JP4643825B2 - トラクションシーブエレベータの制動方法 - Google Patents

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Description

【0001】
本発明は、トラクションシーブエレベータの制動方法およびトラクションシーブエレベータに関するものである。
【0002】
トラクションシーブエレベータの機械装置は、エレベータ巻上ロープが取り付けられる溝付きのトラクションシーブと、トラクションシーブを直接またはギアを介して駆動する電気モータとで構成されている。機械装置はブレーキを含み、これはトラクションシーブに直接に、または例えばシャフトを介して作用する。エレベータの操作ブレーキの動作原則は、制動を禁止する命令を特に受けていない場合は、ブレーキは常に制動を行っていなければならないということである。典型的な操作ブレーキ構造では、ブレーキは、スプリングまたはそれと等価の要素の力によって閉合され、閉合要素の力と逆方向に作用する制御されたアクチュエータによって、開放されまたは開放状態に保たれる。トラクションシーブが制動されると、制動効果は、トラクションシーブによってロープに加えられる摩擦把持および他の把持作用を通して、巻上ロープに伝達される。非常停止時に、エレベータが可能な限り迅速に制動される場合は、ブレーキシステムは、通常運転時における加速または減速中より、大きな把持力を必要としがちである。
【0003】
ロープとトラクションシーブとの間の把持力を増大させるため、特に高い巻上高を有する高速なエレベータでは、トラクションシーブは時に、非常に大きな切り下げ角を有する溝を備えている。摩擦把持も、ロープの接触角度を増大させることによって、改善可能である。接触角度を増大させるために用いられる方式には、例えば、ESW(エクステンデッド・シングル・ラップ)およびダブル・ラップが含まれ、これらによれば、横方向のロープ配置または第2のローププーリを用いて、トラクションシーブとロープとの間に、180度を超える接触角度が達成される。従来のシングル・ラップ(CSW)懸下方式では、トラクションシーブとロープとの間の接触角度は、ロープ間の距離が転向プーリの使用によって増大している場合、180度またはそれより幾分小さい。つまり、切り下げられたロープ溝を使用して切り下げ角を大きくし、接触角度を増大させることによって、摩擦力は増大させることが可能である。
【0004】
高速エレベータおよび高い巻上高を有するエレベータを含む、殆どのエレベータの通常運転時であれば、巻上ロープが単にトラクションシーブ上を走行しトラクションシーブ溝が適度の切り下げ角を有する従来の懸下方式は、エレベータにいかなる負荷をかけた場合も、ロープがトラクションシーブに対してスリップすることなく把持されることを十分に保証する。しかし、非常停止を可能とするには、システムは、より良好な把持を行うよう、設計する必要がある。ところが、把持力の改善によって、エレベータコストが増大するという欠点が生じ、特に、運転中のコストが増大する。切り下げられたロープ溝はロープおよびロープ溝の摩耗を促進し、切り下げ角が大きくなるほど、摩耗の進行も速くなる。これと同様に、ESWやダブル・ラップ懸下方式では、ロープは、互いに次々とたて続けに屈曲し、ロープ摩耗を増大させている。ESWおよびダブル・ラップ懸下方式では、斜行したロープ接触が、ロープ摩耗を増大させる更なる要因となる。ダブル・ラップ懸下方式によって、トラクションシーブの軸受および第2のローププーリに、余分な負荷を課すこととなる。
【0005】
本発明は、基本的に簡易な従来のエレベータ懸下システムの使用を、高速のエレベータや高い巻上高を有するエレベータにまで拡張し、現行のエレベータに特有の動作特性を改善することを目的とする。本発明は、上述の欠点の矯正にも適用可能である。本発明は、請求項1に記載の構成要件を特徴とする。本発明の様々な実施例の他の構成要件は、他の請求項に記載されている通りである。
【0006】
本発明の方式により、ロープおよびトラクションシーブの有効寿命を延長することが可能である。運転機は、内部応力が少ない方式、つまり、例えば軸受にかかる負荷が小さい方式を用いて実装することが可能である。ロープ、トラクションシーブおよび軸受の有効寿命は、元の運用寿命の数倍にまで延長することが可能である。全体として、より簡易な方式を、機械装置およびロープシステムに適用可能である。CSW懸下方式は一切の転向プーリ装置を機械室内に必要としないため、非常に大きなエレベータであっても、必要とされる床面積は合理的なものとなる。転向プーリ装置用の重厚な支持構体は一切必要でない。本発明によって実現される機械装置の適度な大きさおよび重量によって、より簡潔な機械室のレイアウトと、より簡易な導入とが可能となる。高性能の機械装置が、しばしば、複数のエレベータを含むエレベータグループにおいて使用される場合、簡易な設置の可能性により、スペース利用について、歴然とした利点がもたらされる。
【0007】
次に、添付図面を参照し、実施例によって本発明を詳細に説明するが、実施例は本発明の適用範囲を制限するものではない。
【0008】
図1はエレベータシャフト39上の機械室45における運転機1の設置図である。運転機は、鋼棒で構成されたプラットフォーム46に設置されている。転向プーリ47の使用により、巻上ロープ48は、カウンタウェイト3に向かうロープ部分と、エレベータカー4に向かうロープ部分との間の距離が、トラクションシーブ2の直径より幾分大きくなるよう、配置される。運転機のブレーキ6は、エレベータが静止状態にある時は、第1に、静止ブレーキとして機能する。エレベータにおける好適な制止方法は、電気ブレーキである。一般的に、これは、停電中および非常停止機能を使用中であっても、モータは回生制動を行うことを意味する。操作ブレーキ6が降下すれば、更に増大された制動効果が生じる。このように、トラクションシーブに大きな制止力がかかる一方、ロープ、カウンタウェイトおよびエレベータカーならびにそれらによって懸下される他の質量は、それらの動作を継続しようとする。仮に巻上ロープとトラクションシーブとの間の把持力が十分でなければ、ロープはスリップを起こし、エレベータをトラクションシーブの制動によって停止させることができない。図1に示すエレベータでは、ロープスリップの危険性が生じるのは、相当に高速の場合、またはシステムのカー側とカウンタウェイト側との間に大きな不均衡がある場合である。しかし、高い巻上高を有する高速エレベータでは、カーおよびカウンタウェイトの重量が非常に大きいため、25%の超過重量があっても、それ自体では、ロープスリップを生じない。低速では、エレベータが従来通りの寸法である場合、ロープは、急停止、例えば非常停止によってスリップを生じることはない。高速では、毎分数メートルの速度であっても、特に、トラクションシーブのロープ溝の切り下げがロープ摩耗を低減する目的で設計されている場合は、ロープは非常にスリップを起こしやすい。
【0009】
実際上、本発明は例えば、運転機のトラクションシーブにブレーキを設けることによって実行し、前記トラクションシーブによって巻上ロープを運転し、巻上ロープを介して、エレベータカーおよびそのカウンタウェイトを運転する。非常停止機能が作動されると、ブレーキをトラクションシーブ上に降下させ、その動作を制動する。非常停止機能はそれ自体公知の方法で作動させる。非常停止は、運転機に含まれないブレーキ装置10を用いて補助する。運転機に含まれないブレーキ装置は、エレベータの複数の要素に制動力を及ぼすことができる。なぜなら、これは、エレベータロープとトラクションシーブとの間の摩擦とは無関係に、エレベータカーの動作に対して効力を及ぼすよう、設定しているからである。ブレーキ装置によって、制動力を、例えばロープ、ガイドレールまたは補償装置に対して加えることができる。好適な方式は、ロープまたはガイドレールもしくは補償装置に対して制動力を加える把持方式装置である。運転機に含まれないブレーキ装置は、先行して制動を開始するようにしておくことが可能であり、この場合、ロープスリップは完全に回避可能であり、制動は、本ブレーキのみを用いて実現できる。一方、ロープスリップを、制動において利用してもよい。これによって、いくつかの部位間の制動作用で生成される熱が分散される。ロープスリップを利用することによって、運転機に含まれないブレーキ装置で必要とされる力を削減可能である。
【0010】
仮に、運転機に含まれないブレーキを、渦電流ブレーキとして実装し、例えば永久磁石を使用し、磁石がエレベータガイドレールと相互に作用し合う場合、かかる装置によってもたらされる減速は、速度に依存する。機械ブレーキ装置を実装することも可能であり、これによって、ガイドレールまたはロープを把持し、所定の速度を超過した速度のみを制動する。したがって、このブレーキ装置は、例えば、安全回路が開放されていても、エレベータが比較的低速で運転される検査運転時には、作用状態への起動がなされることはなく、そのため、この装置は、独立した安全回路バイパス機能を必要としない。一方、渦電流ブレーキは、低速時には、ごくわずかな制動力しか有していないため、かかるブレーキは、エレベータの検査運転モードでの運転を妨害しない。
【0011】
当業者によれば、本発明のさまざまな実施例は、上述の例に限定されず、下記の特許請求の範囲内において、改変可能であることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による運転機の設置図である。

Claims (4)

  1. トラクションシーブおよび操作ブレーキを含みエレベータカーを運転する運転機と、該トラクションシーブによって駆動される巻上ロープと、該巻上ロープによって懸下される前記エレベータカーおよびカウンタウェイトと、非常停止時に、前記エレベータカーにあり、該エレベータカーのガイドレールに対して制動力を加えるブレーキ装置とを有するトラクションシーブエレベータの制動方法において、該エレベータが非常停止機能によって停止すべき場合は、まず前記ブレーキ装置の制動動作を開始し、次に前記操作ブレーキによって制動することを特徴とするトラクションシーブエレベータの制動方法。
  2. 請求項1に記載の方法において、前記ブレーキ装置は、前記ガイドレールに対して制動力を直接加えることを特徴とするトラクションシーブエレベータの制動方法。
  3. 請求項1または2に記載の方法において、前記ブレーキ装置によって達成される減速は、速度に依存しないことを特徴とするトラクションシーブエレベータの制動方法。
  4. 請求項1ないし3のいずれかに記載の方法において、前記ブレーキ装置に、所定の速度を超過した速度に達した場合のみ制動を行わせることを特徴とするトラクションシーブエレベータの制動方法。
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