JP4641939B2 - エチレン−ビニルアルコール系共重合体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
EVOHのロングラン性を改善するために、有機カルボン酸、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、リン酸塩等を添加することが知られている(例えば、WO99/05213、特開2001−164059号)。しかし、これら対処療法的な方法は問題を本質的に解決するものではなく、その改善の程度も必ずしも十分ではなかった。
このように、従来、EVOHについては、高温での成形加工の際に、フィッシュアイやブツの発生による品質低下を抑制することが長らく未解決の課題とされてきた。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、EVOHの分子構造中に少量含まれる異種構造、特にEVOH末端のカルボン酸類およびラクトン環がロングラン性を大きく阻害していることを見出した。
溶融成形の際に、末端カルボン酸および末端ラクトン環は共重合体の水酸基と反応して分岐を有する高重合度の重合体を生成させ、その結果、フィッシュアイの原因となるゲル、ブツ等の生成が促進されると考えられる。
本発明は、エチレン単位(III)、ビニルアルコール単位(IV)およびビニルエステル単位(V)を含み、上記単位の合計(III+IV+V)に対するエチレン単位(III)の比率が20〜60モル%であり、上記単位の合計(III+IV+V)に対する共重合体の重合体末端におけるカルボン酸類単位(I)およびラクトン環単位(II)の合計(I+II)の比率が0.12モル%以下、好ましくは0.10モル%以下、であるEVOHを提供する。
本発明は、さらに、上記EVOHを製造する方法を提供する。本発明の第1の製造方法は、本発明のEVOHを製造するに際し、エチレン単位(III)およびビニルエステル単位(V)の合計(III+V)に対するエチレン単位(III)の比率が20〜60モル%であるエチレン−ビニルエステル系共重合体をけん化してEVOHを得るけん化工程と、上記エチレン−ビニルエステル系共重合体および上記EVOHから選ばれる少なくとも一方に還元剤を接触させる還元工程と、を含むことを特徴とする。
本発明の第2の製造方法は、本発明のEVOHを製造するに際し、エチレン単位(III)およびビニルエステル単位(V)の合計(III+V)に対するエチレン単位(III)の比率が20〜60モル%となるように、エチレンとビニルエステル類とを共重合させてエチレン−ビニルエステル系共重合体を得る共重合工程と、このエチレン−ビニルエステル系共重合体をけん化してEVOHを得るけん化工程と、を含み、上記共重合工程において、重合温度を−20〜90℃、重合率を上記ビニルエステル類に対して3〜48%とすることを特徴とする。
上記各単位(I)〜(V)は、以下の式のとおりである。
ここで、Xは、水素原子、水酸基またはエステル化された水酸基であり、Yは水素原子、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、Rは直鎖状または分岐鎖を有するアルキル基であり、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、トリフルオロメチル基である。
本発明によれば、熱処理、成形加工の際にフィッシュアイやブツが生じがたく、溶融成形時のロングラン性に優れたEVOHを得ることができる。
図2は、典型的なEVOHのH−NMR測定のチャートの別の例である。
図3は、典型的なEVOHのH−NMR測定のチャートのまた別の一例である。
図4は、典型的なEVOHのC−NMR測定のチャートの一例である。
本発明者らの検討によると、EVOHの分子構造中に存在する異種構造である残存アセチル基量および1,2−グライコール量も、EVOHのロングラン性に影響を与える。EVOHにおける残存アセチル基量および1,2−グライコール単位は、以下の関係式を満たすことが好ましい。
G<1.53−0.0239×Eu
ここで、Gは、1,2−グライコール量の含有率をモル%により表示した数値であり、Euは、エチレン単位(III)、ビニルアルコール単位(IV)およびビニルエステル単位(V)の合計(III+IV+V)に対するエチレン単位(III)の比率をモル%で表示した数値である。
上記関係式を満たすEVOHは、ガスバリア性が良好であり、熱処理・成形加工の際のフィッシュアイやブツも抑制される。
EVOHにおいて、(III/(III+IV+V))により示されるエチレン単位の比率(以下、「エチレン含量」ともいう)は、ガスバリア性および溶融成形性に優れた成形物を得るという観点からは、20〜60モル%が好適である。エチレン含量が20モル%未満の場合には、溶融成形性が悪くなるおそれがあり、60モル%を超えるとガスバリア性が不十分となるおそれがある。
エチレン含量の下限値は、22モル%以上、さらに24モル%以上が好ましい。エチレン含量の上限値は、55モル%以下、さらには50モル%以下が好ましい。
本発明のEVOHは、短鎖分岐量が0.20モル%以下、さらには0.16モル%以下、特に0.13モル%以下が好ましい。
ここで、短鎖分岐量とは、主鎖に対して分岐している構造の炭素数4〜6の末端アルキル基の量である。
短鎖分岐量が上記範囲を上回ると、熱処理・成形加工の際にロングラン性が悪化しフィッシュアイやブツが生じ易い。
本発明の第1の製造方法では、けん化の前に、エチレン−ビニルエステル系重合体に還元剤を接触させてもよいし、けん化して得られたEVOHに還元剤を接触させてもよく、エチレン−ビニルエステル系重合体とEVOHの両方に還元剤を接触させてもよい。
エチレン−ビニルエステル系共重合体および/またはエチレン−ビニルアルコール系共重合体と還元剤との接触は、有機溶剤中で行うことが好ましい。
この場合、有機溶剤としては、共重合体、還元剤を溶解しうるものであれば制限はないが、例えば、DMF、DMSO、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、THF、ヘキサフルオロイソプロパノール等を1種または2種以上混合して用いるとよい。
還元剤としては、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、エステル等のカルボニル化合物を還元できる化合物であれば制限はないが、還元反応後水洗等によって容易に除去できる還元剤が好ましく、具体的には、トリエチルアミンボラン、ソジウムハイドロボレート、リチウムアルミニウムハイドライド等を用いるとよい。
還元剤は、共重合体に対して、0.001重量%〜100重量%の範囲で使用するとよい。下限量は、共重合体に対して0.01重量%以上、特に0.1重量%以上が好ましい。上限量は、80重量%以下、特に60重量%以下が好ましい。還元剤の使用量が0.001重量%未満の場合は、還元反応の効率が悪くなって共重合体の末端カルボン酸量を十分に低減できない。一方、還元剤の使用量が100重量%を超えると、共重合体中から還元剤を抽出することが困難となり、熱安定性、色相等が劣化するおそれがある。
共重合体と還元剤とを接触させるときの温度は、還元剤の種類、量、溶剤の種類にもよるが、一般には、0℃〜300℃、好ましくは30〜250℃、さらに好ましくは50〜150℃の範囲である。
共重合体と還元剤との接触は、窒素雰囲気で行うことが好ましい。
本発明の第2の製造方法として記載したように、EVOHの重合体末端のカルボン酸類およびラクトン環を所望の範囲とするには、重合率がビニルエステル基準で3〜48%の場合には、重合温度を−20〜90℃とするとよい。重合温度は、重合率にも依存するが、0〜50℃がより好ましい。
さらに、重合条件により該共重合体の1,2−グライコール量を上記で規定した好ましい範囲とするには、重合率にも依存するため必ずしも限定されないが、重合温度として50℃未満の条件であることが好ましく、さらに好ましくは、45℃以下である。重合温度の下限は、使用する触媒の活性によって影響され、得られる該共重合体のロングラン性の観点からは、特に限定されないが、一般に該共重合体の生産性の観点から、0℃以上が好ましい。
重合率は、45%以下、特に40%以下がより好ましい。
重合時間は、重合温度、触媒濃度、モノマー濃度、目標重合率、目標ポリマー濃度等に応じて決定すればよいが、共重合体の重合速度、即ち、重合時間に対する重合率の比が一定の範囲にあることが重要である点、および生産性の観点から、7時間以下、特に6時間以下が好ましい。また、重合時の発熱による温度上昇を抑制し、重合反応を安定に制御する観点からは、重合時間は1時間以上、特に2時間以上が好ましい。このように、重合反応の制御安定性と生産性とを両立させるためには、重合時間は1時間以上7時間以下が好ましい。
ただし、本発明のEVOHは、本発明の方法により得たものに限るわけではない。
EVOHは、エチレンとビニルエステル類とを共重合して得たエチレン−ビニルエステル系共重合体をけん化して得るとよく、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下「EVAc」ともいう)をけん化して得ることが好ましい。
エチレンと酢酸ビニルとの重合は溶液重合に限るものではなく、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、バルク重合のいずれであってもよい。また重合の方式は、連続式、回分式のいずれであってもよい。
溶液重合の重合条件を以下に例示する。
・溶媒:好ましくはアルコール類、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、特に好ましくはメチルアルコール(ただし、エチレン、酢酸ビニルおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体を溶解し得るアルコール以外の有機溶剤(例えば、ジメチルスルホキシド)を用いてもよい。)
・触媒:例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メチル−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−シクロプロピルプロピオニトリル)等のアゾ系開始剤、イソブチリルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエイト、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、ラウロイルパーオキサイド、ジシクロヘキシルパーオキシジカーボネート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物系開始剤
・温度:−20〜90℃、好ましくは0〜80℃、より好ましくは0〜50℃、ただし、生産性を重視すべき場合に一般に好ましい温度は20〜70℃
・時間(連続式の場合は平均滞留時間):1〜15時間、好ましくは1〜7時間、ただし、重合時間による特性の制御を要しない場合には3〜11時間
・重合率:仕込みビニルエステルに対して3〜48%、好ましくは3〜45%、ただし、生産性を重視すべき場合に一般に好ましい重合率は5〜90%、好ましくは30〜80%
・重合後の溶液中の樹脂分:5〜85%、好ましくは20〜70%
・共重合体中のエチレン含有率:20〜60モル%、好ましくは22〜55モル%、より好ましくは24〜50モル%
エチレン、酢酸ビニル以外に、これらと共重合し得る単量体、例えば、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン等のα−オレフィン;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸またはその無水物、塩、あるいは、モノまたはジアルキルエステル等;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸またはその塩;アルキルビニルエーテル類、ビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等を少量共存させてもよい。
EVOHは、共重合成分として、ビニルシラン化合物を含有していてもよい。ビニルシラン化合物の含有率は0.0002〜0.2モル%が好適である。ここで、ビニルシラン系化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルメトキシシランが挙げられ、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好ましい。
所定時間の重合後、所定の重合率に達した後、必要に応じて重合禁止剤を添加し、未反応のエチレンガスを蒸発除去し、その後に、未反応酢酸ビニルを追い出す。こうして得たEVAc溶液から未反応の酢酸ビニルを追い出す方法としては、例えば、ラシヒリングを充填した塔の上部からEVAc溶液を一定速度で連続的に供給し、塔下部よりメタノール等の有機溶剤蒸気を吹き込み、塔頂部よりメタノール等の有機溶剤と未反応酢酸ビニルの混合蒸気を留出させ、塔底部より未反応酢酸ビニルを除去したEVAc溶液を取り出す方法、を採用すればよい。
未反応酢酸ビニルを除去したEVAc溶液にアルカリ触媒を添加し、共重合体中の酢酸ビニル部分をけん化する。けん化方法は、連続式、回分式のいずれとしてもよい。アルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ金属アルコラート等を用いることができる。けん化に用いる溶媒としては、メタノールが好ましい。
けん化条件を以下に例示する。
・共重合体溶液濃度;10〜50%
・反応温度;30〜150℃
・触媒使用量;0.005〜0.6当量(酢酸ビニル成分あたり)
・時間(連続式の場合、平均滞留時間);10分〜6時間
一般に、連続式では、けん化により生成する酢酸メチルをより効率的に除去できるので、回分式に比べて少ない触媒量で高いけん化度の樹脂を得ることができる。連続式の場合には、けん化により生成するEVOHの析出を防ぐため、より高い温度でけん化する必要がある。このため、連続式では下記範囲の反応温度および触媒量が好ましい。
・反応温度;70〜150℃
・触媒使用量;0.005〜0.4当量(酢酸ビニル成分当たり)
上記のように、溶融安定性に優れ、ロングラン性の良好なEVOHを製造するためには、EVOHの残存アセチル基量は少量であるほうがよい。残存アセチル基量が0.1モル%以下のEVOHを得るためには、連続式が好ましく、さらに、けん化反応塔の複数箇所から触媒を添加する、触媒使用量を多くする、けん化反応塔の下部から吹き込むメタノールの量を多くする等とするとよい。回分式でも残存アセチル基量が0.1モル%以下のEVOHを得ることはできる。このためには、例えば、触媒を複数回に分けて添加する、触媒使用量を多くする、けん化反応槽にメタノール蒸気または窒素ガスを吹き込む量を多くする等とするとよい。
けん化後のEVOHのアルコール溶液から、EVOHペレットを製造することができる。この方法は特に限定されない。例えば、EVOHのアルコール溶液を、水またはアルコールを少量含むアルコール水溶液、EVOHのエチレン含量にも依存するが、凝固性、工程通過性を考慮すると、好ましくはアルコールを5〜20重量%含有するアルコール含有水溶液、である凝固浴中にストランド状に析出させた後、このストランドを切断すると、含水ペレットが得られる。
析出に際しては、アルコール溶液を濃縮することによってけん化時よりもEVOH濃度を上昇させておいてもよいし、メタノールの一部または全部を水で置換して、EVOHの水/アルコールの混合溶液またはEVOHの含水組成物としておいてもよい。ストランド状に析出させずに、流動状態のままで切断し、水中で凝固させてペレットを製造してもよい。
以上のようにして得た含水ペレットは多孔質であり、けん化触媒残渣や還元剤残渣を水洗により除去しやすく、その後の添加剤の添加や乾燥操作も容易である。これらの利点を十分に得るためには、含水ペレットの含水率は10〜80重量%が好ましい。含水率は、20重量%以上、特に30重量%以上が好ましく、70重量%以下、特に60重量%以下が好ましい。
含水ペレットには、通常、けん化触媒残渣であるアルカリ金属塩、例えば酢酸ナトリウムを含んでおり、そのために着色等の問題が生じることがある。これを防止するために、含水ペレットは洗浄することが好ましい。通常、洗浄前の含水ペレットのアルカり金属塩含有量はアルカリ金属換算で100〜10000μmol/g(EVOH重量当り)程度である。洗浄は、特に限定されないが、水による洗浄が好適である。アルカリ金属イオンを効率的に除去するために、酢酸等の酸の水溶液を用いてもよい。また、水による洗浄と酸による洗浄とを併用し、効率的にけん化触媒残渣の含有量を減少させてもよい。
洗浄は、含水ペレットのアルカリ金属含有量をアルカリ金属換算で0〜50μmol/g(EVOH重量当り)以下にまで減少させるとよい。アルカリ金属含有量の上限は、40μmol/g以下、さらには30μmol/g以下、特に20μmol/g以下、が好ましい。けん化触媒残渣は、通常、酢酸のアルカリ金属塩として含まれているから、洗浄後の含水ペレットのアルカリ金属含有量を十分に低減させておくことによって、カルボン酸根の含有量を低減したEVOH樹脂組成物を得やすくなる。
含水ペレットを洗浄する方法は特に限定されるものではなく、回分式処理容器、連続式処理容器のいずれを用いて洗浄してもよい。ただし、塔式容器内で連続的にペレットを供給して処理する方法が、生産性の観点からは好ましい。
本発明のEVOHには、成形品の熱安定性、ロングラン性、色相、接着性等を改善する目的で、各種の添加剤を使用してもよい。添加剤は、アルカリ金属塩(A)、ホウ素化合物(B)、カルボン酸またはその塩(C)、リン系化合物(D)、アルカリ土類金属塩(E)、炭酸ガス等の中から、目的に応じ、適宜選択すればよい。
添加剤の添加方法としては、EVOHに直接添加剤を添加する方法、EVOHに添加剤を噴霧する方法、押出機等で添加剤とEVOHとを混練する方法、EVOHの溶液に添加剤を添加する方法、EVOHを不均一系にて添加剤を含む溶液で処理する方法、等を例示できる。これらの中でも、添加剤の水溶液とEVOHとを接触させる方法が好ましい。
アルカリ金属塩(A)の添加は、EVOHの層間接着性、ロングラン性を改善する観点から好ましい。アルカリ金属塩(A)の含有量の好ましい範囲は、含水ペレットの含水率にもよるが、一般には0.05〜40mmol/Lが好ましい。含有量のより好適な下限は0.1mmol/L以上であり、より好適な上限は20mmol/L以下である。
アルカリ金属塩(A)を含む水溶液で処理すると、アルカリ金属塩を含むEVOH樹脂組成物が得られる。この樹脂組成物におけるアルカリ金属濃度は、10〜1000ppm、特に20〜500ppmが好ましい。
アルカリ金属塩(A)のカチオン種は、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩およびセシウム塩から適宜選択すればよいが、ナトリウム塩およびカリウム塩が好ましく、カリウム塩が特に好ましい。
アルカリ金属塩(A)のアニオン種も、特に限定されず、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、水酸化物、カルボン酸塩等として添加すればよいが、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸水素塩および水酸化物として添加するとよい。また、後述するように、ホウ酸塩として添加してもよい。特に優れたロングラン性、熱安定性が要求される場合には、カルボン酸塩の使用は避けたほうがよい。
ホウ素化合物(B)の添加は、溶融成形時のロングラン性、ダイリップ部のいわゆる「目やに発生」を改善する観点から好ましい。ホウ素化合物の添加量により、樹脂組成物のMIを制御することも可能である。ホウ素化合物を添加するための水溶液においてホウ素化合物(B)の濃度をホウ素元素換算で0.1〜50mmol/Lとすると、適当な量のホウ素化合物(B)を乾燥樹脂組成物ペレットに含有させることができる。水溶液におけるホウ素化合物(B)の濃度の下限値は、0.5mmol/L以上、さらには1mmol/L以上が好ましい。また、上記濃度の上限値は、40mmol/L以下、さらには30mmol/L以下が好ましい。50mmol/Lを超えると、EVOH樹脂組成物がゲル化しやすく、成形品の外観が悪化するおそれがある。
ホウ素化合物(B)としては、ホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素類等が挙げられるが、これらに限定されない。より具体的には、ホウ酸類としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸等を、ホウ酸エステルとしてはホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチル等を、ホウ酸塩としては上記各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂等を例示できる。これらの化合物の中でも、オルトホウ酸(以下、単に「ホウ酸」ともいう)が好ましい。
カルボン酸またはその塩(C)としては、特に限定されないが、好ましいカルボン酸類としては、酢酸、プロピオン酸、乳酸、酪酸等のアルキルカルボン酸が挙げられ、その塩としては、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等が挙げられる。なかでも、酢酸、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムが好ましい。
特に優れたロングラン性、熱安定性が要求される場合には、例えばEVOHを処理する水溶液には、カルボン酸またはその塩(C)を添加しないことが望ましい。ただし、EVOH樹脂中に残存しているカルボン酸またはその塩(C)が水溶液中に溶け出し、その結果含まれるようになることを排除するものではない。また、本発明の効果を阻害しない範囲でカルボン酸またはその塩(C)を含有することを排除するものでもない。
リン酸化合物(D)の添加は、溶融成形時のロングラン性、耐着色性、特に高温成形時の耐着色性と層間接着性とのバランスを図る観点から好ましい。適当な量のリン酸化合物(D)を含有させることで、EVOH樹脂組成物を溶融成形する際の成形物の着色およびゲル・ブツの発生を抑制することが可能となる。リン酸化合物(D)を添加するための水溶液におけるリン酸化合物(D)の濃度の好ましい上限値は、リン酸根換算で10mmol/L以下、さらには5mmol/L以下であり、特に2mmol/L以下である。一方、上記濃度の好ましい下限値は、リン酸根換算で0.01mmol/L以上、さらには0.05mmol/L以上であり、特に0.1mmol/L以上である。
リン酸化合物(D)としては、リン酸、亜リン酸等の各種の酸やその塩を例示される。リン酸塩は、第一リン酸塩、第二リン酸塩、第三リン酸塩のいずれの形で含まれていてもよく、そのカチオン種も特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩が好ましい。中でも、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウムが好適である。
アルカリ土類金属塩(E)は、用途によっては、適当な量を添加することで、得られるEVOH樹脂組成物を溶融成形した際のロングラン性を改善できることがある。EVOHを処理する水溶液は、アルカリ土類金属塩(E)を含有していてもよいが、アルカリ土類金属塩は難溶性の炭酸塩を形成しやすいため、大量に添加するのは適当ではない。上記水溶液におけるアルカリ土類金属塩(E)の濃度をアルカリ土類金属換算で0〜10mmol/Lとすると、適当な量のアルカリ土類金属塩(E)を乾燥樹脂組成物ペレット中に含有させることができる。上記濃度の上限値は、5mmol/L以下、さらには3mmol/L以下、が好ましい。
アルカリ土類金属塩(E)のカチオン種は、特に限定されず、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、ストロンチウム塩等が挙げられるが、マグネシウム塩およびカルシウム塩が好適である。アルカリ土類金属塩(E)のアニオン種も、特に限定されず、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、水酸化物、カルボン酸塩等として添加すればよく、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸水素塩および水酸化物としての添加が好ましい。通常、アルカリ土類金属塩は水に難溶性のものが多いが、炭酸の存在により溶解度が大きくなる。ただし、特に優れたロングラン性、熱安定性が要求される場合には、カルボン酸塩ではないほうがよい。
EVOHを処理する水溶液が含有する炭酸ガスの量は、特に限定されず、適宜調整すればよいが、空気中に存在する炭酸ガスが自然に溶解するような程度の量よりも多い量を溶解させることが好ましい。水溶液中の炭酸ガスの濃度(遊離した二酸化炭素と炭酸との合計)は、0.5mmol/L以上、さらには2mmol/L以上、特に10mmol/L以上が好ましい。
炭酸ガスの溶解度を上げるために、1.5〜10気圧程度の加圧条件下で処理を行ってもよい。連続式処理容器、特に塔式容器を使用して、連続的に供給されるペレットを処理する場合、水溶液中の炭酸ガス濃度が高すぎる場合には、EVOHペレットの周囲に気泡が発生し、樹脂の沈降性に悪影響を及ぼす場合がある。このため、連続式処理工程が適用される場合には、水溶液中の炭酸ガス濃度が飽和炭酸ガス濃度よりも低いほうが好ましい場合がある。この場合、炭酸ガス濃度は、飽和炭酸ガス濃度未満の値に設定され、好適には飽和炭酸ガス濃度の0.95倍以下、特に0.9倍以下に設定するとよい。この濃度は、処理液の温度や圧力にも影響される。一方、回分式処理容器を使用する場合には、通常、沈降性の問題は生じないが、炭酸ガス濃度の上限値を連続式処理容器についての上記範囲と同様としてもよい。
EVOHを処理するために上記添加剤、さらには炭酸ガスを含有する水溶液のpHは、3.5〜7.0が好適である。一定量以上の炭酸ガスを含有させることにより、酸性の水溶液にすることができる。pHの値は、3.8以上、さらには4以上が好ましく、6.8以下、さらに6.5以下、特に6.0以下が好ましい。
添加剤を添加するための水溶液の調整方法は特に限定されない。炭酸ガスを使用する場合、予め炭酸ガスを溶解させた水溶液の中に、上記添加剤を添加してもよく、添加剤を予め溶解させた水溶液に炭酸ガスを溶解させてもよい。それぞれの水溶液を予め作製しておいて、それを混合しても構わない。
水溶液にEVOHを接触させる方法は、特に限定されないが、EVOHを水溶液に浸漬するとよい。水溶液にEVOH樹脂を浸漬する際のEVOHの形状は、粉末、粒状、球状、円柱形ペレット状等、任意であるが、上記のようにして得た含水EVOHペレットが好ましい。含水状態にあるペレットを水溶液に浸漬すると、添加剤をペレット中に効率良くかつ均一に含有させることができる。水溶液に浸漬する前の含水ペレットの含水率は、10〜80重量%が好適である。含水率は、20重量%以上、さらには30重量%以上が好ましく、75重量%以下、さらには70重量%以下が好ましい。
EVOHに接触させる際の水溶液の温度は、特に限定されないが、炭酸ガスを含む場合は10〜90℃が好ましい。10℃未満では、添加剤成分をEVOHペレット中に均一に含有させるのに時間がかかり、90℃を超えると、炭酸ガスの飽和溶解度が低下して十分な量の炭酸ガスを水溶液中に含有できなくなり、ペレット同士が融着するおそれもある。水溶液の温度は、20℃以上、さらには30℃以上、85℃以下、さらには80℃以下が好ましい。70℃以上の水溶液を用いる場合には、炭酸の溶解度が小さくなるため、1.5〜10気圧程度の加圧下で接触させるとよい。
EVOHを水溶液に接触させる時間は、EVOHの形態によってその好適範囲が異なるが、直径が1〜10mm程度のペレットの場合には、1時間以上、さらに2時間以上とするとよい。
EVOHを水溶液に接触させる方法は、特に限定されず、EVOHを予め水に接触させておいて、炭酸ガスや添加剤を後から水中に溶解させてもよい。予め調整した水溶液をEVOHと接触させると、添加剤を均一に含有する安定した品質のEVOH樹脂組成物が得られて好ましい。
EVOHを水溶液に接触させる方式は、バッチ方式、連続方式のいずれによる方式も採用可能である。連続方式においては、例えば塔型の容器の中でEVOHを徐々に下方に移動させながら、連続的に供給される水溶液と接触させる方法等が、好適なものとして挙げられる。
複数の水溶液を調製し、複数回に分けてEVOHと水溶液との接触を行っても構わない。例えば、最初にアルカリ金属塩(A)またはホウ素化合物(B)のみを含有する水溶液と接触させ、引き続きアルカリ金属塩(A)またはホウ素化合物(B)に加えて炭酸ガスを含有する水溶液と接触させる方法、を採用してもよい。
水溶液を用いて添加剤が添加されたEVOH、好適にはEVOHペレット、は脱液してから乾燥される。乾燥方法は特に限定されず、熱風乾燥機等を用いて行えばよい。乾燥機は、流動式乾燥機であっても静置式乾燥機であってもよく、これらを組み合わせて使用してもよい。この中でも、初めに流動乾燥法で乾燥し、引き続いて静置乾燥法で乾燥する方法が好適である。乾燥温度は特に限定されないが、70〜120℃程度が好ましく、乾燥が進むにつれて温度を上昇させてもよい。乾燥後の含水率は、1重量%以下、さらには0.5重量%以下、が好ましい。こうして得られた乾燥EVOH樹脂が、以後の成形工程に供される。
以上のようにしてEVOH樹脂組成物が得られる。EVOH樹脂組成物は、各種添加剤を含みうるが、金属に換算して10〜1000ppmのアルカリ金属塩を含むことが好ましい。
EVOH樹脂組成物の好適なメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下で測定;但し、融点が190℃付近あるいは190℃を超えるものは2160g荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、メルトフローレートを縦軸(対数)としてプロットし、190℃に外挿した値)は好適には0.1〜200g/10min.である。MFRの下限はより好適には0.2g/10min.以上であり、さらに好適には0.5g/10min.以上であり、最適には1g/10min.以上である。また、MFRの上限はより好適に50g/10min.以下であり、さらに好適には30g/10min.以下であり、最適には15g/10min.以下である。メルトフローレートが上記範囲よりも小さい場合には、成形時に押出機内が高トルク状態となって押出加工が困難となり、また上記範囲よりも大きい場合には成形物の機械強度が不足して好ましくない。
EVOHまたはEVOH樹脂組成物(以下、特性、加工についての記載ではEVOH樹脂組成物はEVOHを含む意味で用いる)の極限粘度は0.03〜1.5dl/g、好ましくは0.05〜1.0dl/g、さらに好ましくは0.07〜0.8dl/gの範囲から選択するとよい。極限粘度が上記範囲を下回ると溶融成形性に劣り、押出成形をして得られたフィルムに厚さ斑が生じやすくなり、極限粘度が上記範囲を上回ると成形物の外観を悪化させやすい。
EVOH樹脂組成物に、重合度、エチレン含量およびアセチル基残量の異なるEVOHをブレンドして溶融成形することも可能である。また、他の各種可塑剤、滑剤、安定剤、界面活性剤、色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、乾燥剤、架橋剤、金属塩、充填剤、各種繊維等の補強剤等を適量添加することも可能である。好適にはペレットの形で溶融成形工程に供される。
EVOH樹脂組成物は、溶融成形によりフィルム、シート、容器、パイプ、繊維等、各種の成形物に成形される。なかでもフィルムは、長時間の成形を行う場合が多く、しかもロングラン成形において問題となりやすいゲルやブツが外観上の問題として顕在化しやすいことから、本発明のEVOH樹脂組成物を使用するのに適した用途である。
これらの成形物は再使用の目的で粉砕し再度成形することも可能である。また、フィルム、シート、繊維等を一軸または二軸延伸することも可能である。溶融成形法としては押出成形、インフレーション押出、ブロー成形、溶融紡糸、射出成形等が可能である。溶融温度は該共重合体の融点等により異なるが150〜270℃程度が好ましい。
EVOH樹脂組成物は、当該樹脂組成物のみの単層からなる成形物としても使用可能であるが、層間接着性に優れることから、当該樹脂組成物からなる少なくとも1層を含む多層構造体とすることが好適である。多層構造体の層構成としては、本発明のEVOH樹脂組成物をE、接着性樹脂をAd、熱可塑性樹脂をTで表わすと、E/T、T/E/T、E/Ad/T、T/Ad/E/Ad/T等が挙げられるが、これに限定されない。ここで示されたそれぞれの層は単層であってもよいし、場合によっては多層であってもよい。
上記に示す多層構造体を製造する方法は特に限定されない。例えば、EVOH樹脂組成物からなる成形物(フィルム、シート等)上に熱可塑性樹脂を溶融押出する方法、逆に熱可塑性樹脂等の基材上に本発明の樹脂組成物と他の熱可塑性樹脂とを共押出する方法、熱可塑性樹脂とEVOH樹脂組成物を共押出または共射出する方法、さらにはEVOH樹脂組成物より得られた成形物と他の基材のフィルム、シートとを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物等の公知の接着剤を用いてラミネートする方法等が挙げられる。なかでも、共押出または共射出する方法が好適である。
EVOH樹脂組成物と熱可塑性樹脂との共押出成形の方法は特に限定されず、マルチマニホールド合流方式Tダイ法、フィードブロック合流方式Tダイ法、インフレーション法等が好適なものとして例示される。また、共射出成形の方法も特に限定されず、一般的な手法を用いることができる。
EVOH樹脂組成物と積層するのに用いられる熱可塑性樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレンプロピレン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体(炭素数4〜20のα−オレフィン)、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独またはその共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエステルエラストマー、ナイロン−6、ナイロン−6,6等のポリアミド樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリカーボネート、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。上記の中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレンプロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエステルが好ましく用いられる。
EVOH樹脂組成物と熱可塑性樹脂とを積層するに際し、接着性樹脂を使用する場合があり、この場合の接着性樹脂としてはカルボン酸変性ポリオレフィンからなる接着性樹脂が好ましい。ここでカルボン酸変性ポリオレフィンとは、オレフィン系重合体にエチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物を化学的(たとえば付加反応、グラフト反応により)結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性オレフィン系重合体のことをいう。また、ここでオレフィン系重合体とはポリエチレン(低圧、中圧、高圧)、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン、オレフィンと該オレフィンとを共重合し得るコモノマー(ビニルエステル、不飽和カルボン酸エステル等)との共重合体、たとえばエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレンアクリル酸エチルエステル共重合体等を意味する。このうち直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニルの含有量5〜55重量%)、エチレンアクリル酸エチルエステル共重合体(アクリル酸エチルエステルの含有量8〜35重量%)が好適であり、直鎖状低密度ポリエチレンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体が特に好適である。エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物とはエチレン性不飽和モノカルボン酸、そのエステル、エチレン性不飽和ジカルボン酸、そのモノまたはジエステル、その無水物があげられ、このうちエチレン性不飽和ジカルボン酸無水物が好適である。具体的にはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル等が挙げられ、なかんずく、無水マレイン酸が好適である。
エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物のオレフィン系重合体への付加量またはグラフト量(変性度)はオレフィン系重合体に対し0.01〜15重量%、好ましくは0.02〜10重量%である。エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物のオレフィン系重合体への付加反応、グラフト反応は、たとえば溶媒(キシレン等)、触媒(過酸化物等)の存在下でラジカル重合法等により得られる。このようにして得られたカルボン酸変性ポリオレフィンの190℃、2160g荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)は0.2〜30g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10g/10分である。これらの接着性樹脂は単独で用いてもよいし、また二種以上を混合して用いることもできる。
このようにして得られた共押出多層構造体または共射出多層構造体を二次加工することにより、各種成形品(フィルム、シート、チューブ、ボトル等)を得ることができる。たとえば以下のようなものが挙げられる。
(1)多層構造体(シートまたはフィルム等)を一軸または二軸方向に延伸し、必要に応じて熱処理することによる多層共延伸シートまたはフィルム
(2)多層構造体(シートまたはフィルム等)を圧延することによる多層圧延シートまたはフィルム
(3)多層構造体(シートまたはフィルム等)を真空成形、圧空成形、真空圧空成形等、熱成形加工することによる多層トレーカップ状容器
(4)多層構造体(パイプ等)からのストレッチブロー成形等によるボトル、カップ状容器
(5)多層構造体(パリソン等)からの二軸延伸ブロー成形等によるボトル状容器
このような二次加工法には特に制限はなく、上記以外の公知の二次加工法も採用できる。このようにして得られた共押出多層構造体あるいは共射出多層構造体は層間接着性に優れ、外観が良好で臭気の発生が抑制されているから、各種食品容器の材料、例えば、包装用フィルム、深絞り容器、カップ状容器、ボトル等の材料として好適に用いられる。
(1)EVOHの一次構造の定量 (NMR法)
・測定条件
装置名:日本電子製 超伝導核磁気共鳴装置Lambda 500
観測周波数:500MHz(1H)、125.6MHz(13C)
溶媒:DMSO−D6、水/メタノール(4:6)
ポリマー濃度:4wt%(H−NMR)、10wt%(C−NMR)
測定温度:95℃(H−NMR、C−NMR)、40℃(H−NMR)
積算回数:600回(H−NMR)、50000回(C−NMR)
パルス繰り返し時間:4秒(H−NMR)、3秒(C−NMR)
サンプル回転速度:10〜12Hz
・解析方法
(1−1)末端カルボン酸およびラクトン環量測定
重合体末端のカルボン酸およびラクトン環量である末端カルボン酸およびラクトン環量はH−NMR測定(水/メタノール溶媒、80℃で測定)を用いて算出した(化学シフト値はTMSのピーク0ppmを基準とした)。図1のチャートに示すように0.7〜2.0ppmのメチレン水素の積分値(I1)、2.2〜2.5ppmのピークの積分値(I2)、2.5〜2.65ppmのピークの積分値(I3)を用いて、下記の式1により末端カルボン酸およびラクトン環量の算出を行った。ここで積分値(I2)、(I3)は末端カルボン酸およびラクトン環由来のピークに関するものである。下記式にあるEtとはエチレン含量である。
(式1)
図1において、積分値(I1)は、エチレン単位(III)、ビニルアルコール単位(IV)およびビニルエステル単位(V)に含まれるすべてのCH2単位の水素に由来する。積分値(I2)は、末端カルボン酸類単位(I)のカルボキシル基に隣接するCH2単位の水素に由来する。積分値(I3)は、末端ラクトン環単位(II)のカルボニル基に隣接するCH2単位の水素に由来する。
(1−2)残存アセチル基量測定
残存アセチル基量はH−NMR測定(DMSO溶媒、40℃と95℃で測定)を用いて算出した(化学シフト値は溶媒のピーク2.5ppmを基準とした)。図2,3のチャートに示すように0.7〜2.0ppmのメチレン水素の積分値(I1)、(I3)を基準として、それぞれの積分値をもとめる。残存アセチル基量は図2の3.7〜4.0ppmのピークの積分値(I2)、図3の3.1〜3.7ppmのピークの積分値(I4)、1.9〜2.1ppmのピークの積分値(I6)を用いて、下記の式2により残存アセチル基量の算出を行った。
(式2)
図2,3において、積分値(I1)(I3)は、図1の積分値(I1)と同様の水素に由来し、積分値(I2)は、ビニルアルコール単位(IV)のメチン水素(同単位の両隣がビニルアルコールのメチン水素)に由来し、積分値(I4)は、ビニルアルコール単位(IV)のメチン水素(同単位の両隣がエチレンの場合とエチレン−ビニルアルコールに挟まれている場合のメチン水素)に由来し、積分値(I5)は、1,2−グライコール構造のメチン水素に由来し、積分値(I6)は、ビニルエステル単位(V)におけるRに相当するメチル基の水素に由来し、積分値(I7)は、EVOH末端に存在する−CH2CH3基におけるメチル基の水素に由来する。
(1−3)エチレン含量測定法
エチレン含量はH−NMR測定(DMSO溶媒、40℃と95℃で測定)を用いて算出した(化学シフト値は溶媒のピーク2.5ppmを基準とした)。図2,3のチャートに示すように0.7〜1.8ppmのメチレン水素の積分値(I1),(I3)を基準として、それぞれの積分値をもとめた。図2,3の積分値(I1),(I2),(I3),(I4),(I5),(I6)を用いて、下記の式3によりエチレン含量の算出を行った。
(式3)
(1−4)1,2−グライコール量測定方法
1,2−グライコール量はH−NMR測定(DMSO溶媒、40℃と95℃で測定)を用いて算出した(化学シフト値は溶媒のピーク2.5ppmを基準とした)。図2,3のチャートに示すように0.7〜2.0ppmのメチレン水素の積分値(I1),(I3)を基準として、それぞれの積分値をもとめた。図3の3.1〜3.2ppmのピークの積分値(I5)を用いて、下記の式4により1,2−グライコール量の算出を行った。また下記の式にあるEtとはエチレン含量のことである。
(式4)
(1−5)短鎖分岐量測定方法
短鎖分岐量は、主鎖に対して分岐している構造の炭素数4〜6の分岐鎖の末端メチル(−CH3)量よりもとめる。
短鎖分岐量はH−NMR測定(DMSO溶媒、40℃と95℃で測定)とC−NMR測定(DMSO溶媒、95℃で測定)を併用し算出した(化学シフト値はH−NMRが溶媒のピーク2.5ppmを基準とし、C−NMRがTMSのピーク0ppmを基準とした)。まず全体の末端メチル量(主鎖と分岐の和)の算出を行った。図3のチャートに示すように0.7〜2.0ppmのメチレン水素の積分値(I3)を基準として、それぞれの積分値をもとめる。0.7〜0.85ppmのピークの積分値(I7)を用いて、下記の式5を用いて、末端メチル(−CH3)量の算出を行った。図4のチャートに示すように8〜12ppm(高磁場側(I8)、低磁場側(I9))、12〜16ppm(高磁場側(I10)、低磁場側(I11))のピークの積分値と上記でもとめられた末端メチル量を用いて、下記の式6により短鎖分岐量の算出を行った。
(式5)
(式6)
図4における積分値(I8)〜(I11)は、図3の積分値(I7)の具体的態様に対応し、積分値(I8)は、短鎖分岐の−CH2CH(OH)CH2CH3基におけるメチル基の水素、積分値(I9)は、主鎖の−CH2CH(OH)CH2CH3基におけるメチル基の水素、積分値(I10)は、短鎖分岐の−CH2CH2CH2CH3基におけるメチル基の水素、積分値(I9)は、主鎖の−CH2CH2CH2CH3基におけるメチル基の水素に由来する。
(2)固有粘度
試料とする乾燥EVOHペレット0.20gを精秤し、これを含水フェノール(水/フェノール=15/85重量%)40mLに60℃にて4時間加熱溶解させ、温度30℃にてオストワルド型粘度計にて測定し(t0=90秒)、下記の式7により固有(極限)粘度[η]を求めた。
(式7)
ηsp=t/t0−1(specific viscosity)、
ηrel=t/t0(relative viscosity)
C:EVOH濃度(g/L)
t0:ブランク(含水フェノール)が粘度計を通過する時間
t:サンプルを溶解させた含水フェノール溶液が粘度計を通過する時間
(3)粘度平均分子量
式3で求めたエチレン含量および式7で求めた固有粘度([η])を使用して、下記の式8により、粘度平均重合度(Pv)を求めた。
(式8)
(4)アルカリ金属塩の定量
乾燥EVOHペレットを凍結粉砕により粉砕した。得られた粉砕EVOHを、呼び寸法1mmのふるい(標準フルイ規格JIS Z−8801準拠)でふるい分けした。上記のふるいを通過したEVOH粉末10gと0.01規定の塩酸水溶液50mLを100mL共栓付き三角フラスコに投入し、冷却コンデンサーを付け、95℃で10時間攪拌、加熱抽出した。得られた抽出液2mLをイオン交換水8mLで希釈した。前記の希釈された抽出液を(株)横河電気製イオンクロマトグラフィーIC7000を用いて定量分析し、NaおよびKイオンの量を定量した。なお定量に際してはそれぞれ塩化ナトリウム水溶液および塩化カリウム水溶液を用いて作成した検量線を使用した。こうして得られたNaおよびKイオンの量から、乾燥EVOH中に含まれるアルカリ金属塩(A)の量を金属元素換算値で得た。
イオンクロマトグラフィー測定条件
カラム: (株)横河電機製ICS−C25
溶離液:5.0mLの酒石酸と1.0mLの2,6−ピリジン
ジカルボン酸を含む水溶液
測定温度 : 40℃
溶離液流速 : 1mL/min
サンプル打ち込み量 : 50μL
(5)ホウ素化合物(B)の定量
試料とする乾燥EVOHチップ100gを磁性ルツボに入れ、電気炉内で灰化させた。得られた灰分を0.01規定の硝酸水溶液200mLに溶解し、原子吸光分析によって定量し、ホウ素換算の量でホウ素化合物の含有量を得た。
(6)リン酸根(D)の定量
EVOHの試料5gを0.01規定の塩酸水溶液25mLに投入し、95℃で6時間攪拌した。攪拌後の水溶液について、リン酸根の量をイオンクロマトグラフィーにて定量した。但し、カラムは(株)横河電機製ICS−A23を使用し、溶離液は2.5mMの炭酸ナトリウムと1.0mMの炭酸水素ナトリウムを含む水溶液とした。尚、定量に際しては、リン酸水溶液で作成した検量線を用いた。
(7)単層製膜試験
得られた乾燥EVOHペレットを(株)東洋精機製作所製20mm押出機D2020(D(mm)=20、L/D=20、圧縮比2.0、スクリュー:フルフライト)を用いて単層製膜を以下の条件で行い、単層フィルムを得た。
・押出温度:C1/C2/C3/Die=175/200/220/230℃
・スクリュー回転数 : 40rpm
・吐出量 : 1.3kg/hr
・引取りロール温度 : 80℃
・引取りロール温度 : 3.1m/min
・フィルム厚み : 20μm
50hr−ロングラン性
単層製膜開始から50時間後のフィルムをサンプリングし、フィルム中のゲル状ブツ(肉眼で確認できる約100μm以上のもの)を確認し、熱安定性の評価を行った。
判定 : 基準
A : ブツが確認できず、実用に優れる
B : ブツが僅かに確認できるが、実用上問題なし
C : ブツが確認でき、実用に適さない
D : 多量のブツが確認でき、全く実用に適さない
酢酸ビニル 102.7kg
メタノール 18.4kg
2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)のメタノール溶液(濃度:1g/L)
重合開始剤 初期仕込み量 102.7ml
重合途中フィード量 0.32L/h
重合温度 60℃
重合槽エチレン圧力 39.0kg/cm2
重合時間 3.3hrs
モノマー反応率 9.9%
なお、モノマー反応率(重合率)は、酢酸ビニル基準で算出した。
該共重合反応液を追出塔に供給し、塔下部からのメタノール蒸気の導入により、未反応酢酸ビニルを塔頂より除去した後、該共重合体の45%のメタノール溶液を得た。該共重合体はエチレン含量32モル%、酢酸ビニル含量68モル%のEVAcである。該共重合体のメタノール溶液を塔式けん化反応器に導入し、以下のような条件でけん化反応を行った。
該共重合体のメタノール溶液濃度 20wt%
NaOHのメタノール溶液濃度 2mol/L
NaOH添加量(該共重合体中の酢酸ビニルエステル量に対して)0.4モル%
けん化温度 60℃
けん化時間 5hrs
水酸化ナトリウムを3方から添加しながら、塔下部よりメタノール蒸気を吹込み、塔頂より副生する酢酸メチルを除去し、塔底から残存アセチル基が極力低減された改質EVOHのメタノール溶液を得た。該メタノール溶液に重量比メタノール/水=7/3の混合蒸気を吹込み、該溶液中の溶液組成を水/メタノール混合系に変えた後、5℃のメタノール10%水溶液中にストランド析出させ、切断して、該EVOHをペレット状物として単離した。十分に水洗した後、ホウ酸、リン酸2水素カリウム、炭酸水素カリウム、20mmol/L濃度の炭酸水に浸漬処理して65℃〜110℃で乾燥してEVOH樹脂組成物ペレットを得た。添加剤の分析の結果、該共重合体中のホウ酸含量(ホウ素換算値)は、0.1wt%、カリウム濃度(カリウム元素換算値)は、140ppm、リン酸濃度(リン酸根換算値)が、40ppmであった。また、190℃で測定したMIは、1.7であった。得られたEVOH樹脂組成物の微細構造量およびロングラン試験の結果を表1,2に示す。
(比較例1)
重合開始剤として、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)を使用し、1.218gを初期に仕込み重合を実施して重合率を50%とした以外は、実施例1と同様の操作により、エチレン含量32モル%のEVOH樹脂組成物を得た。得られたEVOH樹脂組成物の微細構造量およびロングラン試験の結果を表1,2に示す。
・還元反応条件:
冷却管、攪拌翼、窒素導入管を備えた3L容量のセパラブルフラスコにEVAc150g、ジエチレングリコールジメチルエーテル900mlを入れ完全に溶解させた。そこへ、ソジウムハイドロボレート粉末を少量づつ計110g添加し、十分に攪拌、分散させた。その後、窒素気流下、内温を95℃に保持しつつ2時間攪拌した。反応終了後、内容物を水中にあけ、十分に水洗、乾燥後、けん化反応を実施した。
酢酸ビニル 79.2kg
メタノール 42.5kg
重合開始剤初期仕込み量
ジシクロヘキシルパーオキシジカーボネートのメタノール溶液
(濃度:25g/L)12.7kg
重合開始剤重合途中フィード量
上記メタノール溶液0.22L/h
重合温度 30℃
重合槽エチレン圧力 24.2kg/cm2
重合時間 3.0hrs
モノマー反応率 10.7%
該共重合反応液を追出塔に供給し、塔下部からのメタノール蒸気の導入により、未反応酢酸ビニルを塔頂より除去した後、該共重合体の45%のメタノール溶液を得た。該共重合体はエチレン含量32モル%、酢酸ビニル含量68モル%のEVAcである。該共重合体のメタノール溶液を塔式けん化反応器に導入し、実施例1と同様の条件でけん化反応を行い、実施例1と同様の処理を行ってEVOH樹脂組成物を得た。
該EVOHの微細構造量、添加剤の分析結果を表3,4に示す。該EVOHのロングラン試験の結果も併せて表3,4に示す。
(比較例2)
重合開始剤としてジシクロヘキシルパーオキシジカーボネートのメタノール溶液(濃度3.8g/L)1.04Lを初期に仕込み、その後、逐次0.93L/hの速度で添加を行い、重合率を50%とした以外は、実施例3に記載の製造方法に準じてEVOHを得た。添加剤の分析結果、微細構造量、ロングラン性の試験結果を表3,4に示した。
(比較例3)
容量が250Lで内部に冷却用コイルを備えた攪拌機付重合槽において、以下に示すような条件で重合を実施した。
酢酸ビニル 87.6kg
メタノール 25.5kg
2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)77g
重合温度 25℃
重合槽エチレン圧力 26.0kg/cm2
重合時間 10hrs
モノマー反応率 10%
該共重合反応液に対し、実施例3に記載の製造方法に準じてエチレン−ビニルアルコール共重合体を得た。さらに、NaOH添加量を2.5モル%とした以外は実施例1と同様の条件でけん化反応を行い、実施例1と同様の処理を行ってEVOH樹脂組成物を得た。
該EVOHの微細構造量、ロングラン試験の結果を表3,4に示す。
実施例3は、比較例3に比べて、同等の温度条件下、より短い重合時間で同等の重合率を達成しており、そのようなEVOHは、1,2−グリコール量が低減し、熱安定性が大幅に改善されることが明らかになった。
Claims (6)
- エチレン単位( III )、ビニルアルコール単位( IV )およびビニルエステル単位( V )を含むエチレン−ビニルアルコール系共重合体において、前記単位の合計( III+IV+V )に対する前記エチレン単位( III )の比率が20〜60モル%であり、前記単位の合計( III+IV+V )に対する前記共重合体の重合体末端におけるカルボン酸類単位(I )およびラクトン環単位( II )の合計( I+II )の比率が0.12モル%以下であり、
前記ビニルアルコール単位( IV )および前記ビニルエステル単位( V )の合計( IV+V )に対する前記ビニルエステル単位( V )の比率が0.20モル%以下であることを特徴とするエチレン−ビニルアルコール系共重合体。
ここで、前記各単位( I )〜( V )は、以下の式のとおりである。
- エチレン単位( III )、ビニルアルコール単位( IV )およびビニルエステル単位( V )を含むエチレン−ビニルアルコール系共重合体において、前記単位の合計( III+IV+V )に対する前記エチレン単位( III )の比率が20〜60モル%であり、前記単位の合計( III+IV+V )に対する前記共重合体の重合体末端におけるカルボン酸類単位( I )およびラクトン環単位( II )の合計( I+II )の比率が0.12モル%以下であり、
G<1.53−0.0239×Euの関係式を満たすことを特徴とするエチレン−ビニルアルコール系共重合体。
ここで、Gは、1,2−グライコール単位の含有率をモル%により表示した数値であり、Euは、前記エチレン単位( III )、前記ビニルアルコール単位( IV )および前記ビニルエステル単位( V )の合計( III+IV+V )に対する前記エチレン単位( III )の比率をモル%で表示した数値であり、前記各単位( I )〜( V )は、以下の式のとおりである。
- エチレン単位( III )、ビニルアルコール単位( IV )およびビニルエステル単位( V )を含むエチレン−ビニルアルコール系共重合体において、前記単位の合計( III+IV+V )に対する前記エチレン単位( III )の比率が20〜60モル%であり、前記単位の合計( III+IV+V )に対する前記共重合体の重合体末端におけるカルボン酸類単位( I )およびラクトン環単位( II )の合計( I+II )の比率が0.12モル%以下であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体と、
金属に換算して10〜1000ppmのアルカリ金属塩とを含むエチレン−ビニルアルコール系共重合体樹脂組成物。
ここで、前記各単位( I )〜( V )は、以下の式のとおりである。
- エチレン単位( III )、ビニルアルコール単位( IV )およびビニルエステル単位( V )を含み、前記単位の合計( III+IV+V )に対する前記エチレン単位( III )の比率が20〜60モル%であり、前記単位の合計( III+IV+V )に対する前記共重合体の重合体末端におけるカルボン酸類単位( I )およびラクトン環単位( II )の合計( I+II )の比率が0.12モル%以下であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法であって、
エチレン単位( III )およびビニルエステル単位( V )の合計( III+V )に対する前記エチレン単位( III )の比率が20〜60モル%であるエチレン−ビニルエステル系共重合体をけん化してエチレン−ビニルアルコール系共重合体を得るけん化工程と、
前記エチレンービニルエステル系共重合体および前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体から選ばれる少なくとも一方に還元剤を接触させる還元工程と、
を含むことを特徴とするエチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法。
ここで、前記各単位( I )〜( V )は、以下の式のとおりである。
- エチレン単位( III )、ビニルアルコール単位( IV )およびビニルエステル単位( V )を含み、前記単位の合計( III+IV+V )に対する前記エチレン単位( III )の比率が20〜60モル%であり、前記単位の合計( III+IV+V )に対する前記共重合体の重合体末端におけるカルボン酸類単位( I )およびラクトン環単位( II )の合計( I+II )の比率が0.12モル%以下であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法であって、
エチレン単位( III )およびビニルエステル単位( V )の合計( III+V )に対する前記エチレン単位( III )の比率が20〜60モル%となるように、エチレンとビニルエステル類とを共重合させてエチレン−ビニルエステル系共重合体を得る共重合工程と、
前記エチレン−ビニルエステル系共重合体をけん化してエチレン−ビニルアルコール系共重合体を得るけん化工程と、を含み
前記共重合工程において、重合温度を−20〜90℃、重合率を前記ビニルエステル類に対して3〜48%とすることを特徴とするエチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法。
ここで、前記各単位( I )〜( V )は、以下の式のとおりである。
- 前記共重合工程において、重合時間を1時間以上7時間以下とする請求項5に記載のビニルアルコール系共重合体の製造方法。
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