JP4644920B2 - Frp構造体の製造方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、FRP構造体の製造方法に関し、とくに、成形の際の樹脂の良好な拡散性と意匠面の良好な仕上がりとを両立させるようにしたFRP構造体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コア材の両面側に強化繊維を配置し、コア材の面に沿う方向に樹脂を流動させ強化繊維に含浸させてFRP層を形成し、サンドイッチ構造のFRP構造体を成形する技術が知られている。また、この成形においては、樹脂の拡散性を向上するために、コア材にその面方向に延びる複数の溝を形成し、注入した樹脂を溝に沿わせて流動、拡散させるようにした技術、および、コア材の両面に樹脂を流入させるために、コア材の樹脂注入側の面から他面側へと貫通する孔を設け、該孔を通して他面側へと樹脂を流入させる技術がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、単に両面に溝を設けただけのコア材を用いる場合、たとえば主としてそのうちの一面側に向けて樹脂を注入し、他面側にも樹脂を回り込ませ溝に沿わせて回り込んだ樹脂を拡散させようとする場合、十分な量の樹脂が他面側に拡散されず、成形時に樹脂の引けが生じて、その部分の意匠が損なわれたり、局部的に機械的強度の不十分な箇所が生じたりするという問題が発生することがある。とくに、この他面側が意匠面となる場合、樹脂引けの発生は製品不良につながる。
【0004】
さらに、コア材の両面に溝を設ける場合、意匠面側にも溝が設けられることになるが、とくにこの意匠面側に設けられる溝が、良好な樹脂流動特性を得るために、反意匠面側に設けられる溝と同様の比較的断面積の大きな溝に形成されると、その溝に沿ったライン状の樹脂の硬化引けが生じ、最終的に成形された製品の意匠面における意匠性を大きく損ない、商品価値を大きく低下させてしまう。逆に、意匠面側に設けられる溝が小さすぎると、この面側での良好な樹脂流動特性が得られにくくなるため、樹脂不足、含浸不良等の欠陥が生じ、やはり製品不良を招くことになる。
【0005】
一方、単に両面間を貫通する孔を有するだけのコア材を用いる場合には、流動性の低い樹脂を使用する場合にとくに問題が生じ、孔を通して十分な量の樹脂を他面側にまで流入させるには長時間を要するため生産性が悪く、また使用樹脂がポットライフの長い樹脂に限定されてしまうという問題がある。
【0006】
そこで本発明の課題は、コア材の両面側について必要な量の樹脂を迅速に流入、拡散させ、高い生産性を確保できるとともに、とくに意匠面を、樹脂引けのない良好な仕上げ面に成形できるFRP構造体の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係るFRP構造体の製造方法は、コア材の両面に、強化繊維を配し該強化繊維に樹脂を含浸させることによりFRP層を形成してサンドイッチ構造のFRP構造体を成形するに際し、コア材として、片面にコア材の面方向に延びる複数の樹脂拡散溝を形成するとともに、該樹脂拡散溝が形成された面の各樹脂拡散溝の溝底からコア材の他面へと貫通する樹脂流動孔を設けたコア材を用い、両面に強化繊維が配されたコア材の樹脂拡散溝が形成された面側を型に収容し、型の一辺側から樹脂を注入し前記樹脂拡散溝に沿わせて型の他辺側に向けて樹脂を流動させるとともに、コア材の他面側に流入させるべき樹脂の少なくとも一部を、前記樹脂流動孔を通してコア材の他面側に流入させ、前記コア材の他面側のFRP層の表面を意匠面に形成することを特徴とする方法からなる。樹脂拡散溝は、コア材の片面のみに形成する。
【0008】
このFRP構造体の製造方法においては、樹脂の注入および含浸は、型内を減圧し、その真空圧を利用して行う方法、あるいは、樹脂の注入および含浸を加圧を利用して行う方法のいずれも採用可能である。
【0009】
成形は、上下型内で行うこともでき、一方の面側を型内に収容し、他方の面側は、たとえば後述の実施態様に示すように、フレキシブルなバッグ基材(たとえば、バギングフィルム)で覆うように行ってもよい。さらに、実質的に型を用いずに、基台上にコア材と強化繊維を配置し、その上からバッグ基材で覆ってその内部に樹脂を注入することも可能である。
【0010】
使用するコア材の材質としては特に限定しないが、FRP構造体全体の軽量化を考慮する場合、発泡体からなるコア材を用いることが好ましい。もちろん、木材やその他の材質からなるコア材も使用可能である。
【0011】
樹脂流動孔は、複数の樹脂拡散溝のそれぞれに対し複数設けられることが好ましく、その場合、隣接する樹脂拡散溝に対して設けられる樹脂流動孔が千鳥状に配設されるように設けられることが好ましい。
【0012】
上記のような本発明に係るFRP構造体の製造方法においては、コア材の片面に設けられた複数の樹脂拡散溝を介して、注入された樹脂が各溝に沿ってコア材の面方向に良好にかつ迅速に流動、拡散し、この面に配された強化繊維に迅速かつ均一に含浸される。この樹脂流動とともに、樹脂拡散溝に沿って流動している樹脂の一部が、各樹脂流動孔設置箇所において、樹脂流動孔を通してコア材の他面側へと流動され、該他面側にも各樹脂流動孔設置箇所から十分な量の樹脂が迅速に流入される。樹脂流動孔の配設間隔を適切に設定しておくことにより、コア材の他面側全面にわたって、実質的に均一に、かつ、迅速に、必要な量の樹脂が拡散されることになり、この面側においても樹脂が均一に強化繊維に含浸される。その結果、この他面側における成形過程での樹脂引けの発生が防止されるとともに、良好な樹脂の流動性により成形時間の短縮も可能になる。とくにこの面が意匠面となる場合、樹脂引けによる不良の発生が効率よく防止されることになる。なお、樹脂流動孔に関しても、成形過程での樹脂引けの問題は存在するが、樹脂流動孔があるサイズ(ある径)以下になると、この樹脂引けは全く目だたなくなる。したがって、適切なサイズの樹脂流動孔を適切なピッチで配設することにより、良好な樹脂の流動性を確保しつつ、樹脂引けの問題を完全に解消することができる。
【0013】
また、とくに、この他面側に樹脂拡散溝が設けられない場合には、基本的にライン状の樹脂引けは発生しないから、上記の如く適切なサイズの樹脂流動孔を適切なピッチで配設し、成形に必要かつ十分な量の樹脂を樹脂流動孔を介して供給することにより、優れた品質の意匠面が得られる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の望ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1ないし図5は、本発明の一実施態様に係るFRP構造体の製造方法を実施する様子を示している。図1において、1は、発泡体(たとえば、ウレタンフォーム)からなるコア材を示しており、このコア材1の両面に、強化繊維からなる基材2が配置される。本実施態様では、強化繊維基材2は、複数枚積層配置されているが、配置の形態、配置される強化繊維の形態はとくに限定されない。また、強化繊維の種類もとくに限定されず、炭素繊維やガラス繊維、アラミド繊維、さらにはこれらを併用した強化繊維が例示される。
【0015】
コア材1の片面1aには、図2および図3にも示すように、コア材1の面方向に並行に延びる複数の樹脂拡散溝3が形成されており、各樹脂拡散溝3は、コア材1の一辺側から他辺側まで貫通するように延びている。各樹脂拡散溝3の溝底3aからは、コア材1の他面1bへと貫通する樹脂流動孔4が設けられている。樹脂流動孔4は、一つの樹脂拡散溝3に対し溝長手方向に複数配設されている。本実施態様では、各樹脂流動孔4の径は、各樹脂拡散溝3の溝幅と実質的に同じ大きさに設定されている。また、各樹脂流動孔4は、図2に示すように、隣接する樹脂拡散溝3に対して設けられる樹脂流動孔4が千鳥状に配設されるように設けられている。
【0016】
コア材1は、図1に示すように、その両面に強化繊維基材2が配された状態にて、金型からなる下型5に収容される。本実施態様では、金型からなる上型6が閉じられ、コア材1と強化繊維基材2がキャビティ7内に所定の状態で収容される。
【0017】
下型5には、図4、図5にも示すように、コア材1の樹脂拡散溝3が延設されている両側の辺に相当する下型5の両辺部分に、樹脂案内溝8、吸引溝9が設けられており、樹脂案内溝8側に注入された樹脂が、キャビティ7内を樹脂拡散溝3延設方向に沿って拡散、流動された後、吸引溝9側へと流動するようになっている。
【0018】
上型6には、樹脂注入ポート10と真空吸引ポート11とが設けられており、樹脂注入ポート10が樹脂案内溝8へと連通し、真空吸引ポート11が吸引溝9へと連通するようになっている。図示を省略した真空ポンプ等の吸引源により、真空吸引ポート11、吸引溝9を介してキャビティ7内が吸引減圧され、それを利用して、樹脂注入ポート10、樹脂案内溝8を介してキャビティ7内に樹脂が注入される。
【0019】
注入される樹脂の種類はとくに限定されず、FRPのマトリックス樹脂となるものであればあらゆる樹脂が使用可能である。たとえば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂、さらにはこれらの混合樹脂等を使用できる。
【0020】
樹脂案内溝8に流入された樹脂は、該溝8内に拡がり、図5に示すように、樹脂案内溝8からキャビティ7内に流入される。このとき、流入樹脂12は、コア材1の両面側へと流入しようとするが、樹脂案内溝8からの流入部がコア材1の図の上面1a側に位置しているので、大半の樹脂はこの面1a側に流入され、樹脂拡散溝3に沿って流動するとともに、面1a上に配置されている強化繊維基材2に拡散、含浸される。
【0021】
そして、樹脂拡散溝3内を流動する樹脂の一部は、樹脂流動孔4を通してコア材1の他面1b側へと流入され、該他面1b側に樹脂が供給される。樹脂流動孔4の数や配設ピッチを適切に設定することにより、他面1b側にも必要十分な量の樹脂が供給され、供給された樹脂が、この面1b上に配置されている強化繊維基材2に拡散、含浸される。
【0022】
強化繊維基材2に樹脂が含浸されることにより、コア材1の両面にFRP層が形成され、サンドイッチ構造のFRP構造体が成形される。本実施態様では、図1の下面側、つまりコア材1の他面側1b上に成形されるFRP層が、FRP構造体の意匠面を構成するようになっている。
【0023】
上記のようにFRP構造体を成形するに際しては、コア材1の片面1aに複数の樹脂拡散溝3が設けられており、注入された樹脂はこの樹脂拡散溝3に沿って該面1a上を良好に流動できるので、樹脂は迅速に拡散され、かつ、強化繊維基材2に樹脂が均一に含浸されていく。そして、樹脂拡散溝3に沿って流動する樹脂の一部は、適切な間隔で配設された樹脂流動孔4を通してコア材1の他面1b側に適切な量だけ流入されるので、他面1b側にも必要十分な樹脂量が適切な供給ピッチにて流入されることになり、この面1b側においても樹脂の迅速な拡散と均一な含浸が可能となる。とくに本実施態様では、コア材1の他面1b側には樹脂拡散溝3が設けられていないので、必要十分な樹脂量が供給されることと相まって、ライン状の樹脂ひけは発生しない。したがって、コア材1の他面1b側には、必要十分な樹脂量が適切な供給ピッチにて流入されるとともに、ライン状の樹脂ひけも発生しないので、欠陥のない望ましい意匠面が得られることになる。
【0024】
すなわち、本発明に係るFRP構造体の製造方法では、コア材1の両面での良好な樹脂流動性および迅速な拡散、含浸性が確保されつつ、とくに意匠面における樹脂引けの問題が解消される。
【0025】
なお、樹脂流動孔4のサイズ、とくにその横断面積が大きすぎると、貫通孔である樹脂流動孔4に充満した樹脂の引けが問題となるおそれが生じるが、この樹脂流動孔4に起因する樹脂引けは、樹脂流動孔4があるサイズ以下になると全く目立たなくなるので、成形条件に応じて最適な樹脂流動孔4に設定することにより、樹脂流動孔4に起因する樹脂引けの問題は消滅する。
【0026】
最適な樹脂流動孔4のサイズは、成形に用いる強化繊維基材の剛性(たとえば、そのプライ数)や単意図のヤング率等に関係するが、たとえば、プライ数が2プライの場合、炭素繊維クロスを使用する場合には樹脂流動孔4の孔径は1.5mm〜2.5mm、あるいはそれ以下であることが好ましく、ガラス繊維クロスを使用する場合には樹脂流動孔4の孔径は1mm以下であることが好ましい。
【0027】
【実施例】
厚さ10mmのウレタンフォームからなるコア材の片面に、幅1.5mm、深さ4mmの樹脂拡散溝を15mmのピッチで複数設け、樹脂拡散溝の溝底からコア材の他面へと貫通する孔径1.5mmの樹脂流動孔を、各樹脂拡散溝内における配設ピッチ50mmにて、隣接樹脂拡散溝の樹脂流動孔が上記の半分のピッチ25mmとなるように千鳥状に配設した。上下型に図1に示したような金型を用い、強化繊維として炭素繊維を用い、エポキシ樹脂を注入してサンドイッチ構造のFRP構造体を成形したところ、成形時間は短く、意匠面に樹脂引けの問題も全く生じなかった。
【0028】
なお、上記実施態様および実施例では、上型に金型を使用したが、たとえば図6に別の実施態様を示すように、下型21のみに金型を使用し、その中にコア材1と強化繊維基材2を収容して、上型の代わりにシート状バッグ基材22を使用することもできる。バッグ基材22に、樹脂注入ポート23と真空吸引ポート24を設けておけばよい。
【0029】
また、上記各実施態様では、型内を減圧し、その真空圧を利用して樹脂注入、拡散を行うようにしたが、樹脂の流動速度を高めるために、加圧を利用して樹脂注入、拡散を行うようにすることもできる。すなわち、注入樹脂を、積極的に加圧し(たとえば、1〜3kg/cm2 程度の圧力で加圧し)、樹脂の注入、拡散速度を高めることにより、一層迅速な成形が可能となり、生産性を大幅に高めることが可能となる。この加圧注入は、図6に示したようなフレキシブルなバッグ基材を用いる場合には比較的適用しづらいが、図1に示したような上下型を用いる場合には、容易に適用できる。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のFRP構造体の製造方法によれば、サンドイッチ構造のFRP構造体を成形するに際し、注入樹脂の良好な流動性を確保して短時間での効率のよい成形を可能にするとともに、意匠面における樹脂引けの問題を解消でき、優れた品質のFRP構造体を高い生産性をもって製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様に係るFRP構造体の製造方法を実施する成形装置の概略斜視図である。
【図2】図1のコア材の部分平面図である。
【図3】図2のコア材の部分断面図である。
【図4】図1の下型の平面図である。
【図5】図1の成形装置の断面図である。
【図6】本発明の別の実施態様に係る成形装置の概略断面図である。
【符号の説明】
1 コア材
1a 片面
1b 他面
2 強化繊維基材
3 樹脂拡散溝
3a 溝底
4 樹脂流動孔
5、21 下型
6 上型
7 キャビティ
8 樹脂案内溝
9 吸引溝
10、23 樹脂注入ポート
11、24 真空吸引ポート
12 樹脂
22 バッグ基材
Claims (5)
- コア材の両面に、強化繊維を配し該強化繊維に樹脂を含浸させることによりFRP層を形成してサンドイッチ構造のFRP構造体を成形するに際し、コア材として、片面にコア材の面方向に延びる複数の樹脂拡散溝を形成するとともに、該樹脂拡散溝が形成された面の各樹脂拡散溝の溝底からコア材の他面へと貫通する樹脂流動孔を設けたコア材を用い、両面に強化繊維が配されたコア材の樹脂拡散溝が形成された面側を型に収容し、型の一辺側から樹脂を注入し前記樹脂拡散溝に沿わせて型の他辺側に向けて樹脂を流動させるとともに、コア材の他面側に流入させるべき樹脂の少なくとも一部を、前記樹脂流動孔を通してコア材の他面側に流入させ、前記コア材の他面側のFRP層の表面を意匠面に形成することを特徴とする、FRP構造体の製造方法。
- 樹脂の注入および含浸を真空圧を利用して行う、請求項1のFRP構造体の製造方法。
- 樹脂の注入および含浸を加圧を利用して行う、請求項1のFRP構造体の製造方法。
- 前記コア材として発泡体からなるコア材を用いる、請求項1〜3のいずれかに記載のFRP構造体の製造方法。
- 前記樹脂流動孔を、隣接する樹脂拡散溝に対して設けられる樹脂流動孔が千鳥状に配設されるように設ける、請求項1〜4のいずれかに記載のFRP構造体の製造方法。
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