持物は、試験核酸と接触され、そして特異的プローブへのハイブリダイゼーションが検出される。従って、1以上の遺伝子の多数の対立遺伝子改変体の同一性は、単純なハイブリダイゼーション実験において同定され得る。例えば、5’上流制御エレメントにおけるヌクレオチド多型の対立遺伝子改変体の同一性は、単一のハイブリダイゼーション実験において決定され得る。
他の検出方法において、対立遺伝子改変体を同定する前に、最初にPGC−1β遺伝子の少なくとも一部を増幅する必要がある。増幅は、当該分野で公知の方法に従って、例えば、PCRおよび/またはLCR(Wu and Wallace、(1989)Genomics 4:560を参照のこと)によって実施され得る。1つの実施形態において、細胞のゲノムDNAは、2つのPCRプライマーに曝露されて、必要量の増幅されたDNAを生成するのに十分なサイクル数で増幅される。好ましい実施形態において、プライマーは、150〜350塩基対離れて位置する。
別の増幅方法としては:自己保持配列複製(self sustained sequence replication)(Guatelli,J.C.et al.,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874−1878)、転写増幅システム(Kwoh,D.Y.et al.,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173−1177)、Q−ベータレプリカーゼ(Lizardi,P.M.et al.,1988,Bio/Technology 6:1197)および自己保持配列複製(Guatelli et al.,(1989)Proc.Nat.Acad.Sci.87:1874)および核酸に基づく配列増幅(NABSA)または他の任意の核酸増幅方法が挙げられ、それに続いて、当該分野で周知の技術を使用して増幅された分子が検出される。これらの検出機構は、このような分子が非常に少ない数で存在する場合、核酸分子の検出に特に有用である。
1つの実施形態において、当該分野で公知の任意の種々の配列決定反応が、サンプル配列の配列を対応する参照(コントロール)配列と比較することによってPGC−1β遺伝子の少なくとも一部を直接配列決定するためおよび対立遺伝子改変体(例えば、変異)を検出するために使用され得る。例示的な配列決定反応は、MaxamおよびGilbert(Proc.Natl Acad Sci USA(1977)74:560)またはSanger(Sanger et al.(1977)Proc.Nat.Acad.Sci 74:5463)によって開発された技術に基づいたものを含む。任意の種々の自動配列決定方法は、質量分析による配列決定(例えば、米国特許第5,547,835号およびH.KosterによるDNA Sequencing by Mass Spectrometryと題される国際特許出願公開番号WO94/16101;米国特許第5,547,835号およびH.Kosterによる「DNA Sequencing by Mass Spectrometry Via Exonuclease Degradation」と題される国際特許出願公開番号WO94/21822および米国特許第5,605,798号およびH.KosterによるDNA Diagnostics Based on Mass Spectrometryと題される国際特許出願番号PCT/US96/03651;Cohen et al.(1996)Adv Chromatogr 36:127−162;およびGriffin et al.(1993)Appl Biochem Biotechnol 38:147−159を参照のこと)を含む被験者アッセイ(Biotechniques(1995)19:448)を実施するときに利用され得ることもまた企図される。特定の実施形態について、たった1つ、2つまたは3つの核酸塩基の存在が配列決定反応において決定される必要があることは、当業者には明らかであり得る。例えば、A−trackなど(例えば、1ヌクレオチドだけが検出される)が実施され得る。
なおも他の配列決定方法は、例えば、「Method of DNA sequencing employing a mixed DNA−polymer chain probe」と題される米国特許第5,580,732号および「Method for mismatch−directed in vitro DNA sequencing」と題される米国特許第5,571,676号に開示されている。
いくつかの場合において、被験体由来のDNAにおけるPGC−1β遺伝子の特異的な対立遺伝子の存在は、制限酵素解析によって示され得る。例えば、特異的なヌクレオチド多型は、別の対立遺伝子改変体のヌクレオチド配列にない制限部位を含むヌクレオチド配列を生じ得る。
さらなる実施形態において、切断物質(例えば、ヌクレアーゼ、ヒドロキシルアミンまたは四酸化オスミウムおよびピペリジンを含む物質)からの保護は、RNA/RNA DNA/DNAまたはRNA/DNAへテロ二重鎖(Myers,et al.(1985)Science 230:1242)におけるミスマッチの塩基を検出するために使用され得る。一般に、「ミスマッチ切断」の技術は、PGC−1β対立遺伝子改変体のヌクレオチド配列を含むコントロール核酸(必要に応じて標識される)(例えば、RNAまたはDNA)と、組織サンプルから得られたサンプル核酸(例えば、RNAまたはDNA)とをハイブリダイズすることによって形成されるヘテロ二重鎖を得ることによって開始される。二本鎖二重鎖は、コントロール鎖とサンプル鎖との間の塩基対ミスマッチに基づいて形成される二重鎖のような二重鎖の一本鎖領域を切断する物質で処置される。例えば、RNA/DNA二重鎖は、RNアーゼで処置され得、そしてDNA/DNAハイブリッドは、ミスマッチ領域を酵素的に消化するS1ヌクレアーゼで処置され得る。他の実施形態において、DNA/DNA二重鎖またはRNA/DNA二重鎖のいずれかは、ヒドロキシルアミンまたは四酸化オスミウムで処置され得、そしてミスマッチ領域を消化するためにピペリジンで処置され得る。ミスマッチ領域の消化後、生じた材料は、コントロールおよびサンプル核酸が同一ヌクレオチド配列を有するか否かまたはどのヌクレオチドが異なるかを決定するために変性ポリアクリルアミドゲル上で大きさによって分離される。例えば、Cotton et al.(1988)Proc.Natl Acad Sci USA 85:4397;Saleeba et al.(1992)Methods Enzymol.217:286−295を参照のこと。好ましい実施形態において、コントロールまたはサンプル核酸は、検出のために標識される。
別の実施形態において、対立遺伝子改変体は、変性高速液体クロマトグラフィ(DHPLC)(Oefher and Underhill,(1995)Am.J.Human Gen.57:Suppl.A266)によって同定され得る。DHPLCは、そのフラグメント内の特定のヌクレオチド座でヘテロ接合である個体由来のPCRフラグメントの増幅の間に生成されるヘテロ二重鎖を検出するために逆相イオンペアークロマトグラフィを使用する(Oefher and Underhill(1995)Am.J.Human Gen.57:Suppl.A266)。一般に、PCR産物は、目的のDNAに隣接するPCRプライマーを使用して生成される。DHPLC解析が実施され、そして生じたクロマトグラムが、特異的クロマトグラフィのプロファイルに基づいて塩基対の変化または欠失を同定するために解析される(O’Donovan et al.(1998)Genomics 52:44−49を参照のこと)。
他の実施形態において、電気泳動の移動度の変化は、PGC−1β対立遺伝子改変体のタイプを同定するために使用される。例えば、一本鎖高次構造多型(SSCP)は、変異体核酸と野生型核酸との間の電気泳動の移動度の差を検出するために使用され得る(Orita et al.(1989)Proc Natl.Acad.Sci USA 86:2766;またCotton(1993)Mutat Res 285:125−144;およびHayashi(1992)Genet Anal Tech Appl 9:73−79を参照のこと)。サンプルおよびコントロール核酸の一本鎖DNAフラグメントは、変性されて、そして再生されることが可能である。一本鎖核酸の二次構造は、配列に従って変化し、電気泳動の移動度において生じた変化は、一塩基の変化さえも検出することができる。DNAフラグメントは、標識され得るか、または標識されたプローブで検出され得る。アッセイの感度は、その二次構造が配列における変化に対してより感受性であるRNA(むしろDNA)を使用することによって増強され得る。別の好ましい実施形態において、被験体方法は、電気泳動の移動度における変化に基づいて二本鎖ヘテロ二重鎖分子を分離するヘテロ二重鎖解析を利用する(Keen et al.(1991)Trends Genet 7:5)。
なおも別の実施形態において、多型領域の対立遺伝子改変体の同一性は、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)を使用してアッセイされる、変性剤の勾配を有するポリアクリルアミドゲルにおける多型領域を含む核酸の移動を解析することによって得られる(Myers et al.(1985)Nature 313:495)。DGGEが解析の方法として使用されるとき、DNAは、例えば、約40bpの高融解GCリッチDNAのGCクランプを追加することによって、PCRによって完全に変性しないことを保証するように改変され得る。さらなる実施形態において、温度勾配が、コントロールおよびサンプルDNAの移動度における差を同定するために変性剤勾配の代わりに使用される(Rosenbaum and Reissner(1987)Biophys Chem 265:1275)。
2つの核酸の間の少なくとも1つのヌクレオチドの差を検出するための技術の例としては、選択的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、選択的増幅または選択的プライマー伸長が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、既知の多型性ヌクレオチドが中心に置かれるオリゴヌクレオチドプローブ(対立遺伝子特異的プローブ)が、調製され得、そして、完全な一致が見られる場合のみハイブリダイゼーションが可能である条件下で標的DNAにハイブリダイズされ得る(Saiki et al.(1986)Nature 324:163);Saiki et al.(1989)Proc.Natl Acad.Sci USA 86:6230;およびWallace et al.(1979)Nucl.Acids Res.6:3543)。このような対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション技術は、PGC−1βの様々な多型領域におけるいくつかのヌクレオチド変化の同時検出に使用され得る。例えば、特異的な対立遺伝子改変体のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイズ膜に付着し、そしてこの膜は、標識されたサンプル核酸とハイブリダイズされる。そしてハイブリダイゼーションシグナルの解析は、サンプル核酸のヌクレオチドの同一性を明らかにし得る。
あるいは、選択的PCR増幅に依存する対立遺伝子特異的増幅技術は、当該発明と同時に使用され得る。特異的増幅についてプライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドは、目的の対立遺伝子改変体を分子の中心に保持し得る(そのため、増幅は、ディファレンシャルハイブリダイゼーションに依存する)(Gibbs et al.(1989)Nucleic Acids Res.17:2437−2448)か、または適切な条件下でミスマッチがポリメラーゼ伸長を妨害または低減させ得る1つのプライマーの3’末端の先端に保持し得る(Prossner(1993)Tibtech 11:238;Newton et al.(1989)Nucl.Acids Res.17:2503)。この技術はまた、プローブオリゴ塩基伸長(Probe Oligo Base Extension)「PROBE」と呼ばれる。さらに、切断に基づく検出を可能にするために変異の領域に新規制限部位を導入することが望ましい可能性がある(Gasparini et al.(1992)Mol.Cell Probes 6:1)。
別の実施形態において、対立遺伝子改変体の同定は、例えば、米国特許第4,998,617号およびLandegren,U.et al.、(1988)Science 241:1077−1080に記載されているようなオリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)を使用して実施される。OLAプロトコールは、標的の一本鎖の隣接する配列にハイブリダイズすることができるように設計される2つのオリゴヌクレオチドを使用する。一方のオリゴヌクレオチドは、分離マーカー(例えば、ビオチン化されたマーカー)に連結され、そして他方は、検出可能に標識される。正確な相補配列が標的分子中に見られる場合、オリゴヌクレオチドは、それらの末端が隣接し、そしてライゲーション基質を生成するようにハイブリダイズし得る。そしてライゲーションにより、標識されたオリゴヌクレオチドをアビジンまたは別のビオチンリガンドを使用して回収することが可能になる。Nickerson,D.A.et al.は、PCRおよびOLAの特質を併用する核酸検出アッセイを記載している(Nickerson、D.A.et al.、(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)87:8923−8927)。この方法において、PCRは、標的DNAの指数関数的な増幅を達成するために使用され、そしてOLAを使用して検出される。
このOLA法に基づくいくつかの技術が開発されており、そしてPGC−1β遺伝子の多型領域の特異的な対立遺伝子改変体を検出するために使用され得る。例えば、米国特許第5,593,826号は、ホスホルアミデート結合を有する結合体を形成する、3’−アミノ基および5’−リン酸化オリゴヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドを使用するOLAを開示する。Tobe et al.((1996)Nucleic Acids Res 24:3728)に記載されるOLAの別の変形において、PCRと併用されるOLAにより、単一のマイクロタイターウェルにおいて2つの対立遺伝子のタイピングが可能になる。対立遺伝子特異的プライマーの各々を独特のハプテン、すなわちジゴキシゲニンおよびフルオレセインで標識することによって、各OLA反応は、様々な酵素レポーター、アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼで標識されたハプテン特異的抗体を使用して検出され得る。このシステムにより、2つの異なる色を産生させるハイスループットな形式を使用して2つの対立遺伝子の検出が可能になる。
本発明はさらに、PGC−1β遺伝子における単一ヌクレオチド多型を検出する方法を提供する。単一ヌクレオチド多型が、不変な配列の領域に隣接される変異の部位を構成するので、それらの解析は、変異の部位に存在する単一ヌクレオチドの同一性の決定を必要とするだけで、各被験体について完全な遺伝子配列を決定する必要がない。いくつかの方法が、このような単一ヌクレオチド多型の解析を促進するために開発されている。
1つの実施形態において、一塩基多型は、例えば、Mundy,C.R.(米国特許第4,656,127号に開示されているような特殊化したエキソヌクレアーゼ抵抗性ヌクレオチドを使用して検出され得る。この方法によると、多型部位の3’に隣接して対立遺伝子の配列に相補的なプライマーは、特定の動物またはヒトから得られた標的分子にハイブリダイズすることが可能になる。標的分子上の多型部位が、存在する特定のエキソヌクレアーゼ抵抗性ヌクレオチド誘導体に相補的なヌクレオチドを有する場合、その誘導体は、ハイブリダイズされるプライマーの末端に組み込まれ得る。このような組み込みは、エキソヌクレアーゼに抵抗性のプライマーを生成し、それによってその検出が可能になる。サンプルのエキソヌクレアーゼ抵抗性誘導体の同一性が既知である場合、プライマーがエキソヌクレアーゼに抵抗性になっているという知見により、標的分子の多型部位に存在するヌクレオチドが、反応に使用されるヌクレオチド誘導体に相補的であることが明らかになる。この方法は、大量の無関係な配列データの決定を必要としないという利点を有する。
本発明の別の実施形態において、溶液に基づく方法は、多型部位のヌクレオチドの同一性を決定するために使用される(Cohen,D.et al.(仏国特許第2,650,840号;PCT出願番号WO91/02087)。米国特許第4,656,127号のMundy法におけるように、多型部位の3’に隣接して対立遺伝子の配列に相補的であるプライマーが使用される。その方法は、多型部位のヌクレオチドに相補的である場合、プライマーの末端に組み込まれ得る標識されたジデオキシヌクレオチド誘導体を使用してその部位のヌクレオチドの同一性を決定する。
遺伝的ビット解析(Genetic Bit Analysis)またはGBAとして知られる別の方法は、Goelet,P.et al.によって記載されている(PCT出願番号92/15712)。Goelet,P.et al.の方法は、標識されたターミネーターと多型部位に対して3’の配列に相補的であるプライマーとの混合物を使用する。従って、組み込まれる標識されたターミネーターは、評価される標的分子の多型部位に存在するヌクレオチドによって決定され、それに相補的である。Cohen et al.の方法(仏国特許第2,650,840号;PCT出願番号WO91/02087)とは対照的に、Goelet,P.et al.の方法は、好ましくは、プライマーまたは標的分子が固相に固定化される、不均一な相アッセイである。
DNAにおける多型部位をアッセイするための、いくつかのプライマーが誘導するヌクレオチドの組み込み手順は、記載されている(Komher,J.S.et al.,Nucl.Acids.Res.17:7779−7784(1989);Sokolov,B.P.,Nucl.Acids Res.18:3671(1990);Syvanen,A. −C.,et al.,Genomics 8:684−692(1990);Kuppuswamy,M.N.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)88:1143−1147(1991);Prezant,T.R.et al.,Hum.Mutat.1:159−164(1992);Ugozzoli,L.et al.,GATA 9:107−112(1992);Nyren,P.et al.,Anal.Biochem.208:171−175(1993))。これらの方法は、それらすべてが、多型部位における塩基間を識別する標識されたデオキシヌクレオチドの組み込みに依存するという点でGBAとは異なる。このような形態において、シグナルが組み込まれるデオキシヌクレオチドの数に比例するので、同一のヌクレオチドの一続きで起きる多型は、一続きの長さに比例するシグナルを生じ得る(Syvanen,A. −C.,et al.,Amer.J.Hum.Genet.52:46−59(1993))。
PGC−1β遺伝子のコード領域に位置する多型領域の対立遺伝子改変体の同一性を決定するために、上記した方法よりなおも他の方法が使用され得る。例えば、変異したPGC−1βタンパク質をコードする対立遺伝子改変体の同定は、例えば、免疫組織化学または免疫沈降において、変異タンパク質を特異的に認識する抗体を使用することによって実施され得る。野生型PGC−1βまたはPGC−1βタンパク質の変異した形態に対する抗体は、当該分野で公知の方法に従って調製され得る。
あるいは、PGC−1βリガンドに結合するようなPGC−1βタンパク質の活性を計測することもできる。結合アッセイは、当該分野で公知であり、タンパク質の変異した形態への結合が、タンパク質の野生型への結合と異なるか否かを決定するために、例えば、被験体から細胞を得る工程および標識された脂質との結合実験を実施する工程を含む。
上で議論された、参照ポリペプチドあるいは変異PGC−1βポリペプチドまたはそれらの対立遺伝子改変体に対して作られた抗体は、疾患診断および予後に使用され得る。このような診断方法は、PGC−1βポリペプチド発現のレベルでの異常または構造の異常および/またはPGC−1βポリペプチドの組織、細胞もしくは細胞内の位置を検出するために使用され得る。構造の差としては、例えば、正常なPGC−1βポリペプチドと比較したときの変異PGC−1βポリペプチドの大きさ、電気陰性度または抗原性における差が挙げられ得る。解析される組織または細胞タイプ由来のタンパク質は、当業者に周知である技術(ウエスタンブロット解析が挙げられるが、これに限定されない)を使用して、容易に検出または単離され得る。ウエスタンブロット解析を実施するための方法の詳細な説明については、Sambrook et al.、1989、前出の第18章を参照のこと。本明細書中で使用されるタンパク質の検出および単離方法はまた、HarlowおよびLane、例えば、(Harlow,E. and Lane,D.,1988,“Antibodies:A Laboratory Manual,”Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York)(これらの全体が本明細書中に参考として援用される)に記載される方法であり得る。
これは、光学顕微鏡による検出、フローサイトメトリーによる検出または蛍光定量的な検出を組み合わせた、蛍光で標識された抗体(以下を参照のこと)を使用して、例えば、免疫蛍光技術によって達成され得る。本発明において有用な抗体(またはそれらのフラグメント)は、追加として、PGC−1βポリペプチドのインサイチュ検出のために免疫蛍光法または免疫電子顕微鏡において、組織学的に使用され得る。インサイチュ検出は、被験体から組織学的検体を取り出して、それに本発明の標識された抗体を適用することによって達成され得る。抗体(またはフラグメント)は、好ましくは生物学的サンプルに標識された抗体(またはフラグメント)をおおうことによって適用される。このような手順の使用を通して、PGC−1βポリペプチドの存在だけでなく、調べられる組織における分布も決定することができる。本発明を使用して、当業者は、このようなインサイチュ検出を達成するために、任意の種々の広範な組織学的方法(例えば、染色手順)が改変され得ることを容易に認識し得る。
固相支持物または担体は、抗原または抗体を結合することができる支持物として使用されることが多い。周知の支持物または担体としては、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然セルロースおよび加工セルロース、ポリアクリルアミド、斑れい岩ならびに磁鉄鉱が挙げられる。担体の性質は、本発明の目的で、ある程度可溶性か、または不溶性のいずれかであり得る。支持物の材料は、結合される分子が抗原または抗体に結合することができる限り、実質的にいかなる可能な構造形態をとっていてもよい。従って、支持物の形態は、ビーズまたは円柱状のような球状、試験管の内側の表面または棒の外側の表面であってもよい。あるいは、表面は平坦(例えば、シート、試験片など)であってもよい。好ましい支持物としては、ポリスチレンビーズが挙げられる。当業者は、抗体または抗原を結合するのに適した他の多くの担体を知り得るか、またはルーチン的な実験の使用によって同じものを確かめることができるであろう。
抗PGC−1βポリペプチド特異的抗体を標識するための1つの手段は、酵素に対する結合および酵素免疫測定法(EIA)における使用を介する(Voller、“The Enzyme Linked Immunosorbent Assay(ELISA),”Diagnostic Horizons 2:1−7,1978,Microbiological Associates Quarterly Publication,Walkersville,MD;Voller,et al.,J.Clin.Pathol.31:507−520(1978);Butler,Meth.Enzymol.73:482−523(1981);Maggio,(ed.)Enzyme Immunoassay,CRC Press,Boca Raton,FL,1980;Ishikawa,et al.,(eds.)Enzyme Immunoassay,Kgaku Shoin,Tokyo,1981)。抗体に結合する酵素は、例えば、分光光度的、蛍光定量的または視覚的な手段によって検出され得る化学的部分を生成するような様式で適切な基質、好ましくは色素産生性基質と反応し得る。抗体を検出可能に標識するために使用され得る酵素としては、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌性ヌクレアーゼ、δ−5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、α−グリセロホスフェート、デヒドロゲナーゼ、トリオースホスフェートイソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼおよびアセチルコリンエステラーゼが挙げられるがこれらに限定されない。検出は、酵素に対する色素産生性基質を使用する比色定量の方法によって達成され得る。検出はまた、類似の調製された標準物質と比較して、基質の酵素的反応の程度の視覚的な比較によって達成され得る。
検出はまた、任意の種々の他のイムノアッセイを使用して達成され得る。例えば、抗体または抗体フラグメントを放射性で標識することによって、ラジオイムノアッセイ(RIA)の使用を介して野生型のフィンガープリント遺伝子または変異ペプチドを検出することができる(例えば、Weintraub,B.,Principles of Radioimmunoassays,Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques,The Endocrine Society,March,1986を参照のこと。これは、本明細書中に参考として援用される)。放射性同位体は、ガンマカウンターもしくはシンチレーションカウンターの使用のような手段またはオートラジオグラフィによって検出され得る。
抗体を蛍光性化合物で標識することが可能である。蛍光的に標識された抗体が適切な波長の光線に曝露されるとき、その存在は、蛍光によって検出され得る。最も一般に使用される蛍光性標識化合物は、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フトアルデヒド(phthaldehyde)およびフルオレサミンである。抗体はまた、152Euなどの蛍光放射金属または他のランタン系列を使用して検出可能に標識され得る。これらの金属は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のような金属キレート基を使用して抗体に付着され得る。
抗体はまた、化学発光の化合物に結合することによって検出可能に標識され得る。そして化学発光のタグをつけた抗体の存在は、化学反応の間、生じるルミネセンスの存在を検出することによって決定される。特定の有用な化学発光の標識化合物の例は、ルミノール、イソルミノール、セロマティック(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルである。
同様に、生物発光の化合物は、本発明の抗体を標識するために使用され得る。生物発光は、触媒的タンパク質が化学発光の反応の効率を増大させる生物学的システムにおいて見られる化学発光のタイプである。生物発光のタンパク質の存在は、ルミネセンスの存在を検出することによって決定される。標識する目的の重要な生物発光の化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリンである。
多型領域がエキソンに位置する場合、遺伝子のコード部分または非コード部分のいずれかにおいて、対立遺伝子改変体の同一性は、mRNA、プレmRNAまたはcDNAの分子構造を決定するために決定され得る。分子構造は、ゲノムDNAの分子構造を決定するために任意の上記の方法を使用して決定され得る。
本明細書中に記載される方法は、上記したものなどの、本明細書中に記載される、少なくとも1つのプローブまたはプライマー核酸を備える、例えば、包装済みの診断キットを利用することによって実施され得る。それらのキットは、例えば、被験体が特異的なPGC−1β対立遺伝子改変体に関連する疾患を発症する危険性を有するか否か、または危険性があるか否かを判定するために都合よく使用され得る。
任意の上記した診断方法および予後方法によって解析されるサンプル核酸は、被験体の任意の細胞タイプまたは組織から得ることができる。例えば、被験体の体液(例えば、血液)は、公知の技術(例えば、静脈穿刺)によって得られ得る。あるいは、核酸試験は、乾燥サンプル(例えば、毛または皮膚)で実施され得る。胎児の核酸サンプルは、Bianchiに対する国際特許出願番号WO91/07660に記載されるように母親の血液から得ることができる。あるいは、羊膜細胞または絨毛膜絨毛が、出生前試験を実施するために入手され得る。
診断手順はまた、バイオプシーまたは切除から得られる被験体組織の組織切片(固定および/または凍結)上で、直接インサイチュで実施され得、核酸精製の必要はない。核酸試薬は、このようなインサイチュ法のためのプローブおよび/またはプライマーとして使用され得る(例えば、Nuovo、G.J.、1992、PCR in situ hybridization:protocols and applications,Raven Press,NYを参照のこと)。
1つの核酸配列の検出に主に注目した方法に加えて、プロファイルは、このような検出機構において評価され得る。フィンガープリントプロファイルは、例えば、ディファレンシャルディスプレイ法、ノーザン解析および/またはRT−PCRを利用することによって生成され得る。
(B.脂肪酸を分類するための診断アッセイ)
PGC−1βは、被験体における血液脂質プロファイルのこれらの構成要素の効果を予測するために食事成分を同定および分類するために使用され得る。従って、本発明は、細胞(例えば、肝細胞)を食事成分または脂肪酸を含有するサンプルと接触させて、PGC−1βの発現または活性の調節を計測することによって、食事成分およびアテローム生成的な脂肪酸を分類する方法を提供する。別の局面において、食事成分または脂肪酸は、被験体(例えば、哺乳動物)に投与され得、そしてPGC−1βの発現または活性の調節が計測される。
PGC−1βの発現または活性の増加は、アテロームを発生する可能性が高い脂肪酸(例えば、トランス脂肪または飽和脂肪)の存在を示す。アテロームを発生する可能性が高い食事成分は、被験体における、脂質生合成、脂質輸送、トリグリセリドレベルおよび/または血漿コレステロールレベルの増加を引き起こし得、そしてまた被験体において脂質関連疾患または障害を発症させ得る。PGC−1βの発現または活性の調節を計測する方法は上に記載している。1つの実施形態において、PGC−1βの発現または活性を増加させるアテローム生成的な脂肪酸または他の化合物を含有しないコントロールサンプルが利用される。
(C.臨床試験中の効果のモニタリング)
本発明はさらに、被験体において、脂質関連疾患または障害を処置もしくは予防するか、または脂質関連疾患または障害を発症する危険性を評価するときのPGC−1β調節因子(例えば、本明細書中で同定されるPGC−1β調節因子)の有効性を測定する方法を提供する。例えば、PGC−1β遺伝子発現、タンパク質レベルを上昇もしくは低下させるときまたはPGC−1β活性をアップレギュレートもしくはダウンレギュレートするときのPGC−1β調節因子の有効性は、上昇したかもしくは低下したPGC−1β遺伝子発現、タンパク質レベルまたはアップレギュレートもしくはダウンレギュレートしたPGC−1β活性を示す被験体の臨床試験においてモニターされ得る。このような臨床試験において、PGC−1β遺伝子および好ましくは、例えば、PGC−1β経路において関係付けられている他の遺伝子の発現または活性が、特定の細胞の表現型の「読み出し」またはマーカーとして使用され得る。
例えば、限定する目的ではないが、PGC−1β活性を調節する物質を用いた処置によって細胞において、調節されるPGC−1βを含む(例えば、本明細書中に記載されるスクリーニングアッセイにおいて同定される)遺伝子が同定され得る。従って、脂質関連疾患または障害に罹患している被験体におけるPGC−1β活性を調節する物質または予防薬として使用される物質の効果を研究するため、例えば、臨床試験のために、細胞が、単離され得、そしてRNAが調製され、PGC−1βおよびPGC−1β活性または発現に関係付けられる他の遺伝子の発現のレベルについて解析され得る。遺伝子発現のレベル(例えば、遺伝子発現パターン)は、明細書中に記載されるような、ノーザンブロット解析またはRT−PCRによってか、あるいは本明細書中に記載される方法の1つによって産生されるタンパク質の量を計測することまたはPGC−1βもしくは他の遺伝子の活性のレベルを計測することによって定量され得る。このような方法で、遺伝子発現パターンは、PGC−1β活性を調節する物質に対する細胞の生理学的応答を示すマーカーとして機能し得る。この応答状態は、PGC−1β活性を調節する物質を用いた個体の処置の前およびその間の様々な時点で測定され得る。
好ましい実施形態において、本発明は、PGC−1β活性を調節する物質(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド模倣物、タンパク質、ペプチド、核酸、siRNA、抗体または本明細書中に記載されるスクリーニングアッセイによって同定される低分子)を用いた被験体の処置の有効性をモニタリングする方法を提供する。この方法は、(i)物質の投与前に被験体から投与前サンプルを得る工程;(ii)投与前サンプルにおけるPGC−1βタンパク質、mRNAまたはゲノムDNAの発現のレベルを検出する工程;(iii)被験体から1以上の投与後サンプルを得る工程;(iv)投与後サンプルにおけるPGC−1βタンパク質、mRNAまたはゲノムDNAの発現または活性のレベルを検出する工程;(v)投与前サンプルにおけるPGC−1βタンパク質、mRNAまたはゲノムDNAの発現または活性のレベルを投与後サンプル(単数または複数)におけるPGC−1βタンパク質、mRNAまたはゲノムDNAと比較する工程;および(vi)それに応じて被験体に物質の投与を変更する工程を含む。例えば、物質の増加した投与は、検出されたレベルよりも高くするため、すなわち、物質の有効性を増加させるためにPGC−1βの発現または活性を増加または減少させることが望ましい可能性がある。このような実施形態によれば、PGC−1βの発現または活性は、観察可能な表現型の応答がない状態でも物質の有効性の指標として使用され得る。
(IV.本発明の方法において使用される組換え発現ベクターおよび宿主細胞)
本発明の方法(例えば、本明細書中に記載されるスクリーニングアッセイならびに治療的および/または予防的な方法)は、PGC−1βタンパク質(またはその一部)をコードする核酸を有するベクター、好ましくは発現ベクターの使用を含む。例えば、1つの実施形態において、PGC−1βタンパク質またはその一部をコードする核酸を有するベクターは、被験体における脂質関連疾患または障害を処置または予防するためにPGC−1βタンパク質またはその一部を被験体に送達するために使用され得る。1つの実施形態において、PGC−1βタンパク質またはその一部をコードする核酸を有するベクターは、本明細書中に記載されるような特定の細胞タイプ、器官または組織(例えば、肝細胞)に標的化される。
本明細書中で使用されるとき、用語「ベクター」とは、連結している別の核酸を輸送することができる核酸分子のことをいう。ベクターの1つのタイプは、「プラスミド」であり、これは、追加のDNAセグメントを連結することができる環状の二本鎖DNAループのことをいう。ベクターの別のタイプは、ウイルスベクターであり、これは追加のDNAセグメントをウイルスゲノムに連結することができる。一定のベクターは、導入される宿主細胞において自立的に複製することができる(例えば、複製の細菌起源を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入に依存して宿主細胞のゲノムに組み込まれる。そしてそれによって宿主ゲノムとともに複製される。さらに、一定のベクターは、作動可能に連結される遺伝子の発現を指示することができる。このようなベクターは、本明細書中で「発現ベクター」といわれる。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。本明細書において、プラスミドが、ベクターの最も一般に使用される形態であるので、「プラスミド」と「ベクター」は、交換可能に使用され得る。しかしながら、本発明は、等しく機能するウイルスベクターなどの発現ベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、複製欠損アデノウイルスおよび複製欠損アデノ随伴ウイルス)のこのような他の形態を含むことが意図される。
本発明の方法において使用される組換え発現ベクターは、宿主細胞における核酸の発現に適した形態の本発明の核酸を含み、このことは、組換え発現ベクターが、発現されるように核酸配列に作動可能に連結される、発現に使用される宿主細胞に基づいて選択される1以上の制御配列を含むことを意味する。組換え発現ベクターの内部で、「作動可能に連結される」とは、目的のヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列の発現を可能にする様式で(例えば、インビトロの転写/翻訳系またはベクターが宿主細胞に導入されるときの宿主細胞内で)制御配列(単数または複数)に連結されることを意味すると意図される。用語「制御配列」とは、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現コントロールエレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むと意図される。このような制御配列は、例えば、Goeddel(1990)Methods Enzymol.185:3−7に記載されている。制御配列は、宿主細胞の多くのタイプにおいてヌクレオチド配列の構成的発現を指示する配列および一定の宿主細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を指示する配列(例えば、組織特異的制御配列)を含む。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現のレベルなどの因子に依存し得ることが当業者によって理解され得る。本発明の発現ベクターは、宿主細胞に導入され得、それによって、本明細書中に記載されるような核酸によってコードされる、融合タンパク質またはペプチド(例えば、PGC−1βタンパク質、PGC−1βタンパク質の変異体の形態、融合タンパク質など)を含むタンパク質またはペプチドを産生する。
本発明の方法において使用される組換え発現ベクターは、原核細胞または真核細胞におけるPGC−1βタンパク質の発現のために設計され得る。例えば、PGC−1βタンパク質は、E.coliなどの細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを使用して)、酵母細胞または哺乳動物細胞において発現され得る。適切な宿主細胞は、Goeddel(1990)前出にさらに議論されている。あるいは、組換え発現ベクターは、例えば、T7プロモーター制御配列およびT7ポリメラーゼを使用してインビトロで転写および翻訳され得る。
原核生物におけるタンパク質の発現は、融合タンパク質または非融合タンパク質のいずれかの発現を指示する構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターを含むベクターを有するE.coli中で実施されることが最も多い。融合ベクターは、そこでコードされるタンパク質に、通常は組換えタンパク質のアミノ末端に多くのアミノ酸を追加する。このような融合ベクターは、代表的に3つの目的:1)組換えタンパク質の発現を増加させること;2)組換えタンパク質の溶解度を増大させること;および3)親和性精製におけるリガンドとして作用することによって組換えタンパク質の精製を助けることという役割を果たす。しばしば、融合発現ベクターにおいて、タンパク質分解性切断部位は、融合部分と組換えタンパク質との連結部に導入され、融合部分から組換えタンパク質の分離が可能になり、それに続いて融合タンパク質の精製が実施される。このような酵素およびそれらの同族の認識配列は、Factor Xa、トロンビンおよびエンテロキナーゼを含む。代表的な融合発現ベクターとしては、それぞれ、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質またはプロテインAを標的組換えタンパク質に融合する、pGEX(Pharmacia Biotech Inc;Smith,D.B.およびJohnson,K.S.(1988)Gene 67:31−40)、pMAL(New England Biolabs,Beverly,MA)ならびにpRIT5(Pharmacia,Piscataway,NJ)が挙げられる。
精製された融合タンパク質は、PGC−1β活性アッセイ(例えば、以下に詳細に記載される直接アッセイまたは競合アッセイ)において利用され得るか、またはPGC−1βタンパク質に対して特異的な抗体を生成するために利用され得る。好ましい実施形態において、本発明のレトロウイルス発現ベクターにおいて発現されるPGC−1β融合タンパク質は、照射されたレシピエントにその後移植される骨髄細胞を感染させるために利用され得る。そして被験体レシピエントの病状は、十分な時間(例えば、6週間)が経過した後に調べられる。
別の実施形態において、本発明の核酸は、哺乳動物発現ベクターを使用して哺乳動物細胞において発現される。哺乳動物発現ベクターの例としては、pCDM8(Seed,B.(1987)Nature 329:840)およびpMT2PC(Kaufman et al.(1987)EMBO J.6:187−195)が挙げられる。哺乳動物細胞において使用されるとき、発現ベクターの制御機能は、ウイルス制御エレメントによって提供されることが多い。例えば、一般に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルスおよびサルウイルス40由来である。原核細胞と真核細胞との両方に適した他の発現システムは、Sambrook,J.et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual.2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989の第16章および第17章を参照のこと。
別の実施形態において、組換え哺乳動物発現ベクターは、特定の細胞タイプにおいて優先的に核酸の発現を指示することができる(例えば、組織特異的制御エレメントが核酸を発現するために使用される)。組織特異的制御エレメントは、当該分野で公知である。適切な組織特異的プロモーターの非限定的な例としては、肝臓特異的プロモーター(例えば、ヒトフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(hPAH)遺伝子プロモーター;Mancicni and Roy,(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA.93,728−733);ニューロン特異的プロモーター(例えば、ニューロフィラメントプロモーター;Byrne and Ruddle,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5473−5477)、アルブミンプロモーター(肝臓特異的;Pinkert et al.,1987,Genes Dev.1:268−277)、リンパ系特異的プロモーター(Calame and Eaton,1988,Adv.Immunol.43:235−275)、特にT細胞レセプターのプロモーター(Winoto and Baltimore,1989,EMBO J.8:729−733)および免疫グロブリン(Banerji et al.,1983,Cell 33:729−740;Queen and Baltimore,1983,Cell 33:741−748)、膵臓特異的プロモーター(Edlund et al.,1985,Science 230:912−916)および乳腺特異的プロモーター(例えば、乳清プロモーター;米国特許第4,873,316号および欧州出願公開番号264,166)が挙げられる。発生的に制御されるプロモーター、例えば、マウスhoxプロモーター(Kessel and Gruss,1990,Science 249:374−379)およびα−フェトプロテインプロモーター(Camper and Tilghman,1989,Genes Dev.3:537−546)もまた包含される。
本発明の方法はさらに、アンチセンス方向で発現ベクターにクローニングされた本発明のDNA分子を含む組換え発現ベクターを使用し得る。つまり、DNA分子は、PGC−1β mRNAに対してアンチセンスであるRNA分子の発現を可能にする様式で(DNA分子の転写によって)制御配列に作動可能に連結される。種々の細胞タイプにおけるアンチセンスRNA分子の連続的な発現を指示する、アンチセンス方向でクローニングされた核酸に作動可能に連結された制御配列(例えばウイルスプロモーターおよび/またはエンハンサー)が選択され得るか、またはアンチセンスRNAの構成的な、組織特異的なもしくは細胞タイプ特異的な発現を指示する制御配列が選択され得る。アンチセンス発現ベクターは、アンチセンス核酸が高効率制御領域の制御下で産生される、組換えプラスミド、ファージミドまたは弱毒ウイルスの形態であり得、それらの活性は、ベクターが導入される細胞タイプによって決定され得る。アンチセンス遺伝子を使用した遺伝子発現の制御の議論については、Weintraub,H. et al.,Antisense RNA as a molecular tool for genetic analysis,Reviews−Trends in Genetics,Vol.1(1)1986を参照のこと。
本発明の別の局面は、本発明のPGC−1β核酸分子(例えば、組換え発現ベクター内のPGC−1β核酸分子または宿主細胞のゲノムの特異的部位に相同的に組み換えることが可能な配列を有するPGC−1β核酸分子)が導入される宿主細胞の使用に関する。用語「宿主細胞」および「組換え宿主細胞」は、本明細書中で交換可能に使用される。このような用語は、特定の被験体細胞だけでなく、このような細胞の子孫または可能性のある子孫にも適用されることが理解される。一定の改変が、変異または環境の影響のいずれかに起因して次の世代に起こりうるので、そのような子孫は、実際は親細胞と同一ではないが、やはり本明細書中で使用される用語の範囲内に含まれる。
宿主細胞は、任意の原核細胞または真核細胞であり得る。例えば、PGC−1βタンパク質は、E.coliなどの細菌細胞、昆虫細胞、酵母または哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)もしくはCOS細胞)において発現され得る。他の適切な宿主細胞は、当業者に公知である。
ベクターDNAは、通常の形質転換またはトランスフェクション技術を介して原核細胞または真核細胞に導入され得る。本明細書中で使用されるとき、用語「形質転換」および「トランスフェクション」は、外来核酸(例えば、DNA)を宿主細胞に導入するための種々の当該分野で認識されている技術のことをいうと意図される。それらの技術としては、リン酸カルシウム共沈もしくは塩化カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクションまたはエレクトロポレーションが挙げられる。宿主細胞を形質転換するかまたはトランスフェクトするための適切な方法は、Sambrook et al.(Molecular Cloning:A Laboratory Manual.2nd、ed.、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989)および他の実験室の手引書に見られ得る。
本発明の方法において使用される宿主細胞(例えば、培養された原核宿主細胞または真核宿主細胞)は、PGC−1βタンパク質を産生(すなわち、発現)するために使用され得る。従って、本発明はさらに、本発明の宿主細胞を使用してPGC−1βタンパク質を産生するための方法を提供する。1つの実施形態において、その方法は、(PGC−1βタンパク質をコードする組換え発現ベクターが導入されている)本発明の宿主細胞を適切な培地で培養する工程を含み、その結果、PGC−1βタンパク質が産生される。別の実施形態において、この方法はさらに、その培地または宿主細胞からPGC−1βタンパク質を単離する工程を含む。
本発明の宿主細胞はまた、非ヒトトランスジェニック動物の作製に使用され得る。例えば、1つの実施形態において、本発明の宿主細胞は、本発明のマーカーに対応するポリペプチドをコードする配列が導入されている、受精した卵母細胞または胚性幹細胞である。そしてこのような宿主細胞は、本発明のマーカータンパク質をコードする外来性配列がそれらのゲノムに導入されている非ヒトトランスジェニック動物または本発明配列のマーカーに対応するポリペプチドをコードする内在性遺伝子(単数または複数)が変更されている相同組換え動物を作製するために使用され得る。このような動物は、PGC−1βの機能および/または活性を研究するために、PGC−1βポリペプチド活性の調節因子を同定および/または評価するために、ならびに治療薬または診断分子の前臨床試験において、マーカーの発見あるいは評価(例えば、治療的マーカーおよび診断マーカーの発見または評価)のためにまたは薬効および特異性の代用物として有用である。
本発明のトランスジェニック動物は、PGC−1βに対応するポリペプチドをコードする核酸を受精した卵母細胞の雄性前核に(例えば、マイクロインジェクション、レトロウイルス感染によって)導入することおよび卵母細胞が偽妊娠の雌里親動物内で発生することを可能にすることによって作製され得る。イントロン配列およびポリアデニル化シグナルはまた、導入遺伝子の発現の効率を増加させるために導入遺伝子に含まれ得る。組織特異的制御配列(単数および複数)は、特定の細胞に本発明のポリペプチドの発現を指示する導入遺伝子に作動可能に連結され得る。胚操作およびマイクロインジェクションを介してトランスジェニック動物、特に、マウスなどの動物を発生させるための方法は、当該分野で慣習的になっており、例えば、米国特許第4,736,866号および同4,870,009号、米国特許第4,873,191号およびHogan、Manipulating the Mouse Embryo、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1986に記載されている。同様の方法が、他のトランスジェニック動物の作製のために使用される。トランスジェニック動物創始者は、ゲノムにおける導入遺伝子の存在および/または動物の組織もしくは細胞において導入遺伝子をコードするmRNAの発現に基づいて同定され得る。そしてトランスジェニック動物創始者は、導入遺伝子を保持するさらなる動物を繁殖するために使用され得る。さらに、導入遺伝子を保持するトランスジェニック動物はさらに、他の導入遺伝子を保持する他のトランスジェニック動物と交配され得る。
相同組換え動物を作製するために、欠失、付加または置換が導入されている本発明のマーカーに対応するポリペプチドをコードする遺伝子の少なくとも一部を有するベクターが調製され、それによって遺伝子を変更させる(例えば、機能的に破壊する)。好ましい実施形態において、ベクターは、相同組換えに基づいて、内在性遺伝子が機能的に破壊されるように設計される(すなわち、もはや機能タンパク質をコードできなくなる;「ノックアウト」ベクターとも呼ばれる)。あるいは、ベクターは、相同組換えに基づいて、内在性遺伝子を変異させるか、そうではなく変更されるが、なおも機能タンパク質をコードするように設計され得る(例えば、上流制御領域が変更され得、それによって内在性タンパク質の発現を変化させる)。相同組換えベクターにおいて、遺伝子の変更された部分は、相同組換えがベクターによって運搬される外因性遺伝子と胚性幹細胞内の内在性遺伝子との間に起こるようにするために遺伝子の付加的核酸によってその5’および3’末端に隣接される。付加的フランキング核酸配列は、内在性遺伝子との相同組換えが成功するのに十分な長さである。代表的には、数キロベースのフランキングDNA(5’および3’末端両方での)がベクター内に含まれる(相同組換えベクターの説明については、例えば、Thomas and Capecchi,1987,Cell 51:503を参照のこと)。ベクターは、胚性幹細胞株に導入され(例えば、エレクトロポレーションによって)、そして導入された遺伝子が内在性遺伝子と相同的に組み換わっている細胞が選択される(例えば、Li et al.,1992,Cell 69:915を参照のこと)。そして選択された細胞は、動物(例えば、マウス)の胚盤胞に注入され、凝集キメラを形成する(例えば,Bradley,Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells:A Practical Approach,Robertson,Ed.,IRL,Oxford,1987,pp.113−152を参照のこと)。そしてキメラ胚は、適切な偽妊娠の雌里親動物に移植され得、胚が長期間保たれる。それらの生殖細胞に相同組換えされたDNAを含む子孫は、その動物のすべての細胞が、導入遺伝子の生殖細胞系列伝達による相同組換えされたDNAを有する動物を繁殖するために使用され得る。相同組換えベクターおよび相同組換え動物を構築するための方法はさらに、Bradley(1991)Current Opinion in Bio/Technology 2:823−829ならびにPCT公開番号WO90/11354、WO91/01140、WO92/0968およびWO93/04169に記載されている。
別の実施形態において、導入遺伝子の発現が制御可能な選択されたシステムを有するトランスジェニック非ヒト動物が作製され得る。このような系の1つの例は、バクテリオファージP1のcre/loxPリコンビナーゼシステムである。cre/loxPリコンビナーゼシステムの説明については、例えば、Lakso et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:6232−6236を参照のこと。リコンビナーゼシステムの別の例は、Saccharomyces cerevisiaeのFLPリコンビナーゼシステムである(O’Gorman et al.,1991,Science 251:1351−1355)。cre/loxPリコンビナーゼシステムが、導入遺伝子の発現を制御するために使用される場合、Creリコンビナーゼと選択されたタンパク質との両方をコードする導入遺伝子を有する動物が必要になる。このような動物は、「ダブル」トランスジェニック動物の構築を介して(例えば、一方が選択されたタンパク質をコードする導入遺伝子を有し、他方がリコンビナーゼをコードする導入遺伝子を有する2匹のトランスジェニック動物を交配することによって)提供され得る。
本明細書中に記載される非ヒトトランスジェニック動物のクローンはまた、Wilmut et al.(1997)Nature 385:810−813ならびにPCT公開番号WO97/07668およびWO97/07669に記載されている方法に従って作製され得る。
(V.本発明の方法において使用される単離された核酸分子)
単離されたヒトPGC−1β cDNAのヌクレオチド配列およびヒトPGC−1βポリペプチドの予想されるアミノ酸配列をそれぞれ配列番号1および2に示す。ヒトPGC−1βのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列はまた、GenBankアクセッション番号GI:31543391に記載されている。
本発明の方法は、PGC−1βタンパク質またはそれらの生物学的に活性な部分をコードする単離された核酸分子、ならびにPGC−1βをコードする核酸分子(例えば、PGC−1β mRNA)およびフラグメントを同定するためのハイブリダイゼーションプローブとしての使用に十分な核酸フラグメントおよびPGC−1β核酸分子の増幅または変異についてのPCRプライマーとしての使用のためのフラグメントの使用を含む。本明細書中で使用されるとき、用語「核酸分子」は、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)およびRNA分子(例えば、mRNA)およびヌクレオチドアナログを使用して生成されるDNAまたはRNAのアナログを含むと意図される。核酸分子は、一本鎖または二本鎖であり得るが、好ましくは二本鎖DNAである。
本発明の方法において使用される核酸分子(例えば、配列番号1またはその一部のヌクレオチド配列を有する核酸分子)は、標準的な分子生物学技術および本明細書中で提供される配列情報を使用して単離され得る。配列番号1の核酸配列の全部または一部をハイブリダイゼーションプローブとして使用して、PGC−1β核酸分子が、標準的なハイブリダイゼーション技術およびクローニング技術(例えば、Sambrook,J.,Fritsh,E.F. and Maniatis,T.Molecular Cloning:A Laboratory Manual.2nd,ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989に記載されているような)を使用して単離され得る。
さらに、配列番号1の全部または一部を含む核酸分子は、配列番号1の配列に基づいて設計された合成オリゴヌクレオチドプライマーを使用してポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって単離され得る。
本発明の方法において使用される核酸は、テンプレートとしてcDNA、mRNA、あるいは、ゲノムDNAおよび適切なオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、標準的なPCR増幅技術に従って、増幅され得る。さらに、PGC−1βヌクレオチド配列に対応するオリゴヌクレオチドは、標準的な合成技術(例えば、自動DNA合成装置を使用して)によって調製され得る。
好ましい実施形態において、本発明の方法において使用される単離された核酸分子は、配列番号1に示されるヌクレオチド配列、配列番号1に示されるヌクレオチド配列の相補体またはこれらのヌクレオチド配列の任意の一部を含む。配列番号1に示されるヌクレオチド配列に相補的な核酸分子は、配列番号1に示されるヌクレオチド配列に十分に相補的な核酸配列であり、配列番号1に示されるヌクレオチド配列にハイブリダイズすることができ、それによって安定な二重鎖を形成する。
なおも別の好ましい実施形態において、本発明の方法において使用される単離された核酸分子は、配列番号1に示されるヌクレオチド配列の全体の長さまたはこのヌクレオチド配列の任意の一部に対して少なくとも約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一であるヌクレオチド配列を含む。
さらに、本発明の方法において使用される核酸分子は、配列番号1の核酸配列の一部、例えば、プローブもしくはプライマーとして使用され得るフラグメントまたはPGC−1βタンパク質の一部(例えば、PGC−1βタンパク質の生物学的に活性な部分)をコードするフラグメントのみを含み得る。プローブ/プライマーは、代表的には実質的に精製されたオリゴヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドは、代表的には、配列番号1のアンチセンス配列の配列番号1のセンス配列または配列番号1の天然に存在する対立遺伝子改変体もしくは変異体の、少なくとも約12または15、好ましくは約20または25、より好ましくは約30、35、40、45、50、55、60、65または75の連続したヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列の領域を含む。1つの実施形態において、本発明の方法において使用される核酸分子は、100、100〜200、200〜300、300〜400、400〜500、500〜600、600〜700、700〜800、800〜900、900〜1000、1000〜1100、1100〜1200、1200〜1300またはそれ以上のヌクレオチド長より長く、そしてストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で配列番号1の核酸分子にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む。
本明細書中で使用されるとき、用語「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」は、互いに有意に同一または相同であるヌクレオチド配列が互いにハイブリダイズされたままである、ハイブリダイゼーションおよび洗浄のための条件を説明すると意図される。好ましくは、その条件は、少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、なおもより好ましくは少なくとも約85%または90%互いに同一の配列が、互いにハイブリダイズされたままであるような条件である。このようなストリンジェントな条件は、当業者に公知であり、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel et al.,eds.,John Wiley & Sons,Inc.(1995)の第2、4および6節に見られ得る。付加的なストリンジェントな条件は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(1989)、第7、9および11章に見られ得る。好ましい、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の非限定的な例としては、4×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、約65〜70℃でのハイブリダイゼーション(または50%ホルムアミドを加えた4×SSC中、約42〜50℃でのハイブリダイゼーション)に続く1×SSC中、約65〜70℃での1回以上の洗浄が挙げられる。好ましい、高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の非限定的な例としては、1×SSC中、約65〜70℃でのハイブリダイゼーション(または50%ホルムアミドを加えた1×SSC中、約42〜50℃でのハイブリダイゼーション)に続く0.3×SSC中、約65〜70℃での1回以上の洗浄が挙げられる。好ましい、低ストリンジェンシーなハイブリダイゼーション条件の非限定的な例としては、4×SSC中、約50〜60℃でのハイブリダイゼーション(または50%ホルムアミドを加えた6×SSC中、約40〜45℃でのハイブリダイゼーション)に続く2×SSC中、約50〜60℃での1回以上の洗浄が挙げられる。上で列挙した値の中間の範囲(例えば、65〜70℃または42〜50℃で)はまた、本発明によって包含されると意図される。SSPE(1×SSPEは、0.15M NaCl、10mM NaHPOおよび1.25mM EDTA,pH7.4である)は、ハイブリダイゼーション緩衝液および洗浄緩衝液におけるSSC(1×SSCは、0.15M NaClおよび15mMクエン酸ナトリウムである)と置換され得る;洗浄は、ハイブリダイゼーションが完了した後に各15分間実施される。50塩基対長未満であると予測されるハイブリッドに対するハイブリダイゼーション温度は、融解温度(T)が以下の等式に従って決定されるとき、ハイブリッドのTより5〜10℃低くするべきである。18塩基対長未満のハイブリッドに対しては、T(℃)=2(A+T塩基の数)+4(G+C塩基の数)。18〜49塩基対長のハイブリッドに対しては、T(℃)=81.5+16.6(log10[Na])+0.41(%G+C)−(600/N)、ここでNは、ハイブリッドにおける塩基の数であり、[Na]は、ハイブリダイゼーション緩衝液中のナトリウムイオンの濃度である([Na]は、1×SSC=0.165M)。付加的な試薬が、膜(例えば、ニトロセルロース膜またはナイロン膜)への核酸分子の非特異的ハイブリダイゼーションを減少させるためにハイブリダイゼーション緩衝液および/または洗浄緩衝液に添加され得ることは当業者によって認識され得る。これらの試薬としては、ブロッキング物質(例えば、BSAまたはサケもしくはニシンの精子キャリアDNA)、界面活性剤(例えば、SDS)、キレート剤(例えば、EDTA)、Ficoll、PVPなどが挙げられるが、これらに限定されない。ナイロン膜を使用するとき、特に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の追加の好ましい非限定的な例は、0.25〜0.5M NaHPO、7%SDS、約65℃でのハイブリダイゼーション、それに続く0.02M NaHPO、1%SDS、65℃での1回以上の洗浄であり、例えば、Church and Gilbert(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:1991−1995を参照のこと(あるいは、0.2×SSC、1%SDS)。
好ましい実施形態において、プローブはさらに、それらに結合される標識群を含み、例えば、標識群は、放射性同位体、蛍光性化合物、酵素または酵素補助因子であり得る。このようなプローブは、例えば、被験体由来の細胞のサンプルにおけるPGC−1βをコードする核酸のレベルを計測すること(例えば、PGC−1β mRNAレベルを検出することまたはゲノムのPGC−1β遺伝子が変異しているかまたは欠失しているかを判定すること)によってPGC−1βタンパク質を異所性発現する細胞または組織を同定するための診断試験キットの一部として使用され得る。
本発明の方法はさらに、遺伝暗号の縮重のために配列番号1に示されるヌクレオチド配列と異なり、従って配列番号1に示されるヌクレオチド配列によってコードされるものと同じPGC−1βタンパク質をコードする核酸分子の使用を包含する。別の実施形態において、本発明の方法に含まれる単離された核酸分子は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する。
本発明の方法はさらに、ヒトPGC−1βの対立遺伝子改変体(例えば、機能的対立遺伝子改変体および非機能的対立遺伝子改変体)の使用を含む。機能的対立遺伝子改変体は、PGC−1β活性を維持するヒトPGC−1βタンパク質の天然に存在するアミノ酸配列改変体である。機能的対立遺伝子改変体は、代表的には配列番号2の1以上のアミノ酸の保存的置換もしくは置換、欠失またはタンパク質の重要でない領域における重要でない残基の挿入のみを含み得る。
非機能的対立遺伝子改変体は、PGC−1β活性を有さないヒトPGC−1βタンパク質の天然に存在するアミノ酸配列改変体である。非機能的対立遺伝子改変体は、代表的には非保存的置換、欠失もしくは挿入または配列番号2のアミノ酸配列の未熟な切断またはタンパク質の重要な残基もしくは重要な領域における置換、挿入もしくは欠失を含み得る。
本発明の方法はさらに、ヒトPGC−1βタンパク質の非ヒトオルソログを使用し得る。ヒトPGC−1βタンパク質のオルソログは、非ヒト生物から単離され、そして同じPGC−1β活性を有するタンパク質である。
本発明の方法はさらに、変異が導入されている配列番号1またはその一部のヌクレオチド配列を含む核酸分子の使用を含む。変異は、「非必須」アミノ酸残基または「必須」アミノ酸残基でのアミノ酸置換を導き得る。「非必須」アミノ酸残基は、生物学的活性を変更することなくPGC−1βの野生型配列(例えば、配列番号2の配列)から変更され得る残基であり、一方、「必須」アミノ酸残基は、生物学的活性が必要である。例えば、本発明のPGC−1βタンパク質とPGC−1ファミリーとの他のメンバーの間で保存されているアミノ酸残基は、変更を受け入れられない可能性がある。
変異は、標準的な技術(例えば、部位特異的突然変異生成およびPCR媒介突然変異生成)によって配列番号1に導入され得る。好ましくは、保存的アミノ酸置換は、1以上の予想される非必須アミノ酸残基でなされる。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるものの1つである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該分野で定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。従って、PGC−1βタンパク質における予測される非必須アミノ酸残基は、好ましくは同じ側鎖ファミリー由来の別のアミノ酸残基で置換される。あるいは、別の実施形態において、変異は、PGC−1βコード配列の全部または一部について無作為に(例えば、飽和突然変異生成によって)導入され得る。そして生じた変異体は、活性を保持する変異体を同定するためにPGC−1β生物学的活性についてスクリーニングされ得る。配列番号1の突然変異生成後、コードされるタンパク質は、組換え的に発現され得、そしてタンパク質の活性は、本明細書中に記載されるアッセイを使用して測定され得る。
本発明の別の局面は、配列番号1のヌクレオチド配列に対してアンチセンスである単離された核酸分子の使用に関する。「アンチセンス」核酸は、タンパク質をコードする「センス」核酸に相補的である(例えば、二本鎖cDNA分子のコーディング鎖に相補的か、またはmRNA配列に相補的である)ヌクレオチド配列を包含する。従って、アンチセンス核酸は、センス核酸に水素結合し得る。アンチセンス核酸は、PGC−1βコーディング鎖全体またはその一部のみに相補的であり得る。1つの実施形態において、アンチセンス核酸分子は、PGC−1βをコードするヌクレオチド配列のコーディング鎖の「コード領域」に対してアンチセンスである。用語「コード領域」とは、アミノ酸残基に翻訳されるコドンを含むヌクレオチド配列の領域のことをいう。別の実施形態において、アンチセンス核酸分子は、PGC−1βをコードするヌクレオチド配列のコーディング鎖の「非コード領域」に対してアンチセンスである。用語「非コード領域」とは、アミノ酸に翻訳されない、コード領域に隣接する5’および3’配列のことをいう(5’非翻訳領域および3’非翻訳領域とも呼ばれる)。
本明細書中に開示されるPGC−1βをコードするコーディング鎖配列を所与として、本発明のアンチセンス核酸は、WatsonおよびCrickの塩基対の法則に従って設計され得る。アンチセンス核酸分子は、PGC−1β mRNAのコード領域全体に相補的であり得るが、より好ましくはPGC−1β mRNAのコード領域または非コード領域の一部のみに対してアンチセンスであるオリゴヌクレオチドである。
例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、PGC−1β mRNAの翻訳開始部位を取り囲む領域に相補的であり得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45または50ヌクレオチド長であり得る。本発明のアンチセンス核酸は、当該分野で公知の手順を使用した化学的合成および酵素的ライゲーション反応を使用して構築され得る。例えば、アンチセンス核酸(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)は、天然に存在するヌクレオチドを使用して化学的に合成され得るか、または分子の生物学的安定性を増大させるか、もしくはアンチセンス核酸とセンス核酸との間で形成される二重鎖の物理的安定性を増大させるように設計された様々に改変されたヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチド)が使用され得る。アンチセンス核酸を生成するために使用され得る改変ヌクレオチドの例としては、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルキュェオシン(galactosylqueosine)、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキュェオシン(mannosylqueosine)、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、キュェオシン(queosine)、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)wおよび2,6−ジアミノプリンが挙げられる。あるいは、アンチセンス核酸は、核酸がアンチセンス方向にサブクローニングされた発現ベクターを使用して生物学的に生成され得る(すなわち、挿入された核酸から転写されるRNAが、目的の標的核酸に対してアンチセンス方向であり得る)。本発明の方法において使用されるアンチセンス核酸分子はさらに、以下のIV節に記載される。
なおも別の実施形態において、本発明の方法において使用されるPGC−1β核酸分子は、例えば、安定性、ハイブリダイゼーションまたは分子の溶解性を改善するために、塩基部分、糖部分またはリン酸骨格において改変され得る。例えば、核酸分子のデオキシリボースリン酸骨格は、ペプチド核酸を生成するために改変され得る(Hyrup B.et al.(1996)Bioorganic & Medicinal Chemistry 4(1):5−23を参照のこと)。本明細書中で使用されるとき、用語「ペプチド核酸」または「PNA」とは、デオキシリボースリン酸骨格が擬ペプチド骨格に置換されていて、4種類の天然の核酸塩基のみを保持している核酸模倣物(例えば、DNA模倣物)のことをいう。PNAの中性の骨格は、低イオン強度の条件下でDNAおよびRNAに特異的なハイブリダイゼーションが可能になることが示されている。PNAオリゴマーの合成は、Hyrup B.et al.(1996)前出;Perry−O’Keefe et al.(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.93:14670−675に記載されているような標準的な固相ペプチド合成プロトコールを使用して実施され得る。
PGC−1β核酸分子のPNAは、本明細書中に記載される治療的適用および診断適用に使用され得る。例えば、PNAは、例えば、転写もしくは翻訳アレストの誘導または複製の阻害によって遺伝子発現の配列特異的調節についてのアンチセンスまたはアンチジーン物質として使用され得る。PGC−1β核酸分子のPNAはまた、遺伝子における単一塩基対変異の解析(例えば、PNA指向性PCRクランピングによって);他の酵素(例えば、S1ヌクレアーゼ(Hyrup B.et al.(1996)前出))と組み合わせて使用されるときの「人工制限酵素」として;またはDNA配列決定またはハイブリダイゼーションのためのプローブもしくはプライマーとして(Hyrup B.et al.(1996)前出;Perry−O’Keefe et al.(1996)前出)に使用され得る。
別の実施形態において、PGC−1βのPNAは、(例えば、それらの安定性または細胞の取り込みを促進するために)、PNAに脂肪親和性基または他の補助基を結合することによってか、PNA−DNAキメラの形成によってか、またはリポソームもしくは当該分野で公知の薬物送達の他の技術の使用によって改変され得る。例えば、PNAおよびDNAの有利な特性を組み合わし得るPGC−1β核酸分子のPNA−DNAキメラが生成され得る。このようなキメラによって、DNA認識酵素(例えば、RNアーゼHおよびDNAポリメラーゼ)がDNA部分と相互作用することを可能にし、PNA部分が高い結合親和性および特異性を提供し得る。PNA−DNAキメラは、塩基の積み重ね、核酸塩基間の結合数および方向の点から選択された適切な長さのリンカーを使用して結合され得る(Hyrup B.et al.(1996)前出)。PNA−DNAキメラの合成は、Hyrup B.et al.(1996)前出およびFinn P.J.et al.(1996)Nucleic Acids Res.24(17):3357−63に記載されるように実施され得る。例えば、DNA鎖は、標準的なホスホルアミダイト結合化学を使用して固体支持物上で合成され得、そして改変ヌクレオシドアナログ(例えば、5’−(4−メトキシトリチル)アミノ−5’−デオキシ−チミジンホスホルアミダイト)は、PNAとDNAの5’末端の間で使用され得る(Mag,M.et al.(1989)Nucleic Acid Res.17:5973−88)。そしてPNAモノマーは、5’PNAセグメントおよび3’DNAセグメントを用いてキメラ分子を生成するために段階的な様式で結合される(Finn P.J.et al.(1996)前出)。あるいは、キメラ分子は、5’DNAセグメントおよび3’PNAセグメントを用いて合成され得る(Peterser,K.H.et al.(1975)Bioorganic Med.Chem.Lett.5:1119−11124)。
他の実施形態において、本発明の方法において使用されるオリゴヌクレオチドは、ペプチド(例えば、インビボで宿主細胞レセプターを標的化するために)などの他の付加基または細胞膜(例えば、Letsinger et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:6553−6556;Lemaitre et al.(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:648−652;PCT公開番号WO88/09810を参照のこと)または血液脳関門(例えば、PCT公開番号WO89/10134を参照のこと)を通過する輸送を促進する物質を含み得る。さらに、オリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションによって誘発される切断物質(例えば、Krol et al.(1988)Bio−Techniques 6:958−976を参照のこと)または挿入物質を用いて改変され得る。(例えば、Zon(1988)Pharm.Res.5:539−549を参照のこと。)この目的を達成するために、オリゴヌクレオチドは、別の分子(例えば、ペプチド、ハイブリダイゼーションによって誘発される架橋物質、輸送物質またはハイブリダイゼーションによって誘発される切断物質)と結合体化され得る。
(VI.本発明の方法において使用される単離されたPGC−1βタンパク質および抗PGC−1β抗体)
本発明の方法は、抗PGC−1β抗体を惹起させる免疫原としての使用に適した単離されたPGC−1βタンパク質およびそれらの生物学的に活性な部分、ならびにポリペプチドフラグメントの使用を含む。1つの実施形態において、未変性PGC−1βタンパク質は、標準的なタンパク質精製技術を使用して適切な精製機構によって細胞または組織供給源から単離され得る。別の実施形態において、PGC−1βタンパク質は、組換えDNA技術によって生成される。組換え発現の代わりに、PGC−1βタンパク質またはポリペプチドは、標準的なペプチド合成技術を使用して化学的に合成され得る。
本明細書中で使用されるとき、PGC−1βタンパク質の「生物学的に活性な部分」は、PGC−1β活性を有するPGC−1βタンパク質のフラグメントを含む。PGC−1βタンパク質の生物学的に活性な部分は、完全長PGC−1βタンパク質より少ないアミノ酸を含み、そしてPGC−1βタンパク質の少なくとも1つの活性を示す、PGC−1βタンパク質のアミノ酸配列と十分に同一か、またはそれ由来のアミノ酸配列(例えば、配列番号2に示されるアミノ酸配列)を含むペプチドを含む。代表的には、生物学的に活性な部分は、PGC−1βタンパク質の少なくとも1つの活性を有するドメインまたはモチーフ(例えば、アポトーシスの活性の制御に関わると考えられているPGC−1βタンパク質のN末端の領域)を含む。PGC−1βタンパク質の生物学的に活性な部分は、例えば、25、50、75、100、125、150、175、200、250、300以上のアミノ酸長であるポリペプチドであり得る。PGC−1βタンパク質の生物学的に活性な部分は、PGC−1β活性を調節する物質を開発するための標的として使用され得る。
好ましい実施形態において、本発明の方法において使用されるPGC−1βタンパク質は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する。他の実施形態において、PGC−1βタンパク質は、配列番号2に実質的に同一であり、そして配列番号2のタンパク質機能的活性を保持するが、上のV節に詳細に記載されているように天然の対立遺伝子の変異体または突然変異生成に起因してアミノ酸配列が異なる。従って、別の実施形態において、本発明の方法において使用されるPGC−1βタンパク質は、配列番号2と少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一のアミノ酸配列を含むタンパク質である。
2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の同一性パーセントを決定するために、その配列を最適な比較目的のためにアラインメントする(例えば、最適なアラインメントのために第1アミノ酸配列および第2アミノ酸配列または第1核酸配列および第2核酸配列の一方またはその両方においてギャップが導入され得、そして非同一配列は、比較目的のために無視され得る)。好ましい実施形態において、比較目的のためにアラインメントされる参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、なおもより好ましくは少なくとも60%およびなおもより好ましくは少なくとも70%、80%または90%である(例えば、500アミノ酸残基を有する配列番号2のPGC−1βアミノ酸配列に対して第2配列をアラインメントするとき、少なくとも75、好ましくは少なくとも150、より好ましくは少なくとも225、なおもより好ましくは少なくとも300およびなおもより好ましくは少なくとも400以上のアミノ酸残基がアラインメントされる)。そして対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドが比較される。第1配列における位置が第2配列における対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められるとき、その分子は、その位置において同一である(本明細書中で使用されるとき、アミノ酸または核酸「同一性」は、アミノ酸または核酸「相同性」と等価である)。2つの配列間の同一性パーセントは、配列によって共有される同一の位置の数の関数であり、ギャップの数および各ギャップの長さを考慮して、2つの配列の最適なアラインメントのために導入される必要がある。
配列の比較および2つの配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成され得る。好ましい実施形態において、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、Blosum 62行列またはPAM250行列のいずれかおよび16、14、12、10、8、6または4のギャップウェイト(gap weight)および1、2、3、4、5または6のレングスウェイト(length weight)を使用したGCGソフトウェアパッケージ内のGAPプログラムに組み込まれているNeedlemanおよびWunsch(J.Mol.Biol.48:444−453(1970))アルゴリズム(http://www.gcg.comにて入手可能)を使用して決定される。なおも別の好ましい実施形態において、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、NWSgapdna.CMP行列および40、50、60、70または80のギャップウェイトおよび1、2、3、4、5または6のレングスウェイトを使用したGCGソフトウェアパッケージ内のGAPプログラム(http://www.gcg.comにて入手可能)を使用して決定される。別の実施形態において、2つのアミノ酸配列間または2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、PAM120重みづけ残基表、12のギャップレングスペナルティ(gap length penalty)および4のギャップペナルティを使用したALIGNプログラム(バージョン2.0または2.0U)に組み込まれているE.MeyersおよびW.Millerのアルゴリズム(Comput.Appl.Biosci.4:11−17(1988))を使用して決定される。
本発明の方法はまた、PGC−1βキメラタンパク質または融合タンパク質を使用し得る。本明細書中で使用されるとき、PGC−1β「キメラタンパク質」または「融合タンパク質」は、非PGC−1βポリペプチドに作動可能に連結されたPGC−1βポリペプチドを含む。「PGC−1βポリペプチド」とは、PGC−1β分子に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドのことをいい、他方では「非PGG−1βポリペプチド」とは、PGC−1βタンパク質に実質的に相同でないタンパク質(例えば、PGC−1βタンパク質と異なり、そして同一または異なる生物由来のタンパク質)に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドのことをいう。PGC−1β融合タンパク質内のPGC−1βポリペプチドは、PGC−1βタンパク質の全部または一部に一致し得る。好ましい実施形態において、PGC−1β融合タンパク質は、PGC−1βタンパク質の少なくとも1つの生物学的に活性な部分を含む。別の好ましい実施形態において、PGC−1β融合タンパク質は、PGC−1βタンパク質の少なくとも2つの生物学的に活性な部分を含む。融合タンパク質内の、用語「作動可能に連結された」とは、PGC−1βポリペプチドおよび非PGC−1βポリペプチドが互いにインフレームで融合されていることを示すと意図される。非PGC−1βポリペプチドは、PGC−1βポリペプチドのN末端またはC末端に融合され得る。
例えば、1つの実施形態において、融合タンパク質は、PGC−1β配列がGST配列のC末端に融合されているGST−PGC−1β融合タンパク質である。このような融合タンパク質は、組換えPGC−1βの精製を促進し得る。
別の実施形態において、この融合タンパク質は、そのN末端に異種性のシグナル配列を有するPGC−1βタンパク質である。一定の宿主細胞(例えば、哺乳動物宿主細胞)において、PGC−1βの発現および/または分泌は、異種性のシグナル配列の使用を介して減少され得る。
本発明の方法において使用されるPGC−1β融合タンパク質は、薬学的組成物に組み込まれ得、そして被験体にインビボで投与され得る。PGC−1β融合タンパク質は、PGC−1β基質のバイオアベイラビリティに影響するために使用され得る。PGC−1β融合タンパク質の使用は、例えば、(i)PGC−1βタンパク質をコードする遺伝子の異常な改変または変異;(ii)PGC−1β遺伝子の誤った制御;および(iii)PGC−1βタンパク質の異常な翻訳後修飾によって引き起こされる障害の処置に対して治療的に有用であり得る。
さらに、本発明の方法において使用されるPGC−1β融合タンパク質は、被験体において抗PGC−1β抗体を産生するための免疫原として、PGC−1βリガンドを精製するために、そしてPGC−1βとPGC−1β基質との相互作用を阻害する分子を同定するためのスクリーニングアッセイにおいて使用され得る。
好ましくは、本発明の方法において使用されるPGC−1βキメラタンパク質または融合タンパク質は、標準的な組換えDNA技術によって生成される。例えば、異なるポリペプチド配列にコードするDNAフラグメントが、通常の技術に従って、例えば、ライゲーションのために平滑末端またはジグザグ末端(stagger−ended)を使用すること、適切な末端を提供するための制限酵素消化、粘着末端を埋めること、必要であれば、望ましくない結合を避けるためのアルカリホスファターゼ処理、
および酵素的ライゲーションによって、ともにインフレームで連結される。別の実施形態において、融合遺伝子は、自動DNA合成装置を含む通常の技術によって合成され得る。あるいは、遺伝子フラグメントのPCR増幅は、2つの連続した遺伝子フラグメント間に相補的な突出を生じるアンカープライマーを使用して実施され得て、キメラ遺伝子配列を生成するために、引き続いてアニールおよび再増幅され得る(例えば、Current Protocols in Molecular Biology、eds.Ausubel et al.John Wiley & Sons:1992を参照のこと)。さらに、融合部分(例えば、GSTポリペプチド)をすでにコードする多くの発現ベクターが、市販されている。PGC−1βをコードする核酸は、このような発現ベクターにクローニングされ得て、その融合部分がインフレームでPGC−1βタンパク質に連結される。
本発明はまた、PGC−1βアゴニスト(模倣物)またはPGC−1βアンタゴニストのいずれかとして機能するPGC−1βタンパク質の改変体の使用に関する。PGC−1βタンパク質の改変体は、突然変異生成(例えば、不連続な点変異)またはPGC−1βタンパク質の切断によって生成され得る。PGC−1βタンパク質のアゴニストは、PGC−1βタンパク質の天然に存在する形態の生物学的活性と実質的に同じかまたはそれのサブセットを保持し得る。PGC−1βタンパク質のアンタゴニストは、例えば、PGC−1βタンパク質のPGC−1β媒介性活性を競合的に調節することによってPGC−1βタンパク質の天然に存在する形態の1以上の活性を阻害し得る。従って、特異的な生物学的効果は、制限された機能の改変体を用いた処置によって誘発され得る。1つの実施形態において、タンパク質の天然に存在する形態の生物学的活性のサブセットを有する改変体を用いた被験体の処置は、PGC−1βタンパク質の天然に存在する形態での処置と比較して、被験体においてより少ない副作用を有する。
1つの実施形態において、PGC−1βアゴニスト(模倣物)またはPGC−1βアンタゴニストのいずれかとして機能するPGC−1βタンパク質の改変体は、PGC−1βタンパク質アゴニストまたはアンタゴニスト活性についてのPGC−1βタンパク質の変異体(例えば、切断変異体)のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって同定され得る。1つの実施形態において、PGC−1β改変体の変化に富んだライブラリーは、核酸レベルでの組み合わせの突然変異生成によって生成され、そして変化に富んだ遺伝子ライブラリーによってコードされる。PGC−1β改変体の変化に富んだライブラリーは、例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物を遺伝子配列に酵素的に連結することによって生成され得、有望なPGC−1β配列の変性セットが、個別のポリペプチドとして、あるいは、それらの中のPGC−1β配列のセットを有するより大きい融合タンパク質のセットとして(例えば、ファージディスプレイのために)発現可能である。変性オリゴヌクレオチド配列から有望なPGC−1β改変体ライブラリーを生成し得る種々の方法が存在する。変性遺伝子配列の化学的合成は、自動DNA合成装置において実施され得、そしてその合成遺伝子は、適切な発現ベクターに連結される。遺伝子の変性セットの使用により、1つの混合物において、有望なPGC−1β配列の所望のセットをコードする配列すべての供給を可能にする。変性オリゴヌクレオチドを合成するための方法は、当該分野で公知である(例えば、Narang,S.A.(1983)Tetrahedron 39:3;Itakura et al.(1984)Annu.Rev.Biochem.53:323;Itakura et al.(1984)Science 198:1056;Ike et al.(1983)Nucleic Acid Res.11:477を参照のこと)。
さらに、PGC−1βタンパク質コード配列のフラグメントのライブラリーは、スクリーニングおよびそれに続くPGC−1βタンパク質の改変体の選択のための、PGC−1βフラグメントの変化に富んだ集団を生成するために使用され得る。1つの実施形態において、コード配列フラグメントのライブラリーは、1分子あたり1回のみニッキングが起きる条件下でPGC−1βコード配列の二本鎖PCRフラグメントをヌクレアーゼで処置すること、二本鎖DNAを変性すること、様々なニックが入った生成物からDNAをセンス/アンチセンス対を含み得る二本鎖DNAを形成するように復元すること、S1ヌクレアーゼで処置することによって再形成された二重鎖から一本鎖部分を除去することおよび発現ベクターに生じたフラグメントライブラリーを連結することによって生成され得る。この方法によって、PGC−1βタンパク質の様々な大きさの、N末端の、C末端のおよび内部のフラグメントをコードする発現ライブラリーを得ることができる。
点変異または切断によって作製されたコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするためおよび選択される特性を有する遺伝子産物についてcDNAライブラリーをスクリーニングするためのいくつかの技術は、当該分野で公知である。このような技術は、PGC−1βタンパク質の組み合わされた突然変異生成によって生成される遺伝子ライブラリーの迅速なスクリーニングに対して改変可能である。大きな遺伝子ライブラリーをスクリーニングするために、ハイスループット解析が可能である最も広範に使用される技術は、代表的には複製可能な発現ベクターに遺伝子ライブラリーをクローニングすること、適切な細胞を生じたライブラリーのベクターを用いて形質転換することおよび所望の活性の検出が、その産物が検出される遺伝子をコードするベクターの単離を促進する条件下で組み合わされた遺伝子を発現することが挙げられる。帰納的集合突然変異生成(Recursive ensemble mutagenesis)(REM)は、ライブラリー中の機能的変異体の頻度を上げる新技術であり、PGC−1β改変体を同定するためにスクリーニングアッセイと組み合わせて使用され得る(Arkin and Yourvan(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7811−7815;Delgrave et al.(1993)Protein Engineering 6(3):327−331)。
本発明の方法はまた、抗PGC−1β抗体の使用を含む。単離されたPGC−1βタンパク質またはその部分もしくはフラグメントは、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の調製のために標準的な技術を使用してPGC−1βを結合する抗体を生成するための免疫原として使用され得る。完全長PGC−1βタンパク質が、免疫原として使用され得るか、あるいは、PGC−1βの抗原性ペプチドフラグメントが免疫原として使用され得る。PGC−1βの抗原性ペプチドは、配列番号2に示されるアミノ酸配列の少なくとも8アミノ酸残基を含み、そしてPGC−1βのエピトープを含み、このペプチドに対して惹起される抗体は、PGC−1βタンパク質と特異的な免疫複合体を形成する。好ましくは、抗原性ペプチドは、少なくとも10アミノ酸残基、より好ましくは少なくとも15アミノ酸残基、なおもより好ましくは少なくとも20アミノ酸残基および最も好ましくは少なくとも30アミノ酸残基を含む。
抗原性ペプチドによって含まれる好ましいエピトープは、タンパク質の表面(例えば、親水性領域)に位置するPGC−1βの領域ならびに高い抗原性を有する領域である。
PGC−1β免疫原は、代表的には、この免疫原で適切な被験体(例えば、ウサギ、ヤギ、マウスまたは他の哺乳動物)を免疫することによって抗体を調製するために使用される。適切な免疫原性調製物は、例えば、組換えで発現されるPGC−1βタンパク質または化学的に合成されたPGC−1βポリペプチドを含有し得る。この調製物はさらに、アジュバント(例えば、フロイントの完全アジュバントもしくは不完全アジュバント)または同様の免疫刺激物質を含み得る。免疫原性PGC−1β調製物を用いた適切な被験体の免疫は、ポリクローナル抗PGC−1β抗体応答を誘発する。
本明細書中で使用されるとき用語「抗体」とは、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、PGC−1βなどの抗原に特異的に結合する(免疫応答する)抗原結合部位を有する分子のことをいう。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分の例としては、抗体をペプシンなどの酵素で処置することによって生成され得る、F(ab)およびF(ab’)フラグメントが挙げられる。本発明は、PGC−1β分子を結合するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を提供する。用語「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」とは、本明細書中で使用されるとき、PGC−1βの特定のエピトープで免疫応答することができる抗原結合部位の1種類のみを有する抗体分子の集団のことをいう。従って、モノクローナル抗体組成物は、代表的にはそれが免疫応答する特定のPGC−1βタンパク質に対して単一の結合親和性を示す。
ポリクローナル抗PGC−1β抗体は、適切な被験体をPGC−1β免疫原で免疫することによって上記したように調製され得る。免疫された被験体における抗PGC−1β抗体力価は、標準的な技術、例えば、固定化したPGC−1βを使用した酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって長期にわたってモニターされ得る。所望であれば、PGC−1βに対する抗体分子は、哺乳動物(例えば、その血液)から単離され得、IgG画分を得るためにプロテインAクロマトグラフィなどの周知技術によってさらに精製され得る。免疫後の適切な時間で(例えば、抗PGC−1β抗体力価が最も高いとき)、抗体産生細胞を被験体から得ることができ、モノクローナル抗体を調製するために標準的な技術、例えば、KohlerおよびMilstein(1975)Nature 256:495−497によって最初に記載されたハイブリドーマ技術(Brown et al.(1981)J.Immunol.127:539−46;Brown et al.(1980)J.Biol.Chem.255:4980−83;Yeh et al.(1976)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 76:2927−31;およびYeh et al.(1982)Int.J.Cancer 29:269−75もまた参照のこと)、より最近ではヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor et al.(1983)Immunol Today 4:72)、EBV−ハイブリドーマ技術(Cole et al.(1985)Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,pp.77−96)またはトリオーマ技術によって使用され得る。モノクローナル抗体ハイブリドーマを生成するための技術は、周知である(一般にKenneth,R.H.in Monoclonal Antibodies:A New Dimension In Biological Analyses,Plenum Publishing Corp.,New York,New York(1980);Lerner,E.A.(1981)Yale J.Biol.Med.54:387−402;Gefter,M.L.et al.(1977)Somatic Cell Genet.3:231−36を参照のこと)。簡潔には、不死の細胞株(代表的には、ミエローマ)を、上記したようにPGC−1β免疫原で免疫された哺乳動物由来のリンパ球(代表的には脾細胞)と融合し、そして生じたハイブリドーマ細胞の培養上清を、PGC−1βを結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定するためにスクリーニングする。
リンパ球と不死化した細胞株とを融合するために使用される、任意の多くの周知のプロトコールが、抗PGC−1βモノクローナル抗体を生成する目的で適用され得る(例えば、G.Galfre et al.(1977)Nature 266:55052;Gefter et al.(1977)前出;Lerner(1981)前出;およびKenneth(1980)前出を参照のこと)。さらに、当業者は、有用でもあり得るこのような方法の多くの改変物が存在することを理解し得る。代表的には、不死の細胞株(例えば、ミエローマ細胞株)は、リンパ球と同じ哺乳動物種由来である。例えば、マウスハイブリドーマは、本発明の免疫原性調製物で免疫されたマウス由来のリンパ球と不死化マウス細胞株とを融合することによって作製され得る。好ましい不死の細胞株は、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含有する培養培地(「HAT培地」)に感受性であるマウスミエローマ細胞株である。任意の多くのミエローマ細胞株は、標準的な技術に従って融合パートナーとして使用され得る(例えば、P3−NS1/1−Ag4−1、P3−x63−Ag8.653またはSp2/O−Ag14ミエローマ株)。これらのミエローマ株は、ATCCから入手可能である。代表的には、HAT感受性マウスミエローマ細胞は、ポリエチレングリコール(「PEG」)を使用してマウス脾細胞に融合される。融合により生じたハイブリドーマ細胞は、融合していないミエローマ細胞および非生産的に融合したミエローマ細胞を殺滅するHAT培地を使用して選択される(形質転換されていないので、数日後に融合していない脾細胞は死滅する)。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、PGC−1βを結合する抗体についてハイブリドーマ培養上清をスクリーニングすることによって(例えば、標準的なELISAアッセイを使用して)検出される。
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調製する代わりに、モノクローナル抗PGC−1β抗体が、PGC−1βを結合する免疫グロブリンライブラリーメンバーを単離するために、組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリー(例えば、抗体ファージディスプレイライブラリー)をPGC−1βでスクリーニングすることによって同定および単離され得る。ファージディスプレイライブラリーを生成およびスクリーニングするためのキットは、市販されている(例えば、Pharmacia Recombinant Phage Antibody System、カタログ番号27−9400−01;およびStratagene SurfZAPTMファージディスプレイキット、カタログ番号240612)。さらに、抗体ディスプレイライブラリーを生成およびスクリーニングするときに使用することが特に可能な方法および試薬の例は、例えば、Ladner et al.米国特許第5,223,409号;Kang et al.PCT国際公開番号WO92/18619;Dower et al.PCT国際公開番号WO91/17271;Winter et al.PCT国際公開WO92/20791;Markland et al.PCT国際公開番号WO92/15679;Breitling et al.PCT国際公開WO93/01288;McCafferty et al.PCT国際公開番号WO92/01047;Garrard et al.PCT国際公開番号WO92/09690;Ladner et al.PCT国際公開番号WO90/02809;Fuchs et al.(1991)Bio/Technology 9:1370−1372;Hay et al.(1992)Hum.Antibod.Hybridomas 3:81−85;Huse et al.(1989)Science 246:1275−1281;Griffiths et al.(1993)EMBO J 12:725−734;Hawkins et al.(1992)J.Mol.Biol.226:889−896;Clarkson et al.(1991)Nature 352:624−628;Gram et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:3576−3580;Garrad et al.(1991)Bio/Technology 9:1373−1377;Hoogenboom et al.(1991)Nuc.Acid Res.19:4133−4137;Barbas et al.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7978−7982;およびMcCafferty et al.(1990)Nature 348:552−554に見出され得る。
さらに、組換え抗PGC−1β抗体、例えば、標準的な組換えDNA技術を使用して作製され得る、ヒト部分と非ヒト部分との両方を含む、キメラモノクローナル抗体およびヒト化モノクローナル抗体は、本発明の方法の範囲内である。このようなキメラモノクローナル抗体およびヒト化モノクローナル抗体は、当該分野で公知の組換えDNA技術、例えば、Robinson et al.国際出願番号PCT/US86/02269;Akira,et al.欧州特許出願184,187;Taniguchi,M.、欧州特許出願171,496;Morrison et al.欧州特許出願173,494;Neuberger et al.PCT国際公開番号WO86/01533;Cabilly et al.米国特許第4,816,567号;Cabilly et al.欧州特許出願125,023;Better et al.(1988)Science 240:1041−1043;Liu et al.(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439−3443;Liu et al.(1987)J.Immunol.139:3521−3526;Sun et al.(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:214−218;Nishimura et al.(1987)Canc.Res.47:999−1005;Wood et al.(1985)Nature 314:446−449;Shaw et al.(1988)J.Natl.Cancer Inst.80:1553−1559;Morrison、S.L.(1985)Science 229:1202−1207;Oi et al.(1986)BioTechniques 4:214;Winter 米国特許第5,225,539号;Jones et al.(1986)Nature 321:552−525;Verhoeyan et al.(1988)Science 239:1534;およびBeidler et al.(1988)J.Immunol.141:4053−4060に記載の方法を使用して生成され得る。
抗PGC−1β抗体は、PGC−1βタンパク質の発現の量およびパターンを評価するために、(例えば、細胞可溶化物または細胞上清中の)PGC−1βタンパク質を検出するために使用され得る。抗PGC−1β抗体は、臨床試験手順の一部として組織中のタンパク質レベルをモニターするために(例えば、所与の処置レジメンの効能を決定するために)診断的に使用され得る。検出は、抗体を検出可能な物質に結合すること(すなわち、物理的に連結すること)によって促進され得る。検出可能な物質の例としては、様々な酵素、補欠分子族、蛍光性材料、発光材料、生物発光材料および放射性材料が挙げられる。適切な酵素の例としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼが挙げられる;適切な補欠分子族複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられる;適切な蛍光性材料の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリトリンが挙げられる;発光材料の例としては、ルミノールが挙げられる;生物発光の材料の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンが挙げられ、そして適切な放射性材料の例としては、125I、131I、35SまたはHが挙げられる。
本発明はさらに、以下の実施例によって説明されるが、これらは限定として解釈されるべきでない。この出願を通して列挙されたすべての参考文献、配列、図、GenBankアクセッション番号および公開された特許出願の内容が、本明細書中に参考として援用される。
(材料および方法)
以下の材料および方法を下に記載される実験に使用した。
(高脂肪摂餌およびアレイ解析)
動物に標準的なげっ歯類用固形飼料を与え、そして12時間明期および暗期サイクルの制御された環境に収容した。高脂肪摂餌のために、3か月齢の老雄C57/B16Jマウスを58%脂肪由来カロリーを有する食餌(D12331、Research DietsTM)に24または48時間切り替えた。高コレステロール摂餌のために、2群のマウスに0.07%または2%コレステロールのいずれかを補充した基本食餌を24または48時間与えた。肝臓を解剖し、そして直ちにRNA単離のために凍結した。摂餌実験を、各食餌処置に対して1群あたり4匹のマウスを用いて3回反復した。
3匹の固形飼料を与えられたマウスおよび4匹の高脂肪を与えられたマウス(24および48時間について2匹ずつ)から単離した肝臓RNAを包括的な発現解析のために使用した。Affymetrixアレイハイブリダイゼーションおよびスキャニングを、マウス430 2.0チップ(AffymetrixTM)を使用して、Dana−Farber Cancer InstituteのCore Facilityにより実施した。アレイデータを、d−CHIPアレイ解析プログラム(Li and Wong(2001)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98、31−36)を用いて解析した。
(遊離脂肪酸処置)
まず灌流緩衝液(ハンクス平衡塩類溶液、HBSS)で、次いでコラゲナーゼ溶液(1%BSAおよび0.05%コラゲナーゼを含むHBSS)で肝臓全体を灌流した後、初代肝細胞を単離した。分散した細胞を再懸濁し、そして1mMのピルビン酸ナトリウム、1μMのデキサメタゾンおよび50nMのインスリンの存在下で10%FBSを補充したDMEM中のコラーゲンコートしたプレートに蒔いた。この細胞を、その後0.1%BSAおよび1mMのピルビン酸ナトリウムを補充したDMEMに処置前の24時間維持した。0.5%BSAを補充したDMEMにおいて最終濃度400μMとなるようにさらに希釈するために、遊離脂肪酸を、100mMの保存溶液としてエタノール中に溶解した。肝細胞をRNA単離および解析の前に4時間処置した。
(アデノウイルスの形質導入)
雄ウィスターラット(Charles River LaboratoriesTM)に高脂肪食餌(TD96001,Harlan Taklad)を10週間与えた。動物をネンブタールで麻酔し、精製アデノウイルスを用いて尾部静脈注射を介して形質導入した(ラット1匹あたり1×1012ウイルス粒子)。肝臓毒性を、ALT/ASTアッセイキット(505−OP,SigmaTM)によって測定したときの血漿アラニンアミノトランスフェラーゼレベルおよびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼレベルによってモニターした。血漿および肝臓を、遺伝子発現および脂質解析のためにアデノウイルスの形質導入の6日後に回収した。
(肝臓脂質および血漿脂質の解析)
肝臓トリグリセリドをクロロホルム/メタノール(2:1)混合物を使用して抽出し、換気フード内で一晩乾燥させ、そして60%ブタノールおよび40%のTriton−X114/メタノール混合物(2:1)を含有する溶液に溶解した。肝臓トリグリセリド濃度および血漿トリグリセリド濃度を比色定量のアッセイキット(337,SigmaTM)を使用して計測した。総血漿コレステロールを、Infinityコレステロール試薬(401,SigmaTM)を使用して測定した。リポタンパク質解析のために、300μlの血漿をFPLCにより分取した。各画分中のトリグリセリドおよびコレステロールの濃度を上で記載したように測定した。
(RNA単離および解析)
全RNAを、Trizol試薬(InvitrogenTM)を使用して肝臓または培養肝細胞から単離した。リアルタイムPCR解析のために、ランダムプライマーを使用して逆転写によってcDNAを合成し、サイバーグリーン(BioradTM)の存在下で遺伝子特異的プライマーを用いたPCR増幅に供した。mRNAの相対的な存在量を、18SリボソームRNAに対する正規化の後に算出した。本研究において使用されたプライマーの配列を表1に示す。ハイブリダイゼーションのために、20μgの全RNAをホルムアルデヒドゲル上で分離し、ナイロン膜に転写し、そして32P標識遺伝子特異的プローブでハイブリダイズした。リボソームタンパク質36B4へのハイブリダイゼーションをローディングコントロールとして含んだ。
Figure 2008517931
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(一過性トランスフェクション)
マウスH2.35ヘパトーマ細胞(CRL−1995、ATCC)を0.2μMのデキサメタゾンの存在下で4%ウシ胎児血清を補充したDMEM中に維持した。一過性トランスフェクションを、Superfect(QiagenTM)を使用して実施した。代表的な実験において、100ngのレポータープラスミドを、0.5〜1.0μgのPGC−1発現構築物またはRNAi構築物の存在下または非存在下で20〜50ngの転写因子についての発現構築物と混合した。等量のDNAを、適切なベクターDNAを添加することによってすべてのトランスフェクションの組み合わせに使用した。LXRアゴニスト処置のために、T0901317(Cayman ChemicalTM)を最終濃度10μMとなるようにルシフェラーゼアッセイの20時間前に添加した。すべてのトランスフェクション実験を3つ組で少なくとも3回反復した。
(クロマチン免疫沈降)
H2.35ヘパトーマ細胞をAd−SREBP1cの非存在下または存在下で2日間、Ad−GFP、Ad−flag−PGC−1αまたはAd−PGC−1βを用いて感染させた。剪断されたクロマチンの調製のために10%ホルマリンで短時間の固定後、細胞を回収した。免疫沈降を抗flag抗体または抗IgGコントロール抗体を使用して実施した。沈降物をDNA単離およびPCR解析のために脱クロスリンクした。
(タンパク質相互作用アッセイ)
細胞におけるPGC−1βとSREBP1cとの物理的結合を共免疫沈降により調べた。簡潔には、H2.35ヘパトーマ細胞をAd−SREBP1c、Ad−Flag−PGC−1β、Ad−Flag−PGC−1β単独または示したような組み合わせで感染させた。感染の48時間後に核を感染細胞から単離し、そして20mM HEPES(pH7.9)、400mM NaCl、1.5mM MgCl2、0.5mM DTT、0.2mM EDTA、15%グリセリンおよび1mM PMSFを含有する溶解緩衝液中で抽出した。免疫沈降を、SREBP1に対するポリクローナル抗体(sc−8984、Santa Cruz BiotechnologyTM)を使用して、1.5%Triton X−100および0.2mg/mlのBSAを補充した溶解緩衝液中で実施した。複合体中のPGC−1をFlagエピトープに対するモノクローナル抗体(M2,SigmaTM)を使用して免疫ブロット法により明らかにした。
インビトロ相互作用アッセイのために、固定化されたGSTまたはGST−SREBP1c(1−471)を含有するグルタチオンビーズを20mM HEPES(pH=7.2)、80mM KCl、150mM NaCl、0.05%NP−40、5%グリセリンおよび0.5mM DTTを含有する結合緩衝液中で、インビトロで翻訳されたPGC−1βの35S標識した完全長または切断型の変異体とともにインキュベートした。ビーズを同じ緩衝液で4回洗浄した。ビーズに結合したタンパク質をSDS−PAGEの後、オートラジオグラフィにより解析した。LXR/PGC−1相互作用を検出するために、固定化されたGSTまたはGST−PGC−1(N末端)をインビトロで翻訳された35S標識LXRαとインキュベートし、そして上で記載したように処理した。
(PGC−1β RNAiベクター)
PGC−1βに対するRNAi構築物を、PGC−1βのコード領域中の2つの配列:5’−GATATCCTCTGTGATGTTA−3’(配列番号60)および5’−GTACGGAACTGCATAAGCA−3’(配列番号61)を使用して作製した。これらの配列を有するオリゴヌクレオチドをポリメラーゼIII H1−RNAプロモーターの制御下のpSUPER−レトロベクターにサブクローニングした。一過性トランスフェクションのために、1.0μgのpSUPERベクターまたはPGC−1β RNAi構築物を、適切な転写因子のために100ngのレポータープラスミドと50ngの発現構築物とを組み合わせて使用した。
PGC−1β RNAiアデノウイルスをpSUPERベクター由来の発現カセットを使用して作製した。ノックダウン実験のために、H2.35ヘパトーマ細胞を、Ad−SREBP1cとのインキュベーション前の48時間Ad−GFPアデノウイルスまたはAd−PGC−1β RNAiアデノウイルスのいずれかを用いて感染させた。全RNAを、Ad−SREBP1c感染の20時間後に感染細胞から回収し、そしてリアルタイムPCRによって解析した。
マウスにおけるアデノウイルスの形質導入を、マウス(3ヶ月齢の老C57B1/6雄)1匹あたり1.5×1011ウイルス粒子で尾部静脈注射によって実施した。4日後、動物をさらに2日間高脂肪食餌に切り替えた。血漿サンプルを、高脂肪摂餌の前および後で収集し、トリグリセリド濃度およびコレステロール濃度についてアッセイした。HDLコレステロールを自動ACE Clinical Chemistryシステム(ALFA WassermannTM,NJ)を使用して計測した。肝臓を遺伝子発現および脂質解析のために高脂肪摂餌の終わりに解剖した。
(実施例1:高脂肪摂餌による肝臓の脂質生合成のプログラムの刺激)
マウスに、飽和脂肪に富むが、コレステロール(58%脂肪、主に水素化されたやし油由来;D12331、Research DietsTM)をほとんど含まないか、または全く含まない食餌を与えた。これらの食餌が多くの慢性的な効果(例えば、インスリン抵抗性および肥満症)を引き起こすことが知られているので、本実験は、初期の変化のみに着目した。マウスを標準的なげっ歯類用の固形飼料から高脂肪食餌に1および2日間切り替えて、肝臓の遺伝子発現を、AffymetrixTMアレイを用いて調べた。クラスタリング解析から得られた結果により、デノボ脂質合成に関わる多数の遺伝子の発現が、この短期間の高脂肪摂餌の後に強く誘導されることが明らかとなり、それらは、脂肪酸、コレステロールおよびトリグリセリド合成に関与する遺伝子を含んでいた(図1A)。グルコーストランスポーター2、解糖経路およびペントースリン酸経路におけるいくつかの酵素ならびに脂質輸送に関連する酵素をコードするmRNAの発現がまた、協調的に増加した。コレステロール合成経路における多くの酵素(例えば、HMG−CoAレダクターゼ、ホスホメバロン酸キナーゼおよびラノステロールシンターゼ)についてのmRNAレベルはまた、食餌性飽和脂肪に応答して有意に上昇する。この肝臓の脂質生成プログラムの活性化は、2つの潜在的に重要な肝臓の転写制御因子である、SREBP1c(脂質生成遺伝子発現の中心的な制御因子)およびPGC−1β(PGC−1ファミリーにおける転写コアクチベーター)の高い発現をさらに伴う(図1A)。SREBP1cのmRNAレベルは、定量的リアルタイムPCR解析によって測定したとき、高脂肪摂餌の第1日目で7倍以上増加する(図1B)。SREBP1aの発現はまた、約2倍誘導される。対照的に、SREBP2発現は、変化しないままである。食餌の切り替えによってわずかしか誘導されないPGC−1αとは異なって、PGC−1β mRNAの発現は、高脂肪摂餌に応答して4倍以上刺激され、SREBP1cの発現に匹敵する(図2B)。脂質生成遺伝子(例えば、脂肪酸シンターゼ(FAS)およびHMG−CoAレダクターゼ)についてのmRNAの数倍の誘導がまた、リアルタイムPCR解析によって示される(図1B)。PGC−1βの発現は、これらの条件下で骨格筋および白色脂肪組織において変化しない。
食餌性コレステロールがSREBPおよびPGC−1βの発現にいかなる影響を及ぼすか調べるために、マウスに0.07%コレステロールを含有するコントロール食餌または2%コレステロールを含有する同様の食餌を与えた。高コレステロール摂餌がコレステロール生合成の転写制御因子であるSREBP2をコードするmRNAの肝臓における発現をHMGCoAレダクターゼの発現とともに抑制するという結果が証明される(図1C)。PGC−1βの発現は、食餌性コレステロール含有量によって変化しないが、SREBP1c mRNAが高コレステロール食餌に応答してわずかに増加する(図1C)。FAS、ステアロイル−CoAデサチュラーゼ1(SCD−1)およびグルコースキナーゼ(GK)を含むいくつかの脂質生成酵素のmRNAレベルは、ほとんど変化しないままである。これらの結果は、食餌性飽和脂肪およびコレステロールが、SREBPおよびPGC−1β、ならびに肝臓の脂肪酸およびコレステロール合成に関わる遺伝子についてのmRNAの発現に対して別々の効果を有することを証明している。高飽和脂肪食餌の短期間の摂取後の肝臓の脂質生合成の遺伝的プログラムのこの誘導は、以前には観察されていなかった。
以前の研究では、脂肪酸、特に多価不飽和種が、SREBP1cの発現と切断された核アイソフォームの生成との両方を抑制することが証明されている(Hannah et al.(2001)J.Biol.Chem.276,4365−4327)。食餌性脂肪が、PGC−1β発現に直接影響を及ぼすか否かを調べるために、初代肝細胞を様々な飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸およびトランス脂肪酸で処置し、そしてリアルタイムPCR解析によってPGC−1β mRNAのレベルを調べた。一不飽和(オレイン酸、C18:1n−9)および多価不飽和(リノール酸、C18:2n−6、EPA、C20:5n−3およびアラキドン酸、C20:4n−6)は、PGC−1β発現をわずかにしか誘導しないが、種々の鎖長(C10:0〜C18:0)の飽和脂肪酸が、PGC−1β mRNAレベルをより強く増加させる(図1D)。トランス脂肪酸(例えば、エライジン酸(トランスC18:1n−9)およびトランスバクセン酸(トランスC18:1n−7))は、それぞれ水素化された植物油および乳製品中に大量に存在し、またPGC−1αの発現を強く誘導した(3.2倍)。対照的に、PGC−1β mRNAを2.2倍に誘導するステアリン酸(C18:0)以外の脂肪酸の処置は、これらの条件下でPGC−1α mRNAの発現に対する効果を有さない(図1D)。これらの結果から、一定の脂肪酸、特に飽和脂肪酸およびトランス脂肪酸が、細胞自立的様式でPGC−1β発現を直接刺激することが示される。
(実施例2:PGC−1βによる転写因子のSREBPファミリーの同時活性化)
PGC−1βは、核内レセプター(例えば、PPARβおよびERRならびにそれほどではないがHNF4α)を含むいくつかの転写因子を強く同時活性化することが示されている(Kamei et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100,12378−12383;Lin et al.(2002a)Nature 418,797−801;Lin et al.,(2003)J.Biol Chem.278,30843−30848)。PGC−1βはまた、核内レセプターではないNRF−1を同時活性化する。高脂肪を与えられたマウスの肝臓におけるPGC−1βおよびSREBP1cの同時誘導により、PGC−1βがSREBP1cの転写活性を調節し得、そしてその標的遺伝子の発現に影響を与え得ることが示唆されている。この理論を検証するために、ヘパトーマ細胞にFASプロモーターの制御下のルシフェラーゼレポーターを一過的にトランスフェクトした;この構築物は、機能的SREBP結合部位を有し、そしてSREBPに対して応答性が高い(Joseph et al.(2002)J.Biol.Chem.277,11019−11025;Magana and Osborne(1996)J.Biol.Chem.271,32689−32694;Tontonoz et al.(1993)Mol.Cell Biol.13,4753−4759)。SREBP1c発現が、一過的にトランスフェクトされたH2.35マウスヘパトーマ細胞においてルシフェラーゼレポーター遺伝子から約5倍促進されるという結果が示される(図2A)。PGC−1βは、基礎レベルと比較して、ルシフェラーゼ活性において17倍増加することにより示されるように、FASプロモーターにおけるSREBP1cの転写活性を顕著に増強する。対照的に、PGC−1αは、SREBP1cによるレポーター遺伝子活性の誘導に対して最小の効果を示す。プロモーターにおけるSREBP結合部位の変異は、SREBP1c単独およびSREBP1cとPGC−1βとの組み合わせの両方によってその活性化を完全に無効とし、このことからPGC−1βは、このプロモーターにおけるSREを介してSREBP1cを同時活性化することが示唆される。PGC−1βはまた、これらの同時活性化アッセイにおいてSREBP2およびSREBP1aの活性を強く増加させる(図2B)。
PGC−1βが内在性SREBP標的遺伝子のプロモーター/エンハンサー領域に存在するSREにリクルートされた否かを判定するために、クロマチン免疫沈降(CHIP)アッセイを実施した。図2Cに示すように、PGC−1αではなくPGC−1βが、FASプロモーターにおけるSREの近傍に存在する。PGC−1βのSREBP結合部位へのリクルートは、それらのプロモーターの状況に依存する;PGC−1βは、LDLRプロモーターにおけるSREにはリクルートしない。コントロールのIgGが免疫沈降に使用されるとき、PCR産物は検出されなかった(図2C)。これらの結果から、SREBP1cが標的プロモーターにおける結合部位の近傍にPGC−1βを直接リクルートすることができることが証明される。実際は、これらの2つのタンパク質は、共免疫沈降アッセイによって示されるように細胞中で物理的に互いに相互作用する。これらのタンパク質がヘパトーマ細胞において同時発現されるとき、SREBP1cは、PGC−1βと相互作用し、PGC−1βを沈殿させるが、PGC−1βはそうではない(図2D)。PGC−1βの発現レベルがPGC−1βより高いという事実にもかかわらず、このことは観察される。SREBP1cと相互作用し得るPGC−1βのドメインを同定するために、融合タンパク質をGSTとSREBP1cの処理された形態との間で利用した。完全長PGC−1βは、SREBP1cと効果的に相互作用し(図2E)、そしてPGC−1β変異体の解析によりPGC−1βに対して特有の(PGC−1αには存在しない)ドメイン(アミノ酸350−530)が、SREBP1cとPGC−1βとの間の相互作用に必要とされることが明らかとなる(図2E〜F)。この結果により、PGC−1αではなくPGC−1βが、直接的な物理的結合により転写因子のSREBPファミリーを同時活性化することが証明される。
(実施例3:PGC−1βによる肝臓の脂質生合成および高脂血症の活性化)
内因性脂質生成遺伝子の発現に対するPGC−1βの効果を調べるために、β−ガラクトシダーゼ(β−Gal)、PGC−1αまたはPGC−1βを発現する組換えアデノウイルスを、尾部静脈注射を介してラットに注入した。尾部静脈を通って導入される場合、ほとんどのアデノウイルスは、もっぱら肝細胞に感染した。その結果、異所的に肝臓において発現する場合、PGC−1βとPGC−1αとの両方が、脂質生成遺伝子(例えば、シトクロムc、βATPアーゼおよび中位鎖アシル−CoAデヒドロゲナーゼ(MCAD)の発現を刺激することが証明される(図3A)。脂質生成遺伝子の誘導に加えて、PGC−1βはまた、脂質合成に関連する遺伝子(例えば、FAS、SCD−1、HMG−CoAレダクターゼ、DGATおよびGPAT(これらすべてがSREBP標的であることが周知である))の発現を強力に刺激する。対照的に、PGC−1αは、これらの遺伝子の発現に対してほとんどかまたは全く効果を有さない。ミクロソームのトリグリセリド移送タンパク質(MTTP)、VLDL分泌を制御し、そして家族性無βリポタンパク質血症における変異を有する遺伝子の発現は、PGC−1αとPGC−1βとの両方によって誘導される。リアルタイムPCRによる遺伝子発現解析により、HMG−CoAレダクターゼを調節することに加えて、PGC−1βはまた、コレステロール合成経路において、多数の酵素のmRNAレベルを増加させるが、PGC−1αは、より弱い効果を有することが明らかとなる(図3B)。実際は、多くのこれらのPGC−1β標的遺伝子はまた、高脂肪摂餌に応答して強く誘導される。このことから、PGC−1βがコレステロール生合成を含む肝臓の脂質生合成に対して食餌性飽和脂肪の効果を媒介する重要な因子であることが証明される。さらに、古典的なSREBP標的であるLDLRの発現は、PGC−1βによって増加されない。PGC−1βによるSREBP標的遺伝子のこの誘導は、mRNA解析およびタンパク質解析によって示されるように、高レベルのSREBP転写因子に起因しないようである(図3B〜C)。むしろ、これらの結果は、PGC−1βが、直接的な物理的結合およびそれらの転写活性の増強を通じてSREBPを同時活性化するという観察と一致する。
マウス肝臓におけるSREBPのトランスジェニック発現は、脂質生成遺伝子発現を活性化し、そして脂肪酸およびコレステロール合成の速度を上昇させることにより示される。しかしながら、脂質の大部分は、肝臓に蓄積され、貯蔵および利用のために末梢組織へ搬出されない(Horton et al.(1998)J.Clin.Invest.101,2331−2339;Shimano et al.(1996)J.Clin.Invest.98,1575−1584;Shimano et al.(1997)J.Clin.Invest.99,846−854)。血漿トリグリセリドレベルは、野生型コントロールと比較するとき、おそらく肝臓における高レベルのLDLRに起因して、実際にトランスジェニックマウスにおいて減少している(Shimano et al.(1997)J.Clin.Invest.99,846−854)。全身性脂質ホメオスタシスに対するPGC−1βの影響を評価するために、肝臓および血漿における脂質レベルを、適宜、高脂肪を与えられたラットにおいてアデノウイルスの形質導入の後に調べた。SREBP発現を含む以前の結果を考慮して、肝臓におけるアデノウイルスが媒介するPGC−1β発現は、これらのラットにおいて50%以上肝臓のトリグリセリド含有量を減少させた(図4A)。肝臓の脂質貯蔵のこの減少は、この器官からの脂質搬出の増加によって説明され、肝臓におけるPGC−1β発現が、Ad−β−Galを与えられたコントロールラットと比較するとき血漿トリグリセリド濃度が6倍以上増加しているラットにおいて深刻な血漿高トリグリセリド血症を引き起こした(図4B)。血漿トリグリセリドの同様の増加がまた、固形飼料を与えられたラットにおいて観察されるが、それらの動物由来の肝臓におけるより少ない脂質蓄積に起因して、PGC−1βの抗脂肪効果は、明白ではない。PGC−1αはまた、わずかに血漿トリグリセリドレベルを増加させる一方で肝臓トリグリセリド含有量を減少させた(図4A〜B)。血漿コレステロールの解析により、総コレステロールが、PGC−1αおよびPGC−1βによってそれぞれ約55%および200%増加することが示された(図4C)。血漿コレステロールにおける増加は、主に、リポタンパク質プロファイルのFPLC解析によって示されるようにVLDL画分中のコレステロールの蓄積の結果である(図4D)。実際は、VLDLにおけるトリグリセリドおよびコレステロールのレベルが、PGC−1βに応答してβ−Galコントロールと比較してそれぞれ6.2倍および5.3倍増加する(図4E)。対照的に、HDLコレステロールのレベルは、大きく影響されない。このことは、VLDLコレステロールがLDLコレステロールの前駆体であるという事実を考慮に入れると意味のあることである。結果は、PGC−1βがSREBPを同時活性化し、そしてSREBPの標的である脂質生成遺伝子の発現を増加させるが;このコアクチベーターはまた、肝臓の脂質と血漿脂質との間のバランスを変化させる脂質輸送経路を調節することを強く証明する。
SREBPが脂質生成遺伝子発現に対するPGC−1βの効果を媒介するために必要であるか否かを判定するために、ラットに、SREBPのうまく特徴付けられたドミナントネガティブ変異体と組み合わせてAd−PGC−1βとともに注入した(Foretz et al.(1999)Proc.Natl.Acad.Sci USA 96,12737−12742;Kim and Spiegelman(1996)Genes Dev.10,1096−1107)。等しい力価(1.2×1012ウイルス粒子)のアデノウイルスをラットに尾部静脈注射を介して送達した。図5Aに示されるように、DN−SREBP単独は、β−Galコントロールと比較して血漿トリグリセリドのレベルに対する効果を有さなかったが、DN変異体は、PGC−1βによって引き起こされる高トリグリセリド血症を有意に減弱させる。これらの結果と一致して、いくつかの脂質生成遺伝子(例えば、FAS、SCD−1およびHMG−CoAレダクターゼ)の誘導はまた、ラットがAd−PGC−1βとAd−DN−SREBPとの両方で形質導入されるとき減少する(図5B)。対照的に、βATPアーゼ、SREBPによって制御されることが知られていないミトコンドリア遺伝子の誘導は、PGC−1β単独またはその存在下のいずれでもDN−SREBPによって影響されない。これらの結果は、脂質生成遺伝子発現に対するPGC−1βの効果の少なくとも重要な部分が、SREBPファミリーである転写因子を通じて媒介されることを示す。
(実施例4:PGC−1αとPGC−1βとの両方によるLXRβ経路の調節)
実施例3に示したように、PGC−1βは、VLDLトリグリセリドおよびコレステロールのレベルにおいて大幅な増加を誘導し、このことから肝臓の脂質輸送およびVLDL分泌を促進するときのPGC−1βの役割が示唆される。実際に、PGC−1βによって誘導される高トリグリセリド血症は、アゴニストリガンドを用いた肝臓Xレセプター(LXR)の活性化によって動物において引き起こされると暗示されている(Grefhorst et al.(2002)J.Biol.Chem.277,34182−34190;Schultz et al.(2000)Genes Dev.14,2831−2838)。LXRαは、肝臓、脂肪組織、腸およびマクロファージにおいて強く発現される。LXRαの活性化は、マクロファージにおける脂質搬出およびコレステロール逆輸送の制御に重要な役割を果たすと示されている(Chawla et al.(2001)Mol.Cell 7,161−171)。PGC−1βがLXRαの転写活性に影響するか否かを判定するために、多量体を形成するLXR結合部位を有するレポータープラスミド(4×LXRE−luc)をPGC−1αおよびPGC−1βを用いて同時トランスフェクトした。図6Aに示されるように、PGC−1βは、リガンド依存性様式でLXRαおよびRXRβによるレポーター遺伝子発現の活性化を強く増大する。LXRα/RXRβとPGC−1βとの組み合わせは、LXRαリガンドの存在下で基礎レベルと比較されるとき、ルシフェラーゼ活性を240倍以上増加させた。同様に、このレポーター構築物においてアッセイされるとき、両方のPGC−1コアクチベーターが、LXRβの転写活性を増加させることができる(図9A)。外来性LXRまたはRXRβが添加されないとき、レポーター遺伝子発現に対するPGC−1βの効果がまた見られた。これは、おそらくH2.35ヘパトーマ細胞における内在性LXRおよびRXRの存在を反映する。PGC−1αおよびPGC−1βが内在性プロモーターにおいてLXRαを同時活性化するか否かという実験を実施した。PGC−1の同時トランスフェクションは、ATP結合カセットトランスポーターA1(ABCA1)のプロモーター活性を、LXRα/RXRβ単独と比較して約2〜3倍増加させる(図6B)。プロモーターにおけるLXR結合部位の変異は、LXRおよびPGC−1によるその制御を完全に消失させ、このことから、ABCA1プロモーターにおけるその応答エレメントへのLXRの結合がPGC−1の効果を媒介する必要があることが示される。実際は、PGC−1βとPGC−1βとの両方が、LXR標的遺伝子として知られるCYP7a1およびABCA1のプロモーターに存在するLXREの近傍にリクルートされる(図6C)。さらに、これらの2つのコアクチベーターは、インビトロ相互作用アッセイにおいてLXRαを直接結合することができる(図6D)。核内レセプター結合に関わる保存されたLXXLLモチーフを有するPGC−1の両方のN末端(PGC−1α N400およびPGC−1β N350)は、LXRαと相互作用するのに十分である。PGC−1βとLXRαとの間の相互作用は、PGC−1αよりもリガンド依存性であるようだ。保存されたLXXLLモチーフ(PGC−1β N350)を有する小さい領域の欠失は、PGC−1βとLXRとの間の結合を減少させ、そしてリガンドの効果を完全に消失させる(図6D)。
PGC−1コアクチベーターが内在性LXR標的遺伝子の発現を制御するか否かを判定するために、LXRα標的であると知られるいくつかの遺伝子のmRNAレベルを、アデノウイルスで形質導入されたラット肝臓から単離されたRNAのリアルタイムPCR解析によって計測した。レポーター遺伝子アッセイと一致して、両方のPGC−1コアクチベーターが、CYP7a1リン脂質輸送タンパク質(PLTP)、ABCA1およびABCG1に対するmRNA発現を誘導し、CYP7a1は、PGC−1αとPGC−1βとの両方の異所性の発現に最も応答する(図6E)。さらに、ABCG8の発現は、PGC−1に応答して変化しないが、ABCG5は、PGC−1によってわずかに減少する(図6E)。従って、単なるPGC−1β標的である、脂肪酸およびコレステロール合成に関わる遺伝子の制御と対照的に、PGC−1αとPGC−1βとの両方が、LXR標的遺伝子の発現を活性化するようである。
LXRを欠損したマウスは、SREBP1cの発現が非常に低いということが知られているので(Repa et al.、(2000)Genes Dev 14,2819−2830)、SREBP1cに独立したPGC−1β応答におけるLXRの役割を遺伝的に決定することができない。しかしながら、アデノウイルスPGC−1βをLXRαとLXRβとの両方を欠くマウスへ導入することにより、この経路におけるLXRの役割に一致して、野生型動物において示される高脂血症の応答を完全に欠くことが示される(図9B)。
(実施例5:SREBPの転写活性におけるPGC−1βの必要性)
PGC−1βが、高脂肪摂餌に応答してSREBP1a/1cとともに強く誘導されるという事実は、肝細胞におけるPGC−1βの濃度がSREBP活性に必要かつその制限因子であることを示唆する。この理論を検証するために、細胞におけるPGC−1βレベルを特異的にノックダウンするRNAiベクター(配列番号60および配列番号61)を構築した。図7Aに示されるように、一過性のトランスフェクションアッセイにおいて試験されるとき、コントロールベクターと比較して、PGC−1βに対する両方のRNAiベクターがPGC−1βのタンパク質レベルを60〜90%減少させる。PGC−1βがSREBP機能に必要か否かを判定するために、一過性トランスフェクションにおいてSREBP転写活性に対するPGC−1β RNAiの効果を解析した。トランスフェクトされたヘパトーマ細胞において評価されるとき、SREBP1cは、FASプロモーター活性を強く増加させる(図7B)。SREBP1cによるFASプロモーターの活性化は、コントロールベクターまたはベクター発現ランダムRNAi配列と比較してPGC−1β RNAi構築物によって60%以上減少する。SREBP転写活性の非常に類似した減少はまた、SREBP2とSREBP1aとを組み合わせるとき、これらのRNAとともに観察される(図7C)。これらのPGC−1β RNAiベクターは、PGC−1αおよびHNF4αによるG6Paseプロモーター活性の制御に対する効果をほとんど有さないか、または全く有さない(図7D)。これらのRNAiベクターはまた、肝細胞におけるLXRに対するPGC−1αおよび/または他のコアクチベータータンパク質の存在に起因して、多量体を形成したLXR応答性エレメントを有するレポーターにおいてアッセイされるとき、LXRα/RXRα転写活性を変化させない(図7E)。このデータは、PGC−1β活性が、FASプロモーターに対するSREBPの完全な転写効果に必要であることを強く示す。
PGC−1βが、内在性SREBP1c標的の発現に必要であるか否かを判定するために、PGC−1βに対するRNAi(配列番号60)を使用したアデノウイルスRNAiベクター(Ad−RNAi)を構築し、脂質生成遺伝子の発現に対するその効果を調べた。図7Fに示されるように、このAd−RNAiを用いたヘパトーマ細胞の感染は、内在性PGC−1βタンパク質をこれらのH2.35細胞において約80%減少させる。PGC1−αに対する効果は、検出されなかった。図7Gに示されるように、ヘパトーマ細胞におけるSREBP1c発現は、いくつかの脂質生成遺伝子、例えば、SCD−1(3.5倍)、FAS(3.6倍)、HMG−CoAレダクターゼ(1.8倍)およびLDLR(2.4倍)のmRNA量を強く刺激する。PGC−1βに対するAd−RNAiで感染されたヘパトーマ細胞は、SCD−1の基礎mRNAレベルを減少させるが(50%)、FASおよびHMG−CoAレダクターゼを減少させない。しかしながら、SREBP1cに応答するこれらすべての遺伝子の誘導は、コントロールGFPと比較してAd−RNAiで感染された細胞において著しく損なわれる。特に、FASおよびHMG−CoAレダクターゼの誘導は、50%以上減少するが、SCD−1mRNAの発現は、SREBP1cの存在下でさえも基礎レベル近くまで減少する。対照的に、SREBP1cなどのLXR標的遺伝子の誘導は、PGC−1βノックダウンによって影響されず(図7H)、このことは、PGC−1βがまた、LXRを同時活性化することができ、そしてその標的の発現を刺激することができるという観察を反映する(図6)。
PGC−1βが、インビボでの脂質生成遺伝子発現の活性化に必要であるか否かを検証するために、特に高脂肪摂餌に照らして、Ad−RNAiを有するマウスをPGC−1βに対してかまたはコントロールのランダムRNAiを4日間形質導入し、次いで2日間動物を高脂肪食餌に切り替えた。PGC−1βに対するAd−RNAiは、肝臓における内在性PGC−1βタンパク質を著しく減少させたという結果が証明される(図8A)。肝臓の遺伝子発現の解析により、FAS、SCD−1およびHMG−CoAレダクターゼを含むいくつかの重要な脂質生成酵素のmRNAレベルが、コントロールRNAiベクターと比較してAd−RNAiを受けたマウス由来の肝臓において有意に減少することが示される(図8B)。CYP7a1およびPLTPの発現は、2群間で類似している。さらに、LDLRのmRNAレベルはまた、PGC−1βノックダウンに応答して約40%減少し、このことから、このコアクチベーターが、肝臓におけるLDLRの最適な発現について、直接的または間接的に制限因子であり得ることが示される。これらの結果は、PGC−1βが、SREBPおよびおそらくマウス肝臓において今のところ定義されていない他の転写因子によって活性化される脂質生成プログラムの完全な活性化に本当に必要であることを例証する。
PGC−1βに対するRNAiで形質導入されたマウスにおける循環脂質レベルもまた調べた。リポタンパク質合成および分泌の制御におけるPGC−1βの重要な役割に一致して、血漿トリグリセリド濃度は、固形飼料または高脂肪食餌のいずれかを与えたとき、Ad−RNAi形質導入マウスにおいて有意に減少する(15%)(図8C)。肝臓のトリグリセリドレベルは、その差が統計的有意性に達しないが、RNAi群よりも高い傾向にある。血漿コレステロールレベルが、高脂肪摂餌後のマウスにおいて増加することが結果により証明される(図8D)。総血漿コレステロール濃度が、高脂肪摂餌後のAd−RNAi形質導入マウスよりもわずかであるが有意に高い。これは、HDLコレステロールと非HDLコレステロールとの両方における増加に起因する(図8D)。これはまた、少なくとも一部は、PGC−1βを生体動物においてノックダウンするときに観察されるLDLRの低発現の結果であり得る(図8B)。
(等価物)
当業者は、単なるルーチン的な実験を使用して、本明細書中に記載される本発明の特定の実施形態との多くの等価物を認識し得るか、または確認することができる。このような等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
図1A〜Dは、飽和脂肪の食事摂取によるPGC−1β発現の誘導を表す。特に、図1Aは、高脂肪摂餌に応答した肝臓の遺伝子発現のクラスター解析を表す。図1Aは、高脂肪摂餌に応答して1.8倍以上誘導される肝臓の脂質生合成に関わる遺伝子を例証する。多数のプローブセットが単一遺伝子について利用可能である場合、代表的なプローブセットを、系図を生成するために使用した。SREBP1cおよびPGC−1βは、この脂質生成クラスター内に含まれた。図1Bは、高脂肪食餌を1日間(斜線四角)または2日間(黒四角)与えられたマウス由来の全肝臓RNAのリアルタイムPCR解析を表す。相対的なmRNA存在量をコントロール固形飼料値に対する正規化により算出した(白四角);N=4;:p<0.01。図1Cは、0.07%コレステロールを含有するコントロール食餌を与えられたマウス(白四角)または2%コレステロールを含有する食餌を1日間(斜線四角)もしくは2日間(黒四角)与えられたマウス由来の全肝臓RNAのリアルタイムPCR解析を表す。値を、コントロール食餌を与えられたマウスの値に対して正規化した;N=4;:p<0.02。図1Dは、単離された肝細胞における遊離脂肪酸によるPGC−1β発現の制御を表す。初代肝細胞を400μMの様々な脂肪酸で4時間処置した。全RNAを単離し、PGC−1β(黒四角)およびPGC−1β(白四角)に対して特異的なプライマーを使用してリアルタイムPCRにより解析した;:p<0.01。 図2A〜Fは、PGC−1βによる転写因子のSREBPファミリーの同時活性化を表す。特に、図2Aは、PGC−1の存在下または非存在下でSREBP1cと組み合わせて、野生型FASプロモーター(FAS−700 luc)またはSRE変異体(FAS−700 ΔSRE luc)レポーター構築物のいずれかで一過的にトランスフェクトしたH2.35マウスヘパトーマ細胞を表す。図2Bは、PGC−1の存在下または非存在下におけるSREBP2を有するFAS−700 lucレポータープラスミドの一過性トランスフェクションを表す。図2Cは、SREBP標的遺伝子に対するチップ解析を表す。ヘパトーマ細胞をアデノウイルスに2日間感染させ、抗Flag抗体またはコントロールIgG(下)を用いてチップ解析のために回収した。沈降したゲノムフラグメントを、FASおよびLDLRプロモーターまたはコントロールGAPDHプロモーター上のSREに隣接するプライマーを使用して増幅した。全クロマチン溶解産物由来のゲノムDNAを投入コントロールとして含めた。図2Dは、PGC−1βおよびSREBP1cの共免疫沈降を表す。培養された293細胞を、示すようなプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞由来の全溶解産物を、SREBP1cに対して特異的な抗体を使用して免疫沈降に供した。溶解産物と沈降物との両方を、SREBP1cまたはFlagエピトープタグに対して特異的な抗体を用いて免疫ブロット法により解析した。矢印は、Flag−PGC−1α(f−PGC−1α)、Flag−PGC−1β(f−PGC−1β)およびSREBP1cに対応するバンドを示す。図2Eは、SREBP1cと相互作用するPGC−1βドメインのマッピングを表す。固定化されたGST(−)またはGST−SREBP1c(+)を含有するグルタチオンビーズを、インビトロで翻訳された35−S標識完全長PGC−1βまたは切断型PGC−1β変異体とともにインキュベートした。インビトロで翻訳されたPGC−1β変異体を左に示すが、これは相互作用アッセイについての投入の10%に匹敵する。ゲルの上の数字は、変異体のアミノ酸の位置を表示する。PGC−1βのアミノ酸350と530との間のドメインは、SREBP1cのドッキングに必要であることに注意しなければならない。図2Fは、SREBP1cに対するドッキング部位を提供するPGC−1βについて特有なドメインを示す、PGC−1αおよびPGC−1βの構造の線図である。 図3A〜Cは、PGC−1βによる脂肪酸生合成およびコレステロール生合成の経路における酵素をコードするmRNAの誘導を表す。特に、図3Aは、コントロールアデノウイルス(Ad−β−Gal)、Ad−PGC−1αまたはAd−PGC−1βを用いて形質導入されたラット由来の全肝臓RNAのハイブリダイゼーション解析を表す。リボソームタンパク質36B4に対して特異的なプローブをローディングコントロールとして含めた。図3Bはさらに、高脂肪を与えられたマウス肝臓と比較するとき、PGC−1βによってコレステロール生合成経路内の酵素をコードする肝臓のmRNAの誘導を表す。高脂肪を与えられたマウス肝臓の発現レベルをAffymetrixTMアレイから得られた正規化された値として表す。PGC−1に応答したこれらの遺伝子の発現は、示したようなアデノウイルスベクターで形質導入されたラット肝臓由来の全RNAのリアルタイムPCR解析によって測定された。PGC−1βは、コレステロール生合成に関わる多数の酵素の発現を誘導することができ、これはまた、高脂肪摂餌に応答して誘導される。図3Cは、ラットSREBP1cタンパク質の膜および核の形態を表す。この結果から、PGC−1β活性がラット肝臓においてSREBP1cの発現およびプロセシングに対して効果を有さないことが証明される。 図4A〜Eは、PGC−1βによる高脂血症の誘導を表す。ラットを、アデノウイルスを用いて尾部静脈注射を介して形質導入した。特に、図A〜Cは、Ad−β−Gal、Ad−PGC−1αまたはAd−PGC−1βで形質導入されたラットにおける、肝臓トリグリセリド(A)、血漿トリグリセリド(B)および総血漿コレステロール(C)を表す。(A):p<0.0003;(B):p<0.0001、**:p<0.007;(C):p<0.0004、**:p<10〜6。図4Dは、リポタンパク質プロファイルの解析を表す。コントロールAd−β−GalまたはAd−PGC−1βで形質導入されたラット由来の血漿を、FPLCによって分取した。各画分中のトリグリセリド濃度およびコレステロール濃度を計測した。図4Eは、パネル(D)内の曲線下の範囲を使用して算出したVLDL画分中の相対的脂質含有量を表す。図4Eは、コントロールβ−Galと比較するとき、Ad−PGC−1βで形質導入されたラット由来の血漿中のVLDLトリグリセリドおよびコレステロールの大幅な増加を図示する。 図5A〜Bは、PGC−1βの肝臓の効果におけるSREBP活性の所要量を図示する。特に、図5Aは、コントロールβ−Gal、PGC−1β、ドミナントネガティブSREBP1c(DN)またはPGC−1βとDNとの組み合わせを発現するアデノウイルスベクターを用いて形質導入されたラットにおける血漿トリグリセリド濃度を表す。:p<0.0001(PGC−1β 対 β−Gal)、**:p<0.02(PGC−1β 対 PGC−1β+DN)。図5Bは、アデノウイルスで形質導入したラットにおける肝臓の遺伝子発現のリアルタイムPCR解析を表す。:p<0.001(PGC−1β 対 PGC−1β+DN)。 図6A〜Eは、PGC−1αおよびPGC−1βによるLXRαの同時活性化を図示する。特に、図6Aは、プラスミドと組み合わせた4×LXRE−lucで一過的にトランスフェクトされたH2.35ヘパトーマ細胞を表す。トランスフェクトされた細胞をビヒクルDMSO(白四角)または10μMのLXRアゴニストT0901317(黒四角)のいずれかでルシフェラーゼアッセイの前の24時間処置した。図6Bは、野生型ABCA1プロモーターレポータープラスミド(ABCA1−luc)またはプラスミドと組み合わせたLXREを有さない変異体(ABCA1 ΔLXRE−luc)で一過的にトランスフェクトされたH2.35ヘパトーマ細胞を表す。トランスフェクトされた細胞を、図6Aに記載したようなビヒクルまたはT0901317で処置した。図6Cは、LXR標的遺伝子についてのチップ解析を表す。H2.35細胞を、GFP、flag−PGC−1αまたはflag−PGC−1βを発現するアデノウイルスに感染させた。細胞を、回収する前の3時間10μMのT0901317で処置した。PCRを、示したようなプライマーを使用して投入DNAまたは沈降DNAについて実施した。図6Dは、LXRαとPGC−1タンパク質のN末端との間の相互作用を表す。インビトロで翻訳されたLXRαをGSTまたはGSTとPGC−1のN末端との融合タンパク質とインキュベートした。結合反応を、10μM T0901317の存在下(+)または非存在下(−)でインキュベートした。反応についてのLXRα投入の10%を左に示す。図6Eは、PGC−1αおよびPGC−1βによる内在性LXR標的遺伝子の誘導を表す。Ad−β−Gal(白四角)、Ad−PGC−1α(斜線四角)またはAd−PGC−1β(黒四角)で形質導入したラットから単離した全肝臓RNAのリアルタイムPCR解析。18S rRNAに対して特異的なプライマーを正規化のために内部標準として使用した。 図7A〜Hは、SREBP媒介性転写におけるPGC−1βについての所要量を図示する。特に、図7Aは、RNAi構築物によるPGC−1βタンパク質レベルのノックダウンを表す。培養された293細胞を、RNAi構築物またはベクターコントロールの存在下でPGC−1β発現プラスミド(f−PGC−1β)を用いて一過的にトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞を、Flagエピトープに対するモノクローナル抗体を使用する免疫ブロット法のために回収した。両方のRNAi構築物が、ベクターコントロールと比較してPGC−1βタンパク質レベルを減少させる。図7B〜Eは、プラスミドと組み合わせた、FAS−700 luc(B〜C)、G6Pアーゼ−1200 luc(D)または4×LXRE−luc(E)で一過的にトランスフェクトしたヘパトーマ細胞を表す。RNAiに向けて、PGC−1βに関するベクターコントロールまたはRNAi構築物のいずれかをトランスフェクション実験に含めた。ルシフェラーゼ活性をトランスフェクションの48時間後に計測した。図7Fは、RNAiのアデノウイルス発現によるPGC−1βタンパク質のノックダウンを表す。H2.35ヘパトーマ細胞を2日間Ad−GFPまたはAd−RNAiに感染させ、次いでAd−PGC−1βに感染させた。全溶解産物をPGC−1βに対して惹起された抗体を使用して免疫ブロット解析のために調製した。図7Gは、内在性SREBP標的遺伝子の誘導におけるPGC−1βに対する所要量を図示する。H2.35ヘパトーマ細胞を、2日間Ad−GFP(黒四角)またはAd−RNAi(白四角)に感染させ、次いで20時間Ad−SREBP1cに感染させた。全RNAを感染細胞から単離し、そしてその遺伝子に対して特異的なプライマーを使用してリアルタイムPCRによって解析した。図7Hは、2日間Ad−GFP(黒四角)またはAd−RNAi(白四角)に感染させ、その後示したような10μMのT0901317を処置したH2.35ヘパトーマ細胞を表す。相対的なSREBP1c発現は、リアルタイムPCR解析によって測定され、18S rRNAについて正規化された。 図8A〜Dは、インビボでの脂質生成遺伝子発現および脂質ホメオスタシスに対するPGC−1βの所要量を図示する。特に、図8Aは、Ad−RNAiで形質導入されたマウス由来の肝臓における内在性PGC−1βのノックダウンを表す。コントロールアデノウイルスまたはRNAiアデノウイルスを与えられたマウス由来の80μgの肝臓溶解産物は、PGC−1β抗体を使用した免疫ブロット解析に供された。図8Bは、コントロールアデノウイルス(黒四角、n=5)またはRNAiアデノウイルス(白四角、n=6)で形質導入されたマウスにおける肝臓の遺伝子発現を表す。*p<0.03。図8Cは、コントロールアデノウイルス(黒四角)またはRNAiアデノウイルス(白四角)で形質導入されたマウスにおける肝臓トリグリセリドおよび血漿トリグリセリドの濃度を表す。血漿トリグリセリド濃度を、示したような高脂肪摂餌の2日前(固形飼料)または2日後(HF)に計測した。p<0.03;**p=0.0002。図8Dは、コントロールアデノウイルス(黒四角)またはRNAiアデノウイルス(白四角)で形質導入されたマウスにおける総コレステロール濃度およびHDL/非HDL血漿コレステロール濃度を表す。HDLコレステロールを、高脂肪摂餌の2日後の動物において計測した。非HDLコレステロールを、総コレステロールからHDLを引くことによって算出した。p<0.03;**p=0.02。 図9Aは、PGC−1αおよびPGC−1βによるLXRβの同時活性化を表す。特に、H2.35ヘパトーマ細胞を、示したようなプラスミドで一過的にトランスフェクトした。24時間後、細胞を、ルシフェラーゼアッセイ前の16時間10μMのT0901317で処置した。図9Bは、インビボでのPGC−1βの高脂血症の効果を媒介するときのLXRαおよびLXRβの所要量を表す。特に、野生型またはLXRα/β欠損(LXR DKO)マウスを、コントロールβ−GalまたはPGC−1βを発現するアデノウイルスで形質導入した。血漿トリグリセリド濃度をウイルス形質導入の5日後に計測した。PGC−1βがLXRの非存在下で血漿トリグリセリドレベルを増加させないことに注意すべきである。 図10は、PGC−1βによる転写の同時活性化を介する脂質合成およびリポタンパク質分泌の協調を図示する。PGC−1βは、転写因子のSREBPファミリーを同時活性化することによって肝臓の脂質合成を刺激する。PGC−1βはまた、LXRを含む転写因子の同時活性化を通じてリポタンパク質分泌を活性化する。

Claims (77)

  1. 脂質関連疾患または障害を処置または予防するために被験体にPGC−1β調節因子を投与する工程を含む、該被験体において脂質関連疾患または障害を処置または予防するための方法。
  2. 前記PGC−1β調節因子が、PGC−1βの発現または活性を減少させる、請求項1に記載の方法。
  3. 前記脂質関連疾患または障害が、高レベルのVLDLコレステロールまたはLDLコレステロールによって示される、請求項1に記載の方法。
  4. 前記脂質関連疾患または障害が、高レベルのトリグリセリドによって示される、請求項1に記載の方法。
  5. 前記脂質関連疾患または障害が、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、心臓血管疾患、肥満症およびII型糖尿病からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  6. 前記被験体が、哺乳動物である、請求項1に記載の方法。
  7. 前記被験体が、ヒトである、請求項6に記載の方法。
  8. 前記被験体が、イヌ、ネコ、ウマ、ウシおよびヒツジからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
  9. 前記調節因子が、薬学的に許容可能な製剤形態で投与される、請求項1に記載の方法。
  10. 前記調節因子が低分子である、請求項1に記載の方法。
  11. 前記PGC−1β調節因子がPGC−1βポリペプチド活性を調節することができる、請求項1に記載の方法。
  12. 前記調節因子が抗PGC−1β抗体である、請求項11に記載の方法。
  13. 前記調節因子が、ペプチドまたはペプチド模倣物である、請求項11に記載の方法。
  14. 前記調節因子が、ポリペプチドである、請求項11に記載の方法。
  15. 前記調節因子が、配列番号2のアミノ酸配列またはそのフラグメントを含むPGC−1βポリペプチドである、請求項14に記載の方法。
  16. 前記調節因子が、配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むPGC−1βポリペプチドである、請求項14に記載の方法。
  17. 前記調節因子が、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドの天然に存在する対立遺伝子改変体であって、ここで該ポリペプチドは、65℃、0.2×SSC、0.1%SDS中での1回以上の洗浄の前に45℃、6×SSCで、配列番号1からなる核酸分子の相補体にハイブリダイズする核酸分子によってコードされる、請求項14に記載の方法。
  18. 前記調節因子が、PGC−1β核酸発現を調節することができる、請求項1に記載の方法。
  19. 前記調節因子が、アンチセンスPGC−1β核酸分子である、請求項18に記載の方法。
  20. 前記調節因子が、リボザイムである、請求項18に記載の方法。
  21. 前記調節因子が、RNA干渉物質である、請求項18に記載の方法。
  22. 前記RNA干渉物質が、PGC−1βを標的化するsiRNA分子である、請求項21に記載の方法。
  23. 前記調節因子が、PGC−1β核酸分子である、請求項18に記載の方法。
  24. 前記PGC−1β調節因子が、配列番号1のヌクレオチド配列またはそのフラグメントを含む、請求項18に記載の方法。
  25. 前記PGC−1β調節因子が、SREBP転写因子の発現または活性を調節する、請求項1に記載の方法。
  26. 前記PGC−1β調節因子が、脂質生成遺伝子の発現または活性を調節する、請求項1に記載の方法。
  27. 前記脂質生成遺伝子が、FAS、SCD−1、HMG−CoAレダクターゼ、DGATおよびGPATからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
  28. 前記PGC−1β調節因子が、LXRα標的遺伝子の発現または活性を調節する、請求項1に記載の方法。
  29. 前記LXRβ標的遺伝子が、PLTP、ABCA1およびABCG1からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
  30. 脂質生合成を調節するために、細胞とPGC−1β調節因子とを接触させる工程を含む、該細胞において脂質生合成を調節する方法。
  31. 前記脂質生合成が、SREBP転写因子によって調節される、請求項30に記載の方法。
  32. 前記SREBP転写因子が、SREBP1a、SREBP1cおよびSREBP2からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
  33. 前記細胞が、肝細胞である、請求項30に記載の方法。
  34. 前記脂質が、トリグリセリドおよびコレステロールの少なくとも1つである、請求項30に記載の方法。
  35. 前記コレステロールが、VLDLコレステロールまたはLDLコレステロールである、請求項34に記載の方法。
  36. 脂質輸送を調節するために、細胞とPGC−1β調節因子とを接触させる工程を含む、該細胞からの脂質輸送を調節する方法。
  37. 前記脂質輸送が、LXRαによって調節される、請求項36に記載の方法。
  38. 前記細胞が、肝細胞である、請求項36に記載の方法。
  39. 前記脂質が、コレステロールまたはトリグリセリドである、請求項36に記載の方法。
  40. 前記コレステロールが、VLDLコレステロールまたはLDLコレステロールである、請求項39に記載の方法。
  41. 脂質生合成および脂質輸送を調節するために、細胞とPGC−1β調節因子とを接触させる工程を含む、該細胞における脂質生合成および脂質輸送を調節する方法。
  42. 脂質生合成および脂質輸送の少なくとも1つを調節するために、被験体にPGC−1β調節因子を投与する工程を含む、該被験体における脂質生合成および脂質輸送の少なくとも1つを調節する方法。
  43. 前記PGC−1β調節因子が、SREBP転写因子に結合するPGC−1βの能力を調節する、請求項42に記載の方法。
  44. 前記SREBP転写因子が、SREBP1a、SREBP1cおよびSREBP2からなる群から選択される、請求項43に記載の方法。
  45. 前記PGC−1β調節因子が、LXRαに結合するPGC−1βの能力を調節する、請求項42に記載の方法。
  46. 前記脂質が、トリグリセリドおよびコレステロールの少なくとも1つである、請求項42に記載の方法。
  47. 前記脂質生合成および/または前記脂質輸送が、肝臓内である、請求項42に記載の方法。
  48. 血漿トリグリセリドレベルおよび血漿コレステロールレベルの少なくとも1つを調節するために、被験体にPGC−1β調節因子を投与する工程を含む、該被験体における血漿トリグリセリドレベルおよび血漿コレステロールレベルの少なくとも1つを調節する方法。
  49. 前記コレステロールが、VLDLコレステロールまたはLDLコレステロールである、請求項48に記載の方法。
  50. PGC−1βの発現または活性を調節する化合物の能力をアッセイし、それによって脂質関連疾患または障害を処置または予防することができる化合物を同定する工程を含む、脂質関連疾患または障害を処置または予防することができる化合物を同定する方法。
  51. PGC−1βの発現または活性を調節する化合物の能力をアッセイし、それによって被験体における血漿トリグリセリドレベルおよび血漿コレステロールレベルの少なくとも1つを調節することができる化合物を同定する工程を含む、該被験体において血漿トリグリセリドレベルおよび血漿コレステロールレベルの少なくとも1つを調節することができる化合物を同定する方法。
  52. PGC−1βの発現または活性を調節する化合物の能力をアッセイし、それによって脂質生合成および脂質輸送の少なくとも1つを調節することができる化合物を同定する工程を含む、脂質生合成および脂質輸送の少なくとも1つを調節することができる化合物を同定する方法。
  53. 前記脂質生合成および/または輸送が、肝臓内において実施される、請求項52に記載の方法。
  54. 前記脂質が、トリグリセリドおよびコレステロールの少なくとも1つである、請求項52に記載の方法。
  55. 前記コレステロールが、VLDLコレステロールまたはLDLコレステロールである、請求項52に記載の方法。
  56. 前記PGC−1β核酸発現またはPGC−1βポリペプチド活性を調節する化合物の能力が、脂質生成遺伝子の発現または活性における調節を検出することによって測定される、請求項50、51または52に記載の方法。
  57. 前記脂質生成遺伝子が、FAS、SCD−1、HMG−CoAレダクターゼ、DGATおよびGPATからなる群から選択される、請求項56に記載の方法。
  58. PGC−1β核酸発現またはPGC−1βポリペプチド活性を調節する化合物の能力が、SREBP転写因子の発現または活性における調節を検出することによって測定される、請求項50、51または52に記載の方法。
  59. 前記SREBP転写因子が、SREBP1a、SREBP1cおよびSREBP2からなる群から選択される、請求項58に記載の方法。
  60. PGC−1βの発現または活性を調節する化合物の能力が、LXRαの発現または活性における調節を検出することによって測定される、請求項50、51または52に記載の方法。
  61. PGC−1βの発現または活性を調節する化合物の能力が、コレステロールの血漿レベルおよびトリグリセリドの血漿レベルの少なくとも1つにおける調節を検出することによって測定される、請求項50に記載の方法。
  62. PGC−1βの発現または活性を調節する化合物の能力が、コレステロールホメオスタシスの調節を検出することによって測定される、請求項50に記載の方法。
  63. 前記化合物が、低分子である、請求項50、51または52に記載の方法。
  64. 被験体における脂質関連疾患または障害を阻害するための試験化合物の効能を評価する方法であって、該方法は:
    a)該被験体から得られ、そして該試験化合物の存在下で維持される第1サンプルにおけるPGC−1βの発現または活性のレベル;と
    b)該被験体から得られ、そして該試験化合物の非存在下で維持される第2サンプルにおけるPGC−1βの発現または活性のレベル
    とを比較する工程を含み、
    ここで、該第2サンプルと比較して該第1サンプルにおけるPGC−1βの発現または活性のほうが有意に低いレベルであるとき、該試験化合物は、脂質関連疾患または障害を阻害するために有効であることが示される、方法。
  65. 前記第1サンプルおよび前記第2サンプルが、前記被験体から得られた単一サンプルの一部である、請求項64に記載の方法。
  66. 前記第1サンプルおよび前記第2サンプルが、前記被験体から得られた、貯蔵されたサンプルの一部である、請求項64に記載の方法。
  67. 被験体において脂質関連疾患または障害を阻害するための治療の効能を評価する方法であって、該方法は:
    a)該被験体への治療の少なくとも一部を提供する前に該被験体から得られた第1サンプルにおけるPGC−1βの発現または活性のレベルと
    b)該治療の一部の提供後の該被験体から得られた第2サンプルにおけるPGC−1βの発現または活性のレベル
    とを比較する工程を含み、
    ここで、該第2サンプルと比較して第1サンプルにおけるPGC−1βの発現または活性のほうが有意に低いレベルであるとき、該治療は、該被験体における脂質関連疾患または障害を阻害するために有効であることが示される、方法。
  68. 被験体の細胞または組織においてPGC−1βの発現または活性を検出する工程を含む、該被験体が脂質関連疾患もしくは障害に罹患しているか否かまたは脂質関連疾患もしくは障害を発症する危険性があるか否かを評価する方法であって、ここで、PGC−1βの発現または活性の増加によって、該被験体が脂質関連疾患もしくは障害に罹患しているかまたは脂質関連疾患もしくは障害を発症する危険性のあることが示される、方法。
  69. 前記脂質関連疾患または障害が、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、心臓血管疾患、肥満症およびII型糖尿病からなる群から選択される、請求項68に記載の方法。
  70. 前記細胞または組織が、肝臓から得られる、請求項68に記載の方法。
  71. 細胞と食事成分を含むサンプルとを接触させる工程およびPGC−1βの発現または活性を測定し、それによって該食事成分を分類する工程を含む、該食事成分を分類する方法。
  72. 前記細胞が、肝細胞である、請求項71に記載の方法。
  73. PGC−1βの発現または活性における増加が、高いアテローム発生潜在能力を有する脂肪酸の存在を示す、請求項71に記載の方法。
  74. 前記脂肪酸が、飽和脂肪またはトランス脂肪である、請求項73に記載の方法。
  75. 細胞とサンプルとを接触させる工程およびPGC−1βの発現または活性を測定し、それによって該サンプルにおけるアテローム生成的な脂肪酸の存在を検出する工程を含む、該サンプルにおけるアテローム生成的な脂肪酸の存在を検出する方法。
  76. PGC−1βの発現または活性における増加が、前記サンプルにおけるアテローム生成的な脂肪酸の存在を示す、請求項75に記載の方法。
  77. 前記脂肪酸が、飽和脂肪またはトランス脂肪である 、請求項76に記載の方法。
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