JPH08501633A - Ldlの定量 - Google Patents
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Abstract
(57)【要約】
低密度リポ蛋白(LDL)、超低密度リポ蛋白(VLDL)、および高密度リポ蛋白(HDL)を含む生物学的液体サンプル中のLDLの迅速な定量方法が開示される。サンプルを先ずマトリックス中に通し、LDLを該マトリックスに結合させる。続いて、VLDLおよびHDLとは区別してLDLをマトリックスから溶出させる。LDLが溶出している間中、マトリックスから排出される溶質の濃度を表すラメーターを続いて測定する。この場合該パラメーターは、サンプル中のLDLの量と比例する。パラメーターは、例えば分光光度計によって検出された溶出LDLのピークに従って電子的積分を行うことによって測定することができる。
Description
【発明の詳細な説明】
LDLの定量発明の背景
本発明は、血漿サンプル中の低密度リポ蛋白(LDL)の濃度測定方法に関す
る。
低密度リポ蛋白(LDL)コレステロール(LDL−C)レベルの上昇は、発
達中の心冠状動脈疾患(CHD)と直接的な関連を有している(S.Grundy JAMA
,266:3053(1990))。多くの研究によって、LDL−Cを低下させる薬剤または
治療食はCHDを減少させることが示された。LDLのアテローム発生特性はこ
れまで詳細に研究されてきた(steinbergら、JAMA266 :3047(1990))。政府コレ
ステロール教育プログラム(National Cholesterol Education Program (NCEP)
)は、20才以上の成人の高コレステロール血症の治療用ガイドラインを設定し
た(検出に関するNCEP専門家委員会報告:成人高コレステロール血症の判定
と治療(Report of the NCEPExpert Panel in Detection,Evaluation & Tre
atment ofHigh Blood Cholesterol in Adults):Arch. Intern.Med.,148:36(198
8))。
現在行われている臨床検査では、全コレステロール(TC)が少なくとも危険
域境界(≧200mg/dl)にあり、当該患者が2つまたはそれ以上のCHD
危険因子を有している場合に限り、トリグリセリド(TG)、高密度リポ蛋白(
HDL)およびLDLの測定が要求されている。LDL−Cの望ましい
レベルは<130mg/dlである。CHDに対するLDL−Cのハイリスク境
界レベルは、130−150mg/dlである。CHDに対するLDL−Cのハ
イリスクレベルは≧160mg/dlである。中年のアメリカ人の75パーセン
タイルがLDL−Cの160mg/dl、それはまたCHDのハイリスクレベル
でもある、に対応する。(N. Rifai & R. Warnick編、脂質とリポ蛋白危険因子(Lipid & Lipoprotein Risk Fa
ctor)、AAAC press、1991)。
リポ蛋白は複雑な経路によって代謝される(N. Rifai &R.Warnick編、脂質と
リポ蛋白危険因子(Lilid & LipoproteinRisk Factor)、AAAC press、1991)。
脂肪は腸管で吸収されトリグリセリドに冨む大型の粒子(カイロミクロン)中に
充填される。これは、HDLを含む成分に分解され、HDLは肝臓に取り込まれ
る。肝臓は超低密度リポ蛋白(VLDL)を合成し、これはLDLに分解される
。LDLは、超遠心によって1.006−1.063kg/lの密度を基に区分
される。LDLは、コレステロールエステルの疎水性脂質コアーと、エステル化
されていないコレステロールおよびアポリポ蛋白(アポB−100、アポCII
IおよびアポEである)であるリン脂質の被覆によって囲まれたトリグリセリド
を含む。平均重量を基にすると、LDLは38%のコレステロールエステル、2
2%のリン脂質、、21%の蛋白、11%のTGおよび8%の非エステル化コレ
ステロールを含む(J. Chapman Methods inEnzymology,128:70(1986))。LD
Lは血漿中でリポ蛋白を運ぶ主なコレステロールである。コレステロールのプロ
セシングおよびそのCHDとの関連におけるLDLの主要な役割から、
NCEPは、過コレステロール血症のための患者の治療を検討するに際して医師
はLDL−Cを用いるべきであると推奨するに至った。このことは、そのような
測定の正確さと信頼性をますます重要なものにしている。
多くの技術が、個々のリポ蛋白同様、全コレステロールの測定のために利用可
能である。これら技術の特異性、臨床における普及度、自動化、簡便さ、および
迅速性は様々である。全コレステロールは酵素によって測定できる。先ず、コレ
ステロールエステラーゼが用いられ、エステルを加水分解する。続いてコレステ
ロールオキシダーゼによって、コレステロールがコレステノンと過酸化水素に変
換され、最後に、ペルオキシダーゼを用いて、該過酸化物の存在下で色原体を、
可視波長域の光を吸収することができる色素に変換する。発色の度合いは、サン
プル中の全コレステロールの濃度に直接比例する。この測定を臨床で実施する自
動装置、例えばレフロトロンTM(RefrotronTM、ベーリンガーマンハイムダイア
グノスティクス、インジアナポリス、インジアナ);コダックDT6DTM(イー
ストマンコダック、ロチェスター、ニューヨーク);およびアボットビジョンTM
(Abbott VisionTM、アボットラボラトリーズ、ノースシカゴ、イリノイ)が利
用できる。
高密度リポ蛋白(HDL)コレステロールの測定は、血清リポ蛋白の残余から
HDLを分離してから実施される。この分離は、1.063kg/lで遠心(4
0000rpmで18時間、10℃)により行うことができる。また別に、ポリ
アクリルアミドゲルまたはアガロースゲルでの電気泳動分離を用いることができ
るが、ただし定性分析用である。
臨床検査室では、通常、選択的化学沈澱法が用いられるが、この場合、ヘパリ
ン−塩化マンガン、硫酸デキストラン−塩化マグネシウムまたはポリエチレング
リコールのような試薬が、LDLおよびVLDLを選択的に沈澱させるために用
いられる。遠心後の上清中のコレステロールは酵素によって測定されるが、これ
はHDL−Cに対応する。VLDLコレステロールは、トリグリセリド濃度の測
定によって算出される。トリグリセリド(TG)は、脂肪酸およびグリセロール
からなる水溶性脂質であり、TGは加水分解(グリセロールを遊離させるため)
し色素に変換後に酵素によって測定される。VLDLコレステロールはTG濃度
を5で割って求められる。
LDLの正確な測定は、LDL−Cの測定前に血清中のLDL粒子を他のリポ
蛋白(すなわちVLDLおよびHDL)からどの程度分離するかに左右される(
N.Rifai & R. Warnick編、脂質とリポ蛋白危険因子(Lipid & Lipoprotein Ris k Factor
)、AAAC press、1991)。それにも拘わらず、LDL−Cの臨床測定は
、現在のどころ、フリードワルド法(Friedwaldら、Clinical-Chemistry,18:49
9(1972))を用いて間接的に実施されている。LDL−C値は、全コレステロー
ル(TC)からHDL−CとVDLD−C(TG/5)とを差し引いて算出され
る。したがって、この方法は、3種類の測定と算術計算を伴う。
血漿からのLDLの分離は、調製用超遠心によって実施できるが、これは時間
のかかる面倒な方法である。さらに、サイズ排除クロマトグラフィー(Rudeら、Biochemistry Journal,139:
89 (1974))、HPLCゲル濾過(Williamsら、J.C hromatography 375:
233 (1985))および化学的沈澱(
Wieland & Seidel J.Lipids.24:904-909(1983))が、分離方法の選択肢として
用いられてきた。クロマトグラフィーは、時間のかかる(24時間)選択であり
、一方、LDL沈澱はHDL定量に用いられる方法より信頼性が低い(N.Rifai
& R.Warnick編、脂質とリポ蛋白危険因子(Lipid & LipoproteinRisk Factor)
、AAAC press、1991)。
普及しているフリードワルド法には幾つがの制限がある。3種の測定を実施し
なければならないが、これは通常異なる装置、試薬、コントロールおよび誤差分
析表を必要とする。3種の値の引き算は累積誤差を生じる。さらに、全コレステ
ロール測定の相対的誤差は、LDL−C/TC比に様々に左右されLDL算定の
誤差に影響を与える。フリードワルド法を用いる場合、患者のTC濃度は400
mg/dl未満、さらに高度な正確さのためには200mg/dl未満でなげれ
ばならず、カイロミクロンは存在してはならない。血漿は絶食患者から採取しな
ければならない。計算に必要なTGレベルは、脂肪の消費を伴う食事後6時間で
上昇するからである。さらに、III型過リポ蛋白血症の患者は異常なVLDL
(TGに比べてコレステロールが多い)を有し、正確に算出することができない
。
フリードワルド法は、測定された90%(この場合TC<200mg/dl)
の例において、超遠心測定値の10%以内のLDL−C概算値を与えることが分
かった(Warnickら、Clinical Chemistry,36;15(1990))。200−400mg
/dlの間のTC値の場合は、LDL−C値は、72%の測定で超遠心値の10
%内に入り、一方、400mg/dl以上では、この数字は39%に低下する。
NCEPのLDLカットオフ標準値の130と160mg/dlはフリードワ
ルド型測定を基準にしている。したがって、沈澱法によって算定される“LDL
”はまた中間密度リポ蛋白(IDL)も含むので、疫学データを基にしたカット
オフ標準値は、直接測定されたリポ蛋白値に適用できないかもしれない。
LDLの主要蛋白成分であるアポ−Bの免疫的測定が開発された(Albersら、J.Lipid Reseavch,
30;1445(1989))。このアッセーは、アテローム発生の可能
性を知るうえで潜在的に有用であろうと思われる一方、LDL−C直接測定に対
して補足的であって取って代わるものではない。別の方法は、1H−NMRスペ
クトル法による全てのリポ蛋白の直接測定を含む(Otvosら、(要約)AACC総会
、ワシントン、D.C.,1991年7月)。発明の要旨
本発明は、低密度リポ蛋白(LDL)、超低密度リポ蛋白(VLDL)および
高密度リポ蛋白(HDL)を含む生物学的液体サンプル中のLDLを迅速に定量
する方法を提供する。本発明の方法では、サンプルをマトリックス(例えばクロ
マトグラフィーマトリックスまたは毛細管)に通し、該マトリックスにLDLを
結合させる。続いて、マトリックスからVLDLおよびHDLとは区分してLD
Lを溶出させる。さらに、LDLが溶出している間中マトリックスから排出され
る溶質の濃度を表すパラメーターを測定するが、ここで、該バラメーターはサン
プル中のLDLの量に比例している。このパラメーターは、例えば分光光度計を
用いて得られた溶出LDLの検出ピークに従って電子的に積分し、または既知の
方法を用いて分離された
LDLを酵素によって測定したりして求めることができる。1つの具体例では、
LDLの濃度を表すパラメーターを標準物と比較する。LDLの測定を基に、L
DL−Cの含有量もまた測定することができる。
マトリックスは陽イオン交換カラムのようなイオン交換カラムでもよい。好ま
しい具体例では、マトリックスは灌流陽イオン交換クロマトグラフィーマトリッ
クスからなり、LDLの濃度を迅速に(例えば、10分未満に、典型的には3分
未満)定量することを可能にする。灌流クロマトグラフィーマトリックスは、米
国特許第5019270号(1991年5月28日発行、この文献は参照により本明細
書に含まれる)に開示されている。灌流クロマトグラフィーマトリックスは、極
めて速い流速で能率的に操作できるようにデザインされている。灌流マトリック
スは互に連結されている第一および第二のポアーセット、並びに第二のポアーセ
ット部材と通じている液体中での溶質の相互反応のための広い表面積をもつ。第
一および第二のポアーセットは、例えば粒子間間隙として及び、粒子内貫通孔と
して具体化される。ポアーの寸法は、達成可能な高速の液流速度において、対流
が両ポアーセットで生じ、該対流速度が第二のポアーセットにおける溶質拡散速
度を越えるようなものである。この技術によって、活性表面へ、および活性表面
からの拡散による物質輸送の制約が克服され、バンドを拡張させることなく液体
速度を増加させることができる。1つの具体例では、灌流マトリックスのpHを
7未満、例えばpH6.2に調整する。
本明細書で開示するLDLの分離および定量方法は、沈殿法を含むこれまでの
技術を越える操作上の幾つかの利点をもたら
す。ここで開示するLDL測定方法は、直接的で非常に迅速(例えば10分未満
、典型的には3分未満)である。さらに、VLDLは物理的に分離され測定を妨
害しないので、患者の絶食は必要でない。測定は直接的であるので、フリードワ
ルド法を用いる3種の異なる測定値を引き算する場合における、通常の誤差増幅
が避けられる。最後に、自動HPLC装置に関しては、本発明のアッセーは、オ
ペレーターの関与を殆ど必要とせず、容易に自動化される。本アッセーはまた、
試薬のピペットによる吸引も希釈も必要としないので、正確さと信頼性を高める
ことができる。図面の簡単な説明
図1は、NaClの直線濃度勾配と4.5から7.5の範囲の異なる緩衝液p
H値を用いて、血漿サンプル中からLDLをHDLおよび他の血漿蛋白から分離
することを示すグラフである。
図2は、調製用LDL沈澱およびサイズ排除クロマトグラフィーにより得られ
たLDL標準物のクロマトグラムである。
図3は、超遠心によって精製されたLDLのクロマトグラムである。
図4−7は、ヒト血漿サンプルのクロマトグラムである。
図8は、表3の血漿サンプルの臨床的に測定した(フリードワルド法)LDL
−C値と実験的に予想されたLDL−C値との相関性を示すグラフである。
図9は、表4のデータの臨床的に測定(フリードワルド)したLDL−C値と
、LDLに対応するピークの積分面積との一致を示すグラフである。
図10は、表5のサンプルの臨床的に測定(フリードワルド)したLDL−C
値と、LDLに対応するピークの積分面積との一致を示すグラフである。
図11は、表5のサンプルの実験的に予想されるLDL−C値と、臨床的に測
定された(フリードワルド)LDL−C値との相関性を示ずグラフである。
図12は、表6のサンプルの臨床的に測定(フリードワルド)したLDL−C
値と、LDLのピークの積分面積との間の相関性を示すグラフである。
図13は、表5および6のデータを用いて得られた最適直線に沿う、表6のサ
ンプルのLDLのピークの積分面積と臨床的に測定された(フリードワルド)L
DL−C値との間の相関性を示すグラフである。
図14は、表5および6のデータを用いて実験的に予想されたLDL−C値と
臨床的に測定された(フリードワルド)LDL−C値との間の相関性を示すグラ
フである。
図15は、臨床的に相関する状況において、表6のデータを用いて実験的に予
想された値と、臨床的に測定されたLDL−C値との相関性を示すグラフである
。
図16および17は、ヘパリンによる沈澱の前後における血漿サンプルからの
LDLの溶出像をぞれぞれ示すクロマトグラムである。詳細な説明
本発明は、低密度リポ蛋白(LDL)、.超低密度リポ蛋白(VLDL)およ
び高密度リポ蛋白(HDL)を含む生物学的液体サンプル中のLDLを迅速に定
量する方法を提供する。先
ず、サンプルをマトリックスに通し、マトリックスにLDLを結合させる。マト
リックスは、例えばクロマトグラフィーマトリックスまたは毛細管でもよい。続
いてマトリックスからVLDLおよびHDLとは区分してLDLを溶出させる。
その後、LDLが溶出している間中マトリックスから排出される溶質の濃度を表
すパラメーターを測定する。このパラメーターはサンプル中のLDLの量に比例
している。このパラメーターは、例えば電子的に、または別な方法で溶出LDL
の検出ピークに従って積分することによって求めることができる。LDLのピー
クは、例えば分光光度計によって検出できる。LDL−Cの量はまた、既に測定
されたLDLの量を基に決定することができる。一つの具体例では、分離された
LDLの濃度は、既知の方法を用いて酵素アッセーを実施して決定できる。
一つの具体例では、例えば陽イオン交換カラムマトリックスのようなイオン交
換カラムからなる。別の例では、マトリックスは、固定ヘパリンからなる。この
マトリックスは、例えばマトリックス上に固定ヘパリンを有する、灌流クロマト
グラフィーマトリックスであってもよい。好ましい具体例では、血漿サンプル中
のLDLは、陽イオン交換灌流クロマトグラフィーマトリックスを用いて測定で
きる。灌流マトリックスの使用によって、LDLの迅速な測定(例えば10分未
満、典型的には3分未満)が可能になる。灌流クロマトグラフィーマトリックス
は、米国特許第5019270号(1991年5月28日発行、この文献は参照により
本明細書に含まれる)に開示されている。灌流クロマトグラフィーマトリックス
はパーセプティブバイオシステム社(PerSeptive Biosystem、ケンブリッジ、マ
サチ
トリックスという商標名で販売されている。灌流クロマトグラフィーマトリック
スは極めて速い流速で操作できるようにデザインされている。灌流マトリックス
は、互に連結されている第一および第二のポアーセット、並びに第二のポアーセ
ット部材と通じている液体中での溶質の相互反応のための広い表面積をもつ。第
一および第二のポアーセットは、例えば粒子間間隙として、および粒子内貫通孔
として具体化される。ポアーの寸法は、達成可能な高速の液流速度において、対
流が両ポアーセットで生じ、、該対流速度が第二のポアーセットにおける溶質拡
散速度を越えるようなものである。この技術によって、活性表面へ、および活性
表面からの拡散による物質輸送の制約が克服され、バンドを拡張させることなく
液体速度を増加させることができる。
本発明の1つの具体例では、クロマトグラフィーマトリックスは、POROS
HS/M4.6×100mmカラム(パーセプティブバイオシステム社、ケン
ブリッジ、マサチューセッツ)からなり、これは強陽イオン交換灌流クロマトグ
ラフィーカラムで、これを用いて血漿サンプル中のLDL量を迅速かつ容易に測
定することができる。この具体例では、pHは7以下が好ましい。LDLの最適
分離はpH6.2で実施できる。図1は、灌流POROS HS/Mカラム上で
食塩の直線濃度勾配を用いてpH4.5とpH7.5の間で0.5pH単位で増
加させて、血漿サンプルからHDLとLDLの分離を比較したグラフである。p
H7以下で、HDLおよび他の血漿蛋白からLDLが明瞭に分離されている。
表1は好ましいクロマトグラフィー条件の1式を要約したものであるが、これ
を用いて、血漿サンプルでLDLをHDLと他の蛋白から分離することができ、
その後、血漿サンプル中のLDL量の決定が可能である。カラム、カラム寸法、
粒子サイズ、pH、勾配、組み合わせ方法およびカラム通過時間をまた別に選択
することも本発明の範囲内で可能なことは、本明細書の開示から当業者には明白
であろう。
表1の条件を一連のサンプルからLDLを分離するために用い、クロマトグラ
フィー操作にはサンプル手動注入の半自動システム(SSI-PA、サイエンティフィ
ックシステムズ社、ステートカレッジ、ペンシルバニア)を用いた。図2は、調
製用沈澱およびサイズ排除クロマトグラフィーによって得られたLDL標準物質
(シグマ、セントルイス、ミズリー)のクロマトグラムである。LDLのピーク
は1.6分と2.5分の間で溶出する。図3は、超遠心で精製されたLDLのよ
り均質な調製物のLDLプロフィルを示すクロマトグラムである。
図4は、ヒト血漿サンプルの分析クロマトグラムである(2
0μl注入)。1.6分と2.5分の間のビークがLDLに対応する。1.5分
後のLDLのピークは幾つかの異なるが、しかし部分的に重なり合う成分ピーク
から成る。これは、塩濃度勾配の異なる点で溶出が生じる表面荷電の非均質性に
よるか、またはサイズ排除効果によるものであろう。サイズ排除または超遠心サ
イズ勾配によって、大きさの異なる幾つがのLDL亜種が明らかとなった(McNa
maraら、Arteriosclerosis,7;483(1987))。POROS HS/Mは、LDL
サブフラクションを分離する広いポアーサイズ排除カラムとしてあるレベルで機
能することができる。
1.6分と2.5分の間のLDLに対応するクロマトグラムのピークの面積は
電子積分によって得られる。該ピークの面積はLDL−C濃度に相関しているで
あろう。UV吸収は本来蛋白含有量を測定する。しかしながら、LDLに対応す
る吸収ピークの面積はまた、LDL−コレステロール(LDL−C)の量を提供
する。なぜならば、LDLのコレステロール含有量は、蛋白含有量と比例するか
らである。平均重量を基にした場合、LDLは38%のコレステロールエステル
、8%の非エステル化コレステロールおよび21%の蛋白を含む(J. Chapman M ethods in Enzymology,
128:70 (1986))。
図5から7は、7日以上冷凍保存されたさらに別の3人の患者の血漿サンプル
のクロマトグラムである。1.6分と2.5分の間のピークはLDLに対応する
。図4−7の各血漿サンプルのLDLに対応するピークの面積は(任意の単位区
分)、電子積分によって求められた。これらサンプルのLDL−Cもまた、フリ
ードワルド法を用いて臨床的に測定した。表2で、各
LDLピークの積分面積とこれら患者のLDL−Cの臨床的測定(フリードワル
ド)との対応が要約する。
新鮮血漿サンプルの第二セットのクロマトグラムは、表1の灌流陽イオン交換
クロマトグラフィー条件を用いて得られた。4つのサンプルについて20μlの
注入を行った。各サンプルについて、LDLに対応ずるクロマトグラムのピーク
面積を電子積分で得た。表3は、これらサンプルについて臨床的に得られた対応
するLDL−C値とともに、LDLピークのこれら面積を示す。表3のデータか
ら0.97の回帰係数が得られた。図8は、表3のデータに関する、臨床的に測
定されたLDL−C値と予想LDL−C値との対応を示すグラフである。予想L
DL−C値は、表3のデータによる実験的相関を用いて面積を基に得られた(予
想LDL−C(mg/dl)=20.04(面積×106))。
さらに、計測プロットは、表3のサンプル130mg/dlの40および80
μl注入物をクロマトグラフィーで分析することによって得られた。計測データ
は表4に要約する。0.99の回帰係数が得られた。定数(21.61)は、表
3のサンプルから実験的に得られたもの(20.04)と8%異なる。図9は、
表4のデータおよび最適適合直線を示すグラフである。
上記に述べた実験は、HP1090自動分析システム(ヒュレットパッカード
、アボンデール、ペンシルバニア)および表
1のクロマトグラフィーシステムを用いて再分析した。各実験は5、10、20
μl注入で実施した(表5)。図10は、表5のデータのLDLピークの積分面
積と臨床的に測定された(フリードワルド)LDL−C値との間の相関性を示す
グラフである。このグラフにはまた、最適回帰直線が含まれる。図11は、表5
のサンプルについて、臨床的に測定された(フリードワルド)LDL−C値と相
関する実験的定数(0.070×面積)に基づく予想LDL−C値を表すグラフ
である。図10および11で、200mg/dl以下の点は5μl注入を表し、
200から400mg/dlの間の点は10μl注入を表し、400mg/dl
以上の点は20μl注入を表す。
この技術の再現性を調べるために、二個一組としてもう一度サンプルを流した
(表6)。図12は、表6のデータのLDLピークの積分面積と臨床的に測定さ
れた(フリードワルド)LDL−C値との対応を示すグラフである。0.99の
回帰係数が得られた。
図13は、表6のデータにおける相関性および表5と6のデータから得られた
最適直線をそれぞれ示すグラフである。2本の回帰線は互いの3%以内の概算を
与える。図14は、表5と6のデーターを用いた実験的相関によって予想される
LDL−C値と臨床的に測定された(フリードワルド)LDL−C値との相関性
を示すグラフである。図15は、臨床的に相関する状況、すなわち100−20
0mg/dlにおいて、表6のデータを用いた、実験的に予想される値と臨床的
に測定された(フリードワルド)LDL−C値との相関性を示すグラフである。
最後のピーク同一性のまた別の証明として、クロマトグラフィーの後でLDL
の特異的沈澱を実施した。図16および1
7は、ヘパリンと沈澱させることによって最後のピークを差し引いた後および前
の血漿サンプルの溶出像をそれぞれ示している。沈降剤であるヘパリンは他の幾
つかの蛋白にも同様に結合するので、他の幾つかの蛋白の排除もまた生じる。
本明細書で開示したLDLの分離および定量のための方法は、これまでの技術
を越える幾つかの利点をもたらす。ここで開示した方法は、直接的かつ極めて迅
速(例えば10分未満、典型的には3分未満)であり、容易に自動化できオペレ
ーターの関与を殆ど必要としない。さらに、VLDLは物理的に分離され測定を
妨害しないので、患者の絶食も必要としない。サンプルの希釈も酵素や他の試薬
の添加も必要としないので、本発明のアッセーの正確さは高められる。
前述の記載は説明のためのものであり、ここで述べた構造および方法の範囲内
で他の形態を取りえることは理解されよう。当業者には変更や修飾は可能で、そ
のような変更の全ては請求の範囲に規定された通り、本発明の部分であると考え
られる。
【手続補正書】特許法第184条の7第1項
【提出日】1994年2月23日
【補正内容】
請求の範囲
1. 低密度リポ蛋白(LDL)、超低密度リポ蛋白(VLDL)、および高
密度リポ蛋白(HDL)を含む生物学的液体サンプル中のLDLを迅速に定量す
る方法であって、当該方法が、
(a)当該サンプルを吸着クロマトグラフィーマトリックスに流し、LDLをそ
れに結合させ;
(b)溶離液を該マトリックスに流してVLDLおよびHDLから区分してLD
Lを溶出ざせ;
(c)工程(b)でLDLがマトリックスから溶出している間中、マトリックス
から排出される溶質の濃度を表し、当該サンプル中のLDL量と比例するパラメ
ーターを測定する;
(a)から(c)の工程からなり、さらに、工程(a)および(b)が10分未
満で完了するLDLの迅速な定量方法。
2. 当該マトリックスが、イオン交換カラムである請求の範囲第1項の方法
。
3. 当該マトリックスが、陽イオン交換カラムである請求の範囲第2項の方
法。
4. 当該マトリックスが、灌流クロマトグラフィーマトリックスである、請
求の範囲第1項または3項の方法。
5. 工程(c)が溶出LDLの検出ピークに従って電子的に積分することに
よって実施される請求の範囲第1項の方法。
6. 削除
7. 当該定量工程が分光光度計を用いて実施される請求の範囲第1項の方法
。
8. 工程(a)の前に、当該マトリックスおよび当該サンプルをpH7未満
に調整する請求の範囲第4項の方法。
9. 当該マトリックスおよびサンプルを約pH6.2に調整する請求の範囲
第8項の方法。
10. 工程(c)で、濃度を表すパラメーターを標準物と比較ずる請求の範
囲第1項の方法。
11. さらに、(d)LDLの測定量に基づいて当該サンプルのLDL−C
含有量を定量する工程を含む、請求の範囲第1項の方法。
12. 工程(a)が毛細管で実施される請求の範囲第1項の方法。
13. 当該マトリックスが固定ヘパリンを含む請求の範囲第1項の方法。
14. 当該マトリックスが灌流クロマトグラフィーマトリックスである請求
の範囲第13項の方法。
15. 当該パラメーターを酵素によって測定する請求の範囲第1項の方法。
16. 低密度リポ蛋白(LDL)、超低密度リポ蛋白(VLDL)、および
高密度リポ蛋白(HDL)を含む水性生物学的サンプル中のLDLコレステロー
ルを迅速に定量する方法であって、当該方法が、
(a)当該ザンプルを吸着クロマトグラフィーマトリックスに流し、LDLをそ
れに結合させ;
(b)溶離液を該マトリックスに流してVLDLおよびLDLがら区分してLD
Lを溶出させ;
(c)工程(b)でLDLがマトリックスから溶出している間
中、マトリックスから排出される溶質の濃度を表し、当該サンプル中のLDL量
と比例するパラメーターを得て;さらに、
(d)工程(c)で得られたパラメーターを標準物と比較ずることによって、サ
ンプル中のLDLコレステロールの濃度を定量するという(a)から(d)の工
程からなる、LDLの迅速な定量方法。
17. 該パラメーターが、溶出LDLの検出ピークに従って電子的に積分す
ることによって得られる請求の範囲第16項の方法。
【手続補正書】特許法第184条の8
【提出日】1994年9月7日
【補正内容】
英文明細書第18頁第6行から同頁末行
(明細書翻訳文第18頁第5行から同頁末行)
本明細書で開示したLDLの分離および定量のための方法は、これまでの技術
を越える幾つかの利点をもたらす。ここで開示した方法は、直接的かつ極めて迅
速(例えば10分未満、典型的には3分未満)であり、容易に自動化できオペレ
ーターの関与を殆ど必要としない。さらに、VLDLは物理的に分離され測定を
妨害しないので、患者の絶食も必要としない。サンプルの希釈も酵素や他の試薬
の添加も必要としないので、本発明のアッセーの正確さは高められる。
請求の範囲
1. 低密度リポ蛋白(LDL)、超低密度リポ蛋白(VLDL)、および高
密度リポ蛋白(HDL)を含む生物学的液体サンプル中のLDLコレステロール
を迅速に定量ずる直接的定量方法であって、当該方法が、
(a)当該サンプルを溶質が相互に作用し合う領域を有するクロマトグラフィー
マトリックスに流し、当該サンプル中のLDLを溶質が相互に作用し合う領域に
対流によって輸送し、それにLDLを結合させ;
(b)溶離液を該マトリックスに流してVLDLおよびHDLから区分してLD
Lを溶出させ;
(c)工程(b)でLDLがマトリックスから溶出している間中、マトリックス
から排出されるLDLの濃度と比例するパラメーターを得て;さらに、
(d)工程(c)で得られたパラメーターを基に、当該サンプル中のLDLコレ
ステロールの含有量を定量するという(a)から(d)の工程からなり、工程(
a)および(b)が10分未満で完了する、LDLの迅速な定量方法。
2. 当該マトリックスが、イオン交換カラムである請求の範囲第1項の方法
。
3. 当該マトリックスが.、陽イオン交換カラムである請求の範囲第2項の
方法。
4. 当該マトリックスが、灌流クロマトグラフィーマトリックスである、請
求の範囲第1項または3項の方法。
5. 工程(c)が溶出LDLの検出ピークに従って電子的
に積分することによって実施される請求の範囲第1項の方法。
6. 工程(c)が分光光度計を用いて実施される請求の範囲第1項の方法。
7. 工程(a)の前に、当該マトリックスおよび当該サンプルをpH7未満
に調整する請求の範囲第4項の方法。
8. 当該マトリックスおよびサンプルを約pH6.2に調整する請求の範囲
第7項の方法。
9. 工程(d)で、該パラメーターを標準物と比較する請求の範囲第1項の
方法。
10. 当該マトリックスが固定ヘパリンを含む請求の範囲第1項の方法。
11. 当該マトリックスが灌流クロマトグラフィーマトリックスである請求
の範囲第10項の方法。
12. 当該パラメーターが酵素的に得られる請求の範囲第1項の方法。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 アフェヤン,ナウバー ビー.
アメリカ合衆国 02146 マサチューセッ
ツ,ブルックライン,ジョン ストリート
19
(72)発明者 ランガー,ロバート
アメリカ合衆国 02158 マサチューセッ
ツ,ニュートン,ロンバード ストリート
77
(72)発明者 シェファー,シュミュエル
アメリカ合衆国 02146 マサチューセッ
ツ,ブルックライン,アパートメント1,
ジャマイカ ロード 46
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1. 低密度リポ蛋白(LDL)、超低密度リポ蛋白(VLDL)、および高 密度リポ蛋白(HDL)を含む生物学的液体サンプル中のLDLを迅速に定量す る方法であって、当該方法が、 (a)当該サンプルをマトリックスに通し、LDLをそれに結合させ; (b)VLDLおよびHDLから区分してLDLを溶出させ; (c)工程(b)でLDLが溶出している間中、マトリックスから排出される溶 質の濃度を表し、当該サンプル中のLDL量と比例するパラメーターを測定する 、LDLの迅速な定量方法。 2. 当該マトリックスが、イオン交換カラムである請求の範囲第1項の方法 。 3. 当該マトリックスが、陽イオン交換カラムである請求の範囲第2項の方 法。 4. 当該マトリックスが、灌流クロマトグラフィーマトリックスである、請 求の範囲第1項または3項の方法。 5. 工程(c)が溶出LDLの検出ピークに従って電子的に積分することに よって実施される請求の範囲第1項の方法。 6. 該方法が10分未満で完了する請求の範囲第4項の方法。 7. 当該定量工程が分光光度計を用いて実施される請求の範囲第1項の方法 。 8. 工程(a)の前に、当該マトリックスおよび当該サンプルをpH7末満 に調整する請求の範囲第4項の方法。 9. 当該マトリックスおよびサンプルを約pH6.2に調整する請求の範囲 第8項の方法。 10. 工程(c)で、濃度を表ずパラメーターを標準物と比較する請求の範 囲第1項の方法。 11. さらに、(d)LDLの測定量に基づいて当該サンプルのLDL−C 含有量を定量する工程を含む、請求の範囲第1項の方法。 12. 工程(a)が毛細管で実施される請求の範囲第1項の方法。 13. 当該マトリックスが固定ヘパリンを含む請求の範囲第1項の方法。 14. 当該マトリックスが灌流クロマトグラフィーマトリックスである請求 の範囲第13項の方法。 15. 当該パラメーターを酵素によって測定する請求の範囲第1項の方法。
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